IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デュプロの特許一覧

特開2023-46076表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法
<>
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図1
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図2
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図3
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図4
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図5
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図6
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図7
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図8
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図9
  • 特開-表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046076
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20230327BHJP
   B65H 5/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B65H5/06 Z
B65H5/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154771
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000109727
【氏名又は名称】株式会社デュプロ
(72)【発明者】
【氏名】松井 信晃
(72)【発明者】
【氏名】西谷 大介
(72)【発明者】
【氏名】干潟 誠司
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 智彦
【テーマコード(参考)】
3F049
【Fターム(参考)】
3F049AA10
3F049CA11
3F049DA03
3F049DA11
3F049DB02
3F049EA12
3F049LA01
3F049LB01
(57)【要約】
【課題】放電処理を行う表面改質装置よりも簡易な構造でシート材の表面の改質を行う表面改質装置を提供する。
【解決手段】シート材Sの濡れ性の向上等の表面特性の改質処理を行う表面改質装置1において、シート材Sの表面に接触し、摺擦することで表面特性を改質する摺擦部材10を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材の表面特性の改質処理を行う表面改質装置において、
前記シート材の表面に接触し、摺擦することで前記表面特性を改質する摺擦部材を備えることを特徴とする表面改質装置。
【請求項2】
請求項1の表面改質装置において、
前記表面特性として、前記シート材の表面の濡れ性を改質することを特徴とする表面改質装置。
【請求項3】
請求項1または2の表面改質装置において、
前記摺擦部材における前記シート材に接触する部分は、紙製のウエスまたは不織布であることを特徴とする表面改質装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の表面改質装置において、
前記摺擦部材は前記シート材の上面に接触し、前記シート材を挟んで前記摺擦部材に対向する位置に前記シート材を支持する支持部材を備えることを特徴とする表面改質装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の表面改質装置において、
前記シート材を搬送し、前記シート材が前記摺擦部材と接触する位置を通過させる搬送手段を備えることを特徴とする表面改質装置。
【請求項6】
請求項5の表面改質装置において、
前記搬送手段に搬送される前記シート材の表面と、前記摺擦部材における前記シート材と接触する部分の表面との間に速度差があることを特徴とする表面改質装置。
【請求項7】
請求項6の表面改質装置において、
前記摺擦部材における前記シート材と接触する部分の表面が、前記シート材が前記搬送手段によって搬送される搬送方向とは逆方向に移動することを特徴とする表面改質装置。
【請求項8】
請求項6の表面改質装置において、
少なくとも前記シート材が前記搬送手段によって搬送されて前記摺擦部材との対向部を通過するときには、前記摺擦部材における前記シート材と接触する部分の表面が移動しないことを特徴とする表面改質装置。
【請求項9】
請求項5乃至8の何れか一項に記載の表面改質装置において、
前記摺擦部材を前記シート材の搬送方向の複数箇所に備えることを特徴とする表面改質装置。
【請求項10】
請求項5乃至9の何れか一項に記載の表面改質装置において、
前記摺擦部材における前記シート材と接触する部分の表面が前記シート材の搬送方向に直交する幅方向に移動可能であることを特徴とする表面改質装置。
【請求項11】
請求項10に記載の表面改質装置において、
前記摺擦部材における前記シート材と接触する部分の表面が、前記幅方向に往復移動可能であることを特徴とする表面改質装置。
【請求項12】
請求項10に記載の表面改質装置において、
前記摺擦部材は、前記幅方向に無端移動するベルト部材、または、前記幅方向に移動するウェブ部材であることを特徴とする表面改質装置。
【請求項13】
請求項1乃至10の何れかに記載の表面改質装置において、
前記摺擦部材は、前記シート材の接触する表面に直交する方向を回転軸として回転しながら前記シート材の表面に接触する回転摺擦部材であることを特徴とする表面改質装置。
