(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046100
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】水耕栽培用キット及び水耕栽培装置
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230327BHJP
A01G 31/02 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
A01G31/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154809
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】304056202
【氏名又は名称】株式会社みどりの産業
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 正照
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314MA38
2B314NA03
2B314NA08
2B314NA11
2B314NA23
2B314NA33
2B314NB21
2B314NB23
2B314NC09
2B314NC11
2B314NC14
2B314NC26
2B314NC27
2B314NC44
2B314ND04
2B314ND06
2B314ND10
2B314ND14
2B314ND18
2B314ND30
2B314ND32
2B314ND37
2B314PA03
2B314PA04
2B314PB02
2B314PB44
2B314PB47
2B314PB64
2B314PD37
2B314PD40
2B314PD59
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で複数の植物の水耕栽培が可能な水耕栽培用キット及び水耕栽培装置を提供する
【解決手段】鉛直方向上側(Z1方向側)から供給される栽培液を一定量だけ貯留し、その一定量を超える栽培液を鉛直方向下側(Z2方向側)から排出する水耕栽培用キット23を複数個備え、この複数個の水耕栽培用キット23は、鉛直方向(Z方向)に並んで配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の第一部分と、
前記第一部分の内側に配置され、且つ、液体を貯留可能な有底筒状の第二部分と、を備える、
水耕栽培用キット。
【請求項2】
請求項1に記載の水耕栽培用キットであって、
前記第二部分には、側壁の一部に開口が形成されている、
水耕栽培用キット。
【請求項3】
請求項2に記載の水耕栽培用キットであって、
前記第一部分の内壁と前記開口とが対向配置される、
水耕栽培用キット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の水耕栽培用キットであって、
苗を収容する筒状の苗収容部材を更に備え、
前記苗収容部材は、第一開口と、前記第一開口側と反対側の前記第一開口よりも小さい第二開口と、を含み、
前記第二開口に前記苗の根が挿通されて前記根が外部に露出し、
前記苗収容部材から露出する前記根が前記第二部分に貯留される液体に接触可能な状態にて、前記苗収容部材が前記第二部分の内部に配置される、
水耕栽培用キット。
【請求項5】
請求項4に記載の水耕栽培用キットであって、
前記第一部分と前記第二部分と前記苗収容部材は、それぞれ、ペットボトルを部分的に切断して形成されたものである、
水耕栽培用キット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の水耕栽培用キットを備える水耕栽培装置であって、
前記水耕栽培用キットが鉛直方向に複数個配列されてなる少なくとも1つの水耕栽培キット群と、
液体を貯留する貯留部と、
前記貯留部の液体が流れる流路と、を備え、
前記流路は、前記水耕栽培キット群における最も高い位置にある前記水耕栽培用キットよりも上側に配置される部分を含み、
前記部分には、前記最も高い位置にある前記水耕栽培用キットの前記第二部分に向けて前記液体を排出する排出部が設けられている、
水耕栽培装置。
【請求項7】
請求項6に記載の水耕栽培装置であって、
前記水耕栽培キット群を内壁面に支持する、開閉扉付きの箱型状の収容体と、
前記収容体の開閉扉の内側の面に設けられた照明部と、を備える、
水耕栽培装置。
【請求項8】
鉛直方向上側から供給される液体を一定量だけ貯留し、前記一定量を超える前記液体を鉛直方向下側から排出する水耕栽培用キットを複数個備え、
前記複数個の前記水耕栽培用キットは、鉛直方向に並んで配置される、
水耕栽培装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水耕栽培用キット及び水耕栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動潅水装置を備えた立体花壇が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、植物の水耕栽培が可能な水耕栽培用キット及び水耕栽培装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水耕栽培用キットは、筒状の第一部分と、前記第一部分の内側に配置され、且つ、液体を貯留可能な有底筒状の第二部分と、を備える、ものである。
本発明の水耕栽培装置は、鉛直方向上側から供給される液体を一定量だけ貯留し、前記一定量を超える前記液体を鉛直方向下側から排出する水耕栽培用キットを複数個備え、前記複数個の前記水耕栽培用キットは、鉛直方向に並んで配置される、ものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】
図1(a)におけるA-A線の断面模式図である。
【
図3】
図2に示す水耕栽培用キットを一部分解した分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の水耕栽培装置の一実施形態である水耕栽培装置100について説明する。水耕栽培装置100は、主に、スペースに限りのある屋内において、例えば床面や家具の平坦面等に設置して使用することを想定している。しかし、屋外(例えばベランダ等)で使用することも可能である。水耕栽培装置100は、植物として、特に野菜を育てるのに好適に用いられる。以下の説明では、互いに直交する3方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。本形態では、Z方向が鉛直方向と一致しているため、Z方向を上下方向とするとともに、Z1方向側を「上」側とし、Z2方向側を「下」側とする。また、X方向を左右方向とするとともに、X1方向側を「右」側とし、X2方向側を「左」側とする。また、Y方向を前後方向とするとともに、Y1方向側を「後(後ろ)」側とし、Y2方向側を「前」側とする。
【0008】
(水耕栽培装置の全体構成)
図1は、水耕栽培装置100の概略構成を示す図である。
図1(a)は、水耕栽培装置100を前側から見た正面図である。
図1(b)は、水耕栽培装置100を右側から見た側面図である。
図1(c)は、水耕栽培装置100を上側から見た平面図である。
【0009】
水耕栽培装置100は、下側部分を構成するタンク収容部1と、上側部分を構成する水耕栽培キット収容部2と、を備える。タンク収容部1は、四角い箱型形状の筐体10と、筐体10の内部に収容されたタンク11、ポンプ12、及び流路24の一部と、を備える。筐体10は、
図1では簡略化しているが、前側の面が開閉可能に構成されている。タンク11には、植物の生育を促すための液体肥料と、植物の生育に必要な水との混合液からなる栽培液が貯留されている。ポンプ12には、タンク11に貯留されている栽培液を吸い上げて流路24に送出する液体ポンプと、この栽培液に空気を送り込むエアーポンプとが含まれる。流路24は、例えば細長い管状のチューブ等で構成される。筐体10の内部には、流路24の基端部24c及び終端部24dが収容されている。ポンプ12によって吸い上げられた栽培液は、流路24の基端部24cに送出される。基端部24cに送出された栽培液は、水耕栽培キット収容部2内に配置された流路24を流れて終端部24dに到達し、終端部24dからタンク11内へと戻る。筐体10には、更に、栽培液回収部13が収容されている。
【0010】
水耕栽培キット収容部2は、四角い箱型形状の筐体20と、筐体20の内部に収容された、複数(
図1の例では20個)の水耕栽培用キット23、流路24、照明部22R、及び照明部22Lと、を備える。筐体20は、前面が開閉可能に構成されている。具体的には、筐体20の前面は、右端部に回動自在に支持された右側の右扉21Rと、左端部に回動自在に支持された左側の左扉21Lとによって構成された、いわゆる両開きの構造となっている。右扉21Rの内面には、上下方向に沿って延びる照明部22Rが2つ、前後方向に並んで固定されている。左扉21Lの内面には、上下方向に沿って延びる照明部22Lが2つ、前後方向に並んで固定されている。照明部22Rと照明部22Lは、それぞれ、例えば、LED(light emitting diode)等の発光素子が上下方向に多数配列された構成である。
