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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046129
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】タイヤ・ホイール組立体及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/18 20060101AFI20230327BHJP
   B60C 17/00 20060101ALI20230327BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
B60C23/18
B60C17/00 B
B60C19/00 B
B60C19/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154864
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100211395
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】小川 岳
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA08
3D131AA30
3D131AA33
3D131AA36
3D131AA39
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB10
3D131BC32
3D131BC38
3D131BC40
3D131CB01
3D131DA01
3D131DA13
3D131DA34
3D131HA16
3D131JA03
3D131LA05
3D131LA06
3D131LA20
(57)【要約】
【課題】タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性を向上させた、タイヤ・ホイール組立体及びシステムを提供する。
【解決手段】本発明に係るタイヤ・ホイール組立体は、タイヤであって、トレッド部と、一対のビード部と、前記トレッド部と前記ビード部との間に延在する一対のサイドウォール部とを備える、タイヤと、前記タイヤが組み付けられているホイールと、から成るタイヤ・ホイール組立体であって、前記ホイールのリム部には、前記タイヤのタイヤ内腔から吸熱可能な吸熱装置が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、一対のビード部と、前記トレッド部と前記ビード部との間に延在する一対のサイドウォール部とを備える、タイヤと、
前記タイヤが組み付けられているホイールと、
から成るタイヤ・ホイール組立体であって、
前記ホイールのリム部には、前記タイヤのタイヤ内腔から吸熱可能な吸熱装置が配置されている、タイヤ・ホイール組立体。
【請求項2】
前記吸熱装置は、ペルチェ素子を備えている、請求項1に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項3】
前記ホイールは、前記吸熱装置と前記リム部との間に断熱材を備えている、請求項1又は2に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項4】
前記ホイールは、ディスク部を備え、
前記吸熱装置のホイール径方向内側の表面は、前記リム部において、前記リム部及び前記ディスク部によって区画された複数の空間のうち車両のブレーキを収容する空間とは異なる空間に露出している、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項5】
前記吸熱装置は、
前記タイヤ内腔の空気圧を計測する空気圧センサを備え、
前記タイヤ内腔の前記空気圧に応じて、前記タイヤ内腔からの吸熱度合いを制御するように構成されている、請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項6】
前記リム部に設置された前記吸熱装置のホイール径方向外側の表面には、ホイール径方向外側に突出する第2フィンが設けられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項7】
前記第2フィンは、ホイール幅方向に延在している、請求項6に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項8】
前記リム部に設置された前記吸熱装置のホイール径方向内側の表面には、ホイール径方向内側に突出する第3フィンが設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項9】
前記第3フィンは、ホイール幅方向に延在している、請求項8に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項10】
前記タイヤは、前記一対のサイドウォール部のそれぞれに断面三日月状のサイド補強ゴムが設けられている、請求項1から9のいずれか一項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項11】
前記サイド補強ゴムのタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ内壁面には、タイヤ幅方向内側に突出する第1フィンが設けられている、請求項10に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項12】
前記リム部には、前記タイヤ内腔に送風可能な送風装置が配置されている、請求項1から11のいずれか一項に記載のタイヤ・ホイール組立体。
【請求項13】
車両に装着された複数のタイヤ・ホイール組立体と、
前記車両に配置された制御装置と、
前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の輪荷重を測定する複数の輪荷重測定装置と、
を含むシステムであって、
前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々は、タイヤと、前記タイヤが組み付けられているホイールとから成り、
前記ホイールのリム部には、前記タイヤのタイヤ内腔から吸熱可能な吸熱装置が配置されており、
前記制御装置は、前記複数の輪荷重測定装置によって測定された前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記輪荷重に基づいて、前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記吸熱装置を制御する、システム。
【請求項14】
前記複数のタイヤ・ホイール組立体は、前記車両において第1の対角輪を構成する第1の複数のタイヤ・ホイール組立体と、前記車両において第2の対角輪を構成する第2の複数のタイヤ・ホイール組立体と、を含み、
前記制御装置は、前記複数の輪荷重測定装置によって測定された前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記輪荷重に基づいて算出された、第1の対角輪の輪荷重の合計値と第2の対角輪の輪荷重の合計値との差を無くすように、前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記吸熱装置を制御する、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ・ホイール組立体及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールに組付けられたタイヤのタイヤ内腔の温度を制御する技術が知られている。例えば、特許文献1には、サイドウォール部に冷却層を設けたタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-137370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タイヤ内腔の温度を制御する技術には更なる有用性の向上が求められている。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性を向上させた、タイヤ・ホイール組立体及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体は、タイヤであって、トレッド部と、一対のビード部と、前記トレッド部と前記ビード部との間に延在する一対のサイドウォール部とを備える、タイヤと、前記タイヤが組み付けられているホイールと、から成るタイヤ・ホイール組立体であって、前記ホイールのリム部には、前記タイヤのタイヤ内腔から吸熱可能な吸熱装置が配置されている。
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体によれば、吸熱装置が、タイヤ内腔の温度を制御することができる。これにより、タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性を向上させることができる。
【0007】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記吸熱装置は、ペルチェ素子を備えていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、簡易な構造により吸熱装置を実現して、タイヤ内腔の温度を制御することができる。
【0008】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記ホイールは、前記吸熱装置と前記リム部との間に断熱材を備えていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、吸熱装置によるタイヤ内腔からの吸熱効果が低減することを防ぐことができる。
【0009】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記ホイールは、ディスク部を備え、前記吸熱装置のホイール径方向内側の表面は、前記リム部において、前記リム部及び前記ディスク部によって区画された複数の空間のうち車両のブレーキを収容する空間とは異なる空間に露出していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、吸熱装置が、タイヤ内腔から吸収した熱をタイヤの外部に放熱する際に、ブレーキ等による放熱で熱くなった空間に放熱する場合に比べて、タイヤ内腔を効率的に冷却することができる。
【0010】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記吸熱装置は、前記タイヤ内腔の空気圧を計測する空気圧センサを備え、前記タイヤ内腔の前記空気圧に応じて、前記タイヤ内腔からの吸熱度合いを制御するように構成されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、タイヤ内腔の空気圧に応じてタイヤ内腔の温度を制御することができ、タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性が更に向上する。
【0011】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記リム部に設置された前記吸熱装置のホイール径方向外側の表面には、ホイール径方向外側に突出する第2フィンが設けられていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、第2フィンは、吸熱装置のホイール径方向外側の表面における熱交換効果を向上させることができる。
