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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046019
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】光生成装置および光送受信システム
(51)【国際特許分類】
   G02F 3/00 20060101AFI20230327BHJP
   H04B 10/70 20130101ALI20230327BHJP
【FI】
G02F3/00
H04B10/70
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154691
(22)【出願日】2021-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】519307850
【氏名又は名称】株式会社Quemix
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吾妻 広夫
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA37
2K102BA01
2K102BB05
2K102BB10
2K102BC01
2K102BC04
2K102BD04
2K102CA00
2K102DA09
2K102DC04
2K102DD03
2K102DD05
2K102EA02
2K102EB01
2K102EB22
5K102AB11
5K102AD01
5K102PB11
5K102PH21
5K102PH22
5K102PH31
(57)【要約】      (修正有)
【課題】量子的にもつれ合った光の生成確率が高い技術を提供する。
【解決手段】量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置11は、シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を出力するフォトニック結晶と、前記スクイーズド光を入射して、第1および第2の出力ポートに量子的にもつれ合った光を出力するビームスプリッタと、を備え、シグナル光はポンプ光に比べて微弱なコヒーレント光であり、ポンプ光の周波数はシグナル光の周波数より高く、シグナル光の周波数は、フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップのバンド端周辺であって透過波長範囲に対応する周波数であり、フォトニック結晶は、シグナル光の入射方向で100μm以下の厚みを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置であって、
シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を出力するフォトニック結晶と、
前記スクイーズド光を入射して、第1および第2の出力ポートに量子的にもつれ合った光を出力するビームスプリッタと、
を備え、
前記シグナル光は前記ポンプ光に比べて微弱なコヒーレント光であり、
前記ポンプ光の周波数は前記シグナル光の周波数より高く、
前記シグナル光の周波数は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップのバンド端周辺であって透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記フォトニック結晶は、前記シグナル光の入射方向で100μm以下の厚みを有することを特徴とする光生成装置。
【請求項2】
前記フォトニック結晶は、10-11m/V以上の値の二次の非線形感受率と、2.0以上の屈折率を持つ第1の物質によって形成される第1の層と、
前記第1の物質と二次の非線形感受率および屈折率の少なくともいずれかが異なる第2の物質によって形成される第2の層と、
を、交互に積層した構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光生成装置。
【請求項3】
前記第1の物質は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、リン化ガリウム(GaP)、セレン化亜鉛(ZnSe)、およびテルル化カドミウム(CdTe)の何れかであり、前記第2の物質は空気であることを特徴とする請求項2に記載の光生成装置。
【請求項4】
前記第1の層および前記第2の層の厚みは10nm以上1μm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の光生成装置。
【請求項5】
前記フォトニック結晶の前記バンド端の周波数は1014Hz以上であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項6】
前記フォトニック結晶における前記シグナル光の群速度と真空中における光速との比は4.59×10-3以下であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項7】
前記ポンプ光の出力は0.01W以上であって、照射半径が5.0×10-6m以下であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項8】
前記シグナル光は1回のパルスあたりの光子の数が10個以下であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項9】
前記ビームスプリッタの前記第1および第2の出力ポートにおいて、それぞれ1つの量子的にもつれ合った光を検出する確率が前記シグナル光のパルス当たり0.05以上であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項10】
前記ポンプ光の周波数は前記シグナル光の周波数の2倍であることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項11】
光送信装置と光受信装置とを含む光送受信システムであって、
前記光送信装置は、
請求項1から10の何れか1項に記載の光生成装置と、
前記第1の出力ポートから出力される光子を検出する第1の検出器と、
前記第2の出力ポートから出力される光子の偏光を設定して前記第2の出力ポートから出力される光を前記光受信装置に出力する偏光回転子と、
を備え、
前記光受信装置は、
前記光送信装置から入射された光を偏光ごとに分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタによって分離された偏光ごとに光子を検出する第2の検出器と、
を備え、
前記第1の検出器で光子を検出したことと、前記第2の検出器で光子を検出したこととに基づいて盗聴が行われたことを検出することを特徴とする光送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置および光送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、量子暗号通信に使用される量子的にもつれ合った光の生成には、BBO(β-メタホウ酸バリウム)のような非線形光学結晶にレーザ光を照射しレーザ光内の1光子が2つの光子ペアに分裂する現象である自発的パラメトリック下方変換が利用されていた。自発的パラメトリック下方変換は、光子の偏光状態を情報伝達に使用する量子暗号プロトコル(BB84プロトコル)のための光子源として検討されている。(例えば、特許文献1、非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-280054号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Y. Adachi, T. Yamamoto, M. Koashi, and N. Imoto, "Simple and efficient quantum key distribution with parametric down-conversion", Phys. Rev. Lett. 99(18), 180503 (2007).
