(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046064
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】光学式選別機
(51)【国際特許分類】
B07C 5/342 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
B07C5/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154758
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】宮本 知幸
【テーマコード(参考)】
3F079
【Fターム(参考)】
3F079AC13
3F079AC19
3F079CA32
3F079CA41
3F079CB33
3F079CB34
3F079CC03
3F079DA06
(57)【要約】
【課題】 多段式の光学式選別機において、巻き添え除去に関する制御を改善する。
【解決手段】 光学式選別機は、移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、光源から照射され、被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、流体を噴射するためのノズルを有し、光学センサによって取得された信号に基づいて決定される特定の被選別物に対してノズルから流体を噴射して、被選別物を選別するように構成された選別装置と、を備えている。光学式選別機は、光源、光学センサおよび選別装置によって光学的な選別を行うように各々構成されたN次(Nは2以上の整数)の選別系統を備えている。N次の選別系統のうちの少なくとも二つの選別系統は、選別装置による特定の被選別物に対する流体の噴射範囲に影響を与える設定が互いに異なるように動作可能に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式選別機であって、
移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、
前記光源から照射され、前記被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、
流体を噴射するためのノズルを有し、前記光学センサによって取得された信号に基づいて決定される特定の被選別物に対して前記ノズルから前記流体を噴射して、前記被選別物を選別するように構成された選別装置と
を備え、
前記光学式選別機は、前記光源、前記光学センサおよび前記選別装置によって光学的な選別を行うように各々構成されたN次(Nは2以上の整数)の選別系統を備え、
前記N次の選別系統のうちの少なくとも二つの選別系統は、前記選別装置による前記特定の被選別物に対する前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が互いに異なるように動作可能に構成された
光学式選別機。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式選別機であって、
(i)前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が、前記流体の噴射圧力の設定を含むことと、 (ii)前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が前記流体の噴射期間の設定を含むことと、
(iii)前記ノズルが、前記流体を選択的に噴射可能な複数の開口であって、前記被選別物の移送方向に交差する方向である交差方向に配列された複数の開口を備え、
前記複数の開口の各々には、前記交差方向における前記被選別物の各検出位置に関しての噴射担当範囲が対応付けられており、
前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が前記噴射担当範囲の設定を含むことと、
(iv)前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が前記ノズルの構造を含むことと
のうちの少なくとも一つを満たす
光学式選別機。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式選別機であって、
少なくとも、(i)前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が前記流体の噴射圧力の設定を含むことを満たし、
前記選別装置は、前記ノズルに供給される前記流体の圧力を調節するように構成された圧力調整弁を前記N次の選別系統ごとに個別に備える
光学式選別機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の光学式選別機であって、
前記光学式選別機は、前記N次の選別系統として、少なくとも1次選別系統および2次選別系統を備え、
前記光学式選別機は、前記被選別物を、第1の品質を有する第1品質物と、前記第1の品質とは異なる第2の品質を有する第2品質物と、に選別するように構成され、
前記光学式選別機は、さらに、
前記1次選別系統において、前記信号に基づいて前記第2品質物と判定された被選別物に対して前記流体を噴射することで、前記被選別物が、前記流体を噴射されなかった第1の被選別物群と、前記流体を噴射された第2の被選別物群と、に選別され、前記第1の被選別物群が前記1次選別系統から前記第1品質物として排出され、前記第2の被選別物群が前記2次選別系統に投入され、
前記2次選別系統において、前記信号に基づいて前記第2品質物と判定された被選別物に対して前記流体を噴射することで、前記第2の被選別物群が、前記流体を噴射されなかった第3の被選別物群と、前記流体を噴射された第4の被選別物群と、に選別され、前記第3の被選別物群が前記1次選別系統に再投入される
ように構成され、
前記1次選別系統における前記流体の噴射範囲が、前記2次選別系統における前記流体の噴射範囲よりも広くなるか、または、広くなる頻度が増加するように、前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が設定された
光学式選別機。
【請求項5】
請求項4に記載の光学式選別機であって、
前記光学式選別機は、前記N次の選別系統として、さらに、3次選別系統を備え、
前記光学式選別機は、
前記第4の被選別物群が前記3次選別系統に投入され、
前記3次選別系統において、前記信号に基づいて前記第1品質物と判定された被選別物に対して前記流体を噴射することで、前記第4の被選別物群が、前記流体を噴射されなかった第5の被選別物群と、前記流体を噴射された第6の被選別物群と、に選別され、前記第5の被選別物群が前記3次選別系統から前記第2品質物として排出され、前記第6の被選別物群が前記2次選別系統に再投入される
ように構成され、
前記1次選別系統における前記流体の噴射範囲が、前記2次選別系統および前記3次選別系統における前記流体の噴射範囲よりも広くなるか、または、広くなる頻度が増加するように、前記流体の噴射範囲に影響を与える設定が設定された
光学式選別機。
【請求項6】
請求項4に記載の光学式選別機であって、
前記光学式選別機は、前記第4の被選別物群が前記2次選別系統から前記第2品質物として排出されるように構成された
光学式選別機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式選別機における選別技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被選別物に光源から光を照射した際に光学センサによって得られる光情報を使用して、被選別物に含まれる不良品を判別して除去する光学式選別機(以下、単に選別機と呼ぶ)が従来から知られている。この種の選別機では、光学センサによって得られた光情報(例えば、色階調値)は閾値と比較され、その比較結果に基づいて、被選別物が良品であるか、それとも、不良品であるかが判定される。次いで、良品と判定された被選別物と、不良品と判定された被選別物と、のうちの一方にエアが噴射される。これによって、被選別物が良品と不良品とに選別される。
【0003】
このような選別機は、多段階の選別を実施可能に構成されることがある(以下、多段式選別機とも呼ぶ)。例えば、下記の特許文献1は、2段階の選別を実施可能な選別機を開示している。具体的には、1次選別系統では、不良品と判定された被選別物に対してエアが噴射され、1次選別系統から良品として排出される被選別物は、良品として回収され、1次選別系統から不良品として排出される被選別物は、2次選別系統に投入される。2次選別系統では、不良品と判定された被選別物に対してエアが噴射され、2次選別系統から良品として排出される被選別物は、良品として回収され、2次選別系統から不良品として排出される被選別物は、不良品として回収される。
【0004】
