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特開2023-46385ダブルチェーンホイールを備えたチェーンドライブ、そのためのスリング装置、並びにチェーンドライブシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046385
(43)【公開日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ダブルチェーンホイールを備えたチェーンドライブ、そのためのスリング装置、並びにチェーンドライブシステム
(51)【国際特許分類】
   F16H 19/02 20060101AFI20230328BHJP
   F16G 15/12 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
F16H19/02 D
F16G15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022136232
(22)【出願日】2022-08-29
(31)【優先権主張番号】21198589.0
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513139507
【氏名又は名称】ペヴァック・オーストリア・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】PEWAG AUSTRIA GMBH
【住所又は居所原語表記】Mariazeller Strasse 143, 8605 Kapfenberg, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】エギド ペン
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AA15
3J062AB13
3J062AC07
3J062BA25
3J062BA26
3J062CA03
3J062CA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】チェーンホイストにおいて周期的な振動をもたらすポリゴン作用を減少させる。
【解決手段】2つのリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブD1が、2つのチェーンホイールR11、R12を有し、これらのチェーンホイールは、チェーンドライブの1つの軸線d上に相並んで且つ互いに相対回転不能に配設されており、各チェーンホイールは、横置きリンクLと縦置きリンクTを交互に有する1つのリンクチェーンの一部分をそれぞれ案内するために用いられ、即ち横置きリンクを受容するためのポケットと、縦置きリンクを受容するために周方向に延在する溝部とを有するように構成されている。チェーンホイールR11、R12は、互いに固定の角度オフセットを有し、この角度オフセットは、1つのチェーンホイールの2つの連続するチェーンリンクの間の角度ピッチよりも小さい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのリンクチェーンストランド(S11、S12)又は二重式のリンクチェーン(S61、S62)を有するチェーンホイスト用のチェーンドライブ(D1、D6)であって、
前記チェーンドライブは、2つのチェーンホイール(R11、R12;R61、R62)を有し、これらのチェーンホイールは、前記チェーンドライブの1つの軸線(d;d’)上に相並んで且つ互いに相対回転不能に配設されており、
各チェーンホイールは、横置きリンク(L)と縦置きリンク(T)を交互に有する1つのリンクチェーンストランドの一部分をそれぞれ案内するように構成されており、即ち横置きリンクを受容するためのポケット(H)と、縦置きリンクを受容するために周方向に延在する溝部(F)とを有するように構成されており、
前記チェーンホイールの第1チェーンホイール(R11、R61)が、前記チェーンホイールの第2チェーンホイール(R12、R62)に対して固定の角度オフセット(V)を有し、前記角度オフセット(V)は、前記第1チェーンホイールの2つの連続するチェーンリンクの間の角度ピッチ(U)よりも小さいこと、
を特徴とするチェーンドライブ。
【請求項2】
前記角度オフセット(V)は、半分の角度ピッチよりも小さくないこと、
を特徴とする、請求項1に記載のチェーンドライブ。
【請求項3】
前記角度オフセットVは、ほぼU/3≦V≦5U/6であり、又はU/2≦V≦2U/3であり、ここでUは、角度ピッチを表すこと、
を特徴とする、請求項1に記載のチェーンドライブ。
【請求項4】
ハウジング(E1)が設けられており、前記ハウジング(E1)は、前記チェーンホイールを取り囲み、内側で、半径方向における前記チェーンホイール上のチェーンリンクの運動空間を制限すること、
を特徴とする、請求項1に記載のチェーンドライブ。
【請求項5】
前記ハウジングは、内側で、相並んで2つの溝部(F1、F2)を有し、これらの溝部(F1、F2)において、前記チェーンホイール上を走行するリンクチェーンストランドの縦置きリンクが案内されていること、
を特徴とする、請求項4に記載のチェーンドライブ。
【請求項6】
前記チェーンホイール(R61、R62)は、前記軸線(d’)上でシャフト(W6)を介して互いに離間されていること、
を特徴とする、請求項1に記載のチェーンドライブ。
【請求項7】
平行に延在する2つのリンクチェーンストランドを有するチェーン懸架機用のスリング装置であって、
前記スリング装置(A1)は、所定の荷重方向(b)に関して設けられており、一方の端部において荷重用の連結部(B1)を含み、荷重方向で見て該端部とは反対側の端部(C)において、各リンクチェーンストランドのそれぞれの終端リンクのために相並んで配設された2つの接続箇所(C11、C12)を含んでいる構成であり、
前記接続箇所は、荷重方向に沿って互いにオフセットされて配設されており、即ち荷重方向(b)に沿ったチェーンピッチ(u)よりも小さい直線的なオフセット(v)をもって配設されていること、
を特徴とするスリング装置。
【請求項8】
前記連結部は、荷重方向に対して横方向の軸線(x、y)の周りに旋回可能であるスリング湾曲部(B7、B9)を有し、当該軸線は、リンクチェーンストランドが延在する面内に位置するか、又はこの面に対して横方向に位置すること、
を特徴とする、請求項7に記載のスリング装置。
【請求項9】
前記連結部は、アイ部(B1、B8)を有し、前記アイ部(B1、B8)は、荷重方向(b)に対して横方向に配向され且つリンクチェーンストランドが延在する面に対して横方向に配向されていること、
を特徴とする、請求項7に記載のスリング装置。
【請求項10】
前記連結部は、雌ねじを備えた開口部を有し、前記開口部は、荷重方向に対して横方向に配向され且つリンクチェーンストランドが延在する面に対して横方向に配向されていること、
を特徴とする、請求項7に記載のスリング装置。
【請求項11】
前記連結部は、荷重フックを含み、前記荷重フックは、荷重方向(b)と平行の軸線の周りに回転可能に前記スリング装置に備えられていること、
を特徴とする、請求項7に記載のスリング装置。
【請求項12】
各接続箇所(C71、C72;C91、C92)は、荷重方向に又は荷重方向に対して僅かな角度をもって延在する脚部(N71、N72;N91、N92)に配設されており、それらの脚部の間には、前記接続箇所に取り付けられたチェーンの間の振動を減衰させるために変形可能な材料から成る中間要素(M7、M9)が配設されていること、
を特徴とする、請求項7~11のいずれか一項に記載のスリング装置。
【請求項13】
前記中間要素(M7、M9)は、エラストマ材料から成るブロックとして、及び/又は液圧ダンパ要素として構成されていること、
を特徴とする、請求項12に記載のスリング装置。
【請求項14】
請求項1に記載のチェーンドライブ(D1、D6)と、請求項7に記載のスリング装置(A1、A2、A7、A9)とを含んだ、2つのリンクチェーンストランド又は二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステム。
