(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046400
(43)【公開日】2023-04-04
(54)【発明の名称】組織からm-RNAの空間情報およびシークエンシング情報を取得する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6869 20180101AFI20230328BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230328BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20230328BHJP
C12Q 1/6874 20180101ALI20230328BHJP
【FI】
C12Q1/6869 Z
C12Q1/68
C12N15/09 200
C12N15/09 Z
C12Q1/6874 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151013
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21198504
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンスイューリ マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ピナード
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ロートマン
(72)【発明者】
【氏名】クリス ニーム
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR36
4B063QR55
4B063QR84
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】DNAバーコードの生成およびデコーディングを同時に行う、組織のm-RNA分子のシークエンシングおよび空間デコーディングのための方法を提供する。
【解決手段】組織試料上のm-RNA標的配列の空間位置および配列情報を取得する方法であって、以下の工程
a.少なくとも1つの基準マーカーを少なくとも有する固体表面を準備する工程
b.光切断可能なリンカーおよびアダプター単位を含む複数のアンカー分子を前記固体表面に結合させる工程
c.アンカー分子のアダプター単位に結合することが可能な単位、5~30個のイノシン塩基を有するポリイノシン単位、および10~50個のアデニン塩基を有するポリアデニン単位を含む足場分子を前記アンカー分子に結合する工程
を含んでよい、方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料上のm-RNA標的配列の空間位置および配列情報を取得する方法であって、以下の工程
a.少なくとも1つの基準マーカーを少なくとも有する固体表面を準備する工程
b.光切断可能なリンカーおよびアダプター単位を含む複数のアンカー分子を前記固体表面に結合させる工程
c.アンカー分子のアダプター単位に結合することが可能な単位、5~30個のイノシン塩基を有するポリイノシン単位、および10~50個のアデニン塩基を有するポリアデニン単位を含む足場分子を前記アンカー分子に結合する工程
d.前記足場分子の前記イノシン塩基を補完する前記アンカー分子に、核酸塩基としてアデニン、グアニン、シトシンおよびチミンをランダムに組み込み、それによって前記アンカー分子上にバーコードを生成する工程であって、前記核酸塩基は、光検出可能な単位を備えており、前記バーコードの配列および前記基準マーカーに対するそれらの空間位置が、空間情報として同時に検出される工程
e.前記足場分子の前記ポリアデニン単位を補完する前記アンカー分子にチミンを組み込み、それによってポリT単位を生成する工程
f.前記アンカー分子から前記足場分子を除去する工程
g.少なくとも1つのm-RNA鎖を含む組織試料を準備する工程であって、前記試料の少なくとも1つのm-RNA鎖が、少なくとも1つのアンカー分子のポリT単位に結合する工程
h.前記m-RNA鎖の逆転写を行って、前記固体表面に結合したc-DNA鎖を生成する工程
i.前記アンカー分子の前記光切断可能なリンカーを切断することにより、前記固体表面からc-DNA鎖を除去する工程