【非特許文献2】Y. Nambu, K. Usami, Y. Tsuda, K. Matsumoto, and K. Nakamura, "Generation of polarization-entangled photon pairs in a cascade of two type-I crystals pumped by femtosecond pulses", Physical Review A 66(3), 033816 (2002).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自発的パラメトリック下方変換が起こる確率は10-8オーダと低いことが知られおり、非線形光学結晶に10個程度の光子を入射して、プロトコルに利用できる光子が約1回程度得られるにすぎない。例えば非特許文献2に記載の条件では、出射されるもつれ合った二つの光子の数は毎秒450カウント程度であり、例えば毎秒10ビットの程度の容量の通信を実現するのは困難である。したがって、量子的にもつれ合った光の生成確率が極めて低く、量子暗号通信に適用するための光子源として適していないという課題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みて成されたものであり、量子的にもつれ合った光の生成確率が高い技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る光生成装置は、量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置であって、
シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を出力するフォトニック結晶と、
前記スクイーズド光を入射して、第1および第2の出力ポートに量子的にもつれ合った光を出力するビームスプリッタと、
を備え、
前記シグナル光は前記ポンプ光に比べて微弱なコヒーレント光であり、
前記ポンプ光の周波数は前記シグナル光の周波数より高く、
前記シグナル光の周波数は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンドギャップのバンド端周辺であって透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記フォトニック結晶は、前記シグナル光の入射方向で100μm以下の厚みを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、量子的にもつれ合った光の生成確率が高い技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る光送受信システムの構成例を示す図
図2】一実施形態に係る量子暗号通信システムの構成例を示す図
図3】一実施形態に係る光生成装置の構成例を示す図
図4】一実施形態に係るフォトニック結晶のバンド構造を示す図
図5】一実施形態に係るフォトニック結晶のバンド構造を示す図
図6】一実施形態に係るフォトニック結晶の分散関係を示す図
図7】一実施形態に係る光受信装置によって検出される光子の個数に対応する検出確率を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る光生成装置を含む光送受信システム1を示すブロック図である。
【0012】
光送受信システム1は、光送信装置10および光受信装置20を含む。光送信装置10は、量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置11を備え、生成した光を光受信装置20に送信する。なお、光送信装置10から光受信装置20へ光を送信する経路を光路と呼ぶ。光路は、一例では光ファイバである。なお、本実施形態において、量子的にもつれ合った光とは、生成された2つの光子の状態が量子的にもつれ合った状態である光を指す。
【0013】
(アプリケーション例)
続いて、図2を参照して、量子的にもつれ合った光の性質を利用したアプリケーション例について説明する。
【0014】
図2では、アプリケーションとして、量子的にもつれ合った光を鍵配送に利用し、その際に量子暗号プロトコル(BB84)を用いる例を説明する。また、説明を容易にするために、光送信装置10と光受信装置20との間に盗聴装置30が存在すると仮定して説明を行う。
【0015】
盗聴装置30は、後述するように、光送信装置10から光受信装置20へ送出された光子を、かすめ取ったり置き換えることによって盗聴を行う。
【0016】
光生成装置11は、量子的にもつれ合った光201および202を生成する。光送信装置10は、光生成装置11から生成された光子201の振動方向を所定の面内に偏らせるための偏光回転子12を備える。光送信装置10は、偏光回転子12で回転させた光子203を光受信装置20に送信する。また、光送信装置10は、光子202を検出するための検出器13を備える。
【0017】
光受信装置20は、偏光ビームスプリッタ21並びに検出器22aおよび22b(以下、区別せずに検出器22と称する場合がある)を備える。
【0018】
偏光ビームスプリッタ21は、光送信装置から射出された光子203をX偏光、Y偏光など偏光ごとに分離して異なるポートに出力する。検出器22は、それぞれのポートから出力された光子を検出する。
【0019】
