(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046305
(43)【公開日】2023-04-03
(54)【発明の名称】接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20230327BHJP
【FI】
H01L21/60 311Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149425
(22)【出願日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2021154924
(32)【優先日】2021-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】弁理士法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 慎一
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
(72)【発明者】
【氏名】篠原 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
【テーマコード(参考)】
5F044
【Fターム(参考)】
5F044KK02
5F044KK03
5F044KK04
5F044KK06
5F044LL09
5F044PP15
5F044PP17
5F044PP19
5F044QQ02
5F044RR18
5F044RR19
(57)【要約】
【課題】微細な電子部品と基板とを導電粒子含有フィルムを用いて接続する。
【解決手段】最長辺の長さが600μm以下又は個々の電極の面積が1000μm
2以下の微細な電子部品1と、該電子部品1の電極2に対応した電極21を有する基板20とが電気的に接続されている接続構造体40の製造方法が、電子部品1と基板20を、絶縁性樹脂層12に導電粒子11が保持された導電粒子含有フィルム10を介して重ね合わせる重ね合わせ工程、導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせた電子部品と基板とを加圧しつつ導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層12を硬化させる加圧硬化工程を有する。導電粒子含有フィルム10の硬化特性は、該導電粒子含有フィルム10を40℃から80℃に加熱した場合の加熱開始から絶縁性樹脂層12の硬化開始までの時間が10分以上である。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細な電子部品と、該電子部品の電極に対応した電極を有する基板の対応する電極同士が電気的に接続されている接続構造体の製造方法であって、
電子部品と基板とを、絶縁性樹脂層に導電粒子が保持された導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせる重ね合わせ工程、
導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせた電子部品と基板とを加圧しつつ導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層を硬化させる加圧硬化工程、
を有し、
前記導電粒子含有フィルムの硬化特性は、該導電粒子含有フィルムを40℃から80℃に加熱した場合の加熱開始から絶縁性樹脂層の硬化開始までの時間が10分以上である
製造方法。
【請求項2】
重ね合わせ工程と加圧硬化工程との間に、導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせた電子部品と基板とを、加圧硬化工程における加圧力より小さい加圧力で加圧することにより、電子部品の電極と基板の電極とで導電粒子を挟持するプレ加圧工程を有する請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
導電粒子含有フィルムをレーザーリフトオフ法で電子部品又は基板に保持する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
電子部品をレーザーリフトオフ法で基板上に重ね合わせる請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
導電粒子含有フィルムを40℃から80℃に加熱した場合の加熱開始から絶縁性樹脂層の硬化開始までの時間を、電子部品と基板の重ね合わせ工程に要する時間等に応じて調整する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
導電粒子含有フィルムにおいて、導電粒子が規則的に配列している請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項7】
導電粒子含有フィルムにおける導電粒子は、各電極で1個以上3個未満の導電粒子が捕捉される粒子密度である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項8】
絶縁性樹脂層が、最低溶融粘度の異なる2層の絶縁性樹脂層の積層体で形成されている請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項9】
電子部品が半導体部品である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項10】
導電粒子含有フィルムを介して基板と重ね合わせる半導体部品が半導体加工用フィルムに貼着されている請求項9記載の製造方法。
【請求項11】
半導体部品に対する導電粒子含有フィルムの粘着力が、半導体部品に対する半導体加工用フィルムの粘着力よりも大きい請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
最長辺の長さが600μm以下の電子部品又は個々の電極の面積が1000μm2以下の電子部品と、該電子部品の電極に対応した電極を有する基板が絶縁性樹脂で接着され、該電子部品と基板の対応する電極同士が、それらの間に挟持された1個以上3個未満の導電粒子によって電気的に接続されている接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が手で取り扱うことが困難な微細な電子部品を確実に基板上に電気的に接続する接続構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な電子部品が、例えばディスプレイ用途で開発されている(特許文献1、特許文献2)。このような微細な電子部品は、一般に、ダイシングツールを用いてウエハから分離されることにより製造され、ドライバ回路が形成されたガラス基板にワイヤボンディング等によって搭載されている。
