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  • 特開-呼吸情報計測システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046022
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】呼吸情報計測システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/113 20060101AFI20230327BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20230327BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A61B5/113
G01B7/00 101C
A41D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154696
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508179545
【氏名又は名称】東洋紡STC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 翔太
(72)【発明者】
【氏名】表 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2F063
3B011
4C038
【Fターム(参考)】
2F063AA25
2F063BA29
2F063BB01
2F063CA08
2F063HA05
2F063LA25
2F063LA29
3B011AA01
3B011AA05
3B011AB01
3B011AB08
3B011AB11
3B011AC17
3B011AC21
4C038VA04
4C038VB19
4C038VB28
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】呼吸に伴う生体の変化の検出精度に優れた呼吸情報計測システムを提供する。
【解決手段】測定用伸縮性コンデンサと、リファレンス用コンデンサと、前記測定用伸縮性コンデンサの静電容量M(pF)と、前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)との差である静電容量D(pF)を算出する演算部とを備え、前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)は、前記測定用伸縮性コンデンサの5%伸長時における静電容量M5(pF)以上である呼吸情報計測システム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定用伸縮性コンデンサと、
リファレンス用コンデンサと、
前記測定用伸縮性コンデンサの静電容量M(pF)と、前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)との差である静電容量D(pF)を算出する演算部とを備え、
前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)は、前記測定用伸縮性コンデンサの5%伸長時における静電容量M5(pF)以上である呼吸情報計測システム。
【請求項2】
前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)は、前記測定用伸縮性コンデンサの20%伸長時における静電容量M20(pF)以下である請求項1に記載の呼吸情報計測システム。
【請求項3】
前記演算部は、前記静電容量D(pF)を順次算出し、更に前記静電容量D(pF)の移動平均値を算出する請求項1または2に記載の呼吸情報計測システム。
【請求項4】
前記演算部は、前記移動平均値に基づいて、生体の呼吸の時間的周期を算出する請求項3に記載の呼吸情報計測システム。
【請求項5】
前記測定用伸縮性コンデンサは、第1の絶縁層と、第1の導電層と、第2の絶縁層と、第2の導電層と、第3の絶縁層とが順に積層されている請求項1~4のいずれかに記載の呼吸情報計測システム。
【請求項6】
前記測定用伸縮性コンデンサは、衣服に固定されている請求項1~5のいずれかに記載の呼吸情報計測システム。
【請求項7】
前記測定用伸縮性コンデンサは長さ方向を有し、前記長さ方向が前記衣服の身丈方向または身幅方向と平行である請求項6に記載の呼吸情報計測システム。
【請求項8】
前記第1の絶縁層は、衣服の表面に固定されている請求項5に記載の呼吸情報計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸情報計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに伸縮性コンデンサの伸縮に伴う静電容量の変化を読み取って、生体の周長変化を検出する技術が知られている。例えば、特許文献1には、係合部、第一伸縮性カバー層、第一伸縮性導電層、伸縮性誘電体層、第二伸縮性導電層、第二伸縮性カバー層をこの順に含む導電性積層体を含有し、導電性積層体は伸縮性基材と2点以上で着脱可能に係合し、係合部の脱離力が1N以上10N以下であり、第一伸縮性カバー層および/または第二伸縮性カバー層と、III型ポリエステル負荷布との平均摩擦係数が乾燥状態で2以下である着脱式伸縮性コンデンサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6863509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような従来の伸縮性コンデンサを用いれば、呼吸に伴う生体の周長等の変化を静電容量の変化で読み取ることはできるが、近年ではその検出精度の向上が求められている。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、呼吸に伴う生体の変化の検出精度に優れた呼吸情報計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決することのできた本発明の実施の形態に係る呼吸情報計測システムは、以下の通りである。
[1]測定用伸縮性コンデンサと、
リファレンス用コンデンサと、
前記測定用伸縮性コンデンサの静電容量M(pF)と、前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)との差である静電容量D(pF)を算出する演算部とを備え、
前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)は、前記測定用伸縮性コンデンサの5%伸長時における静電容量M5(pF)以上である呼吸情報計測システム。
【0006】
