(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046114
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂、弾性成形品、ポリウレタン樹脂の製造方法、および、プレポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/72 20060101AFI20230327BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20230327BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230327BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20230327BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C08G18/72 050
C08G18/75 010
C08G18/10
C08G18/65
C08G18/78 006
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154826
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】前川 和大
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA05
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB05
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4J034CC08
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4J034HC17
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4J034RA07
4J034RA08
4J034RA09
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA13
4J034RA14
4J034RA15
(57)【要約】
【課題】優れた機械強度を備え、気泡の噛み込みを抑制できるポリウレタン樹脂、弾性成形品、そのようなポリウレタン樹脂の製造方法、および、そのようなポリウレタン樹脂を得ることができるプレポリマー組成物を提供すること。
【解決手段】ポリウレタン樹脂は、プレポリマー組成物と、鎖伸長剤との反応生成物を含み、プレポリマー組成物が、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含み、イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含み、前記イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が7000以上14000以下であり、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が15.0質量%以上20.0質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレポリマー組成物と、鎖伸長剤との反応生成物を含み、
前記プレポリマー組成物が、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、
前記イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が7000以上14000以下であり、
前記プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が15.0質量%以上20.0質量%以下である、ポリウレタン樹脂。
【請求項2】
請求項1に記載のポリウレタン樹脂を含む、弾性成形品。
【請求項3】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分とを、ポリオール成分中の水酸基に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0を超過する割合で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する第1工程と、
前記イソシアネート基末端プレポリマーと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネートモノマーとを混合し、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記イソシアネートモノマーを含むプレポリマー組成物を調製する第2工程と、
前記プレポリマー組成物と鎖伸長剤とを反応させ、ポリウレタン樹脂を合成する第3工程と
を備える、ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項4】
イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、
前記イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が7000以上14000以下であり、
前記イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含み、
イソシアネート基濃度が15.0質量%以上20.0質量%以下である、プレポリマー組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂、弾性成形品、ポリウレタン樹脂の製造方法、および、プレポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリイソシアネートおよびマクロポリオールの反応により形成されるソフトセグメントと、ポリイソシアネートおよび鎖伸長剤の反応により形成されるハードセグメントとを有している。
【0003】
より具体的には、以下の方法で得られるポリウレタン樹脂が、知られている。すなわち、まず、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとポリエステルポリオールとを反応させて、イソシアネート基含有率17.74質量%のイソシアネート基末端プレポリマーを得る。次いで、イソシアネート基末端プレポリマーと、1,4-ブタンジオールとを反応させて、ポリウレタン樹脂を得る(例えば、特許文献1(合成例24、実施例20)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2019/069802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリウレタン樹脂には、用途に応じて、優れた機械強度と、気泡の噛み込みの抑制との両立が要求される。しかし、特許文献1のポリウレタン樹脂は、気泡の噛み込みを十分に抑制できない場合がある。
【0006】