【0003】
一方、ICチップ等の電子部品を基板に接続する場合に、導電性の粒子を絶縁性樹脂層に保持させた導電粒子含有フィルムが使用されている。この導電粒子含有フィルムを介して電子部品と基板を接続すると、導電粒子含有フィルムはフィルム厚方向のみに導通性を発揮するので異方性導電フィルムとも称されている。近年、電子部品の小型化が進んでおり、電子部品の小型化に導電粒子含有フィルムを対応させるべく、導電粒子含有フィルムにおける絶縁性樹脂層の層厚と導電粒子の粒子径との比を特定の比率にしたり、導電粒子を規則的に配列したりすることや、導電粒子を含有する樹脂層に対して粘着性が大きく硬度が小さい樹脂層を、導電粒子を含有する樹脂層に積層することが行われている(特許文献3、特許文献4)。これらにより、電子部品上に形成されたバンプ等の電極列における電極の面積が1000μm2(例:100×10μm)程度の微小サイズの電子部品であっても、さらにはマイクロサイズの半導体の電極であっても導電粒子含有フィルムを用いて基板に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-521859号公報
【特許文献2】特表2014-533890号公報
【特許文献3】特開2018-81906号公報
【特許文献4】特許6688374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子部品に求められる役割は多様化しており、従来、ワイヤボンディング等によって搭載されていた微細な半導体素子だけでなく、より一層微細な電子部品を、導電粒子含有フィルムを用いて基板に接続することが必要とされ、それに伴う課題が発生している。
【0006】
例えば、従来、導電粒子含有フィルムを用いた異方性導電接続では、電気的特性の安定性の点から、一つの電極における導電粒子の捕捉数を3個以上、好ましくは10個以上とすることが求められている。しかしながら、例えば、個々の電極の面積が1000μm2以下又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下の微細な電子部品を異方性導電接続する場合、電極自体が小型化されているため、一つの電極あたりの導電粒子の捕捉数を1~3個とするなどの、従前の異方性導電接続における仕様では対応できないことを可能とすることが必要とされる状況もある。
【0007】
また、電子部品が極めて微小になることで、基板に接続する電子部品の個数も増えることから、導電粒子含有フィルムを、粘着、転写、レーザーリフトオフ法による着弾等で基板に設ける工程(以下、仮貼り工程ともいう)、基板に設けた導電粒子含有フィルムに電子部品を搭載する重ね合わせる工程、導電粒子含有フィルムを介して電子部品を基板に押圧し、導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層を加圧硬化又は加熱加圧硬化させて電子部品の接続を完了する硬化工程からなる接続工程の難易度が高くなり、接続を精密に行うために長時間を必要とし、接続が完了する前に絶縁性樹脂層の硬化が不用に進行してしまうことが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、個々の電極の面積が1000μm2以下又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下の微細な電子部品と基板とを導電粒子含有フィルムを用いて精密かつ確実に接続できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、基板に導電粒子含有フィルムを設け、微細な電子部品と基板とを導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせ、重ね合わせた電子部品と基板を加圧しつつ導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層を硬化させてこれらを接続するにあたり、導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層として、40℃から80℃に加熱しても加熱開始から硬化開始までに10分以上かかるものを使用すると、仮貼りから接続に至る間に絶縁性樹脂層が不用に硬化開始することを防止でき、電子部品と基板とを精密かつ確実に接続できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は、微細な電子部品と、該電子部品の電極に対応した電極を有する基板の対応する電極同士が電気的に接続されている接続構造体の製造方法であって、
電子部品と基板とを、絶縁性樹脂層に導電粒子が保持された導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせる重ね合わせ工程、
導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせた電子部品と基板とを加圧しつつ導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層を硬化させる加圧硬化工程、
を有し、
前記導電粒子含有フィルムの硬化特性は、該導電粒子含有フィルムを40℃から80℃に加熱した場合の加熱開始から絶縁性樹脂層の硬化開始までの時間が10分以上である
製造方法を提供する。
【0011】
また本発明は、微細な電子部品と、該電子部品の電極に対応した電極を有する基板が絶縁性樹脂で接着され、該電子部品と基板の対応する電極同士が、それらの間に挟持された1個以上3個未満の導電粒子によって電気的に接続されている接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、導電粒子含有フィルムとして、導電粒子含有フィルムを40℃から80℃に加熱した場合の加熱開始から絶縁性樹脂層の硬化開始までの時間が10分以上となるものを使用するので、導電粒子含有フィルムを基板に設け、導電粒子含有フィルムを介して微細な電子物品を基板に重ね合わせ、絶縁性樹脂層を加圧硬化させる間に絶縁性樹脂層が不用に硬化開始することが防止される。したがって、個々の電極の面積が1000μm2以下又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下の微細な電子部品でも基板に精確に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、半導体加工用フィルム上に保持された半導体部品の断面図である。