【請求項15】
請求項6に記載のチェーンドライブ(D6)と、軸線部(Y6)が荷重を引受けるために設けられているチェーンホイールとして構成されたチェーン方向転換ホイール(Q6)とを含んだ、二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の記載)
本出願は、2021年9月23日出願の欧州特許出願第21198589.0号(DAS Code: D779)の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は、引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【0002】
本発明は、チェーンホイスト用の二重式のチェーンホイールを備えたチェーンドライブ(チェーン駆動装置)に関し、そこでは、1つよりも多くのリンクチェーン(リンク鎖)が支持手段として使用される。特に本発明は、2つ以上のリンクチェーンストランド(一連のリンクチェーン)を有するチェーンホイスト用のチェーンドライブに関し、該チェーンドライブは、特に2つのリンクチェーンの場合、並びに二重式の1つのリンクチェーンの場合を含み、この際、チェーンドライブは、2つないし複数のチェーンホイールを有し、これらのチェーンホイールは、チェーンドライブの1つの軸線上に相並んで且つ互いに相対回転不能に配設されており、この際、各チェーンホイールは、横置きリンクと縦置きリンクを交互に有する1つのリンクチェーンの一部分をそれぞれ案内するように構成されている。そのためにチェーンホイールは、横置きリンクを受容するためのポケットと、縦置きリンクを受容するために周方向に延在する溝部とを有する。
【0003】
更に本発明は、平行に延在する2つのリンクチェーンストランドを有するチェーン懸架機用のスリング装置(ストップ装置)に関し、この際、スリング装置は、所定の荷重方向に関して設けられており、一方の端部において荷重用の連結部を含み、荷重方向で見て該端部とは反対側の端部において、各リンクチェーンストランドのそれぞれの終端リンクのために相並んで配設された2つの接続箇所を含んでいる。同様に本発明は、本発明によるスリング装置及び/又は本発明によるチェーンドライブを含んだ、2つ(又はそれよりも多く)のリンクチェーン(ストランド)を有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステムに関する。
【背景技術】
【0004】
チェーンホイストは、巻上機であり、そこでは、リンクチェーン(特に工業用の丸鋼チェーン又は形鋼チェーン)が、荷重を持ち上げる及び/又は移動させるための支持手段として使用される。またそこではチェーンストランドのチェーンリンクがチェーンホイール(チェーンスプロケットとも呼ばれる)を介して案内され、この際、チェーンストランドのそれらのリンクは、チェーンホイールの外面上で交互に縦置きと横置きで配向されている。また二重式のチェーンホイールを含んだチェーンドライブを介した2つのチェーンの同時案内も既知となっている。そのような構成は、例えば本願図面の図20で見ることができ、そこでは、先行技術によるダブルチェーンホイールD0が、両方のチェーンホイールのうちの1つを介してそれぞれ案内された2つのチェーンストランドにおける幾つかのチェーンリンクの象徴的な描写とともに示されている。チェーンリンクは、それぞれのチェーンホイール上で縦置きと横置きで交互に配向されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/095572号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リンクチェーンを有するチェーンホイストにおける既知の問題は、ポリゴン作用(Polygoneffekt)である。ポリゴン作用とは、チェーンが引張られて入り込むときの荷重チェーンホイストの周期的な振動(Aufschwingen)のことであり、この振動は、引張ローラ上のチェーンの異なる有効半径により発生する。極端な場合、チェーンは、共振振動数に至るまで振動することがある。
【0007】
本発明の課題は、既知のダブルチェーンホイールの上記の欠点を克服することである。特にポリゴン作用は、できるだけ十分に減少されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、以下のチェーンドライブにより解決され、即ち本発明に従い、第1チェーンホイールが第2チェーンホイールに対して「ねじられて」おり、つまり第1チェーンホイールが固定(ないし所定)の角度オフセット(角度ずれ:0°よりも大きい、例えば少なくとも5°)を有し、該角度オフセットは、第1チェーンホイールの2つの連続するチェーンリンクの間の角度ピッチよりも小さい、チェーンドライブにより解決される。角度ピッチは、チェーンホイールにおいて、連続するチェーンポケットの間の半分の角度として決定可能である。
【0009】
即ち本発明の第1の視点により、
2つのリンクチェーンストランド又は二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブであって、
前記チェーンドライブは、2つのチェーンホイールを有し、これらのチェーンホイールは、前記チェーンドライブの1つの軸線上に相並んで且つ互いに相対回転不能に配設されており、
各チェーンホイールは、横置きリンクと縦置きリンクを交互に有する1つのリンクチェーンストランドの一部分をそれぞれ案内するように構成されており、即ち横置きリンクを受容するためのポケットと、縦置きリンクを受容するために周方向に延在する溝部とを有するように構成されており、
前記チェーンホイールの第1チェーンホイールが、前記チェーンホイールの第2チェーンホイールに対して固定の角度オフセットを有し、前記角度オフセットは、前記第1チェーンホイールの2つの連続するチェーンリンクの間の角度ピッチよりも小さいこと、
を特徴とするチェーンドライブが提供される。
更に本発明の第2の視点により、
平行に延在する2つのリンクチェーンストランドを有するチェーン懸架機用のスリング装置であって、
前記スリング装置は、所定の荷重方向に関して設けられており、一方の端部において荷重用の連結部を含み、荷重方向で見て該端部とは反対側の端部において、各リンクチェーンストランドのそれぞれの終端リンクのために相並んで配設された2つの接続箇所を含んでいる構成であり、
前記接続箇所は、荷重方向に沿って互いにオフセットされて配設されており、即ち荷重方向に沿ったチェーンピッチよりも小さい直線的なオフセットをもって配設されていること、
を特徴とするスリング装置が提供される。
更に本発明の第3の視点により、
前記第1の視点に記載のチェーンドライブと、前記第2の視点に記載のスリング装置とを含んだ、2つのリンクチェーンストランド又は二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステムが提供される。
更に本発明の第4の視点により、
チェーンホイールが軸線上でシャフトを介して互いに離間されて構成されたチェーンドライブと、軸線部が荷重を引受けるために設けられているチェーンホイールとして構成されたチェーン方向転換ホイールとを含んだ、二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステムが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、上記課題に対応する効果が達成される。即ち既知のダブルチェーンホイールの上記の欠点が克服され、特にポリゴン作用ができるだけ十分に減少される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、以下の形態が可能である。
(形態1)
2つのリンクチェーンストランド又は二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブであって、
前記チェーンドライブは、2つのチェーンホイールを有し、これらのチェーンホイールは、前記チェーンドライブの1つの軸線上に相並んで且つ互いに相対回転不能に配設されており、
