(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046048
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】入浴介助用椅子装置
(51)【国際特許分類】
A61H 33/00 20060101AFI20230327BHJP
A61G 5/12 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A61H33/00 310M
A61H33/00 310A
A61G5/12 706
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154736
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】小田 眞弘
(72)【発明者】
【氏名】杉 茂人
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094BB14
4C094CC05
4C094CC09
4C094GG02
(57)【要約】
【課題】入浴介助用椅子装置において、機械的な検知機構の構造を複雑化させることなく、座部の着地だけでなく、座部の引っ掛かり等をも検知して、駆動ユニットを停止させる。
【解決手段】入浴介助用椅子装置20は、キャリー10の支持レール14から浴槽框上の支持レールに移されて浴槽に出入り可能である。椅子21の背凭れ23の背部に昇降支持体31を設け、支持レール14上の駆動ユニット32によって、昇降支持体31を介して、椅子21を昇降可能に支持する。昇降支持体31に検知棹40を設ける。検知棹40の下端が着地すると、検知棹40が偏倚して停止スイッチ33に作動入力を加え、駆動ユニット32を停止させる。座部22と検知棹40を連繋機構50によって連結する。座部22が突き上げられたとき、連繋機構50を介して、検知棹40が作動位置に変位される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリーの支持レールから浴槽框上の支持レールに移されて浴槽に出入り可能な入浴介助用の椅子装置であって、
背凭れ及び座部を含む椅子と、
前記背凭れの背部に設けられた昇降支持体と、
前記各支持レールに乗り移り可能に支持され、かつ前記昇降支持体を介して前記椅子を昇降可能に支持する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットの制御回路に接続されて、作動入力に応答して前記駆動ユニットの駆動を停止させる停止スイッチと、
前記昇降支持体に沿って上下に延び、下端が着地したとき前記昇降支持体に対して相対的に上昇されるとともに駆動ユニット側へ偏倚して前記停止スイッチに前記作動入力を加える作動位置に位置される検知棹と、
前記座部が突き上げられたとき前記検知棹を前記作動位置に変位させるように、前記座部と前記検知棹とを連繋する連繋機構と、
を備えたことを特徴とする入浴介助用椅子装置。
【請求項2】
前記連繋機構が、前記検知棹に設けられた摺動ガイドと、前記座部に設けられて前記摺動ガイドと連繋された連繋軸とを含むことを特徴とする請求項1に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項3】
前記連繋機構が、前記昇降支持体に回転可能に設けられて前記摺動ガイドと摺動可能に係合する連動リンクを含み、前記連繋軸が、前記連動リンクを介して前記摺動ガイドと連繋されていることを特徴とする請求項2に記載の入浴介助用椅子装置。
【請求項4】
前記椅子には、平常姿勢とチルト姿勢との間で変位可能なチルト機構が設けられており、
前記座部が、前記連繋機構を介して前記検知棹と連繋されたベースフレームと、前記ベースフレーム上に設けられた座面部とを有し、前記チルト姿勢においては、前記平常姿勢に対して、前記座面部の後端部が前方へスライドされるとともに前記座面部の前端部が上方へ傾斜され、
