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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046358
(43)【公開日】2023-04-04
(54)【発明の名称】救命用防護シート
(51)【国際特許分類】
   A61H 31/00 20060101AFI20230328BHJP
   A62B 29/00 20060101ALI20230328BHJP
   A61M 16/00 20060101ALI20230328BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A61H31/00
A62B29/00
A61M16/00 395
A41D13/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154964
(22)【出願日】2021-09-23
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】321009188
【氏名又は名称】山口 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100209668
【弁理士】
【氏名又は名称】樋田 成人
(72)【発明者】
【氏名】山口 勉
【テーマコード(参考)】
2E185
3B011
4C074
【Fターム(参考)】
2E185AA02
2E185CC25
3B011AA00
3B011AB08
3B011AC12
3B011AC24
4C074BB04
4C074CC13
4C074DD06
4C074GG11
4C074HH01
4C074HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】緊急である口対口、あるいはポケットマスクやバックバルブマスクを用いた心肺蘇生時の人工呼吸において、被救助者の呼気による救助者の被爆感染を最も効果的に防ぎ、かつ心肺蘇生行為や人工呼吸に一切支障を来さず、簡易に持ち運び携帯することができ、更に要救助者の胸部を不透明の不織布にすることで、女性等の胸部を露わにすることなく、適切な心肺蘇生をすることができること救命用防護シートを提供する。
【解決手段】要救助者の頭部近傍を覆う可撓性の透明シート10と透明シートに連結された不織布シート11とから成る感染防止を目的とした救命用防護シートであって、透明シートには救命呼吸器貫通用の開口部13を具備し、開口部には一方弁を具備し、不織布シートには心臓マッサージ用の身体部位の位置表示14を具備し、救命用防護シートの外周部には浮き上がり防止部を具備した構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被救助者の頭部及びその近傍を覆う可撓性のある透明シートと前記透明シートに連結された不織布シートとから成る要救助者からの感染防止を図る救命用防護シートであって、
前記透明シートには救命用人工呼吸器貫通用の開口部を具備し、
前記開口部には一方弁を具備し、
前記不織布シートには心臓マッサージ用の身体部位の位置表示を具備し、
前記救命用防護シートの外周部には浮き上がり防止部を具備すること
に特徴を有する救命用防護シート。
【請求項2】
前記不織布シートの心臓マッサージ用の身体部位の前記位置表示は、要救助者の胸の中心・胸骨の下半分・へそ部・腹の位置を色分けした鼻・顎・へその直線状表示及び/若しくは顎部からの寸法表示で示し、
前記救命用防護シートの外周には上下表裏を示す表示又はタグを有すること
に特徴を有する請求項1に記載の救命用防護シート。
【請求項3】
前記浮き上がり防止部は、滑り防止を兼ねるシリコンゴム板体及び/若しくは接着シール及び/若しくは折りたたみ軸棒及び/若しくは屈曲性を有する金属棒であること
に特徴を有する請求項1又は2に記載の救命用防護シート。
【請求項4】
前記救命用防護シートには、AED配線を通す切込み開口部を更に具備し、
前記切り込み開口部には、開口を塞ぐカバー体及び/若しくは収縮ゴム材及び/若しくは一方弁を具備すること
に特徴を有する請求項1に記載の救命用防護シート。
【請求項5】
前記可撓性透明シートの前記開口部は開口を塞ぐ機能を有するカバー体若しくは開口周囲を縮め塞ぐ機能を有する収縮ゴム材を有すること
