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特開2023-46166高炉原料の装入決定方法、装入方法決定装置および装入方法決定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046166
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】高炉原料の装入決定方法、装入方法決定装置および装入方法決定プログラム
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20230327BHJP
   C21B 7/20 20060101ALI20230327BHJP
【FI】
C21B5/00 311
C21B7/20 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154916
(22)【出願日】2021-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】三尾 浩
(72)【発明者】
【氏名】中野 薫
【テーマコード(参考)】
4K012
4K015
【Fターム(参考)】
4K012BC01
4K015GB05
4K015GB10
(57)【要約】
【課題】 炉周方向における高炉原料(コークスや鉱石)の装入量のばらつきを低減する。
【解決手段】 ベルレス式の高炉内に高炉原料を装入する方法を決定する。同一種類の高炉原料を複数回装入したときの装入開始位置、旋回シュートの旋回方向及び旋回数誤差に基づいて、高炉原料の装入量が炉周方向で相対的に多い領域の発生回数に関するパラメータを炉周方向の位置毎に算出する。次に、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布に基づいて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置として決定する。また、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布を用いて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置から互いに異なる2つの炉周方向に向かってパラメータをそれぞれ積算した2つの積算値を比較する。そして、小さい積算値を示す炉周方向を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける旋回シュートの旋回方向として決定する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回シュートの旋回によってベルレス式の高炉内に高炉原料を装入する方法を決定する高炉原料の装入決定方法であって、
同一種類の高炉原料を複数回装入したときの装入開始位置、前記旋回シュートの旋回方向及び、前記旋回シュートの設定旋回数に対する実績旋回数のずれを示す旋回数誤差に基づいて、高炉原料の装入量が炉周方向で相対的に多い領域の発生回数に関するパラメータを炉周方向の位置毎に算出し、
炉周方向の位置に応じた前記パラメータの分布に基づいて、前記パラメータが最も小さい炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置として決定するとともに、前記パラメータが最も小さい炉周方向の位置から互いに異なる2つの炉周方向に向かって前記パラメータをそれぞれ積算した2つの積算値を比較して、小さい積算値を示す炉周方向を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける前記旋回シュートの旋回方向として決定する、
ことを特徴とする高炉原料の装入決定方法。
【請求項2】
炉周方向の位置の特定範囲内で前記パラメータが最も小さいときには、前記特定範囲の両端に相当する炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置の候補として決定することを特徴とする請求項1に記載の高炉原料の装入決定方法。
【請求項3】
前記パラメータは、高炉原料の所定装入回数に対する前記発生回数の比率であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高炉原料の装入決定方法。
【請求項4】
前記旋回数誤差は、設定旋回数よりも実績旋回数が多くなり、最終旋回が炉周方向の1周を超えて高炉原料が装入される場合と、設定旋回数よりも実績旋回数が少なくなり、最終旋回が炉周方向の1周に到達せずに高炉原料が装入される場合とを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の高炉原料の装入決定方法。
【請求項5】
旋回シュートの旋回によってベルレス式の高炉内に高炉原料を装入する方法を決定する高炉原料の装入方法決定装置であって、
同一種類の高炉原料を複数回装入したときの装入開始位置、前記旋回シュートの旋回方向及び、前記旋回シュートの設定旋回数に対する実績旋回数のずれを示す旋回数誤差に基づいて、高炉原料の装入量が炉周方向で相対的に多い領域の発生回数に関するパラメータを炉周方向の位置毎に算出する演算部と、
炉周方向の位置に応じた前記パラメータの分布に基づいて、前記パラメータが最も小さい炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置として決定するとともに、前記パラメータが最も小さい炉周方向の位置から互いに異なる2つの炉周方向に向かって前記パラメータをそれぞれ積算した2つの積算値を比較して、小さい積算値を示す炉周方向を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける前記旋回シュートの旋回方向として決定する決定部と、
を有することを特徴とする高炉原料の装入方法決定装置。
【請求項6】
旋回シュートの旋回によってベルレス式の高炉内に高炉原料を装入する方法を決定するために、下記工程をコンピュータに実行させるプログラムであって、
同一種類の高炉原料を複数回装入したときの装入開始位置、前記旋回シュートの旋回方向及び、前記旋回シュートの設定旋回数に対する実績旋回数のずれを示す旋回数誤差に基づいて、高炉原料の装入量が炉周方向で相対的に多い領域の発生回数に関するパラメータを炉周方向の位置毎に算出し、