さらに、前記ベースフレームには前後へ延びるフックが設けられ、前記座面部の底部の後端部には、前記フックに下側から引っ掛かるフック係合部が、前後へ移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の入浴介助用椅子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、要介助者の入浴介助に用いられる椅子装置に関し、特に、浴槽框に設置した支持レールに支持されて浴槽に出入り可能な入浴介助用椅子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
要介助者の入浴介助に用いる椅子装置は公知である(例えば特許文献1等参照)。この種の椅子装置は、椅子の背凭れの背部にリフト機構が設けられている。該リフト機構の駆動ユニットが、車輪付きキャリーの上端部の水平な支持レールに支持されている。キャリーによって、要介助者を座らせた椅子装置が浴室まで移動される。浴槽の框上にはレールユニットの支持レールが水平に設置され、キャリーの支持レールとレールユニットの支持レールとが一直線に連ねられる。そして、駆動ユニットがレールユニットの支持レールへスライドされることで、椅子装置が浴槽の上方に配置される。続いて、駆動ユニットの駆動によって、椅子が下降されて入槽される。これによって、要介助者を椅子に座らせた姿勢で入浴させることができる。その後、入槽時とは逆の手順で出槽される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の入浴介助用椅子装置には、入槽操作時に椅子が浴槽の底部に着地したり、椅子と浴槽内面との間に足などが引っ掛かったりした場合に、それをセンサで検知して、駆動ユニットを停止させる着地検知機構が設けられている。しかし、センサを用いた電気的な機構の場合、椅子底に設けたセンサが浴槽の湯に漬かるために、高い防水性が要求される。また、椅子の昇降によって、駆動ユニット内の安全回路とセンサとの距離が変わるため、配線処理が容易でない。
【0005】
リフト機構の昇降支持体に沿う検知棒を含む機械的な機構によって、椅子の浴槽底部への着地を検知するものも知られている。機械的な着地検知機構は、検知棒の下端に力が加わった時、検知棒が椅子に対して変位して駆動ユニットの停止スイッチを押す仕組みになっている。しかし、椅子の座部と浴槽内面との間に障害物や着座者の足などが引っ掛かったときは、作動しにくい。
本発明は、かかる事情に鑑み、防水処理や配線処理が不要な機械的な着地検知機構を有する入浴介助用椅子装置において、検知機構の構造を複雑化させることなく、座部の引っ掛かり等をも検知して、駆動ユニットを停止可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、キャリーの支持レールから浴槽框上の支持レールに移されて浴槽に出入り可能な入浴介助用の椅子装置であって、
背凭れ及び座部を含む椅子と、
前記背凭れの背部に設けられた昇降支持体と、
前記各支持レールに乗り移り可能に支持され、かつ前記昇降支持体を介して前記椅子を昇降可能に支持する駆動ユニットと、
前記駆動ユニットの制御回路に接続されて、作動入力に応答して前記駆動ユニットの駆動を停止させる停止スイッチと、
前記昇降支持体に沿って上下に延び、下端が着地したとき前記昇降支持体に対して相対的に上昇されるとともに駆動ユニット側へ偏倚して前記停止スイッチに前記作動入力を加える作動位置に位置される検知棹と、
前記座部が突き上げられたとき前記検知棹を前記作動位置に変位させるように、前記座部と前記検知棹とを連繋する連繋機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
当該入浴介助用椅子装置によれば、座部が浴槽底部に着地しようとしたときは、検知棹が浴槽底部に当たって相対的に突き上げられることで作動位置に位置される。これによって、停止スイッチに作動入力が加わり、駆動ユニットが停止される。
座部が障害物や着座者の足などに引っ掛かったときは、それによって、座部が突き上げられるのに伴って、連繋機構を介して、検知棹が作動位置に変位される。これによって、停止スイッチに作動入力が加わり、駆動ユニットが停止される。
したがって、機械的な検知機構によって、座部の着地だけでなく、座部の引っ掛かり等をも検知して、駆動ユニットを停止することで、安全性を確保できる。機械的な検知機構であるから、防水処理や配線処理が不要である。