【
図2A】
図2Aは、導電粒子含有フィルムの粒子配置を示す平面図である。
【
図3A】
図3Aは、半導体加工用フィルム上の半導体部品に剥離フィルムを貼付した状態の断面図である。
【
図3B】
図3Bは、半導体部品から半導体加工用フィルムを剥離した状態の断面図である。
【
図4】
図4は、剥離フィルムに貼付した半導体部品に、基板上に配置した導電粒子含有フィルムをアライメントした状態の断面図である。
【
図5】
図5は、半導体部品と基板とを導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせ、剥離フィルムを剥離除去した状態の断面図である。
【
図6】
図6は、剥離フィルムを剥離した半導体部品と基板とを半導体部品側から加圧ツールで加圧している状態の断面図である。
【
図7】
図7は、第1加圧により半導体部品の電極と基板の電極で導電粒子が挟持された状態の断面図である。
【
図8】
図8は、第2加圧により半導体部品の電極と基板の電極が電気的に接続された状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の接続構造体の製造方法を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0015】
<電子部品>
本発明の方法で接続する電子部品は、例えば、個々の電極の面積が1000μm2以下、500μm2以下、更には200μm2以下、又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下、300μm以下、150μm以下、更には50μm以下の微小な電子部品である。このような電子部品としては、一般的なドライバICをはじめとする各種IC、光半導体素子、熱電変換素子(ペルチェ素子)、スイッチング素子等の半導体部品や、圧電素子、抵抗器などをあげることができ、中でも光半導体素子として、チップの一辺が50~200μm程度のミニLEDやチップの一辺が50μm未満のμLEDをあげることができる。
【0016】
図1は、本発明の方法で接続する電子部品1の一例として、複数の半導体部品が半導体加工用フィルム3に保持されている状態の断面図である。半導体加工用フィルム3は、公知のダイシングテープ、ダイボンディングテープ、剥離フィルム等を包含する。
【0017】
本発明において、電子部品1の電極の形成面にある複数の電極は、基板の電極と接続するに際して、高さが揃っていることが好ましい。
【0018】
本発明の方法で接続する電子部品1は微細であり、例えば個々の電極の面積が1000μm2以下、500μm2以下、更には200μm2以下、又は電子部品1の最長辺の長さが600μm以下、300μm以下、150μm以下、更には50μm以下である。電子部品1の最短辺は各電極に少なくとも1個の導電粒子が確実に挟持される大きさであることが必要であり、したがって、最短辺は導電粒子の粒子径にマージンを加えた長さとすることが好ましい。よって、本発明の方法で接続する電子部品1の最短辺は5μm以上とすることが好ましい。
【0019】
本発明の方法で接続する電子部品1の好ましい厚さは、該電子部品1の材質や強度、電極の高さ、接続の条件等によって変わるが、例えば、電子部品の個々の電極の面積が1000μm2以下又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下の場合、その厚さを200μm以下、さらには50μm以下とすることができ、最長辺の長さが300μm以下の場合、厚さを50μm以下とすることができ、最長辺の長さが150μm以下の場合、厚さを30μm以下とするこができ、最長辺の長さが50μm以下の場合、厚さを20μm以下、さらには15μm以下、特に10μm以下とすることができる。電子部品の最長辺の長さと厚みの比率が値1に近くなれば、接続時の押し込みにより電子部品に横ズレが生じることが懸念されるためである。なお、この場合に厚さには、導電粒子を介した電気的接続に用いられる電極の高さは含まれない。
【0020】
電子部品1の電極2の高さは実質的にゼロでもよいが、加圧硬化工程や、重ね合わせ工程後加圧硬化工程前に必要に応じて行う加圧工程において、電極以外が加圧されないようにし、加圧により導電粒子が効率よく電極に押し込まれるようにする点から、電極2の高さは導電粒子の平均粒子径の1倍より高いことが好ましい。一方、電極2の高さが過度に高いと電極間に充填される樹脂量が不用に多くなるので電極2の高さは導電粒子の平均粒子径の3倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましい。もしくは、10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。
【0021】
また、
図1には、実施例として半導体加工用フィルム3に保持されている半導体部品1を使用する例を示したが、本発明の方法において、基板との接続に供する電子部品は、半導体加工用フィルムに保持されていなくてもよい。
【0022】
<基板>
本発明において電子部品1を接続する基板20としては、ガラス基板、プラスチック基板などの透明基板でもよく、不透明な基板でもよい。また、基板20としては、セラミック基板、リジットな樹脂基板、FPC等の公知の電子部品を挙げることができる。
【0023】
<導電粒子含有フィルム>
図2Aは、本発明で使用する導電粒子含有フィルム10の一例の平面図であり、
図2Bはその断面図である。導電粒子含有フィルム10では、導電粒子11が絶縁性樹脂層12に保持されている。
【0024】
(導電粒子)
導電粒子含有フィルム10において絶縁性樹脂層12に保持されている導電粒子11としては、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子、表面に絶縁性微粒子が付着している金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。また、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来さない絶縁処理が施されていてもよい。
【0025】
(導電粒子の粒子径)