【請求項14】
シート材の表面に所定の加工を行う加工手段と、
前記加工手段に到達する前の前記シート材に前処理を行い、前記加工手段に向けて送り出す前処理手段と、を備えるシート材加工システムにおいて、
前記前処理手段として、請求項1乃至13の何れか一項に記載の表面改質装置を備えることを特徴とするシート材加工システム。
【請求項15】
シート材の表面特性の改質処理を行う表面改質方法において、
前記シート材の表面に摺擦部材を接触させ、摺擦することで前記表面特性を改質することを特徴とする表面改質方法。
【請求項16】
シート材の表面に所定の加工を行う加工処理工程と、
前記加工処理工程の前に前記シート材に対して前処理を行う前処理工程と、を行うシート材加工方法において、
前記前処理工程として、前記シート材の表面に摺擦部材を接触させて摺擦する摺擦処理を行うことを特徴とするシート材加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質装置、シート材加工システム、表面改質方法及びシート材加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材の表面特性の改質処理を行う表面改質装置として、コロナ放電を用いたコロナ処理を行うものが知られている(特許文献1等)。
この種の表面改質装置は、シート材にインクを塗布して画像を形成する画像形成装置の上流側に配置されることがある。シート材にインクを塗布して画像形成を行う場合、インクの特性に対してシート材の表面の濡れ性が低いと、シート材に塗布されたインクが所望の範囲にまで広がらず、白スジ等の画像不良が生じる恐れがある。これに対して、上述した表面改質装置によって、画像形成装置に向かうシート材にコロナ処理を施すことで、シート材の表面の濡れ性が向上し、シート材に対してインクが広がり易くなり、画像品質の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-155785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したコロナ処理等の放電処理を行う表面改質装置は、放電を行うための電源装置や放電によって生じるオゾンの拡散を防止するための機構が必要であり、装置の構造が複雑となり、装置の大型化、高コスト化に繋がる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、シート材の表面特性の改質処理を行う表面改質装置において、前記シート材の表面に接触し、摺擦することで前記表面特性を改質する摺擦部材を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、放電処理を行う表面改質装置に比べて、簡易な構造でシート材の表面の改質を行う表面改質装置を実現できる、という優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1の表面改質ユニットの説明図。
図2】変形例1の表面改質ユニットの説明図。
図3】変形例2の表面改質ユニットの説明図。
図4】実施形態2の表面改質ユニットの説明図。
図5】変形例3の表面改質ユニットの説明図。
図6】実施形態3の表面改質ユニットの説明図。
図7】変形例4の表面改質ユニットの説明図。
図8】実施形態4の表面改質ユニットの説明図。
図9】実施形態5の表面改質ユニットの説明図。
図10】本発明に係る表面改質装置を適用可能な画像形成システムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、シート材の表面を摺擦材で摺擦することにより、シート材の表面の濡れ性が変化することを見出した。
具体的には、インクジェット方式のニス塗布装置を用いてシート材にニスを塗布したときに、ニスを弾いて表面上でニスが広がり難いシート材を紙製のウエスで摺擦してニスを塗布したところ、シート材の表面でニスが弾かれ難くなり、ニスがシート材の表面で広がり易くなることを見出した。すなわち、濡れ性が向上できることを見出した。
また、塗布されたニスが表面上で広がり過ぎるシート材を紙製のウエスで摺擦してニスを塗布したところ、シート材の表面でニスが広がり過ぎることを抑制できることがあることを見出した。すなわち、濡れ性を抑制できることがあることを見出した。
このように、シート材の表面を摺擦材で摺擦するとシート材の表面の濡れ性が変化する、すなわち、シート材の表面を改質することができる。
【0009】
摺擦による表面改質は、摺擦による微細な傷によって濡れ性が向上する等の表面特性が変化することが考えられる。しかし、摺擦による表面上の微細な付着物の除去等、他の要因によって表面特性が変化する可能性もある。
以下、シート材の表面を摺擦することによって表面を改質する表面改質装置及び表面改質方法について図面を用いて説明する。
【0010】
各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
<実施形態1>
以下、本発明に係る表面改質装置の一つ目の実施形態(以下、「実施形態1」とよぶ)について説明する。
【0012】
図1は、実施形態1に係る表面改質装置である表面改質ユニット1の説明図である。
表面改質ユニット1は、ケーシング7、入口ローラ対2、処理前搬送ローラ対3、ガイド板4、処理後搬送ローラ対5、出口ローラ対6及び摺擦ローラ10を備える。表面改質ユニット1は、紙や樹脂フィルム等のシート材Sを搬送しつつ、摺擦ローラ10でシート材Sの表面を摺擦し、シート材Sの表面の改質処理を行う。
【0013】
ローラ対(2、3、5及び6)は、ローラ対を形成するローラ部材の少なくとも一方が回転駆動することで、図1中の矢印で示すように、その外周面におけるシート材Sと対向する部分が、シート材Sの搬送方向(図1中の右から左に向かうY方向)に沿う方向に移動するように回転する。
表面改質ユニット1では、シート材Sが上流側に配置された装置から搬送され、または、作業者が手差しで挿入することで、駆動回転する入口ローラ対2に挟持・搬送され、ケーシング7内に進入する。