ここで、盗聴装置30が光子203をかすめ取ることで盗聴を行う場合について説明する。盗聴装置30は、例えば光送信装置10と光受信装置20との通信経路上にビームスプリッタを配置することで、送信された光子203を検出する。この場合、光受信装置20に到達する光子の数が減るため、光送受信システム1は、生成した光子202を光送信装置10によって検出された光子数と、光受信装置20で検出した光子数とを比較することで、光子が減衰する割合を判定することができる。このため、例えば光子が減衰する割合が閾値より大きい場合や、光子が減衰する割合が時間経過に伴って大きく変化した場合に、光子がかすめ取られたことを検出することができる。
【0020】
また、盗聴装置30は、光子203をかすめ取った後に、代わりに光子を生成して注入することも考えられる。このため、光受信装置20が、受信した光子をいずれの検出器22において検出したかを記録することで、盗聴装置30によって注入された代わりの光子の偏光が送信した光子の偏光と異なることに基づいて、光子を置き換えられたことを検出することができる。この場合、光受信装置20が受信した光子に関する情報を光送信装置10に送信する、または光送信装置10が送信した光子に関する情報を光受信装置20に送信すればよい。一例では、光子に関する情報は、いずれの検出器22で光子を検出したか、すなわち検出した光子の偏光に関する情報を含んでもよいし、光子を検出した時刻に関する情報を含んでもよい。光送受信システム1は、送信した光子の偏光と受信した光子の偏光とを比較することで、光子を置き換えられたことを検出することができる。
【0021】
このように、量子的にもつれ合った光を利用するアプリケーションにおいては、量子的にもつれ合った光の生成確率の向上を図ることが、アプリケーションに利用する上で有利である。
【0022】
例えば、上述した特許文献1、非特許文献1に記載の技術では、自発的パラメトリック下方変換が起こる確率が10-8オーダであるため、非線形光学結晶に108個程度の光子を入射して量子暗号通信に使用できるプロトコルに使用できる1つの光子が1回生成できるかどうかであり、送出した光子の個数の把握が困難である。また、光パラメトリック増幅器は、周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路が使用されており、4dB程度の減衰を受けるため、光子を多く生成する必要がある。そのために、光子が盗聴装置30によって抜き取られたのか減衰によって失われたのかが判別できない可能性がある。
【0023】
また、量子的にもつれ合った光の生成法として、極めて微弱なコヒーレント光を使用する技術も検討されている。しかしながら、コヒーレント光では、光子が生成された時刻や個数がランダムになってしまう。このため、光子の出射時刻が特定できないことや意図しない時刻に2個の光子が出射されることなどにより、盗聴装置30が光送信装置10から光受信装置20までの光路で光子をかすめ取ったり注入したことを検出することが困難である。
【0024】
これに対して、本実施形態では、スクイーズド光を使用して量子的にもつれ合った光を生成することによって、量子暗号プロトコルに適した1つの光子を生成する確率を高める。スクイーズド光とは、光の振幅の実数成分と虚数成分とが異なる直交位相振幅が異なる光である。直交位相振幅が等しく、1つのパルス内に含まれる光子の個数がポアソン分布に従うコヒーレント光と比較して、ビームスプリッタに入射した場合に2つの光路に出射される光子の個数に強い相関関係を持つという量子学的な性質を有する。
【0025】
コヒーレント光を使用する従来の量子暗号アプリケーションでは、シグナル光の強度を変えるなどしておとりパルスをランダムに送出し、量子的にもつれ合った光の割合の変化をモニタするデコイ法を使用する必要がある。一方、スクイーズド光を使用する本実施形態では、単一光子源により近い確率で量子的にもつれ合った光を生成することができる。これによって、生成される光子の個数が高い確率で推定可能となるため、盗聴の検出が容易となるため、より安全な量子暗号通信を行うことが可能となる。
【0026】
以下では、上述した、量子暗号プロトコルに適した光子を生成する確率が高い光生成装置の構成について説明する。
【0027】
<光生成装置の構成>
図3を参照して、本実施形態に係る光生成装置11の構成について説明する。光生成装置11は、フォトニック結晶301およびビームスプリッタ302を備える。
【0028】
フォトニック結晶301は、微弱なコヒーレント光(シグナル光)330とポンプ光331とを入射することで、シグナル光330をスクイーズド光340に変換するための光学素子である。フォトニック結晶は、屈折率が異なる物質を光の波長と同程度の間隔で並べた周期構造を有する人工結晶である。本実施形態では、フォトニック結晶は一次元フォトニック結晶であるものとして説明を行うが、二次元あるいは三次元フォトニック結晶であってもよい。フォトニック結晶は、二次の非線形感受率を有する材料を含む。例えば、図3に示すように、フォトニック結晶は、二次の非線形感受率を有する材料Aによって形成される層311と、材料Aとは屈折率が大きく異なる材料Bによって形成される層312をシグナル光330の入射方向に積層した多層構造となっている。
【0029】
一例では、材料Aはニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、リン化ガリウム(GaP)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化カドミウム(CdTe)の何れかまたはその組み合わせによって構成される。また、一例では、材料Bは空気である。
