(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045990
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】車両用ロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/66 20140101AFI20230327BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230327BHJP
B60R 3/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
E05B81/66
B60N2/90
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154648
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】近藤 誠人
(72)【発明者】
【氏名】笠原 龍二
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 真一
(72)【発明者】
【氏名】上倉 明
(72)【発明者】
【氏名】塚原 貴宗
(72)【発明者】
【氏名】阿部 和広
【テーマコード(参考)】
2E250
3B087
3D022
【Fターム(参考)】
2E250HH01
2E250JJ47
2E250KK01
2E250LL00
2E250PP02
2E250PP04
2E250PP05
2E250PP10
2E250QQ02
2E250SS08
2E250SS12
2E250UU03
2E250VV01
3B087DE10
3D022AA02
3D022AC01
3D022AD06
3D022AE10
(57)【要約】
【課題】煩雑な作業を要することなく、第1の姿勢にある可動搭載物が不用意に第2の姿勢に移動する事態を防止する。
【解決手段】格納姿勢に配置されたスロープ装置のストライカCに噛み合うことにより、スロープ装置の使用姿勢への移動を制限するものであって、噛合位置及び開放位置の間を移動するようにベースプレート10の内表面10aに沿って移動可能に配設されたラッチ20と、噛合位置に配置されたラッチ20の周面に係合する阻止位置及びストライカCの開放位置への移動を許容する許容位置の間を移動するようにベースプレート10の内表面10aに沿って移動可能に配設されたラチェット30と、ベースプレート10の内表面10aにおいてラッチ20の外周となる部分に設けられ、ラッチ20が噛合位置に配置された場合に検出信号を出力する検出スイッチ80A,80Bとを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体に対して第1の姿勢及び第2の姿勢となるように移動可能に配設された可動搭載物と、前記車両本体とのいずれか一方に配設され、前記可動搭載物が前記第1の姿勢に配置された状態でいずれか他方に配設されたストライカに噛み合うことにより、前記可動搭載物の前記第2の姿勢への移動を制限する車両用ロック装置であって、
前記ストライカが進入される進入溝を有したベースプレートと、
前記ストライカに噛み合う噛合位置及び前記ストライカを開放する開放位置の間を移動するように前記ベースプレートの一方の表面に沿って移動可能に配設されたラッチと、
前記噛合位置に配置されたラッチの周面に係合して前記開放位置への移動を阻止する阻止位置及び前記ストライカの前記開放位置への移動を許容する許容位置の間を移動するように前記ベースプレートの一方の表面に沿って移動可能に配設されたラチェットと、
前記ベースプレートの一方の表面において前記ラッチの外周となる部分に設けられ、前記ラッチが前記噛合位置に配置された場合に検出信号を出力する検出センサと
を備えたことを特徴とする車両用ロック装置。
【請求項2】
前記ベースプレートの側縁部には、一方の表面から立設するようにフランジ部が設けられ、前記検出センサから延在するハーネスが前記フランジ部に沿って配線されるとともに、前記フランジ部に結束されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ロック装置。
【請求項3】
前記ベースプレートの一方の表面には、前記検出センサが2つ並べて配設され、
前記ラッチが前記噛合位置に配置された場合に前記検出センサのそれぞれから検出信号が出力されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ロック装置。
【請求項4】
一端が前記ラチェットに連係した状態で前記ベースプレートの表面に沿って延在され、他端を介して軸方向に移動された場合に前記ラチェットを前記阻止位置から前記許容位置に移動させる操作ロッドをさらに備え、