炉周方向の位置に応じた前記パラメータの分布に基づいて、前記パラメータが最も小さい炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置として決定するとともに、前記パラメータが最も小さい炉周方向の位置から互いに異なる2つの炉周方向に向かって前記パラメータをそれぞれ積算した2つの積算値を比較して、小さい積算値を示す炉周方向を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける前記旋回シュートの旋回方向として決定する、
ことを特徴とする高炉原料の装入方法決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回シュートを有するベルレス式の高炉に高炉原料を装入する方法を決定する装入決定方法、装入方法決定装置および装入方法決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の安定操業のためには、炉内のガス流れを安定させる必要がある。シュートの旋回によって高炉原料を高炉内に装入する場合において、炉周方向における高炉原料の装入量にばらつきが発生すると、炉周方向におけるガス流れにばらつきが発生してしまう。そこで、特許文献1では、高炉原料の装入チャージごとに、高炉原料の装入を開始する位置(装入開始位置)を所定量だけ円周方向(炉周方向)にシフトさせるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-336411号公報
【特許文献2】特開2018-48361号公報
【特許文献3】特開平8-188806号公報
【特許文献4】特開昭58-123808号公報
【特許文献5】特開平6-10018号公報
【特許文献6】特許第3948162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、装入開始位置を炉周方向に単にシフトさせただけでは、後述するように、炉周方向における高炉原料の装入量のばらつきを低減できないことがある。
【0005】
特許文献1に記載の発明によれば、高炉原料を装入するたびに、シュートの旋回数が同じであれば、装入開始位置を炉周方向にシフトさせることによって、炉周方向における装入量のばらつきを低減できる可能性がある。しかし、実際の装入においては、高炉原料の性状(粒度構成)などによって、高炉原料の装入を開始してから終了するまでのシュートの旋回数にばらつきが生じる。
【0006】
例えば、高炉原料を高炉内に装入するときには、所定重量の高炉原料がホッパに貯留された後、ホッパからシュートに高炉原料が供給されるが、高炉原料の粒度構成(嵩密度)が異なると、ホッパからシュートに高炉原料を供給する時間が異なってしまうため、高炉原料の装入を開始してから終了するまでの時間が異なってしまう。例えば、高炉原料が粗粒であるほど装入に時間がかかり、高炉原料が細粒であるほど装入の時間が短くなる。結果として、高炉原料の装入を開始してから終了するまでのシュートの旋回数にばらつきが発生してしまう。
【0007】
上述したようにシュートの旋回数にばらつきが発生してしまうと、装入開始位置を炉周方向にシフトさせても、期待通りに高炉原料を装入することができなくなり、炉周方向における装入量のばらつきを低減しにくくなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願第1の発明は、旋回シュートの旋回によってベルレス式の高炉内に高炉原料を装入する方法を決定する高炉原料の装入決定方法である。この装入決定方法では、同一種類の高炉原料を複数回装入したときの装入開始位置、旋回シュートの旋回方向及び、旋回数誤差に基づいて、高炉原料の装入量が炉周方向で相対的に多い領域の発生回数に関するパラメータを炉周方向の位置毎に算出する。旋回数誤差は、旋回シュートの設定旋回数に対する実績旋回数のずれを示し、設定旋回数に対して実績旋回数が多い場合と、設定旋回数に対して実績旋回数が少ない場合とが含まれる。
【0009】
次に、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布に基づいて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置として決定する。また、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布を用いて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置から互いに異なる2つの炉周方向に向かってパラメータをそれぞれ積算した2つの積算値を比較する。そして、小さい積算値を示す炉周方向を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける旋回シュートの旋回方向として決定する。
【0010】
炉周方向の位置の特定範囲内でパラメータが最も小さいときには、特定範囲の両端に相当する炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置の候補として決定することができる。上述したパラメータとして、高炉原料の所定装入回数に対する上記発生回数の比率を用いることができる。上述した旋回数誤差には、設定旋回数よりも実績旋回数が多くなり、最終旋回が炉周方向の1周を超えて高炉原料が装入される場合と、設定旋回数よりも実績旋回数が少なくなり、最終旋回が炉周方向の1周に到達せずに高炉原料が装入される場合とが含まれる。
【0011】
本願第2の発明は、旋回シュートの旋回によってベルレス式の高炉内に高炉原料を装入する方法を決定する高炉原料の装入方法決定装置であり、演算部及び決定部を有する。演算部は、同一種類の高炉原料を複数回装入したときの装入開始位置、旋回シュートの旋回方向及び、上記旋回数誤差に基づいて、高炉原料の装入量が炉周方向で相対的に多い領域の発生回数に関するパラメータを炉周方向の位置毎に算出する。
【0012】