ケーシング7内に進入したシート材Sは、ガイド板4に下面を支持されつつ、入口ローラ対2の搬送力によって搬送方向下流側へと移動し、駆動回転する処理前搬送ローラ対3に挟持・搬送される。
【0014】
処理前搬送ローラ対3に挟持・搬送されるシート材Sは、摺擦ローラ10との対向部を通過し、駆動回転する処理後搬送ローラ対5に挟持・搬送され、出口ローラ対6によってケーシング7の外に排出される。
摺擦ローラ10は、図1中の矢印で示すように、その外周面におけるシート材Sと対向する部分が、シート材Sの搬送方向とは逆方向に移動するように回転しながら、下面をガイド板4で支持されるシート材Sの上面に接触する。
摺擦ローラ10のシート材Sに対する接触圧は、処理前搬送ローラ対3や処理後搬送ローラ対5による搬送を阻害しないように適宜設定される。
搬送方向に移動するシート材Sに対して、外周面におけるシート材Sと対向する部分が搬送方向とは逆方向に移動する摺擦ローラ10を接触させることにより、摺擦ローラ10の表面がシート材Sの表面を摺擦し、摺擦によるシート材Sの表面改質を行うことができる。
【0015】
図1に示す例では、摺擦ローラ10の外周面におけるシート材Sと対向する部分が搬送方向とは逆方向に移動することで、摺擦ローラ10の表面とシート材Sの表面とに速度差が生じ、接触する部分で摺擦ローラ10がシート材Sを摺擦する。このため、摺擦ローラ10の表面とシート材Sの表面とに速度差が生じる構成であれば、摺擦ローラ10の表面が搬送方向の逆方向に移動するものに限らない。摺擦ローラ10の外周面におけるシート材Sと対向する部分の移動方向が搬送方向と同じ方向となる構成であっても、摺擦ローラ10の表面移動速度をシート材Sの搬送速度よりも速く設定したり、遅く設定したりすることで、摺擦ローラ10の表面によってシート材Sの表面を摺擦できる。
摺擦ローラ10を回転させた状態で、シート材Sに接触させる構成では、摺擦ローラ10の回転速度を変更することで、シート材Sとの表面移動速度の差を変更し、摺擦による表面改質の程度を調整することができる。
【0016】
さらに、シート材Sが摺擦ローラ10との対向部を通過するときに、摺擦ローラ10の回転を停止させてもよい。表面が停止した摺擦ローラ10の表面にシート材Sの上面が接触しながら、シート材Sが摺擦ローラ10との対向部を通過することで、摺擦ローラ10の表面によってシート材Sの表面を摺擦できる。
シート材Sが摺擦ローラ10との対向部を通過する際に摺擦ローラ10の回転を停止させる構成では、一枚または所定枚数のシート材Sが通過する度等の所定のタイミングで、摺擦ローラ10を回転させることが望ましい。摺擦ローラ10の表面におけるシート材Sを摺擦する部分を変更することができ、摺擦部材の摩耗に起因する表面改質の機能の低減を抑制できる。
【0017】
摺擦ローラ10を幅方向(図1中の紙面手前奥方向、X軸に平行な方向)に振動させるように往復運動させる構成としてもよい。シート材Sが摺擦ローラ10との対向部を通過する際に、摺擦ローラ10がシート材Sの搬送方向に直交する幅方向に往復運動することで、摺擦によるシート材Sの表面改質の効果の向上を図ることができる。往復運動を行う構成では、往復の移動速度を変更することで、シート材Sの搬送速度を変えることなく、摺擦による表面改質の程度を変更することができる。
【0018】
搬送方向における処理前搬送ローラ対3と処理後搬送ローラ対5との距離は、処理対象となるシート材Sの最小長さよりも短くなるように設定する。これにより、搬送するシート材Sの後端が処理前搬送ローラ対3を通過する前に、シート材Sの先端が処理後搬送ローラ対5に挟持され、摺擦ローラ10でシート材Sの表面を摺擦する構成であっても、シート材Sを詰まらせることなく搬送することができる。
【0019】
図1に示す表面改質ユニット1は、シート材Sの搬送経路にシート材Sの表面を摺擦する摺擦ローラ10を設けることで、シート材Sの表面を摺擦し、シート材Sの表面の濡れ性を向上する等の表面改質処理を行うことができる。
摺擦部材を設けるのみで、シート材の表面改質を行うことができ、従来のコロナ放電を用いた表面改質装置に比べて、簡易な構造でシート材の表面の改質を行う表面改質装置を実現できる。簡易な構造であるため、表面改質装置の小型化及び低価格化を図ることができる。
【0020】
上述したように、摺擦ローラ10のシート材Sに対する接触圧は、処理前搬送ローラ対3や処理後搬送ローラ対5による搬送を阻害しないように適宜設定されるが、適切な接触圧となる摺擦ローラ10の高さは、シート材Sの厚みによって異なる場合がある。そこで、シート材Sの厚みに応じて摺擦ローラ10の高さを変更可能な構成としてもよい。
摺擦ローラ10の高さを変更する構成としては、手動操作によって摺擦ローラ10の高さを変更する摺擦ローラ高さ手動変更機構を備える構成としてもよい。この構成では、シート材Sの種類や実際の厚みに基づいて使用者が摺擦ローラ10の高さを変更する。
また、摺擦ローラ10の高さを変更可能な構成では、同じ厚さのシート材Sに対して摺擦ローラ10の高さを変更することにより、表面改質効果を調整することもできる。
【0021】
また、摺擦ローラ10の高さを、駆動手段を駆動させることで変更する摺擦ローラ高さ自動変更機構を備える構成としてもよい。この構成では、使用者がシート材Sの種類や厚みの情報を入力することで、入力情報に基づいて制御部が摺擦ローラ高さ自動変更機構を制御して摺擦ローラ10を変更する構成とすることができる。さらに、摺擦ローラ10よりも上流側にシート材Sの厚みを検出する厚み検出手段を備え、検出結果に基づいて制御部が摺擦ローラ高さ自動変更機構を制御して摺擦ローラ10を変更する構成としてもよい。
【0022】
図1に示す例では、摺擦部材が無端移動体である摺擦ローラ10である。摺擦部材に用いる無端移動体は、摺擦ローラ10のようなローラ部材に限らず、外周面がシート材Sを摺擦し、表面改質を図ることができるものであれば、複数の張架部材に張架され、無端移動するベルト部材であってもよい。摺擦部材としてベルト部材を用いる構成では、ベルト部材におけるシート材Sを摺擦する摺擦箇所が、ベルト部材の内側に張架部材が位置する部分でも良いし、二つの張架部材の間の張架面でもよい。張架面で摺擦する構成であれば、ベルト部材がシート材Sを摺擦する範囲を搬送方向に広げることができ、摺擦による表面改質の性能の向上を図ることができる。