j.前記c-DNA鎖の配列情報を取得し、前記空間情報を、前記c-DNA鎖の前記配列情報と連結させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記アンカー分子に、核酸塩基としてアデニン、グアニン、シトシンおよびチミンをランダムに組み込む工程を、A、T、GおよびCの混合物とポリメラーゼとを供給することにより実施することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記空間情報を、前記核酸塩基の前記光検出可能な単位を検出することによって取得することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記空間情報を、シークエンシング・バイ・シンセシスによって取得することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記組織試料を、前記表面から除去することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記c-DNA鎖を環状化し、次いでローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼによって増殖させて複数のDNAコンカテマーにすることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記アンカー分子が、分子濃度に対応する密度で固体基質上にランダムに分布していることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記組織試料を、前記表面に供給した後に透過処理することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記アンカー分子が、ローリングサークル増幅が可能な前記ポリメラーゼのための少なくとも1つのプライマー配列を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、組織のm-RNA分子のシークエンシングおよび空間デコーディングのための方法に関する。
【0002】
潜在的変異体についてこれらの遺伝子の空間情報とその後の配列を維持することにより、組織上の細胞下レベルで発現したすべての遺伝子を検出することは困難であった。細胞下解像度に達することは特に困難である。
【0003】
例えば、DNAバーコード分子の空間デコーディングのためのシークエンシングシステムの開発は、“Single-molecule resolution”(Nature, Dec 2020, Yusuke Oguchi)によって記載されている。
【0004】
組織RNA分子がアレイ上に予めスポットされた空間識別子でタグ付けされる際に空間情報が維持される、商業的手法が利用可能である。得られたライブラリーは、後に、標準的なインビトロNGS(次世代シークエンシング)シークエンシング技術によってシークエンシングされる。スポッティングプロセスにより、シーケンシングプロセスが実行される前に、アレイ上の空間識別子の位置が既知となる。空間識別子のシークエンシング後、対象の連結RNA配列を、組織位置に割り当てることができる。この手法の大きな制限の1つは、現在、多細胞レベルのみにあるアレイ上のスポットの特徴サイズに依存するため、技術の解像度である。
【0005】
シークエンシングおよび空間情報を取得するための技術は、例えば、米国特許出願公開第20150344942号明細書、国際公開第2016162309号、および国際公開第2012/140224号に公開されている。
【0006】
単一細胞トランスクリプトーム解析は、cDNAライブラリーをインデックスするDNAバーコードによって革命的な進化を遂げ、高度に多重化された解析を実施することが可能になった。さらに、DNAバーコードが、空間トランスクリプトームに利用されている。空間分解能は、DNAバーコードをデコードするために使用される方法に依存するが、単一分子(m-RNA)デコーディングの実現は、依然として困難な課題である。
【0007】
概要
したがって、本発明の課題は、DNAバーコードの生成およびデコーディングを同時に行う、組織のm-RNA分子のシークエンシングおよび空間デコーディングのための方法を提供することであった。
【0008】
したがって、本発明の対象は、組織試料上のm-RNA標的配列の空間位置および配列情報を取得する方法であって、以下の工程
a.少なくとも1つの基準マーカーを少なくとも有する固体表面を準備する工程
b.光切断可能なリンカーおよびアダプター単位を含む複数のアンカー分子を固体表面に結合させる工程
c.アンカー分子のアダプター単位に結合することが可能な単位、5~30個のイノシン塩基を有するポリイノシン単位、および10~50個のアデニン塩基を有するポリアデニン単位を含む足場分子をアンカー分子に結合する工程
d.任意選択的にシークエンシング・バイ・シンセシス(SBS)の間に足場分子のイノシン塩基を補完するアンカー分子に、核酸塩基としてアデニン、グアニン、シトシンおよびチミンをランダムに組み込み、それによってアンカー分子上にバーコードを生成する工程であって、核酸塩基は、光検出可能な単位を備えており、バーコードの配列(および任意選択的にそれらの生成)および基準マーカーに対するそれらの空間位置が、空間情報として同時に検出される工程
e.足場分子のポリアデニン単位を補完するアンカー分子にチミンを組み込み、それによってポリT単位を生成する工程
f.アンカー分子から足場分子を除去する工程