【0030】
また、一例では、フォトニック結晶301のシグナル光330の入射方向の厚みは100μm以下、例えば50~100μmである。これによって、シグナル光がスクイーズド光を出射するための減衰を特許文献1に記載の光パラメトリック増幅器の減衰に比べて非常に小さくすることができる。減衰を小さくできるため、シグナル光330として数個程度に相当する数の光子を入射すればスクイーズド光を生成することができる。理想的にはデータ速度に対して光子が2、3個になる程度の強度とするとよい。このような微弱なシグナル光によって量子力学的な性質を保持したまま量子的にもつれ合った光を生成することができる。
【0031】
本実施形態では、ポンプ光331の周波数はシグナル光330の周波数はより高く、一例ではシグナル光330の周波数の2倍程度の周波数であるものとする。シグナル光330の強さは微弱であり、その振幅はシグナル光のパルス1回あたり10個以下、たとえば数個程度の光子が含まれる振幅である。例えば、シグナル光の光子数を2個、シグナル光の角振動数を2.03×1015[1/秒]、周波数を3.23×1014[Hz]、波長を9.27×10-7[m]、シグナル光のパルス時間長を3.7×10-9[秒]、ビームの照射半径を5μmとすると、シグナル光の振幅は29.5[V/m]である。また、ポンプ光に使用するレーザービームの出力はなるべく大きなものが良く、また、照射半径はなるべく小さなものが良い。本実施形態では、商用として流通している一般的なレーザ発光素子を使用してポンプ光を生成するものとして、ポンプ光の出力は0.01[W]以上、例えば0.03[W]、照射半径は5.0×10-6m以下であるものとする。
【0032】
フォトニック結晶301から出力されたスクイーズド光340は、ビームスプリッタ302に入射される。ビームスプリッタ302には、入射されたスクイーズド光から、2つの量子的にもつれ合った光350、351が異なる出力ポートから出射される。
【0033】
(光生成装置11のパラメータ例)
光生成装置11のパラメータの計算例として、ニオブ酸リチウム(LiNbO)によって構成された層311と、空気によって構成された層312とを用いてフォトニック結晶によってスクイーズド光を生成するためのパラメータの導出について説明する。
【0034】
なお、本例では、層311および層312の厚みは10nm以上1μm以下、例えば550nm程度であり、シグナル光330の入射方向におけるフォトニック結晶301の層の数は100~200程度であるものとして説明する。フォトニック結晶301の各層の厚みを550nmから750nm程度に調整すると、シグナル光の周波数帯がテラヘルツ以上の領域において、効率的なスクイーズド光への変換が行える。また、フォトニック結晶301の層311の結晶構造を形成する技術的観点からも、層の厚みは10nm以上1μm以下にすることで効率よくフォトニック結晶301を形成することが可能となる。また、フォトニック結晶301を構成する積層構造は、20層程度から理想的には約100層以上が目安となり、フォトニック結晶の厚みは10μmから100μmの間程度となる。
【0035】
まず、LiNbOフォトニック結晶の透過光のバンド構造を調べる。LiNbO単体の透過波長範囲は、λ=4.2×10-7m以上5.2×10-6m以下である。屈折率n(光の進行方向に対して垂直な波の屈折率)は、たとえば2.0以上になる物質が選択される。LiNbOの例では、波長λ=1.3×10-6mでn=2.220、波長λ=1.064×10-6mでn=2.232、波長λ=6.328×10-7mでn=2.286である。
【0036】
ここでは簡単のために、1次元フォトニック結晶を考える。図3のように、幅lの層311と幅lの層312が交互に重ねられてフォトニック結晶301が構成されるとする。層311は空気、層312はLiNbOとする。空気の比誘電率はε/ε=1である。LiNbOの比誘電率は、屈折率n=2.22として、ε/ε=n とする。後述する文献を参考にして、l=l=5.5×10-7mとする。
【0037】
入射光の角振動数をω、結晶内での光の波数ベクトルをkとすると、分散関係ω=ω(k)は、次の数式(数1)より与えられる。
【0038】
【数1】
【0039】
ここで、図4を参照して、本実施形態に係るフォトニック結晶のバンド構造について説明する。図4では、横軸が波数であり、縦軸が各振動数を示し、各振動数が低いものから順に8つの伝導帯の分散関係を示している。図5は、図4の振動数が0.9~1.2の範囲を拡大した伝導帯の分散関係を示している。ここから、フォトニック結晶中の光の波数がkである場合の群速度v(k)は以下の数式(数2)で求められる。
【0040】
【数2】
【0041】
図6は、図5に示す伝導帯における群速度を示すグラフである。図6では、グラフの左端、波数が0において群速度も0となることが分かる。群速度が0となるときの角振動数をωとすると、ω(l+l)/(2πc)=1.18となる。これは、ω=2.03×1015[1/s]に相当する。光子の波長は、λ=2πc/ω=9.27×10-7[m]で与えられる。この波長は、LiNbO単体の透過光の範囲に含まれている。
【0042】
また、ωの2倍の角振動数をω=2ωとすると、ω(l+l)/(2πc)=2.36となり、この光は下から8番目の伝導帯に含まれる。
【0043】