導電粒子11の粒子径は、電極が微小でも1個以上の導電粒子が確実に各電極に捕捉されるようにするため、10μm未満とし、好ましくは4μm以下とする。一方、導電粒子11の電極への押し込み精度を上げる点から1μm以上が好ましく、2.5μm以上がより好ましい。ここで、粒子径は平均粒子径を意味する。導電粒子含有フィルム10における導電粒子11の平均粒子径は、平面画像又は断面画像から求めることができる。顕微鏡観察で200個以上の粒子径を測定することにより平均粒子径を求めても良い。また、導電粒子含有フィルムに含有させる前の原料粒子としての導電粒子の平均粒子径は湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることができる。なお、導電粒子に絶縁性微粒子等の微粒子が付着している場合には、微粒子を含めない径を粒子径とする。
【0026】
(導電粒子の配列)
微細な電子部品の各電極で1個以上の導電粒子が確実に捕捉されるようにする点から、導電粒子含有フィルム10において導電粒子11は規則的に配列していることが好ましく、例えば、特許文献3に記載の導電粒子含有フィルムのように格子状に配列していることが好ましい。特に、電子部品1がウエハからダイシングされることで得られる場合、その電子部品1の辺に沿って電極が形成されることから、導電粒子11の配列は矩形状の格子配列であることが望ましい。
図2Aに示した導電粒子含有フィルム10では導電粒子11が正方格子配列になっている。
【0027】
一方、導電粒子含有フィルムとしては、導電粒子が均等にランダムに分散しているものを使用してもよい。
【0028】
導電粒子11は、絶縁性樹脂層12に埋め込まれていてもよく、露出していてもよい。各導電粒子11のフィルム厚方向の位置は揃っていることが好ましく、また、導電粒子含有フィルムの片面側に偏在していることが好ましい。片面側に偏在していることで、押圧が均等に行なわれ、不測の粒子移動を抑制することができる。
【0029】
(導電粒子の個数密度)
導電粒子の個数密度の上限および下限は、接続する対象物により変更になるため特に制限はない。例えば、個数密度の下限については、30個/mm2以上、又は12000個/mm2以上、又は150000個/mm2以上とすることができ、個数密度の上限については、例えば、500000個/mm2以下、又は350000個/mm2以下、又は300000個/mm2以下とすることができる。
【0030】
(絶縁性樹脂層の層構成)
導電粒子含有フィルム10を構成する絶縁性樹脂層12は、単一の絶縁性樹脂層から構成されていてもよく、複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成されていてもよい。例えば、導電粒子含有フィルム10の層構成としては、
図2Bに示すように、絶縁性樹脂層12を最低溶融粘度の高い高粘度樹脂層13と最低溶融粘度の低い低粘度樹脂層14の積層体とし、高粘度樹脂層13に導電粒子11を保持させることが、導電粒子11の不要な流動を抑制する点から好ましい。この場合、高粘度樹脂層13の最低溶融粘度(A1)、低粘度樹脂層14の最低溶融粘度(A2)、これらの比(A1/A2)及びこれらの層厚は、特許6187665号公報、特開2018―81906号公報等に記載の公知の異方性導電フィルムと同様とすることができる。
【0031】
(絶縁性樹脂層の層厚)
絶縁性樹脂層12の層厚は、下限については、導電粒子の粒子径の好ましくは1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、又は3μm以上とすることができる。また、上限については、導電粒子の粒子径の2倍以下又は20μm以下とすることができる。絶縁性樹脂層12が複数の絶縁性樹脂層の積層体から構成される場合は、積層体の厚みがこれらの範囲にあることが好ましい。
【0032】
絶縁性樹脂層12の層厚は、公知のマイクロメータやデジタルシックネスゲージを用いて測定することができる。この場合、例えば10箇所以上を測定し、平均値を層厚とすればよい。
【0033】
(絶縁性樹脂層の樹脂組成物)
絶縁性樹脂層12を形成する樹脂組成物は、導電粒子含有フィルム10で接続する電子部品1や基板20の種類等に応じて適宜選択され、熱可塑性樹脂組成物、高粘度粘着性樹脂組成物、硬化性樹脂組成物から形成することができる。例えば、特許6187665号公報に記載の導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層を形成する樹脂組成物と同様に、重合性化合物と重合開始剤から形成される硬化性樹脂組成物を使用することができる。この場合、重合開始剤としては熱重合開始剤を使用してもよく、光重合開始剤を使用してもよく、それらを併用してもよい。例えば、熱重合開始剤としてカチオン系重合開始剤、熱重合性化合物としてエポキシ樹脂を使用し、光重合開始剤として光ラジカル重合開始剤、光重合性化合物としてアクリレート化合物を使用する。熱重合開始剤として、熱アニオン系重合開始剤を使用してもよい。熱アニオン系重合開始剤としては、イミダゾール変性体を核としその表面をポリウレタンで被覆してなるマイクロカプセル型潜在性硬化剤を用いることが好ましい。
【0034】
(絶縁性樹脂層の40~80℃における硬化開始時間)
導電粒子含有フィルム10においては、絶縁性樹脂層12を形成する硬化性樹脂組成物の種類の選択、重合開始剤の濃度調整等により、該導電粒子含有電フィルム10を40℃から80℃に加熱した場合の加熱開始から絶縁性樹脂層12の硬化開始までの時間が10分以上、20分以上、さらには25分以上である。このことは、導電粒子含有フィルム10の絶縁性樹脂層12が40℃から80℃という温度範囲の加熱下におかれてから、該絶縁性樹脂層12が硬化開始するまでの時間が10分以上であることを意味する。
【0035】
また、硬化開始までの時間とは、絶縁性樹脂層12が複数の絶縁性樹脂層で構成される場合には、各絶縁性樹脂層の硬化開始までの時間をいう。これにより、導電粒子含有フィルムを基板に設けた後(仮貼り工程以降)、多数の微細な電子部品を基板に同時にアライメントして重ね合わせ、一度に加熱加圧して接続する場合でも、最初に電子部品を基板へ重ね合わせたときから電子部品と基板の重ね合せを繰り返し、最後に電子部品を基板に重ね合わせ、各電子部品を加熱加圧するまでの時間として10分以上を確保することができるので、電子部品と基板の接続を精密かつ確実に行うことができる。
【0036】