に特徴を有する請求項1に記載の救命用防護シート。
【請求項6】
前記不織布シートには、心肺蘇生術の胸骨圧迫部位を明確に示すラインプリント及び/若しくは救命の方法及び/若しくは救命の際の通報先及び/若しくは救命動作及び/若しくは本発明に係る救命用防護シートの使用方法の動画サイトへのバーコード又はQRコード及び/若しくは救命時に必要とされる事項が印刷されていること
に特徴を有する請求項1に記載の救命用防護シート。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工呼吸による救命の際の被救助者を覆う救命用防護シートに係り、特に、要救助者(以降、要救助者を被救助者とも表現する場合がある。)からの呼気による被爆を防止することを目的とした救命用防護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、人工呼吸は仮死状態や窒息(呼吸停止)状態に陥った要救助者に緊急的に心肺蘇生のための人工呼吸を施すものである。(本発明の明細書においては、人工呼吸とは、口対口(マウス ツー マウス)人工呼吸を前提としている。)そして、人工呼吸は緊急、即時性が何より要求されるものであるので、措置の必要な場所で直ちに行われことが極めて重要である。
【0003】
しかし昨今のように感染症の拡大下においては、要救助者が感染者である場合もあり、人工呼吸により救助者が感染者の呼気を被爆し感染する危険がある。近年では人工呼吸器として感染防御具であるフェイスシールドやポケットマスク、バックバルブマスク等が開発されているが、昨今の感染症のリスクまでは回避できず、人工呼吸を行わないことが標準となっている。
【0004】
フェイスシールドは、心肺蘇生時に感染者である要救助者の呼気を顔面に被爆しないように防ぐものであり、またポケットマスクやバックバルブマスクは、人工呼吸時に要救助者の呼気を一定方向にのみに排出されるよう流路一方弁が装着された感染防御救命用機器である。
【0005】
しかし上記に記載した通り、感染防御機器であっても、実際に救命用心肺蘇生時において救助者は、逐次被救助者に近接した位置におり、場合によっては要救助者の顔面に向かい合って蘇生救命措置を行わざるを得ない。このような場合は、たとえフェイスシールドやポケットマスク、バックバルブマスク等を用いていたとしても、感染の危険回避には限界があり、要救助者の呼気を被爆してしまうことは避けられず、救助者にとって大きな危険負担となっているのが実情である。
【0006】
上記のような問題を解決するために、下記に挙げるような先行文献によって各種提案がなされてきた。
【0007】
たとえば、特許文献1(実用新案登録3158211号)では、衛生的な呼気を通過させない可撓性の高いシート状体の中央部に一定の切り込みを設けるか、中央部に左右方向に一定長さの切り込みを開口させて、その開口部に筒状体を突設させて人工呼吸用補助具を構成する人工呼吸用補助用具に関する技術思想が開示されている。
【0008】
しかし、この例では、シート状体の切り込みにポケットマスクの筒状体を通しても、切リ込み部から汚染された要救助者の呼気は漏れ出てしまう。また、シート状体で要救助者を覆った場合は、シート内部に汚染呼気が密集充満されて非常に危険な状態となる。反面、シート状体の形状や大きさを小さくし軽くした場合は、要救助者の口元からの距離が短く、感染のリスクを抑えることができない。またさらに、風等でめくれ上がり、汚染呼気が漏れ出て救助者を被爆させてしまう危険がある。加えて、シート状体の材質によっては、要救助者を覆った際、身体の部位の位置が正確に目視できず不明確となり心肺蘇生処置に支障を来す。つまり、上記問題に対して根本的な解決策を提示したことにはなっていない。
【0009】
また特許文献2(特開平8-229146号)では、2枚のフィルム状シートのシート面において任意の面積の周囲を環状に接着し、その面積範囲内の中央部において、人工呼吸を行う側である第一のシートに切込み又は孔を穿設し、これと重ならないように人工呼吸を受ける側である第二のシートに切込み又は孔を穿設してなり、第一のシート側から送り込む呼気が中断した場合に第二のシート側からの圧力によって第二のシートの切込み又は孔の周囲が第一のシートのシート面に接触して弁機能を達成することを特徴とする人工呼吸用口当てシートの技術思想が開示されている。
【0010】