決定部は、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布に基づいて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置として決定する。また、決定部は、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布を用いて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置から互いに異なる2つの炉周方向に向かってパラメータをそれぞれ積算した2つの積算値を比較する。そして、決定部は、小さい積算値を示す炉周方向を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける旋回シュートの旋回方向として決定する。
【0013】
本願第3の発明は、旋回シュートの旋回によってベルレス式の高炉内に高炉原料を装入する方法を決定するために、下記工程をコンピュータに実行させるプログラムである。この工程では、同一種類の高炉原料を複数回装入したときの装入開始位置、旋回シュートの旋回方向及び、上記旋回数誤差に基づいて、高炉原料の装入量が炉周方向で相対的に多い領域の発生回数に関するパラメータを炉周方向の位置毎に算出する。
【0014】
次に、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布に基づいて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける装入開始位置として決定する。また、炉周方向の位置に応じたパラメータの分布を用いて、パラメータが最も小さい炉周方向の位置から互いに異なる2つの炉周方向に向かってパラメータをそれぞれ積算した2つの積算値を比較する。そして、小さい積算値を示す炉周方向を、同一種類の高炉原料を再び装入するときにおける旋回シュートの旋回方向として決定する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、炉周方向における高炉原料の装入量のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】高炉の内部構造の一部を示す図である。
図2】高炉原料を装入する方法を決定する処理を示すフローチャートである。
図3】旋回数誤差が負の値であるときの高炉原料の最終旋回の装入状態を説明する図である。
図4】旋回数誤差が正の値であるときの高炉原料の最終旋回の装入状態を説明する図である。
図5】コークスの装入後(4チャージ後)における比率Rの分布を示す図である。
図6】鉱石の装入後(4チャージ後)における比率Rの分布を示す図である。
図7】装入方法決定装置の構成を示すブロック図である。
図8】コークスの装入に関して、実施例及び比較例における比率Rの分布を示す図である。
図9】鉱石の装入に関して、実施例及び比較例における比率Rの分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(高炉の内部構造)
本実施形態である高炉原料の装入方法では、ベルレス式の高炉(以下、単に「高炉」という)が用いられる。高炉の内部構造について、図1を用いて説明する。図1は、高炉の一部(頂部)における内部構造を示す。
【0018】
高炉1の頂部には、シュート2(旋回シュート)が設けられており、シュート2は、矢印D1又は矢印D2で示すように、旋回軸RAを中心に旋回する。矢印D1,D2に示す方向は、互いに逆方向である。旋回軸RAは、炉中心と一致している。シュート2が旋回しているとき、ホッパ(不図示)からシュート2に供給された高炉原料(コークスや鉱石)がシュート2の先端から落下して、高炉1(すなわち、炉壁3)の内部で堆積する。
【0019】
シュート2からはコークス及び鉱石がそれぞれ装入されるため、高炉1(すなわち、炉壁3)の内部では、コークス層CL及び鉱石層OLが交互に形成される。なお、1回の高炉原料の装入(所定重量の高炉原料をホッパからシュート2に供給して高炉1に装入すること)をダンプといい、高炉原料の装入の繰り返しの単位をチャージという。コークス層CLを形成するときには、1回又は複数回のダンプによってコークスが装入され、鉱石層OLを形成するときには、1回又は複数回のダンプによって鉱石が装入される。
【0020】
高炉1に高炉原料を装入するとき、シュート2は、旋回軸RAを中心に旋回するとともに、旋回軸RAに対してシュート2が傾斜する角度(傾動角という)θを変更する。
【0021】
(高炉原料の装入方法)
高炉1に高炉原料を装入する方法について、図2に示すフローチャートを用いながら説明する。以下に説明する高炉原料の装入方法によれば、各高炉原料層(コークス層CL又は鉱石層OL)について、炉周方向における装入量のばらつきを低減することができる。
【0022】
ステップS101では、高炉1に高炉原料を装入する。高炉原料の装入では、高炉原料の装入を開始する位置(以下、「装入開始位置」という)と、シュート2を旋回させる方向(以下、「旋回方向」という)とが決められる。このため、ステップS101の処理では、決められた装入開始位置及び旋回方向に基づいて、高炉原料が装入される。
【0023】
装入開始位置とは、高炉1の炉周方向における位置であり、炉周方向の1周を360[deg]としたときの角度(0~360[deg])によって規定される。ここで、装入開始位置は、炉周方向におけるシュート2の位置を基準にすることもできるし、シュート2から落下した高炉原料が高炉1内で着地する位置を基準にすることもできる。高炉原料が着地する位置は、例えば、Discrete Element Methodを用いたシミュレーション(公知文献、ISIJ International、57巻、第272-278頁)に基づいて特定することができる。また、高炉原料が着地する位置について、実際の着地位置とシミュレーションで特定された着地位置とが完全に一致する必要はない。
【0024】
旋回方向とは、本実施形態において、高炉1の頂部(図1に示す矢印D3の方向)からシュート2を見たときのシュート2の旋回方向である。ここで、シュート2が時計方向に旋回するときには、旋回方向を「右方向」とし、シュート2が反時計方向に旋回するときには、旋回方向を「左方向」とする。なお、高炉1の炉下部からシュート2を見たときのシュート2の旋回方向を、ステップS101の処理で決定される旋回方向とすることもできる。このときの旋回方向は、高炉1の頂部からシュート2を見たときのシュート2の旋回方向に対して逆の関係となる。
【0025】