前記ベースプレートにおいて前記操作ロッドの移動範囲から離隔した部分に前記検出センサが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ロック装置。
【請求項5】
前記ベースプレートには、表面が前記車両本体の内壁面に沿う状態で前記車両本体に取り付けるための取付部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、例えば可倒式のシートのように、シートバックが起立した姿勢と、前方に倒れてシートクッションに重ね合わされた姿勢とに移動するように取り付けられたものがある。この種のシートには、起立した姿勢にあるシートバックが不用意に前方に倒れないようにするため、車両本体との間にロック装置が設けられている。ロック装置は、車両本体及びシートバックのいずれか一方に設けられ、シートバックが起立した際にいずれか他方に設けられたストライカに噛み合うことにより、例えば急制動時においても、前方に倒れないようにシートバックを起立した姿勢に維持するように機能している。この種のロック装置としては、ストライカに噛み合うラッチと、ラッチが所定の係合位置まで回転した場合に係合することによってラッチの回転を阻止し、ラッチとストライカとの噛合状態を維持するラチェットとを備えるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のロック装置では、シートバックが起立した姿勢よりもわずかに前方に倒れた姿勢となっている場合、ストライカとラッチとの噛み合いが不十分となり、ラッチがラチェットとの係合位置まで回転していない状態が生じ得る。しかしながら、外観上においては、シートバックの姿勢を正確に把握することが困難であり、わずかに前方に倒れている場合であっても起立した姿勢にあると誤認する懸念がある。こうした状況下にあっては、ロック装置が正常に動作しないため、急制動時にシートバックが前方に倒れる事態を招来するおそれがある。上述の問題は、運転者がシートバックの状態を都度確認すれば解決することができるものの、車両を運転する際の作業が煩雑化するのは否めない。なお、上述した問題は、可倒式のシートに限らず、バックドアから車外に突出した姿勢と、車内に格納された姿勢となる車椅子用のスロープ装置や車椅子の昇降装置等々、使用状態と不使用状態とで姿勢が変化する可動搭載物であれば同様に生じ得るものである。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、煩雑な作業を要することなく、第1の姿勢にある可動搭載物が不用意に第2の姿勢に移動する事態を防止することのできる車両用ロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両用ロック装置は、車両本体に対して第1の姿勢及び第2の姿勢となるように移動可能に配設された可動搭載物と、前記車両本体とのいずれか一方に配設され、前記可動搭載物が前記第1の姿勢に配置された状態でいずれか他方に配設されたストライカに噛み合うことにより、前記可動搭載物の前記第2の姿勢への移動を制限する車両用ロック装置であって、前記ストライカが進入される進入溝を有したベースプレートと、前記ストライカに噛み合う噛合位置及び前記ストライカを開放する開放位置の間を移動するように前記ベースプレートの一方の表面に沿って移動可能に配設されたラッチと、前記噛合位置に配置されたラッチの周面に係合して前記開放位置への移動を阻止する阻止位置及び前記ストライカの前記開放位置への移動を許容する許容位置の間を移動するように前記ベースプレートの一方の表面に沿って移動可能に配設されたラチェットと、前記ベースプレートの一方の表面において前記ラッチの外周となる部分に設けられ、前記ラッチが前記噛合位置に配置された場合に検出信号を出力する検出センサとを備えたことを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上述した車両用ロック装置において、前記ベースプレートの側縁部には、一方の表面から立設するようにフランジ部が設けられ、前記検出センサから延在するハーネスが前記フランジ部に沿って配線されるとともに、前記フランジ部に結束されていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述した車両用ロック装置において、前記ベースプレートの一方の表面には、前記検出センサが2つ並べて配設され、前記ラッチが前記噛合位置に配置された場合に前記検出センサのそれぞれから検出信号が出力されることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述した車両用ロック装置において、一端が前記ラチェットに連係した状態で前記ベースプレートの表面に沿って延在され、他端を介して軸方向に移動された場合に前記ラチェットを前記阻止位置から前記許容位置に移動させる操作ロッドをさらに備え、前記ベースプレートにおいて前記操作ロッドの移動範囲から離隔した部分に前記検出センサが設けられていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述した車両用ロック装置において、前記ベースプレートには、表面が前記車両本体の内壁面に沿う状態で前記車両本体に取り付けるための取付部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ラッチが噛合位置に配置された場合にラチェットがラッチに係合するとともに検出センサから検出信号が出力されるため、可動搭載物の姿勢を都度確認しなくても、第1の姿勢にある可動搭載物が不用意に第2の姿勢に移動する事態を招来するおそれがなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である車両用ロック装置の内部構造を示すもので、ラッチが開放位置に配置された状態を車両の内部側から見た側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した車両用ロック装置においてラッチが噛合位置に配置された状態を車両の内部側から見たもので、(a)は外観側面図、(b)は内部構造を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した車両ロック装置を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した車両用ロック装置においてラッチが噛合位置に配置された状態を車両の内部側において斜め上方から見たもので、(a)は外観斜視図、(b)は内部構造を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した車両用ロック装置においてラッチが噛合位置に配置された状態を車両の後方側から見たもので、(a)は外観図、(b)は内部構造を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示した車両用ロック装置においてラッチが噛合位置に配置された状態を車両の下方側から見たもので、(a)は外観図、(b)は内部構造を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した車両用ロック装置においてラッチが噛合位置に配置された状態を車両の前方側から見た外観図である。
【
図8】
図8は、
図1に示した車両用ロック装置においてラッチが噛合位置に配置された状態を車両の上方側から見た外観図である。
【
図9】
図9は、
図1に示した車両用ロック装置を搭載した車両を後方側から見たもので、(a)は可動搭載物であるスロープ装置が格納姿勢となった状態の図、(b)はスロープ装置が使用姿勢となった状態の図である。
【
図10】
図10は、
図9に示したスロープ装置を示すもので、(a)は後方側から見た図、(b)は上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る車両用ロック装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1~
図8は、本発明の実施の形態である車両用ロック装置を示すものである。ここで例示する車両用ロック装置は、
図9に示すように、後部の開口が上部ヒンジのバックドアAによって開閉される四輪自動車に搭載されるものである。図には明示していないが、バックドアAは、電動式のものであり、運転席のスイッチやリモコンのスイッチ操作によって開閉することが可能である。またこの車両には、後部の開口から車椅子のまま乗降することができるように、車両本体Sの内部にスロープ装置(可動搭載物)Bが設けてある。スロープ装置Bは、例えば2枚のスロープ板B1,B2を互いに折り畳み可能に連結したもので、
図9(a)に示すように、不使用時において連結部が山となるように折り畳むことにより、起立した格納姿勢(第1の姿勢)となって車両本体Sの内部に収容することが可能となる。この状態においては、スロープ装置Bとの干渉を招来することなくバックドアAを閉じることができる。一方、車椅子の乗降時においては、
図9(b)に示すように、バックドアAを開いた状態に維持し、2枚のスロープ板B1,B2がほぼ同一の平面上となるように引き延ばした使用姿勢(第2の姿勢)とすれば、車両本体Sのフロアから路面までの間に緩やかなスロープを構成することができる。この車両には、一方のスロープ板B2の片側部にストライカCが設けてある一方、車両本体Sの内部側面に車両用ロック装置Dが配設してある。