この選別機によれば、良品として回収されるべき被選別物が1次選別系統において巻き添え除去によって不良品に混入しても、当該巻き添え除去された良品を、2次選別系統での再選別によって最終的には良品として回収できる。したがって、単一の選別系統しか有していない選別機と比べて良品の純度を低下させることなく、歩留りを向上させることができる。なお、巻き添え除去とは、除去すべき被選別物に対してエアを噴射した際に、当該除去すべき被選別物に隣接して存在する被選別物が一緒に除去されることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1の技術では、2次選別系統において不良品と一緒に巻き添え除去された良品は、不良品として回収されることになる。このため、依然として、巻き添え除去に関する制御のさらなる改善が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
本発明の第1の形態によれば、光学式選別機が提供される。この光学式選別機は、移送中の被選別物に光を照射するように構成された光源と、光源から照射され、被選別物に関連付けられた光を検出するように構成された光学センサと、流体を噴射するためのノズルを有し、光学センサによって取得された信号に基づいて決定される特定の被選別物に対して流体からエアを噴射して、被選別物を選別するように構成された選別装置と、を備えている。光学式選別機は、光源、光学センサおよび選別装置によって光学的な選別を行うように各々構成されたN次(Nは2以上の整数)の選別系統を備えている。N次の選別系統のうちの少なくとも二つの選別系統は、選別装置による特定の被選別物に対する流体の噴射範囲に影響を与える設定が互いに異なるように動作可能に構成される。
【0009】
「被選別物に関連付けられた光」とは、被選別物で反射した光である反射光であってもよいし、被選別物を透過した光である透過光であってもよいし、あるいは、反射光と透過光との両方であってもよい。あるいは、反射光および/または透過光に代えて、または、加えて、「被選別物に関連付けられた光」には、蛍光物質を含む被選別物に光を照射した際に蛍光発光によって生じた光が含まれ得る。
【0010】
特定の被選別物に対する流体の「噴射範囲」とは、ある瞬間において流体が噴射される範囲に限らず、移送中の被選別物とともに移動する座標系における範囲を意味する。例えば、移送中の被選別物と、流体が噴射される領域と、の相対的な位置関係は、被選別物の移送に伴って刻々と変化するが、被選別物とともに移動する座標系において流体が一瞬でも当たる座標領域の全体が被選別物に対する流体の「噴射範囲」となり得る。
【0011】
この光学式選別機は、N次の選別系統間のうちの少なくとも二つの選別系統間で、流体の噴射範囲に影響を与える設定が異なるように動作できる。流体の噴射範囲が広いほど、巻き添え除去の発生確率は大きくなるので、このような動作は、各選別系統を通じた被選別物の流れにおける巻き添え除去の発生確率を選別系統ごとに適切に制御できることを意味している。したがって、所望の選別精度や歩留りを達成しやすい。例えば、被選別物を良品と不良品とに選別する場合には、各選別系統を通じた被選別物の流れの中で最後に不良品に対して流体を噴射する工程を有する選別系統についての流体の噴射範囲を相対的に狭く設定すれば、当該選別系統において良品が不良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。つまり、不良品として最終的に回収される被選別物に良品が混入することが抑制される。このため、流体の噴射範囲に影響を与える設定が各選別系統間で同一である従来の光学式選別機と比べて、光学式選別機全体として良品の巻き添え除去の量をいっそう低減し、歩留りを向上させることができる。
【0012】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態において、流体の噴射範囲に影響を与える設定は、流体の噴射圧力の設定を含む。流体の噴射圧力が高いほど、噴射された流体が広範囲に広がる。換言すれば、流体の噴射圧力が高いほど、流体の影響範囲(被選別物の軌道を変えることができる程度に、噴射流体による力を被選別物に対して作用できる範囲)は広くなる。したがって、この形態によれば、流体の噴射範囲を容易に制御できる。
【0013】
本発明の第3の形態によれば、第2の形態において、選別装置は、ノズルに供給される流体の圧力を調節するように構成された圧力調整弁をN次の選別系統ごとに個別に備えている。この形態によれば、N次の選別系統の各々に圧力調整弁が個別に設けられるので、N次の選別系統ごとに流体の噴射圧力を所望の値に容易に制御できる。
【0014】
本発明の第4の形態によれば、第1ないし第3のいずれかの形態において、流体の噴射範囲に影響を与える設定は、流体の噴射期間の設定を含む。流体の噴射期間が長いほど、移送中の被選別物とともに移動する座標系における流体の噴射範囲は、被選別物の移送方向に広くなる。したがって、この形態によれば、流体の噴射範囲を容易に制御できる。
【0015】
本発明の第5の形態によれば、第1ないし第4のいずれかの形態において、ノズルは、流体を選択的に噴射可能な複数の開口を備えている。複数の開口は、被選別物の移送方向に交差する方向である交差方向に配列される。複数の開口の各々には、交差方向における被選別物の各検出位置に関しての噴射担当範囲が対応付けられている。流体の噴射範囲に影響を与える設定は、噴射担当範囲の設定を含む。そのような噴射担当範囲は、例えば、少なくとも二つの選別系統の一方において、隣接する開口同士でオーバラップするように設定され、他方において、隣接する開口同士でオーバラップしないように設定されてもよい。この設定によれば、オーバラップしている噴射担当領域において特定の被選別物が検出された場合には、オーバラップしていない噴射担当領域において特定の被選別物が検出された場合と比べて、特定の被選別物に対して、より多数の開口から流体が噴射されることになる。このことは、流体の噴射範囲が交差方向に拡張されることを意味している。あるいは、噴射担当範囲は、少なくとも二つの選別系統の一方において、隣接する開口同士でオーバラップするように設定され、他方において、隣接する開口同士で、一方の選別系統よりも狭い範囲でオーバラップするように設定されてもよい。これらの例示的な設定によれば、より多数の開口から流体が噴射される事象(換言すれば、流体の噴射範囲が拡張される事象)の発生確率(発生頻度)が、少なくとも二つの選別系統間で異なることになる。そして、流体の噴射範囲の拡張は、巻き添え除去の発生確率が高まることを意味する。したがって、本形態によっても、巻き添え除去の発生確率を制御可能である。
【0016】
本発明の第6の形態によれば、第1ないし第5のいずれかの形態において、光学式選別機は、流体の噴射範囲に影響を与える設定を変更可能に構成されたコントローラを備えている。この形態によれば、ユーザは、被選別物の性状(例えば、比重)に応じて、あるいは、求められる選別精度および/または歩留りに応じて、流体の噴射範囲に影響を与える設定を変更できる。このため、ユーザの利便性および光学式選別機の汎用性が向上する。
【0017】
本発明の第7の形態によれば、第1ないし第6のいずれかの形態において、流体の噴射範囲に影響を与える設定は、ノズルの構造を含む。この形態によれば、流体の噴射範囲を容易に制御できる。
【0018】
本発明の第8の形態によれば、第1ないし第7のいずれかの形態において、光学式選別機は、N次の選別系統として、少なくとも1次選別系統および2次選別系統を備えている。光学式選別機は、被選別物を、第1の品質を有する第1品質物と、第1の品質とは異なる第2の品質を有する第2品質物と、に選別するように構成される。光学式選別機は、さらに、1次選別系統において、信号に基づいて第2品質物と判定された被選別物に対して流体を噴射することで、被選別物が、流体を噴射されなかった第1の被選別物群と、流体を噴射された第2の被選別物群と、に選別され、第1の被選別物群が1次選別系統から第1品質物として排出され、第2の被選別物群が2次選別系統に投入されるように構成される。光学式選別機は、さらに、前記2次選別系統において、前記信号に基づいて前記第2品質物と判定された被選別物に対して前記流体を噴射することで、前記第2の被選別物群が、前記流体を噴射されなかった第3の被選別物群と、前記流体を噴射された第4の被選別物群と、に選別され、第3の被選別物群が1次選別系統に再投入されるように構成される。1次選別系統における流体の噴射範囲が、2次選別系統における流体の噴射範囲よりも広くなるか、または、広くなる頻度が増加するように、流体の噴射範囲に影響を与える設定が設定される。この形態によれば、所望の選別精度と歩留りとを容易に両立させることができる。ここでの「品質」とは、個々の被選別物の望ましい性状(あるいは、望ましくない性状)に関しての優劣の程度であってもよい。このような「品質」には、不良の深刻さの程度や、不良部分の大きさの程度が含まれ得る。第2の品質は、第1の品質よりも劣っていてもよい。例えば、第1品質物が良品であり、第2品質物が不良品である場合、1次選別系統では、不良品に対する流体の噴射範囲が相対的に広いか、または、広くなる頻度が相対的に高いので、不良品を確実に除去することができ、1次選別系統から排出される良品の純度が高くなる。さらに、第3の被選別物群(換言すれば、2次選別系統から良品として排出される被選別物)は1次選別系統に再投入されるので、良品として回収されるべき被選別物が1次選別系統において巻き添え除去によって第2の被選別群(換言すれば、1次選別系統から不良品として排出される被選別物)に混入しても、当該巻き添え除去された良品を、2次選別系統での再選別によって最終的には良品として回収できる。このため、光学式選別機全体として、歩留りが向上する。しかも、2次選別系統では、不良品に対する流体の噴射範囲が相対的に狭いか、または、広くなる頻度が相対的に低いので、良品が不良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、1次選別系統に再投入される第3の被選別物群に含まれる良品の量が増加し、歩留りをさらに向上できる。また、2次選別系統では、1次選別系統に比べて不良品の除去の確実性が低下するものの(第3の被選別物群に不良品が混入する確率が高まるものの)、第3の被選別物群は、純度の高い良品を回収できる1次選別系統に再投入されるので、光学式選別機全体として、良品の純度を良好に確保できる。したがって、良品の純度の向上と、歩留りの向上と、を両立させることができる。
