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特開2023-46403ドップラー解析を使用する心臓解剖学的構造の超音波撮像
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046403
(43)【公開日】2023-04-04
(54)【発明の名称】ドップラー解析を使用する心臓解剖学的構造の超音波撮像
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/12 20060101AFI20230328BHJP
   A61B 8/06 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
A61B8/12
A61B8/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151128
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】17/483,097
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレス・クラウディオ・アルトマン
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601BB03
4C601DD03
4C601DD15
4C601DE01
4C601EE11
4C601FE04
4C601GA20
4C601GA25
4C601GB06
4C601JC26
(57)【要約】
【課題】体内医療超音波プローブを使用してドップラー超音波撮像を行うこと。
【解決手段】方法は、器官内の血液プール内に配置されたカテーテル内の超音波トランスデューサのアレイから超音波ビームを放出することを含む。超音波ビームに応答して反射されたエコー信号は、アレイにおいて受信される。エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分との区別が行われる。エコー信号において、第1のスペクトル信号成分は、第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制される。器官の少なくとも一部分の超音波画像が、抑制された第1のスペクトル信号成分を有するエコー信号から再構築される。再構築された画像は、ユーザに表示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
超音波トランスデューサのアレイを含むカテーテルであって、前記アレイが、器官内の血液プールに配置され、超音波ビームを放出し、かつ前記超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信するように構成されている、カテーテルと、
プロセッサであって、
前記エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)前記器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分とを区別することと、
前記エコー信号において、前記第1のスペクトル信号成分を前記第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制することと、
前記抑制された第1のスペクトル信号成分を有する前記エコー信号から前記器官の少なくとも一部分の超音波画像を再構築することと、
前記再構築された画像をユーザに表示することと、
を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、前記エコー信号から前記第1のスペクトル信号成分をフィルタリングして取り除くことによって、前記第1のスペクトル信号成分を抑制するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記エコー信号における前記第1のスペクトル信号成分を少なくとも所与の量だけ減衰させることによって、前記第1のスペクトル信号成分を抑制するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記器官の前記組織が、心腔の壁組織である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記アレイが、前記放出された超音波ビームを所与の血液体積にて集束させ、前記集束した超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記アレイが、前記ビームの焦点距離を変化させて、血液ドップラーシフト信号を、異なる複数の血液体積から可変的に収集することによって、前記放出された超音波ビームを集束させるように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
医療撮像システムであって、
身体の器官に挿入するために構成された超音波プローブであって、
二次元(2D)超音波トランスデューサアレイと、
前記器官内の前記2D超音波トランスデューサアレイの位置及び向きを示す信号を出力するように構成されたセンサと、
を備える、超音波プローブと、
プロセッサであって、
前記センサによって出力された前記信号を使用して、前記2D超音波トランスデューサアレイによって取得された複数の超音波画像セクションを互いに位置合わせすることと、
前記複数の位置合わせされた超音波画像セクションの結合体を生成して、前記器官の少なくとも一部分のレンダリングを形成することと、
前記レンダリングをユーザに提示することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、医療撮像システム。
【請求項8】