本発明は、優れた機械強度を備え、気泡の噛み込みを抑制できるポリウレタン樹脂、弾性成形品、そのようなポリウレタン樹脂の製造方法、および、そのようなポリウレタン樹脂を得ることができるプレポリマー組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、プレポリマー組成物と、鎖伸長剤との反応生成物を含み、前記プレポリマー組成物が、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含み、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、前記イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含み、前記イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が7000以上14000以下であり、前記プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が15.0質量%以上20.0質量%以下である、ポリウレタン樹脂を、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、上記[1]に記載のポリウレタン樹脂を含む、弾性成形品を、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分とを、ポリオール成分中の水酸基に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0を超過する割合で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する第1工程と、前記イソシアネート基末端プレポリマーと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネートモノマーとを混合し、前記イソシアネート基末端プレポリマーおよび前記イソシアネートモノマーを含むプレポリマー組成物を調製する第2工程と、前記プレポリマー組成物と鎖伸長剤とを反応させ、ポリウレタン樹脂を合成する第3工程とを備える、ポリウレタン樹脂の製造方法を、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含み、前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含み、前記イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が7000以上14000以下であり、前記イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含み、イソシアネート基濃度が15.0質量%以上20.0質量%以下である、プレポリマー組成物を、含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリウレタン樹脂および弾性成形品において、プレポリマー組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含む。また、イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含む。また、イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。そして、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が所定範囲である。さらに、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が所定範囲である。すなわち、プレポリマー組成物が、比較的高い重量平均分子量のイソシアネート基末端プレポリマーと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを含有し、プレポリマー組成物が、比較的高いイソシアネート基濃度を有している。
【0012】
そのため、本発明のポリウレタン樹脂および弾性成形品は、優れた機械強度を備え、気泡の噛み込みを抑制できる。
【0013】
また、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法では、まず、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分とを、ポリオール成分中の水酸基に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0を超過する割合で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。すなわち、この工程において、比較的高い重量平均分子量を有するイソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0014】
次いで、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法では、上記のイソシアネート基末端プレポリマーと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネートモノマーとを混合し、イソシアネート基末端プレポリマーおよびイソシアネートモノマーを含むプレポリマー組成物を調製する。すなわち、この工程において、比較的高いイソシアネート基濃度を有するプレポリマー組成物が得られる。
【0015】
その後、本発明のポリウレタン樹脂の製造方法では、上記のプレポリマー組成物と鎖伸長剤とを反応させる。この工程において、ポリウレタン樹脂が得られる。
【0016】
このような方法によれば、優れた機械強度を備えるポリウレタン樹脂を得ることができ、また、ポリウレタン樹脂の気泡の噛み込みを抑制できる。
【0017】
また、本発明のプレポリマー組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含む。また、イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含む。さらに、イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。そして、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が所定範囲であり、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が所定範囲である。
【0018】
そのため、本発明のプレポリマー組成物によれば、優れた機械強度を備えるポリウレタン樹脂を得ることができ、また、ポリウレタン樹脂の気泡の噛み込みを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のポリウレタン樹脂は、プレポリマー組成物と、硬化剤(後述)との反応生成物を含んでいる。好ましくは、ポリウレタン樹脂は、プレポリマー組成物と、硬化剤(後述)との反応生成物からなる。すなわち、ポリウレタン樹脂は、好ましくは、プレポリマー組成物と、硬化剤(後述)とが反応および硬化したウレタン硬化物である。
【0020】
プレポリマー組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含んでいる。好ましくは、プレポリマー組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとからなる。
【0021】