【0012】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記第2フィンは、ホイール幅方向に延在していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、第2フィンは、吸熱装置のホイール径方向外側の表面における熱交換効果を更に向上させることができる。
【0013】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記リム部に設置された前記吸熱装置のホイール径方向内側の表面には、ホイール径方向内側に突出する第3フィンが設けられていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、第3フィンは、吸熱装置のホイール径方向内側の表面における熱交換効果を向上させることができる。
【0014】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記第3フィンは、ホイール幅方向に延在していることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、第3フィンは、吸熱装置のホイール径方向内側の表面における熱交換効果を更に向上させることができる。
【0015】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記タイヤは、前記一対のサイドウォール部のそれぞれに断面三日月状のサイド補強ゴムが設けられていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、ランフラット走行時にタイヤの温度が上昇することを抑制して、タイヤのタイヤ破壊を起こりにくくすることができる。これにより、タイヤ・ホイール組立体のランフラット走行寿命を向上させることができる。
【0016】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記サイド補強ゴムのタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ内壁面には、タイヤ幅方向内側に突出する第1フィンが設けられていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、第1フィンは、サイド補強ゴムの温度が上昇することを抑制し、ランフラット走行時にタイヤがタイヤ破壊に至りにくくすることができる。
【0017】
本発明に係るタイヤ・ホイール組立体では、前記リム部には、前記タイヤ内腔に送風可能な送風装置が配置されていることが好ましい。かかる構成を有するタイヤ・ホイール組立体によれば、吸熱装置に加え、送風装置が、タイヤ内腔の温度を制御することができる。これにより、タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性をさらに向上させることができる。
【0018】
本発明に係るシステムは、車両に装着された複数のタイヤ・ホイール組立体と、前記車両に配置された制御装置と、前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の輪荷重を測定する複数の輪荷重測定装置と、を含むシステムであって、前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々は、タイヤと、前記タイヤが組み付けられているホイールとから成り、前記ホイールのリム部には、前記タイヤのタイヤ内腔から吸熱可能な吸熱装置が配置されており、前記制御装置は、前記複数の輪荷重測定装置によって測定された前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記輪荷重に基づいて、前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記吸熱装置を制御する。
本発明に係るシステムによれば、制御装置が、複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の輪荷重に基づいて、複数のタイヤ・ホイール組立体の各々のタイヤ内腔の温度を制御することで、タイヤ内腔2の空気圧を制御することができる。これにより、タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性を向上させることができる。
【0019】
本発明に係るシステムでは、前記複数のタイヤ・ホイール組立体は、前記車両において第1の対角輪を構成する第1の複数のタイヤ・ホイール組立体と、前記車両において第2の対角輪を構成する第2の複数のタイヤ・ホイール組立体と、を含み、前記制御装置は、前記複数の輪荷重測定装置によって測定された前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記輪荷重に基づいて算出された、第1の対角輪の輪荷重の合計値と第2の対角輪の輪荷重の合計値との差を無くすように、前記複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の前記吸熱装置を制御することが好ましい。かかる構成を有するシステムによれば、制御装置が、複数のタイヤ・ホイール組立体の各々の輪荷重に基づいて、複数のタイヤ・ホイール組立体の各々のタイヤ内腔の温度を制御することで、車両の輪荷重のバランスを調整することができる。これにより、タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タイヤ内腔の温度を制御する技術の有用性を向上させた、タイヤ・ホイール組立体及びシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1の実施形態におけるタイヤ・ホイール組立体の、タイヤ幅方向断面図である。
図2図2は、図1に示されるタイヤ・ホイール組立体のタイヤ幅方向断面の一部を拡大して示した部分断面図である。
図3図3は、図1に示されるタイヤをタイヤの回転軸側から見た、要部斜視断面図である。
図4図4は、図3に示される仮想線A-A’での第1フィンの、タイヤ周方向断面図である。
図5図5は、図1に示されるホイールをホイール径方向外側から見た、要部斜視断面図である。
図6図6は、図5に示される仮想線B-B’での吸熱装置の、ホイール周方向断面図である。
図7図7は、図1に示されるタイヤ・ホイール組立体を含む車両輪荷重調整システムを車両の側面方向から示した、概略図である。
図8図8は、図7に示される車両輪荷重調整システムを車両の上面方向から示した、概略図である。
図9図9は、本発明の第2の実施形態におけるタイヤ・ホイール組立体の、タイヤ幅方向断面図である。
図10図10は、図9に示されるタイヤをタイヤの回転軸側から見た、要部斜視断面図である。
図11図11は、図9に示されるホイールをホイール径方向外側から見た、要部斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体の実施形態について、図面を参照して説明する。各図において共通する部材及び部位には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合があることに留意されたい。
【0023】
本明細書において、「タイヤ幅方向」とは、タイヤの回転軸と平行な方向をいう。「タイヤ径方向」とは、タイヤの回転軸と直交する方向をいう。「タイヤ周方向」とは、タイヤの回転軸を中心にタイヤが回転する方向をいう。
【0024】
また、本明細書において、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸に近い側を「タイヤ径方向内側」と称し、タイヤ径方向に沿ってタイヤの回転軸から遠い側を「タイヤ径方向外側」と称する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤの赤道面CLに近い側を「タイヤ幅方向内側」と称し、タイヤ幅方向に沿ってタイヤの赤道面CLから遠い側を「タイヤ幅方向外側」と称する。
【0025】
さらに、本明細書において、「ホイール幅方向」とは、ホイールの回転軸と平行な方向をいう。「ホイール径方向」とは、ホイールの回転軸と直交する方向をいう。「ホイール周方向」とは、ホイールの回転軸を中心にホイールが回転する方向をいう。本実施形態では、ホイール径方向はタイヤ径方向と平行であり、ホイール幅方向はタイヤ幅方向と平行であり、ホイール周方向はタイヤ周方向と平行であるものとする。ただし、ホイール径方向、ホイール幅方向、ホイール周方向は、それぞれタイヤ径方向、タイヤ幅方向、タイヤ周方向と平行でなくてもよい。
【0026】
また、本明細書において、ホイール径方向に沿ってホイールの回転軸に近い側を「ホイール径方向内側」と称し、ホイール径方向に沿ってホイールの回転軸から遠い側を「ホイール径方向外側」と称する。一方、ホイール幅方向に沿ってホイールの赤道面CLに近い側を「ホイール幅方向内側」と称し、ホイール幅方向に沿ってホイールの赤道面CLから遠い側を「ホイール幅方向外側」と称する。本実施形態では、ホイールの赤道面CLは、タイヤの赤道面CLと同一であるものとする。ただし、ホイールの赤道面CLは、タイヤの赤道面CLと同一でなくてもよい。
【0027】
本明細書において、特に断りのない限り、タイヤの各要素の位置関係等は、基準状態で測定されるものとする。「基準状態」とは、タイヤを適用リムであるホイールのリム部に組み付け、規定内圧を充填し、無負荷とした状態である。以下において、タイヤは、内腔に空気が充填され、乗用車等の車両に装着されるものとして説明する。ただし、タイヤの内腔には空気以外の流体が充填されていてもよく、タイヤは乗用車以外の車両に装着されてもよい。
【0028】
本明細書において、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO (The European Tyre and Rim Technical Organization)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA (The Tire and Rim Association, Inc.)のYEAR BOOK等に記載されている、或いは、将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。「適用リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含まれる。「将来的に記載されるサイズ」の例として、ETRTOのSTANDARDS MANUAL2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズが挙げられる。
【0029】
本明細書において、「規定内圧」とは、上記のJATMA YEAR BOOK等の産業規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。さらに、本明細書において、「規定荷重」とは、上記産業規格に記載されている適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する荷重をいう。上記産業規格に記載のないサイズの場合には、「規定荷重」は、タイヤを装着する車両ごとに規定される最大負荷能力に対応する荷重をいうものとする。
【0030】
<タイヤ・ホイール組立体の第1の実施形態>
図1を参照して、以下、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体1の第1の実施形態について説明する。図1は、空気入りタイヤ10(以下、単に「タイヤ10」とも記載される。)と、ホイール20と、から成るタイヤ・ホイール組立体1を示す図である。具体的には、図1は、本発明の第1の実施形態におけるタイヤ・ホイール組立体1をタイヤ幅方向に沿って切断した、タイヤ幅方向断面図である。
