IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シンフォニアテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電力変換装置 図1
  • 特開-電力変換装置 図2
  • 特開-電力変換装置 図3
  • 特開-電力変換装置 図4
  • 特開-電力変換装置 図5
  • 特開-電力変換装置 図6
  • 特開-電力変換装置 図7
  • 特開-電力変換装置 図8
  • 特開-電力変換装置 図9
  • 特開-電力変換装置 図10
  • 特開-電力変換装置 図11
  • 特開-電力変換装置 図12
  • 特開-電力変換装置 図13
  • 特開-電力変換装置 図14
  • 特開-電力変換装置 図15
  • 特開-電力変換装置 図16
  • 特開-電力変換装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046117
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230327BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154829
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】坂本 竜也
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770DA01
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA13
5H770GA17
5H770LB02
(57)【要約】
【課題】単相スイッチング回路を備えた電力変換装置において、スイッチング素子のスイッチング回数を減らしてスイッチング損失を低減することができる構成を得る。
【解決手段】電力変換装置1は、単相スイッチング回路10と、駆動制御部20とを備える。駆動制御部20は、正電圧側の電圧指令が三角波信号と交差する場合には、第2スイッチングレグのスイッチング素子SW3,SW4を駆動せず、前記正電圧側の電圧指令及び三角波信号Fcを用いて、第1スイッチングレグのスイッチング素子SW1,SW2を駆動し、且つ、負電圧側の電圧指令が三角波信号と交差する場合には、第1スイッチングレグのスイッチング素子SW1,SW2を駆動せず、前記負電圧側の電圧指令及び三角波信号を用いて、第2スイッチングレグのスイッチング素子SW3,SW4を駆動するスイッチング駆動部25を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子が電気的に直列に接続された第1スイッチングレグと、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子が電気的に直列に接続された第2スイッチングレグとが電気的に並列に接続されていて、電圧指令に応じた各スイッチング素子の駆動により、電源の電圧を負荷に対して印加する単相スイッチング回路と、
前記単相スイッチング回路における各スイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、
を備えた電力変換装置であって、
前記第1スイッチングレグにおいて電気的に直列に接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の中点は、前記負荷の一端に電気的に接続され、
前記第2スイッチングレグにおいて電気的に直列に接続された第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子の中点は、前記負荷の他端に電気的に接続され、
前記駆動制御部は、
搬送波である三角波信号を生成する三角波生成部と、
前記電圧指令のうち正電圧側の電圧指令を前記三角波信号のうち比較対象の信号と比較した際に前記正電圧側の電圧指令が前記比較対象の信号と交差する場合には、前記第2スイッチングレグを構成する前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のうち少なくとも一方のスイッチング素子をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態で維持するとともに、前記正電圧側の電圧指令及び前記比較対象の信号を用いて、前記第1スイッチングレグを構成する前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子をスイッチング駆動し、且つ、
前記電圧指令のうち負電圧側の電圧指令を前記三角波信号のうち比較対象の信号と比較した際に前記負電圧側の電圧指令が前記比較対象の信号と交差する場合には、前記第1スイッチングレグを構成する前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のうち少なくとも一方のスイッチング素子をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態で維持するとともに、前記負電圧側の電圧指令及び前記比較対象の信号を用いて、前記第2スイッチングレグを構成する前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動部と、
を有する、
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置において、
前記第2スイッチングレグを構成する前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のうち前記少なくとも一方のスイッチング素子は、前記電源の正電位側に電気的に接続されたスイッチング素子を含み、
前記第1スイッチングレグを構成する前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のうち前記少なくとも一方のスイッチング素子は、前記電源の正電位側に電気的に接続されたスイッチング素子を含む、
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力変換装置において、
前記スイッチング駆動部は、
前記電圧指令を前記正電圧側の電圧指令と前記負電圧側の電圧指令とに分離して、正電圧側の指令信号及び負電圧側の指令信号を生成する電圧指令変換部と、
前記正電圧側の指令信号及び前記負電圧側の指令信号を前記三角波信号のうち比較対象の信号とそれぞれ比較した結果に基づいて、前記各スイッチング素子をスイッチング駆動するための駆動信号を生成して出力する駆動信号生成部と、
を有する、
電力変換装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力変換装置において、