前記複数の超音波画像セクションを位置合わせする際に、前記プロセッサが、前記プローブの動きを補償するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の超音波画像セクションを位置合わせする際に、前記プロセッサが、呼吸に起因する動きを補償するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサが、前記複数の超音波画像セクションを互いにステッチすることによって、前記結合体を生成するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
方法であって、
器官内の血液プール内に配置されたカテーテル内の超音波トランスデューサのアレイから超音波ビームを放出することと、
前記アレイにおいて、前記超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信することと、
前記エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)前記器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分とを区別することと、
前記エコー信号において、前記第1のスペクトル信号成分を前記第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制することと、
前記抑制された第1のスペクトル信号成分を有する前記エコー信号から前記器官の少なくとも一部分の超音波画像を再構築することと、
前記再構築された画像をユーザに表示することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記第1のスペクトル信号成分を抑制することが、前記エコー信号から前記第1のスペクトル信号成分をフィルタリングして取り除くことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のスペクトル信号成分を抑制することが、前記エコー信号における前記第1のスペクトル信号成分を少なくとも所与の量だけ減衰させることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記器官の前記組織が心腔の壁組織である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記放出された超音波ビームを所与の血液体積にて集束させ、前記アレイにおいて、前記集束した超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記放出された超音波ビームを集束させることが、前記ビームの焦点距離を変化させて、血液ドップラーシフト信号を、異なる複数の血液体積から可変的に収集することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
医療撮像方法であって、
超音波プローブを身体の器官に挿入することであって、前記超音波プローブが、
二次元(2D)超音波トランスデューサアレイと、
前記器官内の前記2D超音波トランスデューサアレイの位置及び向きを示す信号を出力するように構成されたセンサと、を備える、挿入することと、
前記センサによって出力された前記信号を使用して、前記2D超音波トランスデューサアレイによって取得された複数の超音波画像セクションを互いに位置合わせすることと、
前記複数の位置合わせされた超音波画像セクションの結合体を生成して、前記器官の少なくとも一部分のレンダリングを形成することと、
前記レンダリングをユーザに提示することと、を含む、医療撮像方法。
【請求項18】
前記複数の超音波画像セクションを位置合わせすることが、前記プローブの動きを補償することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の超音波画像セクションを位置合わせすることが、呼吸に起因する動きを補償することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記結合体を生成することが、前記複数の超音波画像セクションを互いにステッチすることを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療撮像に関し、具体的には、体内医療超音波プローブを使用するドップラー超音波撮像に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ドップラー撮像技術は、当該技術分野で以前に提案されている。例えば、Sutherland は、「Colour DMI:potential applications in acquired and congenital heart disease」(ACTA PAEDIATRICA,Volume 84,Issue 410,August 1995,pages 40-48)と題された論文において非侵襲的超音波ドップラー心筋撮像(doppler myocardial imaging、DMI)を記載している。論文は、血液プール撮像とは対照的に、心臓構造のカラードップラー撮像を可能にするDMI技術について記載する。これは、標準的なカラードップラーアルゴリズムの速度、フィルタリング、及び閾値パラメータを変更することによって達成される。測定することができるDMIパラメータは、局所的な組織の速度、加速度、及び反射されたドップラーエネルギーである。加えて、パルスドップラーアルゴリズムにおける付随する変化は、試料体積が配置される心筋域における心臓周期中の瞬間ピーク速度のインタロゲーションを可能にする。
【0003】