【0011】
図1は、右扉21Rと左扉21Lが開かれた状態を図示しているが、右扉21Rと左扉21Lが閉じられた状態では、
図1(b)中の一点鎖線で示す位置に、右扉21Rと左扉21Lが配置される。したがって、照明部22Rと照明部22Lは、右扉21Rと左扉21Lが閉じられた状態では、筐体20の内壁面のうちの後壁面20aに対面した状態となる。
【0012】
筐体20の後壁面20aには、
図1の例では20個の水耕栽培用キット23(符号は一部のみ示す)が、支持部23a(符号は一部のみ示す)によって支持されている。支持部23aは、例えば両面テープ又は釘等であり、水耕栽培用キット23を後壁面20aに固定できるものであれば何でもよい。筐体20の後壁面20aには、上下方向に配列された4つの水耕栽培用キット23からなる水耕栽培キット群が、左右方向に5つ並べて固定されている。
図1の例では、隣り合う水耕栽培キット群が上下方向にずれて配置されているが、このずれは無くてもよい。ただし、このずれがあることで、多くの水耕栽培用キットを省スペースで配置可能となるため好ましい。
【0013】
筐体20内の流路24は、5つの水耕栽培キット群が配置される配置領域の周囲に配置されている。具体的には、流路24は、配置領域の左側に配置され且つ下側から上側に延びる左流路24Aと、配置領域の上側に配置され且つ左流路24Aの上端から右側に延びる上流路24Bと、配置領域の右側に配置され且つ上流路24Bの右端から下側に延びる右流路24Cと、を含む。左流路24Aの下端が基端部24cに繋がっており、右流路24Cの下端が終端部24dに繋がっている。
【0014】
上流路24Bの下側の面には、5つの水耕栽培キット群のそれぞれに対応する排出部24aが設けられている。排出部24aは、対応する水耕栽培キット群における最も上にある水耕栽培用キット23の上に、その水耕栽培用キット23に対面する状態にて配置される。排出部24aは、上流路24Bから分岐して下方向に延びる分岐路である。上流路24Bを流れる栽培液の一部が、各排出部24aから下側に排出され、各排出部24aと対面している水耕栽培用キット23に供給される。
【0015】
(水耕栽培用キット23の構成)
図2は、
図1(a)におけるA-A線の断面模式図である。
図3は、
図2に示す水耕栽培用キット23を一部分解した分解図である。
図3では、
図2に示している苗収容部材40の図示は省略している。
【0016】
水耕栽培用キット23は、筒状の第一部材31と、第一部材31の内側に配置され、且つ、栽培液を貯留可能な有底筒状の第二部材32と、第一部材31及び第二部材32を収容する筒状の第三部材33と、植物の苗41を収容する筒状の苗収容部材40と、を備える。苗収容部材40は、交換可能に構成されている。
【0017】
第三部材33は、ペットボトルの底部を軸方向に垂直に切断し、更に、切断面33bから飲み口側に直線状の切り込みSを入れ、この切り込みSよりも外側の部分33cを外側に広げた構成であり、軸方向が上下方向と略一致している。第三部材33は、ペットボトルの飲み口を構成している下開口33aが下側を向くように配置される。第三部材33の部分33cは、前側に向かって傾斜している。
【0018】
第一部材31は、ペットボトルの底部側を略L字状に切断して得られたものであり、軸方向が上下方向と略一致している。図中のクランク状の直線で示される符号31bはペットボトルの切断面を示す。この切断面が第一部材31の開口端縁を構成している。第一部材31は、ペットボトルの飲み口を構成している下開口31aを含む下部分31dと、下部分31dの一部から上側に突出した上部分31uと、を備え、下部分31dが下側を向く状態で配置されている。第一部材31は、下開口31aが第三部材33の下開口33aと対面する状態にて、第三部材33における切り込みSよりも下側の内部空間に収容されている。第一部材31は、上部分31uが前側を向く状態で第三部材33の内部に配置されている。
【0019】
第二部材32は、ペットボトルの飲み口側を略L字状に切断して得られたものであり、軸方向が上下方向と略一致している。図中のクランク状の直線で示される符号32bはペットボトルの切断面を示し、この切断面が第二部材32の開口端縁を構成している。第二部材32は、底部が下側を向き、且つ、切断面32bのうちの上下方向に平行な部分が前側を向く状態にて、第一部材31の内部に収容されている。
図2に示すように、第一部材31の上部分31uには、第二部材32の側壁が対面配置される。第二部材32の側壁における上部分31uと対面する領域には貫通孔からなる開口32aが形成されている。第一部材31の上部分31uの上端は、この開口32aよりも上側に位置している。
【0020】