電圧指令変換部は、前記負電圧側の電圧指令を正の値に変換して、前記負電圧側の指令信号を生成する、
電力変換装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の電力変換装置において、
前記三角波信号は、
前記正電圧側の電圧指令と比較される第1三角波信号と、
前記負電圧側の電圧指令と比較される第2三角波信号と、
を含み、
前記スイッチング駆動部は、
前記第2三角波信号の最大値が前記第1三角波信号の最小値よりも大きく、且つ、前記第1三角波信号及び前記第2三角波信号が前記正電圧側の電圧指令または前記負電圧側の電圧指令のいずれか一方に対して交差するように、前記第1三角波信号、前記第2三角波信号、前記正電圧側の電圧指令及び前記負電圧側の電圧指令の少なくとも一つを補正する、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単相スイッチング回路を有する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
単相スイッチング回路を有する電力変換装置として、例えば特許文献1には、高電位側直流端子および第1のノードの間に電気的に接続された第1のスイッチング素子と、前記第1のノードおよび低電位側直流端子の間に電気的に接続された第2のスイッチング素子と、前記高電位側直流端子および第2のノードの間に電気的に接続された第3のスイッチング素子と、前記第2のノードおよび前記低電位側直流端子の間に電気的に接続された第4のスイッチング素子と、前記第1のノードに電気的に接続された第1の交流端子と、前記第2のノードに電気的に接続された第2の交流端子と、前記第1から第4のスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路とを備えた電力変換装置が開示されている。
【0003】
前記特許文献1の電力変換装置では、前記制御回路は、前記第3及び前記第4のスイッチング素子を、前記交流電力の周波数に同期してオンオフさせるとともに、前記第1及び第2のスイッチング素子を、前記交流電力の周波数よりも高い周波数(キャリア周波数)でオンオフさせる。すなわち、前記特許文献1の電力変換装置では、いわゆる非対称駆動方式と呼ばれる電力変換装置の駆動方式を採用している。これにより、2つのハーフブリッジ回路(電気的に直列に接続された2つのスイッチング素子によって構成される回路)の一方がキャリア周波数よりも低い交流電力の周波数でオンオフする。よって、2つのハーフブリッジ回路がともにキャリア周波数でオンオフする対称駆動方式に比べて、一方のハーフブリッジ回路のスイッチング回数を減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-103276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1の電力変換装置では、非対称駆動方式を採用しているため、第3及び第4のスイッチング素子を、交流電力の周波数に同期してオンオフさせる必要がある。そのため、前記電力変換装置では、キャリア周波数でスイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路以外に、交流電力の周波数に同期してスイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路が別に必要になる。したがって、前記電力変換装置では、スイッチング素子ごとに制御を変える必要があり、回路構成が複雑になる。
【0006】
これに対し、すべてのスイッチング素子をキャリア周波数でオンオフさせる、いわゆる対称駆動方式によって電力変換装置を駆動させることにより、スイッチング素子の駆動信号を生成する制御回路の構成を簡素化することができる。しかしながら、前記対称駆動方式では、前記特許文献1にも開示されているように、非対称駆動方式に比べて、スイッチング素子のスイッチング回数が増えるため、スイッチング損失が増大する。
【0007】
そのため、前記非対称駆動方式において、スイッチング素子のスイッチング回数を減らしてスイッチング損失を低減することができるスイッチング駆動制御が望まれている。
【0008】
本発明の目的は、単相スイッチング回路を備えた電力変換装置において、スイッチング素子のスイッチング回数を減らしてスイッチング損失を低減することができる構成を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置は、第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子が電気的に直列に接続された第1スイッチングレグと、第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子が電気的に直列に接続された第2スイッチングレグとが電気的に並列に接続されていて、電圧指令に応じた各スイッチング素子の駆動により、電源の電圧を負荷に対して印加する単相スイッチング回路と、前記単相スイッチング回路における各スイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部と、を備えている。前記第1スイッチングレグにおいて電気的に直列に接続された第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子の中点は、前記負荷の一端に電気的に接続されている。前記第2スイッチングレグにおいて電気的に直列に接続された第3スイッチング素子及び第4スイッチング素子の中点は、前記負荷の他端に電気的に接続されている。前記駆動制御部は、搬送波である三角波信号を生成する三角波生成部と、前記電圧指令のうち正電圧側の電圧指令を前記三角波信号のうち比較対象の信号と比較した際に前記正電圧側の電圧指令が前記比較対象の信号と交差する場合には、前記第2スイッチングレグを構成する前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のうち少なくとも一方のスイッチング素子をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態で維持するとともに、前記正電圧側の電圧指令及び前記比較対象の信号を用いて、前記第1スイッチングレグを構成する前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子をスイッチング駆動し、且つ、前記電圧指令のうち負電圧側の電圧指令を前記三角波信号のうち比較対象の信号と比較した際に前記負電圧側の電圧指令が前記比較対象の信号と交差する場合には、前記第1スイッチングレグを構成する前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のうち少なくとも一方のスイッチング素子をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態で維持するとともに、前記負電圧側の電圧指令及び前記比較対象の信号を用いて、前記第2スイッチングレグを構成する前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動部と、を有する(第1の構成)。