しかし、この例においても、2枚のシートを重ねたことにより特許文献1の改善策にはなるが、上記問題に対して根本的な解決策を提示したことにはなっていない。加えて、2枚のシートの切込み形状の特異性から製造難易度が高いと予想され、高価となる。かつ最も重要な要救助者の顔表情を目視確認することが2枚シートにより妨害され、蘇生行為に支障を来す恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】実用新案登録3158211号公報
【特許文献2】特開平8-229146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでの技術もしくは技術的思想では、感染病の拡大下において、感染防御具であるフェイスシールドやポケットマスク、バックバルブマスク等を用いても人工呼吸により救助者が感染者の呼気を被爆し感染する危険がある。
【0013】
緊急であるポケットマスクやバックバルブマスクを用いた心肺蘇生時の人工呼吸において、要救助者の呼気による救助者の被爆感染を最も効果的に防ぐ救命用防護シートであって、かつ心肺蘇生行為や人工呼吸に一切支障を来さず、簡易に持ち運び携帯することのできる救命用防護シートを開発し提供することを本発明の課題及び目的とする。
【0014】
また、本発明は、こうした従来技術上の問題点を解決することを企図したものであり、本体の安全性と救助作業性を格段に向上させつつ、製造容易であり経済性においても安価で携帯しやすい救命用防護シートを開発し提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するため、本発明に係る救命用防護シートは、被救助者の頭部及びその近傍を覆う可撓性のある透明シートと前記透明シートに連結された不織布シートとから成る要救助者からの感染防止を図る救命用防護シートであって、前記透明シートには救命用人工呼吸器貫通用の開口部を具備し、前記開口部には一方弁を具備し、前記不織布シートには心臓マッサージ用の身体部位の位置表示を具備し、前記救命用防護シートの外周部には浮き上がり防止部を具備することに特徴を有する。
【0016】
つまり本発明に係る救命用防護シートは、救急救命の人工呼吸時に要救助者の上半身を覆って被せるシートで、要救助者の顔まわりをはっきり目視できる柔らかな透明シートと不織布シートの連結から成る。救助者による人工呼吸時に要救助者の呼気を被爆しないよう被救助者の上半身を覆ってかぶせ、要救助者が不意に蘇生した際などの窒息防止のための感染症蔓延時に装着しているマスクと同等の不織布シートとからなる。また、このことにより、胸部を不透明にしつつ胸骨圧迫ができるようになるので、女性等の胸部を晒すこと防ぐことができる。透明シートと不織布シートの各々の大きさサイズ、厚さ、範囲には、本発明においては特に限定なく、例えば要救助者の顔まわりのみを透明シートにしてもよいし、不織布シートは要救助者の上半身を覆ってあまる大きさであれば好都合である。透明シートによって要救助者の様態を察知するための顔表情をしっかり確認できることは救急救命時には必須条件である。
【0017】
また、透明シートには、ポケットマスクやバックバルブマスク等の人工呼吸器を要救助者の口部に装着しやすいように救命用人工呼吸器貫通用の開口部を具備し、その開口部には通過気流を一方向のみに制限することができる一方弁(一方向流路弁)を具備している。そして、その開口部はポケットマスクやバックバルブマスク等の気流管を通すことができる。感染防止用のポケットマスクやバックバルブマスク等の人工呼吸器にも、一方向流路弁があり、被救助者の吐く呼気は救助者側には排出されないようになっているため、その排出口は本発明に係る救命用防護シートの裏面側である要救助者側に設定し、透明シート又は不織布シートの表面側に位置する救助者及び医師には呼気被爆を回避できる構造となっている。不織布シートは、空気は通すが、ウィルスや細菌を含んだ飛沫を効率よく除去するフィルター機能を有することは言うまでもない。
【0018】
そして例えば要救助者の首部から覆う不織布シートには心臓マッサージ用の身体部位の位置表示を下記のように具備している。
【0019】
詳細には、本発明に係る救命用防護シートの前記不織布シートの心臓マッサージ用の身体部位の前記位置表示は、要救助者の胸の中心・胸骨の下半分・へそ部・腹の位置を色分けし、鼻・顎・へその直線状表示及び若しくは顎部からの寸法表示で示し、前記救命用防護シートの外周には上下表裏を示す表示又はタグを有する形態をとることもできる。