g.少なくとも1つのm-RNA鎖を含む組織試料を準備する工程であって、試料の少なくとも1つのm-RNA鎖が、少なくとも1つのアンカー分子のポリT単位に結合する工程
h.m-RNA鎖の逆転写を行って固体表面に結合したc-DNA鎖を生成する工程
i.アンカー分子の光切断可能なリンカーを切断することにより、固体表面からc-DNA鎖を除去する工程
j.c-DNA鎖の配列情報を取得し、空間情報をc-DNA鎖の配列情報と連結させる工程
を含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一般的なワークフローを示す図である。
【
図2】アンカー分子におけるバーコード部の構築を示す図である。
【0010】
詳細な説明
本明細書に記載された方法は、50~300nmの非常に高い空間分解能を有する組織上のmRNAを検出するために使用されている。
【0011】
本発明の方法は、順序a)~j)で実施されなければならないプロセス工程に従って、以下でより詳細に説明される。
【0012】
工程a)少なくとも1つの基準マーカーを少なくとも有する固体表面を準備する工程
【0013】
固体基質は、好ましくは機能化された表面を備えている。この表面は、光切断可能なリンカーを含むオリゴヌクレオチドの固体支持体の結合に利用可能な一般的に使用されている化学物質で機能化されていてよく、かつ任意選択的に他の部分と一緒に組み立てられ、入口および出口を有するマイクロ流体フローセルを形成する。
【0014】
機能化された表面は、例えば、活性化カルボキシレート基またはスクシンイミジルエステルに共有結合したアミン変性オリゴマー、ヨードアセトアミドまたはマレイミドなどのアルキル化試薬を介して共有結合したチオール変性オリゴマー、チオエーテルを介して共有結合したアクリダイトTM変性オリゴマー、ジゴキシゲニンNHSエステル、またはビオチンと相互作用することが可能な固定化ストレプトアビジンによって捕捉されたビオチン変性オリゴマーを含み得る。
【0015】
任意選択的に、アンカー分子は、分子濃度に対応する密度で固体基質上にランダムに分布している。
【0016】
アンカー分子は、ローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼのための少なくとも1つのプライマー配列をさらに含み得る。
【0017】
工程b)光切断可能なリンカーを含む複数のアンカー分子を機能化された固体表面に結合させる工程
【0018】
その後、予め製造されたアンカー分子は、緩衝溶液で固体表面上に負荷される。アンカー分子は、機能化された表面と相互作用し、領域全体にランダムに空間的に分布する。
【0019】
好ましくは、光切断可能なリンカー、P5またはP7アダプターのようなアダプター単位または他の短配列を有するアンカー分子が生成される。数十億のそのような単一分子を製造することができる。アンカー分子の密度は、負荷される濃度により制御することができる。
【0020】
工程c)アンカー分子のアダプター単位に結合することが可能な単位、5~30個のイノシン塩基を有するポリイノシン単位、および10~50個のアデニン塩基を有するポリアデニン単位を含む足場分子をアンカー分子に結合する工程
【0021】
足場分子は、
図1aおよび
図1bに示されており、アダプター単位を介してアンカー分子に結合される。P5またはP7のような適切なアダプターおよびそれらの対応物は、当業者に公知である。
【0022】
ポリ-イノシン単位は、ランダム化されたバーコードの生成のためのテンプレートとして機能し、好ましくは5~30個のイノシン塩基を有し得る。
【0023】
工程d)任意選択的にシークエンシング・バイ・シンセシス(SBS)の間に足場分子のイノシン塩基を補完するアンカー分子に、核酸塩基としてアデニン、グアニン、シトシンおよびチミンをランダムに組み込み、それによってアンカー分子上にバーコードを生成する工程であって、核酸塩基は、光検出可能な単位を備えており、バーコードの配列(および任意選択的にそれらの生成)および基準マーカーに対するそれらの空間位置が、空間情報として同時に検出される工程。
【0024】
好ましくは、アンカー分子に、核酸塩基としてアデニン、グアニン、シトシンおよびチミンをランダムに組み込む工程が、A、T、GおよびCの混合物とポリメラーゼとを供給することにより実施される。
【0025】
この工程の間に、ランダムなバーコードがアンカー分子上に生成され、これらは、基準マーカーに対するそれらの空間位置を同時に識別して帰属させるために使用される。
【0026】
この工程では、足場分子のイノシン塩基が、アデニン、グアニン、シトシンおよびチミン(A、C、G、T)でランダムに補完され、バーコード配列を生成する。この目的のために、核酸塩基は、光検出可能な単位を備えている。このような核酸塩基は、シークエンシング・バイ・シンセシスにより知られており、市販されている。ランダムな方式は、A、T、GおよびCの混合物とポリメラーゼとを試料に供給することによって確立される。
【0027】