【0019】
本発明の第9の形態によれば、第8の形態において、光学式選別機は、N次の選別系統として、さらに、3次選別系統を備えている。光学式選別機は、第4の被選別物群が3次選別系統に投入されるように構成される。光学式選別機は、さらに、3次選別系統において、信号に基づいて第1品質物と判定された被選別物に対して流体を噴射することで、第4の被選別物群が、流体を噴射されなかった第5の被選別物群と、流体を噴射された第6の被選別物群と、に選別され、第5の被選別物群が3次選別系統から第2品質物として排出され、第6の被選別物群が2次選別系統に再投入されるように構成される。1次選別系統における流体の噴射範囲が、2次選別系統および3次選別系統における流体の噴射範囲よりも広くなるか、または、広くなる頻度が増加するように、流体の噴射範囲に影響を与える設定が設定される。この形態によれば、選別精度の向上と歩留りの向上とを、さらに高いレベルで両立させることができる。具体的には、例えば、第2の品質が第1の品質よりも劣っており、第1品質物が良品であり、第2品質物が不良品である場合、第6の被選別物群(換言すれば、3次選別系統から良品として排出された被選別物)は、2次選別系統に再投入され、最終的に1次選別系統から良品として回収されるので、歩留りをさらに向上させることができる。また、3次選別系統では、不良品に対する流体の噴射範囲が相対的に狭いか、または、広くなる頻度が相対的に低いので、不良品が良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、良品の純度を高めることができる。しかも、不良品が良品とともに巻き添え除去されて、2次選別系統に再投入され、2次選別系統と3次選別系統との間でループすることを抑制できる。
【0020】
本発明の第10の形態によれば、第8の形態において、光学式選別機は、第4の被選別物群が2次選別系統から第2品質物として排出されるように構成される。この形態によれば、簡素な構成で、第8の形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】不良品混入率が低い場合の、第1実施形態による光学式選別機における被選別物の流れの一例を示すブロック図である。
【
図2】1次ないし3次選別系統の概略構成を示す模式図である。
【
図3】シュート、光源、光学センサおよびノズルの、米の移送方向に交差する方向における位置関係を示す模式図である。
【
図4】選別装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】不良品混入率が中程度である場合の、第1実施形態による光学式選別機における被選別物の流れの一例を示すブロック図である。
【
図6】不良品混入率が高い場合の、第1実施形態による光学式選別機における被選別物の流れの一例を示すブロック図である。
【
図7】ノズルの各開口の噴射担当範囲の設定の一例を示す模式図である。
【
図8】ノズルの各開口の噴射担当範囲の設定の一例を示す模式図である。
【
図9】不良品混入率が低い場合の、第2実施形態による光学式選別機における被選別物の流れの一例を示すブロック図である。
【
図10】不良品混入率が中程度である場合の、第2実施形態による光学式選別機における被選別物の流れの一例を示すブロック図である。
【
図11】不良品混入率が高い場合の、第2実施形態による光学式選別機における被選別物の流れの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、不良品混入率が低い(例えば、10%以下)場合における、第1実施形態による光学式選別機(以下、単に選別機と呼ぶ)10における被選別物90の流れの一例を示すブロック図である。本実施形態では、選別機10は、被選別物90の一例としての米粒(より具体的には、玄米)から不良品を選別するために使用される。ここでの不良品とは、製品として望ましくない低品質の米(例えば、未熟粒、着色粒など)および異物(例えば、異種穀物、小石、泥、ガラス片など)を意味する。選別機10は、低品質の米および異物のうちの一方のみを選別するために使用されてもよい。また、被選別物90は、玄米または精白米に限られるものではなく、任意の粒状物であってもよい。例えば、被選別物90は、籾、麦粒、豆類(大豆、ひよこ豆、枝豆など)、樹脂(ペレット等)、ゴム片等であってもよい。
【0023】
図1に示すように、第1実施形態による選別機10は、1次選別系統20a(以下、単に1次系統20aとも呼ぶ)、2次選別系統20b(以下、単に2次系統20bとも呼ぶ)および3次選別系統20c(以下、単に3次系統20cとも呼ぶ)と、切替バルブ21~26と、コントローラ27と、良品ホッパ28と、不良品容器29と、を備えている。1~3次系統20a~20cの各々は、後述するように、投入された被選別物90をエア52の噴射によって良品と不良品とに選別する。切替バルブ21~26は、1~3次系統20a~20cの各々で選別された被選別物90(良品として排出される被選別物90、および、不良品として排出される被選別物90)の排出先を切り替える。切替バルブ21~26の各々の排出先は、選別機10のユーザインタフェースを介して設定することができる。コントローラ27は、選別機10の動作全般を制御する。コントローラ27の機能は、所定のプログラムをCPUが実行することによって実現されてもよいし、専用回路によって実現されてもよいし、これらの組み合わせによって実現されてもよい。コントローラ27の各機能は、一体的な一つの装置によって実現されてもよい。例えば、コントローラ27の各機能が、一つのCPUによって実現されてもよい。あるいは、コントローラ27の各機能は、少なくとも二つの装置に分散配置されてもよい。良品ホッパ28には、良品(つまり、製品)として最終的に選別された被選別物90が貯留される。不良品容器29には、不良品として最終的に選別された被選別物90が貯留される。
【0024】
1~3次系統20a~20cは、互いに同一の装置構成を有している。このため、以下では、1~3次系統20a~20cを代表して、1次系統20aの概略構成について
図2を参照して説明する。
図2に示すように、1次系統20aは、光源31,32と、光学センサ41,42と、選別装置50と、貯留タンク71と、フィーダ72と、シュート73と、第1の排出樋76と、第2の排出樋77と、を備えている。
【0025】
貯留タンク71は、被選別物90を一時的に貯留する。フィーダ72は、貯留タンク71に貯留された被選別物90を、被選別物移送手段の一例としてのシュート73上に供給する。シュート73上に供給された被選別物90は、シュート73上を下方に向けて滑走し、シュート73下端から落下する。シュート73は、多数の被選別物90を同時に落下させることができる所定幅を有している。以下の説明では、シュート73から落下した後に被選別物90が移送される方向(換言すれば、被選別物90の落下方向)を移送方向D1とも呼ぶ。また、移送方向D1と交差する方向を交差方向D2とも呼ぶ。交差方向D2は、移送方向D1に直交する方向であってもよい。
【0026】
光源31は、被選別物90の移送経路95(換言すれば、被選別物90の落下軌跡)に対して一方側(フロント側とも呼ぶ)に配置されており、光源32は、被選別物90の移送経路95に対して他方側(リア側とも呼ぶ)に配置されている。光源31,32は、移送経路95上を移送中の被選別物90(つまり、シュート73から滑り落ちた被選別物90)に光33,34をそれぞれ照射する。本実施形態では、光源31,32の各々は、赤色光を放出する複数のLEDと、緑色光を放出する複数のLEDと、青色光を放出する複数のLEDと、近赤外光を放出する複数のLEDと、を備えている。ただし、光源31,32の仕様(例えば、数、発光形式、光33,34の波長領域など)は、特に限定されない。例えば、光源31,32として、可視光を放出するLEDのみ、または、近赤外光を放出するLEDのみが使用されてもよい。あるいは、近赤外光を放出するLEDは、フロント側およびリア側のうちの一方側のみに配置されてもよい。あるいは、光源31,32の一方が省略されてもよい。
【0027】