【0020】
つまり、身体部位の位置表示は、要救助者の顎から下への直線状の帯状表示であって胸中央部を通り胸骨下半分、へそ、そして股間近くまでを例えば約1cmメモリの色分け表示をしたもので、救助時に救助者又は医師が要救助者の身体の位置が不織布シートの上からも確認できるように設けたものある。この身体部位の位置表示は、特に心肺蘇生時には、胸骨圧迫部位の位置確認に有用であり、AED(自動体外式除細動器)の装着使用時には人体接触パッドの装着位置確認等に必須の目印となる。
【0021】
この身体部位の位置表示は、不織布シートの表面だけでなく裏面にもあると、シートをめくった際、身体位置と位置表示帯との照らし合わせができるため好ましい。また身体部位の位置表示には顎部からの距離がわかりやすいように約1cm単位の長さ数値が表示されていても身体位置がわかりやすくなるため効果的である。この位置表示は印刷であってもよいし、後付けシートであってもよく、直線帯状表示の幅や色及び色間隔に詳細な限定はない。また、前記不織布シートには、心肺蘇生術の胸骨圧迫部位を明確に示すラインプリント及び若しくは救命の方法及び若しくは救命の際の通報先及び若しくは救命動作及び若しくは本発明に係る救命用防護シートの使用方法の動画サイトへのバーコード又はQRコード及び若しくは救命時に必要とされる事項が印刷されている形態をとることもできる。
【0022】
前記救命用防護シートの外周には上下表裏を示す表示又はタグを有し、緊急救命時に携帯されているたたまれた状態の救命用防護シートの上下及び表裏を判断して即座に開放することが可能となる。
【0023】
本発明に係る救命用防護シートの前記浮き上がり防止部は、滑り防止を兼ねるシリコンゴム板体及び若しくは接着シール及び若しくは折りたたみ軸棒及び若しくは屈曲性を有する金属棒である態様をとることができる。
【0024】
つまり本発明に係る救命用防護シートは、救命用防護シートの外周部には浮き上がり防止部を具備する。救命用防護シートの外周部に設けた浮き上がり防止部は、例えば床面接着用の接着シールやシリコンゴム製の滑り止め重しの板体のパッドであってもよい。この場合は、救命用防護シートの外周の数カ所に定点的に設けてもよい。救命措置は屋外でも行われることが多いため、本発明に係る救命用防護シートは浮き上がり防止部を有することによって、風等による防護シートの浮き上がりや風舞いを防止することができる。救命救急措置時に防護シートの舞い上がりを心配しないで済むことは救助者にとって極めて有用である。
【0025】
また、浮き上がり防止部は、例えば本発明に係る救命用防護シートの外周を覆って取り付けられた折りたたみ軸棒(細い棒状体)であってもよく、その軸棒状体が一定寸法で分割されている場合は、その軸棒状寸法に合わせて救命用防護シートを小さく折りたたむことができ、携帯持ち運びに便利である。
【0026】
また、浮き上がり防止部が、例えば救命用防護シートの外周を覆って取り付けられた細い屈曲性のある金属棒であれば、本発明に係る救命用防護シートの外周は円形となるが、その棒を屈曲させながら小さく折り曲げて救命用防護シートを小さくたたむことができる。例えば自然にパッと広がる小型のテントのように取り扱いが非常に便利となる。
【0027】
また、本発明に係る救命用防護シートは、そのシート外周部に段差を設けて、拡げた際、被救助者を覆って台形型に広がる態様をとることもできる。
【0028】
そして、本発明に係る救命用防護シートには、AED配線を通す切込み開口部を更に具備し、前記切り込み開口部には、開口を塞ぐカバー体若しくは収縮ゴム材若しくは一方弁を具備する態様をとることもできる。カバー体は、例えば面ファスナーのようなものであって、貼り直せるテープ剤でもよい。
【0029】
AED(自動体外式除細動器)は緊急救命時には必須となる救命装置であるが、要救助者が感染者の疑いがある場合は、救護者の危険を招く。AEDのパッドは他のものに接触せずに、素肌に装着しなくてはならず、他のものを挟み込むことも避ける必要がある。そのため、本発明に係る救命用防護シートには、AED配線を通す切込み開口部を有する。緊急時には、まず要救助者の素肌にAEDの身体装着パッドを装着し、その後、本発明に係る救命用防護シートを被せればよい。救命用防護シートの切込み開口部を通してAED身体装着パッドの配線は、救命用防護シート外に置かれたAED本体とつながる形態をとることができる。この切込み開口部は、本発明に係る救命用防護シートのサイド横側端部まで開口されていてもよい。また、本発明に係る救命用防護シートの切込み開口部にも、前記の一方弁(一方向流路弁)を有する形態であれば、シート内の空気を切込み開口部を通して外部に漏出させることを防止することができる。つまり救助者の感染リスクを回避することができる。