【0008】
前記連繋機構が、前記検知棹に設けられた摺動ガイドと、前記座部に設けられて前記摺動ガイドと連繋された連繋軸とを含むことが好ましい。
これによって、座部が障害物や着座者の足などに引っ掛かって突き上げられたときは、連繋軸が座部と共に変位し、これと連繋された摺動ガイドが変位し、ひいては検知棹が作動位置に変位される。これによって、停止スイッチに作動入力が加わり、駆動ユニットが停止される。簡単な機械的検知機構によって、座部の引っ掛かり等を検知できる。
【0009】
前記連繋機構が、前記昇降支持体に回転可能に設けられて前記摺動ガイドと摺動可能に係合する連動リンクを含み、前記連繋軸が、前記連動リンクを介して前記摺動ガイドと連繋されていることが好ましい。
これによって、座部が障害物や着座者の足などに引っ掛かって突き上げられたときは、連繋軸が座部と共に変位し、これにより連動リンクが変位し、これにより摺動ガイドが変位される。ひいては検知棹が作動位置に変位される。これによって、停止スイッチに作動入力が加わり、駆動ユニットが停止される。機械的検知機構の構造が複雑になることなく、座部の引っ掛かり等を検知できる。
【0010】
前記椅子には、平常姿勢とチルト姿勢との間で変位可能なチルト機構が設けられており、
前記座部が、前記連繋機構を介して前記検知棹と連繋されたベースフレームと、前記ベースフレーム上に設けられた座面部とを有し、前記チルト姿勢においては、前記平常姿勢に対して、前記座面部の後端部が前方へスライドされるとともに前記座面部の前端部が上方へ傾斜され、
さらに、前記ベースフレームには前後へ延びるフックが設けられ、前記座面部の底部の後端部には、前記フックに下側から引っ掛かるフック係合部が、前後へ移動可能に設けられていることが好ましい。
椅子のチルトに伴って、フック係合部がフックに沿って前後に移動される。
座部のベースフレームが直接、障害物や着座者の足などに引っ掛かって突き上げられたときは、連繋機構を介して検知棹が作動位置に変位され、停止スイッチに作動入力が加わり、駆動ユニットが停止される。
座部の座面部が障害物や着座者の足などに引っ掛かって突き上げられたときは、フック係合部がフックに当たることで、ベースフレームが突き上げられる。これによって、連繋機構を介して検知棹が作動位置に変位され、停止スイッチに作動入力が加わり、駆動ユニットが停止される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、機械的な検知機構の構造を複雑化させることなく、座部の着地だけでなく、座部の引っ掛かり等をも検知して、駆動ユニットを停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る入浴介助用椅子装置及びキャリーを含む入浴用車椅子の側面図である。
【
図2】
図2は、前記入浴介助用椅子装置の椅子をチルト姿勢にした状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、前記椅子の座部の後端部及び背凭れの下端部を、検知棹を平常位置にして示す側面図である。
【
図4】
図4は、前記椅子の座部の後端部及び昇降支持体の下端部の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3のV-V線に沿う、前記座部の正面断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿う、前記座部の側面断面図である。
【
図7】
図7は、前記座部のフレームの一部をチルト姿勢で示す斜視図である。
【
図8】
図8は、前記入浴用車椅子と浴槽にセットされたレールユニットとを含む入浴介助システムの平面図である。
【
図9】
図9は、前記椅子を入槽させた状態の側面図である。
【
図10】
図10は、椅子の座部の後端部及び背凭れの下端部を、検知棹が浴槽底に着地した状態で示す側面図である。
【
図11】
図11は、椅子の座部の後端部及び背凭れの下端部を、座部が突き上げられた状態で示す側面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2実施形態に係る入浴介助用椅子装置の座部の後端部及び背凭れの下端部を、検知棹を平常位置にして示す側面図である。
