(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023045997
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/37 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
B41J2/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154657
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 徹也
【テーマコード(参考)】
2C066
【Fターム(参考)】
2C066AB09
2C066BF01
2C066CB02
2C066CB06
2C066CD24
2C066CF03
(57)【要約】
【課題】従来はサ-マルヘッドに印加する印加電圧を計測してサーマルヘッドに供給する電圧を変化できるDC電源を備えて、サーマルヘッドを流れる電流に応じて印加電圧を制御していた。このため、装置の複雑化やコスト高を招くことになっていた。
【解決手段】サーマルヘッドを使用して印刷を行う印刷装置であって、電池と、商用電源からの電力に基づいて電源を供給する第1電源とを含む複数の電源を有し、前記第1電源からの電力供給がある状態で、前記第1電源から電力が供給される回路のインピーダンスと前記サーマルヘッドを流れる電流値とに基づいて、前記サーマルヘッドに供給される電圧の降下量を取得し、その取得した前記電圧の降下量に応じて前記サーマルヘッドの駆動を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーマルヘッドを使用して印刷を行う印刷装置であって、
電池と、商用電源からの電力に基づいて電源を供給する第1電源とを含む複数の電源と、
前記第1電源からの電力供給がある状態で、前記第1電源から電力が供給される回路のインピーダンスと前記サーマルヘッドを流れる電流値とに基づいて、前記サーマルヘッドに供給される電圧の降下量を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記電圧の降下量に応じて前記サーマルヘッドの駆動を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドを流れる電流値は、前記サーマルヘッドの同時に駆動される抵抗体の数に基づいて取得されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1電源からの電力供給が無い状態で、前記電池から供給される電圧に基づいて検出された前記第1電源から電力が供給される基板内の第1インピーダンスを取得して保持する第1保持手段を、更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第1電源からの電力供給がある状態で、前記サーマルヘッドに電流を流さないときの第1電圧と、前記サーマルヘッドに電流を流したときの第2電圧と前記第1保持手段に保持されている前記第1インピーダンスとに基づいて、前記第1電源から電力が供給される基板外の第2インピーダンスを取得して保持する第2保持手段と、を更に有することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記第1保持手段に保持されている前記第1インピーダンスと、前記第2保持手段に保持されている前記第2インピーダンスとを加算したインピーダンスと、前記サーマルヘッドを流れる電流値との積に基づいて、前記電圧の降下量を取得することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記電圧の降下量により降下した後の前記サーマルヘッドに供給される電圧が基準電圧よりも高い場合は、前記サーマルヘッドを駆動するエネルギーが小さくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記サーマルヘッドを駆動するストローブ信号のパルス幅を短くすることで、前記サーマルヘッドを駆動するエネルギーが小さくなるように制御することを特徴とする請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記電圧の降下量により降下した後の前記サーマルヘッドに供給される電圧が基準電圧よりも低い場合は、前記サーマルヘッドを駆動するエネルギーが大きくなるように制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記サーマルヘッドを駆動するストローブ信号のパルス幅を長くすることで、前記サーマルヘッドを駆動するエネルギーが大きくなるように制御することを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記電池からの電圧を昇圧する昇圧回路を更に有し、前記電池からの電力は前記昇圧回路から供給されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記第1インピーダンスを取得するときにオンされて、前記電池からの電圧を昇圧する昇圧回路の出力を前記第1電源から電力が供給される基板に出力するスイッチング素子を、更に有することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱転写プリンタでは、サーマルヘッドに供給する電圧が一定であるため、記録濃度を変更するためには、記録データを制御したり、サーマルヘッドの通電時間を制御する等の工夫が必要であった。