【0030】
また、本発明に係る救命用防護シートの前記開口部は開口を塞ぐ機能を有するカバー体及び若しくは開口周囲を縮め塞ぐ機能を有する収縮ゴム材及び若しくは一方弁を有する形態をとることもできる。
【0031】
つまり本発明に係る救命用防護シートの開口部は、AED配線を通す開口部と人工呼吸器の気流管を通す開口部を有するが、その両開口部には、空気の漏れ排出を塞いで防ぐためのカバー体(図4参照)、又は収縮ゴム材を有する。収縮ゴム材は、開口部外周を覆って取り付けられた輪ゴムのような態様であればよく、開口部を塞ぐように収縮するため、AED配線や人工呼吸器気流管を通した際はその外周に密着して開口部を塞ぐことができる。加えて、本発明に係る救命用防護シート単品でも人工呼吸ができるように開口部には一方弁がついている。更に接続部も有していてもよい。
【0032】
以上のように、本発明に係る救命用防護シートは、本発明の技術思想の範囲内で種々変更して形態を有することが可能である。しかしこれらの形態は均等論的対応を含めて全て本発明の技術思想に包含されるものであることを加えて申し述べる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、緊急救命時に必須であるポケットマスクやバックバルブマスクを用いた心肺蘇生時の人工呼吸において、感染疑義のある要救助者の呼気による救助者の被爆感染を最も効果的に防ぐ救命用防護シートであって、かつ心肺蘇生行為や人工呼吸に一切支障を来さず、簡易に持ち運び携帯することのできる救命用防護シートを開発し提供することが可能となる。
【0034】
また、本発明は、救命救助時の安全性と救助作業性を格段に向上させつつ、製造方法が容易であることから経済性においても安価で携帯しやすい救命用防護シートを提供することができる。つまり、既に述べた課題について根本的な解決策が与えられることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの全体イメージを示した概念図である。
図2】本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの全体イメージを示した概念図である。
図3】本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの全体イメージとAED装着時を示した概念図である。
図4】本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの開口部のイメージを示した断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0037】
図1は、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの全体イメージを示した概念図である。同図に示すように、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートは、要救助者の顔表情が確認できる透明シート10とウィルスを略フィルター防除し空気のみを通す不織布シート11の連結体からなる。図1においては、要救助者の首部より上は全て透明シート10として描かれているが、要救助者の頭部のみを透明シートとしてもよい。透明シート10の必須な部分は要救助者の顔表情が見える頭部周りの範囲であり、透明シートはウィルス等を空気とともに通さない態様である。
【0038】
図1においては、不織布シート11は要救助者の腰部近傍までの範囲となっているが、足部まで広くしてもよい。本発明の一実施形態に係る救命用防護シート全体の大きさ範囲については特に限定はないが、縦幅は要救助者の頭部上を覆ってから少なくとも腰部まで、そして横幅は要救助者を完全に覆って若干余る程度の大きさが好ましい。
【0039】
図1に示すように本発明の一実施形態に係る救命用防護シートは、倒れて仰向けの状態である要救助者に上からかぶせ覆って、救急救命措置である人工呼吸や心肺蘇生処置を行うために使用する。