【0023】
上述したように、摺擦ローラ10との対向部をシート材Sが通過するときに、摺擦ローラ10の回転を停止させても、シート材Sの摺擦を行うことができる。このため、摺擦ローラ10のように、回転等の外側の面が移動する(以下、「表面移動する」ともいう)部材の代わりに、表面移動しない摺擦部材を用いてもよい。表面移動しない摺擦部材では、シート材Sに接触する部分が一定であるため、所定枚数のシート材Sが通過した後等の所定のタイミングで、摺擦部材を交換することが望ましい。また、表面移動しない摺擦部材を用いる場合、摺擦部材を幅方向に振動させるように往復運動させてもよい。
【0024】
〔変形例1〕
図2は、本発明に係る一つ目の変形例(以下、「変形例1」とよぶ)の表面改質ユニット1の説明図である。
図2の表面改質ユニット1は、図1の表面改質ユニット1に対して、処理前搬送ローラ対3と処理後搬送ローラ対5とが無くなり、入口ローラ対2と出口ローラ対6との搬送方向の距離を、処理対象となるシート材Sの最小長さよりも短くなるように設定したものである。
図2に示す例では、入口ローラ対2が摺擦処理前搬送手段としての機能を果たし、出口ローラ対6が摺擦処理後搬送手段としての機能を果たす。
図2に示す変形例1の表面改質ユニット1では、図1に示す例よりも、搬送方向の長さをさらに短くすることができる。
【0025】
〔変形例2〕
図3は、本発明に係る二つ目の変形例(以下、「変形例2」とよぶ)である。
図3の表面改質ユニット1は、図1の例に対して、摺擦ローラ10を搬送方向の複数箇所(二箇所:第一摺擦ローラ10a、第二摺擦ローラ10b)に配置した構成である。
図3(a)は、第一摺擦ローラ10aと第二摺擦ローラ10bとを連続して配置した構成例であり、図3(b)は、第一摺擦ローラ10aと第二摺擦ローラ10bとの間に、摺擦部間搬送ローラ対8を配置した構成例である。
図3に示すように、摺擦ローラ10を搬送方向の複数箇所に配置することにより、シート材Sを摺擦する機会が増え、摺擦による表面改質の性能の向上を図ることができる。
【0026】
また、図3(a)に示すように、複数の摺擦ローラ10(10a、10b)を連続的に配置することで、摺擦による表面改質の性能の向上を図りつつ、装置の大型化を抑制できる。
一方、図3(b)は、複数の摺擦ローラ10(10a、10b)の間に、駆動回転する摺擦部間搬送ローラ対8を配置している。これにより、シート材Sに摺擦し、搬送抵抗となる摺擦ローラ10同士の間でシート材Sに搬送力を付与することができ、シート材Sの搬送性を向上する。さらに、搬送方向における搬送部材同士の距離を狭めることができ、図3(a)に示す構成よりも、搬送方向の長さがより短いシート材Sを通過させることが可能となる。
【0027】
図3に示すように、摺擦ローラ10を搬送方向の複数箇所に配置する構成では、第一摺擦ローラ10aと第二摺擦ローラ10bとの高さ各々個別に調整可能としてもよい。これにより、より細かな表面改質効果の調整が可能である。
【0028】
<実施形態2>
次に、本発明に係る表面改質装置の二つ目の実施形態(以下、「実施形態2」とよぶ)について説明する。
【0029】
図4は、実施形態2に係る表面改質装置である表面改質ユニット1の説明図である。
図4に示す実施形態2の表面改質ユニット1は、摺擦ローラ10の代わりに摺擦ウェブ20を備える点で図1に示した実施形態1の表面改質ユニット1と異なり、他の構成は共通するため、共通する構成についての説明は省略する。
図4の表面改質ユニット1は、シート材Sを搬送しつつ、摺擦ウェブ20でシート材Sの表面を摺擦し、シート材Sの表面の改質処理を行う。
【0030】
図4の表面改質ユニット1は、摺擦ウェブ20が巻き付けられたウェブ繰出し軸22と、摺擦ウェブ20がシート材Sと接触する位置で摺擦ウェブ20を張架するウェブ押圧ローラ21と、摺擦ウェブ20を巻き取るウェブ巻取軸23とを備える。
ウェブ巻取軸23が図4中の矢印方向(図4中の反時計回り方向)に回転することで、摺擦ウェブ20を巻き取り、摺擦ウェブ20が図4中の矢印方向に移動し、ウェブ繰出し軸22に巻きつけられた部分を引っ張り、ウェブ繰出し軸22が図4中の矢印方向(図4中の反時計回り方向)に回転して、摺擦ウェブ20を繰り出す。また、摺擦ウェブ20が、ウェブ繰出し軸22からウェブ巻取軸23に向けて移動することで、ウェブ押圧ローラ21が図4中の矢印方向(図4中の反時計回り方向)に連れ回る。
【0031】
摺擦ウェブ20は、図4中の矢印で示すように、シート材Sの搬送方向とは逆方向に移動しながら、下面をガイド板4で支持されるシート材Sの上面に接触する。
搬送方向に移動するシート材Sに対して、その表面におけるシート材Sと対向する部分が搬送方向とは逆方向に移動する摺擦ウェブ20を接触させることにより、摺擦ウェブ20の表面がシート材Sの表面を摺擦し、摺擦によるシート材Sの表面改質を行うことができる。
【0032】
図1を用いて摺擦ローラ10の外周面の移動について説明した内容と同様に、摺擦ウェブ20の表面とシート材Sの表面とに速度差が生じる構成であれば、摺擦ウェブ20の表面が搬送方向の逆方向に移動するものに限らない。摺擦ウェブ20が搬送方向と同じ方向に移動する構成であっても、摺擦ウェブ20の移動速度をシート材Sの搬送速度よりも速く設定したり、遅く設定したりすることで、摺擦ウェブ20の表面によってシート材Sの表面を摺擦できる。さらに、シート材Sが摺擦ウェブ20との対向部を通過するときに、ウェブ巻取軸23の回転を停止して摺擦ウェブ20の移動を停止させてもよい。停止した摺擦ウェブ20の表面にシート材Sの上面が接触しながらシート材Sが摺擦ウェブ20との対向部を通過することで、摺擦ウェブ20の表面によってシート材Sの表面を摺擦できる。また、摺擦ウェブ20を停止させる構成では、一枚または所定枚数のシート材Sが通過する度等の所定のタイミングで、ウェブ巻取軸23を回転させて、摺擦ウェブ20におけるシート材Sの表面を摺擦する部分を変えることが望ましい。これにより、摺擦部材の摩耗に起因する表面改質の機能の低減を抑制できる。