【0014】
ストライカCは、
図10に示すように、断面が円形状の鋼材によってU字状に構成したもので、ブラケットEを介してスロープ板B2の一側面に固定してある。図からも明らかなように、本実施の形態では、スロープ板B1,B2を折り畳んだ場合に、車両の後方側に配置されるスロープ板B2の上方となる部分に、ストライカCがほぼ水平面上においてU字となるように取り付けてある。
【0015】
車両用ロック装置Dは、
図1~
図8に示すように、ベースプレート10の一方の表面(以下、内表面10aという)にラッチ20及びラチェット30を配設することによって構成してある。以下、車両用ロック装置の構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。なお、以下においては便宜上、車両に搭載した状態の姿勢でそれぞれの方向を特定し、かつ図中においても車両搭載時の方向を矢印で示すこととする。
【0016】
ベースプレート10は、車両の前後に沿って上下に延在するように配設される略平板状の基板部10Aと、基板部10Aにおいて車両の前方側に配置される前縁部から内表面10a側に立設したフランジ部10Bとを有したもので、例えば金属の板材によって一体に成形してある。基板部10Aは、車両の前方側に配置される前側部分10Aaに対して車両の後方側に配置される後側部分10Abが幅広となるように構成してある。この基板部10Aには、後側部分10Abのほぼ中央となる部分にストライカ進入溝11が設けてあるとともに、ストライカ進入溝11を挟んで上下両側となる部分に取付孔(取付部)12,13が設けてある。ストライカ進入溝11は、上述したストライカCを収容可能とする幅の切欠であり、後縁部から車両の前方に向けてほぼ水平の直線状に延在している。ストライカ進入溝11の長さは、基板部10Aにおいて前縁部から後縁部までの寸法の1/2よりわずかに小さい。取付孔12,13は、基板部10Aの後側部分10Abにおいて前側部分10Aaから上下に突出する部分に形成した貫通孔である。図示の例では、下方の取付孔12がほぼ円形状に形成してある一方、上方の取付孔13が上下に沿ってわずかに長孔状に形成してある。
【0017】
ラッチ20は、フック部21、ストライカ当接部22、ラチェット当接部23、スイッチ押圧部24を有した厚板のプレート状を成すもので、車両の左右に沿うラッチ軸25を介してベースプレート10の後側部分10Abに回転可能に配設してある。本実施の形態では、ストライカ進入溝11よりも下方で、車両の前方側となる部分にラッチ軸25が設けてある。上述したフック部21、ストライカ当接部22、ラチェット当接部23、スイッチ押圧部24は、それぞれラッチ軸25から周囲に向けて延在したものである。図には明示していないが、本実施の形態のラッチ20は、金属製のラッチ基部に対してその外表面にモールド樹脂を被覆することによって構成したものである。
【0018】
フック部21は、
図2(b)に示すように、ベースプレート10の内表面10a側から見て、ラッチ20を時計回りに回転させた場合に、ストライカ進入溝11の開口側端部を横切る位置(噛合位置)に配置され、ストライカ進入溝11の開口端部を閉塞するものである。ラッチ20を反時計回りに回転させた場合には、
図1に示すように、フック部21がストライカ進入溝11よりも下方に退避した位置(開放位置)に配置され、ストライカ進入溝11の開口端部が開放されることになる。
【0019】
ストライカ当接部22は、
図2(b)に示すように、ラッチ20が噛合位置に配置された場合に、フック部21との間にストライカCを収容することのできる隙間を確保した状態でストライカ進入溝11の閉塞端部側に配置されるものである。ラッチ20が開放位置に配置された場合には、
図1に示すように、ストライカ当接部22がラッチ軸25よりも車両の後方側においてストライカ進入溝11を横切るように配置されることになる。
【0020】
ラチェット当接部23は、
図2(b)に示すように、ラッチ20が噛合位置に配置された場合に、ストライカ当接部22よりも車両の前方側においてストライカ当接部22よりも上方に突出したものである。このラチェット当接部23には、当接面23aが設けてある。当接面23aは、ラッチ20が噛合位置に配置された場合に、車両の後方に向けてほぼ鉛直に延在するように設けてある。
【0021】
スイッチ押圧部24は、ラッチ20が噛合位置に配置された場合に、ストライカ進入溝11よりも下方においてラッチ軸25よりも車両の前方側となる部分に配置されるものである。このスイッチ押圧部24には、表面から突出するようにスプリング係止ピン26が設けてある。
【0022】