光学センサ41はフロント側に配置されており、光学センサ42はリア側に配置されている。光学センサ41,42は、光源31,32から照射され、被選別物90に関連付けられた光を検出する。具体的には、フロント側の光学センサ41は、フロント側の光源31から照射され、被選別物90で反射した光33と、リア側の光源32から照射され、被選別物90を透過した光34と、を検出可能である。リア側の光学センサ42は、リア側の光源32から照射され、被選別物90で反射した光34と、フロント側の光源31から照射され、被選別物90を透過した光33と、を検出可能である。
【0028】
光学センサ41,42の各々は、本実施形態では、カラーCCDセンサおよび近赤外センサであり、直線状に配列された複数の受光素子43,44(
図3参照)をそれぞれ備えている。複数の受光素子43,44は、交差方向D2に配列されている。このため、光学センサ41,42は、シュート73の所定幅にわたって移送される多数の被選別物90を同時に撮像することができる。光学センサ41,42の仕様は、特に限定されず、光源31,32の仕様に応じて任意に決定され得る。また、光学センサ41,42の一方が省略されてもよい。
【0029】
光学センサ41,42からの出力、すなわち、検出された光の強度を表すアナログ信号は、AC/DCコンバータ(図示省略)によって、所定のゲインで増幅され、さらに、デジタル信号に変換される。このデジタル信号(換言すれば、アナログ信号に対応する階調値)は、コントローラ27(
図1参照)に入力される。コントローラ27は、入力された光の検出結果(つまり画像)に基づいて、被選別物90が良品であるか、それとも、不良品であるかを判定する。具体的には、不良品の種類ごとに予め定められた色(波長)に対応する画像の階調値と、不良品の種類ごとに予め定められた閾値と、を比較し、その大小関係に基づいて、被選別物90が良品であるか、それとも、不良品であるかを判定する。この判定には、光学センサ41によって検出される反射光33、透過光34、および、反射光33と透過光34とが合成された光、ならびに、光学センサ42によって検出される反射光34、透過光33、および、反射光33と透過光34とが合成された光のうちの少なくとも一つに基づく画像が使用され得る。また、特定の種類の不良品については、不良部分(不良を表す画素)のサイズに基づいて、被選別物90が良品であるか、それとも、不良品であるかが判定されてもよい。
【0030】
選別装置50は、エア52を噴射するための複数のノズル51を備えている。複数のノズル51は、交差方向D2に配列されている(
図3参照)。ノズル51の各々は、エア52を噴射するための複数の開口53を備えている。複数の開口53は、交差方向D2に配列されている(
図3参照)。本実施形態では、開口53は、移送方向D1を短手方向とし、移送方向D1に直交する方向を長手方向とする矩形形状を有している。本実施形態では、複数の開口53を有する複数のノズル51が使用されるが、代替実施形態では、複数の開口53を有する単一のノズル51が使用されてもよい。さらなる代替実施形態では、単一の開口53を有する複数のノズル51が使用されてもよい。
【0031】
選別装置50は、いずれかのノズル51のいずれかの開口53から特定の被選別物90に向けてエア52を選択的に噴射する。詳細は後述するが、ノズル51の各々の開口53の各々には、バルブを介してエアタンクが接続されている。コントローラ27からの制御信号に応じて少なくとも一つのバルブが選択的に開かれることによって、当該少なくとも一つのバルブに対応する開口53から被選別物90に向けてエア52が選択的に噴射される。より具体的には、開口53の各々には、交差方向D2における被選別物90の各検出位置に関しての噴射担当範囲が対応付けられる。そして、開口53の各々は、対応する噴射担当範囲内に特定の被選別物90が位置するとき、または、対応する噴射担当範囲内に特定の被選別物90の所定位置(例えば、中心)が位置するときにエア52を噴射する。このように、複数の開口53の各々には、交差方向D2における被選別物90の各検出位置に関しての、エア52の噴射を担当すべき範囲が割り当てられている。実際には、噴射担当範囲は、コントローラ27に入力される画像上の交差方向D2の位置によって定義される。
【0032】
エア52が噴射されるべき「特定の被選別物90」とは、良品と判定された被選別物90、および、不良品と判定された被選別物90のいずれか一方であり、どちらの被選別物90にエア52を噴射するかは予め設定される。不良品と判定された被選別物90に対してエアを噴射する運転モードを通常モードとも呼ぶ。良品と判定された被選別物90に対してエアを噴射する運転モードを逆打モードとも呼ぶ。
【0033】
エア52を噴射された特定の被選別物90(例えば、不良品と判定された被選別物90)は、エア52によって吹き飛ばされ、シュート73からの落下軌道(つまり、移送経路95)から逸脱して第2の排出樋77に導かれる(
図2に被選別物91として示す)。一方、特定の被選別物90以外の被選別物90(特定の被選別物90が、不良品と判定された被選別物90である場合には、良品と判定された被選別物90であり、以下、その他の被選別物90とも呼ぶ)には、エア52は噴射されない。このため、その他の被選別物90は、落下軌道を変えることなく、第1の排出樋76に導かれる(
図2に被選別物92として示す)。このようにして、貯留タンク71に投入された被選別物90は、良品と判定された被選別物90と、不良品と判定された被選別物90と、に選別される。このような選別プロセスでは、エア52の噴射によって、特定の被選別物90の周囲に存在する、その他の被選別物90が一緒に吹き飛ばされ、巻き添え除去が発生することがある。
【0034】
なお、シュート73から落下した後の被選別物90に向けてエア52を噴射する構成に代えて、シュート73上を滑走中の被選別物90に向けてエア52を噴射して、被選別物90の移送経路を変更してもよい。また、被選別物移送手段として、シュート73に代えて、ベルトコンベヤが使用されてもよい。この場合、ベルトコンベヤの一端から落下する被選別物90に向けてエア52が噴射されてもよい。あるいは、ベルトコンベヤ上で搬送中の被選別物90に向けてエア52が噴射されてもよい。
【0035】
ここで説明を
図1に戻す。1次系統20aは通常モードで運転される。つまり、1次系統20aでは、良品と判定された被選別物90は、エア52の噴射を受けずに、第1の排出樋76に排出される。一方、不良品と判定された被選別物90は、エア52の噴射を受けて、第2の排出樋77に排出される。
図1では、1~3次系統20a~20cの各々から排出される「良品」および「不良品」が、通常モード、逆打モードの違いに起因して、第1の排出樋76および第2の排出樋77のいずれに排出されるのかを区分して図示している。具体的には、1~3次系統20a~20cの各々から排出される被選別物90のうち、エア52の噴射を受けずに、第1の排出樋76に排出される被選別物90(例えば、1次系統20aから排出される「良品」)を左側に表示し、エア52の噴射を受けて、第2の排出樋77に排出される被選別物90(例えば、1次系統20aから排出される「不良品」)を右側に表示している。この点は、後述する
図5,6,9~11についても同様である。
【0036】
1次系統20aから第1の排出樋76を介して良品として排出された被選別物90は、切替バルブ21を介して良品ホッパ28に排出される。良品ホッパ28に貯留された被選別物90は、その後工程に設置された設備(例えば、計量・梱包装置)に供給される。1次系統20aから第2の排出樋77を介して不良品として排出された被選別物90は、切替バルブ22を介して2次系統20bに投入される。
【0037】
2次系統20bは通常モードで運転される。したがって、2次系統20bでは、良品と判定された被選別物90は、エア52の噴射を受けずに、第1の排出樋76に排出される。一方、不良品と判定された被選別物90は、エア52の噴射を受けて、第2の排出樋77に排出される。そして、良品として第1の排出樋76から排出される被選別物90は、切替バルブ23を介して1次系統20aへ再投入される。つまり、1次系統20aから不良品として排出された被選別物90に含まれる良品は、1次系統20aで再選別され、最終的に1次系統20aから良品として良品ホッパ28に回収される機会を与えられる。このため、良品の歩留りを向上できる。不良品として第2の排出樋77から排出される被選別物90は、切替バルブ24を介して3次系統20cへ投入される。
【0038】
3次系統20cは逆打モードで運転される。したがって、3次系統20cでは、不良品と判定された被選別物90は、エア52の噴射を受けずに、第1の排出樋76に排出される。一方、良品と判定された被選別物90は、エア52の噴射を受けて、第2の排出樋77に排出される。そして、不良品として第1の排出樋76から排出される被選別物90は、切替バルブ25を介して不良品容器29へ排出される。また、良品として第2の排出樋77から排出される被選別物90は、切替バルブ26を介して2次系統20bへ再投入される。つまり、2次選別系統20bから不良品として排出された被選別物90に含まれる良品は、2次系統20bで再選別され、1次系統20aへ再投入され、最終的に1次系統20aから良品として回収される機会を与えられる。このため、良品の歩留りをさらに向上できる。
【0039】
上述した選別機10において、本実施形態では、1~3次系統20a~20cは、シュート73、光源31,32および光学センサ41,42を共有するように構成されている。具体的には、