光検出可能な単位により、バーコードの生成は、適切な画像を撮影することによって容易に監視することができる。
【0028】
空間情報は、好ましくは、核酸塩基の光検出可能な単位を検出することによって、かつ/またはシークエンシング・バイ・シンセシスによって取得される。
【0029】
図2に示されているように、画像は、各拡張サイクルの後に撮影され、組み込まれた塩基を決定する。各バーコードを識別するために、画像は超解像を有していてよい。
【0030】
塩基A、C、G、Tは、各サイクルの個々の各単一分子にランダムに組み込まれ、したがって、一意の空間的な単一分子識別子を生成することになる。また、固体基質には、少なくとも2つの独立した基準マークも含まれ、これらは蛍光性または自動蛍光性マーカーである可能性がある。それらの基準マークの画像も撮影され、組み込まれた塩基のX-Y位置がマーカーに対して決定される。このようにして、個々の各単一分子の各配列が記録され、基準マークに対する組み込まれた塩基の空間位置が、特別な情報(X-Y距離)として記憶される。
【0031】
工程e)足場分子のポリアデニン単位を補完するアンカー分子にチミンを組み込み、それによってポリT単位を生成する工程
【0032】
シークエンシング後、ポリAテールの塩基が、標識されていないTヌクレオチドで満たされる。この工程により、安定な二本鎖DNA分子を形成することができる。
【0033】
当然のことながら、先の工程からの塩基の混合物は、除去する必要があり、任意選択的に洗浄後に、チミンおよびポリメラーゼが供給される。
【0034】
工程f)アンカー分子から足場分子を除去する工程
【0035】
次の工程として、二本鎖DNA複合体を有する固体基質を熱変性させて足場分子を除去し、固体表面上に一本鎖オリゴヌクレオチドを形成する。
【0036】
工程g)少なくとも1つのm-RNA鎖を含む組織試料を準備する工程であって、試料の少なくとも1つのm-RNA鎖が、少なくとも1つのアンカー分子のポリT単位に結合する工程
【0037】
組織試料を、すべての単一分子が配置され、透過処理されてmRNA分子を放出する固体基質と接触させる。次に、近傍に位置するオリゴヌクレオチドの30~50塩基のポリTテールが、標準的なDNA/mRNA相互作用を介して組織内で発現したmRNAにハイブリダイズすることになる。
【0038】
任意選択的に、組織試料は、表面に供給した後、透過処理される。
【0039】
工程h)m-RNA鎖の逆転写を行って固体表面に結合したc-DNA鎖を生成する工程
【0040】
次の工程では、mRNAを有するすべてのアンカー分子がcDNAに逆転写され、続いて、酵素を用いてまたは化学反応を介して組織を固体基質から除去することができる。
【0041】
c-DNA鎖を環状化し、次いでローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼによって増殖させて複数のDNAコンカテマーにしてもよい。
【0042】
任意選択的に、cDNA生成の前に標的光を用いて不要な領域を除去することにより、アンカーの予め定められたサブセットのみが維持される場合、mRNAのサブセット(関心領域またはROI)のみを逆転写することができる。
【0043】
組織における関心領域(ROI)は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使用して、外部レーザーUV光源を使用して画定することができる。各ROIは、特定の線量のUVレーザー光を得て、固体基質に結合された単一分子のすべての光切断可能な結合が、切断され、除去されることになる。
【0044】
工程i)アンカー分子のすべての光切断可能なリンカーを切断することにより、固体表面からc-DNA鎖を除去する工程
【0045】
任意選択的に、上述したように、固体表面上の関心領域に標的化された外部レーザーUV光源を使用して、cDNAのサブセットのみを除去することができる。
【0046】
工程j)c-DNA鎖の配列情報を取得し、c-DNA鎖の空間バーコード配列情報を固体表面バーコードに連結させる工程。
【0047】
シークエンシングライブラリ用のcDNAを調製するために、さらなるプロセスが実施されてもよい。最後の工程では、一意の空間アンカー分子識別子を有する各単一分子が、インビトロでシークエンシングされ、組織上の元の決定された位置にリンクされる。バーコードの配列および基準マーカーに対するそれらの空間位置は、工程d)からわかっているため、m-RNAの空間情報は、容易に決定することができる。c-DNA鎖の配列情報には、バーコードの配列が含まれており、固体表面上に生成されたバーコードの配列情報は、工程d)およびi)からわかるため、2つのバーコード配列を一致させて、組織上のmRNAの起点/空間情報を同定することができる。
【0048】
本発明の手法は、捕捉されたmRNAの3’末端のシークエンシングに最適である。
【0049】
mRNAシークエンシングの多くの用途では、mRNAの5’末端を同定することも必要である。以下のワークフロー(固体支持体にも適用可能)は、