よって、ω、ωをシグナル光、ポンプ光として用いることでスクイーズド光を発生させることができると期待される。しかし、厳密には、角振動数ωの光は群速度がゼロとなってしまうので、調整によりωよりわずかに小さな角振動数の光をシグナル光とすることができる。
【0044】
LiNbOの二次の非線形感受率は、10-11[m/V]以上、例えば、χ(2)=ε

=2.52×10-11[m/V]で与えられる。このとき、フォトニック結晶のスクイージングパラメータζは、ζ=βlで与えられる。ここで、βは以下の数式(数3)で与えられる。
【0045】
【数3】
【0046】
ただし、lはフォトニック結晶におけるLiNbOの厚みの合計であり、ここではl=5.0×10-5[m]とする。Aはポンプ光の電場Eの振幅で、単位は[V/m]である。vはシグナル光の群速度である。ωはシグナル光の角速度である。
【0047】
ここで、次の近似を考える。図5および図6より、角振動数をω(l+l)/(2πc)=1.18付近からわずかに変動させることにより、シグナル光の群速度vはゼロから正の値の方向へ大きく変化する。そこで、式において、ωはバンド端の値に固定し、vを変数と見なすことにする。
【0048】
ここで、squeezingパラメータζを1にしたいとする。すると、ζ=1より、Aはvの関数で表されることになる。具体的には、βl=1より、
【0049】
【数4】
【0050】
を得る。ここでポンプ光レーザの強度I[W/m]と、その電場の振幅A[V/m]の間には、次の関係がある。
【0051】
【数5】
【0052】
ただし、εは真空の誘電率、cは光速、nは真空の屈折率としている。商用として流通している一般的な半導体レーザの性能として、出力0.01[W]以上、照射半径が5.0×10-6[m]以下、例えば出力W=0.03[W]、レーザービームの照射半径d=5.0×10-6[m]とする。ここで、照射半径dは、ポンプ光の出力装置から出力されるレーザービームの半径であってもよいし、フォトニック結晶に照射されるポンプ光の照射半径であってもよい。すると、
【0053】
【数6】
【0054】
という関係が成り立つ。ここで、n=1と近似しても構わない。よって、A=5.36×10[V/m]を得る。これより、
【0055】
【数7】
【0056】
を得る。すなわち、フォトニック結晶中のシグナル光の群速度と真空中における光速との比を4.59×10-3以下にすることでスクイーズド光を効率よく生成することができる。従って、squeezing パラメータζを1にするには、フォトニック結晶中の光の群速度を10-3オーダの精度で調整しなくてはならないことになる。すなわち、フォトニック結晶中に入射するシグナル光の周波数を、このような群速度の精度を達成できる程度で調整する必要がある。
【0057】
この場合、シグナル光の周波数はν=ω/(2π)=3.23×1014[Hz]、波長はλ=2πc/ω=9.29×10-7[m]で、テラヘルツ波より少し高い周波数帯である。一例では、入射するシグナル光の周波数νをバンド幅の周波数である1014Hz以上、例えば3.23×1014[Hz]からわずかに高い周波数で入射し、周波数を少しずつ下げるスイープ走査を行い、フォトニック結晶から出射される光がコヒーレント光からスクイーズド光に変化する様子をモニタリングすることでスクイーズド光が射出されるよう調整することができる。例えば、シグナル光のスイープは、フォトニック結晶中の群速度がゼロとなる周波数が3.23×1014[Hz]の場合、3.23×1014[Hz]を中心として、±2.27×10[Hz]の範囲でスイープが行われてもよい。
【0058】
本実施形態では、ポンプ光の周波数をシグナル光の周波数の2倍に、すなわち、ポンプ光の角振動数をシグナル光の角振動数の2倍に設定する。ポンプ光およびシグナル光の周波数を調整する方法としては以下の二つの方法がある。
【0059】
一つ目は、周期分極反転ニオブ酸リチウム(PPLN)導波路を使う方法である。PPLNに周波数fSの光を入射する。周波数fSは、本実施形態で使用するシグナル光の周波数と同じとする。この入射光のレーザ光としての出力、振幅、光子数は十分大きな値であってよく、上述したような微弱な光でなくてもよい。このとき、PPLNの非線形特性により第二高調波が発生する。この第二高調波の周波数fPは、入射光の周波数fSの2倍となる。これを、ポンプ光として使用する。出力、振幅、光子数の大きなポンプ光を発生させるには、十分な大きさの振幅の入射光をPPLNに入射する必要がある。このポンプ光と、PPLNへの入射光とは別に用意した、周波数fSの微弱なシグナル光とをフォトニック結晶に入射する。この方法では、周波数がfSのレーザ光源によってポンプ光とシグナル光を生成することができる。
【0060】
二つ目は、微弱な振幅強度を有する周波数fSのシグナル光と、十分な振幅強度を持つ周波数fPのポンプ光の二種類のレーザ光源を用意し、周波数fPのポンプ光の光源の周波数を微小変化させ、fPがfSの2倍になるように調整するという方法である。本実施形態ではテラヘルツまたはそれ以上の周波数領域のレーザ光源が使われるが、高い精度で周波数の調整を行う必要がある。
【0061】
PPLNで第二高調波を発生するとき、入射光の波長を1560nmとすると、発生する第二高調波の周波数の揺らぎは数MHz前後であることが、実験で確認されている。このため、PPLNと同様の揺らぎのポンプ光とシグナル光とを得ることを仮定すると、シグナル光の周波数を3.23×1014[Hz]として、ポンプ光に許される周波数の揺らぎは、3.23×1014±1.0×10[Hz]前後である。すなわち、ポンプ光の周波数は、シグナル光の周波数の2倍を中心として2MHzの範囲であればよい。
