(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045980
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】家畜糞堆肥製造方法
(51)【国際特許分類】
C05F 3/00 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
C05F3/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154631
(22)【出願日】2021-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】521416856
【氏名又は名称】株式会社リオン
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀彰
(72)【発明者】
【氏名】染谷 芳胤
(72)【発明者】
【氏名】小倉 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】小松田 順二郎
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA02
4H061CC36
4H061CC38
4H061EE27
4H061GG43
4H061GG49
4H061LL26
(57)【要約】
【課題】クロピラリドが残留した牛糞を用いた牛糞堆肥におけるクロピラリドを検出限界(0.01mg/kg)未満まで低減することができる家畜糞堆肥製造方法を提供することにある。
【解決手段】発酵動物糞由来の肥料と牛糞との混合物を、通気しながら撹拌することにより、クロピラリドの含有量を低下させながら発酵させる発酵工程と、を行うことを特徴とする家畜糞堆肥製造方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵動物糞由来の肥料と牛糞との混合物を、通気しながら撹拌することにより、クロピラリドの含有量を低下させながら発酵させる発酵工程と、を行うことを特徴とする家畜糞堆肥製造方法。
【請求項2】
前記発酵動物糞が発酵鶏糞であることを特徴とする請求項1に記載の家畜糞堆肥製造方法。
【請求項3】
前記肥料の重量に対する前記牛糞の重量の割合が1:1~1:15であることを特徴とする請求項2に記載の家畜糞堆肥製造方法。
【請求項4】
前記家畜糞堆肥における前記クロピラリドの含有量が0.01mg/kg未満であることを特徴とする請求項3に記載の家畜糞堆肥製造方法。
【請求項5】
前記肥料がアミノ酸自動分析法で測定した天然アミノ酸含量が90mg/100g以上である天然アミノ酸肥料であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載の家畜糞堆肥製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸入された飼料を摂食した牛の糞尿に含まれ、農作物に発育障害を引き起こす残留農薬(クロピラリド)を分解する、家畜糞由来の堆肥製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2000年代に入り、トマト、なすなど双子葉類作物において、原因不明の生育障害が発生する事例が日本全国で報告された。その原因を調査した結果、生育障害が報告された土壌および施肥した牛糞堆肥から、日本国内では登録・販売されていない双子葉類雑草を枯らす選択性除草剤であるクロピラリド(Clopyralid、化学名:3,6-dichloro-2-pyridinecarboxylic acid)が検出された(非特許文献1)。
【0003】
クロピラリドは、アメリカ、カナダ、オーストラリア等では、登録・販売されており、牧草、トウモロコシ、麦類などの単子葉類の農作物生産の際、双子葉類の雑草を枯らす目的で広く用いられている。そのため、牛糞堆肥におけるクロピラリド残留の原因は、アメリカ、カナダ、オーストラリア等において、クロピラリドを散布した農耕地から生産された輸入飼料に起因すると推定されている。
【0004】