【0010】
これにより、電圧指令及び三角波信号を用いて、第1スイッチングレグまたは第2スイッチングレグを構成する一対のスイッチング素子のうち、少なくとも一方のスイッチング素子のスイッチング駆動を停止することができる。よって、単相スイッチング回路を構成するスイッチング素子のスイッチング回数を減らすことができる。したがって、電力変換装置において、電圧指令に応じた出力を実現しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0011】
前記第1の構成において、前記第2スイッチングレグを構成する前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子のうち前記少なくとも一方のスイッチング素子は、前記電源の正電位側に電気的に接続されたスイッチング素子を含む。前記第1スイッチングレグを構成する前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のうち前記少なくとも一方のスイッチング素子は、前記電源の正電位側に電気的に接続されたスイッチング素子を含む(第2の構成)。
【0012】
これにより、第1スイッチングレグまたは第2スイッチングレグを構成する一対のスイッチング素子のうち、電源の正電位側に電気的に接続されたスイッチング素子をスイッチング駆動しないため、単相スイッチング回路を構成するスイッチング素子のスイッチング回数を減らすことができる。したがって、電力変換装置において、電圧指令に応じた出力を実現しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0013】
前記第1または第2の構成において、前記スイッチング駆動部は、前記電圧指令を前記正電圧側の電圧指令と前記負電圧側の電圧指令とに分離して、正電圧側の指令信号及び負電圧側の指令信号を生成する電圧指令変換部と、前記正電圧側の指令信号及び前記負電圧側の指令信号を前記三角波信号のうち比較対象の信号とそれぞれ比較した結果に基づいて、前記各スイッチング素子をスイッチング駆動するための駆動信号を生成して出力する駆動信号生成部と、を有する(第3の構成)。
【0014】
これにより、電圧指令から、正電圧側の指令信号及び負電圧側の指令信号の2種類の信号を生成することができる。そして、前記2種類の信号と三角波信号とを比較することにより、各スイッチング素子をスイッチング駆動するための駆動信号を容易に生成することができる。よって、上述の第1の構成を容易に実現することができる。
【0015】
前記第3の構成において、電圧指令変換部は、前記負電圧側の電圧指令を正の値に変換して、前記負電圧側の指令信号を生成する(第4の構成)。これにより、電圧指令から得られる負電圧側の指令信号を、三角波信号とより容易に比較することができる。よって、上述の第1の構成をより容易に実現することができる。
【0016】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記三角波信号は、前記正電圧側の電圧指令と比較される第1三角波信号と、前記負電圧側の電圧指令と比較される第2三角波信号と、を含む。前記スイッチング駆動部は、前記第2三角波信号の最大値が前記第1三角波信号の最小値よりも大きく、且つ、前記第1三角波信号及び前記第2三角波信号が前記正電圧側の電圧指令または前記負電圧側の電圧指令のいずれか一方に対して交差するように、前記第1三角波信号、前記第2三角波信号、前記正電圧側の電圧指令及び前記負電圧側の電圧指令の少なくとも一つを補正する(第5の構成)。
【0017】
スイッチング駆動にデッドタイムを設けた場合、正電圧側の電圧指令または負電圧側の電圧指令の値が小さいと、前記正電圧側の電圧指令または前記負電圧側の電圧指令と第1三角波との比較によって生成される駆動信号に、電圧指令に応じた電圧を出力するためにオン状態になるべきスイッチング素子をオンにする駆動信号が含まれない可能性がある。そうすると、電力変換装置から負荷に対して電圧指令どおりの電圧を印加できない可能性がある。
【0018】
これに対し、上述の構成により、正電圧側の電圧指令の値が小さい場合でも、電圧指令に応じた電圧を出力するためにオン状態になるべきスイッチング素子をオン状態にする駆動信号を生成できるとともに、前記正電圧側の電圧指令を、負電圧側の電圧指令と比較される第2三角波信号に対しては不感帯の範囲にすることができ、一部のスイッチング素子のスイッチング駆動を停止することができる。また、負電圧側の電圧指令の値が小さい場合でも、電圧指令に応じた電圧を出力するためにオン状態になるべきスイッチング素子をオン状態にする駆動信号を生成できるとともに、前記負電圧側の電圧指令を、正電圧側の電圧指令と比較される第1三角波信号に対しては不感帯の範囲にすることができ、一部のスイッチング素子のスイッチング駆動を停止することができる。
【0019】
したがって、スイッチング駆動にデッドタイムを設けた場合、正電圧側の電圧指令または負電圧側の電圧指令の値が小さくても、電力変換装置から負荷に電圧指令どおりの電圧を印加できるとともに、一部のスイッチング素子の駆動を停止して電力変換装置のスイッチング損失を低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態に係る電力変換装置によれば、単相スイッチング回路における各スイッチング素子の駆動を制御する駆動制御部は、電圧指令と三角波信号との関係に応じて、第1スイッチングレグ及び第2スイッチングレグのいずれか一方のスイッチングレグを構成する一対のスイッチング素子のうち少なくとも一方のスイッチング素子をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態で維持するとともに、前記第1スイッチングレグ及び前記第2スイッチングレグの他方のスイッチングレグを構成するスイッチング素子をスイッチング駆動するスイッチング駆動部を有する。
【0021】
これにより、スイッチング素子のスイッチング回数を減らしてスイッチング損失を低減することができる電力変換装置の構成が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施形態1に係る電力変換装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、単相スイッチング回路の構成の一例を示す図である。