【0031】
タイヤ・ホイール組立体1は、タイヤ10とホイール20とから成る。図1において、タイヤ10は、タイヤ10を適用リムであるホイール20のリム部21に組み付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。詳細は後述するが、本実施形態において、タイヤ10は、サイドウォール部12に断面三日月状のサイド補強ゴム18が設けられたランフラットタイヤであるものとして説明する。ただし、タイヤ10は、ランフラットタイヤでなくてもよい。タイヤ・ホイール組立体1は、タイヤ10のタイヤ内壁面と、ホイール20のリム部21のホイール径方向外側の表面とで構成されるタイヤ内腔面により、環状のタイヤ内腔2を区画している。
【0032】
ホイール20のリム部21には、タイヤ内腔2から吸熱可能な吸熱装置30が配置されている。吸熱装置30は、タイヤ内腔2の空気の温度の上昇を抑制することができる。これにより、例えば、タイヤ10がランフラットタイヤである場合に、吸熱装置30は、パンク等によるタイヤ10の空気圧低下後のランフラット走行時において、タイヤ内腔2の温度の上昇を抑制することができる。その結果、吸熱装置30は、ランフラット走行時にタイヤ10の温度が上昇することを抑制して、タイヤ10のタイヤ破壊を起こりにくくすることができる。このため、タイヤ・ホイール組立体1のランフラット走行寿命を向上させることができる。
【0033】
また例えば、吸熱装置30は、タイヤ内腔2から吸熱することにより、タイヤ内腔2の空気の温度を制御することができる。その結果、温度に応じて空気の体積が変化するため、吸熱装置30は、タイヤ10の空気圧を制御することができる。このように、本実施形態におけるタイヤ・ホイール組立体1によれば、タイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性を向上させることができる。
【0034】
<タイヤの構成>
はじめに、タイヤ・ホイール組立体1における、タイヤ10の構成について、詳細に説明する。図1に示されるように、タイヤ10は、一対のビード部11と、一対のサイドウォール部12と、トレッド部13とを有している。サイドウォール部12は、トレッド部13とビード部11との間に延在している。
【0035】
本実施形態において、タイヤ10は、タイヤの赤道面CLに対して対称な構成であるものとして説明する。しかしながら、タイヤ10は、タイヤの赤道面CLに対して非対称な構成とされていてもよい。
【0036】
タイヤ10は、ビード部11に配置された一対のビードコア14と、一対のビードコア14間にトロイダル状に延在する1枚以上のプライから成るカーカス15と、カーカス15のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層から成るベルト16と、を備えている。
【0037】
ビードコア14は、タイヤ周方向に延在する環状のケーブルビードからなっている。ケーブルビードは、例えば、高炭素の鋼線をゴム被覆して構成されている。ビードコア14の延在方向に直交する断面の形状(タイヤ幅方向断面の形状)は、円形とされている。ただし、ビードコア14のタイヤ幅方向断面の形状は、六角形等、任意の形状とされていてもよい。ビードコア14のタイヤ径方向外側には、ゴム材料等で形成されたビードフィラー17が設けられている。本実施形態において、ビードコア14及びビードフィラー17は、タイヤ幅方向断面において、カーカス15によって周囲を囲まれている。ただし、タイヤ10は、ビードフィラー17を備えない構成とされてもよい。
【0038】
カーカス15は、一対のビードコア14間にトロイダル状に延在する1枚以上(本実施形態では1枚)のプライからなる。プライは、複数のコードをゴム被覆して構成されている。プライを構成するコードは、例えば、レーヨン又はPET(ポリエチレンテレフタレート)などで構成された有機繊維コードである。本実施形態において、コードは、トレッド部13においてタイヤ幅方向に延在するように配置されている。即ち、カーカス15は、ラジアル構造とされている。ただし、カーカス15は、ラジアル構造に限られず、バイアス構造等、任意の構造とされていてもよい。
【0039】
カーカス15は、一対のビードコア14に係止されている。具体的には、カーカス15は、一対のビードコア14間をトロイダル状に延在するカーカス本体部15Aと、カーカス本体部15Aから延び、ビードコア14の周りでタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側へ折り返されているカーカス折返し部15Bとから成っている。本実施形態では、カーカス折返し部15Bは、基準状態におけるタイヤ最大幅の位置の近傍で終端している。ここで、「タイヤ最大幅の位置」とは、タイヤ幅方向断面におけるタイヤ10のタイヤ幅方向の長さが最も長くなる位置である。ただし、カーカス15は、ビードコア14の周りにタイヤ幅方向外側からタイヤ幅方向内側へ折り返されているカーカス折返し部15Bを有する構造、カーカス折返し部15Bを有していない構造、或いはカーカス折返し部15Bがビードコア14に巻きつけられている構造とされてもよい。
【0040】
ベルト16は、カーカス15のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置されている。ベルト16は、タイヤの赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された1層以上(本実施形態では3層)のベルト層によって構成されている。ベルト層は、例えば、スチールコード等のベルトコードで構成されている。ベルト16は、トレッド部13において、カーカス15をタイヤ径方向外側から覆うように設けられている。
【0041】
サイドウォール部12には、タイヤ幅方向断面の形状が三日月状(以下、「断面三日月状」とも記載される。)のサイド補強ゴム18が配置されている。具体的には、サイド補強ゴム18は、タイヤ幅方向断面において、サイド補強ゴム18のタイヤ径方向中央位置付近からタイヤ径方向内側及び外側に向かってタイヤ幅方向の厚さが漸減し、かつ、タイヤ幅方向外側に凸状に突出した形状をしている。このようなサイド補強ゴム18を配置することにより、パンク等によってタイヤ10の空気圧が低下した状態においても、サイド補強ゴム18が車体重量の支持に寄与することができる。これにより、タイヤ・ホイール組立体1を装着した車両5が、タイヤ10の空気圧低下後にある程度の距離を安全に走行すること、すなわち、ランフラット走行をすることができる。本実施形態では、サイド補強ゴム18は、カーカス本体部15Aよりもタイヤ幅方向内側に配置されている。
【0042】
サイド補強ゴム18は、単一又は複数種類のゴム材料によって形成されていてもよい。ただし、サイド補強ゴム18は、ゴム材料が主成分であれば、短繊維、樹脂など、ゴム材料以外の材料を含んでいてもよい。サイド補強ゴム18の弾性率は、例えば、サイドウォール部12のタイヤ幅方向外側の表面を形成するゴム材料の弾性率より高くされ、ビードフィラー17の弾性率より低くされてもよい。ただし、サイド補強ゴム18の弾性率は、タイヤ・ホイール組立体1の用途に応じて、任意に定められていてもよい。
【0043】
タイヤ10は、インナーライナー19を有している。インナーライナー19は、タイヤ10のタイヤ内壁面にわたって配置されている。インナーライナー19は、タイヤの赤道面CLにおいてタイヤ径方向に積層された複数のインナーライナー層によって構成されていてもよい。本実施形態では、インナーライナー19は、例えば、空気透過性の低いブチル系ゴムで構成されている。しかしながら、インナーライナー19は、ブチル系ゴムに限られず、他のゴム組成物、樹脂、又はエラストマで構成されていてもよい。
【0044】
タイヤ10のサイドウォール部12の内壁面には、タイヤ幅方向内側に突出する第1フィン40が設けられている。より具体的には、タイヤ10のサイドウォール部12において、サイド補強ゴム18のタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ内壁面には、タイヤ幅方向内側に突出する第1フィン40が設けられている。これにより、第1フィン40は、タイヤ内腔2に面するタイヤ内壁面の表面積を増やすとともに、タイヤ内腔2を流れる空気が第1フィン40を超える際に乱流を発生させ、タイヤ内壁面における熱交換効果を向上させることができる。第1フィン40は、例えば、インナーライナー19と同一の材料で構成されていてもよい。
【0045】
特に、タイヤ10がサイド補強ゴム18を備えるランフラットタイヤである場合、サイド補強ゴム18のタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ内壁面に第1フィン40が設けられていることで、ランフラット走行時に車体重量を支持するために大きく屈曲変形して発熱するサイド補強ゴム18からタイヤ内腔2への放熱が促進される。したがって、第1フィン40は、サイド補強ゴム18の温度が上昇することを抑制し、ランフラット走行時にタイヤ10がタイヤ破壊に至りにくくすることができる。
【0046】
第1フィン40は、タイヤ周方向に対して略垂直方向に延在していてもよい。例えば、方向Xが方向Yに対して略垂直であることとは、方向Yの垂直方向と方向Xとのなす角度が-30~30度の範囲であることである。図示例では、第1フィン40は、タイヤ径方向に延在している。これにより、第1フィン40は、タイヤ・ホイール組立体1が回転することでタイヤ内腔2に生じるタイヤ周方向の空気の流れが第1フィン40を超える際に効率的に乱流を発生させ、サイドウォール部12のタイヤ内壁面における熱交換効果を更に向上させることができる。ただし、第1フィン40の延在方向は、タイヤ内腔2において生じ得る空気の流れに応じて、任意に定められてもよい。また、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に設けられる第1フィン40の数は、1以上の任意の数とされていてもよい。例えば、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に、複数の第1フィン40がタイヤ周方向に並んで配置されていてもよい。これにより、タイヤ内腔2の広範囲にわたる熱交換を可能にし、ひいては、ランフラット走行時におけるタイヤ10のサイド補強ゴム18の温度の上昇を広範囲にわたって抑制することができる。
【0047】
第1フィン40の配置の一例について、図3及び図4を参照して、詳細に説明する。図3は、図1に示されるタイヤ10をタイヤ10の回転軸側から見た、要部斜視断面図である。図3では、一例として、4つの第1フィン40がホイール周方向に並んで配置されている。ただし、タイヤ10が備える第1フィン40の数は、4つに限られない。図4は、図3に示される仮想線A-A’での第1フィン40をタイヤ周方向に沿って切断した、タイヤ周方向断面図である。図4において、隣り合う第1フィン40のタイヤ周方向における中央間の距離を、第1フィン40のピッチPという。また、タイヤ幅方向において、第1フィン40の最大の長さを、第1フィン40の高さHという。タイヤ周方向において、第1フィン40の最大の長さを、第1フィン40の幅Wという。
【0048】
図4に示されるように、本実施形態では、第1フィン40の延在方向に直交する断面の形状(タイヤ周方向断面の形状)は、略四角形とされている。ただし、第1フィン40の断面の形状は、略四角形に限られず、任意の形状とされてもよい。第1フィン40の断面の形状は、例えば、三角形、台形、又は半円形など、タイヤ幅方向内側に向かって幅が狭くなるような形状とされてもよい。
【0049】