図3に示すように、単一のシュート73は、移送方向D1に延在する隔壁74,75によって、1次系統20a用の1次系統領域73aと、2次系統20b用の2次系統領域73bと、3次系統20c用の3次系統領域73cと、に区切られている。
【0040】
光源31は、単一の基板上に複数の発光素子35が交差方向D2に配列された光源ユニットである。発光素子35は、1~3次系統領域73a~73cの全体に亘って配列されており、1~3次系統領域73a~73cの各々から落下する被選別物90のいずれにも光33を照射可能である。同様に、光源32は、単一の基板上に複数の発光素子36が交差方向D2に配列された光源ユニットである。発光素子36は、1~3次系統領域73a~73cの全体に亘って配列されている。
【0041】
光学センサ41,42は、上述の通り複数の受光素子43,44が交差方向D2にそれぞれ配列されたラインセンサである。受光素子43,44は、1~3次系統領域73a~73cの全体に亘って配列されている。このため、受光素子43,44は、1~3次系統領域73a~73cの各々から落下する被選別物90のいずれに関連付けられた光33,44もそれぞれ検出可能である。
【0042】
選別装置50は、上述のとおり、交差方向D2に配列された複数のノズル51を備えている。ノズル51は、1~3次系統領域73a~73cの全体に亘って配列されている。このため、選別装置50は、1~3次系統領域73a~73cの各々から落下する被選別物90のいずれにもエア52を噴射可能である。
【0043】
シュート73、光源31,32および光学センサ41,42をこのように共有する構成によれば、選別機10の装置構成を簡素化できるとともに小型化できる。ただし、シュート73、光源31,32および光学センサ41,42の少なくとも一部は、1~3次系統20a~20cごとに個別に用意されてもよい。
【0044】
図4に示すように、選別装置50は、上述したノズル51に加えて、エアタンク54と、圧力調整弁(レギュレータ)55と、マニホールド56と、第1の配管57と、第2の配管58と、第3の配管59と、を備えている。エアタンク54は、第1の配管57と、圧力調整弁55と、第2の配管58と、マニホールド56と、第3の配管59と、を介して、ノズル51に流体連通可能に接続される。
【0045】
エアタンク54は、圧縮機(図示せず)によって圧縮されたエアを貯留する。圧力調整弁55は、エアタンク54からノズル51に供給されるエア52の圧力を設定圧力値に調整(減圧または増圧)する。コントローラ27は、選別機10のユーザインタフェース(図示せず)への入力に基づいて、圧力調整弁55に制御信号を送出し、圧力調整弁55の設定圧力値を変更可能に構成される。エアタンク54と圧力調整弁55とは、第1の配管57によって互いに接続される。
【0046】
一つの圧力調整弁55には、複数のマニホールド56が複数の第2の配管58を介して接続される。マニホールド56の各々は、一つの入り口と、複数の出口と、一つの入り口よりも下流側で分岐して複数の出口にそれぞれ接続される通路と、を備えている(いずれも図示せず)。分岐した通路の各々には、コントローラ27からの制御信号に応じて通路を開閉するためのバルブ(
図4では図示せず。
図7および
図8にバルブ591~593として例示されている。)が配置されている。
【0047】
一つのノズル51には、マニホールド56の出口の各々に接続された第3の配管59を介して、複数のマニホールド56が接続される。一つのノズル51に接続される複数のマニホールド56の出口の総数は、当該一つのノズル51の開口53の数に等しい。つまり、マニホールド56の通路の分岐点よりも上流側(ノズル51側)の部分は、互いに独立した流路を形成する。
【0048】
1~3次系統20a~20cの各々は、選別装置50の各構成要素をそれぞれ個別に備えている。具体的には、エアタンク54は、1次系統用エアタンク54a、2次系統用エアタンク54bおよび3次系統用エアタンク54cと、を備えている。同様に、圧力調整弁55は、1次系統用圧力調整弁55aと、2次系統用圧力調整弁55bと、3次系統用圧力調整弁55cと、を備えており、マニホールド56は、1次系統用マニホールド56aと、2次系統用マニホールド56bと、3次系統用マニホールド56cと、を備えており、ノズル51は、1次系統用ノズル51aと、2次系統用ノズル51bと、3次系統用ノズル51cと、を備えている。
【0049】
本実施形態のように圧力調整弁55を1~3次系統20a~20cごとに個別に設けることによって、1~3次系統20a~20cごとにエア52の噴射圧力を所望の値に容易に制御できる。ただし、噴射圧力が固定的に設定されてもよい場合には、流路断面積の違いなどによって、噴射圧力の違いが実現されてもよい。また、本実施形態のようにエアタンク54を1~3次系統20a~20cごとに個別に設けることによって、1~3次系統20a~20c間でエア消費量にばらつきが生じても、1~3次系統20a~20cの各々においてエア52の噴射を適切な噴射圧力で安定的に行うことができる。したがって、選別ミスが低減され、選別精度が向上する。ただし、単一のエアタンク54が1~3次系統20a~20cで共用されてもよい。
【0050】
上述した選別機10において、1~3次系統20a~20cのうちの少なくとも二つの系統は、特定の被選別物90(つまり、エア52が噴射されるべき被選別物90)に対するエア52の噴射範囲に影響を与える設定(以下、噴射設定とも呼ぶ)が互いに異なるように動作可能に構成される。以下、そのような構成について説明する。
【0051】
本実施形態では、噴射設定には、エア52の噴射圧力の設定が含まれる。エア52の噴射圧力が高いほど、特定の被選別物90が第2の排出樋77に届く程度に特定の被選別物90の軌道を代えることができる空間的な範囲は、エア52の噴射方向に交差する任意の方向に広くなる。つまり、同じ大きさの開口53からエア52が噴射される場合であっても、特定の被選別物90に対するエア52の噴射範囲は、エア52の噴射圧力が高いほど、広くなる。エア52の噴射範囲が広くなると、特定の被選別物90をより確実に除去する(つまり、第2の排出樋77に導く)ことができるとともに、第1の排出樋76に排出されるその他の被選別物90の純度を上げる(特定の被選別物90の混入率を下げる)ことができる。一方で、エア52の噴射範囲が広くなると、特定の被選別物90に隣接するその他の被選別物90が巻き添え除去される確率が高まり、第1の排出樋76に排出されるその他の被選別物90の排出量(その他の被選別物が、良品と判定された被選別物90である場合には、歩留り)が低下する。つまり、エア52の噴射範囲が広くなると、その他の被選別物90の排出量が低下するものの、純度が上がり、エア52の噴射範囲が狭くなると、その他の被選別物90の純度が下がるものの、その他の被選別物90の排出量が増加する。
【0052】
選別機10では、エア52の噴射範囲(本実施形態では、噴射圧力によって制御される)と、その他の被選別物90の純度および量と、のこのような相関に着目し、1~3次系統20a~20cごとに、エア52の噴射圧力の適切な設定が行われる。具体的には、その他の被選別物90の純度を優先することが望まれる系統では、エア52の噴射圧力が相対的に高く設定され、その他の被選別物90の排出量を優先することが望まれる系統では、エア52の噴射圧力が相対的に低く設定される。
【0053】
例えば、選別機10における被選別物90の流れが
図1に示す通りである場合、1次系統20aにおけるエア52の噴射圧力は、2次系統20bおよび3次系統20cにおけるエア52の噴射圧力よりも高く設定されてもよい。換言すれば、1次系統20aにおけるエア52の噴射範囲が、2次系統20bおよび3次系統20cにおけるエア52の噴射範囲よりも広くなるように、噴射設定が設定されてもよい。2次系統20bおよび3次系統20cの噴射圧力は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
このような設定によれば、通常モードで運転される1次系統20aでは、相対的に高い噴射圧力のエア52によって不良品を確実に除去して、純度の高い良品を良品ホッパ28に回収できる。さらに、通常モードで運転される2次系統20bでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、良品が不良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、良品として排出される被選別物90に含まれる良品の量が多くなり、歩留りをさらに向上することができる。なお、2次系統20bでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、2次系統20bから良品として排出された被選別物90に不良品が混入する可能性が高まるが、2次系統20bから良品として排出された被選別物90は、純度の高い良品を回収できる1次系統20aに再投入される。このため、選別機10全体としては、良品の高い純度を確保できる。
【0055】