一般に、重ね合わせ工程は、40℃程度に加温された加圧装置のステージ上で行われる。また、加温されたステージ上で重ね合わせ工程が行われない場合も、加熱加圧工程の前に加温されたステージに載置しておく場合がある。そのため、導電粒子含有フィルム10を40から80℃で加熱した場合の樹脂組成物の硬化開始時間が短いと、重ね合わせ工程が完了する前に樹脂組成物の硬化が開始する虞がある。これに対し、40から80℃での硬化開始時間を10分以上とすることにより、加温されている加圧装置のステージ上で重ね合わせ工程を行っても、硬化開始前に重ね合わせ工程を完了させることが可能となる。
【0037】
なお、導電粒子含有フィルム10を40℃から80℃に加熱した場合の加熱開始から絶縁性樹脂層の硬化開始までの時間の上限については特に制限はない。
【0038】
また、この硬化開始までの時間は、本来、重ね合わせ工程に必要とされる時間に応じて設定することが、導電粒子含有フィルムを基板に設ける工程及び重ね合わせ工程に必要な時間の確保と、その後の加圧硬化工程の短縮化の要請の点から好ましいが、この時間を10分以上とすることにより電子部品の用途が、例えば、スマートフォン、大型テレビジョン、パブリックディスプレイ(デジタルサイネージ)、ウェアラブルディスプレイ (スマートウォッチ)等のいずれであっても、重ね合わせ工程に必要な時間を十分に確保することができる。即ち、一般に、ICチップ(ドライバIC)等の電子部品と基板とを導電粒子含有フィルムを介して重ね合わせる工程には数秒から数十秒程度が必要とされるが、重ね合わせる電子部品が微細であるとこの重ね合わせ工程は精密な作業となる。そのため、例えば、個々の電極の面積が1000μm2以下又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下の微細なμLED等の電子部品は、それよりも大きいICチップ等に比して重ね合わせ工程に長時間を確保しておくことが好ましい。微細なため、搭載数が多くなるためである。重ね合わせ工程に要する時間は、部品の搭載方式や装置などの条件によって変動するが、一例として、5分以上、場合によっては10分以上になりえる。
【0039】
導電粒子含有フィルム10の絶縁性樹脂層12の40℃から80℃における硬化開始時間が10分以上であるか、あるいはこの硬化開始時間が仮貼り及び重ね合わせ工程に要する時間に対して十分に長い時間といえるかは、例えば、次の (i)、(ii)、(iii)により確認することができる。
【0040】
(i)剥離フィルムの剥離試験
湿度40%RH、温度30℃の恒温恒湿室にて、一対の剥離フィルムが表裏両面に貼着している導電粒子含有フィルムの一方の面の剥離フィルムを剥離除去し、その面をガラス板に張り付け、そのガラス板を45℃に設定したホットプレート上に載置し、他方の面から導電粒子含有フィルムを押圧し、重ね合わせ工程に要される時間に対応した所定時間が経過した後にガラス板と導電粒子含有フィルムの積層物を冷却し、導電粒子含有フィルムに貼着している剥離フィルムを引き上げた場合に、ガラス板から導電粒子含有フィルムが剥がれるか否かを確認すればよい。ここで、ガラス板から導電粒子含有フィルムが剥がれた場合には、重ね合わせ工程に対応した所定時間では硬化が進まないことがわかる。よってこの間に電子部品と基板との高精度の位置合わせを行うことが可能となる。
【0041】
(ii)示差走査熱量計による温度計測
示差走査熱量計(DSC)を用いて導電粒子含有フィルム10を昇温させた場合に計測されるピーク温度から反応開始時間を計測してもよい。この場合、一般的な重ね合わせ工程における加熱加圧条件(所謂、仮圧着条件。例えば、60~80℃、1~2秒、0.5~2MPa)の処理をしてから、DSCで温度変化を計測してもよい。
【0042】
より具体的なDSCによる計測条件としては、昇温速度を10℃/min、好ましくは5℃/minとし、80℃到達後は保持時間とする。到達温度は60℃とすることもできる。この場合、室温(25℃±15℃)からの昇温となる。到達温度を40℃としてもよい。
【0043】
上述の計測操作において40℃から80℃の間に硬化開始を示す温度ピーク(発熱ピーク)が10分以上生じないことが好ましく、20分以上生じないことがより好ましい。なお、この10分以上という意味は、室温からの昇温により40℃から80℃の範囲に到達した場合には、40℃に到達したときから10分以上という意味であり、例えば60℃から昇温させた場合には、60℃の昇温開始時点から10分以上の意味である。10分以内に80℃に到達した場合は、80℃で維持される時間を含む。簡略的に、80℃設定の恒温槽に放置した時間として試験することもできる。
【0044】
一方で、この時間が過度に長いと重合開始剤の潜在性が過度に高く、一般に熱圧着による硬化工程において目標とされる低温化もしくは短時間化を達成できない虞がある。そのため、絶縁性樹脂層12を硬化させるときの温度および時間は、当該電子部品と基板の重ね合わせ工程に要する時間等に応じて適宜調整して定めればよい。なお、本発明は、熱圧着による硬化工程を低温短時間で達成することよりも、その前段の重ね合わせ工程に必要な時間を確保することを優先しており、その点で、従来の導電粒子含有フィルムを用いた電子部品の接続方法とは異なる。
【0045】
(iii)絶縁性樹脂層の硬化率
導電粒子含有フィルム10を40℃~80℃の温度範囲に加熱してから硬化開始までの時間が10分以上であることは、導電粒子含有フィルム10を40℃~80℃の温度範囲に加熱してから10分後の絶縁性樹脂層12の硬化率が25%以下、好ましくは20%以下であることにより判断してもよい。ここで、硬化率は硬化性樹脂組成物のFT-IRのチャートの特定ピークの高さの計測、DSCの発熱ピーク面積計測等から求めることができる。
【0046】
上述の40℃から80℃の温度範囲での硬化開始までの時間に関し、レーザーリフトオフ法により電子部品の電極又は基板の電極に導電粒子含有フィルムをμLEDの大きさや配置に合わせて予め個片化させて転写する場合には、導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層を構成する硬化性樹脂組成物の転写後の反応率が好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下となるようにすることが好ましく、これが充足されるように硬化性樹脂組成物の樹脂の種類の選択、重合開始剤の濃度調整等を行うことが好ましい。個片が小さい場合は、個片を得た元のフィルムの残部(加工部付近の端部等)から反応率を測定してもよい。
【0047】
また、レーザーリフトオフ法による導電粒子含有フィルムの転写物を40℃から80℃に加熱してから10分経過時の硬化性樹脂組成物の反応率(硬化率)が好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下であることで、微小部品を多数個載置して接続する時間的猶予が得られることから、製造条件が緩和され、生産性の安定に寄与することが期待される。