上記のように、測定用伸縮性コンデンサの5%伸長時の静電容量以上の静電容量を有する非伸長状態のリファレンス用コンデンサを用いて静電容量R(pF)を測定し、測定用伸縮性コンデンサの静電容量M(pF)とリファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)との差を求めることにより、ノイズを効果的に除去することができる。これにより呼吸に伴う生体の変化を正確に検出することができる。
【0007】
呼吸情報計測システムの好ましい態様は以下の[2]~[8]のいずれかの通りである。
[2]前記リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)は、前記測定用伸縮性コンデンサの20%伸長時における静電容量M20(pF)以下である[1]に記載の呼吸情報計測システム。
[3]前記演算部は、前記静電容量D(pF)を順次算出し、更に前記静電容量D(pF)の移動平均値を算出する[1]または[2]に記載の呼吸情報計測システム。
[4]前記演算部は、前記移動平均値に基づいて、生体の呼吸の時間的周期を算出する[3]に記載の呼吸情報計測システム。
[5]前記測定用伸縮性コンデンサは、第1の絶縁層と、第1の導電層と、第2の絶縁層と、第2の導電層と、第3の絶縁層とが順に積層されている[1]~[4]のいずれかに記載の呼吸情報計測システム。
[6]前記測定用伸縮性コンデンサは、衣服に固定されている[1]~[5]のいずれかに記載の呼吸情報計測システム。
[7]前記測定用伸縮性コンデンサは長さ方向を有し、前記長さ方向が前記衣服の身丈方向または身幅方向と平行である[6]に記載の呼吸情報計測システム。
[8]前記第1の絶縁層は、衣服の表面に固定されている[5]に記載の呼吸情報計測システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば上記構成により、呼吸に伴う生体の変化の検出精度に優れた呼吸情報計測システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態に係る呼吸情報計測システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る呼吸情報計測システムは、測定用伸縮性コンデンサと、リファレンス用コンデンサと、測定用伸縮性コンデンサの静電容量M(pF)と、リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)との差である静電容量D(pF)を算出する演算部とを備え、リファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)は、測定用伸縮性コンデンサの5%伸長時における静電容量M5(pF)以上である。
【0011】
従来、伸縮性コンデンサを用いた静電容量の計測に当たっては、電気的揺れ等に起因するノイズが混入していた。一方、上記のように測定用伸縮性コンデンサの5%伸長時の静電容量以上の静電容量を有するリファレンス用コンデンサを用いて静電容量R(pF)を測定し、測定用伸縮性コンデンサの静電容量M(pF)とリファレンス用コンデンサの静電容量R(pF)との差を求めることにより、ノイズを効果的に除去することができる。これにより呼吸に伴う生体の変化を正確に検出することができ、例えば呼吸頻度等の呼吸情報の計測精度を向上することができる。
【0012】
以下では図1を参照して、実施の形態に係る呼吸情報計測システム1について具体的に説明する。図1に示す通り、呼吸情報計測システム1は、測定用伸縮性コンデンサ5と、リファレンス用コンデンサ6とを備える。更に、呼吸情報計測システム1は、測定用伸縮性コンデンサ5の静電容量M(pF)と、リファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)との差である静電容量D(pF)を算出する演算部12bとを備える。リファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)は、測定用伸縮性コンデンサ5の5%伸長時における静電容量M5(pF)以上である。
【0013】
呼吸情報計測システム1において、5%伸長時の測定用伸縮性コンデンサ5の静電容量M5以上の静電容量を有するリファレンス用コンデンサ6は、非伸長時の測定用伸縮性コンデンサ5と同じ静電容量を有するリファレンス用コンデンサよりもノイズの検出精度が高くなる。これは本発明者らが初めて見出した現象である。このようにリファレンス用コンデンサ6により測定されたノイズに係る静電容量R(pF)を測定用伸縮性コンデンサ5で測定された静電容量M(pF)から除くことにより、呼吸に伴う生体の変化の検出精度を向上することができる。5%伸長とは、もとの長さに対する変化分の長さの割合であり、例えば100cmの長さが105cmの長さになったときが5%伸長時に相当する。
【0014】
リファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)は、測定用伸縮性コンデンサ5の6%伸長時における静電容量M6(pF)以上であることがより好ましく、8%伸長時における静電容量M8(pF)以上であることが更に好ましく、9%伸長時における静電容量M9(pF)以上であることが更により好ましく、10%伸長時における静電容量M10(pF)以上であることが特に好ましい。一方、当該静電容量R(pF)は、測定用伸縮性コンデンサ5の20%伸長時における静電容量M20(pF)以下であることが好ましく、18%伸長時における静電容量M18(pF)以下であることがより好ましく、15%伸長時における静電容量M15(pF)以下であることが更により好ましい。これにより呼吸に伴う生体の変化の検出精度をより一層、向上することができる。
【0015】
測定用伸縮性コンデンサ5は、伸縮により静電容量が変化するものであればよい。測定用伸縮性コンデンサ5は、第1の導電層と、絶縁層と、第2の導電層とが順に積層されていることが好ましく、第1の絶縁層と、第1の導電層と、第2の絶縁層と、第2の導電層と、第3の絶縁層とが順に積層されていることがより好ましい。なお2つの導電層の間に挟まれた絶縁層が誘電層として機能する。測定用伸縮性コンデンサ5として特開2019-072048号公報、特許第6863509号公報に記載のコンデンサ型素子等を用いてもよい。測定用伸縮性コンデンサ5には1つまたは2つ以上の電極が設けられていてもよい。
【0016】
図1に示す通り、呼吸情報計測システム1は、情報処理装置10を備えていることが好ましい。測定用伸縮性コンデンサ5は、有線の形態で情報処理装置10に連結されていることが好ましいが、無線の形態で情報処理装置10に情報を送信するものであってもよい。
【0017】
情報処理装置10は、情報受信部11、制御演算部12、記憶部13、及びリファレンス静電容量測定部14を有することが好ましい。制御演算部12は、制御部12aと演算部12bとを有することが好ましい。
【0018】