さらに、複数の第1フィン40は、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に、タイヤ周方向に所定のピッチPで配置されている。
【0050】
ここで、第1フィン40は、第1フィン40のピッチP及び高さHが1.0≦P/H≦50.0を満たすように、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に設けられていてもよい。好ましくは、第1フィン40は、第1フィン40のピッチP及び高さHが2.0≦P/H≦24.0を満たすように設けられていてもよい。さらに好ましくは、第1フィン40は、第1フィン40のピッチP及び高さHが10.0≦P/H≦20.0を満たすように設けられていてもよい。これにより、タイヤ10のサイドウォール部12のタイヤ内壁面における熱伝達率を向上させることができる。第1フィン40の耐久性を高くするために、第1フィン40の高さHは、例えば、0.5mm≦H≦7mmの範囲であることが好ましく、0.5mm≦H≦3mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0051】
また、第1フィン40は、第1フィン40のピッチP及び幅Wが1.0≦(P-W)/W≦100.0の関係を満たすように、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に設けられていてもよい。好ましくは、第1フィン40は、第1フィン40のピッチP及び幅Wが4.0≦(P-W)/W≦39.0を満たすように設けられてもよい。これにより、タイヤ10のサイドウォール部12のタイヤ内壁面における熱伝達率を向上させることができる。第1フィン40の耐久性を高くするために、第1フィン40の幅Wは、例えば、0.3mm≦W≦4mmの範囲であることが好ましく、0.5mm≦W≦3mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0052】
さらに、第1フィン40は、第1フィン40のピッチP、高さH、及び幅Wが1.0≦P/H≦50.0、且つ、1.0≦(P-W)/W≦100.0の関係を満たすように、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に設けられていてもよい。
【0053】
<ホイールの構成>
次に、タイヤ・ホイール組立体1における、ホイール20の構成の一例について、詳細に説明する。図1に示されるように、ホイール20は、円筒状のリム部21と、リム部21のホイール径方向内側に設けられ、車両5のハブ51に支持固定されるディスク部22と、を有している。リム部21には、ホイール径方向外側からタイヤ10が組付けられる。本明細書において、リム部21のホイール径方向外側の表面を、リム部21の外面ともいう。また、リム部21のホイール径方向内側の表面を、リム部21の内面ともいう。
【0054】
リム部21には、ホイール幅方向外側から、1対のフランジ23と、1対のビードシート24と、ウェル25と、が設けられている。ビードシート24には、タイヤ10のビード部11が組み付けられる。フランジ23は、タイヤ10のビード部11をタイヤ幅方向外側から支えるために、ビードシート24からホイール幅方向外側かつホイール径方向外側に延びている。ウェル25は、1対のビードシート24の間でホイール径方向内側に向かって凹形状を呈している。そのため、ウェル25は、ビードシート24との境界からウェル25の底面まで、ホイール幅方向内側に向かうほど、ホイール径方向内側に向かって下がっていく傾斜面を有している。ただし、リム部21の形状は、図示例に限れない。例えば、1対のビードシート24のそれぞれには、タイヤ10のビード部11がビードシート24からウェル25に落ちるのを防ぐために、ホイール径方向外側に突出するハンプが設けられていてもよい。
【0055】
ディスク部22は、ホイール径方向外端において、リム部21のホイール径方向内側の表面と連結している。本実施形態では、ディスク部22は、ホイール径方向外端において、リム部21のウェル25のホイール径方向内側の表面と連結している。これにより、ホイール20において、リム部21及びディスク部22によって、複数の空間3が区画されている。本実施形態では、ホイール20は、リム部21の内面と、ディスク部22のホイール径方向の表面とによって2つの空間3A及び3Bを区画している。空間3Aは、ディスク部22よりも、タイヤ・ホイール組立体1が車両5に装着された際に車両5の中心に近い側(以下、「車両装着内側」とも記載される。)に位置する。空間3Bは、ディスク部22よりも、タイヤ・ホイール組立体1が車両5に装着された際に車両5の中心から遠い側(以下、「車両装着外側」とも記載される。)に位置する。これにより、タイヤ・ホイール組立体1が車両5に装着された際に、車両5のハブ51及びブレーキ52等の車両機器50が、少なくとも部分的にホイール20の車両装着内側の空間3Aに収容される。
【0056】
<吸熱装置の構成>
図2を参照して、タイヤ・ホイール組立体1における、吸熱装置30の構成の一例について、詳細に説明する。図2は、図1に示されるタイヤ・ホイール組立体のタイヤ幅方向断面の一部を拡大して示した部分断面図である。
【0057】
図2に示されるように、吸熱装置30は、ホイール20のリム部21に配置されている。より具体的には、吸熱装置30は、リム部21のウェル25の底面に設置されている。図示例では、吸熱装置30は、リム部21の外面よりもホイール径方向内側に埋設されている。これにより、ホイール20のリム部21に吸熱装置30を配置することでタイヤ・ホイール組立体1に与える影響を少なくすることができる。ただし、吸熱装置30は、リム部21の外面から少なくとも部分的に突出していてもよい。
【0058】
吸熱装置30は、吸熱部31、断熱部32、及び計測部33を備えている。
【0059】
吸熱部31は、タイヤ内腔2から熱を吸収する。吸熱部31は、例えば、ペルチェ素子である。すなわち、吸熱装置30は、ペルチェ素子を備えていてもよい。これにより、簡易な構造により、タイヤ内腔2から熱を吸収する吸熱装置30を実現することができる。本実施形態では、吸熱部31は、タイヤ内腔2に露出する、ホイール径方向外側の吸熱面31Aと、リム部21よりもホイール径方向内側の空間3に露出する、ホイール径方向内側の放熱面31Bとを有する。これにより、吸熱部31は、ペルチェ効果を発揮することで、吸熱面31Aからタイヤ内腔2の熱を吸収して、放熱面31Bからリム部21よりもホイール径方向内側の空間3に放熱する。かかる構成により、吸熱装置30は、タイヤ内腔2の温度の上昇を抑制することができる。
【0060】
ただし、吸熱部31は、ペルチェ素子に限られず、水循環式の水冷装置等、タイヤ内腔2から吸熱可能な任意の機器であってもよい。また、吸熱装置30は、タイヤ内腔2から熱を吸収するものとして説明したが、この限りではない。吸熱装置30は、タイヤ内腔2から熱を吸収することに加えて、タイヤ内腔2に熱を放出することが可能であってもよい。すなわち、吸熱装置30は、吸熱及び放熱により、タイヤ内腔2の温度を制御することが可能であってもよい。例えば、吸熱装置30の吸熱部31がペルチェ素子である場合、吸熱部31に流れる電流の向きを変えることで、吸熱面31Aを放熱面として、放熱面31Bを吸熱面として機能させることができる。これにより、吸熱装置30は、吸熱部31において、放熱面31Bから空間3Bの熱を吸収して、吸熱面31Aからタイヤ内腔2に放熱することができる。かかる構成により、吸熱装置30は、タイヤ内腔2の温度の上昇及び下降を抑制することができる。
【0061】
断熱部32は、例えば、ゴム等の断熱材である。図示例では、吸熱装置30は、吸熱装置30のホイール径方向に垂直方向に面する表面(ホイール幅方向及びホイール周方向に面する表面)を断熱部32で覆われている。すなわち、ホイール20は、吸熱装置30とリム部21との間に断熱材を備えている。これにより、断熱部32は、吸熱部31の吸熱面31Aと放熱面31Bとの間においてリム部21を介した熱交換が行われることを未然に防ぎ、吸熱装置30によるタイヤ内腔2からの吸熱効果が低減することを防ぐことができる。
【0062】
計測部33は、タイヤ内腔2の空気圧を計測する。計測部33は、例えば、空気圧センサである。すなわち、吸熱装置30は、タイヤ内腔2の空気圧を計測する空気圧センサを備えていてもよい。
【0063】
吸熱装置30は、吸熱部31、断熱部32、及び計測部33に加えて、蓄電部、受電部、及び制御部を備えていてもよい。蓄電部は、吸熱装置30の動作に使用される電力を蓄える。受電部は、例えば、電磁誘導方式により受電可能なアンテナ等の受電装置を含む。受電部は、タイヤ・ホイール組立体1の外部に設置された送電装置から無線により送電される電力を受け付ける。受電部は、受け付けた電力を蓄電部に送電可能に構成されている。制御部は、例えば、プロセッサを含む。プロセッサは、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)等の汎用のプロセッサであってもよく、或いは、特定の処理に特化した専用のプロセッサであってもよい。制御部には、プロセッサに加えて、プログラム等を記憶するためのメモリ、及び外部の電子機器と有線又は無線で通信をする通信インタフェース等の、吸熱装置30の制御に用いられる任意の機器が含まれていてもよい。
【0064】
吸熱装置30の制御部は、吸熱装置30の各機能を制御するための処理を提供する。例えば、制御部は、計測部33により計測されたタイヤ内腔2の空気圧に応じて、吸熱部31を制御して、タイヤ内腔2からの吸熱度合いを制御してもよい。吸熱装置30は、計測部33により計測されたタイヤ内腔2の空気圧が所定の閾値よりも高い場合又は低い場合に、吸熱部31を制御して、タイヤ内腔2からの吸収、或いは、タイヤ内腔2への放熱を行ってもよい。このように、吸熱装置30が、タイヤ内腔2の空気圧に応じて、タイヤ内腔2からの吸熱度合いを制御可能であることによって、タイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性が更に向上する。
【0065】
吸熱装置30のホイール径方向内側の表面は、リム部21において、リム部21及びディスク部22によって区画された複数の空間3A及び3Bのうち、車両5のブレーキ52等の車両機器50を収容する空間3Aとは異なる空間3Bに露出している。すなわち、吸熱装置30の吸熱部31の放熱面31Bが、空間3Bに露出している。これにより、吸熱装置30が、タイヤ内腔2から吸収した熱をタイヤ10の外部に放熱する際に、ブレーキ52等による放熱で熱くなった空間3Aに放熱する場合に比べて、タイヤ内腔2を効率的に冷却することができる。
【0066】
リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向外側の表面には、ホイール径方向外側に突出する第2フィン41が設けられている。より具体的には、吸熱装置30の吸熱部31の吸熱面31Aには、ホイール径方向外側に突出する第2フィン41が設けられている。これにより、第2フィン41は、タイヤ内腔2に面する吸熱面31Aの表面積を増やすとともに、タイヤ内腔2を流れる空気が第2フィン41を超える際に乱流を発生させ、吸熱面31Aにおける熱交換効果を向上させることができる。第2フィン41は、例えば、吸熱面31Aと同一の材料で構成されていてもよい。
【0067】
図示例では、第2フィン41は、ホイール径方向からの平面視において、吸熱装置30の外縁よりも内側に設けられている。ただし、第2フィン41は、ホイール径方向からの平面視において、第2フィン41の少なくとも一部が吸熱装置30の外縁の外側まで延在していてもよい。かかる場合、第2フィン41は、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面を横切るように、ホイール20のリム部21のホイール径方向外側の表面に設けられていてもよい。かかる場合、第2フィン41は、リム部21と同一の材料で構成されていてもよい。