【0040】
図1に示すように救助者の略顎部下からは不織布シート11が好ましい。また、このことにより、胸部を不透明にしつつ胸骨圧迫ができるようになるので、女性等の胸部を晒すこと防ぐことができるためである。そして要救助者側の通風性を保つこともできる。不織布シート11は透明ではないため、要救助者側を見えにくくする。よって被救助者の身体部位の位置の概略を把握しやすくするために身体部位の位置表示14が施されている。身体部位の位置表示は、例えば図1のように、被救助者の顎から胸の中心を通って胸骨の下半分・へそ部・腹の位置そして股間へと直線上の帯表示であって、好ましくは略1cm間隔で顎部から下まで色分けされた帯表示がよい。もちろん帯表示は要救助者の鼻の頭からの帯表示及び距離表示であってもよい。身体部位の位置表示14は印刷であっても、後付け帯であってもよい。下記の機能を果たす表示物であればよいことは言うまでもない。
【0041】
身体部位の位置表示14は、不織布シート11の表面側だけではなく裏面側にも表示されていると一層好ましい。つまり身体部位の位置表示14は、救助時に救助者又は医師が要救助者の身体の位置が不織布シートの上からでも確認できるように設けたものある。この身体部位の位置表示は、心肺蘇生時には、胸骨圧迫部位の位置確認に有用であり、AED(自動体外式除細動器)の装着使用時には人体接触パッドの装着位置確認等に必須の目印となる。シート裏面にも身体部位の位置表示14があると、医師又は救助者が不織布シート11を下からめくって要救助者の実際の身体部位と身体部位の位置表示14との照らし合わせが可能となり、より厳格にかつ正確に身体部位の位置を確認することができる。
【0042】
図1に示すように、透明シート10の要救助者の口部近傍に位置する部分には、開口部13を有する。この開口部13は、人工呼吸を施す場合のポケットマスクやバックバルブマスク等の器具の気流管を通す開口である。気流方向を制限する一方弁がついていてもよいことは言うまでもない。開口部13の形状や大きさに限定はないが、四角形開口よりは気流管の断面形に沿うようなサイズの円形が好ましい。開口部の余り開口を埋める方法については後述する。
【0043】
また図1に示すように本発明の一実施形態に係る救命用防護シートは、上下表示タグ21を有する。図1において上下表示タグ21は、不織布シート11の下部中央に描かれているが、例えば透明シートの上部中央であっても両サイドであってもよい。緊急時に急いで横たわる要救助者の上に拡げて覆い掛けなければならない本発明に係る救命用防護シートは、その上下方向や表裏がひと目でわかるようにするための上下表示タグ21を有することが必須である。よってこの目的に適合するのであれば、上下表示タグ21の大きさ、材質、表示事項などに限定はなく、場合によっては印刷表示であってもよい。
【0044】
図2は、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの全体イメージを示した概念図である。同図に示すように、透明シート10は、要救助者の顔12の部分だけであってもよい。図2に示すように本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの外周には、浮き上がり防止部15を有する。浮き上がり防止部15は、救命用防護シートの外周全体を覆って、例えば床への粘着テープであっても、シート二重以上折りであってもよく、若干の重しとしての機能を有し、風等による救命用防護シートの浮き上がりを防止するものである。
【0045】
本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの浮き上がり防止部15は、例えばシート外周を連なって連結されたものではなく、部分的に途切れ分割された例えば棒状体をシート外周端部に縫い込んだものであってもよい。これであれば上記棒状体の長さを単位として救命用防護シートをきちんと折りたたむことができる。
【0046】