ステップS102では、ステップS101の処理における高炉原料の装入状態に基づいて、旋回数誤差Erを求める。旋回数誤差Erとは、予め設定された旋回数(以下、「設定旋回数」という)Nに対する、高炉原料を実際に装入したときの旋回数(以下、「実績旋回数」という)のズレであり、下記式(1)によって表される。
【0026】
【数1】
【0027】
上記式(1)において、Erは旋回数誤差[-]、tmは実際に高炉原料の装入を開始してから装入を終了するまでの時間(以下、「実績装入時間」という)[sec]、Nは設定旋回数[旋回]、trはシュート2が1周(360[deg])だけ旋回するときの時間[sec]である。「N×tr」の値は、設定旋回数Nでシュート2を旋回させて高炉原料を装入するときの時間(以下、「予定装入時間」という)になる。
【0028】
上記式(1)によれば、設定旋回数Nを超えて高炉原料が装入されたときには、実績装入時間tmは予定装入時間(N×tr)よりも長くなるため、旋回数誤差Erは正の値[-]になる。一方、設定旋回数Nに到達せずに高炉原料が装入されたときには、実績装入時間tmが予定装入時間(N×tr)よりも短くなるため、旋回数誤差Erは負の値[-]になる。また、旋回数誤差Erの絶対値が1を超える場合もある。
【0029】
本実施形態では、実際に高炉原料の装入を開始してから装入を終了するまでの実績装入時間tmを計測し、この実績装入時間tmを基に旋回数誤差Erに換算している。ここで、シュート2の旋回速度は一定であるため、時間tr及び旋回角度360[deg]の関係に基づいて、実績装入時間tmを旋回数誤差Erに換算することができる。
【0030】
時間trは、予め測定しておくことができ、あるいは、シュート2の設定旋回速度[rpm]から、計算で求めることができ、固定された時間である。実績装入時間tmは、上述したように、実際に高炉原料の装入を開始してから装入を終了するまでの時間であり、実績装入時間tmの測定方法としては、様々な方法がある。以下、実績装入時間tmの測定方法として、2つの例を挙げる。
【0031】
第1の測定方法では、まず、高炉原料が収容されるホッパ(不図示)にロードセルを設けておく。ここでいうホッパは、高炉原料の供給経路において、シュート2に最も近い位置に配置されたホッパである。
【0032】
例えば、上下2段でホッパを配置し、上段ホッパから下段ホッパに高炉原料を供給し、下段ホッパからシュート2に高炉原料を供給する場合には、下段ホッパがシュート2に最も近いホッパとなる。また、水平方向で並列に配置された複数のホッパから集合ホッパに高炉原料を供給し、集合ホッパからシュート2に高炉原料を供給する場合には、集合ホッパがシュート2に最も近いホッパとなる。ここで、高炉原料が集合ホッパを単に通過する構造では、集合ホッパ又は並列のホッパにロードセルを設けることができる。さらに、水平方向で並列に配置された複数のホッパからシュート2に高炉原料を供給する場合には、並列に配置された複数のホッパのそれぞれがシュート2に最も近いホッパとなる。
【0033】
上述したホッパのゲートを開いたタイミング(すなわち、高炉原料の装入を開始したタイミング)において、タイマを用いた実績装入時間tmの計測を開始する。そして、ロードセルによってホッパ内の高炉原料が無くなったこと(すなわち、高炉原料の重量がセロ[t]となったこと)を検出したタイミングにおいて、タイマを用いた実績装入時間tmの計測を終了する。これにより、実績装入時間tmを測定することができる。なお、ホッパ内に高炉原料が残留し続けることにより、高炉原料の重量がゼロ[t]とならないことがある。この場合には、高炉原料の重量が変化しなくなったことを、ホッパ内の高炉原料が無くなったこととみなすことができる。
【0034】
一方、高炉原料が集合ホッパを単に通過する構造において、集合ホッパにロードセルを設けた場合、ロードセルの測定値(高炉原料の重量)は、高炉原料の移動に応じて、ゼロ[t]から上昇してゼロ[t]に戻る。ここで、実績装入時間tmの計測を開始するタイミングは、ロードセルの測定値がゼロ[t]から上昇し始めたタイミングとなり、実績装入時間tmの計測を終了するタイミングは、ロードセルの測定値が再びゼロ[t]となったタイミングである。なお、ホッパ内に高炉原料が残留し続けることにより、高炉原料の重量がゼロ[t]とならないことがある。この場合には、高炉原料の重量が変化しなくなったことを、ホッパ内の高炉原料が無くなったこととみなすことができる。
【0035】
第2の測定方法では、まず、高炉原料が収容されるホッパ(不図示)や、ホッパ以降の供給経路に音響センサを設けておく。音響センサは、高炉原料がホッパからシュート2に移動するときに発生する音を検出するものであり、この目的を達成する限りにおいて、音響センサを配置する位置を適宜決めることができる。ここでいうホッパは、上述した通り、高炉原料の供給経路において、シュート2に最も近い位置に配置されたホッパである。
【0036】
上述したホッパのゲートを開いたタイミング(すなわち、高炉原料の装入を開始したタイミング)において、タイマを用いた実績装入時間tmの計測を開始する。ここで、ホッパからシュート2に高炉原料を供給している間では、高炉原料の移動に伴って音が発生するため、この音を音響センサによって検出することができる。そして、高炉原料の移動に伴う音が発生しなくなったときには、ホッパ内の高炉原料が無くなったことを把握することができる。音響センサを用いてホッパ内の高炉原料が無くなったことを把握したタイミングにおいて、タイマを用いた実績装入時間tmの計測を終了する。これにより、実績装入時間tmを測定することができる。
【0037】
次に、旋回数誤差Erについて、図3及び図4を用いて説明する。図3及び図4は、高炉1において、炉高方向と直交する平面を示しており、高炉原料の装入を開始した位置(装入開始位置)を0[deg]としている。
【0038】
図3は、高炉原料の装入を終了したのが、設定旋回数よりも少なかった場合(-0.2旋回)の最終旋回の概略図(一例)である。すなわち、図3は、最終旋回が炉周方向の1周に到達せずに高炉原料が装入された状態を示す概略図である。
【0039】
図3に示す矢印R1は、シュート2の旋回方向(ここでは、右方向)と、高炉原料が装入された領域(装入を開始した位置から装入を終了した位置までの領域)とを示す。図3において、領域A1は、最終旋回での装入が行われず、高炉原料の装入量が少ない領域(装入量不足の領域)である。このため、領域R1は、領域A1よりも高炉原料の装入量が多くなる。図3に示す例では、実績装入時間tmが予定装入時間(N×tr)よりも短くなるため、上記式(1)から算出される旋回数誤差Erは負の値を示す。なお、実績装入時間tmが予定装入時間(N×tr)と一致する場合には、旋回数誤差Erが0[-]となる。