【0068】
例えば、タイヤ10がサイド補強ゴム18を備えるランフラットタイヤである場合、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に第2フィン41が設けられていることで、ランフラット走行時にサイド補強ゴム18の発熱に伴いタイヤ内腔2の温度が上昇した際に、タイヤ内腔2から吸熱装置30への放熱が促進される。したがって、第2フィン41は、タイヤ10の温度が上昇することを抑制し、ランフラット走行時にタイヤ10がタイヤ破壊に至りにくくすることができる。
【0069】
第2フィン41は、ホイール幅方向に延在していてもよい。すなわち、第2フィン41は、ホイール周方向に対して略垂直方向に延在していてもよい。これにより、第2フィン41は、タイヤ・ホイール組立体1が回転することでタイヤ内腔2に生じるホイール周方向の空気の流れが第2フィン41を超える際に効率的に乱流を発生させ、リム部21に設置された吸熱装置30における熱交換効果を更に向上させることができる。ただし、第2フィン41の延在方向は、タイヤ内腔2において生じ得る空気の流れに応じて、任意に定められてもよい。また、リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に設けられる第2フィン41の数は、1以上の任意の数とされていてもよい。例えば、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に、複数の第2フィン41がホイール周方向に並んで配置されていてもよい。
【0070】
第2フィン41の配置の一例について、図5及び図6を参照して、詳細に説明する。図5は、図1に示されるホイール20をホイール径方向外側から見た、要部斜視断面図である。図5では、一例として、2つの第2フィン41がホイール周方向に並んで配置されている。ただし、ホイール20が備える第2フィン41の数は、2つに限られない。図6は、図5に示される仮想線B-B’での吸熱装置30をホイール周方向に沿って切断した、ホイール周方向断面図である。図6において、隣り合う第2フィン41のホイール周方向における中央間の距離を、第2フィン41のピッチP’という。また、ホイール径方向において、第2フィン41の最大の長さを、第2フィン41の高さH’という。ホイール周方向において、第2フィン41の最大の長さを、第2フィン41の幅W’という。
【0071】
図6に示されるように、本実施形態では、第2フィン41の延在方向に直交する断面の形状(ホイール周方向断面の形状)は、略四角形とされている。ただし、第2フィン41の断面の形状は、略四角形に限られず、任意の形状とされてもよい。第2フィン41の断面の形状は、例えば、三角形、台形、又は半円形など、ホイール径方向外側に向かって幅が狭くなるような形状とされてもよい。
【0072】
さらに、複数の第2フィン41は、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に、ホイール周方向に所定のピッチP’で配置されている。
【0073】
ここで、第2フィン41は、第2フィン41のピッチP’及び高さH’が1.0≦P’/H’≦50.0を満たすように、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に設けられていてもよい。好ましくは、第2フィン41は、第2フィン41のピッチP’及び高さH’が2.0≦P’/H’≦24.0を満たすように設けられていてもよい。さらに好ましくは、第2フィン41は、第2フィン41のピッチP’及び高さH’が10.0≦P’/H’≦20.0を満たすように設けられていてもよい。これにより、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面における熱伝達率を向上させることができる。第2フィン41の耐久性を高くするために、第2フィン41の高さH’は、例えば、0.5mm≦H’≦7mmの範囲であることが好ましく、0.5mm≦H’≦3mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0074】
また、第2フィン41は、第2フィン41のピッチP’及び幅W’が1.0≦(P’-W’)/W’≦100.0の関係を満たすように、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に設けられていてもよい。好ましくは、第2フィン41は、第2フィン41のピッチP’及び幅W’が4.0≦(P’-W’)/W’≦39.0を満たすように設けられてもよい。これにより、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面における熱伝達率を向上させることができる。第2フィン41の耐久性を高くするために、第2フィン41の幅W’は、例えば、0.3mm≦W’≦4mmの範囲であることが好ましく、0.5mm≦W’≦3mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0075】
さらに、第2フィン41は、第2フィン41のピッチP’、高さH’、及び幅W’が1.0≦P’/H’≦50.0、且つ、1.0≦(P’-W’)/W’≦100.0の関係を満たすように、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に設けられていてもよい。
【0076】
再び図2を参照して、リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向内側の表面には、ホイール径方向内側に突出する第3フィン42が設けられている。より具体的には、吸熱装置30の吸熱部31の放熱面31Bには、ホイール径方向内側に突出する第3フィン42が設けられている。これにより、第3フィン42は、リム部21よりもホイール径方向内側の空間3に面する放熱面31Bの表面積を増やすとともに、タイヤ10の外部を流れる空気が第3フィン42を超える際に乱流を発生させ、放熱面31Bにおける熱交換効果を向上させることができる。第3フィン42は、例えば、放熱面31Bと同一の材料で構成されていてもよい。
【0077】
図示例では、第3フィン42は、ホイール径方向からの平面視において、吸熱装置30の外縁よりも内側に設けられている。ただし、第3フィン42は、ホイール径方向からの平面視において、第3フィン42の少なくとも一部が吸熱装置30の外縁の外側まで延在していてもよい。かかる場合、第3フィン42は、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面を横切るように、ホイール20のリム部21のホイール径方向内側の表面に設けられていてもよい。かかる場合、第3フィン42は、リム部21と同一の材料で構成されていてもよい。
【0078】
例えば、タイヤ10がサイド補強ゴム18を備えるランフラットタイヤである場合、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面に第3フィン42が設けられていることで、ランフラット走行時にサイド補強ゴム18の発熱に伴いタイヤ内腔2の温度が上昇した際に、吸熱装置30が、タイヤ内腔2から吸収した熱をタイヤ10の外部に効率的に放熱することができる。したがって、第3フィン42は、タイヤ10の温度が上昇することを抑制し、ランフラット走行時にタイヤ10がタイヤ破壊に至りにくくすることができる。
【0079】
第3フィン42は、ホイール幅方向に延在していてもよい。すなわち、第3フィン42は、ホイール周方向に対して略垂直方向に延在していてもよい。これにより、第3フィン42は、タイヤ・ホイール組立体1が回転することでリム部21のホイール径方向内側の表面に生じるホイール周方向の空気の流れが第3フィン42を超える際に効率的に乱流を発生させ、リム部21に設置された吸熱装置30における熱交換効果を更に向上させることができる。ただし、第3フィン42の延在方向は、リム部21のホイール径方向内側の表面において生じ得る空気の流れに応じて、任意に定められてもよい。また、リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向内側の表面に設けられる第3フィン42の数は、1以上の任意の数とされていてもよい。例えば、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面に、複数の第3フィン42がホイール周方向に並んで配置されていてもよい。
【0080】
図6を参照すると、2つの第3フィン42の各々が、ホイール径方向において2つの第2フィン41と対向する位置にホイール周方向に並んで配置されている。ただし、第3フィン42は、ホイール周方向において、第2フィン41と位置をずらして並んで配置されていてもよい。また、ホイール20が備える第3フィン42の数は、2つに限られない。さらに、ホイール20が備える第3フィン42の数は、第2フィン41の数の数と異なっていてもよい。
【0081】
図6において、隣り合う第3フィン42のホイール周方向における中央間の距離を、第3フィン42のピッチP’’という。また、ホイール径方向において、第3フィン42の最大の長さを、第3フィン42の高さH’’という。ホイール周方向において、第3フィン42の最大の長さを、第3フィン42の幅W’’という。図示例では、第3フィン42のピッチP’’、高さH’’、及び幅W’’は、それぞれ第2フィン41のピッチP’、高さH’、及び幅W’と等しい。ただし、第3フィン42のピッチP’’、高さH’’、及び幅W’’は、それぞれ第2フィン41のピッチP’、高さH’、及び幅W’と異なっていてもよい。
【0082】
図6に示されるように、本実施形態では、第3フィン42の延在方向に直交する断面の形状(ホイール周方向断面の形状)は、略四角形とされている。ただし、第3フィン42の断面の形状は、略四角形に限られず、任意の形状とされてもよい。第3フィン42の断面の形状は、例えば、三角形、台形、又は半円形など、ホイール径方向内側に向かって幅が狭くなるような形状とされてもよい。
【0083】
ここで、第3フィン42は、第3フィン42のピッチP’’及び高さH’’が1.0≦P’’/H’’≦50.0を満たすように、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面に設けられていてもよい。好ましくは、第3フィン42は、第3フィン42のピッチP’’及び高さH’’が2.0≦P’’/H’’≦24.0を満たすように設けられていてもよい。さらに好ましくは、第3フィン42は、第3フィン42のピッチP’’及び高さH’’が10.0≦P’’/H’’≦20.0を満たすように設けられていてもよい。これにより、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面における熱伝達率を向上させることができる。第3フィン42の耐久性を高くするために、第3フィン42の高さH’’は、例えば、0.5mm≦H’’≦7mmの範囲であることが好ましく、0.5mm≦H’’≦3mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0084】
また、第3フィン42は、第3フィン42のピッチP’’及び幅W’’が1.0≦(P’’-W’’)/W’’≦100.0の関係を満たすように、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面に設けられていてもよい。好ましくは、第3フィン42は、第3フィン42のピッチP’’及び幅W’’が4.0≦(P’’-W’’)/W’’≦39.0を満たすように設けられてもよい。これにより、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面における熱伝達率を向上させることができる。第3フィン42の耐久性を高くするために、第3フィン42の幅W’’は、例えば、0.3mm≦W’’≦4mmの範囲であることが好ましく、0.5mm≦W’’≦3mmの範囲であることがさらに好ましい。