さらに、逆打モードで運転される3次系統20cでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、不良品が良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、2次系統20bから良品として排出される被選別物90の純度を高めて、選別機10全体として良品の高い純度を確保できる。しかも、不良品が良品とともに巻き添え除去されて、2次系統20bに再投入され、2次系統20bと3次系統20cとの間でループすることを抑制できる。なお、3次系統20cでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、不良品として回収される被選別物90に良品が混入する確率が高まるが、1次系統20aおよび2次系統20bで2回、不良品として選別された後に3次系統20cに投入される被選別物90に含まれる良品の量は僅かである。このため、この問題は、選別機10全体としては歩留りに大きな影響を与えない。
【0056】
図5は、不良品混入率が中程度(例えば、60%以下)である場合の、選別機10における被選別物90の流れの一例を示すブロック図である。この被選別物90の流れは、コントローラ27が切替バルブ21~26に制御信号を送出し、それに応じて、第1の排出樋76に排出された被選別物90、および、第2の排出樋77に排出された被選別物90の排出先が切り替えられることによって実現される。
図5の例では、
図1の例と同様に、1次系統20aおよび2次系統20bは通常モードで運転され、3次系統20cは逆打モードで運転される。1次系統20aから第1の排出樋76を介して良品として排出された被選別物90は、切替バルブ21を介して2次系統20bに投入される。1次系統20aから第2の排出樋77を介して不良品として排出された被選別物90は、切替バルブ22を介して3次系統20cに投入される。
【0057】
2次系統20bから第1の排出樋76を介して良品として排出される被選別物90は、切替バルブ23を介して良品ホッパ28に排出される。2次系統20bから第2の排出樋77を介して不良品として排出される被選別物90は、切替バルブ24を介して1次系統20aに再投入される。3次系統20cから第1の排出樋76を介して不良品として排出される被選別物90は、切替バルブ25を介して不良品容器29に排出される。3次系統20cから第2の排出樋77を介して良品として排出される被選別物90は、切替バルブ26を介して1次系統20aに再投入される。このような被選別物90の流れによれば、2次系統20bから不良品として排出される被選別物90に含まれる良品、および、3次系統20cから良品として排出される被選別物90に含まれる良品は、1次系統20aに再投入され、最終的に2次系統20bから良品として良品ホッパ28に回収される機会を与えられる。このため、良品の歩留りを向上できる。
【0058】
図5に示す例において、2次系統20bにおけるエア52の噴射圧力は、1次系統20aおよび3次系統20cにおけるエア52の噴射圧力よりも高く設定されてもよい。1次系統20aおよび3次系統20cの噴射圧力は同じであってもよいし、異なっていてもよい。このような設定によれば、通常モードで運転される1次系統20aでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、良品が不良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、良品として排出される被選別物90に含まれる良品の量が多くなる。良品として排出される被選別物90に含まれる良品は、2次系統20bで再選別された後、良品として回収されるので、1次系統20aから良品として排出される被選別物90に含まれる良品の量が多くなると、歩留りがさらに向上する。
【0059】
さらに、通常モードで運転される2次系統20bでは、相対的に高い噴射圧力のエア52によって不良品を確実に除去して、純度の高い良品を回収できる。なお、1次系統20aの相対的に低い噴射圧力に起因して、1次系統20aから良品として排出された被選別物90に不良品が混入する可能性が高まるが、1次系統20aから良品として排出された被選別物90は、純度の高い良品を回収できる2次系統20bに投入されるので、選別機10全体としては、良品の高い純度を確保できる。また、2次系統20bでは、相対的に高い噴射圧力に起因して、良品が不良品とともに巻き添え除去される確率が高まるが、2次系統20bから不良品として排出された被選別物90は、良品が不良品とともに巻き添え除去されることが抑制される1次系統20aに再投入される。このため、2次系統20bの相対的に高い噴射圧力が、選別機10全体としての歩留りの低下を招くことはない。
【0060】
さらに、逆打モードで運転される3次系統20cでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、不良品が良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、不良品が良品とともに巻き添え除去されて、1次系統20aに再投入され、1次系統20aと3次系統20cとの間で2次系統20bを介してループすることを抑制できる。なお、3次系統20cでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、不良品として回収される被選別物90に良品が混入する確率が高まる。しかし、3次系統20cに投入される被選別物90、すなわち、1次系統20aから不良品として排出される被選別物90に良品が混入しにくい。このため、3次系統20cに投入される被選別物90に含まれる良品の量は僅かである。したがって、この問題は、選別機10全体としては歩留りに大きな影響を与えない。
【0061】
図6は、不良品混入率が高い(例えば、60%以上)場合の、選別機10における被選別物90の流れの一例を示すブロック図である。この被選別物90の流れは、コントローラ27が切替バルブ21~26に制御信号を送出し、それに応じて、第1の排出樋76に排出された被選別物90、および、第2の排出樋77に排出された被選別物90の排出先が切り替えられることによって実現される。
図6の例では、1次系統20aは逆打モードで運転され、2次系統20bおよび3次系統20cは通常モードで運転される。1次系統20aから第1の排出樋76を介して不良品として排出された被選別物90は、切替バルブ21を介して不良品容器29に排出される。1次系統20aから第2の排出樋77を介して良品として排出された被選別物90は、切替バルブ22を介して2次系統20bに投入される。
【0062】
2次系統20bから第1の排出樋76を介して良品として排出される被選別物90は、切替バルブ23を介して3次系統20cに投入される。2次系統20bから第2の排出樋77を介して不良品として排出される被選別物90は、切替バルブ24を介して1次系統20aに再投入される。3次系統20cから第1の排出樋76を介して良品として排出される被選別物90は、切替バルブ25を介して良品ホッパ28に排出される。3次系統20cから第2の排出樋77を介して不良品として排出される被選別物90は、切替バルブ26を介して2次系統20bに再投入される。このような被選別物90の流れによれば、2次系統20bから不良品として排出される被選別物90に含まれる良品、および、3次系統20cから不良品として排出される被選別物90に含まれる良品は、1次系統20aおよび2次系統20bにそれぞれ再投入され、最終的に3次系統20cから良品として良品ホッパ28に回収される機会を与えられる。このため、良品の歩留りを向上できる。
【0063】
図6に示す例において、3次系統20cにおけるエア52の噴射圧力は、1次系統20aおよび2次系統20bにおけるエア52の噴射圧力よりも高く設定されてもよい。1次系統20aおよび2次系統20bの噴射圧力は同じであってもよいし、異なっていてもよい。このような設定によれば、逆打モードで運転される1次系統20aでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、不良品が良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、1次系統20aに投入される被選別物90に占める不良品の割合が高くても、良品として排出される被選別物90における良品の純度を好適に確保できる。また、良品として排出される被選別物90に不良品が混入する可能性が低くなるので、不良品が良品とともに巻き添え除去されて、2次系統20bに再投入され、1次系統20aと2次系統20bとの間でループすること、または、1次系統20aと3次系統20cとの間で2次系統20bを介してループすることを抑制できる。
【0064】
さらに、通常モードで運転される2次系統20bでは、相対的に低い噴射圧力に起因して、良品が不良品とともに巻き添え除去されることが抑制される。このため、良品を最終的に良品ホッパ28に回収する3次系統20cに投入される良品の量が多くなり、歩留りをさらに向上することができる。
【0065】
さらに、通常モードで運転され、良品を最終的に回収する3次系統20cでは、相対的に高い噴射圧力のエア52によって不良品を確実に除去して、純度の高い良品を良品ホッパ28に回収できる。また、なお、3次系統20cの相対的に高い噴射圧力に起因して、3次系統20cから不良品として排出された被選別物90に良品が混入する可能性が高まる。しかし、3次系統20cから不良品として排出される被選別物90に含まれる良品は、2次系統20bに再投入され、最終的に3次系統20cから良品として回収される機会を再度、与えられる。このため、この問題が、選別機10全体としての歩留りの低下を招くことはない。