図2に示すように、苗収容部材40は、ペットボトルの底部側を略L字状に切断して得られたものである。
図2中のクランク状の直線で示される符号40aはペットボトルの切断面を示す。この切断面が苗収容部材40の開口端縁を構成している。苗収容部材40には、切断面40a側とは反対側に、ペットボトルの飲み口を構成している開口40bが設けられている。苗収容部材40には、植物の苗41が内部に収容され、この苗41における植物の根41aが、開口40bに挿通されて、苗収容部材40の外側に露出している。苗収容部材40は、第一部材31の内部に配置された第二部材32の内部に、軸方向が前側に傾斜する状態で挿入される。
図2に示すように、第一部材31の部分33cが傾斜していることで、この傾斜に沿って、苗収容部材40を斜めに配置することができる。
【0021】
(水耕栽培装置の動作)
水耕栽培装置100を使用する際には、ポンプ12を作動させて、タンク11から流路24に栽培液を供給する。流路24に供給された栽培液は、上流路24Bに設けられた排出部24aから下側に向けて排出される。この排出された栽培液は、
図2に示すように、水耕栽培キット群の一番上の水耕栽培用キット23における苗収容部材40の内部に供給される。なお、苗収容部材40が水耕栽培用キット23に装着されていない状態であれば、この排出された栽培液は、第二部材32の内部に供給される。苗収容部材40に供給された栽培液は、苗収容部材40の開口40bから第二部材32の内部へと移動し、第二部材32の内部に貯留される。
図2には、第二部材32の内部に貯留された栽培液50が示されている。苗収容部材40が水耕栽培用キット23に装着された状態では、この栽培液50に、苗収容部材40から露出する苗41の根41aが浸る。
【0022】
流路24からの栽培液の供給継続によって、第二部材32の内部の栽培液50の液位が、開口32aの位置まで上昇すると、栽培液50の一部が開口32aから排出される。このため、栽培液50の液位は、開口32aの位置より上に上昇することなく、第二部材32に貯留可能な栽培液50の最大量は一定に保たれる。開口32aから排出された余剰分の栽培液は、第一部材31の上部分31uと第二部材32との隙間から第一部材31の下部分31d内へと流れ、下部分31dの下開口31aから排出される。この下開口31aから排出された栽培液は、第三部材33の下開口33aから排出される。そして、最も高い位置にある水耕栽培用キット23の第三部材33から排出された栽培液は、この水耕栽培用キット23の下に位置にする水耕栽培用キット23の苗収容部材40へと供給される。各水耕栽培キット群の最も下にある水耕栽培用キット23まで栽培液が供給され、この水耕栽培用キット23から栽培液が排出されると、この栽培液は、筐体10内の栽培液回収部13によって回収され、その後、タンク11へと流れて再利用される。
【0023】
(水耕栽培装置の効果)
水耕栽培装置100によれば、水耕栽培キット群における最も高い位置にある水耕栽培用キット23に流路24の排出部24aから栽培液が供給されることで、その水耕栽培キット群の全ての水耕栽培用キットに対して栽培液の供給が可能になる。このため、多数の水耕栽培用キット23を用いる場合でも、流路を複雑な構造とする必要がなくなり、簡易な構成で多くの植物の水耕栽培が可能になる。また、複数の水耕栽培用キット23が鉛直方向に配列されているため、装置を室内に配置する場合でも、室内空間を有効利用でき、省スペース化が可能になる。
また、水耕栽培用キット23では、苗収容部材40が前側に傾斜して保持できる。これにより、苗41が成長した場合の植物の延びる方向が上側ではなく斜め前側となり、水耕栽培キット群の水耕栽培用キット23同士の距離を狭くすることができる。すなわち筐体20の上下方向の小型化が可能となる。
【0024】
以上、本発明の水耕栽培装置の好ましい実施形態について説明したが、水耕栽培装置100の構成は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、筐体20内に収容される水耕栽培キット群の数は複数としているが、筐体20に収容される水耕栽培キット群の数は複数に限らず、1つであってもよい。水耕栽培キット群の数を少なくすることで、水耕栽培装置100の左右方向の幅を小さくできるため、小さな設置スペースでも多くの植物の栽培が可能となる。
【0025】
筐体20の前面は両開き構造としているが、片開きの扉で開閉可能としてもよい。ただし、両開き構造となっていることで、小さなスペースでも水耕栽培装置100を設置できるため、両開き構造とすることがより好ましい。
【0026】