【0062】
したがって、本実施形態では周波数の精度の観点から、PPLNを使用してシグナル光と同じ周波数のレーザ光からポンプ光を生成するが、いずれの方法でポンプ光とシグナル光とを生成してもよい。
【0063】
このように、フォトニック結晶のバンドギャップ(フォトニックバンドギャップ)のバンド端周辺の周波数であって、透過波長範囲に対応する周波数のシグナル光と、シグナル光の2倍の周波数のポンプ光を入射することで、スクイーズド光を効率よく生成することができる。
【0064】
また、シグナル光とポンプ光との相対位相やビームスプリッタでの位相回転に基づいてシグナル光およびポンプ光から出力される光の位相を、量子的にもつれ合った光の生成確率が最大値または極大値となるように調整してもよい。
【0065】
(量子暗号へのアプリケーション例)
上述したように、量子暗号アプリケーションにおいて、光生成装置11から出射された2つの光子は、一方が光送信装置10によって、他方が光受信装置20によって検出される。ここで、上述した光生成装置11のパラメータにおいて、もつれ合う光を生成する確率をP(n)、nは光子の個数とすると、P(1)=0.520、すなわち、量子的にもつれ合った光を検出する確率がシグナル光のパルス当たり0.5以上にすることができ、効率よく量子的にもつれ合った光を使用して量子暗号通信を行うことができる。また、光送信装置10側の出力ポートをc、光受信装置20側の出力ポートをdとして、ポートcでn個、ポートdでn個の光子を観測する確率をP(n,n)として、n=1、すなわちポートcで1個の光子を観測した時のP(1,n)を図7に示す。図7の縦軸では観測確率が対数で表示されている。図7では、P(1,1)、すなわち光送信装置10と光受信装置10とがそれぞれ1つの光子を検出する確率が0.05以上、例えば0.0783であり、n≠1の場合のP(1、n)と比較して有意に高くすることができ、量子暗号アプリケーションに適している。
【0066】
図7の横軸のnが1または3の場合(k=1,3)、隣接するnが偶数(k-1、k+1)と比較してP(1,k)の確率が大きいことが分かる。このことは量子的もつれ合いの性質が反映されていることを示し、ポートdで1個の光子を観測する確率P(1,1)において、単一光子源が実現されると考えられる。また、生成されたスクイーズド度合いが大きいほどP(1,1)の値も大きくなる。シグナル光の各振動数をフォトニック結晶のバンドギャップのバンド端の周波数近傍に設定することにより、シグナル光のフォトニック結晶内での群速度vと真空中における光速との比であるv/cを4.59×10-3以下とすることができる。このとき、量子的にもつれ合った光の生成確率は0.435程度と見積もられる。この生成確率は、従来の自発的パラメトリック下方変換による光子の生成確率が10-8オーダであることと比較して10倍以上であり、量子暗号アプリケーションの光子源として適している。
【0067】
この場合、光送信装置10がビームスプリッタのポートcから出射された1個の光子を検出器Aで測定した条件下で、光受信装置20が検出器22で光子を検出できない確率、および検出器22で光子を1個検出する確率(第1の確率)はあらかじめ数値計算で求めることができる。実際の運用において統計的に求められた確率の値(第2の確率)が第1の確率と大きく異なる場合には盗聴が行われたと判断することが可能となる。例えば、盗聴装置30が光路の途中で50-50ビームスプリッタを設置して光子をかすめ取った場合、光受信装置20は光子を検出できない確率が図7の例では0.0783/2だけ増大するため、このことに基づいて光送受信システム1は盗聴装置30の不正を検出することができる。
【0068】
<その他の実施形態>
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0069】
例えば、LiNbO以外の材料によってフォトニック結晶を構成した場合にも、上述したパラメータの計算と同様にしてシグナル光やポンプ光の周波数や強度などを計算することができる。
【0070】
また、本実施形態において、フォトニック結晶301は非線形光学結晶の一例であり、フォトニック結晶以外の非線形光学結晶を使用してもよい。言い換えると、バンドギャップを有し、シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を生成できるのであれば、誘電率の異なる2種類以上の物質を周期的に並べた構造であるフォトニック結晶とは異なる非線形光学結晶を使用して本実施形態に係る光形成装置が構成されてもよい。非線形光学結晶は、入射光に対して結晶中が非線形的に応答し、かつ複屈折が存在する結晶を指す。
【符号の説明】
【0071】
1:光送受信システム、10:光送信装置、11:光生成装置、20:光受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置であって、
シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を出力するフォトニック結晶と、
前記スクイーズド光を入射して、第1および第2の出力ポートに量子的にもつれ合った光を出力するビームスプリッタと、
を備え、
前記シグナル光は前記ポンプ光に比べて微弱なコヒーレント光であり、