【0066】
上述した選別機10によれば、1次から3次系統20a~20cを通じた被選別物90の流れにおける巻き添え除去の発生確率を1次から3次系統20a~20cごとに適切に制御できる。したがって、所望の選別精度や歩留りを容易に達成することができる。また、良品の純度と歩留りとを高いレベルで両立させることもできる。
【0067】
さらに、選別機10によれば、コントローラ27は、圧力調整弁55を制御することによって、1次~3次系統20a~20cの各々の噴射設定、すなわち、エア52の噴射圧力の設定を変更可能に構成される。このため、ユーザは、上述したように、被選別物90における不良品の混入率に応じて、噴射圧力の設定を1次~3次系統20a~20cごとに適切に変更できる。噴射圧力の設定の変更は、被選別物90における不良品の混入率に限らず、被選別物90の性状(例えば、比重)に応じて、あるいは、求められる選別精度および/または歩留りに応じて、適宜、変更され得る。このため、ユーザの利便性および選別機10の汎用性が向上する。
【0068】
代替実施形態では、1次~3次系統20a~20cごとに設定される噴射設定には、エア52の噴射期間(すなわち、噴射を継続する時間)の設定が含まれる。噴射期間が長いほど、移送中の被選別物90とともに移動する座標系における被選別物90に対するエア52の噴射範囲が移送方向D1に広くなる。噴射範囲が移送方向D1に広くなると、特定の被選別物90(エア52が噴射されるべき被選別物90)をより確実に除去することができる一方で、その他の被選別物90(エア52が噴射されるべきではない被選別物90)が巻き添え除去される確率が高まる。例えば、
図1に示した例では、1次系統20aにおけるエア52の噴射範囲を2次系統20bおよび3次系統20cにおけるエア52の噴射範囲よりも広くするために、1次系統20aにおけるエア52の噴射期間は、2次系統20bおよび3次系統20cにおけるエア52の噴射期間よりも長く設定されてもよい。2次系統20bおよび3次系統20cの噴射期間は同じであってもよいし、異なっていてもよい。このような構成によっても、1次~3次系統20a~20cごとのエア52の噴射範囲、ひいては、巻き添え除去の発生確率を制御できる。なお、詳しい説明は省略するが、
図5または
図6に示す例でも、1次~3次系統20a~20cごとに、噴射期間に基づいてエア52の噴射範囲を制御可能である。コントローラ27は、1次~3次系統20a~20cの各々の噴射期間の設定を変更可能に構成されてもよい。
【0069】
さらなる代替実施形態では、1次~3次系統20a~20cごとに設定される噴射設定には、噴射担当範囲の設定、すなわち、交差方向D2における特定の被選別物90の各検出位置と、当該特定の被選別物90に向けてエア52を噴射すべき開口53と、の対応関係が含まれる。具体的には、そのような噴射担当範囲の設定は、例えば、隣接する開口53の噴射担当範囲がオーバラップするか否かの設定とすることができる。噴射担当範囲がオーバラップする設定では、予め定められた数(例えば、一つ)の開口53からエア52が噴射されるケースと、より多数(例えば、二つ)の開口53からエア52が噴射されるケースと、が発生し得るが、噴射担当範囲がオーバラップしない設定では、一つの特定の被選別物90に対してエア52を噴射する開口53の数は変動しない。この点について、以下に具体的に説明する。以下の説明では、所定の検出位置に不良品のうちの不良部分の中心が位置するときに、当該検出位置を噴射担当範囲に含む開口53からエア52が噴射されるものと仮定する。
【0070】
図7および
図8は、噴射担当範囲の割り当ての設定の一例を示す模式図である。
図7および
図8では、説明の便宜上、一つのノズル51が三つの開口531~533を有しているものとする。三つの開口531~533には、マニホールド56内に配置された三つのバルブ591~593が、それぞれ接続されている。
図7および
図8において、格子の各々は、コントローラ27に入力された画像80を構成する画素を表している。
【0071】
図7に示す例では、噴射担当範囲がオーバラップするオーバラップ領域が存在する。具体的には、
図7に示すように、開口531~533には、噴射担当範囲831~833がそれぞれ対応付けられている。
図7において、開口531,533と、それらに対応付けられた噴射担当範囲831,833と、の対応関係は、1点鎖線で表しており、開口532と、それに対応付けられた噴射担当範囲832と、の対応関係は、点線で表している。
図7に示すように、隣接する二つの開口531,532にそれぞれ対応する二つの噴射担当範囲831,832は、オーバラップ領域841で互いにオーバラップしている。同様に、隣接する二つの開口532,533にそれぞれ対応する二つの噴射担当範囲832,833は、オーバラップ領域842で互いにオーバラップしている。
【0072】
不良部分の中心が画素82に位置しているとき、画素82は噴射担当範囲832のみに属するので、噴射担当範囲832に対応する開口532のみからエア52が噴射される。一方、不良部分の中心が画素81に位置しているとき、画素81はオーバラップ領域841に属するので(つまり、噴射担当範囲831,832の両方に属するので)、噴射担当範囲831,832にそれぞれ対応する二つの開口531,532からエア52が噴射される。このように、噴射担当範囲がオーバラップする設定によれば、一つの特定の被選別物90に対してエア52を噴射する開口53の数が変動する。
【0073】
一方、
図8に示す例では、オーバラップ領域が存在しない。具体的には、
図8に示すように、開口531~533には、噴射担当範囲861~863がそれぞれ対応付けられている。噴射担当範囲861~863は、互いにオーバラップしないように設定されている。この場合、不良部分の中心がいずれの検出位置にあっても、不良部分の中心の検出位置は、一つの噴射担当範囲にしか属さない。例えば、不良部分の中心が画素84に位置しているとき、画素84は噴射担当範囲862のみに属するので、噴射担当範囲862に対応する開口532のみからエア52が噴射される。なお、
図7および
図8では、一つのみの開口53からエア52が噴射されるケースと、二つの開口53からエア52が噴射されるケースと、を例示したが、一つの特定の被選別物90に対してエア52を噴射する開口53の数は、オーバラップ領域の設定次第で、任意に設定可能である。例えば、二つの開口53からエア52が噴射されるケースと、三つの開口53からエア52が噴射されるケースと、が設定されてもよい。
【0074】
一つの特定の被選別物90に対してエア52を噴射する開口53の数が増加すると、エア52の噴射範囲が交差方向D2に広くなる。このため、オーバラップ領域が存在する噴射担当範囲の設定では、オーバラップ領域が存在しない噴射担当範囲の設定と比べて、エアの噴射範囲が広くなる頻度が増加することになる。このことは、特定の被選別物90(エア52が噴射されるべき被選別物90)をより確実に除去する確率が高まる一方で、その他の被選別物90(エア52が噴射されるべきではない被選別物90)が巻き添え除去される確率が高まることを意味している。
【0075】
例えば、
図1に示した例では、1次系統20aにおけるエア52の噴射範囲が2次系統20bおよび3次系統20cにおけるエア52の噴射範囲よりも広くなる頻度を多くするために、1次系統20aにおける噴射担当範囲は、オーバラップ領域が存在するように設定され、2次系統20bおよび3次系統20cにおける噴射担当範囲は、オーバラップ領域が存在しないように設定されてもよい。あるいは、1次系統20aにおける噴射担当範囲は、オーバラップ領域が存在するように設定され、2次系統20bおよび3次系統20cにおける噴射担当範囲は、1次系統20aよりも狭い範囲でオーバラップ領域が存在するように設定されてもよい。2次系統20bおよび3次系統20cにおけるオーバラップ領域の大きさは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。このようにしても、1次系統20aにおけるエア52の噴射範囲が2次系統20bおよび3次系統20cにおけるエア52の噴射範囲よりも広くなる頻度が多くなる。この説明から明らかなように、1次~3次系統20a~20cごとに設定される噴射設定は、エアの噴射範囲が広くなる頻度の増減に関する設定であってもよい。なお、詳しい説明は省略するが、
図5または
図6に示す例でも、1次~3次系統20a~20cごとに、噴射担当範囲に基づいてエア52の噴射範囲が広くなる頻度を制御可能である。コントローラ27は、1次~3次系統20a~20cの各々の噴射担当範囲の設定を変更可能に構成されてもよい。
【0076】
さらなる代替実施形態では、1次~3次系統20a~20cごとに設定される噴射設定には、ノズル51の構造が含まれる。エア52の噴射範囲は、ノズル51の構造によっても制御可能である。例えば、ノズル51の入口(第3の配管59との接続口)からノズル51の出口(開口53)に向けて断面積が徐々に小さくなるノズル構造によれば、エア52の噴射圧力を高めることができる。あるいは、ノズル51に供給されるエア52の圧力を高めつつ、ノズル51の開口53を大きくすれば、エア52の噴射範囲を広げることができる。あるいは、ノズル51の入口からノズル51の出口に至る流路の断面積を小さくすれば、噴射期間を長くすることができる。例えば、