【0085】
さらに、第3フィン42は、第3フィン42のピッチP’’、高さH’’、及び幅W’’が1.0≦P’’/H’’≦50.0、且つ、1.0≦(P’’-W’’)/W’’≦100.0の関係を満たすように、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面に設けられていてもよい。
【0086】
ただし、吸熱装置30は、上述した設置位置に限られず、ホイール20のリム部21の任意の位置に設置されていてもよい。また、複数の吸熱装置30が、ホイール20のリム部21に設置されていてもよい。例えば、複数の吸熱装置30が、ホイール20のリム部21において、ホイール周方向に並べて設置されていてもよい。これにより、タイヤ内腔2の広範囲にわたる熱交換を可能にする。さらに、タイヤ10がサイド補強ゴム18を備えるランフラットタイヤである場合、ランフラット走行時におけるタイヤ10のサイド補強ゴム18の温度の上昇を広範囲にわたって抑制することができる。
【0087】
<吸熱装置の動作>
吸熱装置30の動作について説明する。はじめに、第1の動作例として、タイヤ10がランフラットタイヤである場合における、ランフラット走行時の吸熱装置30の動作例を説明する。
【0088】
パンク等によるタイヤ10の空気圧低下後のランフラット走行時において、車体重量を支持するために、タイヤ10のサイド補強ゴム18が大きく屈曲変形して発熱する。その結果、タイヤ10のタイヤ破壊を起こりやすくなる。このとき、吸熱装置30は、計測部33により計測されたタイヤ内腔2の空気圧が第1の閾値よりも低下した場合に、吸熱部31を介してタイヤ内腔2の熱を吸収し、タイヤ10の外部に放熱する。第1の閾値は、例えば、ランフラット走行中であることを示すタイヤ10の空気圧であってもよい。これにより、吸熱装置30は、パンク等によるタイヤ10の空気圧低下後のランフラット走行時において、タイヤ内腔2の温度の上昇を抑制することができる。その結果、吸熱装置30は、ランフラット走行時にタイヤ10の温度が上昇することを抑制して、タイヤ10のタイヤ破壊を起こりにくくすることができる。このため、吸熱装置30は、タイヤ・ホイール組立体1のランフラット走行寿命を向上させることができる。
【0089】
次に、第2の動作例として、ランフラット走行時以外の走行時における吸熱装置30の動作例を説明する。
【0090】
タイヤ・ホイール組立体1が装着された車両5が走行する環境等に応じて、車両5の走行中に、車両5の重量又は路面の状態等により、タイヤ内腔2の空気圧が変化する。このとき、吸熱装置30は、計測部33により計測されたタイヤ内腔2の空気圧が第2の閾値よりも高い場合、吸熱部31を介してタイヤ内腔2の熱を吸収する。これにより、吸熱装置30は、タイヤ内腔2の空気圧を下げることができる。或いは、吸熱装置30は、計測部33により計測されたタイヤ内腔2の空気圧が第3の閾値よりも低い場合、吸熱部31を介してタイヤ内腔2から吸収する熱の量を抑える、或いは、吸熱部31を介してタイヤ内腔2に熱を放出する。これにより、吸熱装置30は、タイヤ内腔2の空気圧を上げることができる。このように、吸熱装置30は、タイヤ・ホイール組立体1のタイヤ内腔2の温度を制御することで、タイヤ内腔2の空気圧を制御することができる。なお、本動作例のように、吸熱装置30をタイヤ内腔2の空気圧の制御に用いることは、タイヤ10がランフラットタイヤではない場合においても有用である。
【0091】
<車両輪荷重調整システム>
図7及び図8を参照して、以下、タイヤ・ホイール組立体1の一適用例としての車両輪荷重調整システム4について説明する。図7は、図1に示されるタイヤ・ホイール組立体1を含む車両輪荷重調整システム4を車両5の側面方向から示した、概略図である。図8は、図7に示される車両輪荷重調整システム4を車両5の上面方向から示した、概略図である。図7及び図8において、車両5の車体は破線で示されている。以下、車両輪荷重調整システム4は、単にシステム4とも称される。
【0092】
システム4は、車両5に装着された複数のタイヤ・ホイール組立体1と、車両5に配置された制御装置53と、複数の輪荷重測定装置6とを含む。
【0093】
車両5は、例えば乗用車である。ただし、車両5は、乗用車に限られず、バス又はトラック等、複数のタイヤ・ホイール組立体1を装着する任意の車両5であってもよい。
【0094】
図8に示されるように、本実施形態では、車両5は、制御装置53と、4つのタイヤ・ホイール組立体1A、1B、1C及び1Dを備えている。以下、タイヤ・ホイール組立体1A、1B、1C及び1Dを特に区別しない場合、単に、タイヤ・ホイール組立体1と総称する。
【0095】
図示例において、4つのタイヤ・ホイール組立体1A~1Dのうち、タイヤ・ホイール組立体1A及び1Cが車両5の前輪であって、タイヤ・ホイール組立体1B及び1Dが車両5の後輪である。また、複数のタイヤ・ホイール組立体1A~1Dは、車両5において第1の対角輪を構成する第1の複数のタイヤ・ホイール組立体1A及び1Dと、車両5において第2の対角輪を構成する第2の複数のタイヤ・ホイール組立体1B及び1Cとを含んでいる。ただし、車両5が備えるタイヤ・ホイール組立体1の数は任意の数とされてもよい。
【0096】
複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々は、タイヤ10と、タイヤ10が組み付けられているホイール20とから成っている。ホイール20のリム部21には、タイヤ10のタイヤ内腔2から吸熱可能な吸熱装置30が配置されている。
【0097】
制御装置53は、例えば、車両5のECU(Engine Control Unit)である。ただし、制御装置53は、車両5のECUに限られず、車両5に配置された任意の電子機器とされていてもよい。制御装置53は、例えば、プロセッサを備える。プロセッサは、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU等の汎用のプロセッサであってもよく、或いは、特定の処理に特化した専用のプロセッサであってもよい。制御装置53は、プロセッサに加えて、プログラム等を記憶するためのメモリ、及び外部の電子機器と有線又は無線で通信をする通信インタフェース等を備える。
【0098】
図示例において、システム4は、4つの輪荷重測定装置6A、6B、6C及び6Dを備えている。4つの輪荷重測定装置6A、6B、6C及び6Dは、例えば、路面に配置されている。以下、輪荷重測定装置6A、6B、6C及び6Dを特に区別しない場合、単に、輪荷重測定装置6と総称する。本実施形態では、システム4が備える輪荷重測定装置6の数は、車両5が備えるタイヤ・ホイール組立体1の数と等しい。
【0099】
輪荷重測定装置6は、荷重計を備える。輪荷重測定装置6は、荷重計に加えて、プロセッサ、プログラム等を記憶するためのメモリ、及び外部の電子機器と有線又は無線で通信をする通信インタフェース等を備える。プロセッサは、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU等の汎用のプロセッサであってもよく、或いは、特定の処理に特化した専用のプロセッサであってもよい。
【0100】
制御装置53と、輪荷重測定装置6A~6Dと、タイヤ・ホイール組立体1A~1Dの各々に配置された吸熱装置30とは、例えばインターネット及び移動体通信網等を介して、有線又は無線により、互いに通信可能に接続されている。
【0101】
図8において、タイヤ・ホイール組立体1A~1Dが、それぞれ輪荷重測定装置6A~6Dの上に完全に位置するように、車両5が停車されている。この状態において、輪荷重測定装置6A~6Dは、それぞれタイヤ・ホイール組立体1A~1Dの輪荷重を測定する。輪荷重測定装置6A~6Dは、それぞれ測定したタイヤ・ホイール組立体1A~1Dの輪荷重を制御装置53に送信する。
【0102】
制御装置53は、複数の輪荷重測定装置6A~6Dによって測定された複数のタイヤ・ホイール組立体1A~1Dの各々の輪荷重に基づいて、複数のタイヤ・ホイール組立体1A~1Dの各々の吸熱装置30を制御する。
【0103】
例えば、制御装置53は、車両5の第1の対角輪を構成する第1の複数のタイヤ・ホイール組立体1A及び1Dの輪荷重の合計値W1と、車両5の第2の対角輪(1B及び1C)を構成する第2の複数のタイヤ・ホイール組立体1B及び1Cの合計値W2とを算出する。さらに、制御装置53は、第1の対角輪の輪荷重の合計値W1と第2の対角輪の輪荷重の合計値W2との差Dを算出する。車両5において第1の対角輪と第2の対角輪とのバランスが崩れている場合、差Dが生じる(差Dが0以外の値になる)。
【0104】
制御装置53は、第1の対角輪の輪荷重の合計値W1と第2の対角輪の輪荷重の合計値W2との差Dをなくすように、タイヤ・ホイール組立体1A~1Dの各々の吸熱装置30を制御する。具体的には、制御装置53は、タイヤ・ホイール組立体1A~1Dの各々の吸熱装置30に制御信号を送信してもよい。タイヤ・ホイール組立体1A~1Dの各々の吸熱装置30は、制御信号に基づいて、タイヤ内腔2の温度を制御して、タイヤ内腔2の空気圧を変化させる。これにより、制御装置53は、タイヤ・ホイール組立体1A~1Dの各々のタイヤ内腔2の空気圧を変化させ、タイヤ・ホイール組立体1A~1Dの輪荷重を変化させることができる。その結果、制御装置53は、第1の対角輪の輪荷重の合計値W1と第2の対角輪の輪荷重の合計値W2との差Dを0に近づけることで、車両5の輪荷重のバランスを調整することができる。このように、システム4によれば、タイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性をさらに向上させることができる。制御装置53は、第1の対角輪の輪荷重の合計値W1、第2の対角輪の輪荷重の合計値W2、及びこれらの差D等の車両輪荷重調整に関する情報を車両5に設置されたディスプレイ等に表示させてもよい。
【0105】
<タイヤ・ホイール組立体の第2の実施形態>
図9図10、及び図11を参照して、以下、本発明に係るタイヤ・ホイール組立体1の第2の実施形態について説明する。図9は本発明の第2の実施形態におけるタイヤ・ホイール組立体1の、タイヤ幅方向断面図である。図10は、図9に示されるタイヤ10をタイヤ10の回転軸側から見た、要部斜視断面図である。図11は、図9に示されるホイールをホイール径方向外側から見た、要部斜視断面図である。
【0106】
本実施形態は、ホイール20のリム部21に、タイヤ内腔2から吸熱可能な吸熱装置30に加え、タイヤ内腔2に送風可能な送風装置60が配置されている点で、第1の実施形態と異なる。以下に、第1の実施形態と異なる点を中心に第2の実施形態について説明する。
【0107】
タイヤ・ホイール組立体1は、第1の実施形態と同様に、タイヤ10とホイール20とから成る。図9において、タイヤ10は、タイヤ10を適用リムであるホイール20のリム部21に組み付け、規定内圧を充填し、無負荷とした、基準状態で示されている。
【0108】
タイヤ10は、第1の実施形態と同様に、一対のビード部11と、一対のサイドウォール部12と、トレッド部13とを有している。サイドウォール部12は、トレッド部13とビード部11との間に延在している。
【0109】
タイヤ10は、ビード部11に配置された一対のビードコア14と、一対のビードコア14間にトロイダル状に延在する1枚以上のプライから成るカーカス15と、カーカス15のクラウン域のタイヤ径方向外側に配置された1層以上のベルト層から成るベルト16と、を備えている。