【0040】
図4は、高炉原料の装入を終了したのが、設定旋回数よりも多かった場合(+0.1旋回)の最終旋回の概略図(一例)である。すなわち、図4は、最終旋回が炉周方向の1周を超えて高炉原料が装入された状態を示す概略図である。
【0041】
図4に示す矢印R2は、シュート2の旋回方向(ここでは、右方向)と、高炉原料が装入された領域(装入を開始した位置から装入を終了した位置までの領域)とを示す。図4において、領域A2は、最終旋回での高炉原料の装入において、高炉原料の装入が重複された領域であり、高炉原料が過多に装入されている領域(装入量過多の領域)である。図4に示す例では、実績装入時間tmが予定装入時間(N×tr)よりも長くなるため、上記式(1)から算出される旋回数誤差Erは正の値を示す。
【0042】
上述した説明では、時間tm,trと設定旋回数Nに基づいて旋回数誤差Erを求めているが、これに限るものではない。例えば、カメラを用いて高炉1の内部を撮影し、高炉原料が最初に落下した位置と、高炉原料が最後に落下した位置とを画像解析によって特定することができる。これらの位置に基づいて、旋回数誤差Erを求めることもできる。
【0043】
ステップS103では、所定回数Ndのチャージだけ、高炉原料の装入が行われた否かを判別する。所定回数Ndは、適宜決めることができ、例えば、1~10とすることができる。また、所定回数Ndは、後述するステップS104の処理によって比率Rの分布を求める回数に応じて、変更することができる。例えば、後述するステップS104の処理によって最初に比率Rの分布を求めるとき、所定回数Ndのチャージでは、予め決められたルール(装入開始位置及び旋回方向)に基づいて、コークス及び鉱石をそれぞれ装入することができる。また、比率Rの分布を求めた後では、高炉原料を装入するたびに所定回数Ndに加えて、後述するステップS104の処理を行うことができる。
【0044】
上述したルール(装入開始位置及び旋回方向)について、例えば、所定回数Ndが4である場合には、下記表1に示すように、コークス及び鉱石のそれぞれについて、装入開始位置及び旋回方向を決めることができる。
【0045】
【表1】
【0046】
上記表1では、コークス及び鉱石の順に交互に装入し、高炉原料(コークス及び鉱石)を変更するたびに、装入開始位置を所定の炉周方向(例えば、図3,4に示す時計方向)に90[deg]だけずらしている。ここで、1回目及び3回目のチャージにおいて、コークスの装入開始位置は同一(0[deg])である。一方、旋回方向については、装入開始位置が0[deg]から0[deg]に戻るときに、旋回方向を変更している。ここで、1回目及び2回目のチャージでは、コークス及び鉱石を装入するときの旋回方向を右方向とし、3回目及び4回目のチャージでは、コークス及び鉱石を装入するときの旋回方向を左方向に変更している。
【0047】
ステップS103の処理において、所定回数Ndのチャージが完了していない場合には、ステップS101の処理に戻り、所定回数Ndのチャージが完了するまで、ステップS101からステップS103までの処理を繰り返す。所定回数Ndのチャージが完了すると、ステップS104の処理に進む。
【0048】
ステップS104では、ステップS101の処理(高炉原料の装入)における装入開始位置及び旋回方向と、ステップS102の処理で求められた旋回数誤差Erとに基づいて、高炉1の炉周方向における位置(以下、「炉周位置」という)毎に比率Rを求める。ここで、比率Rとは、総装入回数Ntに対する発生回数Nexの比率[-]であり、下記式(2)で表される。比率Rは、コークス及び鉱石のそれぞれについて求められる。
【0049】
【数2】
【0050】
総装入回数Ntとは、所定回数Ndで高炉原料が装入された回数の累積値である。すなわち、高炉原料(コークスや鉱石)が装入されるたびに、総装入回数Ntがカウントアップされる。ここで、総装入回数Ntは、所定回数Ndに連動する。
【0051】
発生回数Nexとは、高炉原料の装入において、図3、4で説明したように装入量が炉周方向で相対的に多くなっている領域が発生した回数である。図3、4から分かる通り、装入量が多くなっている領域(図3の領域R1、あるいは、図4の領域A2)は、炉周位置によって特定できるため、炉周位置毎に発生回数Nexをカウントすることができる。例えば、36[deg]の炉周位置において、装入量が相対的に多い領域が存在する場合には、36[deg]の炉周位置における発生回数Nexをカウントアップする。一方、36[deg]の炉周位置において、装入量が相対的に多い領域が存在しない場合には、36[deg]の炉周位置における発生回数Nexはカウントアップされない。なお、カウントアップするときの炉周位置の間隔は任意に設定することができる。
【0052】
このように、炉周位置毎に発生回数Nexをカウントすることにより、炉周位置毎に比率Rを求めることができる。これにより、炉周位置に応じた比率Rの分布(以下、単に「比率Rの分布」ということがある)が得られる。
【0053】
1回のチャージでは、このチャージでの旋回数誤差Erに基づいて、図3図4に示す状態を判断することができる。例えば、旋回数誤差Erが正の値である場合には、図4に示す領域(装入量過多)A2が発生していることを把握できる。そして、装入開始位置及び旋回方向を考慮すれば、炉周方向における領域(装入量過多)A2の位置を把握できる。炉周方向における領域(装入量過多)A2の位置は、炉周方向における領域(装入量過多)A2の両端に相当する2つの炉周位置によって規定することができる。この2つの炉周位置の間(すなわち、領域(装入量過多)A2)に含まれる炉周位置では、上述したように、発生回数Nexがカウントアップされる。
【0054】
一方、旋回数誤差Erが負の値である場合には、図3に示す領域R1において、相対的に装入量が多くなっていることとなるため、領域R1が含まれる炉周位置では、上述したように、発生回数Nexがカウントアップされる。
【0055】