情報受信部11は、測定用伸縮性コンデンサ5で得られた情報を受信し、制御演算部12へ当該情報を伝達することができる。制御演算部12は記憶部13から必要な情報を読み取って、制御部12aは演算部12bへ命令を行うことができ、演算部12bはその命令に沿って上記得られた情報に基づいて測定用伸縮性コンデンサ5の静電容量M(pF)を算出することができる。演算部12bは、更にリファレンス静電容量測定部14から得た情報からファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)を算出することができる。
【0019】
演算部12bは、測定用伸縮性コンデンサ5の静電容量M(pF)と、リファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)との差である静電容量D(pF)を算出する。静電容量D(pF)はノイズが除去された静電容量であり、このようなノイズが除去された静電容量D(pF)の変化を算出することにより、呼吸に伴う生体の変化の検出精度を向上することができる。具体的には、演算部12bは生体の呼吸の時間的周期を算出することが好ましい。生体の呼吸の時間的周期としては、呼吸頻度、呼吸深度、呼吸のリズム等が挙げられる。
【0020】
呼吸頻度の算出方法は特に限定されないが、例えば演算部12bは、所定時間において測定された静電容量D(pF)の波形のピークの数を、所定時間(分)で割ることにより呼吸頻度(回/分)を算出してもよい。また演算部12bは、当該波形のピーク間の時間間隔の平均値を求めて、所定時間を当該時間間隔の平均値で割り、更にその値を所定時間(分)で割ることにより呼吸頻度(回/分)を算出してもよい。また演算部12bは、静電容量D(pF)の波形の上昇局面または下降局面において静電容量D(pF)が所定の値に至った点の数を、所定時間(分)で割ることにより呼吸頻度(回/分)を算出してもよい。また演算部12bは、当該点と点の間の時間間隔の平均値を求めて、所定時間を時間間隔の平均値で割り、更にその値を所定時間(分)で割ることにより呼吸頻度(回/分)を算出してもよい。また演算部12bは、複数の所定時間で測定された呼吸頻度(回/分)の平均値を算出してもよい。
【0021】
呼吸深度の算出方法は特に限定されないが、例えば演算部12bは、所定時間において測定内の静電容量D(pF)の波形において、上昇局面の起点からピークまでの静電容量D(pF)の変化量をそれぞれ算出して、その平均値を求め、更に予め設定しておいた定数を乗じることにより、肺の呼吸一回当りの換気量(ml/回)の平均値を算出してもよい。当該換気量は呼吸深度の指標として用いることができる。なお静電容量D(pF)の変化量を算出するに当たっては、波形の下降局面における静電容量D(pF)の変化量を算出してもよい。また演算部12bは、複数の所定時間で測定された換気量(ml/回)の平均値を更に算出してもよい。
【0022】
演算部12bは、所定時間において測定された静電容量D(pF)の波形のピークとピークの間隔のばらつきを算出してもよい。当該ばらつきとしては、当該間隔の標準偏差、連続して隣接する間隔の差の2乗の平均値の平方根等が挙げられる。当該ばらつきは呼吸リズムの指標として用いることができる。
【0023】
演算部12bは、静電容量D(pF)を順次算出し、更に静電容量D(pF)の移動平均値を算出することが好ましい。移動平均値は、順次算出された静電容量D(pF)について時間的に移動しながら一定時間毎に平均して算出した値である。移動平均値を用いることにより、計測値のずれを低減することができる。なお順次算出された静電容量D(pF)について、ローパスフィルターに通してから移動平均値を求めてもよい。当該一定時間は、好ましくは50ミリ秒以上、より好ましくは100ミリ秒以上であり、更に好ましくは150ミリ秒以上であり、好ましくは400ミリ秒以下、より好ましくは300ミリ秒以下、更に好ましくは250ミリ秒以下である。
【0024】
演算部12bは、移動平均値に基づいて、生体の呼吸の時間的周期を算出することが好ましい。生体の呼吸の時間的周期としては、上述した呼吸頻度、呼吸深度、呼吸のリズム等が挙げられる。
【0025】
制御部12aは、上述の通り、記憶部13から必要な情報を読み取って演算部12bへ算出に係る命令を行うことができる。また制御部12aは、演算部12bで算出された呼吸頻度等の時間的周期に係る値が閾値を超えた場合に、危険信号を発生するように制御されていてもよい。
【0026】
記憶部13は、制御演算部12等への命令に係る情報が記憶されていることが好ましい。また記憶部13は、演算部12bでの算出結果の一部または全部を記憶してもよく、測定用伸縮性コンデンサ5により得られた情報の一部または全部を記憶してもよい。
【0027】
情報処理装置10は、更に電源部17を有することが好ましい。電源部17は、制御部12aからの命令を受けて、測定用伸縮性コンデンサ5に電圧、電流を印可することができる。印加電圧は、1V以上、6V以下であることが好ましく、2V以上、4V以下であることがより好ましい。
【0028】
測定用伸縮性コンデンサ5の静電容量M(pF)は、電源部17による測定用伸縮性コンデンサ5の充電時間に基づいて静電容量M(pF)を算出することが好ましい。なお測定用伸縮性コンデンサ5からの放電時間に基づいて静電容量M(pF)を算出してもよい。充電の形態としては、定電流印加、定電圧印加等が挙げられる。例えば定電流印加の場合、電圧の変化量ΔVが所定の値に至るまでの時間Δt(秒)を取得して、演算部12bにおいて、当該時間Δt(秒)を当該電圧の変化量ΔVで割って、得られた値(Δt/ΔV)に対して電流Iを乗じることにより、測定用伸縮性コンデンサ5の静電容量M(pF)を算出することができる。なお自動平衡ブリッジ法、RFI-V法等により測定用伸縮性コンデンサ5の静電容量M(pF)を算出してもよい。
【0029】
リファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)は、電源部17によるリファレンス用コンデンサ6の充電時間に基づいて静電容量R(pF)を算出することが好ましい。当該静電容量R(pF)は、電源部17からの印可に伴うノイズに相当する。なおリファレンス用コンデンサ6からの放電時間に基づいて静電容量R(pF)を算出してもよい。充電の形態としては、定電流印加、定電圧印加等が挙げられる。例えば定電流印加の場合、電圧の変化量ΔVが所定の値に至るまでの時間Δt(秒)を取得して、演算部12bにおいて、当該時間Δt(秒)を当該電圧の変化量ΔVで割って、得られた値(Δt/ΔV)に対して電流Iを乗じることにより、リファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)を算出することができる。なお自動平衡ブリッジ法、RFI-V法等によりリファレンス用コンデンサ6の静電容量R(pF)を算出してもよい。電源部17は、リファレンス用コンデンサ6と測定用伸縮性コンデンサ5に対して、同じ方法で印加を行うことが好ましい。また電源部17は、リファレンス用コンデンサ6と測定用伸縮性コンデンサ5に対して、同時に印加を行うことが好ましい。