【0110】
サイドウォール部12には、タイヤ幅方向断面の形状が三日月状(断面三日月状)のサイド補強ゴム18が配置されている。
【0111】
タイヤ10は、インナーライナー19を有している。インナーライナー19は、タイヤ10のタイヤ内壁面にわたって配置されている。
【0112】
タイヤ10のサイドウォール部12の内壁面には、タイヤ幅方向内側に突出する第1フィン40が設けられている。
【0113】
第2の実施形態では、第1フィン40は、送風装置60からの送風方向に対して略垂直方向に延在している。図10に示されるように、第1フィン40は、タイヤ周方向に延在している。これにより、第1フィン40は、タイヤ内腔2を流れる空気が第1フィン40を超える際に効率的に乱流を発生させ、タイヤ内壁面における熱交換効果を更に向上させることができる。ただし、第1フィン40の延在方向は、タイヤ内腔2において生じ得る空気の流れに応じて、任意に定められてもよい。例えば、第1フィン40の延在方向は、送風装置60からの送風方向に対して平行とならない範囲で任意に定められていてもよい。また、図示例では、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に、2つの第1フィン40がタイヤ径方向に並んで配置されている。ただし、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に設けられる第1フィン40の数は、1以上の任意の数とされていてもよい。第1フィン40の延在方向に直交する断面の形状、第1フィン40のピッチP、高さH、及び幅Wは、第1の実施形態と同様の方法で定められてもよい。
【0114】
再び図9を参照して、ホイール20は、第1の実施形態と同様に、円筒状のリム部21と、リム部21のホイール径方向内側に設けられ、車両5のハブ51に支持固定されるディスク部22と、を有している。
【0115】
リム部21には、ホイール幅方向外側から、1対のフランジ23と、1対のビードシート24と、ウェル25と、が設けられている。
【0116】
吸熱装置30は、第1の実施形態と同様に、ホイール20のリム部21に配置されている。より具体的には、吸熱装置30は、リム部21のウェル25の底面に設置されている。
【0117】
吸熱装置30は、吸熱部31、断熱部32、及び計測部33を備えている。吸熱装置30は、吸熱部31、断熱部32、及び計測部33に加えて、蓄電部、受電部、及び制御部を備えていてもよい。
【0118】
リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向外側の表面には、ホイール径方向外側に突出する第2フィン41が設けられている。より具体的には、吸熱装置30の吸熱部31の吸熱面31Aには、ホイール径方向外側に突出する第2フィン41が設けられている。
【0119】
第2の実施形態では、第2フィン41は、送風装置60からの送風方向に対して略垂直方向に延在している。図11に示されるように、第2フィン41は、ホイール周方向に延在している。これにより、第2フィン41は、タイヤ内腔2を流れる空気が第2フィン41を超える際に効率的に乱流を発生させ、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面における熱交換効果を更に向上させることができる。ただし、第2フィン41の延在方向は、タイヤ内腔2において生じ得る空気の流れに応じて、任意に定められてもよい。例えば、第2フィン41の延在方向は、送風装置60からの送風方向に対して平行とならない範囲で任意に定められていてもよい。また、図示例では、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に、2つの第2フィン41がホイール幅方向に並んで配置されている。ただし、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に設けられる第2フィン41の数は、1以上の任意の数とされていてもよい。第2フィン41の延在方向に直交する断面の形状、第2フィン41のピッチP’、高さH’、及び幅W’は、第1の実施形態と同様の方法で定められてもよい。
【0120】
再び図9を参照して、リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向内側の表面には、ホイール径方向内側に突出する第3フィン42が設けられている。より具体的には、吸熱装置30の吸熱部31の放熱面31Bには、ホイール径方向内側に突出する第3フィン42が設けられている。
【0121】
第3フィン42は、第1の実施形態と同様に、ホイール幅方向に延在している。すなわち、第3フィン42は、ホイール周方向に対して略垂直方向に延在している。吸熱装置30のホイール径方向内側の表面に設けられる第3フィン42の数は、1以上の任意の数とされていてもよい。第3フィン42の延在方向に直交する断面の形状、第3フィン42のピッチP’’、高さH’’、及び幅W’’は、第1の実施形態と同様の方法で定められてもよい。
【0122】
図9に示されるように、送風装置60は、ホイール20のリム部21に配置されている。より具体的には、送風装置60は、リム部21のウェル25の車両設置外側の傾斜面に設置されている。図示例では、送風装置60は、リム部21の外面よりもホイール径方向内側に埋設されている。これにより、ホイール20のリム部21に送風装置60を配置することでタイヤ・ホイール組立体1に与える影響を少なくすることができる。ただし、送風装置60は、リム部21の外面から少なくとも部分的に突出していてもよい。
【0123】
送風装置60は、本体61、排気路62、吸気路63、及びバルブ64を備えている。
【0124】
本体61は、例えば、シロッコファン等のファンを備える。ただし、本体61は、プロペラファン等、任意のファンを備えていてもよく、或いは、ファン以外の送風手段を備えていてもよい。
【0125】
本体61は、ファン等の送風手段に加えて、計測手段、蓄電手段、受電手段、及び制御手段を備えていてもよい。計測手段は、例えば、タイヤ内腔2の空気圧を計測可能な位置に設置された空気圧センサを含む。計測手段は、タイヤ内腔2の空気圧を計測する。蓄電手段は、例えば、蓄電池又は乾電池等の蓄電装置を含む。蓄電手段は、送風装置60の動作に使用される電力を蓄える。受電手段は、例えば、電磁誘導方式により受電可能なアンテナ等の受電装置を含む。受電手段は、タイヤ・ホイール組立体1の外部に設置された送電装置から無線により送電される電力を受け付ける。受電手段は、受け付けた電力を蓄電手段に送電可能に構成されている。制御手段は、例えば、プロセッサを含む。プロセッサは、制御手順を規定したプログラムを実行するCPU等の汎用のプロセッサであってもよく、或いは、特定の処理に特化した専用のプロセッサであってもよい。制御手段には、プロセッサに加えて、プログラム等を記憶するためのメモリ、及び外部の電子機器と有線又は無線で通信をする通信インタフェース等の、送風装置60の制御に用いられる任意の電子機器が含まれていてもよい。制御手段は、送風装置60の各機能を制御するための処理を提供する。例えば、制御手段は、計測手段により計測されたタイヤ内腔2の空気圧が所定の閾値以下になった場合に、送風手段を起動させてもよい。
【0126】
排気路62は、本体61から送風された空気を、タイヤ内腔2に向けて排出するための管又は溝を含む。送風装置60は、タイヤ内腔2に送風して、タイヤ内腔2の空気を循環させることができる。これにより、送風装置60は、パンク等によるタイヤ10の空気圧低下後のランフラット走行時において、タイヤ内腔2の空気を循環させることでタイヤ10のサイド補強ゴム18の温度の上昇を抑制することができる。このため、送風装置60は、ランフラット走行時にタイヤ10の温度が上昇することを抑制して、タイヤ10のタイヤ破壊を起こりにくくすることができる。したがって、タイヤ・ホイール組立体1のランフラット走行寿命を向上させることができる。
【0127】
図9において、排気路62は、タイヤ10の車両設置外側のサイドウォール部12において、サイド補強ゴム18のタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ内壁面に向けて開口するように配置されている。すなわち、送風装置60は、タイヤ10の車両設置外側のサイドウォール部12に設けられたサイド補強ゴム18のタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ内壁面に向けて送風するように配置されている。これにより、送風装置60は、ランフラット走行時に大きく屈曲変形して発熱するサイド補強ゴム18の近傍に向けて送風することで、サイド補強ゴム18の放熱を促し、タイヤ10の温度が上昇することを更に抑制することができる。
【0128】
このとき、送風装置60から送風された空気は、サイドウォール部12のタイヤ内壁面に配置された第1フィン40に対して略垂直方向に進む。これにより、タイヤ内腔2を流れる空気が第1フィン40を超える際に効率的に乱流を発生させ、サイドウォール部12のタイヤ内壁面におけるタイヤ10(特に、サイド補強ゴム18)からタイヤ内腔2への放熱が促進される。さらに、送風装置60から送風された空気は、タイヤ内腔面に沿って循環し、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面に配置された第2フィン41の延在方向に対して略垂直方向に進む。これにより、タイヤ内腔2を流れる空気が第2フィン41を超える際に効率的に乱流を発生させ、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面におけるタイヤ内腔2から吸熱装置30への放熱が促進される。
【0129】
吸気路63は、本体61に空気を取り込むための管又は溝を含む。図9において、吸気路63は、タイヤ10の外部からタイヤ内腔2に空気を取り込むように構成されている。具体的には、吸気路63は、リム部21のホイール径方向内側に向けて開口するように配置されている。これにより、送風装置60は、タイヤ10の外部から取り込んだ空気を、タイヤ内腔2に送風することができる。このため、送風装置60は、単にタイヤ内腔2の空気を循環させる場合に比べて、タイヤ内腔2を効率的に冷却することができる。
【0130】
図9において、吸気路63は、リム部21及びディスク部22によって区画された複数の空間3A及び3Bのうち、車両5のブレーキ52等の車両機器50を収容する空間3Aとは異なる空間3Bに開口している。これにより、送風装置60が、タイヤ10の外部から空気を取り込む際に、ブレーキ52等による放熱で熱くなった空気をタイヤ内腔2に取り込むことを未然に防ぐことができる。
【0131】
バルブ64は、吸気路63に設けられている。バルブ64は、タイヤ内腔2の空気圧に応じて吸気路63を開閉するように構成されている。バルブ64は、例えば、電磁弁を含む。バルブ64は、空気圧センサを備えていてもよい。バルブ64は、空気圧センサで計測されたタイヤ内腔2の空気圧が所定の閾値以下になった場合に、吸気路63を開くように構成されていてもよい。これにより、送風装置60は、パンク等によるタイヤ10の空気圧低下後のランフラット走行時に限り、タイヤ10の外部から取り込んだ空気を、タイヤ10のタイヤ内腔2に送風することができる。バルブ64は、電磁弁に加えて、或いは電磁弁に代えて、逆止弁を含んでいてもよい。これにより、バルブ64は、バルブ64を介してタイヤ内腔2からタイヤ10外部に空気が流出することを防止することができる。
【0132】
ただし、送風装置60の吸気路63は、タイヤ内腔2に開口するように構成されていてもよい。これにより、送風装置60は、タイヤ10の外部から空気を取り込まずにタイヤ内腔2の空気を循環させるため、吸気路63にバルブ64を取り付ける必要がない点で簡易な構成とすることができる。