特許文献1は、サ-マルヘッドに印加する印加電圧を計測してサーマルヘッドへ供給する電圧を変化できるDC電源を有することで、サーマルヘッドに印加する電圧を制御して記録濃度を変更できる熱転写プリンタを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来技術では、電源電圧監視用のマイコンや出力電圧を変更できる電源を有しているため、装置の複雑化を招き、またコストの増大を招いていた。
【0005】
本発明の目的は、上記従来技術の課題の少なくとも一つを解決することにある。
【0006】
本発明の目的は、装置の複雑化やコストの増大を抑えて、ヘッドの供給電圧を精度良く検出して、記録を最適化できる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る印刷装置は以下のような構成を備える。即ち、
サーマルヘッドを使用して印刷を行う印刷装置であって、
電池と、商用電源からの電力に基づいて電源を供給する第1電源とを含む複数の電源と、
前記第1電源からの電力供給がある状態で、前記第1電源から電力が供給される回路のインピーダンスと前記サーマルヘッドを流れる電流値とに基づいて、前記サーマルヘッドに供給される電圧の降下量を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記電圧の降下量に応じて前記サーマルヘッドの駆動を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の複雑化やコストの増大を抑えて、ヘッドの供給電圧を精度良く検出して、記録を最適化できるという効果がある。
【0009】
また、電源を2系統以上持つ構成の場合に、電源の差による画像の差異を発生させずに済むという効果がある。
【0010】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。尚、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付図面は明細書に含まれ、その一部を構成し、本発明の実施形態を示し、その記述と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
【
図2】実施形態に係るプリンタの制御系の構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態に係る電源制御回路の構成を説明する図。
【
図4】実施形態に係るプリンタで使用されるサーマルヘッドの構造図。
【
図5】実施形態に係るプリンタの制御部による電源制御回路の基板内のインピーダンスを検知する処理を説明するフローチャート。
【
図6】実施形態に係るプリンタの制御部による電源制御回路の基板外のインピーダンスを検知する処理を説明するフローチャート。
【
図7】実施形態に係るプリンタによるサーマルヘッドの駆動制御を説明するフローチャート。
【
図8】
図7のS705の高電圧制御を説明するフローチャート。
【
図9】
図7のS706の低電圧制御を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これら複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るプリンタ1の外観図である。
【0014】
実施形態に係るプリンタ1は、ノートタイプコンピュータと同様に持ち運び可能に構成されている。プリンタ1の電源は、電池、及び商用電源に接続されたACアダプタから供給される。このプリンタ1は、キーボードや入力制御部を有する入力部13、ディスプレイや表示制御部等を有する表示部14、主走査方向に列設されたサーマルヘッド6の複数の発熱素子を選択的に発熱させることで記録媒体(チューブ、シート等)に印刷処理を施す印刷部10を有している。更にプリンタ1は、記録媒体の搬送方向の下流側に設けられて記録媒体に切断処理を施す切断部7、及びこれら各部を制御する制御部200(
図2参照)を備えている。また、プリンタ1には、記録媒体を搬送するための搬送路が形成されている。
【0015】