【0033】
〔変形例3〕
図5は、本発明に係る三つ目の変形例(以下、「変形例3」とよぶ)である。
図5の表面改質ユニット1は、図4に示す例に対して、ウェブ押圧ローラ21を搬送方向の複数箇所(二箇所:第一ウェブ押圧ローラ21a、第二ウェブ押圧ローラ21b)に構成である。
図5に示すように、ウェブ押圧ローラ21を搬送方向の複数箇所に配置することにより、摺擦ウェブ20がシート材Sを摺擦する範囲が増える。
【0034】
詳しくは、図4に示す例では、摺擦ウェブ20は、ウェブ押圧ローラ21に巻き付いた円弧状の部分の外周面がシート材Sに接触するため、接触する領域は幅方向に延在する線状であり、接触する領域の搬送方向の長さはとても短い。
一方、図5に示す例では、二つのウェブ押圧ローラ21に挟まれた張架面の部分がシート材Sに接触するため、二つのウェブ押圧ローラ21に張架された張架面を接触させることができ、接触する領域の搬送方向の長さを、二つのウェブ押圧ローラ21の間隔に応じた長さに設定することができる。
これにより、摺擦ウェブ20がシート材Sを摺擦する範囲を搬送方向に広げることができ、摺擦による表面改質の性能の向上を図ることができる。
【0035】
<実施形態3>
次に、本発明に係る表面改質装置の三つ目の実施形態(以下、「実施形態3」とよぶ)について説明する。
【0036】
図6は、実施形態3に係る表面改質装置である表面改質ユニット1の説明図である。
図6に示す実施形態3の表面改質ユニット1は、ガイド板4、処理前搬送ローラ対3及び処理後搬送ローラ対5の代わりに、搬送ベルト30を備える点で図1に示した実施形態1の表面改質ユニット1と異なり、他の構成は共通するため、共通する構成についての説明は省略する。
搬送ベルト30は、複数のベルト張架ローラ30aに張架され、ベルト張架ローラ30aのうちの少なくとも一つが駆動ローラとして回転駆動することにより、搬送ベルト30は図6中の矢印で示す方向に無端移動する。
【0037】
摺擦ローラ10の上流側には搬送ベルト30を挟んで対向する処理前搬送ローラ33と処理前対向ローラ32とを備え、摺擦ローラ10の下流側には搬送ベルト30を挟んで対向する処理後搬送ローラ35と処理後対向ローラ34とを備える。さらに、搬送ベルト30を挟んで摺擦ローラ10と対向する位置には、摺擦部ベルト支持ローラ31を備える。
【0038】
図6に示す表面改質ユニット1は、ケーシング7内に進入したシート材Sは、搬送ベルト30に下面を支持されつつ、入口ローラ対2と搬送ベルト30との搬送力によって搬送方向下流側へと移動する。搬送ベルト30によって搬送されるシート材Sは、処理前搬送ローラ33との対向部、摺擦ローラ10との対向部及び処理後搬送ローラ35との対向部を通過し、出口ローラ対6によってケーシング7の外に排出される。
【0039】
摺擦ローラ10は、図6中の矢印で示すように、その外周面におけるシート材Sと対向する部分が、シート材Sの搬送方向とは逆方向に移動するように回転しながら、搬送ベルト30を介して摺擦部ベルト支持ローラ31によって下面を支持されるシート材Sの上面に接触する。
搬送方向に移動するシート材Sに対して、外周面が搬送方向とは逆方向に移動する摺擦ローラ10を接触させることにより、摺擦ローラ10の表面がシート材Sの表面を摺擦し、摺擦によるシート材Sの表面改質を行うことができる。
摺擦ローラ10の回転については、図1で示した例と同様であり、回転によって移動する外周面とシート材Sの表面との間に速度差が生じるものであれば、対向する部分が搬送方向と同方向に移動するように回転させてもよいし、停止させてもよい。
【0040】
〔変形例4〕
図7は、本発明に係る四つ目の変形例(以下、「変形例4」とよぶ)である。
図7の表面改質ユニット1は、図6に示す例に対して、搬送ベルト30を装置の入口から出口まで延在した構成であり、装置の入口から出口まで搬送ベルト30によってシート材Sの下面を支持するものである。
図7に示す変形例4の表面改質ユニット1は、入口ローラ対2の代わりに入口ローラ42及び入口対向ローラ41を備え、出口ローラ対6の代わりに出口ローラ46及び出口対向ローラ45を備える。さらに、搬送ベルト30を張架するローラとして、入口対向ローラ41及び出口対向ローラ45が含まれる。これらの点で図6に示した実施形態3の表面改質ユニット1と異なる。他の構成は共通するため、共通する構成についての説明は省略する。
【0041】
搬送ベルト30は、入口対向ローラ41及び出口対向ローラ45に張架され、入口対向ローラ41及び出口対向ローラ45の少なくとも一方が駆動ローラとして回転駆動することにより、搬送ベルト30は図7中の矢印で示す方向に無端移動する。入口ローラ42及び出口ローラ46は従動ローラであり、当接する搬送ベルト30に連れ回る。入口ローラ42及び出口ローラ46は、搬送ベルト30と連動して回転する駆動ローラとしてもよい。
【0042】
図7に示す表面改質ユニット1では、入口ローラ42と搬送ベルト30とに挟持されてケーシング7内に進入したシート材Sは、搬送ベルト30に下面を支持されつつ、搬送ベルト30の搬送力によって搬送方向下流側へと移動する。搬送ベルト30によって搬送されるシート材Sは、処理前搬送ローラ33との対向部、摺擦ローラ10との対向部及び処理後搬送ローラ35との対向部を通過し、出口ローラ46と搬送ベルト30とに挟持されてケーシング7の外に排出される。
【0043】
図7に示す変形例4の表面改質ユニット1は、図6の例と同様に、摺擦ローラ10の表面がシート材Sの表面を摺擦し、摺擦によるシート材Sの表面改質を行うことができる。また、装置の入口から出口まで連続した搬送ベルト30でシート材Sの下面を支持して搬送するため、安定した搬送を行うことができる。
【0044】
図6及び図7に示す例では、摺擦部材として摺擦ローラ10を用いる構成について説明したが、搬送ベルト30を用いる装置の摺動部材としては、ベルト部材や実施形態2で説明した摺擦ウェブ20のようなウェブ部材でもよく、さらに、表面移動しない部材であってもよい。