【0030】
情報処理装置10は、更に情報送信部15を有していてもよい。これにより、演算部12bで算出された値等の情報を表示機(図示せず)に送信することができる。表示機は、受信部と表示部を有し、上記情報を受信部で受け取り、表示部において知覚可能な状態で表し示すことができるものであればよい。表示機への情報の送信方法は、無線通信であってもよく、有線通信であってもよいが、無線通信が好ましい。当該無線通信においては、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、赤外線等を利用してもよい。
【0031】
表示機としては、スマートフォン、タブレット端末、スマートウォッチ、ヘッドマウントディスプレイ、スマートグラス、スマートコンタクトレンズ、コンピュータ等の電子機器等が挙げられる。表示機は、呼吸情報をグラフ、数値、文字等の視認可能な形態で表示することが好ましいが、音声等の形態で表示してもよい。また上記の通り、制御部12aが危険信号を発生する場合には、表示機は情報送信部15を介して受信した危険信号に基づいてアラートを表示してもよい。この場合でも、視覚に限らず音声、振動、発熱等の生体が知覚可能な形態で表示すればよい。
【0032】
情報処理装置10は、情報送信部15を有していなくともよく、その場合、情報処理装置10は、演算部12bで算出された値等の情報を知覚可能な状態で表し示すことが可能な表示部を有していることが好ましい。表示部を構成する表示部材としては、画像表示器、音発生器、振動器、発熱器、発光器等が挙げられる。なお、情報処理装置10は、情報送信部15と当該表示部材との両方を有していてもよい。
【0033】
制御演算部12を構成する制御演算器としては、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ(MPU)、マイクロコントローラ、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等が挙げられる。制御演算器の数は一つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0034】
記憶部13を構成する記憶器としては、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等が挙げられる。記憶器は制御演算器に内蔵されていてもよい。また、記憶器は情報処理装置10に内蔵されていることが好ましいが、情報処理装置10に外付けされていてもよい。記憶器の数は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0035】
電源部17は、直流電源および/または交流電源により構成されていることが好ましく、直流電源により構成されていることがより好ましい。電源の周辺回路にはスイッチ、抵抗等が設けられていてもよい。電源は制御演算器に内蔵されていてもよい。また、電源は情報処理装置10に内蔵されていることが好ましいが、情報処理装置10に外付けされていてもよい。電源の数は一つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0036】
情報処理装置10としては、リファレンス用コンデンサ、制御演算器、記憶器、及び電源を有する小型装置が挙げられる。小型装置は、直方体形状、立方体形状であることが好ましく、直方体形状であることがより好ましい。小型装置が直方体形状である場合、一方の主面の面積は3000mm以下であることが好ましく、1500mm以下であることがより好ましい。また、一方の主面の面積は100mm以上であってもよく、500mm以上であってもよい。また小型装置の厚さは、50mm以下であることが好ましく20mm以下であることがより好ましく、2mm以上であってもよく、5mm以上であってもよい。
【0037】
情報処理装置10は、呼吸情報以外の生体情報を取得する生体情報取得部(図示せず)を有していてもよい。生体情報取得部を構成する部材としては、加速度計が挙げられ、加速度として3軸加速度、角速度等が挙げられる。またこれらの加速度、角速度に基づいて、演算部12bは活動量を算出してもよい。加速度、角速度、活動量の詳細は、特開2019-047982号公報の記載を参照することができる。
【0038】
測定用伸縮性コンデンサ5は、衣服に固定されていることが好ましい。生体情報取得用衣服を生体が着用するときには、生地と共に測定用伸縮性コンデンサ5が10%程度、伸長する場合が多い。更に、生体の着用時の呼吸変動に伴って伸長するが、その伸長率の変化は1%程度であることが多い。このような伸長率の変動範囲における静電容量変化の計測において、測定用伸縮性コンデンサ5とリファレンス用コンデンサ6は特に有効に機能する。測定用伸縮性コンデンサ5は衣服の表側の面に固定されていることが好ましい。これにより測定用伸縮性コンデンサ5は伸縮し易くなる。なお測定用伸縮性コンデンサ5を衣服に固定せずに直接、生体の胸部、腹部、または胸部と腹部等に貼り付けてもよい。
【0039】
測定用伸縮性コンデンサ5は長さ方向を有し、長さ方向が衣服の身丈方向または身幅方向と平行であることが好ましい。これにより生体の呼吸時の胸部や腹部の変形に伴う静電容量変化の検出精度を検出し易くすることができる。なお平行とは、完全な平行だけでは無く、各方向のなす角度が、好ましくは10度以下、より好ましくは5度以下、更に好ましくは2度以下であるものも含まれる。
【0040】
衣服としては、胸部、腹部、または胸部と腹部とを覆うものが挙げられる。衣服は、例えば帯状物や肌着であってもよい。帯状物として、胸部用ベルト、腹部用ベルト等が挙げられる。肌着として、上半身用の肌着、下半身用の肌着等が挙げられる。上半身用の肌着として、Tシャツ、ポロシャツ、キャミソール、ブラジャー、スポーツインナー、病衣、寝間着等が挙げられる。下半身用の肌着として、パンツ、スポーツインナー、病衣、寝間着等が挙げられる。
【0041】
衣服を構成する生地として、織物、編物、不織布、またこれらの組み合わせが挙げられる。織物としては、平織、綾織、朱子織等が挙げられる。編物としては、平編み、およびその変形、鹿の子編、アムンゼン編、レース編、アイレット編、添え糸網、パイル編、リブ網、リップル編、亀甲編、ブリスター編、ミラノ・リブ編、ダブルピケ編、シングル・ピケ編み、斜文編、ヘリボーン編、ポンチローマ編、バスケット編、トリコット編、ハーフ・トリコット編、サテントリコット編、ダブルトリコット編、クインズコード編、ストライプ・サッカー編、ラッセル編、チュールメッシュ編、またはこれらの組み合わせが挙げられる。不織布としては、エラストマー繊維からなる不織布が挙げられる。
【0042】
衣服は、人間が着用するものであることが好ましいが、四肢動物が着用するものであってもよい。四肢動物としては、ハムスター、犬、羊、馬、牛、象、カバ、猿等の哺乳類、トカゲ、イグアナ、ヤモリ、カメレオン、ワニ等の爬虫類等が挙げられる。
【0043】
測定用伸縮性コンデンサ5は、生体の胸部、腹部、または胸部と腹部に位置するように衣服に設けられることが好ましい。衣服は、測定用伸縮性コンデンサ5を複数有していてもよい。
【0044】
以下では、測定用伸縮性コンデンサ5が、第1の絶縁層と、第1の導電層と、第2の絶縁層と、第2の導電層と、第3の絶縁層とが順に積層されている場合における各層の構成について詳述する。各層に含まれる樹脂、フィラー等は、それぞれ単独で又は複数種を組合せて使用することができる。
【0045】
第1の絶縁層は、衣服の表面に固定されていることが好ましい。これにより、測定用伸縮性コンデンサ5は、衣服の伸縮に追従して伸縮し易くなる。第1の絶縁層は、衣服の肌側の面に固定されていてもよいが、衣服の表側の面に固定されていることがより好ましい。また、第1の絶縁層は、衣服の表面に着脱可能に固定されていてもよい。例えば、測定用伸縮性コンデンサ5は、面ファスナー、フック、ホック、ボタン等を用いて衣服の表面に着脱可能に固定されていてもよい。
【0046】
第1の絶縁層および第3の絶縁層(以下では単に絶縁カバー層と呼ぶ)は、伸縮性樹脂を含むことが好ましい。絶縁カバー層の伸縮性樹脂の含量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更により好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0047】
絶縁カバー層の伸縮性樹脂は、引張降伏伸度が70%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、120%以上であることが更に好ましく、150%以上であることが更により好ましい。引張降伏伸度は300%以下であってもよく、250%以下であってもよい。
【0048】
引張降伏伸度とは、一般的な引張試験にて得られる、縦軸に加重(ないし強度)、横軸に歪み(ないし伸度あるいは伸び)をとったときのS-S曲線において、加重の増加なしに伸びの増加が認められる最初の点、すなわち降伏点における伸度である。降伏点は、弾性変形から塑性変形に推移をする境界を概略的に示す地点と捉えられる。
【0049】
絶縁カバー層の伸縮性樹脂としては、例えば、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム等が好ましい。ゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマー等が好ましい。これらのうちニトリル基含有ゴム、ウレタンゴムがより好ましい。ウレタンゴムは、高い伸長率を有し、かつ、引張永久ひずみと残留ひずみが小さいため、繰り返し変形させた際の信頼性に優れる。ウレタンゴムとしては、ポリエーテルポリオール、またはポリエステルポリオールをポリオール成分とし、HDI系ポリイソシアネートをイソシアネート成分とするウレタンゴムが挙げられる。
【0050】
伸縮性樹脂の弾性率は、1~1000MPaであることが好ましく、2~480MPaであることがより好ましく、3~240MPaであることが更に好ましく、4~120MPaであることが更により好ましい。第1の絶縁層および第3の絶縁層の素材、構造は同一であってもよく異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0051】
絶縁カバー層として、具体的には、軟化温度が40℃~120℃のポリエステルウレタン樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂等をシート状に加工したホットメルトシートを用いてもよい。
【0052】
絶縁カバー層の平均厚さは、それぞれ10~200μmであることが好ましく、より好ましくは20~100μmである。
【0053】
第2の絶縁層は、第1の導電層、第2の導電層の間に挟まれており、測定用伸縮性コンデンサ5の誘電体層として機能することができるものである。
【0054】
第2の絶縁層の非伸長時の比誘電率は高い方が好ましい。具体的には、比誘電率は2.2以上であることが好ましく、2.8以上がより好ましく、3.4以上が更に好ましく、3.8以上が更により好ましい。比誘電率は500以下であってもよく、150以下であってもよく、80以下であってもよい。比誘電率は、例えば、アンリツ社製のネットワークアナライザーを用いた空洞共振器摂動法により、温度23℃、周波数1GHzの条件で絶縁層の比誘電率を測定することができる。
【0055】
第2の絶縁層は、柔軟性樹脂を含むことが好ましい。第2の絶縁層の柔軟性樹脂の含量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が更により好ましい。
【0056】
第2の絶縁層は、布帛等の繊維含有シートを含まないことが好ましい。これにより、第2の絶縁層が伸長し易くなる。
【0057】
第2の絶縁層の柔軟性樹脂としては、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム等が好ましい。ゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマー等が好ましく、ニトリル基含有ゴムがより好ましい。柔軟性樹脂の弾性率は、弾性率が1~1000MPaであることが好ましく、2~480MPaであることがより好ましく、3~240MPaであることが更に好ましく、4~120MPaであることが更により好ましい。
【0058】
第2の絶縁層の柔軟性樹脂は、その分子鎖に、極性基が導入されたものであることが好ましい。これにより、第2の絶縁層の比誘電率を向上させることができる。極性基としては、ニトリル基、ケトン基、エステル基、ハロゲン置換基、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、ハロゲン基等が挙げられる。また、柔軟性樹脂中に高い比誘電率を有する高誘電率フィラーを含有させることにより、第2の絶縁層の比誘電率を高めることもできる。高誘電率フィラーとして、チタン酸塩等の無機フィラーが好ましい。
【0059】
無機フィラーの比誘電率は5未満であることが好ましい。これにより、無機フィラーと樹脂界面の剥離を低減することができる。無機フィラーの比誘電率は4以下であることがより好ましく、更に好ましくは3以下である。第2の絶縁層中の比誘電率が5未満の無機フィラーの含有量は10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上である。一方、第2の絶縁層中の無機フィラーを80質量%以下とすることにより、第2の絶縁層のポアソン比を向上し、静電容量変化を向上させることができる。そのため、比誘電率が5未満の無機フィラーの含有量は、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下である。なお、第2の絶縁層中の比誘電率が5以上の無機フィラーの含有量は10%質量以下であることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.3質量%以下である。