ラチェット30は、ラッチ20とほぼ同じ板厚のプレート状を成すもので、その基端部がラッチ軸25と平行となるラチェット軸31を介してベースプレート10の後側部分10Abに回転可能に配設してある。本実施の形態では、ストライカ進入溝11よりも上方で、ラッチ軸25よりも車両の後方側となる部分にラチェット軸31が設けてあり、ラチェット30の先端部がラチェット軸31から車両の前方に向けて延在している。ラチェット30の延在端部は、ラッチ軸25を超えてベースプレート10の前側部分10Aaに達している。ラチェット30の延在端部には、スプリング係止ピン32及び操作ロッド40が設けてある。スプリング係止ピン32は、ラッチ20に設けたスプリング係止ピン26と平行となるように設けたものである。これらスプリング係止ピン26,32の間には、ロックスプリング50が配設してある。ロックスプリング50は、内表面10a側から見て、ベースプレート10に対してラッチ20を時計回りに回転させるとともに、ラチェット30を反時計回りに回転させるように機能する引っ張りスプリングである。ラッチ20が開放位置に配置されている場合には、ロックスプリング50のバネ力により、ラチェット30の周面がラッチ20のラチェット当接部23に常時当接した状態に維持される(ラチェット30の許容位置)。これに対してラッチ20が噛合位置に配置された場合には、ラチェット30が図において時計回りに回転し、ストライカ当接部22の周面に当接した状態となる(ラチェット30の阻止位置)。
【0023】
操作ロッド40は、スプリング係止ピン32を介してラチェット30の延在端部に連結したもので、ラチェット30から上方に向けて延在している。この操作ロッド40は、上端部がベースプレート10を超えて上方に延在するだけの長さを有している。
【0024】
ラチェット30においてラッチ20に対向する部分には、ラッチ突当面30aが設けてある。ラッチ突当面30aは、車両の前方に向けて延在するように設けたもので、ラッチ20が噛合位置に配置され、ラチェット30がラッチ20に近接する方向に回転した場合に、ラッチ20の当接面23aに当接することにより、ロックスプリング50のバネ力に抗してラッチ20を噛合位置に維持するように機能する。本実施の形態では、ラチェット30においてラッチ20に対向する面がストライカ当接部22の周面に当接した状態で当接面23aに当接することができるようにラッチ突当面30aが構成してある。
【0025】
上述したラッチ20、ラチェット30、ロックスプリング50は、ベースプレート10に支持させたバックプレート60との間の収容空間に収容してある。バックプレート60は、ロックカバー部61、スプリングカバー部62、2つの接合板部63,64を有したもので、ベースプレート10と同様の金属の板材によって一体に成形してある。
【0026】
ロックカバー部61は、ベースプレート10とほぼ平行となる平板状を成し、ラッチ20及びラチェット30を覆うものであり、ラッチ軸25及びラチェット軸31を介してベースプレート10に取り付けてある。ロックカバー部61においてベースプレート10のストライカ進入溝11に対応する部分には、ストライカ進入溝11と同様のストライカ進入溝65が設けてある。
【0027】
スプリングカバー部62は、ロックスプリング50を覆う部分であり、ロックカバー部61において車両の前方側に位置する縁部から車両の内方に向けて屈曲した後、車両の前方に向けて屈曲することによって構成してある。図からも明らかなように、スプリングカバー部62の上部には、ラチェット30のスプリング係止ピン32を外部に露出させる切欠部62aが設けてある。
【0028】
接合板部63,64は、ロックカバー部61の上縁部及び下縁部に設けたものである。下方の接合板部63は、ロックカバー部61の下縁部からベースプレート10に近接する方向に向けて屈曲した後、下方に向けて屈曲したもので、下端部がベースプレート10の内表面10aに当接している。上方の接合板部64は、ロックカバー部61の上縁部からベースプレート10に近接する方向に向けて屈曲した後、上方に向けて屈曲したもので、上端部がベースプレート10の内表面10aに当接している。これらの接合板部63,64には、ベースプレート10の取付孔12,13に対向する部分に対応するものと同一形状の取付孔66,67が形成してある。
【0029】
バックプレート60のロックカバー部61においてストライカ進入溝65の閉塞端部となる部分には、ホルダー70を介してクッションラバー71が配設してある。クッションラバー71は、ストライカ進入溝11,65に進入したストライカCに当接することにより、ストライカCがベースプレート10及びバックプレート60に衝突することを防止するためのものである。クッションラバー71において車両の前方側に位置する端部は、ロックカバー部61とスプリングカバー部62との段差部分に当接している。
【0030】