【0048】
導電粒子含有フィルムの転写後の反応率は、例えばFT-IRを用いて、レーザーリフトオフ法におけるレーザー照射の前後でエポキシ基(914cm-1付近)、(メタ)アクリロイル基(1635cm-1付近)等の反応基のピーク高さA,aとメチル基(2930cm-1付近)等の対照のピーク高さB、bとを計測し、反応基の減少率として、次式により求めることができる。
【0049】
反応率(%)={1-(a/b)/(A/B)}×100
式中、Aはレーザー照射前の反応基のピーク高さ、Bはレーザー照射前の対照のピーク高さ、aはレーザー照射後の反応基のピーク高さ、bはレーザー照射後の対照のピーク高さである。
【0050】
FT-IRの測定においては、試料を膜厚10μm以下の微量とし、ダイヤモンド・セルに挟んでIR検出器にセッティングすることが好ましい。また、検出感度を向上させるため、予めIR検出器を液体窒素で30分程度冷却しておくことが好ましい。FT-IRの測定条件は、例えば、次の通りとする。
測定方式:透過式
測定温度:25℃
測定湿度:60%以下
測定時間:12sec
検出器のスペクトル領域範囲:4000~700cm-1
【0051】
なお、反応基のピークに他のピークが重なる場合は、完全硬化(反応率100%)させた試料の反応基のピーク高さを0%とすればよい。
【0052】
また、反応基のピーク高さが小さい場合や、硬化性樹脂組成物が脂環式エポキシ基やオキセタニル基を有する場合は、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)を用いて反応率を次式により算出してもよい。
【0053】
反応率(%)={1-c/C}×100
式中、Cはレーザー照射前の反応性成分のピーク高さ又は面積、cはレーザー照射後の反応性成分のピーク高さ又は面積である。
【0054】
HPLCの測定においては、試料を例えばアセトニトリル等の溶媒で抽出し、溶離液をX(水/アセトニトリル=9:1)からY(アセトニトリル)に連続的に変化させるグラジェント溶出を行うことが好ましい。
【0055】
電子部品の電極又は基板の電極に導電粒子含有フィルムを個片化して転写した後の反応率を上述のように抑えることにより、転写後の個片化した導電粒子含有フィルムに他の電子部品の電極又は基板の電極を熱圧着することが可能となる。なお、個片化は、レーザーアブレーションやレーザーリフトオフ法(レーザーリフト法)による他、公知の手法で行ってもよい。
【0056】
(導電粒子含有フィルムの粘着性)
図1に示したように、基板に接続する電子部品1が半導体加工用フィルム3に貼着されている場合、電子部品1に対する導電粒子含有フィルム10の粘着力を、電子部品1に対する半導体加工用フィルム3の粘着力よりも大きくし、電子部品1が半導体加工用フィルム3に貼着されている場合でも、導電粒子含有フィルム10を介した電子部品1と基板20との仮圧着を可能とすることが好ましい(
図4~
図6)。
【0057】
導電粒子含有フィルム10の粘着力の強さは、例えば、片面に剥離フィルムが存在する導電粒子含有フィルムの小片(例えば、幅0.3~1.0mm、長さ2cm)をガラス基板に貼着し、その剥離フィルムの端をピンセットで摘まんで取り除く剥離試験を行うことで計測することができる。この剥離試験において、導電粒子含有フィルムがガラスに貼着したままの場合を成功とする場合に、n数が20以上、好ましくは30以上で成功率が75%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましく、95%以上が特に好ましい。粘着力が高精度に維持されていることで、導電粒子含有フィルム表面は微小電子部品の搭載に必要な保持力を維持していることになる。
【0058】
この粘着力は、仮貼り工程及び重ね合せ工程を行っている間は維持されることが好ましい。
【0059】
また粘着力は、特開2019-214714号公報に記載されているように、JIS Z 0237に準じて測定することができ、また、JIS Z 3284-3又はASTM D 2979―01に準じてプローブ法によりタック力として測定することもできる。
【0060】
導電粒子含有フィルム10が絶縁性樹脂層12として高粘度樹脂層13と低粘度樹脂層14を有する場合も、絶縁性樹脂の単層を有する場合も、導電粒子含有フィルムの表裏各面のプローブ法によるタック力は、例えば、プローブの押し付け速度を30mm/min、加圧力を196.25gf、加圧時間を1.0sec、引き剥がし速度を120mm/min、測定温度23℃±5℃で計測したときに、表裏の面の少なくとも一方を1.0kPa(0.1N/cm2)以上とすることができ、1.5kPa(0.15N/cm2)以上とすることが好ましく、3kPa(0.3N/cm2)より高いことがより好ましい。
【0061】
導電粒子含有フィルム10の粘着力は、特開2017-48358号公報に記載の接着強度試験に準じて求めることもできる。この接着強度試験において、例えば、2枚のガラス板で導電粒子含有フィルムを挟み、一方のガラス板を固定し、他方のガラス板を引き剥がし速度10mm/min、試験温度50℃で引き剥がしていく場合に、固定するガラス板と導電粒子含有フィルムとの接着状態を強めておくことで、引き剥がしていくガラス板と、そのガラス板と貼り合わさっている導電粒子含有フィルムの面との粘着力を測定することが可能となる。こうして測定される粘着力を、好ましくは10kPa(1N/cm2)以上、より好ましくは100kPa(10N/cm2)以上とすることができる。
【0062】
導電粒子含有フィルム10が上述の粘着力を有することにより、熱圧着する電子部品1が、例えば、一般的なICチップより小さい最長辺の長さが600μm以下又は個々の電極の面積が1000μm2以下の電子部品であっても重ね合わせ工程での仮圧着における位置ずれの問題を最小限にすることができる。
【0063】
導電粒子含有フィルム10は、それ自体の製造方法については特に制限はなく、例えば、特許6187665号公報に記載の方法で得ることができる。
【0064】
<電子部品と基板との接続工程>
本発明の製造方法は、概略、基板20に導電粒子含有フィルム10を貼る仮貼り工程、微細な電子部品1の電極2と、該電子部品1の電極2に対応した電極を有する基板20とを導電粒子含有フィルム10を介して重ね合わせる工程(重ね合わせ工程)、導電粒子含有フィルム10を介して重ね合わせた電子部品1と基板20とを加圧しつつ導電粒子含有フィルム10の絶縁性樹脂を硬化させる工程(加圧硬化工程)を有する。この製造方法により得られる接続構造体において、電子部品1の電極数は1個でも複数でもよい。接続構造体の用途に応じて適宜定めることができる。