【0060】
第2の絶縁層の平均厚さは、0.3~1000μmであることが好ましい。これにより、静電容量を大きくして検出感度を維持しつつ、伸縮に対する追従性を向上することができる。平均厚さは0.4~100μmがより好ましく、0.5~70μmが更に好ましく、0.6~50μmが更により好ましい。これにより検出感度を向上させることができる。
【0061】
第1の導電層、第2の導電層(以下では単に導電層と呼ぶ)は、導電性フィラーと柔軟性樹脂を含有することが好ましい。導電層中の柔軟性樹脂の含量は、導電性フィラーと柔軟性樹脂の合計100質量%に対して、7~35質量%であることが好ましく、より好ましくは9~28質量%であり、更に好ましくは12~20質量%である。導電層は、導電性フィラーを1種または2種以上、含有してもよい。また導電層は、柔軟性樹脂を1種または2種以上、含有してもよい。
【0062】
柔軟性樹脂と導電性フィラーの合計の含量は、導電層100質量%中、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
【0063】
導電層は、例えば、導電性フィラーと柔軟性樹脂を混練混合し、シート状に成型することにより得ることができる。好ましくは金属粒子と柔軟性樹脂に溶剤等を加えてペースト化またはスラリー化して、塗布、乾燥によりシート状に加工することが出来る。また、ペースト化した後、印刷することにより所定の形状を付与することもできる。
【0064】
導電性フィラーとして、導電性粒子が挙げられる。導電性粒子は、比抵抗が1×10-1Ωcm以下であり、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が100μm以下の粒子であることが好ましい。比抵抗が1×10-1Ωcm以下の物質としては、金属、合金、カーボン、ドーピングされた半導体、導電性高分子等が挙げられる。導電性粒子として、銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫などの金属粒子、黄銅、青銅、白銅、半田などの合金粒子、銀被覆銅のようなハイブリッド粒子、金属メッキした高分子粒子、金属メッキしたガラス粒子、金属被覆したセラミック粒子等が好ましい。
【0065】
導電性粒子として、フレーク状粉または不定形凝集粉が好ましい。これらは球状粉等よりも比表面積が大きいことから、低含量でも導電性ネットワークを形成できる。不定形凝集粉は、球状もしくは不定形状の1次粒子が単分散の形態では無く3次元的に凝集したものであり、粒子同士が物理的に接触していることから導電性ネットワークを形成しやすいため、より好ましい。導電性粒子100質量%中、フレーク状銀粒子、不定形凝集銀粉の含量は90質量%以上であることが好ましい。
【0066】
フレーク状粉は、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が0.5~20μmであることが好ましく、3~12μmであることがより好ましい。これにより、微細配線を形成し易くすることができ、スクリーン印刷等での目詰まりを低減することができる。またこれにより、導電性を向上することができる。
【0067】
不定形凝集粉は、動的光散乱法により測定した平均粒子径(50%D)が1~20μmであることが好ましく、3~12μmであることがより好ましい。これにより、分散性を向上してペースト化し易くなる。またこれにより、凝集粉としての効果、即ち低充填での良好な導電性を維持し易くなる。
【0068】
導電性フィラーとしては、その他に炭素系フィラー等が挙げられる。炭素系フィラーとしては黒煙、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノコーン、フラーレン等が好ましい。
【0069】
導電層の柔軟性樹脂は、引張弾性率が1MPa以上1000MPa以下である樹脂が好ましい。引張弾性率は、より好ましくは2~480MPaであり、更に好ましくは3~240MPaであり、更により好ましくは4~120MPaである。
【0070】
柔軟性樹脂として、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、ゴム等が挙げられる。柔軟性樹脂として、ウレタン樹脂、ゴムが好ましい。ゴムとしては、ウレタンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴムや水素化ニトリルゴムなどのニトリル基含有ゴム、イソプレンゴム、硫化ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ化ビニリデンコポリマー等が挙げられる。このうちニトリル基含有ゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴムが好ましく、ニトリル基含有ゴムが特に好ましい。
【0071】
ニトリル基含有ゴムは、ニトリル基を含有するゴムやエラストマーであれば特に限定されず、ニトリルゴムと水素化ニトリルゴムが好ましい。ニトリルゴムはブタジエンとアクリロニトリルの共重合体であり、結合アクリロニトリル量が多いと金属との親和性が増加するが、伸縮性に寄与するゴム弾性は逆に減少する。従って、アクリロニトリルブタジエン共重合体ゴム中の結合アクリロニトリル量は18~50質量%が好ましく、40~50質量%がより好ましい。
【0072】
導電層の柔軟性樹脂の含量は、導電粒子と、非導電性粒子と、柔軟性樹脂の合計100質量%に対して、7~35質量%であることが好ましく、より好ましくは9~28質量%、更に好ましくは12~20質量%である。
【0073】
導電層の非伸張時の比抵抗は3×10-3Ωcm以下であることが好ましく、1×10-3Ωcm以下であることがより好ましく、3×10-4Ωcm以下であることが更に好ましく、1×10-4Ωcm以下であることが更により好ましい。これにより、導電層内の抵抗分布を低減でき、高周波特性やパルス応答性が向上する。
【0074】
導電層の平均厚さは、10~200μmであることが好ましく、より好ましくは20~100μmである。
【0075】
第1の導電層、第2の導電層は、それぞれ、複数の導電層からなるものであってもよい。このような第1の導電層として、金属系フィラーを含む導電層と、炭素系フィラーを含む導電層とを、第2の絶縁層下に順に積層されているものが挙げられる。また第2の導電層として、金属系フィラーを含む導電層と、炭素系フィラーを含む導電層とを、第2の絶縁層上に順に積層されているものが挙げられる。
【0076】
測定用伸縮性コンデンサ5の各層を積層する方法として、シートの重ね貼りや、スクリーン印刷等により積層する方法が挙げられる。また、各層はそれぞれを溶融押出成型して積層したり、ペースト化した材料を印刷ないしコーティングして重ねることにより積層してもよい。
【0077】