心門などの心臓の特定の要素の形状は、既知の解剖学的マッピング方法を使用して再構築され得るが、そのような方法は、典型的には、要素上のタッチポイントにカテーテルを移動させることに依存する。これらのアプローチは、計算集約的であり、比較的時間がかかる。より速いマッピング方法を有することが有用であり、この方法を非接触にすることが有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下に記載される本発明の実施形態は、器官内の血液プール内に配置されたカテーテル内の超音波トランスデューサのアレイから超音波ビームを放出することを含む方法を提供する。超音波ビームに応答して反射されたエコー信号は、アレイ内に受信される。エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分との区別が行われる。エコー信号において、第1のスペクトル信号成分は、第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制される。器官の少なくとも一部分の超音波画像が、抑制された第1のスペクトル信号成分を有するエコー信号から再構築される。再構築された画像は、ユーザに表示される。
【0005】
いくつかの実施形態では、第1のスペクトル信号成分を抑制することが、エコー信号から第1のスペクトル信号成分をフィルタリングして取り除くことを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、第1のスペクトル信号成分を抑制することが、エコー信号における第1のスペクトル信号成分を少なくとも所与の量だけ減衰させることを含む。
【0007】
一実施形態では、器官の組織は、心腔の壁組織である。
【0008】
別の実施形態では、方法は、放出された超音波ビームを所与の血液体積にて集束させ、アレイにおいて、集束した超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信することを更に含む。更に別の実施形態では、放出された超音波ビームを集束させることが、ビームの焦点距離を変化させて、血液ドップラーシフト信号を、異なる複数の血液体積から可変的に収集することを含む。
【0009】
本発明の別の実施形態によれば、超音波トランスデューサのアレイと、プロセッサと、を含むカテーテルを含むシステムが更に提供される。超音波トランスデューサのアレイは、器官内の血液プールに配置され、超音波ビームを放出し、かつ超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信するように構成されている。プロセッサは、(a)エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分とを区別することと、(b)エコー信号において、第1のスペクトル信号成分を第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制することと、(c)抑制された第1のスペクトル信号成分を有するエコー信号から器官の少なくとも一部分の超音波画像を再構築することと、(d)再構築された画像をユーザに表示することと、を行うように構成されている。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、超音波プローブと、プロセッサと、を含む医療撮像システムが更に提供される。超音波プローブは、身体の器官に挿入するように構成されており、超音波プローブは、(i)二次元(two-dimensional、2D)超音波トランスデューサアレイと、(ii)器官内の2D超音波トランスデューサアレイの位置及び向きを示す信号を出力するように構成されたセンサと、を含む。プロセッサは、(a)センサによって出力された信号を使用して、2D超音波トランスデューサアレイによって取得された複数の超音波画像セクションを互いに位置合わせすることと、(b)複数の位置合わせされた超音波画像セクションの結合体を生成して、器官の少なくとも一部分のレンダリングを形成することと、(c)レンダリングをユーザに提示することと、を行うように構成されている。
【0011】
本発明は、その以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態による、2D超音波アレイと、場所センサとを備える遠位端アセンブリを有するカテーテルを使用する、カテーテルベースの超音波撮像システムの概略描写図である。
図2】本発明の一実施形態による、血液ドップラーシフト成分をエコー信号から単離し、続いて図1のシステムによる血液信号を含まない画像を再構築するためのプロセスの概略描写図である。
図3】本発明の一実施形態による、図1のシステムを使用して、血液ドップラーシフト成分をエコー信号から単離し、フィルタリングされた画像を生成する方法を概略的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
以下に記載される本発明の実施形態は、三次元(three-dimensional、3D)又は四次元(four-dimensional、4D)超音波画像を生成するための超音波トランスデューサの二次元(2D)アレイを有する、カテーテルなどのプローブを使用する方法及びシステムを提供する。本文脈において、「3D超音波画像」という用語は、三次元におけるある特定の体積を表す超音波画像を指す。「4D超音波画像」という用語は、ある特定の体積の3D超音波画像の時系列を指す。4D画像は、3D動画とみなすことができ、第4の次元は、時間である。4D画像(又はレンダリング)を説明する別の方法は、時間依存3D画像(又はレンダリング)としてのものである。
【0014】