【0065】
また、重ね合わせ工程と加圧硬化工程の間には、必要に応じて、導電粒子含有フィルム10を介して重ね合わせた電子部品1と基板20とを、加圧硬化工程における加圧力より小さい加圧力で加圧することにより、電子部品1の電極と基板20の電極とで導電粒子を挟持するプレ加圧工程を設けても良い。以下、プレ加圧工程における加圧を第1加圧といい、加圧硬化工程における加圧を第2加圧という。
【0066】
また、本発明の製造方法は、必要に応じて予備的又は付加的な工程を有することができる。
【0067】
以下、
図3A~
図8に基づいて、仮貼り工程、重ね合わせ工程、プレ加圧工程及び加圧硬化工程を有する本発明の一実施例の製造方法を、電子部品1としてダイシングテープ3に貼着されている半導体部品を基板20と接続する場合について説明する。ダイシングテープ3は、転写用のスタンプ材や粘着フィルム、粘着層付基材フィルム等と置き換えてもよい。
【0068】
(1)アライメント工程及びその準備工程
本発明の方法では一度に複数個の電子部品を接続することができ、後述するように第1加圧及び第2加圧は加圧装置を用いて行うことができるが、加圧装置の推力限界を超えないように一度に接続する電子部品の数を調整し、電子部品をアライメントすることが好ましい。
【0069】
電子部品1の電極2と基板20の電極21とをアライメントするために、まず、
図3Aに示すように、ダイシングテープ3に保持されている電子部品1に粘着性の剥離フィルム4を貼付し、ついでダイシングテープ3を電子部品1から剥離することにより
図3Bに示すように電子部品1の電極2を露出させる。この剥離フィルム4としては、電子部品1に対する粘着力が、導電粒子含有フィルム10の電子部品1に対する粘着力よりも小さいものを使用することが好ましい。
【0070】
なお、本実施例では、複数の電子部品1を同時に基板20に接続する例を示しているが、本発明では、基板20に複数の電子部品1を接続する場合に、それらのすべてを同時に接続しなくてもよい。個々に接続してもよく、全体の中で選択的に複数個ずつ接続してもよく、全体を一括して接続してもよい。
【0071】
一方、
図4に示すように、ステージ31上で、基板20の電極21の形成面に導電粒子含有フィルム10を配置し、仮貼しておく。本実施例では、この導電粒子含有フィルム10として絶縁性樹脂層12が、導電粒子11が保持されている熱硬化性の高粘度樹脂層13と高粘度樹脂層13に積層された低粘度樹脂層14の2層構成のものを使用している。また、同図に示した導電粒子含有フィルム10では、導電粒子11が高粘度樹脂層13と低粘度樹脂層14の界面に存在し、導電粒子11が界面から低粘度樹脂層14側にも高粘度樹脂層13側にも突出しているが、低粘度樹脂層14側の突出量が高粘度樹脂層13側の突出量よりも小さく、導電粒子11が実質的に高粘度樹脂層13で保持されているものを使用している。
【0072】
導電粒子含有フィルム10を基板20に配置するにあたり、特開2017‐098126号公報の記載を応用し、導電粒子含有フィルム10の良品部分を選択的に基板20に配置してもよい。
【0073】
導電粒子含有フィルム10を基板20に配置し、仮貼りした後は、電子部品1の電極2と基板20の電極21とをアライメントする。アライメント方法としては、公知の技術を利用することができ、特に制限はない。本発明においては、このアライメントの完了前に絶縁性樹脂層12が硬化を開始しないので、アライメントを精密に行うことが可能となる。
【0074】
また、導電粒子含有フィルム10を基板20の電極21上に配置する方法、及び基板20の電極21上に配置した導電粒子含有フィルム10の上に、電子部品1の電極2をアライメントして配置する方法としては、例えば、公知のレーザーリフトオフ法(例えば、特開2017-157724号公報)又はそれに準じて、導電粒子含有フィルム10にレーザー光を照射し、導電粒子含有フィルム10から電極21に対応する面積の個片状のフィルムを離脱させ、電極21上に着弾させても良く、透光性基板に縦横に形成されている電子部品1にレーザー光を照射し、電子部品1を基板20の電極21の上の導電粒子含有フィルムにアライメントしつつ着弾させても良い。レーザーリフトオフ法は、市販のレーザーリフトオフ装置(例えば、信越化学工業株式会社のレーザーリフトオフ装置、商品名「Invisi LUM-XTR」)を用いて行うことができる。
【0075】
また、公知のスタンプ材を用いた転写法(例えば、特開2021-141160号公報)により、導電粒子含有フィルム10を電子部品1の電極2又は基板20の電極21に転写してもよい。
【0076】
(2)重ね合わせ工程
アライメントした電子部品1と基板20とを、公知の手法に準じ例えば
図5に示すように導電粒子含有フィルム10を介して重ね合わせて載置し、必要に応じて仮圧着し、必要であれば剥離フィルム4を剥離除去する。導電粒子含有フィルム10は予め個片化しておいてもよい。
【0077】
また、詳細は図示しないが、上述のレーザーリフトオフ法で導電粒子含有フィルムの個片を基板上に着弾させてもよく、μLEDを導電粒子含有フィルム上に着弾させてもよい。この場合、導電粒子含有フィルムの個片の大きさは、μLEDや電極の大きさに準じて適宜定まり、一つのμLEDに一つの個片でもよく、一つの電極に一つの個片でもよく、複数個のμLEDを一つの個片で接続してもよい。
【0078】
なお、レーザーリフトオフ法によりμLED等の電子部品を導電粒子含有フィルム10上に着弾させる場合などでは、電子部品の変形、破壊、着弾位置のズレ等を抑えるため、基板は、例えばシリコーンゴム層を有してもよい。導電粒子含有フィルムは個片化されていてもよく、シリコーンゴム層は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)であってもよい。
【0079】