図3図3は、スイッチング駆動部の構成の一例を示す論理回路図である。
図4図4は、電圧指令の波形の一例を示す図である。
図5図5は、電圧指令から分離された正電圧側の電圧指令(正電圧側の指令信号)の波形の一例を示す図である。
図6図6は、電圧指令から分離された負電圧側の電圧指令及び該負電圧側の電圧指令をオフセットして得た負電圧側の指令信号の波形の一例を示す図である。
図7図7は、負電圧側制限回路から出力される正電圧側の指令信号及び三角波信号と、各スイッチング素子の駆動状態との関係を示す図である。
図8図8は、加算器から出力される負電圧側の指令信号及び三角波信号と、各スイッチング素子の駆動状態との関係を示す図である。
図9図9は、正電圧側の不感帯について説明するための図である。
図10図10は、負電圧側の不感帯について説明するための図である。
図11図11は、電力変換装置が有する不感帯を模式的に示した図である。
図12図12は、電力変換装置が正電圧側の不感帯及び負電圧側の不感帯を有する場合において、電圧指令と出力電圧との関係を示す図である。
図13図13は、電力変換装置が正電圧側の不感帯及び負電圧側の不感帯を有する場合において、電圧指令と出力電圧との関係を示す図である。
図14図14は、変形例において、正電圧側の不感帯と負電圧側の不感帯との関係を示す図である。
図15図15は、電圧指令及ぶ三角波信号と、各スイッチング素子の駆動状態との関係を示す図である。
図16図16は、電圧指令及ぶ三角波信号と、各スイッチング素子の駆動状態との関係を示す図である。
図17図17は、変形例の構成において、電圧指令と出力電圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置1の構成の一例を示す図である。電力変換装置1は、モータ2の各相のコイル2aに対して電気的に接続される単相スイッチング回路10を有する。本実施形態では、モータ2は3相のコイル2aを有する。よって、本実施形態の電力変換装置1は、単相スイッチング回路10を3つ有する。
【0025】
なお、電力変換装置1は、1つの単相スイッチング回路10を有していてもよいし、複数の単相スイッチング回路10を有していてもよい。単相スイッチング回路10の数は、負荷の相数に応じて変えてもよい。
【0026】
各単相スイッチング回路10は、電源3に電気的に接続されている。3つの単相スイッチング回路10は、電源3に対して電気的に並列に接続されている。電力変換装置1は、3つの単相スイッチング回路10をそれぞれ駆動制御する駆動制御部20を有する。
【0027】
図2は、単相スイッチング回路10の構成の一例を示す図である。図2に示すように、単相スイッチング回路10は、電源3に対して電気的に並列に接続された第1スイッチングレグ11及び第2スイッチングレグ12を有する。第1スイッチングレグ11は、電気的に直列に接続された第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2を有する。第2スイッチングレグ12は、電気的に直列に接続された第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4を有する。
【0028】
なお、以下の説明において、スイッチング素子を区別して説明する必要がない場合には、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4を、まとめて、「各スイッチング素子SW1~SW4」と呼ぶ。
【0029】
第1スイッチングレグ11及び第2スイッチングレグ12の各中点は、モータ2のコイル2aに電気的に接続されている。具体的には、第1スイッチングレグ11の中点は、モータ2のコイル2aの一端(正電圧側)に電気的に接続されている。第2スイッチングレグ12の中点は、モータ2のコイル2aの他端(負電圧側)に電気的に接続されている。コイル2aが、本発明の負荷に対応する。
【0030】
各スイッチング素子SW1~SW4のスイッチング駆動は、駆動制御部20によって、制御されている。すなわち、各スイッチング素子SW1~SW4は、オン状態またはオフ状態を、駆動制御部20によって制御されている。
【0031】
第1スイッチング素子SW1がオン状態で且つ第4スイッチング素子SW4がオン状態のときには、コイル2aには、正の電圧が印加される。このとき、第2スイッチング素子SW2及び第3スイッチング素子SW3は、オフ状態である。第1スイッチング素子SW1は、電源3の正電位側に電気的に接続されている。
【0032】
一方、第2スイッチング素子SW2がオン状態で且つ第3スイッチング素子SW3がオン状態のときには、コイル2aには、負の電圧が印加される。このとき、第1スイッチング素子SW1及び第4スイッチング素子SW4は、オフ状態である。第3スイッチング素子SW3は、電源3の正電位側に電気的に接続されている。
【0033】
第1スイッチングレグ11を構成する第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2のうち、一方のスイッチング素子がオン状態の場合には、他方のスイッチング素子はオフ状態である。同様に、第2スイッチングレグ12を構成する第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4のうち、一方のスイッチング素子がオン状態の場合には、他方のスイッチング素子はオフ状態である。
【0034】
(駆動制御部)
次に、駆動制御部20の構成について説明する。駆動制御部20は、PWM制御によって、単相スイッチング回路10の各スイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する。駆動制御部20は、三角波生成部21と、スイッチング駆動部25とを有する。
【0035】
三角波生成部21は、各スイッチング素子SW1~SW4を駆動するタイミングの基準を決める搬送波としての三角波信号Fcを生成する。三角波生成部21が三角波信号Fcを生成する構成は、従来と同様であるため、詳しい説明を省略する。
【0036】
スイッチング駆動部25は、各スイッチング素子SW1~SW4をスイッチング駆動する。具体的には、スイッチング駆動部25は、電圧指令Vrefと三角波生成部21によって生成された三角波信号Fcとを用いて、各スイッチング素子SW1~SW4の駆動信号を生成する。図3は、スイッチング駆動部25の構成の一例を示す論理回路図である。図3に示すように、スイッチング駆動部25は、電圧指令変換部26と、第1駆動信号生成部27と、第2駆動信号生成部28とを有する。第1駆動信号生成部27及び第2駆動信号生成部28が、本発明の駆動信号生成部に対応する。
【0037】