各チェーンホイールは、横置きリンクと縦置きリンクを交互に有する1つのリンクチェーンストランドの一部分をそれぞれ案内するように構成されており、即ち横置きリンクを受容するためのポケットと、縦置きリンクを受容するために周方向に延在する溝部とを有するように構成されており、
前記チェーンホイールの第1チェーンホイールが、前記チェーンホイールの第2チェーンホイールに対して固定の角度オフセットを有し、前記角度オフセットは、前記第1チェーンホイールの2つの連続するチェーンリンクの間の角度ピッチよりも小さいこと、
を特徴とするチェーンドライブ。
(形態2)
前記角度オフセットは、半分の角度ピッチよりも小さくないこと、
を特徴とする、形態1に記載のチェーンドライブ。
(形態3)
前記角度オフセットVは、ほぼU/3≦V≦5U/6であり、好ましくはU/2≦V≦2U/3であり、ここでUは、角度ピッチを表すこと、
を特徴とする、形態1に記載のチェーンドライブ。
(形態4)
ハウジングが設けられており、前記ハウジングは、前記チェーンホイールを取り囲み、内側で、半径方向における前記チェーンホイール上のチェーンリンクの運動空間を制限すること、
を特徴とする、形態1~3のいずれか1つに記載のチェーンドライブ。
(形態5)
前記ハウジングは、内側で、相並んで2つの溝部を有し、これらの溝部において、前記チェーンホイール上を走行するリンクチェーンストランドの縦置きリンクが案内されていること、
を特徴とする、形態4に記載のチェーンドライブ。
(形態6)
前記チェーンホイールは、前記軸線上でシャフトを介して互いに離間されていること、
を特徴とする、形態1~5のいずれか1つに記載のチェーンドライブ。
(形態7)
平行に延在する2つのリンクチェーンストランドを有するチェーン懸架機用のスリング装置であって、
前記スリング装置は、所定の荷重方向に関して設けられており、一方の端部において荷重用の連結部を含み、荷重方向で見て該端部とは反対側の端部において、各リンクチェーンストランドのそれぞれの終端リンクのために相並んで配設された2つの接続箇所を含んでいる構成であり、
前記接続箇所は、荷重方向に沿って互いにオフセットされて配設されており、即ち荷重方向に沿ったチェーンピッチよりも小さい直線的なオフセットをもって配設されていること
を特徴とするスリング装置。
(形態8)
前記連結部は、荷重方向に対して横方向の軸線の周りに旋回可能であるスリング湾曲部を有し、当該軸線は、好ましくは、リンクチェーンストランドが延在する面内に位置するか、又はこの面に対して横方向に位置すること、
を特徴とする、形態7に記載のスリング装置。
(形態9)
前記連結部は、アイ部を有し、前記アイ部は、荷重方向に対して横方向に配向され且つ好ましくはリンクチェーンストランドが延在する面に対して横方向に配向されていること、
を特徴とする、形態7又は8に記載のスリング装置。
(形態10)
前記連結部は、雌ねじを備えた開口部を有し、前記開口部は、荷重方向に対して横方向に配向され且つ好ましくはリンクチェーンストランドが延在する面に対して横方向に配向されていること、
を特徴とする、形態7、8、又は9に記載のスリング装置。
(形態11)
前記連結部は、荷重フックを含み、前記荷重フックは、好ましくは、荷重方向と平行の軸線の周りに回転可能に前記スリング装置に備えられていること、
を特徴とする、形態7~10のいずれか1つに記載のスリング装置。
(形態12)
各接続箇所は、荷重方向に又は荷重方向に対して僅かな角度をもって延在する脚部に配設されており、それらの脚部の間には、前記接続箇所に取り付けられたチェーンの間の振動を減衰させるために変形可能な材料から成る中間要素が配設されていること、
を特徴とする、形態7~11のいずれか1つに記載のスリング装置。
(形態13)
前記中間要素は、エラストマ材料から成るブロックとして、及び/又は液圧ダンパ要素として構成されていること、
を特徴とする、形態12に記載のスリング装置。
(形態14)
形態1~6のいずれか1つに記載のチェーンドライブと、形態7~13のいずれか1つに記載のスリング装置とを含んだ、2つのリンクチェーンストランド又は二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステム。
(形態15)
形態1~6のいずれか1つに記載のチェーンドライブ、特に形態6に記載のチェーンドライブと、軸線部が荷重を引受けるために設けられているチェーンホイールとして構成されたチェーン方向転換ホイールとを含んだ、二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステム。
【0012】
上記の比較的簡単な措置により、個々のチェーンホイールの少なくとも半分のポリゴン作用の驚くほど効果的な減少が得られる。1ストランドのチェーンホイストでは不可避のポリゴン作用は、この解決策により著しく減少される。2つのチェーンストランドへの荷重分配により、両方のチェーンストランドの互いに時間的に異なる半径方向の振れを充分に補償することができる。
【0013】
特に、ポリゴン作用の低減に関し、角度オフセットの有利な値は、ほぼ半分の角度ピッチであることが示された。全般的に好ましくは、角度オフセットは、半分の角度ピッチよりも小さくすべきではないだろう。その値が半分の角度ピッチを超える角度オフセットは、対称性の理由から、二倍の角度ピッチに関して対応の補完分(Komplement)と同等である。目的に適ったポリゴン作用の減少にとって有利な角度オフセットVの範囲は、特にほぼU/3≦V≦5U/6、好ましくはU/2≦V≦2U/3であり、ここに、Uは、角度ピッチを表している。
【0014】
必ずしも必要ではないが、多くの場合は、チェーンドライブが更にハウジングを有し、該ハウジングが、チェーンホイールを取り囲み、内側で、半径方向におけるチェーンホイール上のチェーンリンクの運動空間を制限すると、有利である。該ハウジングは、内側で、相並んで2つの溝部を有することができ、これらの溝部において、チェーンホイール上を走行するリンクチェーンストランドの縦置きリンク(垂直姿勢リンク)が案内されている。このことは、ハウジング内の横置きリンク(水平姿勢リンク)の運動空間も有利に制限できることを可能とする。
【0015】
チェーンホイールは、互いに直接的に隣接することができ、場合によりむしろ一部材式であっても、又は軸線上でシャフトを介して互いに離間されていてもよい。この際、シャフトは、チェーンホイールの間に直径の減少された領域を有することができる(図17を参照)。従ってチェーンホイールは、相並んで位置し、場合により連結シャフトにより連結されているが、伝動部材又は駆動部材のような介在のコンポーネントは伴わない。
【0016】
前記課題は、更に、冒頭に記載した形式のスリング装置により解決され、並びにチェーンホイスト用のチェーンドライブシステムにより解決され、該チェーンホイストは、2つ(又はそれよりも多くの)リンクチェーン(ストランド)を含み、この際、2つ以上のチェーンストランドは、同じリンクチェーンの部分でもよく、つまりこのリンクチェーンは、その際には二重で案内されており、また該チェーンホイストは、前記スリング装置と本発明によるチェーンドライブとを含んでおり、この際、スリング装置には、接続箇所が、荷重方向に沿って互いにオフセットされて配設されており、即ち荷重方向に沿ったチェーンピッチよりも小さい直線的なオフセットをもって配設されている。
【0017】
連結部のためには、多岐にわたる構成形態が考えられる。特に連結部は、固定的に取り付けられていることが可能であり且つしかし好ましくは通常は荷重方向に対して横方向(左右方向)の軸線の周りに旋回可能であるスリング湾曲部を含み、この際、その軸線は、好ましくは、リンクチェーンストランドが延在する面内に位置するか、又はこの面に対して横方向に位置する。しかし連結部は、荷重を取り付ける(引受ける)ための開口部を有することもできる。この開口部は、例えばアイ部としてよい。またこの開口部は、雌ねじを有することもできる。アイ部ないし開口部は、荷重方向に対して横方向に配向されていてよく、また好ましくはリンクチェーンストランドが延在する面に対して横方向に配向されていてよい。それに代わり又は組み合わせにおいて、連結部は、荷重フックを含むことができる。この荷重フックは、好ましくは、荷重方向と平行の軸線の周りに回転可能にスリング装置に備えられていることが可能である。