【
図13】
図13は、前記第2実施形態における座部の後端部及び背凭れの下端部を、検知棹が浴槽底に着地した状態で示す側面図である。
【
図14】
図14は、前記第2実施形態における座部の後端部及び背凭れの下端部を、座部が突き上げられた状態で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図11)>
図1は、要介助者の入浴介助に用いられる入浴用車椅子1を示したものである。入浴用車椅子1は、キャリー10と、入浴介助用椅子装置20を備えている。キャリー10は、車輪13付きの走行架台11を含む。走行架台11の中央部に支柱12が立設され、その上端部に左右(
図1において紙面と直交する方向)へ延びる支持レール14が設けられている。支持レール14に椅子装置20が支持されている。
【0014】
椅子装置20は、キャリー10に支持されて運搬可能であり(
図1)、かつ浴槽框2a上の支持レール3a(
図8)に支持されて入槽可能である(
図9)。以下の説明では、特に断らない限り、椅子装置20はキャリー10に搭載されているものとする。
【0015】
図1に示すように、椅子装置20は、椅子21と、チルト機構29と、リフト機構30を有している。椅子21は、座部22及び背凭れ23を含む。座部22は、ベースフレーム22bと、ベースフレーム22b上に被さる座面部22aとを含む。
【0016】
椅子21にチルト機構29が組み込まれている。チルト機構29によって、椅子21が平常姿勢とチルト姿勢との間で変位(チルト)可能である。
図2に示すように、チルト姿勢においては、平常姿勢(
図1)に対して、座面部22aの後端部が前方へスライドされるとともに、座面部22aの前端部が上方へ傾斜される。
【0017】
図5~
図7に示すように、座面部22aの底部フレームの後端部には、軸線を左右に向けた転動体28が設けられている。ベースフレーム22bには、転動体28を前後に案内するガイド25が設けられている。ガイド25は、上方へ開口され、かつ前後へ延びる長箱形状に形成されている。ガイド25内に転動体28が前後(
図6において左右)へ転動可能(移動可能)に収容されている。ガイド25の1の長辺側壁の上端縁には、フック25fが設けられている。フック25fは、ガイド25の対向する長辺側壁へ向かって突出されるとともに前後へ延びる逆さL字断面の長板形状に形成されている。フック25fが、転動体28における前記1の長辺側壁の側の軸部28fの上方に被さっている。座面部22aが、何らかの外力によってベースフレーム22bに対して突き上げられたときは、軸部28f(フック係合部)がフック25fに下側から引っ掛かる。
【0018】
図1に示すように、椅子21は、リフト機構30を介してキャリー10に支持されている。リフト機構30は、昇降支持体31と、駆動ユニット32を含む。昇降支持体31は、背凭れ23の背部に設けられ、背凭れ23に沿って上下へ延びるとともに上方へ向かって後方へ傾斜されている。
図4に示すように、昇降支持体31の下端部の側面には、軸受部31dが設けられている。軸受部31dを介して、ベースフレーム22bの後端部の連結カバー板24が、昇降支持体31に連結されている。ベースフレーム22bは、軸受部31dを中心にして回転可能になっている。通常時は座部22の自重によるモーメントによって、ベースフレーム22bが略水平な安定角度に保持されている。
【0019】
図1に示すように、昇降支持体31の背部に駆動ユニット32が設けられている。駆動ユニット32は、支持レール14に搭載されている。
図8に示すように、入浴介助時には、支持レール14が、浴槽框2a上に別途設置されたレールユニット3の支持レール3aと一直線に連ねられる。駆動ユニット32は、これら支持レール14,3aを行き来するようにスライド可能である。ひいては、椅子装置20が、キャリー10とレールユニット3の間を移乗可能である。
【0020】
駆動ユニット32は、昇降支持体31を介して、椅子21を昇降可能に支持している。詳細な図示は省略するが、駆動ユニット32は、駆動モータと、該駆動モータの出力軸に連なる動力伝達機構と、制御回路とを含む。動力伝達機構は、駆動モータの回転トルクを昇降支持体31の昇降動作に変換する。例えば、動力伝達機構はギアを含む。かつ昇降支持体31にはラックが長手方向(上下方向)に沿って設けられ、これらギアとラックが噛み合っている。