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物を含んでいる。好ましくは、イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応生成物からなる。
【0022】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含んでいる。ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとしては、例えば、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、および、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。ポリウレタン樹脂の機械強度の向上を図る観点から、好ましくは、対称構造である1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0023】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、立体異性体として、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを有する。以下において、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、シス1,4体と称する場合がある。また、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、トランス1,4体と称する場合がある。なお、トランス1,4体およびシス1,4体の総量は、100モル%である。
【0024】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンにおいて、トランス1,4体の含有割合は、例えば、60モル%以上、好ましくは、70モル%以上、より好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは、85モル%以上である。また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンにおいて、トランス1,4体の含有割合は、例えば、99.8モル%以下、好ましくは、99モル%以下、より好ましくは、96モル%以下、さらに好ましくは、90モル%以下の割合である。
【0025】
また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンにおいて、シス1,4体の含有割合は、例えば、0.2モル%以上、好ましくは、1モル%以上、より好ましくは、4モル%以上、さらに好ましくは、10モル%以上である。また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンにおいて、シス1,4体の含有割合は、例えば、40モル%以下、好ましくは、30モル%以下、より好ましくは、20モル%以下、さらに好ましくは、15モル%以下である。
【0026】
トランス1,4体の含有割合、および、シス1,4体の含有割合が上記範囲であれば、機械強度に優れたポリウレタン樹脂が得られる。
【0027】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、市販品として入手可能である。また、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、公知のイソシアネート化法により、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから製造可能である。イソシアネート化法としては、例えば、冷熱2段ホスゲン化法、造塩法およびノンホスゲン法が挙げられる。
【0028】
また、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、変性体であってもよい。変性体としては、例えば、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン、ビウレット変性体、アロファネート変性体、ポリオール付加体、オキサジアジントリオン変性体、および、カルボジイミド変性体が挙げられる。
【0029】
また、ポリイソシアネート成分は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲で、任意成分として、その他のポリイソシアネート(好ましくは、ジイソシアネート)を含有することができる。
【0030】
その他のポリイソシアネートは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除くイソシアネートである。その他のポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)、芳香族ポリイソシアネート、および、芳香脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,2-プロパンジイソシアネート、1,2-ブタンジイソシアネート、2,3-ブタンジイソシアネート、1,3-ブタンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、および、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。また、その他のポリイソシアネートは、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、上記した変性体であってもよい。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0031】
その他のポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。また、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。すなわち、ポリイソシアネート成分は、とりわけ好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる。
【0032】
ポリオール成分は、必須成分として、マクロポリオールを含む。
【0033】
マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。比較的高分子量とは、数平均分子量が400を超過することを示す。
【0034】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0035】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0036】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、縮合ポリエステルポリオールおよび開環ポリエステルポリオールが挙げられる、縮合ポリエステルポリオールとしては、例えば、アジペート系ポリエステルポリオールおよびフタル酸系ポリエステルポリオールが挙げられる。開環ポリエステルポリオールとしては、例えば、ラクトンベースポリエステルポリオールが挙げられ、より具体的には、ポリカプロクトンポリオールが挙げられる。
【0037】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、後述の低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物が挙げられる。