電圧指令変換部26は、電圧指令Vrefを正電圧側の電圧指令と負電圧側の電圧指令とに分離して、正電圧側の指令信号及び負電圧側の指令信号を生成する。具体的には、電圧指令変換部26は、負電圧側制限回路31と、正電圧側制限回路32と、加算器33とを有する。図4は、電圧指令Vrefの波形の一例を示す図である。図5は、電圧指令Vrefから分離された正電圧側の電圧指令(正電圧側の指令信号)の波形の一例を示す図である。図6は、電圧指令Vrefから分離された負電圧側の電圧指令及び該負電圧側の電圧指令をオフセットして得た負電圧側の指令信号の波形の一例を示す図である。
【0038】
負電圧側制限回路31は、電圧指令Vrefのうち、負電圧側の電圧指令をカットする。すなわち、図5に示すように、負電圧側制限回路31は、電圧指令Vrefのうち、正電圧側の電圧指令のみを正電圧側の指令信号として出力する。負電圧側制限回路31は、例えば負電圧側の信号をカット可能なフィルタである。
【0039】
正電圧側制限回路32は、電圧指令Vrefのうち、正電圧側の電圧指令をカットする。すなわち、図6に破線で示すように、正電圧側制限回路32は、電圧指令Vrefのうち、負電圧側の電圧指令を出力する。正電圧側制限回路32は、例えば正電圧側の信号をカット可能なフィルタである。
【0040】
加算器33は、正電圧側制限回路32によって得られた負電圧側の電圧指令に、電圧指令の最大値Vmaxを加算する。これにより、図6に実線で示すように、前記負電圧側の電圧指令は、正電圧側にオフセットされて、負電圧側の指令信号になる。このように、加算器33は、前記負電圧側の電圧指令から、負電圧側の指令信号を生成して出力する。なお、スイッチング駆動部25は、前記負電圧側の電圧指令を、正電圧側にオフセットさせる構成であれば、加算器33以外の構成を有していてもよい。
【0041】
第1駆動信号生成部27は、負電圧側制限回路31から出力される正電圧側の指令信号と、三角波信号Fcとを比較した結果に基づいて、第1スイッチングレグ11を構成する第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2に対する駆動信号を生成する。具体的には、第1駆動信号生成部27は、第1比較器41と、第1信号変換部42とを有する。
【0042】
第1比較器41は、負電圧側制限回路31から出力される正電圧側の指令信号と、三角波信号Fcとを比較して、前記正電圧側の指令信号が三角波信号Fcよりも大きい場合に、ON信号を出力する。第1比較器41は、前記正電圧側の指令信号が三角波信号Fcよりも大きくない場合には、ON信号を出力しないかOFF信号を出力する。第1比較器41は、例えば、コンパレータである。第1比較器41から出力される信号は、第1スイッチング素子SW1に入力されるとともに、第1信号変換部42に入力される。なお、第1比較器41によって比較される三角波信号Fcが、比較対象である第1三角波信号である。
【0043】
第1信号変換部42は、第1比較器41から出力される信号とは逆の信号を出力する。すなわち、第1信号変換部42は、第1比較器41からON信号が出力された場合には、ON信号を出力しないかOFF信号を出力する。第1信号変換部42は、第1比較器41からON信号が出力されていない場合またはOFF信号が出力されている場合には、ON信号を出力する。第1信号変換部42は、例えばNOT回路である。第1信号変換部42から出力された信号は、第2スイッチング素子SW2に入力される。
【0044】
図7は、従来のPWM制御において、電圧指令Vref及び三角波信号Fcと、各スイッチング素子SW1~SW4の駆動状態との関係を示す図である。図7に示すように、各スイッチング素子SW1~SW4は、電圧指令Vrefと三角波信号Fcとの比較結果に応じて、オン状態またはオフ状態に駆動される。なお、図7では、デッドタイムを考慮していない。
【0045】
ところで、電圧指令Vrefに含まれる正電圧側の電圧指令によって、第1スイッチングレグ11の第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2がスイッチング駆動している際に、第2スイッチングレグ12の第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4は、コイル2aに負電圧を印加するようにスイッチング駆動する場合がある(図7の太破線参照)。また、電圧指令Vrefに含まれる負電圧側の電圧指令によって、第2スイッチングレグ12の第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4がスイッチング駆動している際に、第1スイッチングレグ11の第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2は、コイル2aに正電圧を印加するようにスイッチング駆動する場合がある(図7の太破線参照)。
【0046】
このような各スイッチング素子SW1~SW4の動作は、電圧指令Vrefと三角波信号Fcとの比較結果に基づいて各スイッチング素子SW1~SW4をスイッチング駆動させるために生じる。そのため、上述のように、電圧指令Vrefとは異なる電圧をコイル2aに印加するようにスイッチング素子がスイッチング駆動する場合がある。このようなスイッチング駆動は無駄であり、スイッチング損失の増大などの問題などが生じる。
【0047】
図8は、本実施形態の電力変換装置1において、負電圧側制限回路31から出力される正電圧側の指令信号及び三角波信号Fcと、各スイッチング素子SW1~SW4の駆動状態との関係を示す図である。図8に示すように、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2は、負電圧側制限回路31から出力される正電圧側の指令信号と三角波信号Fcとの関係に応じて、オン状態またはオフ状態に駆動される。一方、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4の駆動は、負電圧側制限回路31から出力される正電圧側の指令信号と三角波信号Fcとの関係に影響を受けない。
【0048】
これにより、電圧指令が正電圧側の電圧指令を含んでいるタイミングでは、前記正電圧側の電圧指令を三角波信号Fcと比較した際に前記正電圧側の電圧指令が三角波信号Fcと交差する。この場合には、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4が駆動しない。第3スイッチング素子SW3は、モータ2のコイル2aに対して負電圧を印加する際に動作するスイッチング素子である。このように、電圧指令が正電圧側の駆動指令を含んでいるタイミングでは、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4を駆動させないことにより、無駄なスイッチング駆動を減らすことができる。よって、電力変換装置1のスイッチング損失を低減することができる。