クロピラリドは、他の除草剤とは異なり、分解速度が非常に遅い。アメリカ、カナダ、オーストラリア等において、クロピラリドを散布した農耕地で生産された飼料用作物は、クロピラリドに汚染されたまま、日本に輸入される。汚染飼料を摂食した牛の体内でも、クロピラリドはほとんど分解されずに、糞尿中にクロピラリドが排出される。さらに、クロピラリドは、通常の牛糞堆肥化工程では、ほとんど分解されない。そのため、クロピラリドが残留する牛糞堆肥をクロピラリド感受性が高い作物の畑に施用すると、生育障害が引き起こされる。
【0005】
クロピラリドによる植物の生育障害の現れ方は品目によって違うことが知られている。クロピラリドは、非常に低い濃度(数ppb)でトマト、ピーマン、ダイズ、エンドウ、インゲン、ニンジン、ヒマワリ、キク、コスモス、アスターのようなクロピラリド感受性が高い植物には、深刻な生育障害を発生させる。
【0006】
特許文献1には、電子加速器を使用して生成された高エネルギー電子を照射することで水中のクロピラリドを分解する技術が記載されている。しかし、この方法で使用される電子加速器のエネルギーは1.8MeV、電流強度は1mA、電子照射線量は5~50KGyであり、簡便な方法ではなく、糞尿に含まれるクロピラリドを分解することは出来なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】中国特許出願公開第102432095号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構、「飼料及び堆肥に残留する除草剤(クロピラリド)の簡易判定法と被害軽減対策マニュアル(第2版)」、2020年11月
【非特許文献2】農林水産省、「輸入飼料中及び堆肥中に含まれるクロピラリドの調査結果について」、https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/clopyralid/attach/pdf/clopyralid-33.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
クロピラリドは難分解性であり、牛糞を堆肥化する過程でも分解が進まないため、堆肥中のクロピラリド濃度はほとんど変化しない。つまりクロピラリドが残留した堆肥を施用し、クロピラリドに対する感受性の高い農作物を作付けすると、生育障害が引き起こされ、著しく生産性が低下する。また、クロピラリドが残留した牛糞堆肥を一旦施用してしまうと、その農地では、数年クロピラリド感受性作物を生産することができなくなる課題があった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、クロピラリドが残留した牛糞を堆肥化工程後、クロピラリド含有量を検出限界(0.01mg/kg)未満まで低減することができる家畜糞堆肥製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、汚染された飼料を食べた家畜の糞尿から牛糞堆肥を製造する際に、特許6098867に記載された方法を用いて製造された発酵動物糞由来の肥料を牛糞と混合して堆肥化することでクロピラリドの含有量が低減することを見出して、本発明をするに至った。
【0012】
すなわち、前記課題は、本発明の家畜糞堆肥製造方法によれば、発酵動物糞由来の肥料と牛糞との混合物を、通気しながら撹拌することにより、クロピラリドの含有量を低下させながら発酵させる発酵工程と、を行うことにより解決される。
【0013】
このように、発酵動物糞堆肥を用いることで、堆肥化過程でクロピラリドを分解して低減することが可能となる。
【0014】
また、前記発酵動物糞が発酵鶏糞であると好適である。
また、前記肥料の重量に対する前記牛糞の重量の割合が1:1~1:15であれば、クロピラリドの分解効果は認められる。
また、実施例に示したように、クロピラリドの含有量を1mg/kgになるように調整した牛糞と発酵鶏糞由来の肥料の混合物のクロピラリド含有量を、検出限界である0.01mg/kg未満にするためには、前記肥料の重量に対する前記牛糞の重量の割合が1:1~1:3が好適である。但し、この割合は、牛糞に含まれるクロピラリド含有量に比例して発酵鶏糞由来の肥料が全体に占める割合を下げることができる。例えば、非特許文献2に示された、国内の乳用牛の牛糞堆肥に含まれるクロピラリド含有量の最高値は0.033mg/kgであり、この場合、前記肥料の重量に対する前記牛糞の重量の割合が1:7であっても、計算上、検出限界未満にできる。