【0038】
これらマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。気泡の噛み込みを抑制する観点から、マクロポリオールとして、より好ましくは、ポリエステルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、開環ポリエステルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ラクトンベースポリエステルポリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、ポリカプロクトンポリオールが挙げられる。機械物性の観点から、マクロポリオールとして、より好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0039】
マクロポリオールの数平均分子量は、400を超過し、好ましくは、500以上、より好ましくは、650以上、さらに好ましくは、1000以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下、さらに好ましくは、1500以下である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、2以上である。また、マクロポリオールの平均官能基数(平均水酸基数)は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下、さらに好ましくは、2.5以下である。
【0040】
ポリオール成分は、任意成分として、低分子量ポリオールを含むことができる。
【0041】
低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。比較的低分子量とは、数平均分子量が400以下であることを示す。すなわち、低分子量ポリオールの分子量は、例えば、400以下、好ましくは、300以下である。また、低分子量ポリオールの分子量は、通常、40以上である。
【0042】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が400以下になるように、2~4価アルコールに対してアルキレン(C2~3)オキサイドを付加重合した重合物も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0043】
低分子量ポリオールの含有割合は、ポリオール成分の総量に対して、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、1質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。また、マクロポリオールの含有割合は、ポリオール成分の総量に対して、例えば、90質量%以上、好ましくは、95質量%以上、より好ましくは、99質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。すなわち、ポリオール成分は、とりわけ好ましくは、マクロポリオールからなる。
【0044】
イソシアネート基末端プレポリマーは、例えば、後述の第1工程において合成され、後述の第2工程において、イソシアネートモノマー(後述)と混合される。これにより、イソシアネート基末端プレポリマーは、プレポリマー組成物に含有される。
【0045】
プレポリマー組成物において、イソシアネート基末端プレポリマーの含有割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、適宜設定される。より具体的には、プレポリマー組成物の総量に対して、イソシアネート基末端プレポリマーが、例えば、50質量%以上、好ましくは、55質量%以上、より好ましくは、60質量%以上である。また、プレポリマー組成物の総量に対して、イソシアネート基末端プレポリマーが、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下である。
【0046】
イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量は、7000以上、好ましくは、8000以上、より好ましくは、9000以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量は、14000以下、好ましくは、13000以下、より好ましくは、12000以下である。なお、重量平均分子量は、公知のゲルパーミエーションクロマトグラム(GPC)により測定できる(以下同様)。
【0047】
なお、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量は、後述するプレポリマー組成物からイソシアネートモノマーを除く部分の重量平均分子量である。すなわち、GPCチャートにおいて、イソシアネート基末端プレポリマーに由来するピークと、イソシアネートモノマーに由来するピークとを分離し、イソシアネート基末端プレポリマーに由来するピークの分子量として算出される。なお、GPC測定条件の詳細は、実施例として後述する。
【0048】
イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、15.0質量%以上、好ましくは、15.5質量%以上、より好ましくは、16.0質量%以上である。また、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基濃度は、例えば、20.0質量%以下、好ましくは、19.5質量%以下、より好ましくは、19.0質量%以下である。なお、イソシアネート基濃度(イソシアネート基含有率)は、公知の測定方法によって求めることができる。測定方法としては、例えば、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法、および、FT-IR分析が挙げられる(以下同様)。
【0049】
イソシアネートモノマーは、必須成分として、上記したビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。好ましくは、イソシアネートモノマーは、イソシアネート基末端プレポリマーの原料として使用されたポリイソシアネート成分と同種のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。
【0050】
より具体的には、イソシアネートモノマーとして、好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンにおいて、トランス1,4体およびシス1,4体の含有割合は、好ましくは、上記の範囲である。
【0051】
また、イソシアネートモノマーは、任意成分として、上記したその他のポリイソシアネートを含有できる。すなわち、イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除くイソシアネートを含有できる。
【0052】