【0018】
チェーンストランドの間の運動の影響を更に減少させるために、各接続箇所が、荷重方向に(又は荷重方向に対して僅かな角度をもって、例えば<45°で)延在する脚部に配設されていると、有利であり得て、この際、それらの脚部の間には、接続箇所に取り付けられたチェーンの間の振動を減衰させるために変形可能な材料から成る中間要素が配設されている。この中間要素は、例えば、エラストマ材料から成るブロックとして、及び/又は液圧ダンパ要素として構成されていることが可能である。
【0019】
従って、2つのリンクチェーンストランド、又は二重式のリンクチェーンを有するチェーンホイスト用のチェーンドライブシステムは、本発明により、上述したチェーンドライブと、上述したスリング装置とを含むことができる。
【0020】
本来の意味でのスリング装置に代わり、チェーンホイストにおいては、二重式のリンクチェーン(リンクチェーンの間)に挿入されるチェーンホイールを使用することもできる。従って、既述したチェーンドライブと、特に離間したチェーンホイールと、チェーンホイールとして構成されたチェーン方向転換ホイールとを有するチェーンドライブシステムが得られる。この際、このチェーン方向転換ホイールの軸線部は、荷重を引受けるために設けられていることが可能である。
【0021】
以下、本発明を、更なる詳細及び利点とともに、図面に図示されて単に例示でありまた本発明を制限するものではない、幾つかの実施例に基づき、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施例による、ダブルチェーンホイールと第1スリング装置を備えたチェーンドライブシステムの斜視図を示す図である。
図2図1のチェーンドライブシステムを、上方から見た図(図2a)として、正面図(図2b)として、及び側面図(図2c)として示す図である。
図3】チェーンホイールの回転の経過中の角度に対する平均チェーン半径の依存性を、4つの異なるオフセットの値に対して示す図である。
図4図1のチェーンドライブ部材を、正面図(図4a)として、それぞれの中心面に沿った両方のチェーンホイールの2つの断面図(図4b、4c)として、及び軸線を含む断面図(図4d)として示す図である。
図5図4のチェーンドライブを含んだ巻上装置を、正面図(図5a)として、側面図(図5b)として、及び斜視図(図5c)として示す図である。
図6図4のチェーンドライブを、チェーンホイールを取り囲むハウジングとともに、正面図(図6a)として、両方のチェーンホイールの中心面にそれぞれ沿った断面図(図6b、6c)として、及び軸線を含む断面図(図6d)として示す図である。
図7】第2実施例による、スリング装置を備えたチェーンドライブシステムを示す図である。
図8図7のチェーンドライブシステムを、上方から見た図(図8a)として、正面図(図8b)として、及び側面図(図8c)として示す図である。
図9図7のスリング装置の正面図を示す図である。
図10】更なる一実施例による、スリング装置を備えたチェーンドライブシステムを示す図である。
図11図10のチェーンドライブシステムを、上方から見た図(図11a)として、正面図(図11b)として、及び側面図(図11c)として示す図である。
図12図10のスリング装置の正面図を示す図である。
図13】更に一実施例による、荷重フックを有するスリング装置を備えたチェーンドライブシステムを示す図である。
図14図13のチェーンドライブシステムを、上方から見た図(図14a)として、正面図(図14b)として、及び側面図(図14c)として示す図である。
図15】更なる一実施例による、互いに離間されたチェーンホイールと、チェーン方向転換ホイールとを有するチェーンドライブ部材を備えたチェーンドライブシステムを示す図である。
図16図15のチェーンドライブシステムを、上方から見た図(図16a)として、正面図(図16b)として、及び側面図(図16c)として示す図である。
図17図15のチェーンドライブ部材を、正面図(図17a)として、それぞれの中心面に沿った両方のチェーンホイールの2つの断面図(図17b、17c)として、軸線を含む断面図(図17d)として、並びに斜視図として(図17e)として示す図である。
図18】更なる一チェーンドライブシステムを、側面図(図18a)として、及び正面図(図18b)として示す図である。
図19図18のチェーンドライブシステムに付属のスリング部材を示す図である。
図20】従来技術による、角度オフセットのない一ダブルチェーンホイールを示す図である。
【実施例0023】
図面では、一目瞭然性の理由から、同じ要素には同じ参照符号が付けられている。また請求項における参照符号は、より良い理解のためだけに用いられ、決してそれぞれの実施形態への制限を表すものではない。図面には、実施例が示されており、そこでは(このことは本発明について制限として理解されるべきではないが)荷重は、重力に反して支持され、従ってそこでは、荷重方向b(図1を参照)は、垂直方向と一致する。しかし他の適用形態において、例えば軌道に沿った荷重の搬送時のように、荷重方向が異なって配向されていてもよいことは明らかであり、その際に荷重方向は、通常は、走行経路の延在方向に対応する。全般的に、チェーンホイストにおいて荷重手段として使用されるチェーンは、荷重のかかった稼働状態では、荷重方向に沿って実質的に対称的に延在する。「上側領域」、「下側の」又は「下側」のような概念は、その意味どおり理解され、即ち垂直方向に想定された荷重方向による配向ないし向きに関連して理解されるべきである。
【0024】
以下で説明される実施例は、個々のチェーンリンクがチェーンの延在方向の周りに互いに90°でねじれている丸鋼チェーンのために構成されたチェーンドライブに関する。またチェーンは、例えば形鋼チェーンのように他の形状のチェーンリンクでもよく、当業者は、これらの種類のチェーンのために、本発明によるチェーンホイールとチェーンドライブシステムの適切な適合を容易に行うことができる。チェーンは、通常は、例えば肌焼鋼のような鋼材から製造されているが、調質鋼ないし焼入焼戻鋼も使用される。
【0025】
リンクチェーンが本発明によるチェーンドライブのチェーンホイール(チェーンスプロケット)を介して案内されている場合には、個々のチェーンリンクは、交互に縦置きTと横置きLで(例えば図1を参照)それぞれのチェーンホイール上に保持され、その状態で案内されている。この際「縦置き」(立設)及び「横置き」(平置き)との概念は、既に従来技術で一般的に使われている意味を有する。即ち縦置きチェーンリンクT(以下、単に「縦置きリンク」とも称する)は、一方の脚部(だけ)で支持されているチェーンリンクである。チェーンホイール上の縦置きチェーンリンクの目穴部は、チェーンホイールの回転軸線と実質的に平行の方向に向けられている。チェーンホイール上では、多くの場合、縦置きチェーンリンクのその脚部は、周方向に延在し且つチェーンリンクの位置を規定するチェーンホイールの溝部内に位置する。横置きチェーンリンクL(以下、単に「横置きリンク」とも称する)は、両方の脚部が相並んで載置しているチェーンリンクである。チェーンホイール上の横置きチェーンリンクの目穴部は、チェーンホイールの回転軸線に関して実質的に半径方向に向けられている。ここで考察されるチェーンホイールには、通常は、それぞれ横置きチェーンリンクを受容するチェーンポケットが設けられている。
【0026】
図1は、第1実施例による、ダブルチェーンホイールD1の形態のチェーンドライブを備えたチェーンドライブシステムを、ダブルチェーンホイールD1上に案内されるチェーンホイストの2つのチェーンストランドS11、S12とともに、斜視図として示しており、またそれらのチェーンストランドS11、S12の端部には、スリング部材A1の形態のスリング装置が固定されている。図2では、このチェーンドライブシステムが3つの図(図2a~図2c)として、即ち上方から見た図(図2a;荷重方向bに沿った視線方向)として、正面図(図2b)として、及び側面図(図2c;チェーンホイールの回転軸線dと平行の視線方向)として示されている。図1図2において、チェーンドライブは、チェーンホイールと、チェーンホイールに案内されたチェーンストランドとが良く見れるように、ハウジングのない状態で示されている。ハウジングE1は、オプションであり、更に後続段落で図5図6に基づいて説明される。