【0045】
図6及び図7に示す例のように、搬送ベルト30を備える構成では、無端状の搬送ベルト30の周回経路の内側にエア吸引機構を設け、搬送ベルト30にシート材Sを吸着させる構成としてもよい。搬送ベルト30にシート材Sを吸着させる構成としては、搬送ベルト30に設けた貫通孔から空気を吸引する構成や、搬送ベルト30を幅方向(X方向)に間欠的に配置し、幅方向に隣り合う搬送ベルト30同士の隙間から空気を吸引する構成を挙げることができる。シート材Sを搬送ベルト30に吸着することで、摺擦ローラ10にシート材Sの先端が引っかかることを抑制でき、より確実にシート材Sを摺擦ローラ10で摺擦しながら搬送することができる。
【0046】
<実施形態4>
次に、本発明に係る表面改質装置の四つ目の実施形態(以下、「実施形態4」とよぶ)について説明する。
【0047】
図8は、実施形態4に係る表面改質装置である表面改質ユニット1の説明図である。図8(a)は、シート材Sが図中の左から右に搬送される表面改質ユニット1の側面図であり、図8(b)は、図8(a)中のA-A’断面における表面改質ユニット1の断面図である。
【0048】
図8に示す実施形態4の表面改質ユニット1は、摺擦ローラ10の代わりに直交移動摺擦ベルト40を備える点で図1に示した実施形態1の表面改質ユニット1と異なり、他の構成は共通するため、共通する構成についての説明は省略する。
直交移動摺擦ベルト40は、複数の直交ベルト張架ローラ48に張架され、直交ベルト張架ローラ48のうちの少なくとも一つが駆動ローラとして回転駆動することにより、直交移動摺擦ベルト40は図8中の矢印で示す方向に無端移動する。
【0049】
図8の表面改質ユニット1は、シート材Sを搬送しつつ、直交移動摺擦ベルト40でシート材Sの表面を摺擦し、シート材Sの表面の改質処理を行う。
図8(b)に示すように、無端状の直交移動摺擦ベルト40は下張架面がシート材Sの上面に接触して摺擦し、シート材Sを摺擦する領域での直交移動摺擦ベルト40の移動方向はシート材Sの搬送方向に直交する。
【0050】
シート材Sが直交移動摺擦ベルト40との対向部を通過する際に、直交移動摺擦ベルト40がシート材Sの搬送方向に直交する幅方向に移動することで、摺擦によるシート材Sの表面改質の効果の向上を図ることができる。幅方向に移動する構成では、幅方向の移動速度を変更することで、シート材Sの搬送速度を変えることなく、摺擦による表面改質の程度を変更することができる。
【0051】
図8に示す例では、シート材Sの搬送方向に直交する方向に移動しながらシート材Sを摺擦する直交方向移動摺擦部材が無端ベルトの直交移動摺擦ベルト40である構成について説明した。直交方向移動摺擦部材としては無端ベルトに限るものではなく、ウェブ状の部材でもよい。ウェブを用いることで、シート材Sを摺擦していない部分をシート材Sと接触する領域に供給し続けることができ、シート材Sを摺擦することで汚れた摺擦部材の部分が、シート材Sに接触し、シート材Sを汚すことを防止できる。
直交方向移動摺擦部材としては、その移動方向がシート材Sの搬送方向に対して直交する成分を持っていればよく、搬送方向に対して斜め方向に移動するものでもよい。
【0052】
<実施形態5>
次に、本発明に係る表面改質装置の五つ目の実施形態(以下、「実施形態5」とよぶ)について説明する。
【0053】
図9は、実施形態5に係る表面改質装置である表面改質ユニット1の説明図である。図9(a)は、シート材Sが図中の左から右に搬送される表面改質ユニット1の側面図であり、図9(b)は、図9(a)中の摺擦部材(回転摺擦機構80)近傍の拡大上面図である。実施形態5の摺擦部材は、バフ研磨と呼ばれる表面処理方法で用いられるバフのように、摺擦対象の表面に直交する回転軸を中心に回転する部材である。
【0054】
図9に示す実施形態5の表面改質ユニット1は、摺擦ローラ10の代わりに回転摺擦機構80を備える点で図1に示した実施形態1の表面改質ユニット1と異なり、他の構成は共通するため、共通する構成についての説明は省略する。
図9(a)及び図9(b)に示すように、回転摺擦機構80は、鉛直方向に平行な回転軸を中心に回転する円盤状の回転摺擦部材81を複数備える。回転摺擦部材81の下面がシート材Sの上面に接触し、回転することでシート材Sの上面を摺擦する。
【0055】
図9の表面改質ユニット1は、シート材Sを搬送しつつ、回転摺擦機構80でシート材Sの表面を摺擦し、シート材Sの表面の改質処理を行う。
シート材Sが回転摺擦機構80との対向部を通過する際に、搬送方向及び幅方向に複数配置された回転摺擦部材81が回転することで、摺擦によるシート材Sの表面改質の効果の向上を図ることができる。鉛直方向に平行な回転軸を中心に回転する回転摺擦部材81で摺擦する構成では、回転摺擦部材81の回転速度を変更することで、シート材Sの搬送速度を変えることなく、摺擦による表面改質の程度を変更することができる。
図9に示す例では、複数の回転摺擦部材81は、図9(b)のように、回転方向が時計回りのものと反時計回りのものとが混在しているが、これに限らず、全ての回転摺擦部材81の回転方向を時計回りまたは反時計回りとしてもよい。
【0056】
また、図9に示す例では、連続的に回転する回転摺擦部材81がシート材Sに接触する領域にシート材Sが進入するように搬送し、シート材Sを停止させずに通過させる構成である。これに限らず、シート材Sを停止させずに通過させる構成で、回転摺擦部材81はシート材Sに接触する位置よりも上方に退避させておき、回転摺擦部材81の下方にシート材Sが到達すると、回転摺擦部材81を下降し、搬送するシート材Sの表面に回転摺擦部材81が接触して摺擦する構成としてもよい。回転摺擦部材81をシート材Sに接触する位置よりも上方に退避させておく構成として、搬送するシート材Sを回転摺擦部材81の下方で一時停止させ、回転摺擦部材81を下降して停止しているシート材Sの表面に回転摺擦部材81が接触して摺擦し、所定時間摺擦後、回転摺擦部材81を上方に退避させ、シート材Sの搬送を再開してもよい。シート材Sを停止させて、図9(b)に示すように複数の回転摺擦部材81で摺擦する構成では、回転摺擦部材81の円形状の摺擦領域同士の間に隙間があり、この隙間は摺擦できず、摺擦ムラとなる。このような摺擦ムラを抑制するために、に回転摺擦部材81による摺擦後にシート材Sの搬送を再開後、先の摺擦で隙間となっていた部分に回転摺擦部材81が接触する位置でシート材Sの搬送を停止し、回転摺擦部材81による摺擦を行うように制御してもよい。また、摺擦領域同士の隙間による摺擦ムラを抑制する構成としては、シート材Sの幅よりも径が大きい回転摺擦部材81を用いて、一時停止したシート材Sまたは連続的に搬送されるシート材Sを摺擦する構成としてもよい。