イソシアネートモノマーの総量に対して、その他のポリイソシアネートの含有割合は、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、とりわけ好ましくは、0質量%である。また、イソシアネートモノマーの総量に対して、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの含有割合は、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上、より好ましくは、90質量%以上、とりわけ好ましくは、100質量%である。すなわち、イソシアネートモノマーは、とりわけ好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる。
【0053】
イソシアネートモノマーは、例えば、後述の第2工程において、イソシアネート基末端プレポリマーと混合される。これにより、イソシアネートモノマーは、プレポリマー組成物に含有される。
【0054】
プレポリマー組成物において、イソシアネートモノマーの含有割合は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、適宜設定される。より具体的には、プレポリマー組成物の総量に対して、イソシアネートモノマーが、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上である。また、プレポリマー組成物の総量に対して、イソシアネートモノマーが、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下、より好ましくは、40質量%以下である。
【0055】
プレポリマー組成物の重量平均分子量は、例えば、7000以上、好ましくは、8000以上、より好ましくは、9000以上である。プレポリマー組成物の重量平均分子量が上記下限を上回っていれば、気泡の噛み込みが抑制されたポリウレタン樹脂が得られる。
【0056】
また、プレポリマー組成物の重量平均分子量は、例えば、14000以下、好ましくは、13000以下、より好ましくは、12000以下である。プレポリマー組成物の重量平均分子量が上記上限を下回っていれば、優れた機械強度(硬度など)を有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0057】
プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度は、15.0質量%以上、好ましくは、15.5質量%以上、より好ましくは、16.0質量%以上である。プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が上記下限を上回っていれば、優れた硬度を有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0058】
また、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度は、20.0質量%以下、好ましくは、19.5質量%以下、より好ましくは、19.0質量%以下である。プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が上記上限を下回っていれば、優れた引張強度および伸びを有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0059】
なお、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度は、イソシアネート基末端プレポリマーおよびイソシアネートモノマーを含む混合物のイソシアネート基濃度として、測定される。測定方法としては、例えば、ジ-n-ブチルアミンによる滴定法、および、FT-IR分析が挙げられる。
【0060】
鎖伸長剤は、プレポリマー組成物に対する硬化剤である。鎖伸長剤としては、例えば、低分子量ポリオールおよび低分子量ポリアミンが挙げられる。鎖伸長剤として、好ましくは、低分子量ポリオールが挙げられる。低分子量ポリオールを用いることにより、優れた機械強度を有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0061】
低分子量ポリオールとしては、上記の低分子量ポリオールが挙げられる。より具体的には、低分子量ポリオールとしては、例えば、上記の2価アルコール、上記の3価アルコール、および、上記の4価以上のアルコールが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0062】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、1,4-ブタンジオールが挙げられる。すなわち、低分子量ポリオールは、好ましくは、1,4-ブタンジオールを含み、より好ましくは、1,4-ブタンジオールからなる。これにより、優れた機械強度を有するポリウレタン樹脂が得られる。
【0063】
以下において、ポリウレタン樹脂の製造方法について、詳述する。
【0064】
この方法では、まず、イソシアネート基末端プレポリマーが合成され(第1工程)、次いで、プレポリマー組成物が調製され(第2工程)、その後、ポリウレタン樹脂が合成される(第3工程)。
【0065】
より具体的には、この方法では、まず、上記のポリイソシアネート成分と、上記のポリオール成分とを、所定の比率で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する(第1工程)。
【0066】
ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合割合は、ポリオール成分中の水酸基に対して、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基が過剰となるように、調整される。
【0067】
より具体的には、第1工程において、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比R1(NCO/OH)が、例えば、1.0を超過し、好ましくは、1.1以上、より好ましくは、1.3以上である。また、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比R1(NCO/OH)が、例えば、2.5以下、好ましくは、2.0以下である。ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合割合が上記範囲であれば、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量を、比較的高くすることができる。
【0068】
第1工程において、反応方法としては、例えば、バルク重合および溶液重合が挙げられる。バルク重合では、例えば、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、窒素気流下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。溶液重合では、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、公知の有機溶剤の存在下で反応させる。反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、15時間以下である。また、必要に応じて、例えば、公知のウレタン化触媒を添加することができる。ウレタン化触媒の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0069】
これによりイソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合物が得られる。反応混合物のイソシアネート基濃度は、例えば、2.0質量%以上、好ましくは、3.0質量%以上である。また、反応混合物のイソシアネート基濃度は、例えば、6.0質量%以下、好ましくは、5.0質量%以下である。なお、必要に応じて、反応混合物から、未反応のポリイソシアネート成分を、公知の方法で除去することもできる。
【0070】
次いで、この方法では、上記のイソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合液と、上記のイソシアネートモノマーとを混合し、プレポリマー組成物を調製する(第2工程)。
【0071】
イソシアネート基末端プレポリマーとイソシアネートモノマーとの配合割合は、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が上記の範囲になるように、調整される。
【0072】
より具体的には、第1工程で使用されるポリオール成分中の水酸基に対する、第1工程で使用されるポリイソシアネート成分のイソシアネート基、および、第2工程で使用されるイソシアネートモノマーのイソシアネート基の総量の当量比R2(NCO/OH)が、例えば、3.0以上、好ましくは、4.0以上である。また、第1工程で使用されるポリオール成分中の水酸基に対する、第1工程で使用されるポリイソシアネート成分のイソシアネート基、および、第2工程で使用されるイソシアネートモノマーのイソシアネート基の総量の当量比R2(NCO/OH)が、例えば、10.0以下、好ましくは、6.0以下、より好ましくは、5.5以下である。
【0073】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネートモノマーとを含むプレポリマー組成物が調製される。
【0074】
プレポリマー組成物において、イソシアネート基末端プレポリマーとイソシアネートモノマーとの割合は、例えば、上記の範囲である。また、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量は、上記の範囲である。また、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度は、上記の範囲である。
【0075】
その後、この方法では、上記のプレポリマー組成物と鎖伸長剤とを反応させる(第3工程)。
【0076】
より具体的には、プレポリマー組成物と鎖伸長剤との配合割合は、鎖伸長剤(低分子量ポリオール)中の水酸基に対する、プレポリマー組成物中のイソシアネート基の当量比R3(NCO/OH)が、例えば、0.90以上、好ましくは、1.00以上である。また、鎖伸長剤(低分子量ポリオール)中の水酸基に対する、プレポリマー組成物中のイソシアネート基の当量比R3(NCO/OH)が、例えば、1.33以下、好ましくは、1.25以下である。
【0077】
第3工程において、反応方法としては、例えば、上記バルク重合および上記溶液重合が挙げられる。バルク重合では、反応温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、120℃以上である。また、反応温度は、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下、より好ましくは、180℃以下、さらに好ましくは、150℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、24時間以下、好ましくは、20時間以下、より好ましくは、18時間以下である。溶液重合では、反応温度は、例えば、50℃以上である。また、反応温度は、例えば、120℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上である。また、反応時間が、例えば、24時間以下である。また、必要に応じて、例えば、公知のウレタン化触媒を添加することができる。ウレタン化触媒の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0078】
これにより、プレポリマー組成物と鎖伸長剤との反応生成物を含むポリウレタン樹脂が得られる。好ましくは、プレポリマー組成物と鎖伸長剤との混合物は、必要に応じて脱泡され、予備加熱した成形型内で硬化し、脱型される。これにより、所望形状に成形されたポリウレタン樹脂が得られる。
【0079】
また、ポリウレタン樹脂を、熱処理することができる。熱処理温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上である。また、熱処理温度は、例えば、200℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、熱処理時間が、例えば、30分以上、好ましくは、1時間以上である。また、熱処理時間が、例えば、30時間以下、好ましくは、20時間以下である。
【0080】
また、ポリウレタン樹脂を、養生することができる。養生温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、20℃以上である。また、養生温度は、例えば、50℃以下、好ましくは、40℃以下である。また、養生時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、10時間以上である。また、養生時間が、例えば、50日間以下、好ましくは、30日間以下である。
【0081】
ポリウレタン樹脂は、必要に応じて、公知の添加剤を含むことができる。すなわち、ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂組成物であってもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤、離型剤、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤、防錆剤およびブルーイング剤が挙げられる。添加剤の添加量および添加タイミングは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0082】
そして、上記のポリウレタン樹脂は、優れた機械強度を備え、気泡の噛み込みを抑制できる。
【0083】
すなわち、上記のポリウレタン樹脂において、プレポリマー組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含む。また、イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含む。また、イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。そして、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が所定範囲である。さらに、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が所定範囲である。すなわち、プレポリマー組成物が、比較的高い重量平均分子量のイソシアネート基末端プレポリマーと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとを含有し、プレポリマー組成物が、比較的高いイソシアネート基濃度を有している。