【0027】
図1図2で見ることができるように、両方のチェーンストランドS11、S12は、ダブルチェーンホイールD1の両方のチェーンホイールR11、R12のそれぞれ1つのチェーンホイールの周りに案内されており、この際、個々のチェーンリンクは、それぞれのチェーンホイールR11、R12上で、交互に縦置きTと横置きLで保持され、その状態で案内されている。
【0028】
チェーンホイールR11、R12の各チェーンホイールは、所謂ポケットチェーンホイールとして構成されている。つまりポケットチェーンホイールは、ほぼ長円形のリンク形状に適合されており且つそれぞれの横置きチェーンリンクLのために実質的に平らな載置面(ポケット底部)を備えたポケットHを有する。ポケットHの長手方向中央部には、場合により更に窪み部が形成されていてもよく、これらの窪み部は、チェーンリンクの脚部の周りの万一の溶接ビード(非図示)を受容するために用いられ、このことは、そのような溶接ビードが存在する場合でも横置きチェーンリンクLがポケットHの載置面上に平面的に載置することができるようにするためである。チェーンホイールのポケットHは、ウェブGにより互いに画定されており、この際、各ウェブGは、チェーンホイールR11、R12の中心面m1、m2内に縦置きリンクTを受容するための溝部Fにより分割されており、それにより1つのウェブGは、2つの歯部Z(それぞれ中央面m1ないしm2の左側と右側)に分割されている。本実施例でチェーンホイールは、側面図において五角形(ペンタゴナル)の形状を有し、5つのポケットHと、それに対応してこれらのポケットHを互いに画定する5つのウェブGとを有する。しかしチェーンホイールが容易により多数の又はより少数のポケットとウェブをもつこともできることは明らかである。
【0029】
ウェブGは、凸状の側面部を有し、これらの側面部は、それらの「内側の」(即ち回転軸線dの近くにある)縁部において、好ましくは明らかな移行エッジを用い、ポケットHの平らな載置面に直接的に移行する。それに加え、縦置きリンクTのために好ましくは平坦に形成された溝部Fの底部において、歯部Zの間にへこみ部が作られていることも可能であり、このへこみ部は、ポケット底部における上述の窪み部と同じ目的のために用いられ、即ち縦置きリンクTの万一の溶接ビード(非図示)を受容するために用いられ、このことは、縦置きリンクTがその内側(半径方向内側)の脚部の平坦な外側部を用いて溝部底部上に平面的に載置するないし支持されることができるようにするためである。つまり溝部Fの溝部底部における縦置きリンクTの支持は、チェーンドライブないしチェーンホイールの機能にとって非常に重要であり、その理由は、横置きリンクLがそれらの旋回挿入過程では縦置きリンクTにおいて支持されるためであり、それにより正しい位置でのそれぞれのポケット底部への横置きチェーンリンクの旋回挿入が容易化される。チェーンホイールのこの構成により、横置きリンクLと縦置きリンクTの両方が面的に支持され、つまり横置きリンクLは、その側面部の大部分がポケットHの載置面において支持され、縦置きリンクTは、内側(半径方向内側)に位置する脚部の外面部が溝部底部において支持される。
【0030】
ダブルチェーンホイールD1において、両方のチェーンホイールR11、R12は、相並んで同軸で相対回転不能に互いに結合されている。本発明によりこれらのチェーンホイールは、互いに0°よりも大きい角度オフセット(角度ずれ)を有し、つまり回転軸線dに沿って見て、一方のチェーンホイールR11のチェーンポケットHは、他方のチェーンホイールR12のチェーンポケットHに対して異なる角度位置にある。このことは、ウェブGに対しても同等であるとすることができ、つまり回転軸線dに沿った視線方向で見て、一方のチェーンホイールR11のウェブGは、他方のチェーンホイールR12のウェブGに対して異なる角度位置にある。この角度オフセットは、図2ではVで示され、図1図2の実施形態では、ほぼ18°の値をとり、このことは、五角形のチェーンホイール上のチェーンの角度ピッチ(角度分割)Uの半分に対応する。
【0031】
全般的には、本発明により、角度オフセットVは角度ピッチUよりも小さいことが提案される。角度ピッチUは、チェーンホイール上で、1つのチェーンポケットHと、このチェーンポケットHを画定する両方のウェブGのうちの1つのウェブとの間の角度差として見ることができ、例えば、チェーンポケットHないしウェブGの中心点を通って延在する半径ラインに基づいて測定される(図2cを参照)。従って角度ピッチUは、同じチェーンホイールの連続するそれぞれ2つのチェーンポケットH(又はウェブG)の間の角度差の半分であることと同等である。それによりチェーンホイール上の連続する2つのチェーンリンクT、Lも、角度ピッチUに対応する角度間隔を互いに有する。本発明によると、後続段落で詳細に議論されるように、0<V<U、この際、好ましくは、V≧U/2である。
【0032】
荷重は、両方のチェーンストランドの端部においてスリング装置を用いて接続され、該スリング装置は、両方のチェーンストランドのためにそれぞれ接続箇所を有し、この際、これらの接続箇所は、荷重方向に沿って互いにオフセットされて(ずらされて)配設されており、つまり荷重方向に沿ったチェーンピッチよりも小さいオフセット分だけずらされている。
【0033】
図1図2に示された実施例において、スリング装置は、スリングロッカA1とも呼ばれるスリング部材A1として構成されている。スリングロッカA1は、例えば肌焼鋼、又は調質鋼ないし焼入焼戻鋼である鋼材から成る、打ち抜き加工された2つの形状金属板から構成されており、これらの形状金属板は、互いに左右対称に形成されており、互いに連結部B1の領域で溶接されている。スリングロッカA1は、2つの部分に分けられている。即ち両方の形状金属板部材がフォーク状に離れて延在する接続部分C(つまり図1図2bにおいてスリング部材の上部)と、既述の連結部B1(つまり図1図2bにおいてスリング部材の下部)である。フォーク状に構成された接続部分Cは、フォーク形状部の中間空間内に受容される両方のリンクチェーンのそれぞれ1つの終端リンクを接続するために設けられており、そのために2つの接続箇所C11、C12を有する。各接続箇所C11、C12は、示された実施例では、それぞれ、互いに対向する一対の穴部を有し、これらの穴部を通してボルトを案内することができる。チェーンを接続するためには、チェーンの終端リンクが所謂フォークの中間空間内に挿入され、ボルトがそれらの穴部を通して案内され、例えば割りピンを用いて固定される。連結部B1は、図1図2の実施例では、アイ部を有するように構成されており、その開口部にフックを懸架させることができるか、又は荷重が固定されている他のスリング手段を取り付けることができる。従って連結部B1のアイ部は、荷重方向に対して横方向(左右方向)に配向され、また好ましくは、リンクチェーンが延在する面に対して横方向に配向されている。代替的に又はアイ部との組み合わせにおいて、ねじ穴部(非図示)が設けられていることも可能であり、つまり好ましくは両側からスリング手段(例えば固定のためのロッド)を挿入するないしねじ込むことのできる、雌ねじを有する開口部が設けられていることも可能である。ねじ穴部は、同様に荷重方向に対して横方向に配向されており、またリンクチェーンが延在する面に対して横方向に延在することもでき、又はこの面内に位置することもできる。
【0034】
全般的に、スリング装置は、連結部とは反対側において、各リンクチェーンのそれぞれの終端リンクのために相並んで配設された2つの接続箇所を有し、この際、これらの接続箇所は、荷重方向に沿って互いにオフセットされて配設され、つまりゼロ(ゼロは従来の「同じ高さ」であろう)とは異なる直線的なオフセットv分だけオフセットされて配設されており、この直線的なオフセットvは、荷重方向に沿ったチェーンピッチuよりも小さい。直線的なオフセットvは、チェーンホイール上のチェーンの平均半径rに関する角度オフセットVと関連し、この際、V=v/rである。
【0035】