ステップS105では、ステップS104の処理で求められた比率Rの分布に基づいて、次回に装入される高炉原料について、装入開始位置及び旋回方向を決定する。上述したように、比率Rの分布は、コークス及び鉱石のそれぞれで求められるため、装入開始位置及び旋回方向は、コークス及び鉱石のそれぞれについて決定される。以下、装入開始位置及び旋回方向を決定する方法について説明する。
【0056】
まず、比率Rの分布において、最も低い比率Rに対応した炉周位置を特定する。ここで、上記式(2)から分かる通り、比率Rが取り得る値は0~1[-]であるため、最も低い比率Rは0[-]となることがある。また、高炉原料の装入状態によっては、最も低い比率Rが0[-]よりも高い値を示すこともある。
【0057】
最も低い比率Rに対応した炉周位置が1つである場合には、この炉周位置を装入開始位置として決定する。一方、特定の炉周位置の範囲内で比率Rが最も低い場合には、この炉周位置の範囲のうち、両端に相当する炉周位置が装入開始位置の候補として決定される。
【0058】
なお、最も低い比率Rを示す炉周位置の範囲が複数存在する場合には、炉周位置の範囲外における比率Rを比較し、この比率Rが最も低くなる炉周位置の範囲を特定する。ここで、炉周位置の範囲外における比率Rを比較する場合には、炉周位置の範囲に対して炉周方向の両側で隣り合う所定範囲に含まれる比率Rを積算し、この比率Rの積算値について、複数の炉周位置の範囲で比較すればよい。そして、特定された炉周位置の範囲のうち、両端に相当する炉周位置が装入開始位置の候補として決定される。
【0059】
次に、比率Rの分布において、装入開始位置と、この装入開始位置から炉周方向(右方向)に所定角度Adだけずれた炉周位置との間における比率Rの積算値(以下、「第1積算値」という)を求める。また、装入開始位置と、この装入開始位置から炉周方向(左方向)に所定角度Adだけずれた炉周位置との間における比率Rの積算値(以下、「第2積算値」という)を求める。第1積算値及び第2積算値を比較して、少ない積算値を特定する。特定された積算値を求めたときの炉周方向(上記右方向又は上記左方向)が、次回の高炉原料を装入するときのシュート2の旋回方向として決定される。
【0060】
上述したように、装入開始位置の候補を決定したときには、各装入開始位置(候補)について、上述した第1積算値及び第2積算値を求める。そして、すべての装入開始位置(候補)の第1積算値及び第2積算値のなかから、最も少ない積算値を特定する。最も少ない積算値を求めたときの装入開始位置(候補)が、次回の高炉原料を装入するときの装入開始位置として決定される。また、最も少ない積算値を求めたときの炉周方向(上記右方向又は上記左方向)が、次回の高炉原料を装入するときのシュート2の旋回方向として決定される。
【0061】
上述した所定角度Adは予め決めておけばよく、例えば、90[deg]とすることができる。また、所定角度Adでは、比率Rの積算値の多少を決めることができない場合には、比率Rの積算値の多少を決めることができるまで、所定角度Adを段階的に広げることができる。例えば、所定角度Adが90[deg]では、比率Rの積算値の多少を決めることができない場合には、比率Rの積算値の多少を決めることができるまで、所定角度Adを145[deg]、180[deg]と段階的に広げることができる。
【0062】
ステップS105の処理において、装入開始位置及び旋回方向を決定したときには、決定した装入開始位置及び旋回方向に基づいて、次回の高炉原料の装入を行う。なお、上述したように、装入開始位置を炉周方向におけるシュート2の位置とした場合において、シュート2から落下する高炉原料の移動軌跡のばらつきや、シュート2の位置のばらつきなどを考慮すると、高炉原料を着地させる位置は、決定した装入開始位置と完全に一致している必要は無い。高炉原料を着地させる位置と、決定した装入開始位置とのずれ(炉周方向のずれ)は、許容範囲内にあればよい。この許容範囲は、例えば、決定した装入開始位置における炉周方向の全長の20%(角度として72[deg])以下の範囲内とすることができる。
【0063】
次に、装入開始位置及び旋回方向を決定するときの具体例について、図5及び図6を用いて説明する。図5は、4回のチャージを行った後のコークスに関する比率Rの分布を示し、図6は、4回のチャージを行った後の鉱石に関する比率Rの分布を示す。図5及び図6において、横軸は高炉の炉周位置[deg]であり、縦軸は比率R[-]である。なお、図5及び図6は、後述する実施例で得られた比率Rの分布である。
【0064】
まず、図5に示す比率Rの分布に基づいて、次回のコークスを装入するときの装入開始位置及び旋回方向を決定する方法について説明する。
【0065】
図5に示す比率Rの分布では、比率Rが0.5[-]である炉周位置の範囲(約9~約81[deg])や、比率Rが0.25[-]である炉周位置の範囲(約153~約351[deg])が存在する。比率Rが0.5[-]であることは、4回のチャージのうち、2回のチャージにおいて、図3に示す領域R1、あるいは、図4に示す領域(装入量過多)A2が発生したことを意味する。また、比率Rが0.25[-]であることは、4回のチャージのうち、1回のチャージにおいて、図3に示す領域R1、図4に示す領域(装入量過多)A2が発生したことを意味する。
【0066】
図5に示す比率Rの分布では、比率Rが0[-](最低値)である炉周位置の範囲(約117~135[deg])が存在する。この炉周位置の範囲の両端に相当する炉周位置(117[deg])P1及び炉周位置(135[deg])P2が装入開始位置の候補として決定される。装入開始位置の候補を決定した後、各候補を基準として、旋回方向を右方向及び左方向のいずれにしたほうが、比率Rの積算値を少なくできるかを判断することにより、装入開始位置及び旋回方向を決めることができる。
【0067】
炉周位置(117[deg])P1を装入開始位置として仮定したとき、図5に示す比率Rの分布から分かる通り、炉周位置P1からマイナス側(図5の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算するよりは、炉周位置P1からプラス側(図5の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算したほうが、比率Rの積算値を少なくできることが分かる。一方、炉周位置(135[deg])P2を装入開始位置として仮定したとき、図5に示す比率Rの分布から分かる通り、炉周位置P2からプラス側(図5の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算するよりは、炉周位置P2からマイナス側(図5の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算したほうが、比率Rの積算値を少なくできることが分かる。