さらに、車両用ロック装置Dには、ベースプレート10の内表面10aにおいてラチェット30よりも下方となる部分に2つの検出スイッチ(検出センサ)80A,80Bが配設してある。検出スイッチ80A,80Bは、それぞれスイッチ本体81に対して接触子82が進退可能に配設され、スイッチ本体81に対する接触子82の進退位置に応じた検出信号を出力するものである。これらの検出スイッチ80A,80Bは、接触子82がラッチ20の周面に対向する状態でスイッチ本体81を介してベースプレート10の前側部分10Aaに固定してある。より具体的に説明すると、ベースプレート10に対して検出スイッチ80A,80Bを固定する場所は、ラッチ20の外周であってラッチ20が噛合位置に配置された場合、
図2(b)に示すように、接触子82がそれぞれラッチ20の周面から離隔し、スイッチ本体81から突出した状態となる一方、ラッチ20が開放位置に配置された場合、
図1に示すように、接触子82がそれぞれラッチ20のスイッチ押圧部24によって押圧され、スイッチ本体81の内部に押し込まれた状態となる位置である。本実施の形態では、スイッチ本体81に対して接触子82が突出している場合にOFFとなってOFF信号を出力する一方、スイッチ本体81に対して接触子82が押し込まれた場合にONとなってON信号を出力する検出スイッチ80A,80Bを適用している。
【0031】
検出スイッチ80A,80Bから導出されるハーネス83は、ベースプレート10のフランジ部10Bに沿って上方に延在するように配線してあり、フランジ部10Bの上端部において結束バンド84によってフランジ部10Bに連結してある。ハーネス83の先端部には、それぞれコネクタ85が取り付けてある。
【0032】
上記のように構成した車両用ロック装置Dは、ストライカ進入溝11,65が車両後方に開口し、かつ操作ロッド40が上方に向けて延在した状態で、車両本体Sの左側の側面に取り付けられることになる。車両用ロック装置Dを車両本体Sに取り付けるには、ベースプレート10及びバックプレート60に設けた取付孔12,13,66,67を介して車両本体Sのボディに取付ネジを螺合すれば良い。その後、検出スイッチ80A,80Bからの検出信号が車両のコントローラ(図示せず)に入力されるようにコネクタ85を介して検出スイッチ80A,80Bを電気的に接続し、車両用ロック装置Dを内装材で覆えば良い。このとき、内装材に適宜切欠を設けることでストライカ進入溝11,65が外部に露出し、かつ操作ロッド40が外部に突出するように配置する。上述の操作の際、この車両用ロック装置Dでは、ハーネス83がベースプレート10のフランジ部10Bに結束されているため、その取り扱いを容易化することができるようになる。
【0033】
いま、図(b)に示すように、スロープ装置Bのスロープ板B1,B2がバックドアAから外部に引き出された使用姿勢にあるとする。このとき、車両用ロック装置Dにおいては、
図1に示すように、ラッチ20が開放位置に配置され、ストライカ進入溝11,65へのストライカCの進入が可能な状態となっている。ラッチ20が開放位置に配置されている場合には、2つの検出スイッチ80A,80Bがそれぞれラッチ20のスイッチ押圧部24によってON状態となるため、例えばコントローラを通じて運転席やリモコンに設けたランプ(図示せず)を点灯する等、車両の運転席においてラッチ20が開放位置にあることを報知することができる。従って、運転者は、運転席に座ったままの状態においてもバックドアAの閉じ操作が禁止であることを認識することができ、バックドアAとスロープ板B1,B2とが衝突するような事態を招来するおそれがなくなる。
【0034】
上述の状態から乗降が完了し、
図9(a)に示すように、スロープ装置Bのスロープ板B1,B2を折り畳んで格納姿勢とすると、スロープ板B1,B2に設けたストライカCがストライカ進入溝11,65に進入することになる。ストライカ進入溝11,65にストライカCが進入した車両用ロック装置Dでは、ストライカCがストライカ当接部22に当接することにより、ロックスプリング50のバネ力に抗してラッチ20が
図1において時計回りに回転し、
図2(b)に示すように、フック部21がストライカ進入溝11,65の開口端部側に横切った状態に移動する。この間、ラチェット30においては、ラチェット当接部23が当接することにより、ロックスプリング50のバネ力に抗して