2Dアレイは、定義された立体角を占める3Dセクタ形状の超音波ビームを生成する(このようなビームは、1Dアレイ「ファン」とは対照的に、本明細書では「ウェッジ」と呼ばれる)。したがって、2Dアレイは、心腔などの器官の内壁の2Dセクションを撮像することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、4D超音波カテーテルは、心腔の壁など、マッピングされる要素に近接する血流内に配置される。その後、プロセッサは、カテーテルによって送信された超音波ウェッジビームからの反射信号(例えば、エコー)を解析する。典型的には、心臓の要素は、心臓を通って流れる血液のように、心拍に従って動いている。両者の動きは、トランスデューサによって受信された信号の周波数のドップラーシフトを作成するが、典型的にはm/秒のオーダーの血液の流れは、マッピングされている要素の任意の動きよりも著しく速い。したがって、血液からのエコーの周波数シフト(ドップラーシフト)は、心臓壁組織からのエコーのドップラーシフトよりも著しく大きい。例えば、5MHzの超音波周波数の場合、血液からのエコーのドップラーシフトは5kHzのオーダーであるが、心臓壁組織からのエコーのドップラーシフトは1KHzのオーダーである。
【0016】
プロセッサは、ドップラーシフト信号を解析して、トランスデューサによって撮像されている要素の位置及び速度を見つける。液体血流と軟質であるが固体の組織要素との間の速度差のために、血液によるドップラーシフトは、容易に単離され(例えば、識別され)、マッピングされている要素の表面を区別することができる。プロセッサは、信号の血液ドップラーシフト成分を抑制する。例えば、プロセッサは、ドップラーシフト成分をデジタル的にフィルタリングして取り除いて、それらを完全に除去するか、又は血液関連スペクトル成分を少なくとも所与の量(例えば、20dBだけ)減衰させることができる。次いで、得られた強化された信号を使用して、要素の血液信号を含まない超音波画像を再構築することができる。
【0017】
一実施形態では、プロセッサは、器官内の血液プール内に配置されたカテーテル内の超音波トランスデューサのアレイから放出された超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信する。プロセッサは、エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分とを区別する。プロセッサは、エコー信号において、第1のスペクトル信号成分を第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制する。次いで、プロセッサは、抑制された第1のスペクトル信号成分を有するエコー信号から器官の少なくとも一部分の超音波画像を再構築し、再構築された画像をユーザに表示する。
【0018】
トランスデューサの2Dアレイの位相は、アレイによって送信されたUSウェッジの少なくとも一部を血液体積などの器官内の標的体積に集束させるように、電子的に調整することができる。この集束効果は、上述のドップラー測定を強化するために、血液からかつ/又は心臓壁から反射された信号の品質を一時的に増加させるために使用され得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、カテーテルはまた、2Dアレイと事前に位置合わせされた、磁気位置センサなどの一体型場所センサを備える。一体型場所センサのために、撮像されたセクション内の全てのボクセルの空間座標は、既知である。プロセッサは、位置測定値を使用して、例えば、心臓の少なくとも一部分の別の画像(超音波又はその他)に血液信号を含まない超音波画像をオーバーレイすることができる。
【0020】
更に、プロセッサは、位置測定値を使用して、2D超音波トランスデューサアレイによって取得された複数の超音波画像セクションを互いに位置合わせすることができる。プロセッサは、次いで、複数の位置合わせされた超音波画像セクションの結合体を生成して、器官の少なくとも一部分のレンダリングを形成し、レンダリングをユーザに提示する。
【0021】
一実施形態では、プロセッサは、複数の超音波画像セクションの位置合わせを実行する一方で、プローブ自体の動きを補償するか、又は呼吸に起因する動きを補償する。別の実施形態では、プロセッサは、複数の超音波画像セクションを互いにステッチすることによって、結合体を生成する。
【0022】
プロセッサはまた、撮像された要素(例えば、肺静脈の小孔)が要素を示すディスプレイの中心にあるように、ウェッジを電子的に操縦するための駆動信号の位相を調整することができる。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、2D超音波アレイ50と、場所センサ52とを備える遠位端アセンブリ40を有するカテーテル21を使用する、カテーテルベースの超音波撮像システム20の概略描写図である。一体型場所センサ52は、カテーテル21の2Dアレイ50と事前に位置合わせされている。
【0024】
見られるように、遠位端アセンブリ40は、カテーテルのシャフト22の遠位端に取り付けられている。カテーテル21は、シース23を通して、手術台29上に横たわる患者28の心臓26内に挿入される。カテーテル21の近位端は、制御コンソール24に接続されている。本明細書に記載の実施形態では、カテーテル21は、超音波ベースの診断目的で使用されるが、カテーテルは、例えば、先端電極56を使用して、心臓26内の組織の電気的感知及び/又はアブレーションなどの治療を行うために更に使用することができる。
【0025】
医師30は、カテーテルの近位端の近くのマニピュレータ32を使用してシャフト22を操作することによって、カテーテル21の遠位端アセンブリ40を心臓26内の標的場所にナビゲートする。
【0026】
一実施形態では、挿入図25に詳細に示される2D超音波アレイ50は、心臓26の左心房を撮像するように構成されている。記録された画像は、プロセッサ30によってメモリ37内に記憶される。
【0027】