【0068】
次に、炉周位置(117[deg])P1からプラス側(図5の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算する場合と、炉周位置(135[deg])P2からマイナス側(図5の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算する場合とで、どちらが比率Rの積算値を少なくできるかを判断する。図5から分かる通り、炉周位置(135[deg])P2からマイナス側(図5の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算するよりは、炉周位置(117[deg])P1からプラス側(図5の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算するほうが、比率Rの積算値を少なくできる。具体的には、炉周位置(135[deg])P2からマイナス側(図5の左側,旋回方向が左方向)に90[deg]の範囲内で比率Rを積算したときの積算値が0.75であるのに対して、炉周位置(117[deg])P1からプラス側(図5の右側,旋回方向が右方向)に90[deg]の範囲内で比率Rを積算したときの積算値が1.25である。
【0069】
このため、図5に示す比率Rの分布によれば、装入開始位置を炉周位置(117[deg])P1として決定し、旋回方向を右方向として決定することができる。すなわち、次回のコークスの装入においては、装入開始位置である炉周位置(117[deg])P1でシュート2の旋回を開始するとともに、シュート2を右方向に旋回させる。
【0070】
次に、図6に示す比率Rの分布に基づいて、次回の鉱石を装入するときの装入開始位置及び旋回方向を決定する方法について説明する。
【0071】
図6に示す比率Rの分布では、比率Rが0.5[-]である炉周位置の範囲(約63~約117[deg])や、比率Rが0.25[-]である炉周位置の範囲(約9~45[deg],135~約189[deg],約243~約351[deg])が存在する。比率Rが0.5[-]であることは、4回のチャージのうち、2回のチャージにおいて、図3に示す領域R1、あるいは、図4に示す領域(装入量過多)A2が発生したことを意味する。また、比率Rが0.25[-]であることは、4回のチャージのうち、1回のチャージにおいて、図3に示す領域R1、あるいは、図4に示す領域(装入量過多)A2が発生したことを意味する。
【0072】
図6に示す比率Rの分布では、比率Rが0[-](最低値)である炉周位置の範囲(約207~225[deg])が存在する。この炉周位置の範囲の両端に相当する炉周位置(210[deg])P3及び炉周位置(225[deg])P4が装入開始位置の候補として決定される。装入開始位置の候補を決定した後、各候補を基準として、旋回方向を右方向及び左方向のいずれにしたほうが、比率Rの積算値を少なくできるかを判断することにより、装入開始位置及び旋回方向を決めることができる。
【0073】
炉周位置(210[deg])P3を装入開始位置として仮定したとき、図6に示す比率Rの分布から分かる通り、炉周位置P3からマイナス側(図6の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算するよりは、炉周位置P3からプラス側(図6の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算したほうが、比率Rの積算値を少なくできることが分かる。一方、炉周位置(225[deg])P4を装入開始位置として仮定したとき、図6に示す比率Rの分布から分かる通り、炉周位置P4からプラス側(図6の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算するよりは、炉周位置P4からマイナス側(図6の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算したほうが、比率Rの積算値を少なくできることが分かる。
【0074】
次に、炉周位置(210[deg])P3からプラス側(図6の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算する場合と、炉周位置(225[deg])P4からマイナス側(図6の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算する場合とで、どちらが比率Rの積算値を少なくできるかを判断する。図6から分かる通り、炉周位置(225[deg])P4からマイナス側(図6の左側,旋回方向が左方向)で比率Rを積算するよりは、炉周位置(210[deg])P3からプラス側(図6の右側,旋回方向が右方向)で比率Rを積算するほうが、比率Rの積算値を少なくできる。
【0075】
このため、図6に示す比率Rの分布によれば、装入開始位置を炉周位置(210[deg])P3として決定し、旋回方向を右方向として決定することができる。すなわち、次回の鉱石の装入においては、装入開始位置である炉周位置(210[deg])P3でシュート2の旋回を開始するとともに、シュート2を右方向に旋回させる。
【0076】
本実施形態によれば、比率Rの分布から決定された装入開始位置及びシュート2の旋回方向に基づいて高炉原料の装入を行うことにより、炉周方向における装入量のばらつきを低減することができる。本実施形態のように高炉原料を装入すれば、比率Rが低い領域(図5図6に示す比率Rが0[-]である領域)に対して高炉原料を積極的に装入することができ、炉周方向における装入量のばらつきを低減することができる。そして、このような高炉原料の装入を繰り返すたびに、炉周方向における装入量を均一化することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、炉周方向の位置毎に比率Rを求めているが、これに限るものではない。上述したように、装入量が相対的に多い領域を把握できればよいため、比率Rの代わりに、例えば、上述した発生回数Nexを用いることもできる。すなわち、比率Rの分布の代わりに、炉周方向の位置に応じた発生回数Nexの分布を用いて、次回の高炉原料を装入するときの装入開始位置とシュート2の旋回方向を決めることができる。ここで、比率Rや発生回数Nexは、本発明における「発生回数に関するパラメータ」に相当する。