0<V<Uの角度オフセットV(0<v<uの直線的なオフセットvに対応する)分だけ互いにオフセットされている2つのチェーンストランドへの荷重分配により、及び補償ロッカ(スリングロッカ)の使用により、両方のチェーンストランドの時間的に異なる半径方向の振れが十分に補償される。このことが図3に図解されている。
【0036】
図3には、チェーンホイールの回転の経過中の角度に対する平均チェーン半径の依存性が4つのグラフに基づいて図解されており、これらの4つのグラフは、それぞれが角度オフセットVに関して異なる4つのバリエーションに対応している。即ち一番上のグラフは、V=1Uであり、その下は、V=0.75Uであり、3番目のケースは、V=0.5Uであり、一番下のグラフは、V=0.25Uである。図3は、16x45の型式のチェーン、即ちチェーンの線径が16mmであり、チェーンピッチがu=45mmであるチェーンについて、五角形のチェーンホイールを備えたダブルチェーンホイールに関するシミュレーションの結果を示している。縦軸上には、最大値に対する有効チェーン半径Δr(ミリメートル単位)の変化が記入されている。鎖線と二点鎖線は、個々のリンクチェーンの半径変動を示しており、例えば、鎖線は、第1チェーンストランドS1のためのものであり、二点鎖線は、第2チェーンストランドS2のためのものであり、実線は、それらから平均化された曲線であり、この曲線が、連結部(例えば連結部B1)に取り付け(ないし引受け)られている荷重により「感じられる」。ポリゴン作用の補償は、個々のリンクチェーンの半径変動の振幅と、平均化された曲線の振幅との間の比較から得られる。図3で見ることができるように、V=1U(一番上のグラフ)では、47%の振幅減少に対応するポリゴン作用の補償が得られ、V=0.75U(2番目のグラフ)では、補償は40%であり、V=0.5Uの3番目のケースでは、50%の補償が得られ、V=0.25U(一番下のグラフ)では、補償は再び40%である。
【0037】
このことは、本発明が所謂ポリゴン作用の著しい減少を達成できることを明らかに示しており、この際、最良の結果は、0.5UにおけるオフセットVにより達成することができる。またここでは、その値が角度ピッチより上に位置する角度オフセット(V>U)は、対称性の理由から、角度オフセットの対応の負の値と同等であり、同様に(角度オフセットの作用は2Uで周期的であるので)二倍の角度ピッチに関して対応の補完値と同等であることを付言する。つまりシンボル的には、以下のように表される:
【0038】
V<->V’=2U-V (1) (「<->」は双方向矢印を表す)
【0039】
従って、0°からUまで(それらを含む)の範囲内にある角度オフセットの値だけを考察することで十分である。0°とは異なるオフセットのための最小値としては、既にポリゴン作用の減少を認めることのできる値を選択すべきであろう。例えば、示された実施例のダブルチェーンホイールのためには、5°の値(又はそれよりも大きい;上限ではそれに対応して67°=72°-5°まで)が、既にほぼ14%(又はそれによりも大きい)でポリゴン作用の減少をもたらし、9°の角度オフセット(ないし63°=72°-9°)は、ほぼ25%で減少をもたらす。
【0040】
それにより角度ピッチの少なくとも半分である角度オフセットの値、即ちV≧U/2は、好ましく、またおおよそUの2/3である値は、特に好ましい。このことは、示された実施例(そこではU=36°)では、ほぼ24°の値に対応する。本発明者は、図3をもとにして表された結果に基づき、全般的にU/2≦V≦2U/3の範囲が特に有利であることから出発しており、この際、この範囲は、要求がさほど高くないのであれば、両側でほぼU/6だけ広げることができる(従ってU/3≦V≦5U/6)。これらの範囲に対しては、勿論、上記の補完式(1)の適用により得られる及び/又は負の値による値の置き換えにより得られる対応の補完範囲が同等とされる。
【0041】
スリングロッカは、チェーンドライブの周りのチェーンの運動中には、荷重方向bの周りの僅かな回転の形態のローリングの補償運動を行う(このことは、例えば図2で回転軸線dに対してスリングロッカA1の向きが小さい角度を有することから見てとれる)が、これらの補償運動は、ポリゴン作用に基づく変位よりも、保持された荷重に対して遥かに少ない妨害的な影響をもつものである。
【0042】
チェーンホイールR11、R12は、例えば鋼材又はプラスチック材料のような適切な材料から、別々に製造されることが可能であり、そのためには、既知の形式の製造法を使用することができ、それに続き、例えば溶接又は接着によりそれらを互いに結合させることができる。また両方のチェーンホイールは、(チェーンドライブの駆動のためにも使用することのできる)シャフト上に差し込むことにより1つのダブルチェーンホイールに組み立てられることも可能である。それに代わり又はそれとの組み合わせにおいて、チェーンホイールは、例えば、横方向のピン、案内キー溝、楔状噛合部などのような取り外し可能な結合機構により、互いに相対回転不能ないし堅固に結合されることが可能である。また1つのバリエーションとして、ダブルチェーンホイールD1は、一部材式で製造されていることも可能である。
【0043】
図4は、図1図2のチェーンドライブのチェーンホイールの更なる詳細を示している。この際、図4aは、チェーンリンクが挿入されていない状態のチェーンドライブ(ダブルチェーンホイールD1)の正面図を示している。図4bと図4cは、それぞれ中心面m1ないしm2に沿った両方のチェーンホイールの断面図を示している。図4dは、ダブルチェーンホイールD1の回転軸線dを通る切断面に沿った(軸線を含む)断面図を示している。
【0044】
図5は、巻上装置I1の一例を示しており、巻上装置I1内には、ダブルチェーンホイールD1が、それに付属のシャフトW1とともに、支持プレートP1上に取り付けられたハウジングE1内で回転可能に備えられている。図5は、3つの図を含み、即ち図5aでは、巻上装置I1の正面図が示され、図5bでは、巻上装置I1の側面図が示され、図5cでは、巻上装置I1の斜視図が示されている。ハウジングE1は、例えばハウジングE1の足部を支持プレートP1に固定するねじボルトを用い、又は他の適切な固定機構により、支持プレートP1上に取り付けられている。支持プレートP1には、例えば矩形の窓部P0が備えられており、窓部P0を通して両方のチェーンがチェーンドライブ内に入るようにないしチェーンドライブから出るように案内されている。ハウジングE1は、チェーンホイールR11、R12を取り囲み、内側で、半径方向におけるチェーンホイール上のリンクチェーンの運動空間を制限する。ダブルチェーンホイールD1は、シャフトW1及びその保持器W11、W12によりハウジングE1内で同心に支持されており、それによりダブルチェーンホイールD1は、ハウジングE1内でハウジングE1に接触することなく回転可能であり、同時にハウジングE1内で回転可能に保持されている。保持器W11、W12は、図5では示唆されているだけであるが、これらは、支持プレートP1に固定されており(非図示)、回転軸線dの周りに回転可能な方式で、巻上装置I1内のシャフトW1の安定した支持、従ってダブルチェーンホイールD1の安定した支持をもたらしてくれる。
【0045】
図6は、巻上装置の簡略化された図を示しており、つまりハウジングE1とともにチェーンドライブだけを示している(ハウジングの足部は、図6では明瞭さために省略されている)。この際、図6aは、チェーンリンクが挿入されていない状態の正面図を示している。図6bと図6cは、それぞれ両方のチェーンホイールの中心面m1ないしm2に沿った断面図を示している。図6dは、ダブルチェーンホイールD1の回転軸線dを通る「水平方向の」切断面6-6に沿った(軸線を含む)断面図を示している。特に図6dの断面図から見てとれるようにハウジングE1は、内側で、相並んだ2つの溝部F1、F2を有し、これらの溝部F1、F2において、チェーンホイール上を走行するリンクチェーンの縦置きリンクが案内されている。ストリッパとも呼ばれるインナ部材K1(図6b、図6c)は、チェーンドライブを出口側で閉じ、チェーン部分を、チェーンドライブ内に入るとき、並びに特にチェーンホイールからチェーンが外される(「はがし取る」)とき及びチェーンドライブを離れるときに案内する。インナ部材K1は、支持プレートP1の窓部P0の内側縁部において保持され、それらの内側縁部において支持されている。