測定用伸縮性コンデンサ5の各層の間には、他の層や接着剤等が含まれていてもよい。例えば、絶縁層と導電層との間には、ホットメルト接着剤が存在していてもよい。ホットメルト接着剤としては、軟化温度が30℃~150℃程度の高分子材料が好ましく、更に導電層と同程度の伸縮性を有する柔軟性を備える高分子材料がより好ましい。このようなホットメルト接着剤としては、エチレン系共重合体、スチレン系ブロック共重合体、ポリウレタン系、アクリル系共重合体およびオレフィン系重合体または共重合体等をベースポリマーとしたものが挙げられる。
【0078】
測定用伸縮性コンデンサ5は、第1の導電層と第2の導電層の間に繊維含有シートを含まないことが好ましい。これにより測定用伸縮性コンデンサ5の強度のばらつきを低減することができる。繊維含有シートとしては、繊維からなるシートや、繊維からなるシートに絶縁性樹脂を含有させたもの等が挙げられる。繊維からなるシートは、織物、編み物、不織布、またはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。
【0079】
測定用伸縮性コンデンサ5の平均厚さは、好ましくは1500μm以下であり、より好ましくは700μm以下であり、更に好ましくは450μm以下であり、更により好ましくは200μm以下である。これにより、測定用伸縮性コンデンサ5が伸縮し易くなる。一方、測定用伸縮性コンデンサ5の平均厚さは50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよい。
【0080】
リファレンス用コンデンサ6としては、第1の導電層と、絶縁層(誘電層)と、第2の導電層と順に積層されているものが挙げられる。リファレンス用コンデンサ6は、第1の絶縁層と、第1の導電層と、第2の絶縁層(誘電層)と、第2の導電層と、第3の絶縁層とが順に積層されているものであってもよい。リファレンス用コンデンサ6は、伸縮する必要は無いが伸縮するものであってもよい。
【0081】
リファレンス用コンデンサ6を形成する方法は特に限定されないが、例えば、誘電層の厚みを測定用伸縮性コンデンサ5の誘電層の厚みより薄くすること、および/または誘電層を測定用伸縮性コンデンサ5の誘電層よりも誘電率の高い素材で形成すること等により、上記静電容量M5(pF)以上の静電容量R(pF)を有するリファレンス用コンデンサ6を形成することができる。
【0082】
リファレンス用コンデンサ6の誘電層の平均厚さは、非伸長時の測定用伸縮性コンデンサ5の誘電層の平均厚さの1.0倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることが更に好ましく、0.2倍以下であることが更により好ましい。これによりリファレンス用コンデンサ6の面積を小さくしても、静電容量を高く維持し易くすることができる。一方、当該倍率は、0.01倍以上であってもよく、0.1倍以上であってもよい。
【0083】
リファレンス用コンデンサ6の誘電層の比誘電率は、非伸長時の測定用伸縮性コンデンサ5の誘電層の比誘電率の5倍以上であることが好ましく、10倍以上であることがより好ましく、20倍以上であることが更に好ましく、50倍以上であることが更により好ましく、100倍以上であることが特に好ましい。これによりリファレンス用コンデンサ6の面積を小さくしても、静電容量を高く維持し易くすることができる。一方、当該倍率は、600倍以下であってもよく、500倍以下であってもよい。
【0084】
リファレンス用コンデンサ6の誘電層は、測定用伸縮性コンデンサ5の第2の絶縁層と同様の柔軟性樹脂、無機フィラー等を含んでいてもよいが、高誘電率セラミックスを含むことが好ましく、高誘電率セラミックスからなるものであることがより好ましい。高誘電率セラミックスとしては、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸カルシウム、またはこれらの混合物が好ましく、チタン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、またはこれらの混合物がより好ましい。高誘電率セラミックスの比誘電率は、好ましくは1000以上、より好ましくは2000以上、更に好ましくは4000以上、更により好ましくは5000以上である。一方、比誘電率は、20000以下であってもよく、10000以下であってもよく、8000以下であってもよい。またリファレンス用コンデンサ6の誘電層は、高誘電率セラミックスの他に、Mg化合物、Mn化合物、Si化合物、Al化合物、V化合物、Ni化合物、希土類化合物等の添加物を含んでいてもよい。
【0085】
リファレンス用コンデンサ6の第1の導電層、第2の導電層は、それぞれ測定用伸縮性コンデンサ5と同様の導電性フィラー、柔軟性樹脂等を含んでいてもよいが、銀、金、白金、パラジウム、銅、ニッケル、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫等の金属、またはこれらの合金を含むことが好ましく、これらの金属および/またはこれらの合金からなるものであることがより好ましい。第1の導電層、第2の導電層は、それぞれ複数の層が積層された積層体であってもよい。
【実施例0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0087】
(測定用伸縮性コンデンサAの作製)
測定用伸縮性コンデンサAを、第1の絶縁層と、第1の導電層と、第2の絶縁層(誘電層)と、第2の導電層と、第3の絶縁層とを順に積層することにより作製した。
【0088】
詳細には、まずニトリル量40質量%、ムーニー粘度46のニトリルブタジエンゴム12質量部、イソホロン30質量部、平均粒子径6μmの微細フレーク状銀粉[福田金属箔粉工業社製、商品名Ag-XF301]58質量部を均一に混合し、三本ロールミルにて分散することにより導電層形成用ペーストを得た。
【0089】
次に、ニトリル量40質量%、ムーニー粘度46のNBR(ニトリルブタジエンゴム)30質量部をイソホロン40質量部に溶解させて、絶縁層形成用ペーストを得た。
【0090】
次に、スクリーン印刷法により、上記絶縁層用ペーストを離型PETフィルム上に塗布して乾燥し、幅30mm、長さ200mm、厚さ35μmの第1の絶縁層を得た。
【0091】
次に、スクリーン印刷法により、第1の絶縁層の上に上記導電層形成用ペーストを塗布して乾燥し、厚さ30μmの第1の導電層を得た。形状については、特許文献1の図5に示すような、幅10mm、長さ150mmの長方形部分と、10mm四方の折れ曲がり部分を備えるL字形状とした。次いで第1の導電層の上に、スクリーン印刷法により、絶縁層形成用ペーストを塗布して乾燥し、幅30mm、長さ200mm、厚さ35μmの第2の絶縁層(誘電層)を得た。
【0092】
次に、スクリーン印刷法により、第2の絶縁層(誘電層)の上に上記導電層形成用ペーストを塗布して乾燥し、厚さ30μmの第2の導電層を得た。形状は第1の導電層と同じく、幅10mm長さ120mmの長方形部分と、10mm四方の折れ曲がり部分を備えるL字形状とした。この際、第2の導電層は第1の導電層と長方形部分において厚み方向で重なり、折れ曲がり部分においては厚み方向で重ならないようにした。