【0078】
図2に示す処理は、図7に示す装入方法決定装置10の動作によって実現可能である。装入方法決定装置10は、図2に示す各処理を行う部分を有していればよい。具体的には、装入方法決定装置10は、図7に示すように、取得部11と、演算部12と、決定部13とを有していればよい。
【0079】
取得部11は、旋回数誤差Erや比率Rの分布を算出するための情報を取得する。旋回数誤差Erを算出するための情報は、時間tm,tr、設定旋回数Nが含まれる。比率Rの分布を算出するための情報は、高炉原料を装入したときの装入開始位置、旋回方向及び旋回数誤差Erである。
【0080】
演算部12は、上記式(1)に基づいて旋回数誤差Erを算出したり、装入開始位置、旋回方向及び旋回数誤差Erに基づいて比率Rの分布を算出したりする。決定部13は、比率Rの分布に基づいて装入開始位置及びシュート2の旋回方向を決定する。
【0081】
上述した装入方法決定装置10の動作は、プログラム(本発明である装入方法決定プログラム)によって実現可能である。このプログラムの実現として、具体的には、上述した各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムを補助記憶装置に格納しておき、CPU等の制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出されたプログラムを制御部が実行することにより、各機能を動作させることができる。各機能は、1つの制御装置で動作させることもできるし、互いに接続された複数の制御装置によって動作させることもできる。
【0082】
上述したプログラムは、コンピュータで読取可能な記録媒体に記録された状態において、コンピュータに提供することも可能である。記録媒体としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。
【実施例0083】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0084】
実炉の1/3のサイズの試験炉を用いて、高炉原料の装入試験を行った。実施例及び比較例による高炉原料の装入量のばらつきを評価するために、以下に説明する前処理を行った。前処理を行った後、実施例及び比較例における高炉原料の装入を行った。
【0085】
(前処理)
下記表2に示すように、装入開始位置及び旋回方向を変更しながら、高炉原料(コークス及び鉱石)の装入を4チャージ行った。下記表2には、各高炉原料の装入時における旋回数誤差Erも示す。下記表2は、装入開始位置及び旋回方向に関して、上記表1と同じである。
【0086】
【表2】
【0087】
上記表2に示す高炉原料の装入を行った後、コークス及び鉱石のそれぞれについて、比率Rの分布を算出した。コークスに関する比率Rの分布は、図5に示す通りであり、鉱石に関する比率Rの分布は、図6に示す通りであった。
【0088】
(実施例)
上述した前処理となる装入を行った後において、コークスに関する比率Rの分布(図5参照)に基づいて、コークスを装入するときの装入開始位置及びシュート2の旋回方向を決定した。また、鉱石に関する比率Rの分布(図6参照)に基づいて、鉱石を装入するときの装入開始位置及びシュート2の旋回方向を決定した。図5及び図6を用いて上記で説明したように、次回のコークスを装入するときには、装入開始位置が炉周位置117[deg]となり、シュート2の旋回方向が右方向となる。また、次回の鉱石を装入するときには、装入開始位置が炉周位置207[deg]となり、シュート2の旋回方向が右方向となる。下記表3には、実施例で決定された装入開始位置及び旋回方向を示す。また、下記表3には、高炉原料を装入したときの実績の旋回数誤差Erも示す。
【0089】
【表3】
【0090】
(比較例)
上述した前処理となる装入を行った後において、上記表2に示すルールに従ってコークス及び鉱石を順に装入した。上記表2に示すルールによれば、次回のコークスを装入するときにおいて、装入開始位置を0[deg]とし、旋回方向を右方向とした。また、鉱石を装入するときにおいて、装入開始位置を90[deg]とし、旋回方向を右方向とした。下記表4には、比較例における装入開始位置及び旋回方向を示す。また、下記表4には、高炉原料を装入したときの実績の旋回数誤差Erも示す。
【0091】
【表4】
【0092】
図8には、コークスの装入に関して、上述した前処理、実施例及び比較例における比率Rの分布を示す。前処理に関する比率Rの分布は、図5に示す比率Rの分布と同じである。実施例に関する比率Rの分布は、上述した実施例で説明したコークスの装入を行った後の比率Rの分布である。比較例に関する比率Rの分布は、上述した比較例で説明したコークスの装入を行った後の比率Rの分布である。
【0093】
図8から分かるように、比較例では、前処理に対して、比率Rのばらつきが増加した。一方、実施例では、前処理に対して、比率Rのばらつきが減少した。このため、本実施例によれば、炉周方向におけるコークスの装入量のばらつきを低減できることが分かる。
【0094】
図9には、鉱石の装入に関して、上述した前処理、実施例及び比較例における比率Rの分布を示す。前処理に関する比率Rの分布は、図6に示す比率Rの分布と同じである。実施例に関する比率Rの分布は、上述した実施例で説明した鉱石の装入を行った後の比率Rの分布である。比較例に関する比率Rの分布は、上述した比較例で説明した鉱石の装入を行った後の比率Rの分布である。
【0095】
図9から分かるように、比較例では、前処理に対して、比率Rのばらつきが増加した。一方、実施例では、前処理に対して、比率Rのばらつきが減少した。このため、本実施例によれば、炉周方向における鉱石の装入量のばらつきを低減できることが分かる。
【符号の説明】
【0096】
1:高炉、2:シュート、3:炉壁、RA:旋回軸、CL:コークス層、
OL:鉱石層、θ:傾動角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9