入力部13は、ノートタイプコンピュータとほぼ同様に、ファンクションキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー、リターンキー等を有している。オペレータは、これらのキーを操作することで、チューブMを含む記録媒体の種類、サイズ、印刷に関する条件及び切断条件等を入力して、印刷情報及び切断情報等を設定することができる。
【0016】
表示部14のディスプレイは、入力モード等を表示する各種情報の表示エリア、入力部13から入力された文字、数字、記号(以下、文字と略称する)を表示する文字情報表示エリア、文字サイズ等を表示するパラメータ表示エリアの3つの表示エリアを有する。これら各種情報表示エリア及びパラメータ表示エリアはそれぞれ文字情報表示エリアの上下に配置されている。
【0017】
上述の各種情報表示エリアには、入力部13から英数、ローマ字、ひらがなのいずれかで入力するかを表示(選択)する入力モード表示、入力部13から挿入又は上書のいずれかで入力するかを表示する挿入/上書モード表示(編集モード表示)が表示される。また、「印刷媒体の種類」の表示、複数ページの印刷を一回の印刷操作で行うときに、ページ間の区切りをどのように行うかの「カット設定」(半切りの有無、半切り無しの場合は区切り線が実線又は点線又は区切り線無し)も表示される。また、チューブ1本分(ラベル1枚分)の長さを示す「カット長」、文字の位置がセンタリングか左寄せかを示す「文字配置」及びチューブMの左端から先頭の文字までを示す「余白」を表示するカット長/文字配置/余白表示も表示される。更に、現在表示されているページの前に別のページがある場合に表示される前ページ表示、現在表示されているページの後に別のページがある場合に表示される次ページ表示が表示される。そして更に、チューブMの搬送補助をするためのオプションユニット(チューブフィーダ)が接続されているかを表示するチューブフィーダ表示、及び、電源が投入されていることを表示する電源表示等が表示される。
【0018】
またパラメータ表示エリアには、現在何ページ目が表示されているかを数字で表示するページ表示、印刷の向きを「横向き/横書き」、「縦向き/縦書き」、「縦向き/横書き」のいずれかで行うかを表示する印刷の向きが表示される。また文字に枠を付ける場合に、選択した枠囲みの形を表示する枠囲み表示、選択した文字サイズを表示する文字サイズ表示、印刷する行数を表示する行数表示、選択した文字間隔を表示する文字間隔表示が表示される。更に、現在表示されている文字が何頁コピーして印刷されるかを表示する連続印刷表示等が表示される。
【0019】
一方、文字情報表示エリアには、入力部13から入力された文字(厳密には、入力された文字データが所定の変換を経て表示された文字)の文字列が表示される。尚、文字情報表示エリアでは、オペレータが入力しようとする箇所にカーソルが表示される(
図1参照)。
【0020】
印刷部10は、記録媒体を搬送するための搬送ローラ2a,2bと、搬送ローラ2a,2bの下流側でサーマルヘッド6に対向して配置されたプラテンローラ3と、プラテンローラ3の下流側にプラテンローラ3と対向して配置されたピンチローラ4を有している。そしてプラテンローラ3とサーマルヘッド6との間にはインクリボンRが介在している。インクリボンRは、インクリボンカセット8のリボン供給リールから供給され、リボン巻取リールに巻き取られる。
【0021】
搬送ローラ2a,2bの上流側には、図示しないギアを介して搬送ローラ2a、プラテンローラ3及びインクカートリッジ8のリボン巻取リールのスプールを回転駆動させるステッピングモータ5が配置されている。インクカートリッジ8の一側(
図1の左側)で、かつ切断部7の一方の側(
図1の下側)には、アーム(図示せず)を介して、サーマルヘッド6を搬送路から退避させた退避位置と、プラテンローラ3に圧接する印刷位置との間で移動させるステッピングモータ9が配置されている。
【0022】
図1では、記録媒体としてチューブMが装着された状態が示されている。この例に則して説明すると、印刷時には、インクカートリッジ8のインクリボンRを挟んでサーマルヘッド6をチューブMに圧接する。そして入力部13から入力された印刷データに従って、サーマルヘッド6を構成する発熱素子を選択的に通電駆動して発熱させることで、インクリボンRのインクを溶融してチューブMに文字列を1ラインずつ印刷する。また搬送ローラ2a,2bの上流側及びピンチローラ4の下流側には、それぞれ記録媒体の有無及び搬送される記録媒体の先端を検出するための透過一体型センサが配置されている。
【0023】
図2は、実施形態に係るプリンタ1の制御系の構成を示すブロック図である。尚、
図2において、前述の
図1と共通する箇所は同じ参照番号で示している。
【0024】
制御部200は、中央処理装置として高速で機能するCPU210、プリンタ1の基本制御プログラム及びプログラムデータを格納しているROM211、CPU210のワークエリアとして機能するRAM212等を有している。これらCPU210、ROM211、RAM212は内部バス(不図示)を介して接続されている。このような制御部200は、例えばマイクロコンピュータの回路等で構成することができる。