図1に示した例では、1次系統20aにおけるノズル51は、2次系統20bおよび3次系統20cにおけるノズル51と比べて、エア52の噴射範囲が広くなる構造を有していてもよい。2次系統20bおよび3次系統20cにおけるノズル51構造は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、詳しい説明は省略するが、
図5または
図6に示す例でも、1次~3次系統20a~20cごとに、ノズル51の構造に基づいてエア52の噴射範囲を制御可能である。
【0077】
さらなる代替実施形態では、1次~3次系統20a~20cごとに設定される噴射設定には、上述した、コントローラ27の制御に基づく噴射圧力の設定、コントローラ27の制御に基づく噴射期間の設定、コントローラ27の制御に基づく噴射担当範囲の設定、および、ノズル51の構造のうちの任意の二つ以上の組み合わせであってもよい。
【0078】
図9は、不良品混入率が低い(例えば、10%以下)場合における、第2実施形態による選別機110における被選別物90の流れの一例を示すブロック図である。
図9の例は、選別機110が、1次系統20aと2次系統20bとを備えており、3次系統20cを備えていない点、および、2次系統20bから不良品として排出される被選別物90が不良品容器29に排出される点が、
図1の例と異なっている。その他の点については、
図9の例は、
図1の例と同じである。
【0079】
図9に示す例においても、
図1の例と同じように、1次系統20aにおけるエア52の噴射範囲が2次系統20bにおけるエア52の噴射範囲よりも広くなるように、噴射設定が設定されてもよい。このようにしても、
図1の例について説明した、1次系統20aおよび2次系統20b間のエア52の噴射範囲の違いに起因して得られる効果(良品の純度および歩留りの向上)を得ることができる。
【0080】
図10は、不良品混入率が中程度(例えば、60%以下)である場合における選別機110における被選別物90の流れの一例を示すブロック図である。この被選別物90の流れは、コントローラ27が切替バルブ21~24に制御信号を送出し、それに応じて、第1の排出樋76に排出された被選別物90、および、第2の排出樋77に排出された被選別物90の排出先が切り替えられることによって実現される。
図10の例は、選別機110が、1次系統20aと2次系統20bとを備えており、3次系統20cを備えていない点、および、2次系統20bから不良品として排出される被選別物90が不良品容器29に排出される点が、
図5の例と異なっている。その他の点については、
図10の例は、
図5の例と同じである。
【0081】
図10に示す例においても、
図5の例と同じように、2次系統20bにおけるエア52の噴射範囲が1次系統20aにおけるエア52の噴射範囲よりも広くなるように、噴射設定が設定されてもよい。このようにしても、
図5の例について説明した、1次系統20aおよび2次系統20b間のエア52の噴射範囲の違いに起因して得られる効果(良品の純度および歩留りの向上)を得ることができる。
【0082】
図11は、不良品混入率が高い(例えば、60%以上)場合における選別機110における被選別物90の流れの一例を示すブロック図である。この被選別物90の流れは、コントローラ27が切替バルブ21~24に制御信号を送出し、それに応じて、第1の排出樋76に排出された被選別物90、および、第2の排出樋77に排出された被選別物90の排出先が切り替えられることによって実現される。
図11の例は、選別機110が、1次系統20aと2次系統20bとを備えており、3次系統20cを備えていない点、および、2次系統20bから良品として排出される被選別物90が、良品ホッパ28に排出される点と、が
図6の例と異なっている。その他の点については、
図11の例は、
図6の例と同じである。
【0083】
図11に示す例においても、
図6の例と同じように、2次系統20bにおけるエア52の噴射範囲が1次系統20aにおけるエア52の噴射範囲よりも広くなるように、噴射設定が設定されてもよい。このようにしても、
図6の例について説明した、1次系統20aおよび2次系統20b間のエア52の噴射範囲の違いに起因して得られる効果(良品の純度および歩留りの向上)を得ることができる。
【0084】
以上、実施形態について説明してきたが、上記した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、任意の省略が可能である。
【0085】
例えば、選別機の選別系統の数は、第1実施形態として例示した三つ、または、第2実施形態として例示した二つに限られず、四つ以上であってもよい。この場合、四つ以上の選別系統のうちの少なくとも二つの選別系統の間で、互いに異なる噴射設定が設定されてもよい。
【0086】
また、各選別系統における噴射設定は、上述の例に限られず、求められる、選別精度と歩留りとのバランスや、被選別物90の性状(例えば、比重)に応じて、任意に設定可能である。例えば、選別系統の数が三つである選別機を使用して、比較的比重が大きい異物(例えば、石)が混入している被選別物90を処理する場合には、選別機が、噴射範囲が第1の範囲の選別系統と、噴射範囲が第1の範囲よりも狭い第2の範囲の選別系統と、噴射範囲が第2の範囲よりも狭い第3の範囲の選別系統と、を備えるように、噴射設定が設定されてもよい。この場合、噴射範囲が第2の範囲の選別系統では、噴射範囲が第3の範囲の選別系統と比べて、比較的比重が大きい異物を確実に除去できる。
【0087】
また、選別のために被選別物90に噴射する流体は、上述の実施形態で例示したエア52に限らず、任意の流体とすることができる。例えば、流体は、空気以外の気体(例えば、窒素などの不活性ガス)であってもよいし、液体であってもよい。
【0088】
また、選別機10による選別は、被選別物90を良品と不良品とに選別することに限られず、被選別物90を、第1の品質を有する第1品質物と、第1の品質とは異なる第2の品質を有する第2品質物と、に選別することであってもよい。例えば、被選別物90が、相対的に高品質の良品と、相対的に低品質の良品と、に選別されてもよい。あるいは、被選別物90が、相対的に高品質の不良品と、相対的に低品質の不良品と、に選別されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
10,110...光学式選別機
20a...1次選別系統
20b...2次選別系統
20c...3次選別系統
21~26...切替バルブ
27...コントローラ
28...良品ホッパ
29...不良品容器
31,32...光源
33,34...光
35,36...発光素子
41,42...光学センサ
43,44...受光素子
50...選別装置
51,51a,51b,51c...ノズル
52...エア
53...開口
54,54a,54b,54c...エアタンク
55,55a,55b,55c...圧力調整弁
56,56a,56b,56c...マニホールド
57...第1の配管
58...第2の配管
59...第3の配管
71...貯留タンク
72...フィーダ
73...シュート
73a...1次系統領域
73b...2次系統領域
73c...3次系統領域
74,75...隔壁
76...第1の排出樋
77...第2の排出樋
80...画像
81,82,84...画素
90,91,92...被選別物
95...移送経路
531,532,533...開口
591,592,593...バルブ
831,832,833,861,862,863...噴射担当範囲
841,842...オーバラップ領域
D1...移送方向
D2...交差方向
【手続補正書】
【提出日】2022-09-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
一つのノズル51には、マニホールド56の出口の各々に接続された第3の配管59を介して、複数のマニホールド56が接続される。一つのノズル51に接続される複数のマニホールド56の出口の総数は、当該一つのノズル51の開口53の数に等しい。つまり、マニホールド56の通路の分岐点よりも下流側(ノズル51側)の部分は、互いに独立した流路を形成する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
図10は、不良品混入率が中程度(例えば、60%以下)である場合における選別機110における被選別物90の流れの一例を示すブロック図である。この被選別物90の流れは、コントローラ27が切替バルブ21~24に制御信号を送出し、それに応じて、第1の排出樋76に排出された被選別物90、および、第2の排出樋77に排出された被選別物90の排出先が切り替えられることによって実現される。
図10の例は、選別機110が、1次系統20aと2次系統20bとを備えており、3次系統20cを備えていない点、および、
1次系統20aから不良品として排出される被選別物90が不良品容器29に排出される点が、
図5の例と異なっている。その他の点については、
図10の例は、
図5の例と同じである。