筐体20の内壁面(右扉21Rの内面及び左扉21Lの内面を含む)は、照明部22R及び照明部22Lからの光を散乱させるために、光を反射する部材にて覆うことが好ましい。これにより、植物を効率よく育てることができる。
【0027】
水耕栽培用キット23の第一部材31、第二部材32、第三部材33、及び苗収容部材40は、それぞれ、部分的に切断されたペットボトルを再利用して構成されているが、これに限らない。第一部材31、第二部材32、第三部材33、及び苗収容部材40のうちの一部又は全部は、金型等で成形されたものであってもよい。この場合、第一部材31、第二部材32、及び第三部材33は、それぞれが分離可能とする必要はなく、一体的に成形されたものとしてもよい。
【0028】
第二部材32の側壁には開口32aが形成されているが、これは必須ではない。開口32aを設けない場合でも、第一部材31の上部分31uの上端よりも下側に、第二部材32の上端が位置するよう構成すれば、第二部材32から溢れる栽培液を第一部材31内に流して、下の水耕栽培用キット23に供給することは可能である。ただし、開口32aがあることで、栽培液の流れを一か所に制限できるため、余剰の栽培液の流れをコントロールでき、栽培液を効率よく下側に流すことが可能である。
【0029】
以上の説明では、苗収容部材40が装着された状態では、排出部24aから排出される栽培液が苗収容部材40の内部に供給されるものとした。しかし、苗収容部材40が装着された状態であっても、排出部24aは、排出される栽培液が、第二部材32の内部に直接供給されるように配置を決めてあってもよい。この構成であっても苗41を育てることは可能である。
【0030】
水耕栽培用キット23において第三部材33は必須ではなく省略可能である。第三部材33を省略する場合には、第一部材31と第二部材32の一方又は両方を、筐体20の後壁面20aに何らかの手段で固定すればよい。ただし、第三部材33があることで、筐体20内に水耕栽培用キット23を安定して配置できる。また、第三部材33があることで、仮に、第一部材31及び第二部材32の外に栽培液が流れてしまっても、その栽培液を第三部材33によって回収して下側に流すことができ、栽培液の無駄をなくしたり、筐体20内を衛生的に保ったりすることができる。
【0031】
以上説明してきたように、本明細書には以下の事項が開示されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0032】
(1)
筒状の第一部分(第一部材31)と、上記第一部分の内側に配置され、且つ、液体(栽培液)を貯留可能な有底筒状の第二部分(第二部材32)と、を備える、水耕栽培用キット(水耕栽培用キット23)。
【0033】
(1)によれば、第二部材に貯留可能な上限まで液体が貯留された状態で第二部材に液体が供給された場合には、余分な液体が第一部分の内部に排出される。この排出された液体は、第一部分に含まれる両端の開口のうち、第二部分によって塞がれていない側の開口から、第一部分の外へと排出される。このように、第二部材に液体を供給することで、第二部材に水耕栽培に適した一定の量の液体を貯留させつつ、余分な液体を第一部材から排出できる。第二部材の内側に例えば野菜の苗を保持する苗キットを配置してその苗の根が液体に接するようにすることで、常に一定量の液体によって苗を健康的に育てることが可能になる。また、2つの水耕栽培用キットを鉛直方向に並べて配置することで、上側の水耕栽培用キットの第一部分から排出された余剰の液体を、下側の水耕栽培用キットの第二部材に供給することが可能になる。つまり、複数の水耕栽培用キットを鉛直方向に並べて配置する場合には、最も高い位置にある水耕栽培用キットの第二部材にのみ液体を供給するだけで、全ての水耕栽培用キットに液体を供給可能となり、液体を供給する機構を簡略化できる。
【0034】
(2)
(1)に記載の水耕栽培用キットであって、上記第二部分には、側壁の一部に開口(開口32a)が形成されている、水耕栽培用キット。
【0035】
(2)によれば、第二部分には底部から開口の形成位置まで液体を貯留できる。第二部材に貯留可能な上限まで液体が貯留された状態で第二部材に液体が供給された場合には、余分な液体がこの開口から第一部分の内部に排出される。開口があることで、第二部分の開口端ぎりぎりまで液体が貯留されないような構成を実現でき、水耕栽培用キットからの意図しない液体漏れを防ぐことができる。
【0036】
(3)
(2)に記載の水耕栽培用キットであって、上記第一部分の内壁と上記開口とが対向配置される、水耕栽培用キット。
【0037】
(3)によれば、第二部分の開口から排出される液体を第一部分の内部に効率よく導くことができる。これにより、液体が無駄になるのを防ぐことができる。
【0038】
(4)