また、前記肥料がアミノ酸自動分析法で測定した天然アミノ酸含量が90mg/100g以上である天然アミノ酸肥料であると好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発酵動物糞由来の肥料を利用して、牛糞と混合して堆肥化するという簡単な方法で牛糞堆肥におけるクロピラリドの含有量を低減することが可能となる。したがって、クロピラリドに特に高い感受性を示すトマトなどの植物の生育において、生育障害が発生することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】天然アミノ酸肥料の製造方法を示すフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る牛糞堆肥におけるクロピラリドの分解方法を示すフロー図である。
【
図4】牛糞堆肥に対して天然アミノ酸肥料の量を変化させて堆肥化した際のクロピラリドの量を示すグラフである。
【
図5】全体重量に含まれるクロピラリド含有量を検出限界未満にするために必要なアミノメイトの割合を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)に係る家畜糞堆肥製造方法について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本明細書において、単位「%」の表記は、特に断らない限り、重量%を意味する。なお、本願明細書において、○~△は、○以上△以下を意味する。
【0018】
<天然アミノ酸肥料の製造方法>
本実施形態の牛糞堆肥におけるクロピラリドの分解剤としての天然アミノ酸肥料の製造方法は、動物糞に、酸素を利用する通性嫌気性微生物及び/又は好気性微生物、もみ殻等の副資材、鉄を含む鉄ミネラル処理液を添加した後、公知の発酵設備を用いて好気的発酵を施す方法である。
【0019】
動物糞とは、動物の排泄物をいう。動物には、鶏、豚、牛、馬、羊、山羊等の家畜、犬、猫、齧歯類等のペットや、動物園で飼育されている動物、人等を含み、主に、哺乳類及び鳥類である。
【0020】
本実施形態では、微生物として、動物糞の堆肥化に一般的に用いられる公知の通性嫌気性微生物及び/又は好気性微生物を用いる。微生物としては、例えば、通性嫌気性菌である乳酸菌、好気性菌である枯草菌(Bacillus subtilis)等を用いることができる。
【0021】
乳酸菌としては、例えば、ラクトバシラス属(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム属(Bifidobacterium)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、ラクトコッカス属(Lactococcus)、ペディオコッカス属(Pediococcus)、リューコノストック属(Leuconostoc)等を用いることができる。
【0022】
また、好気性菌として、枯草菌(Bacillus subtilis)の代わり又は枯草菌と共に、例えば、こうじ菌、乳酸桿菌、乳酸球菌、他のバチルス属の菌を用いてもよい。アンモニアを窒素源とする細菌類であれば、用いることができる。また、これらの菌を複数組み合わせた複合菌体群をもちいてもよい。
【0023】
図1に、天然アミノ酸肥料の製造方法(天然アミノ酸肥料を用意する工程)のフロー図を示す。本実施形態の天然アミノ酸肥料の製造方法は、玄武岩および安山岩を含む群からなる少なくとも一の火成岩由来の残積性土壌を無機酸で抽出してなり、金属中で鉄を最も多く含み、該鉄が液中で、pH5より高いpHで、Fe(OH)
3として存在する液を、鉄含有ミネラル液として、生の動物糞に添加するミネラル液添加工程(ステップS12)と、動物糞と鉄含有ミネラル液との混合物を、通気しながら撹拌することにより、天然アミノ酸含量を増加させながら発酵させる工程(ステップS13)と、を行い、ミネラル液添加工程(ステップS12)の前に、生の動物糞に、微生物と、発酵中の通気性を改善する副資材とを添加する微生物添加工程(ステップS11)を行い、ミネラル液添加工程(ステップS12)において、微生物を添加する。
【0024】