挿入図45に見られるように、超音波アレイ50は、複数の超音波トランスデューサ53の2Dアレイ50を含む。挿入図45は、左心房の肺静脈の小孔壁54に対してナビゲートされた超音波アレイ50を示す。この実施形態では、2Dアレイ50は、32×64個のUSトランスデューサのアレイである。2Dアレイは、心門の内壁のセクションを撮像することができる。
【0028】
センサ52は、器官内の2D超音波トランスデューサアレイ52の位置、方向、及び向きを示す信号を出力するように構成されている。システムのプロセッサは、2D超音波トランスデューサアレイ50によって取得されたセンサによって出力された信号を使用して、複数の超音波画像セクションを互いに位置合わせするように構成されている。
【0029】
一体型場所センサのために、撮像されたセクション内の全てのピクセルの空間座標は、既知である。
【0030】
制御コンソール24は、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ39を、超音波トランスデューサ53を駆動するための(例えば、超音波ビームを操縦することを含むフェーズドアレイ方式で)、かつプロセッサ39による使用のためのトランスデューサ53からエコー信号を受信するための、適切なフロントエンド及びインターフェース回路38とともに備える。インターフェース回路38は、カテーテル21からの信号を受信するとともに、任意選択で心臓26内のカテーテル21を介して治療を施し、システム20の他の構成要素を制御するために更に使用される。コンソール24はまた、磁場発生器36を駆動するように構成されたドライバ回路34を備える。
【0031】
心臓26における遠位端22のナビゲーション中に、コンソール24は、外部磁場発生器36からの磁場に応じて、場所センサ52から位置信号及び方向信号を受信する。磁場発生器36は、患者28の外部の既知の位置、例えば、患者が横たわっている台29の下に配置されている。これらの位置信号及び方向信号は、位置追跡システムの座標系における、2D超音波アレイ50の位置及び方向を示す。
【0032】
外部磁場を使用する位置及び方向の感知方法は、様々な医療用途で、例えば、Biosense Websterにより製造されているCARTO(商標)システムに実装されており、米国特許第6,618,612号及び同第6,332,089号、国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455号、同第2003/0120150号、及び同第2004/0068178号に詳細に記述されており、それらの開示は、全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
いくつかの実施形態では、プロセッサ39は、アレイ52を「掃引モード」で動作させて、心室の大部分を撮像するように構成することができる。一実施形態では、撮像された心腔(例えば、左心房)は、例えば、体積レンダリング55として、モニタ27上でプロセッサ39によって医師30に提示される。
【0034】
プロセッサ39は、本明細書に記載される機能を実施するようにソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又は、代替的に若しくは追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/若しくは記憶することができる。
【0035】
図1に示される例示的な構成は、単に概念を明確化する目的で選択される。本開示の技術は、他のシステム構成要素及び設定を使用して、同様に適用されることができる。例えば、システム20は、追加の構成要素を備え、非心臓カテーテル法を実行してもよい。
【0036】
心臓解剖学的構造を撮像するための3Dでのドップラー解析
図2は、本発明の一実施形態による、血液ドップラーシフト成分をエコー信号から単離し、続いて図1のシステム20による血液信号を含まない画像299を再構築するためのプロセスの概略描写図である。
【0037】
超音波信号は、ウェッジビーム250の形態で送信され、エコーは、カテーテル21の同じフェーズドアレイ50によって検出される。
【0038】
見られるように、3Dウェッジビーム250の取得モードは、血液255が、例えば肺静脈から外へ速度270で血流中を移動する、小孔壁54の表面の2D画像セクション260の同時取得を可能にする。
【0039】
プロセッサ39は、超音波トランスデューサのためのインターフェース回路38のトランスデューサ駆動ユニット381を介して駆動信号を提供する。インターフェース回路38の受信ユニット382は、トランスデューサからエコー信号を受信する。
【0040】
概略グラフ275は、ある特定のウェッジからの得られたエコー信号のスペクトルの例を示す。見られるように、血液ドップラーシフト成分279は、組織ドップラーシフト成分277から十分に分離されている。したがって、プロセッサ39は、セクション260の幾何学的形状を高精度で撮像するために、血液ピーク279を単離及び除去又は減衰するか、又は他の方法で血液ピーク279を再構築モデルで考慮に入れることができる。特に、この技術は、プロセッサが血液と噴門壁組織との間の境界を正確に撮像することを可能にする。
【0041】
一実施形態では、したがって、プロセッサ39は、インターフェース回路38の受信ユニット382を介してトランスデューサから受信した信号(例えば、受信したエコー)を解析して、
(i)ドップラーシフト血液成分を信号から識別し、及びフィルタリングして取り除き、任意選択的に、血液素子290の位置及び速度を導出し、
(ii)血液信号フィルタリングされた信号(すなわち、血液ドップラーシフト成分を含まないエコー信号)を使用して、(例えば、心臓壁表面の)軟部組織の画像299を生成する。
【0042】
プロセッサ39は、上記の情報をメモリ37に保存する。
【0043】