【0049】
なお、図8に示すように、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2がOFF状態からON状態に切り替わるタイミングは、破線のタイミングよりも遅れている。このタイミングの遅れにより、デッドタイムを設けることができ、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2が同時にオン状態にならないようにすることができる。
【0050】
第2駆動信号生成部28は、加算器33から出力される負電圧側の指令信号と、三角波信号Fcとを比較した結果に基づいて、第2スイッチングレグ12を構成する第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4に対する駆動信号を生成する。具体的には、第2駆動信号生成部28は、第2比較器43と、第2信号変換部44とを有する。
【0051】
第2比較器43は、加算器33から出力される負電圧側の指令信号と、三角波信号Fcとを比較して、三角波信号Fcが前記負電圧側の指令信号よりも大きい場合に、ON信号を出力する。第2比較器43は、三角波信号Fcが前記負電圧側の指令信号よりも大きくない場合には、ON信号を出力しないかOFF信号を出力する。第2比較器43は、例えば、コンパレータである。第2比較器43から出力される信号は、第3スイッチング素子SW3に入力されるとともに、第2信号変換部44に入力される。なお、第2比較器43によって比較される三角波信号Fcが、比較対象である第2三角波信号である。
【0052】
第2信号変換部44は、第2比較器43から出力される信号とは逆の信号を出力する。すなわち、第2信号変換部44は、第2比較器43からON信号が出力された場合には、ON信号を出力しないかOFF信号を出力する。第2信号変換部44は、第2比較器43からON信号が出力されていない場合またはOFF信号が出力された場合には、ON信号を出力する。第2信号変換部44は、例えばNOT回路である。第2信号変換部44から出力された信号は、第4スイッチング素子SW4に入力される。
【0053】
図9は、加算器33から出力される負電圧側の指令信号及び三角波信号Fcと、各スイッチング素子SW1~SW4の駆動状態との関係を示す図である。図9に示すように、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4は、加算器33から出力される負電圧側の指令信号と三角波信号Fcとの関係に応じて、オン状態またはオフ状態に駆動される。一方、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2の駆動は、加算器33から出力される負電圧側の指令信号と三角波信号Fcとの関係に影響を受けない。
【0054】
これにより、電圧指令が負電圧側の電圧指令を含んでいるタイミングでは、前記負電圧側の電圧指令を三角波信号Fcと比較した際に前記負電圧側の電圧指令が三角波信号Fcと交差する。この場合には、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2が駆動しない。第1スイッチング素子SW1は、モータ2のコイル2aに対して正電圧を印加する際に動作するスイッチング素子である。このように、電圧指令が負電圧側の電圧指令を含んでいるタイミングでは、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2を駆動させないことにより、無駄なスイッチング駆動を減らすことができる。よって、電力変換装置1のスイッチング損失を低減することができる。
【0055】
なお、図9に示すように、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4がOFF状態からON状態に切り替わるタイミングにも、デッドタイムが設けられている。
【0056】
以上のように、スイッチング駆動部25は、電圧指令Vrefの正負に応じて、第1スイッチングレグ11及び第2スイッチングレグ12のうち、スイッチング素子をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態を維持するスイッチングレグを決定する。詳しくは、スイッチング駆動部25は、例えば、電圧指令Vrefが正電圧側の電圧指令のときには、第2スイッチングレグ12を前記スイッチングレグとし、電圧指令Vrefが負電圧側の電圧指令のときには、第1スイッチングレグ11を前記スイッチングレグとする。
【0057】
本実施形態に係る電力変換装置1は、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2が電気的に直列に接続された第1スイッチングレグ11と、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4が電気的に直列に接続された第2スイッチングレグ12とが電気的に並列に接続されていて、電圧指令Vrefに応じた各スイッチング素子SW1~SW4の駆動により、電源3の電圧をコイル2aに対して印加する単相スイッチング回路10と、単相スイッチング回路10における各スイッチング素子SW1~SW4の駆動を制御する駆動制御部20と、を備える。第1スイッチングレグ11において電気的に直列に接続された第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2の中点は、コイル2aの一端に電気的に接続されている。第2スイッチングレグ12において電気的に直列に接続された第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4の中点は、コイル2aの他端に電気的に接続されている。駆動制御部20は、搬送波である三角波信号Fcを生成する三角波生成部21と、電圧指令Vrefのうち正電圧側の電圧指令を三角波信号Fcと比較した際に前記正電圧側の電圧指令が三角波信号Fcと交差する場合には、第2スイッチングレグ12を構成する第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態で維持するとともに、前記正電圧側の電圧指令及び三角波信号Fcを用いて、第1スイッチングレグ11を構成する第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をスイッチング駆動し、且つ、電圧指令Vrefのうち負電圧側の電圧指令を三角波信号Fcと比較した際に前記負電圧側の電圧指令が三角波信号Fcと交差する場合には、第1スイッチングレグ11を構成する第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をスイッチング駆動することなくON状態またはOFF状態で維持するとともに、前記負電圧側の電圧指令及び三角波信号Fcを用いて、第2スイッチングレグ12を構成する第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4をスイッチング駆動するスイッチング駆動部25と、を有する。