前記ポンプ光の周波数は前記シグナル光の周波数より高く、
前記シグナル光の周波数は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンド伝導帯内に含まれ、フォトニックバンドギャップのバンド端周辺であって透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記ポンプ光の周波数は、前記シグナル光の周波数の2倍であり、フォトニックバンド伝導帯内に含まれ、透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記フォトニック結晶は、10 -11 m/V以上の値の二次の非線形感受率と2.0以上の屈折率を持つ第1の物質によって形成される第1の層と、前記第1の物質と二次の非線形感受率および屈折率の少なくともいずれかが異なる第2の物質によって形成される第2の層とを、それぞれの層の厚さを10nm以上1μm以下に設定して、交互に積層した構造を有し、
前記フォトニック結晶は、フォトニック結晶全体として前記シグナル光の入射方向で100μm以下の厚みを有することを特徴とする光生成装置。
【請求項2】
前記第1の物質は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、リン化ガリウム(GaP)、セレン化亜鉛(ZnSe)、およびテルル化カドミウム(CdTe)の何れかであり、前記第2の物質は空気であることを特徴とする請求項1に記載の光生成装置。
【請求項3】
前記フォトニック結晶の前記バンド端の周波数は1014Hz以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光生成装置。
【請求項4】
前記フォトニック結晶における前記シグナル光の群速度と真空中における光速との比は4.59×10-3以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項5】
前記ポンプ光の出力は0.01W以上であって、照射半径が5.0×10-6m以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項6】
前記シグナル光は1回のパルスあたりの光子の数が10個以下であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項7】
前記ビームスプリッタの前記第1および第2の出力ポートにおいて、それぞれ1つの量子的にもつれ合った光を検出する確率が前記シグナル光のパルス当たり0.05以上であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項8】
光送信装置と光受信装置とを含む光送受信システムであって、
前記光送信装置は、
請求項1から7の何れか1項に記載の光生成装置と、
前記第1の出力ポートから出力される光子を検出する第1の検出器と、
前記第2の出力ポートから出力される光子の偏光を設定して前記第2の出力ポートから出力される光を前記光受信装置に出力する偏光回転子と、
を備え、
前記光受信装置は、
前記光送信装置から入射された光を偏光ごとに分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタによって分離された偏光ごとに光子を検出する第2の検出器と、
を備え、
前記第1の検出器で光子を検出したことと、前記第2の検出器で光子を検出したこととに基づいて盗聴が行われたことを検出することを特徴とする光送受信システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る光生成装置は、量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置であって、
シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を出力するフォトニック結晶と、
前記スクイーズド光を入射して、第1および第2の出力ポートに量子的にもつれ合った光を出力するビームスプリッタと、
を備え、
前記シグナル光は前記ポンプ光に比べて微弱なコヒーレント光であり、
前記ポンプ光の周波数は前記シグナル光の周波数より高く、
前記シグナル光の周波数は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンド伝導帯内に含まれ、フォトニックバンドギャップのバンド端周辺であって透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記ポンプ光の周波数は、前記シグナル光の周波数の2倍であり、フォトニックバンド伝導帯内に含まれ、透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記フォトニック結晶は、10 -11 m/V以上の値の二次の非線形感受率と2.0以上の屈折率を持つ第1の物質によって形成される第1の層と、前記第1の物質と二次の非線形感受率および屈折率の少なくともいずれかが異なる第2の物質によって形成される第2の層とを、それぞれの層の厚さを10nm以上1μm以下に設定して、交互に積層した構造を有し、
前記フォトニック結晶は、前記フォトニック結晶全体として前記シグナル光の入射方向で100μm以下の厚みを有することを特徴とする。

【手続補正書】
【提出日】2022-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置であって、
シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を出力するフォトニック結晶と、
前記スクイーズド光を入射して、第1および第2の出力ポートに量子的にもつれ合った光を出力するビームスプリッタと、
を備え、
前記シグナル光は前記ポンプ光に比べて微弱なコヒーレント光であり、
前記ポンプ光の周波数は前記シグナル光の周波数より高く、
前記シグナル光の周波数は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンド伝導帯内に含まれ、フォトニックバンドギャップのバンド端周辺であって、透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記ポンプ光の周波数は、前記シグナル光の周波数の2倍であり、フォトニックバンド伝導帯内に含まれ、透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記フォトニック結晶は、10-11m/V以上の値の二次の非線形感受率と2.0以上の屈折率を持つ第1の物質によって形成される第1の層と、前記第1の物質と二次の非線形感受率および屈折率の少なくともいずれかが異なる第2の物質によって形成される第2の層とを、それぞれの層の厚さを10nm以上1μm以下に設定して、交互に積層した構造を有する一次元結晶であり
前記フォトニック結晶は、フォトニック結晶全体として前記シグナル光の入射方向で100μm以下の厚みを有することを特徴とする光生成装置。
【請求項2】
前記第1の物質は、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)、リン化ガリウム(GaP)、セレン化亜鉛(ZnSe)、およびテルル化カドミウム(CdTe)の何れかであり、前記第2の物質は空気であることを特徴とする請求項1に記載の光生成装置。
【請求項3】
前記フォトニック結晶の前記バンド端の周波数は1014Hz以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の光生成装置。
【請求項4】
前記フォトニック結晶における前記シグナル光の群速度と真空中における光速との比は4.59×10-3以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項5】
前記ポンプ光の出力は0.01W以上であって、照射半径が5.0×10-6m以下であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項6】
前記シグナル光は1回のパルスあたりの光子の数が2個または3個であることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項7】
前記ビームスプリッタの前記第1および第2の出力ポートにおいて、それぞれ1つの量子的にもつれ合った光を検出する確率が前記シグナル光のパルス当たり0.05以上であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の光生成装置。
【請求項8】
光送信装置と光受信装置とを含む光送受信システムであって、
前記光送信装置は、
請求項1から7の何れか1項に記載の光生成装置と、
前記第1の出力ポートから出力される光子を検出する第1の検出器と、
前記第2の出力ポートから出力される光子の偏光を設定して前記第2の出力ポートから出力される光を前記光受信装置に出力する偏光回転子と、
を備え、
前記光受信装置は、
前記光送信装置から入射された光を偏光ごとに分離する偏光ビームスプリッタと、
前記偏光ビームスプリッタによって分離された偏光ごとに光子を検出する第2の検出器と、
を備え、
前記第1の検出器で光子を検出したことと、前記第2の検出器で光子を検出したこととに基づいて盗聴が行われたことを検出することを特徴とする光送受信システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る光生成装置は、量子的にもつれ合った光を生成する光生成装置であって、
シグナル光とポンプ光とを入射してスクイーズド光を出力するフォトニック結晶と、
前記スクイーズド光を入射して、第1および第2の出力ポートに量子的にもつれ合った光を出力するビームスプリッタと、
を備え、
前記シグナル光は前記ポンプ光に比べて微弱なコヒーレント光であり、
前記ポンプ光の周波数は前記シグナル光の周波数より高く、
前記シグナル光の周波数は、前記フォトニック結晶のフォトニックバンド伝導帯内に含まれ、フォトニックバンドギャップのバンド端周辺であって、透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記ポンプ光の周波数は、前記シグナル光の周波数の2倍であり、フォトニックバンド伝導帯内に含まれ、透過波長範囲に対応する周波数であり、
前記フォトニック結晶は、10-11m/V以上の値の二次の非線形感受率と2.0以上の屈折率を持つ第1の物質によって形成される第1の層と、前記第1の物質と二次の非線形感受率および屈折率の少なくともいずれかが異なる第2の物質によって形成される第2の層とを、それぞれの層の厚さを10nm以上1μm以下に設定して、交互に積層した構造を有する一次元結晶であり
前記フォトニック結晶は、前記フォトニック結晶全体として前記シグナル光の入射方向で100μm以下の厚みを有することを特徴とする。