レーザーリフトオフ法でポリジメチルシロキサン(PDMS)シート等のシリコーンシートに導電粒子含有フィルムやμLED等の電子部品を設け若しくは配列させ、これを転写することで基板上に載置することができる。即ち、シリコーンシートに導電粒子含有フィルムや電子部品が設けられている状態を基板に転写することにより電子部品と基板との重ね合わせを行うことができる。換言すれば、レーザーリフトオフ法でポリジメチルシロキサン(PDMS)シート等のシリコーンシートを用いて導電粒子含有フィルムを基板上に設けた場合若しくは配列させた場合にも、レーザーリフトオフ法でシリコーンシートを用いてμLED等の電子部品を導電粒子含有フィルムに設けた場合若しくは配列させた場合にも、シリコーンシート上のμLED等の電子部品や個片化した導電粒子含有フィルムを転写してもよい。即ち、シリコーンシートに電子部品または個片化した導電粒子含有フィルムが設けられている状態で基板に転写することにより電子部品と基板との重ね合わせを行うことができる。導電粒子含有フィルムは個片化されていてもよい。重ね合わせ工程を行うに際しては種々の態様でレーザーリフトオフ法を用いることができる。
【0080】
加えて、導電粒子含有フィルム10を構成する絶縁性樹脂層12にはクッション性のゴム材料、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等の無機フィラーの配合等により、絶縁性樹脂層12のデュロメータAによるゴム硬度(JIS K 6253に準拠)を、好ましくは20~40、より好ましくは20~35、さらに好ましくは20~30とし、押し込み装置を用いた動的粘弾性試験による温度30℃、周波数200Hzでの貯蔵弾性率を60MPa以下することが好ましい。貯蔵弾性率が高すぎると、レーザー照射で高速に弾き出された電子部品の衝撃を導電粒子含有フィルムの絶縁性樹脂層が吸収できず、電子部品の転写率が低下する傾向にあるからである。
【0081】
一方、レーザー照射後の絶縁性樹脂層の温度30℃、周波数200Hzでの貯蔵弾性率は100MPa以上であることが好ましく、2000MPa以上であることがより好ましい。この貯蔵弾性率が低すぎると、良好な導通性が得られず、接続信頼性も低下する傾向にある。温度30℃における貯蔵弾性率は、JIS K7244に準拠し、粘弾性試験機(バイブロン、株式会社エー・アンド・デイ)を用いた引張モードで、例えば、周波数11Hz、昇温速度3℃/minの測定条件で測定することができる。
【0082】
(3)プレ加圧工程(第1加圧)
プレ加圧工程では、
図6に示すように、導電粒子含有フィルム10を介して重ね合わせた電子部品1と基板20に対し、加圧ツール30を用いて電子部品1側から加圧する。この第1加圧は、
図7に示すように、電子部品1の電極2と基板20の電極21との間に、導電粒子含有フィルム10に含まれている導電粒子11が挟持されるまで行う。第1加圧では導電粒子が不用に移動しないように電極間で保持させている、と言い換えることもできる。第1加圧により、電子部品1の電極2と基板20の電極21との距離を、これらの間で挟持されている導電粒子11の当初の粒子径の70%以上100%以下にすることが好ましい。
【0083】
第1加圧における加圧力は、例えば0.5~15MPa、好ましくは2~8MPaとすることができる。これは導電粒子の大きさ、圧縮率(硬度)、反発力、樹脂層の厚み等に応じて適宜調整する。
【0084】
第1加圧時の温度は必要により加熱してもよいが、導電粒子含有フィルム10の硬化反応の開始温度以下とすることが好ましく、通常80℃以下であればよく、55℃以下が好ましく、40℃以下とすることがより好ましい。下限は特に制限はなく、室温(25℃±15℃)において圧力だけをかけてもよい。即ち、第1加圧時の温度は環境温度とすることができる。このプレ加圧工程(第1加圧)は、省略してもよい場合もある。
【0085】
(4)加圧硬化工程(第2加圧)
加圧硬化工程では、第1加圧から加圧力を低減させることなく、第1加圧よりも高い圧力で第2加圧を行う。このときの加圧力は30~120MPa、好ましくは60~80MPaとすることができる。この加圧力は導電粒子の大きさ、圧縮率(硬度)、反発力、樹脂層の厚み等に応じて調整する。これにより
図8に示すように、電子部品1の電極2と基板20の電極21で挟持された導電粒子11が押されて扁平化し、これらの電極2、21の電気的接続が確実に行われる。
【0086】
また、加圧硬化工程では絶縁性樹脂層12を硬化させ、電子部品1の電極2と基板20の電極21で挟持された導電粒子11を固定し、本発明の接続構造体40を得る。そのため、絶縁性樹脂層12が熱硬化性樹脂で形成されている場合には、加圧硬化工程で昇温する。この場合の加熱はパルスヒータ等を用いて短時間で行うことが好ましい。昇温速度は絶縁性樹脂層12の硬化特性に応じて適宜定めるが、例えば、到達温度を100℃以上、好ましくは120℃以上、より好ましくは150℃以上とし、プレスアウトするまでに4秒以上、好ましくは7秒以上、より好ましくは10秒以上とする。なお、導電粒子がハンダの場合には、加圧硬化工程をリフロー工程と置き換えることができる。
【0087】
こうして得られた、
図8に示す接続構造体40は、例えば、個々の電極の面積が1000μm
2以下又は電子部品の最長辺の長さが600μm以下の微細な電子部品1と、該電子部品1の電極2に対応した電極21を有する基板20とが、導電粒子含有フィルム10の絶縁性樹脂層12の硬化物で接着され、電子部品1の電極2と基板20の電極21とが、それらの間で挟持された導電粒子11によって電気的に接続されたものとなっている。
【0088】
本発明において電子部品1の電極2と基板20の電極21との間で挟持されている導電粒子11の個数は、一般的な異方性接続のように、対向する1対の電極2、21あたり3個以上でもよいが、対向する1対の電極2、21に位置する導電粒子11が確実に導通に寄与することにより3個未満でもよく、1個でもよい。したがって、導電粒子含有フィルム10における導電粒子11の個数密度は、対向する1対の電極2、12に対して、導電粒子11は3個以上となる個数密度であることが好ましいが、確実に捕捉され且つショートがなければ、3個未満でも3個以上でも実用上利用可能である。
【0089】
なお、上述の例ではアライメント工程において、導電粒子含有フィルム10をまず基板20上に配置したが、本発明では、導電粒子含有フィルム10をまず電子部品1に配置してもよい。
【0090】
以上、電子部品1として半導体部品を基板に接続する実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は微細な種々の電子部品1を基板に接続する場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 半導体部品、電子部品
2 電子部品の電極
3 半導体加工用フィルム、ダイシングテープ
4 剥離フィルム
10 導電粒子含有フィルム
11 導電粒子
12 絶縁性樹脂層
13 高粘度樹脂層
14 低粘度樹脂層
20 基板
21 基板の電極
30 加圧ツール
31 ステージ
40 接続構造体