【0021】
図1に示すように、駆動ユニット32のハウジングにおける、昇降支持体31を向く前面部には、停止スイッチ33が設けられている。停止スイッチ33は、駆動ユニット32のハウジング内の前記制御回路と電気的に接続されている。停止スイッチ33が押されることによって駆動モータが停止される。言い換えると、停止スイッチ33は、押し力すなわち作動入力に応答して、駆動ユニット32の駆動を停止させる。
【0022】
図4に示すように、昇降支持体31の一側面(例えば左側面)には、検知棹40が設けられている。
図3に示すように、検知棹40は、昇降支持体31に沿って上下に延びる長尺の板形状に形成されている。詳細な図示は省略するが、検知棹40の断面は、強度確保のために、L字形状であることが好ましい。検知棹40が厚肉板状であってもよい。
検知棹40の中間高さ部分が、停止スイッチ33と前後に近接又は当接するように配置されている。検知棹40の下端には、着地検知ローラ41(着地検知部)が設けられている。
【0023】
図3に示すように、検知棹40の上側部及び下側部には、それぞれカム板部42が前方へ突出するよう形成されている。各カム板部42には、概略「く」字状に屈曲された案内孔42aが貫通形成されている。案内孔42aの中央部より上側部分は、上へ向かって後方へ傾斜されている。案内孔42aの中央部より下側部分は、真っ直ぐ下方へ延びている。
【0024】
検知棹40の下側のカム板部42は、軸受部31dより下方に配置されている。該下側のカム板部42の外面に、連結カバー板24の三角形状の側板部24bが被さっている。
【0025】
昇降支持体31における側面(検知棹40が配置された面)の上側部及び下側部には、それぞれガイドピン43が設けられている。各ガイドピン43が、対応する案内孔42aに挿通されて係合されている。
下側のガイドピン43は、軸受部31dより下方に配置されている。
【0026】
ガイドピン43と案内孔42aとの係合によって、検知棹40が平常位置と作動位置との間で移動可能になっている。平常位置では、ガイドピン43が、案内孔42aの上端部に位置され、検知棹40が停止スイッチ33を押さないように前方へ引っ込んで配置され、かつ着地検知ローラ41が、座部22よりも下方に突出されている。
【0027】
図10に示すように、作動位置では、ガイドピン43が、案内孔42aの中間部ないしは案内孔42aの下端部に位置され、検知棹40が、平常位置のときよりも昇降支持体31に対して相対的に上昇されるとともに後方(駆動ユニット側)へ偏倚される。偏倚した検知棹40は、停止スイッチ33を押す。すなわち、停止スイッチ33に作動入力を加える。
【0028】
図3及び
図4に示すように、座部22の後端部と昇降支持体31と検知棹40とは、連繋機構50を介して連繋されている。連繋機構50は、検知棹40に設けられた摺動ガイド51と、座部22に設けられた連繋軸52と、連動リンク53とを含む。検知棹40の下側のカム板部42における案内孔42aよりも下側部分が、前方へ突出されることによって、摺動ガイド51を構成している。摺動ガイド51には、前後へ延びる長孔状のガイド孔51aが形成されている。
【0029】
連繋軸52は、連結カバー板24の側板部24bから該側板部24bの内面側へ突出するように設けられている。連繋軸52は、摺動ガイド51の下方に配置され、ひいては軸受部31dの下方に配置されている。
【0030】
連動リンク53は、概略三角形の板状に形成され、昇降支持体31の側面に添えられるように配置されている。連結カバー板24が連動リンク53の外側面に被さっている。
【0031】
連動リンク53は、昇降支持体31と検知棹40とを連繋するとともに、座部ベースフレーム22bと係合されている。昇降支持体31の下端部には、前方へ突出する取付板部31fが設けられている。取付板部31fに連動リンク53の一端部が回転可能に連結されている。連動リンク53は、取付板部31fとの連結端部から後方の検知棹40へ向かって斜め上へ延びている。連動リンク53の先端部は、昇降支持体31の側面と摺動ガイド51との間に挿し入れられている。連動リンク53の先端部には、係合ピン54が設けられている。係合ピン54が、ガイド孔51aに摺動可能に係合されている。