図1において反時計回りに回転する。ラッチ20が噛合位置まで回転すると、その時点でロックスプリング50のバネ力によってラチェット30が時計回りに回転し、ラッチ突当面30aが当接面23aに対向した状態となるため、ラッチ20の開放位置への移動が阻止される。この状態においては、ストライカCよりもフック部21がストライカ進入溝11,65の開口端部側においてストライカ進入溝11,65を横切った状態に維持されるため、ストライカCがストライカ進入溝11,65から逸脱する移動が阻止されることになり、スロープ装置Bが不用意に使用姿勢となるおそれがない。しかも、ラッチ20が噛合位置に配置された場合には、2つの検出スイッチ80A,80BがそれぞれOFFとなり、例えばコントローラを通じて運転席やリモコンに設けたランプが消灯することになる。これにより、車両の運転席においてもラッチ20が噛合位置にあり、スロープ装置Bが格納姿勢になったことを認識することができるようになる。従って、運転者は、運転席に座ったままの状態においてもバックドアAの閉じ操作が可能であることを認識することができ、バックドアAとスロープ板B1,B2とが衝突するような事態を招来することなくバックドアAを閉じることが可能となる。
【0035】
上述の状態から再度スロープ装置Bを使用姿勢に移行するには、バックドアAを開いた状態で車両用ロック装置Dの上部に延出した操作ロッド40を上方に移動させれば良い。すなわち、操作ロッド40が上方に移動すると、ロックスプリング50のバネ力に抗してラチェット30がラッチ20から離隔する方向に回転し、ラッチ突当面30aと当接面23aとの当接状態が解除される。この結果、ロックスプリング50のバネ力によりラッチ20が開放位置に移動し、ストライカCがストライカ進入溝11,65から逸脱可能となるため、スロープ板B1,B2を引き出せば、スロープ装置Bを使用姿勢とすることができる。
【0036】
ここで、スロープ板B1,B2の折り畳み操作が不十分で、ストライカCがストライカ進入溝11,65に進入した場合であっても、ラッチ20が噛合位置まで回転しない状態が生じ得る。このような状態においては、ラチェット30のラッチ突当面30aが当接面23aに対向しないため、ストライカCがストライカ進入溝11,65から逸脱可能である。このため、車両に急発進や急加速等の慣性力が加わると、スロープ装置Bのスロープ板B1,B2が折り畳まれた状態から引き延ばされた状態に移行するおそれがある。しかしながら、上述の車両用ロック装置Dによれば、スロープ板B1,B2が折り畳まれた状態であっても、ラッチ20が噛合位置に配置されていない場合には、検出スイッチ80A,80BがON状態のままとなるため、運転席やリモコンに設けたランプが点灯したままとなる。従って、運転者は、スロープ板B1,B2が折り畳まれていても、スロープ装置Bが格納姿勢にないことを認識することができ、例えば、ランプが消灯するまでスロープ板B1,B2の折り畳み操作をやり直す等して、ラッチ20を確実に噛合位置に移動させることができるため、上述問題を招来するおそれがなくなる。
【0037】
しかも、上述の車両用ロック装置Dによれば、検出スイッチ80A,80Bをラッチ20の外周となる位置に設けているため、ラッチ軸25の軸心に沿った方向の寸法が増える事態を招来することがない。従って、車両の側面に取り付けた状態であっても室内側への突出量が増えることがなく、省スペース化に有利となる。加えて、上述の車両用ロック装置Dでは、ベースプレート10の内表面10aにおいてラチェット30よりも下方となる部分に検出スイッチ80A,80Bが配設してあるため、換言すれば、操作ロッド40の移動範囲から離隔した部分に検出スイッチ80A,80Bが配設してあるため、操作ロッド40の操作によっては検出スイッチ80A,80Bから誤った検出信号が出力される懸念がなく、信頼性の点で有利となる。
【0038】
なお、上述した実施の形態では、スロープ装置が格納姿勢となった場合にこれを維持するための車両用ロック装置を例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両に対して着座姿勢(第1の姿勢)と格納姿勢とに移動するシートを着座姿勢に維持するための車両用ロック装置としても適用することが可能である。ラッチやラチェットの詳細構成についても実施のものに限らず、ラッチやラチェットを回転させるスプリングについても個別に設けるようにしても構わない。また、検出センサとしては接触子を動作させるも検出スイッチである必要はなく、例えば光学的にラッチの噛合位置を検出するものであっても良い。なお、検出センサは、必ずしも2つ設ける必要はなく、1つあれば十分である。さらに、検出センサは、ラッチが噛合位置に配置されている場合のみを検出できれば良い。
【符号の説明】
【0039】
10 ベースプレート
10B フランジ部
10a 内表面
11,65 ストライカ進入溝
12,13,66,67 取付孔
20 ラッチ
24 スイッチ押圧部
30 ラチェット
40 操作ロッド
80A,80B 検出スイッチ
81 スイッチ本体
82 接触子
83 ハーネス
84 結束バンド
B スロープ装置
C ストライカ
D 車両用ロック装置
S 車両本体