<家畜糞堆肥製造方法(牛糞堆肥におけるクロピラリドの分解方法)>
図2に、本実施形態に係る家畜糞堆肥製造方法のフロー図を示す。家畜糞堆肥製造方法は、肥料を用意する工程(ステップS1)と、前記肥料を牛糞に添加する工程(ステップS2)と、前記肥料と前記牛糞との混合物を、通気しながら撹拌することにより、クロピラリドの含有量を低下させながら発酵させる発酵工程(ステップS3)と、を行うことを特徴とするものである。
【0025】
肥料を用意する工程(ステップS1)では、特許6098867に示された方法で製造した発酵動物糞由来の天然アミノ酸肥料を用意する。例えば、動物糞として鶏糞を用いたアミノ酸を高含有する発酵鶏糞堆肥である株式会社リオン製の商品名「アミノメイト」を使用すると好適である。
【0026】
肥料を牛糞に添加する工程(ステップS2)では、好ましくは、天然アミノ酸肥料の重量に対する牛糞の重量の割合が1:1~1:15、より好ましくは1:1~1:10、さらに好ましくは1:1~1:5、特に好ましくは1:1~1:3となるように添加して混合する。クロピラリドの含有量を低減できる量であれば、牛糞に添加する天然アミノ酸肥料の量を適宜調整することが可能である。
【0027】
発酵工程(ステップS3)では、肥料と牛糞との混合物を、通気しながら撹拌することにより、クロピラリドの含有量を低下させながら発酵させる。このとき、牛糞堆肥におけるクロピラリドの含有量が0.01mg/kg未満(検出限界未満)であると好適である。
【0028】
本実施形態に係る家畜糞堆肥製造方法(牛糞堆肥におけるクロピラリドの分解方法)によれば、牛糞堆肥に含まれるクロピラリドを一般的な測定方法による検出限界未満まで低減することが可能となる。
【0029】
<牛糞堆肥におけるクロピラリドの分解剤>
以上の天然アミノ酸肥料の製造方法によって製造された天然アミノ酸肥料は、牛糞堆肥におけるクロピラリドの分解剤として用いることが可能である。本実施形態の天然アミノ酸肥料は、水分15~25重量%,好ましくは、水分17~24重量%で、糞臭が完全に除去されている。また、本実施形態の天然アミノ酸肥料は、粗タンパク質量が、一般の発酵動物糞よりも多く、少なくとも18種の遊離アミノ酸の含有量が、一般の発酵動物糞よりも高い。
【0030】
本実施形態の天然アミノ酸肥料は、20種の遊離アミノ酸のうちアスパラギン、グルタミンを除く18種の遊離アミノ酸含量の合計が、80mg/100g以上、400mg/100g以下,好ましくは、90mg/100g以上、350mg/100g以下,更に好ましくは、100mg/100g以上、300mg/100g以下,更に好ましくは、120mg/100g以上、270mg/100g以下である。
【0031】
特に、遊離グルタミン酸含量が、15mg/100g以上、50mg/100g以下、好ましくは、18mg/100g以上、40mg/100g以下である。また、遊離ロイシン含量が、13mg/100g以上、40mg/100g以下、好ましくは、14mg/100g以上、30mg/100g以下である。
【0032】
以上をまとめると、本実施形態の牛糞堆肥におけるクロピラリドの分解剤は、動物糞に、火成岩由来の残積性土壌に無機酸を添加して抽出した鉄含有ミネラル液を添加し、発酵させることによってアミノ酸自動分析法で測定した天然アミノ酸含量が90mg/100g以上であることを特徴とするものである。このとき、動物糞が鶏糞であると好適である。
【実施例0033】
以下、本発明の家畜糞堆肥製造方法を、実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
<実施例1:発酵鶏糞由来の天然アミノ酸肥料>
上記発酵動物糞を含む天然アミノ酸肥料の製造方法にしたがって得られる、実施例1の発酵鶏糞由来の天然アミノ酸肥料として、株式会社リオン製の商品名「アミノメイト」を用いた。
天然アミノ酸肥料である「アミノメイト」の詳細な製造方法は、特許6249536号公報参照。
【0035】
実施例1の天然アミノ酸肥料は、アミノ酸自動分析法で測定した天然アミノ酸含量が90mg/100g以上であった。
【0036】
<実験1:クロピラリドの分解>
実験に用いた購入した試薬は、以下の通りである。
CAS RN:1702-17-6
製品コード: D4117