【0057】
図10は、本発明に係る表面改質装置を適用可能な画像形成システム100の説明図である。
画像形成システム100は、画像形成装置であるプリンタ50の下流側に、シート材処理システム200を備える。シート材処理システム200は、本発明に係る表面改質装置である表面改質ユニット1と、加飾装置60とを備える。
表面改質ユニット1としては、図1乃至図9を用いて説明した何れの表面改質ユニット1も適用することができ、これらに限らず、本発明に係る表面改質装置を適用可能である。
【0058】
プリンタ50としては、インクジェットプリンタ、トナーを用いた電子写真方式のプリンタ、版を用いた印刷機等を挙げることができる。
プリンタ50では、トナーやインクをシート材Sの表面に付与して画像を形成して作成された印刷物が作成される。この印刷物に加飾装置60でニスを塗布しようとすると、トナーやインクで形成された画像表面でニスが弾かれ、所望の位置にニスを塗布できないことがある。これに対して、図10に示す画像形成システム100のように、プリンタ50と加飾装置60との間に表面改質ユニット1を配置し、印刷物の表面の濡れ性を向上させる表面改質を行うことで、印刷物の表面でニスが弾かれることを防止し、所望の位置にニスを塗布し、良好な加飾加工を行うことができる。
【0059】
図10に示す例の加飾装置60は、表面改質による濡れ性の向上によってニスの塗布性が向上するインクジェット方式のニス塗布装置である。ニス塗布装置としては、例えば、株式会社デュプロ製のDDC810を例示することができるがこれに限るものではない。
また、本発明に係る表面改質ユニット1の下流側に配置する加飾装置60としては、ニス塗布装置に限るものではなく、濡れ性の向上等、表面改質によって加飾品質を向上できるものであればよい。
シート材処理システム200としては、図10のように、上流側にプリンタ50等の画像形成装置を備えるものに限らず、システム外の画像形成装置で画像が形成された後の印刷物に対して、加飾処理を行うものであってもよい。また、画像が形成されたシート材に限らず、画像が形成されていない白紙のシート材に箔押し加工やニス塗布等の加飾処理を行うものでもよい。
【0060】
図1乃至図10を用いて説明した各実施形態及び各変形例では、シート材Sを搬送しながら、シート材Sと速度差がある摺擦部材を接触させて摺擦処理を行う構成について説明した。シート材を摺擦して表面改質を行う構成としては、シート材Sを移動させながら摺擦するものに限らず、停止させた状態のシート材Sに対して摺擦部材を摺擦させる構成でもよい。
【0061】
各実施形態及び各変形例の摺動部材におけるシート材Sの表面と接触する部分としては、紙製のウエス(例えば、キムワイプ(登録商標))や不織布を用いることでシート材Sの表面改質を行うことができる。しかし、摺擦部材の接触部としてはこれに限るものではなく、シート材Sを摺擦することでシート材Sの表面改質を行うことができればよい。例えば、樹脂製の研磨フィルムやポリカーボネート樹脂のシートの表面に凹凸形状を施したもの(AGC株式会社製のカーボグラス(登録商標)等)を挙げることができる。
【0062】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0063】
〔態様1〕
シート材S等のシート材の表面特性の改質処理を行う表面改質ユニット1等の表面改質装置において、シート材の表面に接触し、摺擦することで表面特性を改質する摺擦ローラ10または摺擦ウェブ20等の摺擦部材を備えることを特徴とするものである。
これによれば、摺擦部材を設けることでシート材の表面改質を行うことができ、従来のコロナ放電処理等の放電処理を用いた表面改質装置に比べて、簡易な構造でシート材の表面の改質を行う表面改質装置を実現できる。
【0064】
〔態様2〕
態様1に係る表面改質装置において、表面特性として、シート材の表面の濡れ性を改質することを特徴とするものである。
これによれば、ニスやインク等の液体をシート材に塗布するときに、液体がシート材に弾かれ難くなる等、シート材に対する液体の塗布性能の向上を図ることができる。
【0065】
〔態様3〕
態様1または2に係る表面改質装置において、摺擦部材におけるシート材に接触する部分は、紙製のウエスまたは不織布であることを特徴とするものである。
これによれば、シート材を摺擦することで表面改質できる摺擦部材を実現できる。
【0066】
〔態様4〕
態様1乃至3の何れかに係る表面改質装置において、摺擦部材はシート材の上面に接触し、シート材を挟んで摺擦部材に対向する位置にシート材を支持するガイド板4または摺擦部ベルト支持ローラ31等の支持部材を備えることを特徴とするものである。
これによれば、シート材の上面に摺擦部材を接触させても、シート材が下方に逃げることを防止し、安定した摺擦処理を行うことが可能となる。
【0067】
〔態様5〕
態様1乃至4の何れかの態様に係る表面改質装置において、シート材を搬送し、シート材が摺擦部材と接触する位置を通過させる処理前搬送ローラ対3及び処理後搬送ローラ対5、または、搬送ベルト30等の搬送手段を備えることを特徴とするものである。
これによれば、シート材を搬送しながら摺擦処理を行うことができ、複数枚のシート材やウェブ状のシート材に対して連続的な表面改質処理を行うことが可能となる。
【0068】
〔態様6〕