プロセッサは、ユニット382によってデジタル化されたデジタルエコー信号に様々な異なる方法で適用されるデジタルろ過を使用して、ドップラーシフトされた血液成分279をフィルタリングして取り除くか、又は減衰させることができる。例えば、一実施形態では、プロセッサは、血液速度に対応するドップラーシフトを有する信号成分を除去し、心臓壁速度に対応するドップラーシフトを有する信号成分を保持する周波数ドメインフィルタリングを適用し得る。別の実施形態では、プロセッサは、周波数ドメインにおいて、血液速度に対応する1つの範囲、及び心臓壁速度に対応する別の(低周波数)範囲を定義する。次いで、プロセッサは、血液に関連するスペクトル範囲を抑制する。この種のフィルタリングについて、プロセッサは、例えば、単純な閾値比較を使用することができ、信号内の任意のスペクトルピークを識別する必要はない場合があることに留意されたい。
【0044】
更に別の実施形態では、プロセッサは、壁組織成分を識別することなく、血液成分を除去するために、血液成分のみを識別する。更なる実施形態では、プロセッサは、遅い壁関連スペクトル成分を識別し、他の信号を抑制する。
【0045】
上記のように、プロセッサ39は、アレイによって送信された超音波ウェッジビーム250の少なくとも一部分280を血液体積284に集束させるように、トランスデューサの2Dアレイに提供される駆動信号の相対位相を調整し得る。この集束効果は、上述のドップラー測定を強化するために使用され得る。追加的又は代替的に、例えば、わずかに異なる時間に、プロセッサは、壁組織表領域288上に部分280を集束させて、ドップラー撮像技術を更に強化することができる。
【0046】
一実施形態では、血液体積に集束した超音波ビームを放出するために、プロセッサは、ビームの焦点距離を変化させて、この血液体積内の場所からドップラーシフト血液成分を収集する。場所を変えることにより、血液速度プロファイルは、例えば、カテーテルと壁表面との間の血液中の経路にわたって、プロセッサによって特徴付けることができる。得られた血液速度プロファイルは、信号のドップラーシフト血液成分のより精巧な(例えば、空間的に重み付けされた)除去において使用され得る。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態による、図1のシステム20を使用して、血液ドップラーシフト成分をエコー信号から単離し、フィルタリングされた画像299を生成する方法を概略的に例示するフローチャートである。
【0048】
このプロセスは、カテーテル配置ステップ302において、図1の小孔壁組織54の近くなど、撮像される心臓壁組織域に近接する血流に4D超音波(ultrasound、US)カテーテル21を位置決めすることで始まる。
【0049】
次に、プロセッサ39は、US放出ステップ303で、ユニット381を使用して、2Dアレイ50に駆動信号を適用することによって、カテーテル21によってウェッジ超音波(ultrasound、U/S)ビーム250の放出を命令する。
【0050】
戻り信号取得ステップ304において、反射されたUS信号は、アレイ50及びユニット382を使用してプロセッサ39によって取得される。
【0051】
プロセッサ39は、信号解析ステップ306で、反射されたUS信号を解析して、エコー信号の異なるドップラーシフト成分(例えば、図2の成分277及び279)を識別する。
【0052】
次いで、プロセッサ39は、血液信号ろ過ステップ308で、血液ドップラーシフト成分を反射信号からフィルタリングして取り除く。
【0053】
壁表面画像再構築ステップ310で、血液信号フィルタリングして取り除かれた信号を使用して、プロセッサ39は、小孔壁組織54の画像299などのUS画像を再構築する。
【0054】
表示ステップ312では、プロセッサ39は、再構築された画像をモニタ27上に表示する。
【0055】
画像保存ステップ316で、医師30などのレビュアは、血液信号フィルタリングされたUS画像が十分な品質のものであるかどうかを決定することができ(314)、画像をメモリ37に保存することができる。
【0056】
医師30が、画像の品質が十分に良好ではないとみなす場合(314)、USビーム集束ステップ318で、プロセッサ39は、医師の入力に基づいて、放出されたUSビームの一部分を血液体積に集束させて、血液信号の改善された取得を取得し、プロセスはステップ303に戻る。
【0057】
図3のフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で例として提供されるものである。例えば、血液信号を使用して血液情報290を取得することは、簡略化のために省略される。別の例として、プロセッサは、取得中にウェッジ250を追加的に電子的に操縦することができる。
【0058】
本明細書に記載されている実施形態は、主に心臓用途に対処しているが、本明細書で説明される方法及びシステムはまた、他の身体器官に使用することができる。例えば、開示された技術は、腹部及び脳にあるような、身体の大血管を視覚化することとともに使用することができる。
【0059】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に説明される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、かつ先行技術において開示されていない、それらの変形例及び修正例を含む。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分とみなすものとする。
【0060】
〔実施の態様〕
(1) 方法であって、
器官内の血液プール内に配置されたカテーテル内の超音波トランスデューサのアレイから超音波ビームを放出することと、