【0093】
次に、スクリーン印刷法により、第2の導電層の上に絶縁層形成用ペーストを塗布して乾燥し、幅30mm、長さ200mm、厚さ35μmの第3の絶縁層を得た。
【0094】
次に、第1の導電層と第2の導電層のそれぞれの折れ曲がり部分に対して、凸側のバネホックボタンを打ち込み、第3の絶縁層の表面側からシグナルを検出できる検出部を設けることにより、測定用伸縮性コンデンサAを得た。
【0095】
次いで、縦41mm、横36mm、厚さ12mmの直方体の筐体内に、制御演算部として機能するCPU、メモリ、電圧印加用の電源等を配置した。更に、凹側のバネホックボタンをCPU等と電気的に導通できるように筐体の表面に取り付けて情報処理装置を作製した。情報処理装置の凹側のバネホックボタンと、測定用伸縮性コンデンサAの凸側のバネホックボタンと嵌合させることにより、情報処理装置と測定用伸縮性コンデンサAとを物理的、電気的に接合し、これにより呼吸情報計測システムを作製した。得られた呼吸情報計測システムは、リファレンス用コンデンサ6を有していないことを除いて図1に示すシステムと同様の構成を有するものである。
【0096】
得られた呼吸情報計測システムの測定用伸縮性コンデンサAの非伸長時と10%伸長時における静電容量を測定した。詳細には、オリエンテック社製の引張試験機(テンシロンRTM-250)を使用し、呼吸情報計測システムの測定用伸縮性コンデンサAの上記長方形部分をチャック間距離5.0cmで挟んで固定した。次いで25℃の環境下において、この非伸長状態における1分間の静電容量を測定した。更にチャック間距離が5.5cmになるまで測定用伸縮性コンデンサAを伸長速度10mm/秒の条件で伸長し固定して、同様に1分間の静電容量を測定した。測定用伸縮性コンデンサAの非伸長時における静電容量M(pF)は約580(pF)であり、10%伸長時における静電容量M10(pF)は約680(pF)であった。
【0097】
〈リファレンス用コンデンサA〉
静電容量が測定用伸縮性コンデンサAの非伸長時における静電容量:約580(pF)に近い約560pFである株式会社村田製作所製のチップ積層セラミックコンデンサ(GRM1882C1H561JA01)を用意し、これをリファレンス用コンデンサAとした。
【0098】
〈第1の呼吸情報計測システムの作製〉
上記と同様にしてリファレンス用コンデンサAを内蔵した情報処理装置を作製し、更に上記と同様にして当該情報処理装置と測定用伸縮性コンデンサAとを物理的、電気的に接合し、第1の呼吸情報計測システムを作製した。
【0099】
〈リファレンス用コンデンサB〉
静電容量が測定用伸縮性コンデンサAの10%伸長時における静電容量と同じ上記約680(pF)である株式会社村田製作所製のチップ積層セラミックコンデンサ(GCM1885C1H681JA16)を用意し、これをリファレンス用コンデンサBとした。
【0100】
〈第2の呼吸情報計測システムの作製〉
上記と同様にしてリファレンス用コンデンサBを内蔵した情報処理装置を作製し、更に上記と同様にして当該情報処理装置と測定用伸縮性コンデンサBとを物理的、電気的に接合し、第2の呼吸情報計測システムを作製した。
【0101】
比較例1
第1の呼吸情報計測システムの測定用伸縮性コンデンサAの上記長方形部分に対して、オリエンテック社製の引張試験機(テンシロンRTM-250)を使用し、上記長方形部分をチャック間距離5.0cmで挟んで1分間固定した。25℃の環境下で、この非伸長時において、測定用伸縮性コンデンサAに3.3Vの電圧を印加して静電容量M(pF)を測定したところ約580(pF)であった。更にチャック間距離が5.5cmになるまで測定用伸縮性コンデンサAを伸長速度10mm/秒の条件で伸長し1分間固定して、同様に1分間の静電容量を測定した。測定用伸縮性コンデンサAの10%伸長時における静電容量M10(pF)は約680(pF)であった。
【0102】
一方、これらと同時に、リファレンス用コンデンサAに3.3Vの電圧を印加して静電容量を測定したところ静電容量R(pF)は約560(pF)であった。更に上記非伸長時と10%伸長時のそれぞれについて、リファレンス用コンデンサAと測定用伸縮性コンデンサAの静電容量の差である静電容量D(pF)を求め、その標準偏差を算出した。なお当該静電容量D(pF)を算出するに当たっては、250ミリ秒毎の移動平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【0103】
実施例1
第2の呼吸情報計測システムの測定用伸縮性コンデンサAの上記長方形部分に対して、比較例1と同様にして、非伸長状態における静電容量M(pF)を測定したところ約580(pF)であった。更に比較例1と同様にして10%伸長時における静電容量M10を測定したところ約680(pF)であった。
【0104】
一方、これらと同時に、リファレンス用コンデンサBに3.3Vの電圧を印加して静電容量を測定したところ静電容量R(pF)は約680(pF)であった。更に上記非伸長時と10%伸長時のそれぞれについて、リファレンス用コンデンサBと測定用伸縮性コンデンサAの静電容量の差である静電容量D(pF)を求め、その標準偏差を算出した。なお当該静電容量D(pF)を算出するに当たっては、250ミリ秒毎の移動平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
【0106】
上述の通り、比較例1の第1の呼吸情報計測システムでは、リファレンス用コンデンサAの静電容量Rが約560(pF)であり、測定用伸縮性コンデンサAの非伸長時における静電容量M10:約580(pF)に近い値であった。また、上述の通り、実施例1の第2の呼吸情報計測システムでは、リファレンス用コンデンサBの静電容量Rが、測定用伸縮性コンデンサAの10%伸長時における静電容量M10:約680(pF)と同じであった。そして静電容量D(pF)のばらつきの指標である標準偏差については、表1に示す通り、伸長時の測定用伸縮性コンデンサAの静電容量に近い静電容量を有するリファレンス用コンデンサBを用いた実施例1の方が、非伸長時の測定用伸縮性コンデンサAの静電容量に近い静電容量を有するリファレンス用コンデンサAを用いた比較例1よりも、静電容量D(pF)の標準偏差を低減できることが分かった。
【0107】
特に10%伸長時の静電容量D(pF)の標準偏差のみならず、非伸長時の静電容量D(pF)の標準偏差についても、実施例1の方が比較例1よりも低減できたことは驚くべき結果である。
【符号の説明】
【0108】
1 呼吸情報計測システム
5 測定用伸縮性コンデンサ
6 リファレンス用コンデンサ
10 情報処理装置
11 情報受信部
12 制御演算部
12a 制御部
12b 演算部
13 記憶部
14 リファレンス静電容量測定部
15 情報送信部
17 電源部
図1