【0058】
これにより、電圧指令Vref及び三角波信号Fcを用いて、第2スイッチングレグ12を構成する第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4のうち少なくとも一方のスイッチング素子、または、第1スイッチングレグ11を構成する第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2のうち少なくとも一方のスイッチング素子のスイッチング駆動を停止することができる。よって、単相スイッチング回路10を構成するスイッチング素子SW1~SW4のスイッチング回数を減らすことができる。したがって、電力変換装置1において、電圧指令に応じた出力を実現しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0059】
また、本実施形態では、第2スイッチングレグ12を構成する第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4のうち少なくとも一方のスイッチング素子は、電源3の正電位側に電気的に接続されたスイッチング素子を含む。第1スイッチングレグ11を構成する第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2のうち少なくとも一方のスイッチング素子は、電源3の正電位側に電気的に接続されたスイッチング素子を含む。
【0060】
これにより、電源3の正電位側に電気的に接続された第1スイッチング素子SW1及び第3スイッチング素子SW3をスイッチング駆動しないため、単相スイッチング回路10を構成するスイッチング素子SW1~SW4のスイッチング回数を減らすことができる。したがって、電力変換装置1において、電圧指令に応じた出力を実現しつつ、スイッチング損失を低減することができる。
【0061】
スイッチング駆動部25は、電圧指令Vrefを前記正電圧側の電圧指令と前記負電圧側の電圧指令とに分離して、正電圧側の指令信号及び負電圧側の指令信号を生成する電圧指令変換部26と、前記正電圧側の指令信号及び前記負電圧側の指令信号を三角波信号Fcとそれぞれ比較した結果に基づいて、各スイッチング素子SW1~SW4をスイッチング駆動するための駆動信号を生成して出力する第1駆動信号生成部27及び第2駆動信号生成部28と、を有する。
【0062】
これにより、電圧指令Vrefから正電圧側の指令信号及び負電圧側の指令信号の2種類の信号を生成することができる。そして、前記2種類の信号と三角波信号Fcとを比較することにより、各スイッチング素子SW1~SW4をスイッチング駆動するための駆動信号を容易に生成することができる。よって、スイッチング駆動部25の構成を容易に実現することができる。
【0063】
電圧指令変換部26は、前記負電圧側の電圧指令を正の値に変換して、前記負電圧側の指令信号を生成する。これにより、電圧指令Vrefから得られる負電圧側の指令信号を、三角波信号Fcとより容易に比較することができる。よって、スイッチング駆動部25の構成をより容易に実現することができる。
【0064】
(変形例)
電力変換装置1は、電圧指令Vrefに含まれる正電圧側の電圧指令と三角波信号Fcとに基づいて、駆動制御部20によって第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2を駆動する際に、前記正電圧側の電圧指令の所定範囲に対して正電圧を出力できない正電圧側の不感帯を有する。図10は、正電圧側の不感帯について説明するための図である。なお、図10では、説明のために、前記正電圧側の電圧指令を、一定の信号として記載しているとともに、三角波を、正電圧側の電圧指令及び負電圧側の電圧指令に合わせて、電圧指令の正電圧側及び負電圧側にそれぞれ記載している。
【0065】
図10に示すように、前記正電圧側の電圧指令が小さい場合には、デッドタイムの関係で、スイッチング素子SW1が本来はオン状態になるタイミング(図中の破線)でオン状態にならない可能性がある。そうすると、電力変換装置1は、要求される正電圧をコイル2aに出力できない可能性がある。
【0066】
また、電力変換装置1は、電圧指令Vrefに含まれる負電圧側の電圧指令と三角波信号Fcとに基づいて、駆動制御部20によって第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4を駆動する際に、前記負電圧側の電圧指令の所定範囲に対して負電圧を出力できない負電圧側の不感帯領域を有する。図11は、負電圧側の不感帯について説明するための図である。なお、図11では、説明のために、前記負電圧側の電圧指令を、一定の信号として記載しているとともに、三角波を、正電圧指令及び負電圧指令に合わせるように、電圧指令の正電圧側及び負電圧側にそれぞれ記載している。
【0067】
図11に示すように、前記負電圧側の電圧指令が小さい場合には、デッドタイムの関係で、スイッチング素子SW3が本来はオン状態になるタイミング(図中の破線)でオン状態にならない可能性がある。そうすると、電力変換装置1は、要求される負電圧をコイル2aに出力できない可能性がある。
【0068】
図12は、電力変換装置1が有する不感帯を模式的に示した図である。図12に示すように、電力変換装置1は、正電圧側の不感帯及び負電圧側の不感帯を有する。図12にも、説明のために、電圧指令の正電圧側及び負電圧側にそれぞれ三角波を記載している。
【0069】
図13は、電力変換装置1が正電圧側の不感帯及び負電圧側の不感帯を有する場合において、電圧指令と出力電圧との関係を示す図である。図13に示すように、正電圧側の不感帯及び負電圧側の不感帯では、電圧指令が変化しても、出力電圧はゼロである。
【0070】
これに対し、駆動制御部20のスイッチング駆動部25は、以下のように、前記正電圧側の不感帯では、第1スイッチング素子SW1、第2スイッチング素子SW2及び第4スイッチング素子SW4をスイッチング駆動し、前記負電圧側の不感帯では、第2スイッチング素子SW2、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4をスイッチング駆動してもよい。
【0071】