また、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの浮き上がり防止部15は、例えばシート外周を連なって連結された屈曲性のある柔らかい金属棒であってよい。これであれば、屈曲性のある柔らかい金属棒を折り曲げて救命用防護シート全体を小さくたたむことが可能となる。円形に畳んでもよいことは言うまでもない。そして、救命用防護シートを広げる時は金属棒のバネ力で自然に一瞬に広げることが可能となる。例えば折りたたみ及び開放可能な簡易テントのように、折りたたみ持ち運びと瞬時開放設置が可能な救命用防護シートとなる。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの全体イメージとAED装着時を示した概念図である。同図に示すように、AED(自動体外式除細動器)16は、緊急救命措置時には必須であるため、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの外側から簡易に被救助者の身体に装着できなければならない。図3に示すように、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートはAED配線18を通すための切込み開口部19を有する。図3に示すように、AEDの配線18は救命用防護シートの切込み開口部19から通し、AEDのパッド17は、救命用防護シートの下で被救助者の身体に装着されている態様をとる。繰り返し記載するが、AEDのパッド17は他のものに接触せずに、素肌に装着しなくてはならず、他のものを挟み込むことも避ける必要がある。緊急時には、まず要救助者の素肌にAEDの身体装着パッド17を装着し、その後、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートを被せればよい。
【0048】
図3に示すように、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの身体部の位置表示14は、AEDのパッド17を装着する際、要救助者の胸中央部や心臓部の位置を外部から正確に把握するために必要な位置目印となる。また、救命防護シートの裏面にも身体部の位置表示14があれば、シートを身体下方からめくり上げて、胸骨圧迫の位置が身体部の位置表示14との照らし合わせができ、より正確な胸骨圧迫部1点を不織布上からも確認することができる。
【0049】
図4は、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの開口部のイメージを示した断面概念図である。同図に断面として示すように本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの切込み開口部19が、カバー体20を有する形態であれば、例えばAEDの配線18を通して使用する際、救命用防護シートの切込み開口部19の余分な開口を塞ぎ、内部からのウィルス等を含む危険な空気の漏れ排出を防止することができる。
【0050】
また、本発明の一実施形態に係る救命用防護シートの人工呼吸器用及びAED配線用の開口部の外周囲に、例えば収縮ゴム等を施すことにより、人工呼吸器及びAEDの配線を通した際、配線の環径に収縮密接して、シート内部からのウィルス等を含む危険な空気の漏れ排出を防止することが可能となる。
【0051】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。これらはすべて本技術思想の一部であり、いずれの形態も本技術思想の範囲内のものであることを主張する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上述したように、本願に係る発明によれば、緊急であるポケットマスクやバックバルブマスクを用いた心肺蘇生時の人工呼吸において、要救助者の呼気による救助者の被爆感染を最も効果的に防ぐ救命用防護シートであって、かつ心肺蘇生行為や人工呼吸に一切支障を来さず、簡易に持ち運び携帯することのできる救命用防護シートを開発し提供することができる。
【0053】
また、本願に係る発明によれば、緊急救命時の安全性と救助作業性を格段に向上させつつ、製造方法が容易であることから経済性においても安価で携帯しやすい救命用防護シートを提供することができる。
【0054】
したがって、本発明は、その素材及び製造産業の発展に限定されることなく、広く人間社会の健康安全性及び公衆衛生に対しても大きな有益性をもたらすものである。
【符号の説明】
【0055】
10 透明シート
11 不織布シート
12 被救助者の顔
13 開口部
14 身体部位の位置表示
15 浮き上がり防止部
16 AED
17 AEDのパッド
18 AEDの配線
19 切込み開口部
20 カバー体
21 上下表示タグ

図1
図2
図3
図4