【0032】
連動リンク53における後方側の縁部は、なだらかに曲がる案内面53cを構成している。
検知棹40が平常位置のとき、係合ピン54は、ガイド孔51aの後端部に配置されている。かつ、連動リンク53の案内面53cが連繋軸52に上側から突き当てられている。これによって、案内面53cが連繋軸52と係合されている。連動リンク53を介して、連繋軸52と摺動ガイド51とが連繋されている。このとき、座部22のベースフレーム22bは、前記略水平な安定角度に配置されている。
【0033】
図11に示すように、ベースフレーム22bが、通常時の安定角度から軸受部31dを中心にして前端部が上へ向かうように回転変位されたときは、連結カバー板24の連繋軸52が前方へ変位される。該連繋軸52によって、連動リンク53が前方へ押されて、連動リンク53の先端部が斜め上方かつ前方へ向かって回転変位される。これによって、係合ピン54がガイド孔51aに沿って前方へ摺動されるとともに、検知棹40を押し上げる。このとき、上下のガイドピン43と案内孔42aとの相互案内作用が働き、検知棹40が後方(駆動ユニット側)へ偏倚して、作動位置に位置される。
【0034】
入浴用車椅子1は、要介助者Aを入浴させる際、次のように使用される。
図2に示すように、要介助者Aを椅子21に座らせて、入浴用車椅子1を浴室まで運ぶ。
図8に示すように、浴槽2の框2a上にはレールユニット3の支持レール3aが水平に設置される。キャリー10の支持レール14とレールユニット3の支持レール3aとが一直線に連ねられる。そして、駆動ユニット32が支持レール14から支持レール3aへスライドされる。これによって、椅子装置20が、キャリー10から浴槽2上に移行される。好ましくは、移行に際して、椅子装置20をチルトさせておく。
続いて、
図9に示すように、駆動ユニット32の駆動によって、椅子21が昇降支持体31と共に浴槽2内へ向けて下降されて、入槽される。これによって、要介助者を椅子21に座らせた姿勢で入浴させることができる。
【0035】
図10に示すように、前記入槽工程において、座部22が浴槽2の底面2bに着地しようとしたときは、それに先立って、着地検知ローラ41が浴槽底面2bに当たって突き上げられる。このため、検知棹40が昇降支持体31に対して相対的に上昇される。これに伴って、上下の案内孔42aとガイドピン43との相互案内作用によって、検知棹40が後方へ平行移動して作動位置に位置される。このとき、検知棹40が停止スイッチ33を押すことで、停止スイッチ33に作動入力が加わる。これによって、駆動ユニット32が停止される。この結果、座部22が浴槽底面2bに強く突き当たるのを回避でき、安全性を確保できる。
【0036】
検知棹40の作動位置への偏倚時には、係合ピン54がガイド孔51aに沿って前方へ相対スライドされるとともに、連動リンク53が回転される。また、連繋軸52は、連動リンク53の下方へ離れる。したがって、連繋機構50が着地時の検知棹40の偏倚動作を妨げることはない。
その後、入槽時とは逆の手順で出槽される。
【0037】
一方、
図11に示すように、椅子装置20の前記浴槽2への下降、入槽工程の途中、浴槽2内に何らかの障害物が有って、これに座部22がぶつかったり、着座者の足が浴槽2の内壁面に当たって引っ掛かったり、該浴槽2の内壁面と椅子装置20との間に足が挟まれたりすることも想定される。このような場合、座部22に上向きの力(突き上げ力)が加わる。これによって、座部22のベースフレーム22bが、軸受部31dを中心にして前端部が上へ向かうように回転変位される。前記突き上げ力が、ベースフレーム22bに直接加わったときはもちろん、直接には座面部22aに加わったときであっても、座面部22aの転動体軸部28f(フック係合部)が、フック25fに下から当たって、フック25fを突き上げることによって、ベースフレーム22bが回転変位されるようにできる。
【0038】
前記ベースフレーム22bの回転変位に伴って、連繋軸52が前方へ変位され、連動リンク53が回転変位され、係合ピン54が前方へ摺動されて、検知棹40が押し上げるとともに作動位置に位置される。これによって、停止スイッチ33に作動入力が加わり、駆動ユニット32が停止される。したがって、座部33が障害物にぶつかったり引っ掛かったりしたときにおいても、椅子21の下降動作を直ちに停止させることができる。この結果、安全性を一層確保することができる。