すなわち、スイッチング駆動部25は、不感帯制御部を有していてもよい。前記不感帯制御部は、負電圧側制限回路31及び加算器33の出力信号を、正電圧側の不感帯と負電圧側の不感帯とが重なるように、変換する。具体的には、前記不感帯制御部は、図14に示すように、電圧指令Vrefに含まれる負電圧側の電圧指令と比較される第2三角波信号の最大値が電圧指令Vrefに含まれる正電圧側の電圧指令と比較される第1三角波信号の最小値よりも大きく、且つ、第1三角波信号及び第2三角波信号が正電圧側の指令信号または負電圧側の指令信号のいずれか一方と交差するように、前記出力信号をオフセットさせる。前記不感帯制御部は、例えば、負電圧側制限回路31の出力信号を負電圧側にオフセットさせるとともに、加算器33の出力信号を正電圧側にオフセットさせる。このときのオフセット量は、図14に示すように、第2三角波信号の最大値が第1三角波信号の最小値よりも大きくなるようなオフセット量である。
【0072】
これにより、例えば、図15に示すように、負電圧側の不感帯において、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をスイッチング駆動させることができる。すなわち、図15に示す例では、電圧指令Vrefは、正電圧であり、第1三角波信号と交差するとともに、第2三角波信号の不感帯にも重なっている。よって、第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2をスイッチング駆動させつつ、第3スイッチング素子SW3はオフ状態で維持される。なお、第4スイッチング素子SW4は、スイッチング駆動している。
【0073】
また、例えば、図16に示すように、正電圧側の不感帯において、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4をスイッチング駆動させることができる。すなわち、図16に示す例では、電圧指令Vrefは、負電圧であり、第2三角波信号と交差するとともに、第1三角波信号の不感帯にも重なっている。よって、第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4をスイッチング駆動させつつ、第1スイッチング素子SW1はオフ状態で維持される。なお、第2スイッチング素子SW2は、スイッチング駆動している。
【0074】
図17は、図15及び図16に示す制御を行った場合の電圧指令と出力電圧との関係を示す図である。図17に示すように、出力電圧は、正電圧側の不感帯及び負電圧側の不感帯の影響を受けることなく、電圧指令に比例して出力が増大する。
【0075】
したがって、電力変換装置1は、正電圧側の不感帯及び負電圧側の不感帯の影響を受けることなく、電圧指令に応じた所定の電圧をコイル2aに出力することができる。しかも、上述のように一部のスイッチング素子(図15の場合では第3スイッチング素子SW3、図16の場合では第1スイッチング素子SW1)は、オフ状態で維持されてスイッチング駆動されないため、その分、電力変換装置1のスイッチング損失を低減することができる。
【0076】
以上の構成により、前記三角波信号は、前記正電圧側の電圧指令と比較される第1三角波信号と、前記負電圧側の電圧指令と比較される第2三角波信号と、を含む。スイッチング駆動部25は、前記第2三角波信号の最大値が前記第1三角波信号の最小値よりも大きく、且つ、前記第1三角波信号及び前記第2三角波信号が前記正電圧側の電圧指令または前記負電圧側の電圧指令のいずれか一方に対して交差するように、前記正電圧側の電圧指令及び前記負電圧側の電圧指令を補正する。
【0077】
上述の構成により、正電圧側の電圧指令の値が小さい場合でも、電圧指令に応じた電圧を出力するためにオン状態になるべき第1スイッチング素子SW1をオン状態にする駆動信号を生成できるとともに、前記正電圧側の電圧指令を、負電圧側の電圧指令と比較される第2三角波信号に対しては不感帯の範囲にすることができ、第3スイッチング素子SW3のスイッチング駆動を停止することができる。また、負電圧側の電圧指令の値が小さい場合でも、電圧指令に応じた電圧を出力するためにオン状態になるべき第3スイッチング素子SW3をオン状態にする駆動信号を生成できるとともに、前記負電圧側の電圧指令を、正電圧側の電圧指令と比較される第1三角波信号に対しては不感帯の範囲にすることができ、第1スイッチング素子SW1のスイッチング駆動を停止することができる。
【0078】
したがって、スイッチング駆動にデッドタイムを設けた場合、正電圧側の電圧指令または負電圧側の電圧指令の値が小さくても、電力変換装置1からコイル2aに電圧指令どおりの電圧を印加できるとともに、一部のスイッチング素子の駆動を停止して電力変換装置1のスイッチング損失を低減できる。
【0079】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0080】
前記実施形態では、第1駆動信号生成部27及び第2駆動信号生成部28は、三角波生成部21によって生成された同一の三角波信号を用いている。しかしながら、第1駆動信号生成部及び第2駆動信号生成部は、それぞれ、正電圧側の指令信号と比較するために生成された第1三角波信号及び負電圧側の指令信号と比較するために生成された第2三角波信号を用いてもよい。なお、前記第1三角波信号及び前記第2三角波信号の波形は、例えば、図10及び図11に示す波形である。
【0081】
この場合、前記実施形態の変形例における不感帯制御部は、前記第1三角波信号及び前記第2三角波信号を、前記第2三角波信号の最大値が前記第1三角波信号の最小値よりも大きく且つ前記第1三角波信号及び前記第2三角波信号が正電圧側の指令信号または負電圧側の指令信号のいずれか一方と交差するように、補正してもよい。
【0082】
すなわち、前記不感帯制御部は、前記第2三角波信号の最大値が前記第1三角波信号の最小値よりも大きく、且つ、前記第1三角波信号及び前記第2三角波信号が前記正電圧側の指令信号または前記負電圧側の指令信号のいずれか一方に対してそれぞれ交差するように、前記第1三角波信号、前記第2三角波信号、前記正電圧側の指令信号及び前記負電圧側の指令信号の少なくとも一つを補正すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、同期電動機の駆動制御をPWM駆動制御と矩形波駆動制御とで切り替え可能な制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 電力変換装置
2 モータ
3 電源
2a コイル
10 単相スイッチング回路
11 第1スイッチングレグ
12 第2スイッチングレグ
20 駆動制御部
21 三角波生成部
25 スイッチング駆動部
26 電圧指令変換部
27 第1駆動信号生成部
28 第2駆動信号生成部
31 負電圧側制限回路
32 正電圧側制限回路
33 加算器
41 第1比較器
42 第1信号変換部
43 第2比較器
44 第2信号変換部
SW1 第1スイッチング素子
SW2 第2スイッチング素子
SW3 第3スイッチング素子
SW4 第4スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17