(1)から(3)のいずれかに記載の水耕栽培用キットであって、苗(苗41)を収容する筒状の苗収容部材(苗収容部材40)を更に備え、上記苗収容部材は、第一開口(切断面40aで示される開口端縁を持つ開口)と、上記第一開口側と反対側の上記第一開口よりも小さい第二開口(開口40b)と、を含み、上記第二開口に上記苗の根(根41a)が挿通されて上記根が外部に露出し、上記苗収容部材から露出する上記根が上記第二部分に貯留される液体(栽培液50)に接触可能な状態にて、上記苗収容部材が上記第二部分の内部に配置される、水耕栽培用キット。
【0039】
(4)によれば、苗収容部材を交換するだけで、簡単に新しい植物を育てることが可能となる。また、苗収容部材の内部に液体が供給される場合でも、苗収容部材の第二開口から液体が第二部分へと流れることで、苗の根だけを浸すことができ、苗の成長を十分に促すことができる。
【0040】
(5)
(4)に記載の水耕栽培用キットであって、上記第一部分と上記第二部分と上記苗収容部材は、それぞれ、ペットボトルを部分的に切断して形成されたものである、水耕栽培用キット。
【0041】
(5)によれば、廃ペットボトルを再利用できるため、環境保護に役立つ。また、キットの製造コストを抑制できる。
【0042】
(6)
(1)から(5)のいずれかに記載の水耕栽培用キットであって、上記第一部分及び上記第二部分を収容する筒状の第三部分(第三部材33)を更に備える、水耕栽培用キット。
【0043】
(6)によれば、第二部分から排出される液体が何らかの理由で第一部分の内側に到達しなかった場合でも、第一部分の外側に位置する第三部分の内部にその液体を導くことができる。これにより、水耕栽培用キットからの意図しない液体漏れを防ぐことができる。
【0044】
(7)
(6)に記載の水耕栽培用キットであって、上記第一部分と上記第二部分と上記第三部分は、それぞれ、ペットボトルを部分的に切断して形成されたものである、水耕栽培用キット。
【0045】
(7)によれば、廃ペットボトルを再利用できるため、環境保護に役立つ。また、キットの製造コストを抑制できる。
【0046】
(8)
(1)から(7)のいずれかに記載の水耕栽培用キットを備える水耕栽培装置(水耕栽培装置100)であって、上記水耕栽培用キットが鉛直方向(Z方向)に複数個配列されてなる少なくとも1つの水耕栽培キット群と、液体を貯留する貯留部(タンク11)と、上記貯留部の液体が流れる流路(流路24)と、を備え、上記流路は、上記水耕栽培キット群における最も高い位置にある上記水耕栽培用キットよりも上側に配置される部分(上流路24B)を含み、上記部分には、上記最も高い位置にある上記水耕栽培用キットの上記第二部分に向けて上記液体を排出する排出部(排出部24a)が設けられている、水耕栽培装置。
【0047】
(8)によれば、水耕栽培キット群における最も高い位置にある水耕栽培用キットに流路の排出部から液体が供給されることで、その水耕栽培キット群の全ての水耕栽培用キットに対して液体の供給が可能になる。このため、多数の水耕栽培用キットを用いる場合でも、流路を複雑な構造とする必要がなくなり、簡易な構成で多くの植物の水耕栽培が可能になる。また、複数の水耕栽培用キットが鉛直方向に配列されているため、装置を室内に配置する場合でも、室内空間を有効利用でき、省スペース化が可能になる。
【0048】
(9)
(8)に記載の水耕栽培装置であって、上記水耕栽培キット群を内壁面(後壁面20a)に支持する、開閉扉(右扉21R及び左扉21L)付きの箱型状の収容体(筐体20)と、上記収容体の開閉扉の内側の面に設けられた照明部(照明部22R及び照明部22L)と、を備える、水耕栽培装置。
【0049】
(9)によれば、開閉扉を閉めることで、水耕栽培キット群を隠した状態を得られる。このため、装置を室内に配置する場合でも、装置の美観性を高めることができる。また、開閉扉の内側に照明部が設けられているため、開閉扉を閉めた状態で、水耕栽培キット群に対して照明部を対向配置させることができる。例えば、水耕栽培キット群の鉛直方向の幅と略同じ幅の照明部を開閉扉に設けることで、全ての水耕栽培用キットに対して均等に光を当てることが可能になる。また、照明部が開閉扉に設けられていることで、装置の大型化を防ぐ効果も得られる。
【0050】
(10)
鉛直方向上側(Z1方向側)から供給される液体を一定量だけ貯留し、上記一定量を超える上記液体を鉛直方向下側(Z2方向側)から排出する水耕栽培用キット(水耕栽培用キット23)を複数個備え、上記複数個の上記水耕栽培用キットは、鉛直方向(Z方向)に並んで配置される、水耕栽培装置。
【符号の説明】
【0051】
100 水耕栽培装置
23 水耕栽培用キット
31 第一部材
32 第二部材
33 第三部材
40 苗収容部材