【0046】
図7図19の以下の実施例は、本発明によるスリング装置の様々な構成形態を含んでいる。この際、明瞭さのために、それぞれハウジングないし巻上装置を伴わない状態でチェーンドライブだけが示されている。
【0047】
図7図9に関し、第2実施例により、スリング装置には、連結部側でスリング湾曲部が装備されていることが可能である。図7には、第2実施例によるチェーンドライブシステムが、斜視図として、該チェーンドライブシステム上に案内されるチェーンホイストの2つのチェーンストランドS11、S12とともに示されており、更にそれらの端部には、スリング部材A7の形態のスリング装置が固定されている。図8は、該チェーンドライブシステムを3つの図(図8a~図8c)として、つまり上方から見た図(図8a)として、正面図(図8b)として、及び側面図(図8c;チェーンホイールの回転軸線dと平行で且つスリング部材A7のヒンジ軸線xとほぼ平行である視線方向)として示している。図9は、図7のスリング装置を正面図として示している。
【0048】
スリングロッカA7とも呼ばれるスリング部材A7は、本体部C7と、本体部C7に関節式で連結されたスリング湾曲部B7(以下、単に「湾曲部B7」とも称する)とを含んでいる。本体部C7は、U字形状で構成されており、2つの脚部N71、N72を有し、それらの端部には、それぞれ、2つの接続箇所C71、C72のうちの1つが設けられている。(チェーンとの)各接続箇所C71、C72は、フォーク状接続部として構成されており、その中間空間内に1つのチェーンストランドの1つの終端リンクが挿入され、ボルトを用いて連結され、該ボルトは、例えば割りピンを用いて(軸方向に関し)固定される。
【0049】
図9に関し、脚部N71、N72は、好ましくは、僅かな横断面を有し、このことは、本体部C7の弾性的な変形を可能にし、それにより荷重方向bの周りのローリング運動の緩衝と、その結果としての減少とをもたらしてくれる。それに加え又はそれに代わり、脚部N71、N72の間の接続ウェブJ7は、荷重方向bに対する横方向(左右方向)の両方のチェーンの運動を補償するために、同様に弾性的な変形(特にねじれ)を可能とするように、僅かな横断面を有するように構成されていることが可能である。
【0050】
図8bで見ることができるように、脚部N71、N72の間には、中間要素M7が配設されていることが可能であり、中間要素M7は、荷重方向bに対する横方向(左右方向)の両方のチェーンの運動を追加的に補償するために、減衰要素及び/又は弾性要素として用いられる。中間要素M7は、好ましくは、接続箇所に取り付けられたチェーンの間の振動を減衰させるために変形可能な材料を有する。中間要素M7は、例えばエラストマ材料から成るブロックとして、及び/又は液圧ダンパ要素として構成されていることが可能である。
【0051】
再び図9に関し、本体部C7の(チェーンとの)接続箇所C71、C72とは反対側(即ち「下側」)には、複数のヒンジ部O7が設けられており、これらのヒンジ部O7は、湾曲部B7の対応のヒンジ部とともにヒンジ状の継手を構成する。湾曲部B7は、そのように構成されたヒンジ継手X7(図8b)により、荷重方向bに対して横方向(左右方向)に延在し且つ実質的にリンクチェーンが延在する面内で延在する(図8bでは、従って実質的にダブルチェーンホイールD1の回転軸線dと平行である)ヒンジ軸線xの周りに旋回可能である。湾曲部B7は、ヒンジ軸線xに沿って挿入されるヒンジピンを用いて本体部C7に固定される。接続箇所C71、C72のボルトの延在方向は、好ましくは、ヒンジ軸線xの向きと平行である。
【0052】
図10図12は、更なる一実施例を図示しており、この実施例は、上述の実施例とは、スリング湾曲部B9(以下、単に「湾曲部B9」とも称する)の異なった向きにより異なっている。図10は、この実施例によるチェーンドライブシステムの斜視図を示している。図11は、該チェーンドライブシステムを3つの図(図11a~図11c、図8a~図8cに対応)として、つまり上方から見た図(図11a)として、正面図(図11b)として、及び側面図(図11c)として示している。図12は、図10のストップロッカA9を正面図として示している。
【0053】
図11に関し、特に図12に関し、スリングロッカA9は、スリング湾曲部B9が関節式で連結される本体部C9を有する。スリング湾曲部B9は、スリング湾曲部B7と同じ構造形式であるが、この実施例のチェーンホイストに関しては異なった配向としている。また本体部C9は、2つの脚部N91、N92を有するU字形状で構成されており、それらの端部には、それぞれ、2つの接続箇所C91、C92のうちの1つが設けられている。(チェーンとの)各接続箇所C91、C92は、フォーク状接続部として構成されており、その中間空間内に1つのチェーンストランドの1つの終端リンクが挿入され、ボルトを用いて固定され、該ボルトは、例えば割りピンを用いて(軸方向に関し)固定される。
【0054】
図12に関し、脚部N91、N92は、好ましくは、僅かな横断面を有し、このことは、本体部C9の弾性的な変形を可能にし、それにより荷重方向bの周りのローリング運動及び補償運動の緩衝と、その結果としての減少をもたらしてくれる。更に脚部N91、N92の間の接続ウェブJ9は、荷重方向bに対する横方向(左右方向)の両方のチェーンの運動を補償するために、同様に弾性的な変形(特にねじれ)を可能とするように、僅かな横断面を有するように構成されていることが可能である。
【0055】
図11bで見ることができるように、脚部N91、N92の間には、中間要素M9が配設されていることが可能であり、中間要素M9は、荷重方向bに対する横方向(左右方向)の両方のチェーンの運動を追加的に補償するために、減衰要素及び/又は弾性要素として用いられる。中間要素M9は、好ましくは(チェーンとの)接続箇所に取り付けられたチェーンの間の振動を減衰させるために変形可能な材料を有する。中間要素M9は、例えばエラストマ材料から成るブロックとして、及び/又は液圧ダンパ要素として構成されていることが可能である。
【0056】
再び図12に関し、本体部C9の(チェーンとの)接続箇所C91、C92とは反対側(即ち「下側」)には、ヒンジ部O9が設けられており、これらのヒンジ部O9は、湾曲部B9の対応のヒンジ部とともにヒンジ状の継手を構成する。湾曲部B9は、そのように構成されたヒンジ継手Y9(図11b)により、荷重方向bに対して横方向(左右方向)に延在し且つリンクチェーンが延在する面に対して実質的に横方向(左右方向)に延在する(従って実質的に回転軸線dの向きに対して直角方向である)ヒンジ軸線yの周りに旋回可能である。湾曲部B9は、ヒンジ軸線yに沿って挿入されるヒンジピンを用いて本体部C9に連結される。接続箇所C91、C92のボルトの延在方向は、好ましくは、ヒンジ軸線yの向きと平行である。
【0057】
図13図14には、スリング装置が、荷重フックB2を備えたスリング部材A2として構成されている一実施例が図示されている。図13は、この実施例によるチェーンドライブシステムの斜視図を示している。図14は、該チェーンドライブシステムを3つの図(図14a~図14c、図8a~図8cに対応)として、つまり上方から見た図(図14a)として、正面図(図14b)として、及び側面図(図14c)として示している。
【0058】
スリング部材A2は、筒状に構成されている本体部C2により構成され、その「上側」領域には、(チェーンとの)接続箇所C21、C22が設けられている。本体部C2の内部に設けられているこれらの接続箇所C21、C22を用い、チェーンストランドのそれぞれの終端リンクが挿入され、例えばボルトを用いて連結される。
【0059】
荷重フックB2は、スリング部材A2の本体部C2の「下側」で、好ましくは荷重方向bと平行な所定の軸線の周りに回転可能に備えられている。しかし一変形形態において、荷重フックB2は、本体部C2に相対回転不能に取り付けられていることも可能である。
【0060】