態様5に係る表面改質装置において、搬送手段に搬送されるシート材の表面と、摺擦部材におけるシート材と接触する部分の表面との間に速度差があることを特徴とするものである。
これによれば、搬送されるシート材に対して、摺擦部材を摺擦させる構成が実現できる。
【0069】
〔態様7〕
態様6に係る表面改質装置において、摺擦部材におけるシート材と接触する部分の表面が、シート材が搬送手段によって搬送される搬送方向とは逆方向に移動することを特徴とするものである。
これによれば、摺擦部材がシート材に接触する部分で、シート材の表面と摺擦部材の表面との間に速度差を持たせることができ、シート材を摺擦部材で摺擦する構成を実現できる。
【0070】
〔態様8〕
態様6に係る表面改質装置において、少なくともシート材が搬送手段によって搬送されて摺擦部材との対向部を通過するときには、摺擦部材におけるシート材と接触する部分の表面が移動しないことを特徴とするものである。
これによれば、表面が移動しない摺擦部材の表面と搬送されるシート材の表面との間に速度差を持たせることができ、シート材を摺擦部材で摺擦する構成を実現できる。
【0071】
〔態様9〕
態様5乃至8の何れかの態様に係る表面改質装置において、摺擦部材をシート材の搬送方向の複数箇所に備えることを特徴とするものである。
これによれば、摺擦部材によってシート材を摺擦する機会が増え、摺擦によるシート材の表面改質の性能の向上を図ることができる。
【0072】
〔態様10〕
態様5乃至9の何れかの態様に係る表面改質装置において、摺擦部材におけるシート材と接触する部分の表面がシート材の搬送方向に直交する幅方向に移動可能であることを特徴とするものである。
これによれば、摺擦によるシート材の表面改質の効果の向上を図ることができる。
【0073】
〔態様11〕
態様10に係る表面改質装置において、摺擦部材における前記シート材と接触する部分の表面が、前記幅方向に往復移動可能であることを特徴とするものである。
これによれば、幅方向に往復運動する摺擦部材の摺擦によってシート材の表面改質の効果の向上を図ることができる。
【0074】
〔態様12〕
態様10に係る表面改質装置において、摺擦部材は、幅方向に無端移動する直交移動摺擦ベルト40等のベルト部材、または、幅方向に移動するウェブ部材であることを特徴とするものである。
これによれば、幅方向に移動する摺擦部材の摺擦によってシート材の表面改質の効果の向上を図ることができる。
【0075】
〔態様13〕
態様1乃至10の何れかに係る表面改質装置において、摺擦部材は、シート材の接触する表面に直交する方向を回転軸として回転しながらシート材の表面に接触する回転摺擦部材81等の回転摺擦部材であることを特徴とするものである。
これによれば、シート材を摺擦することで表面改質できる摺擦部材を実現できる。
【0076】
〔態様14〕
シート材の表面に加飾加工等の所定の加工を行う加飾装置60等の加工手段と、加工手段に到達する前のシート材に前処理を行い、加工手段に向けて送り出す前処理手段と、を備えるシート材処理システム200等のシート材加工システムにおいて、前処理手段として、態様1乃至12の何れかに係る表面改質装置を備えることを特徴とするものである。
これによれば、加工手段での加工に適した表面改質を簡易な構造の表面改質装置で実現でき、従来よりも簡易な構造で、設置場所や装置コストの削減が可能なシート材加工システムを実現できる。
また、本態様に係る加工手段としては、実施形態で説明した加飾装置60のような加飾手段に限らず、インクジェット方式のプリンタ、電子写真方式のプリンタ、版を用いた印刷装置等、表面改質を行ったシート材に対して画像を形成するものであってもよい。
【0077】
〔態様15〕
シート材S等のシート材の表面特性の改質処理を行う表面改質方法において、シート材の表面に摺擦ローラ10、摺擦ウェブ20、直交移動摺擦ベルト40または回転摺擦機構80等の摺擦部材を接触させ、摺擦することで濡れ性の向上等の表面特性を改質することを特徴とするものである。
これによれば、摺擦部材で摺擦することでシート材の表面改質を行うことができ、従来のコロナ放電処理等の放電処理を行う表面改質方法に比べて、簡易な処理でシート材の表面の改質を行う表面改質処理を行うことができる。
【0078】
〔態様16〕
シート材S等のシート材の表面に所定の加工を行う加飾処理等の加工処理工程と、加工処理工程の前にシート材に対して表面改質処理等の前処理を行う前処理工程と、を行う加飾印刷方法等のシート材加工方法において、前処理工程として、シート材の表面に摺擦ローラ10、摺擦ウェブ20、直交移動摺擦ベルト40または回転摺擦機構80等の摺擦部材を接触させて摺擦する摺擦処理を行うことを特徴とするものである。
これによれば、摺擦部材で摺擦することでシート材の濡れ性の向上等の表面特性の改質を行うことができ、その後の加工処理工程での加工処理に適した表面改質を行うことで、加工処理の品質向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0079】
1 :表面改質ユニット
2 :入口ローラ対
3 :処理前搬送ローラ対
4 :ガイド板
5 :処理後搬送ローラ対
6 :出口ローラ対
7 :ケーシング
8 :摺擦部間搬送ローラ対
10 :摺擦ローラ
10a :第一摺擦ローラ
10b :第二摺擦ローラ
20 :摺擦ウェブ
21 :ウェブ押圧ローラ
21a :第一ウェブ押圧ローラ
21b :第二ウェブ押圧ローラ
22 :ウェブ繰出し軸
23 :ウェブ巻取軸
30 :搬送ベルト
30a :ベルト張架ローラ
31 :摺擦部ベルト支持ローラ
32 :処理前対向ローラ
33 :処理前搬送ローラ
34 :処理後対向ローラ
35 :処理後搬送ローラ
40 :直交移動摺擦ベルト
41 :入口対向ローラ
42 :入口ローラ
45 :出口対向ローラ
46 :出口ローラ
48 :直交ベルト張架ローラ
50 :プリンタ
60 :加飾装置
80 :回転摺擦機構
81 :回転摺擦部材
100 :画像形成システム
200 :シート材処理システム
S :シート材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10