【0025】
制御部200には外部バスが接続されている。この外部バスには、入力部13の入力制御部(不図示)、表示部201の表示制御部(不図示)、印刷部10のサーマルヘッド6、ステッピングモータの動作を制御するドライバ202、センサからの情報を制御するセンサ制御部203が接続されている。ドライバ202には、上述したステッピングモータが接続されており、センサ制御部203には各種センサ(不図示)が接続されている。尚、上述したステッピングモータ5,9はそれぞれ独立したドライバを介して駆動制御され、ここでドライバ203はこれらドライバを総称して示している。
【0026】
また制御部200は、バッファやインターフェース(不図示)を有しており、外部バスを介して、例えば、パーソナルコンピュータ等の上位機器に接続可能である。このため、オペレータは入力部13からの入力に代えて、パーソナルコンピュータからの入力も可能である。更に、RAMカードやUSB等の外部記憶装置を装着することで、これら外部記憶装置に格納されたデータの利用も可能である。更に、このプリンタ1を駆動する電源として、電池205及びACアダプタ204が接続されている。電源制御回路213は、印刷部10のサーマルヘッド6に供給する電圧を制御する。この電源制御回路213の構成は
図3を参照して説明する。不揮発メモリ214は、後述する基板内インピーダンス等を不揮発に記憶する。A/Dコンバータ215は、後述するサーマルヘッドの供給電圧VHをデジタル信号に変換する。CPU210は、このA/Dコンバータ215の出力によりサーマルヘッド6の供給電圧を検出することができる。また、この制御部200は、後述するSIG_C信号等や、サーマルヘッド6にDATA信号等を出力する出力ポート等を備えているが、それらは
図2では省略している。
【0027】
図3は、実施形態に係る電源制御回路213の構成を説明する図である。
【0028】
この電源制御回路213は、電力供給源として電池205とACアダプタ204が接続されている。電源制御回路213は、電源A側(ACアダプタ204側)からVH(サーマルヘッド6に供給する電圧)までに、ノイズ対策用のコイルRaや、電圧供給をオン/オフする為のFET(電界効果トランジスタ)Rb,Rcや、逆流防止用のダイオード(図示せず)等を含む。また電源B側(電池205側)からVHまでには、昇圧回路の前にはFET、ダイオード等が存在するが、昇圧回路301の後には部品が無い為、精度良い電圧を確保できる。その為、電源A側(アダプタ側)のインピーダンスを計測する為に、精度の良い昇圧後の電圧(基準電圧A)を使用することで、精度良くインピーダンスを検出することができる。ここでは基準電圧Aを電源A側に供給するために、昇圧回路301の出力からFET(電界効果トランジスタ)Tr1を1段介して電源A側に基準電圧Aを供給している。更に、昇圧回路301とVHとの間にFET(電界効果トランジスタ)Tr2を介在させることで、昇圧回路301とVHとの接続をオン/オフ制御(接続/切断)できるようにしている。もっと多くの部品を追加して回路を構成することは可能であるが、電圧精度の悪化につながるので、必要最小限のパーツで構成することが望ましい。
【0029】
図3では、SIG_C信号をオンするとスイッチング素子(FET:電界効果トランジスタ)Tr1がオンして昇圧回路301の出力と電源Aとが接続状態になる。一方、SIG_C信号がオンするとスイッチング素子Tr2がオフして、昇圧回路301の出力とVHとの接続が切断状態になる。ここでは、サーマルヘッド6への供給電圧VHを、サーマルヘッド6にできるだけ近い部分で計測することで、電源制御回路213の基板内のサーマルヘッド6までの経路全体の影響を検出して調整可能にできる。この電源制御回路213では、サーマルヘッド6までの経路全体を見る為、電源制御回路213からサーマルヘッド6にの電源を供給する供給口(コネクタなど)の根元で電圧を検出している。尚、今回は電源供給口根元で見る方法を記載したが、回路構成によっては電源供給口の根元で見なくとも同様の効果が得られる為、本実施形態の構成に限らない。
【0030】
尚、
図3において、SIG_A信号はACアダプタ204が接続されたことが検知されるとオンになる。またSIG_B信号は、ACアダプタ204が接続されたことが検知されるとオフになる。これにより、ACアダプタ204が接続されるとACアダプタ204からの電力が電源AからVHに供給されるとともに、電池205から電源Aへの電力供給が遮断される。逆に、ACアダプタ204が接続されていないときはSIG_A信号はオフで、SIG_B信号はオンになる。これにより電池205から電源Aへ電力が供給されてサーマルヘッド6は電池205からの電力で駆動されることになる。
【0031】
図4は、実施形態に係るプリンタ1で使用されるサーマルヘッド6の構造図である。
【0032】