3,6-Dichloro-2-pyridinecarboxylic Acid(クロピラリド)
規格含量:98.0%、1g
製造元:東京化成工業株式会社
【0037】
<クロピラリド水溶液の調製>
1gの試薬ビンから、0.1g以下のクロピラリドを測り取った。測りとった重量をxgとした。これを一旦、1mLのメタノールに溶かした後。x×1000倍量(mL)の蒸留水に加えて、0.1mg/mL濃度のクロピラリド水溶液を調製した。
【0038】
国内でサンプリングされた牛糞堆肥に含まれるクロピラリド濃度の最高値は、肉用牛(肥育・繁殖一貫)の糞尿を主な原料とした堆肥で検出された0.38mg/kgである(非特許文献2)。本実施例では、堆肥材料である牛糞堆肥及びアミノメイトの総重量を3kgとし、これに対して各試験区共、30mLの上記クロピラリド水溶液(クロピラリド3mg相当)を添加した。その結果、クロピラリドの終濃度は各試験区共1.0mg/kgになり、非特許文献2に示された牛糞堆肥に含まれるクロピラリド濃度の最高値の約2.6倍に相当する。
【0039】
(作業内容)
堆肥製造装置に入れる前に
図3に示す牛糞の重量を正確に測定した。牛糞を測定した後、クロピラリド水溶液30mLを、偏りが生じないように注意しつつ牛糞にふりかけた。クロピラリド水溶液を牛糞にふりかけたら、ハンドショベルでよく混ぜた。その後は、堆肥製造装置に、クロピラリド水溶液をふりかけた牛糞を投入し、
図3に示す通りの重量の天然アミノ酸肥料(アミノメイト)を加えて発酵させた。アミノメイトと牛糞堆肥の比(アミノメイトの割合)が、それぞれ、1:1(1/2)、1:3(1/4)、1:7(1/8)、1:15(1/16)となる4つの試験区を設け、堆肥製造装置は、予め60度に加温しておいた。各試験区は、60度で撹拌しながら、24時間インキュベートした後、堆肥中のクロピラリド含有量を測定した。
【0040】
(クロピラリドの分析機関および分析法)
・分析機関:株式会社食環境衛生研究所
・分析法:独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の「肥料等試験法」の8.2.b 高速液体クロマトグラフタンデム質量分析法(微量クロピラリド分析法(1))を用いた。
・クロピラリドの検出限界:0.01mg/kg
【0041】
結果を
図3に示す。鶏糞由来の天然アミノ酸肥料(クロピラリドの分解剤)を牛糞と混合して堆肥化するという簡単な方法で、アミノメイトを加えたすべての試験区で堆肥のクロピラリドの含有量を低減することができた。このとき、アミノメイトの重量に対する牛糞の重量の割合が1:1~1:3であるとクロピラリドを検出限界未満にすることができ、好適であることが分かった。
【0042】
図3の結果を
図4に示す。グラフから求められる近似曲線の式は、以下のとおりである。
y=19.2x
2-9.68x+1.22
この時、yは、本特許技術で処理する前のアミノメイトを含む全体重量に含まれるクロピラリド含有量(mg/kg)、xは、アミノメイトの添加割合(アミノメイト重量/全体重量)である。
この式は、全体重量に含まれるクロピラリド含有量を1.0mg/kgに設定した時に得られたものであるから、アミノメイトの添加割合は、元々の牛糞に含まれるクロピラリド濃度に正比例することは明らかである。
全体重量(牛糞とアミノメイトの混合物)に含まれるクロピラリド含有量をz(mg/kg)とした時、堆肥中のクロピラリド含有量を検出限界未満にするためには
0.01<(19.2x
2-9.68x+1.22)/(1/z)
の式を解くことで、アミノメイトの添加割合xを求めることができる。
【0043】
上記の式で求められる、全体重量に含まれるクロピラリド含有量を検出限界未満にするために必要なアミノメイト割合を
図5に示す。全体重量に含まれるクロピラリド含有量が0.4mg/kgの時、堆肥中のクロピラリド含有量を検出限界未満にするためには、アミノメイト割合は0.216でよく、堆肥中のクロピラリド含有量が0.1mg/kgの時、アミノメイト割合は0.177でよく、堆肥中のクロピラリド含有量が0.015mg/kgの時、アミノメイト割合はわずか0.068でよい。
【0044】
以上のように、本発明によれば、牛糞を堆肥化する際、発酵動物糞由来の天然アミノ酸肥料を添加するという簡単な方法で、堆肥中のクロピラリドを検出限界未満に低減することができる。