【0084】
そのため、上記のポリウレタン樹脂は、優れた機械強度を備え、気泡の噛み込みを抑制できる。より具体的には、上記のポリウレタン樹脂では、プレポリマー組成物がイソシアネートモノマーを含み、イソシアネート基濃度が比較的高いため、ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度を比較的高くでき、機械強度の向上を図ることができる。また、上記のポリウレタン樹脂では、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が比較的高いため、プレポリマー組成物の粘度が比較的高くなり、気泡の噛み込みを抑制できる。
【0085】
また、上記のポリウレタン樹脂の製造方法では、まず、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分とを、ポリオール成分中の水酸基に対するポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.0を超過する割合で反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを合成する。すなわち、この第1工程において、比較的高い重量平均分子量を有するイソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
【0086】
次いで、上記のポリウレタン樹脂の製造方法では、上記のイソシアネート基末端プレポリマーと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むイソシアネートモノマーとを混合し、イソシアネート基末端プレポリマーおよびイソシアネートモノマーを含むプレポリマー組成物を調製する。すなわち、この第2工程において、比較的高いイソシアネート基濃度を有するプレポリマー組成物が得られる。
【0087】
その後、上記のポリウレタン樹脂の製造方法では、上記のプレポリマー組成物と鎖伸長剤とを反応させる。この第3工程において、ポリウレタン樹脂が得られる。
【0088】
このような方法によれば、優れた機械強度を備えるポリウレタン樹脂を得ることができ、また、ポリウレタン樹脂の気泡の噛み込みを抑制できる。
【0089】
とりわけ、プレポリマー組成物の製造において、上記の第1工程および第2工程を1つの工程に統合して、単に、ポリオール成分に対して大過剰のポリイソシアネート成分を添加した場合、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が低くなる。そのため、プレポリマー組成物の粘度が比較的低くなる。その結果、ポリウレタン樹脂の気泡の噛み込みを抑制できない。
【0090】
これに対して、上記の方法では、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が比較的高いため、プレポリマー組成物の粘度が比較的高くなる。その結果、ポリウレタン樹脂の気泡の噛みを抑制できる。
【0091】
また、上記のプレポリマー組成物は、イソシアネート基末端プレポリマーと、イソシアネートモノマーとを含む。また、イソシアネート基末端プレポリマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むポリイソシアネート成分と、マクロポリオールを含むポリオール成分との反応生成物を含む。さらに、イソシアネートモノマーは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含む。そして、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量が所定範囲であり、プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度が所定範囲である。
【0092】
そのため、上記のプレポリマー組成物によれば、優れた機械強度を備えるポリウレタン樹脂を得ることができ、また、ポリウレタン樹脂の気泡の噛み込みを抑制できる。
【0093】
その結果、上記のポリウレタン樹脂およびプレポリマー組成物は、機械強度を要求され、また、気泡の噛み込みの抑制を要求される各種産業分野において、好適に使用される。そのような産業分野としては、例えば、弾性成形品、塗料、コーティング剤および接着剤が挙げられる。好ましくは、弾性成形品が挙げられる。
【0094】
弾性成形品としては、例えば、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。ポリウレタンエラストマーとしては、TPU(熱可塑性ポリウレタン樹脂)およびTSU(熱硬化性ポリウレタン樹脂)が挙げられる。弾性成形品として、好ましくは、TSU(熱硬化性ポリウレタン樹脂)が挙げられる。
【0095】
弾性成形品は、公知の成形法でポリウレタン樹脂を成形することにより得られる。成形方法としては、例えば、注型成形、熱圧縮成形、射出成形、押出成形および紡糸成形が挙げられる。また、成形後の形状としては、例えば、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、ボトル状、中空状、箱状およびボタン状が挙げられる。
【0096】
このような弾性成形品は、上記のポリウレタン樹脂を含むため、優れた機械強度を備え、気泡の噛み込みを抑制できる。そのため、弾性成形品は、種々の用途において、好適に使用される。弾性成形品の用途としては、例えば、透明性硬質プラスチック、防水材、ポッティング剤、インク、バインダー、フィルム、シート、バンド、ベルト、シュープレスベルト、チューブ、ブレード、スピーカー、センサー、アウトソール、糸、繊維、不織布、化粧品、靴用品、断熱材、シール材、テープ材、封止材、太陽光発電部材、ロボット部材、アンドロイド部材、ウェアラブル部材、衣料用品、衛生用品、化粧用品、家具用品、食品包装部材、スポーツ用品、レジャー用品、医療用品、介護用品、住宅用部材、音響部材、照明部材、防振部材、防音部材、日用品、雑貨、クッション、寝具、応力吸収材、応力緩和材、自動車内装材、自動車外装材、鉄道部材、航空機部材、光学部材、OA機器用部材、雑貨表面保護部材、半導体封止材、自己修復材料、健康器具、メガネレンズ、玩具、パッキン、ケーブルシース、ワイヤーハーネス、電気通信ケーブル、自動車配線、コンピューター配線、工業用品、衝撃吸収材、半導体用品および橋梁支承が挙げられる。
【実施例0097】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0098】
1.原料
<ポリイソシアネート成分、イソシアネートモノマー>
製造例1 1、4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
国際公開WO2019/069802号公報の製造例3の記載に準拠して、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-H6XDI)を得た。1,4-H6XDIの純度を、ガスクロマトグラフにより測定した結果、99.9%であった。また、APHA測定による色相は、5であった。また、13C-NMR測定により測定したトランス体およびシス体比は、トランス体86モル%であり、シス体14モル%であった。
【0099】
<ポリオール成分>