サーマルヘッド6は、R1からR128までの128個の抵抗体(発熱素子)を有している。ここで各抵抗体はの抵抗値は、800Ω±15%の範囲の抵抗値である。これら抵抗体に電流を流すかどうかは、CLOCK信号に同期して入力されるDATA信号(シリアルデータ)により設定される。シフトレジスタ401は、CLOCK信号の立ち上がりエッジに同期してDATA信号を取り込み、LATCH信号により、そのシフトレジスタ401に入力された128ビットのデータがラッチ回路402にラッチされる。その後、STROBE信号が駆動回路403に入力されると、駆動回路403は、DATA信号のデータが「1」であるビットに対応する抵抗体に電流が流れるようにして発熱素子を駆動する。つまり、サーマルヘッド6は、どの抵抗体に電流を流すかは、1ビットずつ自在に設定することが可能となっている。
【0033】
図5は、実施形態に係るプリンタ1の制御部200による電源制御回路213の基板内のインピーダンスを検知する処理を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU210がROM211に記憶されているプログラムを実行することにより達成される。この動作は電源同士を接続することになる為、ユーザでの実施はできない。工場での出荷時の調整か、基板交換等が発生した際に、サービスマンにより実施される調整用モードとなる。最初にサービスマンにより、電池を投入した上でアダプタを抜き動作を開始する。
【0034】
まずS501でCPU210は、
図3のSIG_C信号をオンすることで、昇圧回路301の出力と電源A部分とを接続する。次にS502に進み、このときのVHの電圧V0を測定する(静状態の電圧測定)。次にS503に進み、電源A側から電圧を供給してVHに決まった電流値xAを流す。この際、電流xA流すためには、サーマルヘッド6の抵抗値の検出時に使用するサーマルヘッド6の電源を抜く為の放電抵抗(不図示)を使用する。しかし、サーマルヘッドやモータ等でも決まった電流を流せばよいだけなので、同じことが実施できる。次にS504に進み、xA電流を流しているときの電圧V1を計測する(動状態測定)。ここではVHの電圧をモニタするためのA/Dコンバータ215の出力に基づいて電圧V1を取得する。そしてS505に進み、下記の式(1)よりインピーダンスR1を算出する。
【0035】
R1=(V0-V1)/x …式(1)
ここで、R1は、基板内インピーダンス、V0は静状態の電圧、V1は動状態の電圧、そしてxは規定電流である。
【0036】
こうしてインピーダンスR1を算出するとS506に進み、そのインピーダンスR1を不揮発メモリ214に保存し、SIG_C信号をオフして、基板内のインピーダンスの検知処理を終了する。
【0037】
これにより、サーマルヘッド6に電圧を供給する回路基板内のインピーダンスを検知し、そのインピーダンスを不揮発に保持することで、これ以降の制御に使用できることになる。
【0038】
図6は、実施形態に係るプリンタ1の制御部200による電源制御回路213の基板外のインピーダンスを検知する処理を説明するフローチャートである。この処理は、ACアダプタ204から供給される電圧で印刷を行う際に実施される。つまり、ACアダプタ204が接続された状態にて、ACアダプタ204のインピーダンスR2を測定するものである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU210がROM211に記憶されているプログラムを実行することにより達成される。
【0039】
検知を開始するとまずS601でCPU210は、VHの電圧V2を測定する(静状態の電圧測定)。次にS602に進みCPU210は、前述のS503と同様にして、VHに決まった電流値x[A]を流す。この際、電流x[A]を流すには、サーマルヘッドの抵抗値の検出時に使用するサーマルヘッドの電源を放電するための放電抵抗(不図示)を使用する。しかし、前述と同様に、サーマルヘッドやモータ等でも決まった電流を流せばよいだけなので、同じことが実施できる。次にS603に進み、電流xAを流しているときのVHの電圧V3を計測する(動状態測定)。そしてS604に進み、下記の式(2)よりインピーダンスR2を算出する。
【0040】
R2={(V2-V3)/x}-R1 …式(2)
ここでR1は前述の基板内インピーダンス、V2は静状態の電圧、V3は動状態の電圧、そしてxは、規定電流である。
【0041】
こうして基板外インピーダンスR2を算出するとS605に進み、そのインピーダンスR2と電圧V2とを不揮発メモリ214に保存して、この処理を終了する。
【0042】
これにより、ACアダプタ204から電圧を供給するときのインピーダンスR2を検知し、そのインピーダンスを不揮発に保持することで、これ以降の制御に使用できることになる。
【0043】
図7は、実施形態に係るプリンタ1によるサーマルヘッド6の駆動制御を説明するフローチャートである。尚、このフローチャートで示す処理は、CPU210がROM211に記憶されているプログラムを実行することにより達成される。
【0044】