【0133】
以上述べたように、本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1は、タイヤ10であって、トレッド部13と、一対のビード部11と、トレッド部13とビード部11との間に延在する一対のサイドウォール部12とを備える、タイヤ10と、タイヤ10が組み付けられているホイール20と、から成るタイヤ・ホイール組立体1であって、ホイール20のリム部21には、タイヤ10のタイヤ内腔2から吸熱可能な吸熱装置30が配置されている。かかる構成によれば、吸熱装置30が、タイヤ内腔2の温度を制御することができる。これにより、タイヤ・ホイール組立体1のタイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性を向上させることができる。
【0134】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、吸熱装置30は、ペルチェ素子を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、簡易な構造により吸熱装置30を実現して、タイヤ内腔の温度を制御することができる。
【0135】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、ホイール20は、吸熱装置30とリム部21との間に断熱材を備えていることが好ましい。かかる構成によれば、吸熱装置30において、リム部21を介した熱交換が行われることを未然に防ぎ、吸熱装置30によるタイヤ内腔2からの吸熱効果が低減することを防ぐことができる。
【0136】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、ホイール20は、ディスク部22を備え、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面は、リム部21において、リム部21及びディスク部22によって区画された複数の空間3A及び3Bのうち車両5のブレーキ52を収容する空間3Aとは異なる空間3Bに露出していることが好ましい。かかる構成によれば、吸熱装置30は、タイヤ内腔2から吸収した熱をタイヤ10の外部に放熱する際に、ブレーキ52等による放熱で熱くなった空間3Aに放熱する場合に比べて、タイヤ内腔2を効率的に冷却することができる。
【0137】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、吸熱装置30は、タイヤ内腔2の空気圧を計測する空気圧センサを備え、タイヤ内腔2の空気圧に応じて、タイヤ内腔2からの吸熱度合いを制御するように構成されていることが好ましい。かかる構成によれば、吸熱装置30は、タイヤ内腔2の空気圧に応じてタイヤ内腔2の温度を制御することができ、タイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性が更に向上する。
【0138】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向外側の表面には、ホイール径方向外側に突出する第2フィン41が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、第2フィン41は、タイヤ内腔2を流れる空気が第2フィン41を超える際に乱流を発生させ、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面における熱交換効果を更に向上させることができる。
【0139】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、第2フィン41は、ホイール幅方向に延在していることが好ましい。かかる構成によれば、第2フィン41は、タイヤ・ホイール組立体1が回転することでタイヤ内腔2に生じるホイール周方向の空気の流れが第2フィン41を超える際に効率的に乱流を発生させ、吸熱装置30のホイール径方向外側の表面における熱交換効果を更に向上させることができる。
【0140】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、リム部21に設置された吸熱装置30のホイール径方向内側の表面には、ホイール径方向内側に突出する第3フィン42が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、第3フィン42は、リム部21のホイール径方向内側を流れる空気が第3フィン42を超える際に乱流を発生させ、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面における熱交換効果を更に向上させることができる。
【0141】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、第3フィン42は、ホイール幅方向に延在していることが好ましい。かかる構成によれば、第3フィン42は、タイヤ・ホイール組立体1が回転することでリム部21のホイール径方向内側の表面に生じるホイール周方向の空気の流れが第3フィン42を超える際に効率的に乱流を発生させ、吸熱装置30のホイール径方向内側の表面における熱交換効果を更に向上させることができる。
【0142】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、タイヤ10は、一対のサイドウォール部12のそれぞれに断面三日月状のサイド補強ゴム18が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、ランフラット走行時にタイヤ10の温度が上昇することを抑制して、タイヤ10のタイヤ破壊を起こりにくくすることができる。これにより、タイヤ・ホイール組立体1のランフラット走行寿命を向上させることができる。
【0143】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、サイド補強ゴム18のタイヤ幅方向内側に位置するタイヤ内壁面には、タイヤ幅方向内側に突出する第1フィン40が設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、第1フィン40は、サイド補強ゴム18の温度が上昇することを抑制し、ランフラット走行時にタイヤ10がタイヤ破壊に至りにくくすることができる。
【0144】
本発明の一実施形態に係るタイヤ・ホイール組立体1では、リム部21には、タイヤ内腔2に送風可能な送風装置60が配置されていることが好ましい。かかる構成によれば、吸熱装置30に加え、送風装置60が、タイヤ内腔2の温度を制御することができる。これにより、タイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性をさらに向上させることができる。
【0145】
本発明の一実施形態に係るシステム4は、車両5に装着された複数のタイヤ・ホイール組立体1と、車両5に配置された制御装置53と、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々の輪荷重を測定する複数の輪荷重測定装置6と、を含むシステム4であって、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々は、タイヤ10と、タイヤ10が組み付けられているホイール20とから成り、ホイール20のリム部21には、タイヤ10のタイヤ内腔2から吸熱可能な吸熱装置30が配置されており、制御装置53は、複数の輪荷重測定装置6によって測定された複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々の輪荷重に基づいて、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々の吸熱装置30を制御する。かかる構成によれば、制御装置53が、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々の輪荷重に基づいて、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々のタイヤ内腔2の温度を制御することで、タイヤ内腔2の空気圧を制御することができる。これにより、タイヤ・ホイール組立体1のタイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性を向上させることができる。
【0146】
本発明の一実施形態に係るシステム4では、複数のタイヤ・ホイール組立体1は、車両5において第1の対角輪を構成する第1の複数のタイヤ・ホイール組立体1A及び1Dと、車両5において第2の対角輪を構成する第2の複数のタイヤ・ホイール組立体1B及び1Cと、を含み、制御装置53は、複数の輪荷重測定装置6によって測定された複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々の輪荷重に基づいて算出された、第1の対角輪の輪荷重の合計値W1と第2の対角輪の輪荷重の合計値W2との差Dを無くすように、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々の吸熱装置30を制御することが好ましい。かかる構成によれば、制御装置53が、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々の輪荷重に基づいて、複数のタイヤ・ホイール組立体1の各々のタイヤ内腔2の温度を制御することで、車両5の輪荷重のバランスを調整することができる。これにより、タイヤ内腔2の温度を制御する技術の有用性をさらに向上させることができる。
【0147】
本発明を諸図面及び実施形態に基づき説明してきたが、当業者であれば本発明に基づき種々の変形及び修正を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各実施形態に含まれる構成又は機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、各実施形態に含まれる構成又は機能等は、他の実施形態に組み合わせて用いることができ、複数の構成又は機能等を1つに組み合わせたり、分割したり、或いは一部を省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0148】
1(1A、1B、1C、1D):タイヤ・ホイール組立体、 2:タイヤ内腔、 3(3A、3B):空間、 4:システム、 5:車両、 6(6A、6B、6C、6D):輪荷重測定装置、 10:タイヤ、 11:ビード部、 12:サイドウォール部、 13:トレッド部、 14:ビードコア、 15:カーカス、 15A:カーカス本体部、 15B:カーカス折返し部、 16:ベルト、 17:ビードフィラー、 18:サイド補強ゴム、 19:インナーライナー、 20:ホイール、 21:リム部、 22:ディスク部、 23:フランジ、 24:ビードシート、 25:ウェル、 30:吸熱装置、 31:吸熱部、 32:断熱部、 33:計測部、 40:第1フィン、 41:第2フィン、 42:第3フィン、 50:車両機器、 51:ハブ、 52:ブレーキ、 53:制御装置、 60:送風装置、 61:本体、 62:排気路、 63:吸気路、 64:バルブ、 CL:赤道面、 A-A’(B-B’):仮想線、 P(P’、P’’):ピッチ、 H(H’、H’’):高さ、 W(W’、W’’):幅、 W1:第1の輪荷重の合計値、 W2:第2の輪荷重の合計値、 D:W1とW2との差
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