上述した実施例では、両方のチェーンホイールR11、R12が間隔を空けずに相並んで1つにまとめられているダブルチェーンホイールが使用されている。用途に応じ、例えば図16a及び17a~図17eに図示されているように、両方のチェーンホイールを離間させることができる。ダブルチェーンホイールD6では、2つのチェーンホイールR61、R62が、(チェーンホイールよりも小さい直径をもつ)シャフトW6により、予め選択された角度オフセットVをもって互いに相対回転不能に結合されている。結合用のシャフトW6は、両方のチェーンホイールR61、R62を、好ましくは、特に伝動コンポーネント、軸受コンポーネント、又は駆動コンポーネントを介在することなく、互いに直接的に結合させる。
【0061】
離間されたチェーンホイールを有するそのようなダブルチェーンホイールD6は、容易に上述の複数の実施例に対応する実施形態において使用されることが可能であり、その際には、スリング装置において両方の接続箇所の間隔をそれに応じて大きくする必要があるが、このことは、当業者により容易に適合され得る。
【0062】
以下の実施例において図示されているように、スリング装置に代わり、チェーン方向転換ホイールを使用することもできる。チェーン方向転換ホイールの使用のためには、互いに離間されたチェーンホイールを有するチェーンドライブ部材の構成が特に目的に適っている。
【0063】
図15図17には、ダブルチェーンホイールD6上に案内されている両方のチェーンストランドS61、S62が同じリンクチェーンに属する(ないし同じリンクチェーンを成す)チェーンホイストが示されている。そのリンクチェーンは、チェーン方向転換ホイールQ6を介して案内されている。図15は、この実施例によるチェーンドライブシステムを示している。図16は、該チェーンドライブシステムを3つの図(図16a~図16c、図8a~図8cに対応)として、つまり上方から見た図(図16a)として、正面図(図16b)として、及び側面図(図16c)として示している。図17では、ダブルチェーンホイールD6が複数の図(図17a~図17e)として示されており、つまり図17aは、チェーンリンクが挿入されていない状態の正面図を示し、図17bと図17cは、それぞれの中心面m1’ないしm2’に沿った両方のチェーンホイールR61、R62の断面図をそれぞれ示し、図17dは、ダブルチェーンホイールD6の回転軸線d’に沿った切断面7-7を介した(軸線を含む)断面図を示している。そして図17eは、ダブルチェーンホイールD6の斜視図である。
【0064】
この実施例のチェーンホイストにおいて、リンクチェーンは、第1チェーンストランドS61に対応する第1部分が、ダブルチェーンホイールD6として実施されたチェーンドライブ部材の第1チェーンホイールR61を介して案内され、荷重方向bの端部においてチェーン方向転換ホイールQ6の周りに案内され、第2チェーンストランドS62に対応する第2部分が、ダブルチェーンホイールD6の第2チェーンホイールR62を介して再び戻るように案内される。
【0065】
両方のチェーンホイールR61、R62の間の間隔の大きさ(即ち回転軸線d’に沿って測定されたシャフトW6の長さ)は、例えば、有利には、両方の中心面m1’、m2’の互いの間隔が、チェーン方向転換ホイールQ6の周りに案内されているチェーンの平均周直径に対応するように選択されることが可能である。
【0066】
チェーン方向転換ホイールQ6は、その回転軸線に沿って中央の軸線穴部Y6を有することができるか、又は(非図示であるが)好ましくは両側に突出するシャフトを有するように構成されていることが可能である。チェーン方向転換ホイールQ6ないし軸線穴部Y6の回転軸線は、チェーンストランドの運動の結果として、僅かにローリングするが、平均すると、ダブルチェーンホイールD6の回転軸線d’の向きに対して実質的に直角方向に向けられている。チェーン方向転換ホイールQ6における軸線部には、例えば軸線穴部Y6を通って案内されるロッド(非図示)などを用い、荷重を取り付け(ないし引受け)るための手段を設けることができる。
【0067】
図18図19には、更なる一実施例が図示されており、この実施例は、図1図2の実施例に類似するが、一部材式のスリング部材A8を含んでいる。図18は、この実施例によるチェーンドライブシステムを、側面図(図18a)及び正面図(図18b)として示している。図19は、スリング部材A8を正面図として示している。
【0068】
スリング部材A8(「スリングロッカ」)は、(チェーンとの)接続部分C8と連結部B8を有する。接続部分C8は、2つの接続箇所C81、C82を含み、これらの接続箇所C81、C82は、それぞれ、互いに対向する一対の穴部を有し、これらの穴を介し、この実施例ではそれぞれ回転軸線dと平行な方向に沿ってボルトを案内することができる。連結部B8は、アイ部を含み、その開口部には、フックを掛けることができるか、又は荷重が連結されている他のスリング手段を取り付けることができる。アイ部に代わり又はアイ部との組み合わせにおいて、ねじ穴(非図示)を設けることもでき、つまり雌ねじを有する開口部を設けることもできる。因みにスリング部材A8については、図1図2に基づくスリングロッカA1に関する説明が意味に即して該当する。
【0069】
勿論当業者は、本発明を、図示の実施形態及び本明細書に照らし、変更し、所定の要求に適合させることができる。従って本発明の技術的な構造は、図示された実施形態に限定されるものではなく、むしろ本発明は、添付の請求項から得られる保護範囲全体に広げられる。
【0070】
尚、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また本発明の全開示の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。即ち本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想に従って当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0071】
図1図6
D1 ダブルチェーンホイール
R11 チェーンホイール
R12 チェーンホイール
m1 中心面
m2 中心面

H ポケット
G ウェブ
F 溝部
Z 歯部

S11 チェーンストランド
S12 チェーンストランド
T 縦置きチェーンリンク
L 横置きチェーンリンク

V 角度オフセット
v 接続箇所のオフセット
角度ピッチ
チェーンピッチ

A1 スリング部材(スリングロッカ)
B1 連結部
C (チェーンとの)接続部分
C11 接続箇所
C12 接続箇所

b 荷重方向
d 回転軸線

図5
I1 巻上装置
E1 ハウジング
D1 ダブルチェーンホイール
P0 窓部
P1 支持プレート
W1 シャフト
W11 保持器
W12 保持器
d 回転軸線

図6
D1 ダブルチェーンホイール
E1 ハウジング
F1 溝部
F2 溝部
K1 インナ部材
m1 中心面
m2 中心面
6-6 切断面
d 回転軸線

図7図9
D1 ダブルチェーンホイール
S11 チェーンストランド
S12 チェーンストランド
A7 スリング部材(スリングロッカ)
B7 スリング湾曲部
C7 本体部
C71 接続箇所
C72 接続箇所
N71 脚部
N72 脚部
J7 接続ウェブ
M7 中間要素
O7 ヒンジ部
X7 ヒンジ継手
x ヒンジ軸線
b 荷重方向

図10図12
A9 スリング部材(スリングロッカ)
B9 スリング湾曲部
C9 本体部
C91 接続箇所
C92 接続箇所
N91 脚部
N92 脚部
J9 接続ウェブ
M9 中間要素
O9 ヒンジ部
Y9 ヒンジ継手
y ヒンジ軸線
b 荷重方向

図13図14
A2 スリング部材
B2 荷重フック
C2 本体部
C21 接続箇所
C22 接続箇所
b 荷重方向

図15図17
D6 ダブルチェーンホイール
R61 第1チェーンホイール
R62 第2チェーンホイール
W6 シャフト
S61 第1チェーンストランド
S62 第2チェーンストランド
Q6 チェーン方向転換ホイール
Y6 軸線穴部
m1’ 中心面
m2’ 中心面
7-7 切断面
b 荷重方向
d’ 回転軸線

図18図19
A8 スリング部材(スリングロッカ)
B8 連結部
C8 (チェーンとの)接続部分
C81 接続箇所
C82 接続箇所
d 回転軸線

図20
D0 ダブルチェーンホイール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20