図2に視覚化されているように、この問題を解決する。Bは、イノシンのような普遍的な塩基に逆戻りする。
【0050】
任意選択的に、組織は、例えば、抗体結合色素を用いて、好ましくはMACSima技術を用いて、組織上に発現される異なるタンパク質の同定によってさらに特徴付けられてもよい。
【0051】
本発明の方法は、理論上、約20ntの平均読み取り長さを有する30種類のDNAバーコード分子を製造することができ、ヌクレオチド1つあたり5%未満の誤り率を伴う。これは、それらを空間的に同定するのに十分である。さらに、抗体に結合した空間的に同定されたDNAバーコード分子を、単一分子分解能で検出することができる。
【0052】
ワークフローの例:
イノシンの20~30塩基およびポリA塩基テールの30~50塩基を有するP5アダプターを有する光切断可能なリンカーからなるアンカー分子と同一のオリゴヌクレオチドを、機能化された固体表面(例えば標準的なカバーガラス25×75×1mm)に負荷する。
【0053】
アンカー分子は、機能化された表面上にランダムに固定化されることになる。表面上のアンカー分子の密度は、濃度により制御される。
【0054】
アンカー分子は、互いに約50~300nmの最小距離を有し得る。
【0055】
イノシンの25~30塩基は、シークエンシング・バイ・シンセシス(SBS)を行う場合、A、C、TおよびGからなる標識された単一ヌクレオチドをランダムに組み込むことで理論的に1.2×10^15~1.5×10^18の可能な組み合わせを可能にする。
【0056】
シークエンシング・バイ・シンセシスを25~30サイクル行い、イノシンの相補的な塩基の各単一分子に組み込まれた各塩基を決定する。
図1は、シークエンシングサイクルを示す。これは、標識されたヌクレオチドの第1ラウンドがイノシン塩基に組み込まれる伸長工程を示す。
【0057】
シークエンシング・バイ・シンセシスは、専用の超解像光学系で行うことができる。組織スライスホルダ上の各単一分子についての位置情報がデータベースに書き込まれ、ユーザ(ウェブサイト、クラウド)によってダウンロードされるか、消耗品と一緒に出荷され得る。
【0058】
イノシンのすべての塩基をシークエンシングした後、各単一分子は、空間的に一意の分子識別子を有することになる。
【0059】
空間的に一意の分子識別子を有する単一分子の各位置は、機能化された固体表面上の相対位置(例えば、基準マーカー)に対して決定することができる。
【0060】
固体基質は、2つの独立した基準マークも含む。これらの基準マークの画像が撮影され、X-Y位置が決定される。個々の各単一分子の各配列が記録され、基準マークに対する空間位置がX-Y座標として記憶される。
【0061】
25~30塩基のシークエンシング後、ポリAテール(約30塩基)が、標識されていないTヌクレオチドで満たされる。この工程は、安定な二本鎖DNA分子を形成することになる:
【0062】
次の工程として、二本鎖分子を有する固体基質を変性させ、それにより、二本鎖DNA分子は、表面に共有結合した一本鎖オリゴヌクレオチドを形成する。
【0063】
組織試料は、単一分子を含む固体基質と接触し、透過処理される。組織内で発現したmRNAは、透過処理後に組織から放出され、それらのポリAテールは、30~50塩基のポリTテールと相互作用することになる。次の工程では、組織が、固体基質から除去されることになる。
【0064】
mRNAは、表面上にアンカーした単一分子をプライマーとして使用して逆転写されることになる。
【0065】
光切断可能なリンカーを介して固体表面に連結された一意に生成され、シークエンシングされかつプリデコーディングされたバーコードを含むcDNAは、標的化された外部レーザーUV光源を使用して放出され、固体表面からさらに処理されることになる。
【0066】
末端修復として一般に知られているアプローチを用いて、シーケンシングライブラリー用のcDNAを調製するためのさらなるプロセスが行われる。A-テーリングおよびアダプターライゲーション。
【0067】
最後の工程では、一意の空間的な単一分子識別子を有する各cDNAが、インビトロでシークエンシングされ、組織上の元の決定された位置に連結される。
【0068】
任意選択的に、1つはまた、組織試料をさらに特徴付け、組織上に発現されるいくつかの異なるタンパク質を、例えば、MACSima技術を用いて同定することができる。
【0069】
さらに、組織上の関心領域(ROI)は、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を用いる外部UVレーザー光源を使用してmRNAハイブリダイゼーションに利用可能な不要な部分を除去し、望ましくなかった固体基質に結合した単一分子のすべての光切断可能な結合を除去することにより、画定することができる。逆に、対象のcDNAは、同じ原理を介して、ただしcDNAの生成後に、予め決定したROIからのみ放出させることもできる。
【外国語明細書】