この処理は、ACアダプタ204を使用して印刷を実行する際に、サーマルヘッド6に供給される電圧の降下を計測し、その降下量に応じてサーマルヘッド6の駆動を変更する処理である。
【0045】
このフローが開始されるとまずS701でCPU210は、印刷データに基づいて、同時にオンされるサーマルヘッド6の抵抗体の数を取得する。次にS702に進みCPU210は、その同時にオンされる抵抗体の数に基づいて、サーマルヘッド6に流れる電流値Iaを算出する。次にS703に進みCPU210は、前述のインピーダンスの加算値(R1+R2)とサーマルヘッド6に流れる電流値Iaに基づいて、ACアダプタ204の出力電圧VがVHに到達したときの降下電圧Vxを算出する。そしてS704に進みCPU210は、その降下電圧Vx分だけ低下したVHの電圧、即ち、電源Aの電圧Vが低下した電圧(V-Vx)と基準電圧Vrefとを比較し、低下したVHの電圧が基準電圧Vrefよりも高ければS705に進んで、
図8を参照して後述する高電圧制御を実行する。一方、低下したVHの電圧が基準電圧Vrefよりも低ければS706に進んで、
図9を参照して後述する低電圧制御を実行する。
【0046】
図8は、
図7のS705の高電圧制御を説明するフローチャートである。
【0047】
まずS801でCPU210は、S701と同様にして、印刷データに基づいて同時にオンするサーマルヘッド6の抵抗体の数を取得する。次にS802に進みS702と同様にして、その抵抗体の数よりサーマルヘッド6に流れる電流値Iaを求める。次にS803に進み、S701と同様にして、インピーダンス(R1+R2)とサーマルヘッド6に流れる電流値Iaより、ACアダプタ204の出力電圧VがVHに到達したときの降下電圧Vxを算出する。尚、前述のS701~S703で求めた降下電圧VxをRAM212に保存しておけば、S801で、その降下電圧VxをRAM212から読み出せばよく、S802,S803は省略できる。
【0048】
そしてS804に進みCPU210は、下記の式(3)に従って、基準電圧Vrefの場合よりもサーマルヘッド6に供給されるエネルギーが大きくなっている分の電圧Vyを算出する。
【0049】
Vy=V-Vx-Vref …式(3)
ここで、VはACアダプタ204の出力電圧、Vxは降下電圧、そしてVrefは基準電圧である。
【0050】
次にS805に進みCPU210は、エネルギーが大きくなっている分の電圧Vy分、ストローブ信号(サーマルヘッド6の印加時間)のパルス幅を減少させてサーマルヘッド6を駆動して記録を行う。
【0051】
以上説明したよう、実施形態に係るプリンタによれば、装置を複雑な構成にすることなく、簡単な構成で且つ安価で、ヘッドの供給電圧が基準電圧よりも高い場合の制御を行うことができる。また、電源を2系統以上持つ構成の場合、ヘッドの供給電圧の差に起因する画像濃度の変動を発生させないようにできる。
【0052】
尚、ここではアダプタの仕様より電圧が高い側に振れる場合で説明したが、アダプタの仕様によっては、電圧が低い側に振れることも考えられる。その場合の実施方法も記載する。
【0053】
図9は、
図7のS706の低電圧制御を説明するフローチャートである。
【0054】
S901~S903で、前述のS701~S703,S801~S803と同様にして、ACアダプタ204の出力電圧VがVHに到達したときの降下電圧Vxを算出する。そしてS904に進みCPU210は、下記の式(4)より、サーマルヘッド6に供給されるエネルギーが小さくなっている分の電圧Vzを算出する。
【0055】
Vz=Vref-V-Vx …式(4)
ここでVはアダプタの出力電圧、Vxは降下電圧、そしてVrefは基準電圧である。
【0056】
そしてS905に進みCPU210は、そのエネルギーが低い分が小さくなっている分の電圧Vz分、ストローブ信号(サーマルヘッドの印加時間)のパルス幅を増加させて印刷を行う。
【0057】
こうして実施形態に係るプリンタによれば、装置を複雑な構成にすることなく、簡単な構成で且つ安価で、ヘッドの供給電圧が基準電圧よりも低い場合の制御を行うことができる。また、電源を2系統以上持つ構成の場合、ヘッドの供給電圧の差に起因する画像濃度の変動を発生させないようにできる。
【0058】
尚、上記実施形態では、昇圧後の電源を使用する方法を記載したが、他にも基準となる電源を用意する方法などでも同様の効果が得られる為、本発明は上記実施形態の構成に限らないことは言うまでもない。
【0059】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0060】
本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、以下の請求項を添付する。
【符号の説明】
【0061】
1…プリンタ、200…制御部、204…ACアダプタ、205…電池、210…CPU、211…ROM、212…RAM、213…電源制御回路、214…不揮発メモリ、215…A/Dコンバータ