椅子装置20においては、簡単な構造の機械的な検知機構によって、座部22の着地だけでなく、引っ掛かりをも確実に検知できる。機械的な検知機構であるから、防水処理や配線処理が不要である。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図12~
図14)>
図12に示すように、本発明の第2実施形態に係る入浴介助用椅子装置20Bにおいては、連繋機構50の摺動ガイド55と連繋軸52とが直接に連繋されている。連動リンク53(
図3)は省略されている。
詳しくは、検知棹40における下側のカム板部42における案内孔42aよりも下側部分が、前方及び下方へ突出されて、摺動ガイド55を構成している。摺動ガイド55の下端部には、上方へ凹むガイド凹部55aが形成されている。ガイド凹部55aにおける検知棹40と対向する縁部は、上方へ向かって後方へ傾斜されたガイド面56を構成している。
【0040】
カム板部42ひいては摺動ガイド55の外面に、座部22の連結カバー板24が被さっている。連結カバー板24に設けられた連繋軸52が、ガイド凹部55a内に配置されて、ガイド面56に当たっている。これによって、摺動ガイド55と連繋軸52とが、互いに連動するように係合されている。
【0041】
図13に示すように、入浴介助用椅子装置20Bの入槽工程において、座部22が浴槽2の底面2bに着地しようとしたときは、検知棹40が浴槽底面2bに当たって突き上げられる。かつ案内孔42aとガイドピン43との相互案内作用によって、検知棹40が作動位置に偏倚される。これによって、停止スイッチ33が押されて、駆動ユニット32が停止される。このとき、連繋軸52は、ガイド面56から下方へ離れるか、ガイド面56に沿って滑る。したがって、連繋機構50の摺動ガイド55と連繋軸52とが、着地時の検知棹40の偏倚動作を妨げることはない。
【0042】
図14に示すように、入槽時における障害物や着座者の足の引っ掛かり等によって、座部22に突き上げ力が加わったときは、座部22が軸受部31dを中心にして前端部が上へ向かうように回転変位され、これに伴って、連繋軸52が前方へ変位される。このとき、連繋軸52がガイド面56に沿って摺動されることによって、摺動ガイド55が上昇される。ひいては、検知棹40が、上昇されるとともに、上下のガイドピン43と案内孔42aとの相互案内作用によって、検知棹40が後方へ平行移動して作動位置に位置される。これによって、停止スイッチ33が押されて、駆動ユニット32が停止される。この結果、安全性を確保することができる。
【0043】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、椅子にチルト機構が設けられていなくてもよい。
座部22の座面部22aが、ベースフレーム22bに対して固定(相対変位不能に連結)されていてもよい。
検知棹40の形状は、実施形態の形状に限らない。ガイドピン43及び案内孔42aに代えて、一対の平行リンクを介して、昇降支持体31と検知棹40とが連結されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば要介助者の入浴介助用の車椅子に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 入浴用車椅子
2b 浴槽底面
10 キャリー
20,20B 入浴介助用椅子装置
20B 入浴介助用椅子装置
21 椅子
22 座部
22a 座面部
22b ベースフレーム
23 背凭れ
24 連結カバー板
25f フック
28 転動体
28f 軸部(フック係合部)
29 チルト機構
30 リフト機構
31 昇降支持体
32 駆動ユニット
33 停止スイッチ
40 検知棹
41 着地検知ローラ
42 カム板部
42a 案内孔
43 ガイドピン
50 連繋機構
51 摺動ガイド
51a ガイド孔
52 連繋軸
53 連動リンク
53c 案内面
54 係合ピン
55 摺動ガイド
55a ガイド凹部
56 ガイド面