・PTMEG-650:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量(Mn)650
・PTMEG-1000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量(Mn)1000
・PTMEG-2000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量(Mn)2000
・PTMEG-3000:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量(Mn)3000
・PCL-1000:ポリカプロクトンジオール、数平均分子量(Mn)1000
・PCL-2000:ポリカプロクトンジオール、数平均分子量(Mn)2000
【0100】
<鎖伸長剤>
・1,4-BD:1,4-ブタンジオール
【0101】
2.プレポリマー組成物およびポリウレタン樹脂
実施例1~5および比較例1~8
(1)第1工程
表1に記載の処方および条件で、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を、窒素雰囲気下において反応させた。その後、反応混合液に、以下の添加剤を添加した。なお、反応混合液の総量に対する添加剤の配合量を、以下に示す。
・オクチル酸スズ(ウレタン化触媒) 0.0005質量%
・ジイソノニルアジペート(オクチル酸スズの希釈剤) 0.012質量%
・トリデシルホスファイト(酸化防止剤) 0.002質量%
【0102】
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応混合液を得た。なお、表1中、当量比R1は、ポリオール成分中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比R1(NCO/OH)を示す。
【0103】
(2)第2工程
表1に記載の処方で、上記の反応混合液にイソシアネートモノマーを添加し、プレポリマー組成物を得た。その後、反応混合液に、以下の添加剤を添加した。なお、反応混合液の総量に対する添加剤の配合量を、以下に示す。また、プレポリマー組成物中のイソシアネート基末端プレポリマーの割合、および、イソシアネートモノマーの割合を、仕込み比に基づいて算出した。その結果を表中に示す。
・ヒンダードアミン系酸化防止剤 0.50質量%
・亜リン酸エステル系酸化防止剤 0.30質量%
【0104】
なお、表1中、当量比R2は、第1工程で使用されたポリオール成分中の水酸基に対する、第1工程で使用されたポリイソシアネート成分のイソシアネート基、および、第2工程で使用されたイソシアネートモノマーのイソシアネート基の総量の当量比(NCO/OH)を示す。また、比較例1~4では、第2工程を省略した。
【0105】
(3)第3工程
表1に記載の処方で、プレポリマー組成物と鎖伸長剤とを準備し、これらを60℃に加温した。また、プレポリマー組成物に、以下の添加剤を添加し、60秒混合した。なお、ポリウレタン樹脂に対する添加剤の配合量を、以下に示す。
・オクチル酸スズ(ウレタン化触媒) 0.03質量部/ポリウレタン樹脂100質量部
・ジイソノニルアジペート(オクチル酸スズの希釈剤) 1.47質量部/ポリウレタン樹脂100質量部
・アデカスタブLA-72(ADEKA社製、耐光安定剤)0.3質量部/ポリウレタン樹脂100質量部
そして、プレポリマー組成物と鎖伸長剤とを60秒混合し、室温にて60秒減圧脱泡した。その後、混合物を、110℃の金型に流し込み、110℃で16時間反応させ、その後、23℃で3週間養生した。これにより、ポリウレタン樹脂を得た。
【0106】
3.評価
<プレポリマー組成物>
(1)重量平均分子量
示差屈折計を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、プレポリマー組成物をGPC測定し、その結果に基づいて、イソシアネート基末端プレポリマーの重量平均分子量を測定した。すなわち、GPCチャートにおいて、イソシアネート基末端プレポリマーに由来するピークと、イソシアネートモノマーに由来するピークとを分離し、イソシアネート基末端プレポリマーに由来するピークの重量平均分子量を算出した。なお、第2工程を省略した比較例では、プレポリマー組成物に代えて、第1工程の反応液の重量平均分子量を測定した。
【0107】
すなわち、プレポリマー組成物0.05g(サンプル)を、ガラス瓶中において、1~2mLのメタノールに溶解させ、室温で3日程放置した。これにより、サンプルをメチルウレタン化させた。なお、サンプルがメタノールに溶解しない場合、ジクロロメタン(助溶剤)を加えて、サンプルを溶解させた。
【0108】
その後、サンプルにN2吹きかけながら50℃に加温し、メタノール含む溶媒を揮発させた。これにより、固形状のサンプルを得た。サンプルをN,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、0.625質量%の溶液を得た。得られた溶液を、以下の条件でGPC測定した。
【0109】
(1)分析装置:HLC-8220GPC(東ソー株式会社)
(2)ポンプ :装置に付随
(3)検出器 :装置に付随:RI検出器
(4)溶離液 :DMF(LiBr 0.86g/L)
(5)分離カラム:SuperAWM-H×3本
メーカー :東ソー株式会社
品番 :19320
(6)測定温度 :40℃
(7)流速 :サンプルポンプ0.6mL/min、リファレンスポンプ0.6mL/min
(8)サンプル注入量:20μL
(9)解析装置 : 解析ソフト GPC-8020mII(東ソー株式会社)
・システム補正
(10)標準物質名 :Polystyrene
【0110】
(2)イソシアネート基濃度
プレポリマー組成物のイソシアネート基濃度を、JIS K 1556(2006年)のn-ジブチルアミン法に準拠して測定した。なお、第2工程を省略した比較例では、プレポリマー組成物に代えて、第1工程の反応液のイソシアネート基濃度を測定した。
【0111】
(3)粘度
プレポリマー組成物の60℃における粘度を、JIS K 5600-2-3(2014年)の記載に準拠し、コーン・プレート粘度計法にて、温度60℃、40Pプレート、回転数188rpmで測定した。
【0112】
<ポリウレタン樹脂>
(1)D硬度
ポリウレタン樹脂のショアD硬度を、JIS K 7312(1996年)に準拠して測定した。
【0113】
(2)引張特性
ポリウレタン樹脂の引張特性を、万能引張試験機(インテスコ社製 205N)により、JIS K 7312(1996年)に準拠して測定した。すなわち、ポリウレタン樹脂を切断し、3号ダンベル状試験片を得た。そして、引張速度500mm/分の条件で、100%~300%モジュラス(MPa)、引張強度(MPa)および破断伸び(%)を測定した。
【0114】
(3)圧縮永久歪
ポリウレタン樹脂の圧縮永久歪を、JIS K 7312(1996年)に準拠して測定した。
【0115】
(4)成形体気泡噛み込み
ポリウレタン樹脂を目視で確認し、気泡の噛み込みの有無を評価した。評価基準を下記する。
1:5cm立方体内に目視確認できる気泡が11個以上であった。
2:5cm立方体内に目視確認できる気泡が6個以上10個以下であった。
3:5cm立方体内に目視確認できる気泡が3個以上5個以下であった。
4:5cm立方体内に目視確認できる気泡が1個以上2個以下であった。
5:5cm立方体内に目視確認できる気泡がなかった。
【0116】