前記アレイにおいて、前記超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信することと、
前記エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)前記器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分とを区別することと、
前記エコー信号において、前記第1のスペクトル信号成分を前記第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制することと、
前記抑制された第1のスペクトル信号成分を有する前記エコー信号から前記器官の少なくとも一部分の超音波画像を再構築することと、
前記再構築された画像をユーザに表示することと、を含む、方法。
(2) 前記第1のスペクトル信号成分を抑制することが、前記エコー信号から前記第1のスペクトル信号成分をフィルタリングして取り除くことを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記第1のスペクトル信号成分を抑制することが、前記エコー信号における前記第1のスペクトル信号成分を少なくとも所与の量だけ減衰させることを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記器官の前記組織が心腔の壁組織である、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記放出された超音波ビームを所与の血液体積にて集束させ、前記アレイにおいて、前記集束した超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0061】
(6) 前記放出された超音波ビームを集束させることが、前記ビームの焦点距離を変化させて、血液ドップラーシフト信号(blood Doppler shifted signals)を、異なる複数の血液体積から可変的に収集することを含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 医療撮像方法であって、
超音波プローブを身体の器官に挿入することであって、前記超音波プローブが、
二次元(2D)超音波トランスデューサアレイと、
前記器官内の前記2D超音波トランスデューサアレイの位置及び向きを示す信号を出力するように構成されたセンサと、を備える、挿入することと、
前記センサによって出力された前記信号を使用して、前記2D超音波トランスデューサアレイによって取得された複数の超音波画像セクションを互いに位置合わせすることと、
前記複数の位置合わせされた超音波画像セクションの結合体を生成して、前記器官の少なくとも一部分のレンダリングを形成することと、
前記レンダリングをユーザに提示することと、を含む、医療撮像方法。
(8) 前記複数の超音波画像セクションを位置合わせすることが、前記プローブの動きを補償することを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記複数の超音波画像セクションを位置合わせすることが、呼吸に起因する動きを補償することを含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記結合体を生成することが、前記複数の超音波画像セクションを互いにステッチすることを含む、実施態様7に記載の方法。
【0062】
(11) システムであって、
超音波トランスデューサのアレイを含むカテーテルであって、前記アレイが、器官内の血液プールに配置され、超音波ビームを放出し、かつ前記超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信するように構成されている、カテーテルと、
プロセッサであって、
前記エコー信号において、(i)血液のドップラーシフト特性を有する第1のスペクトル信号成分と、(ii)前記器官の組織のドップラーシフト特性を有する第2のスペクトル信号成分とを区別することと、
前記エコー信号において、前記第1のスペクトル信号成分を前記第2のスペクトル信号成分に対して相対的に抑制することと、
前記抑制された第1のスペクトル信号成分を有する前記エコー信号から前記器官の少なくとも一部分の超音波画像を再構築することと、
前記再構築された画像をユーザに表示することと、
を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(12) 前記プロセッサが、前記エコー信号から前記第1のスペクトル信号成分をフィルタリングして取り除くことによって、前記第1のスペクトル信号成分を抑制するように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサが、前記エコー信号における前記第1のスペクトル信号成分を少なくとも所与の量だけ減衰させることによって、前記第1のスペクトル信号成分を抑制するように構成されている、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記器官の前記組織が、心腔の壁組織である、実施態様11に記載のシステム。
(15) 前記アレイが、前記放出された超音波ビームを所与の血液体積にて集束させ、前記集束した超音波ビームに応答して反射されたエコー信号を受信するように更に構成されている、実施態様11に記載のシステム。
【0063】
(16) 前記アレイが、前記ビームの焦点距離を変化させて、血液ドップラーシフト信号を、異なる複数の血液体積から可変的に収集することによって、前記放出された超音波ビームを集束させるように構成されている、実施態様15に記載のシステム。
(17) 医療撮像システムであって、
身体の器官に挿入するために構成された超音波プローブであって、
二次元(2D)超音波トランスデューサアレイと、
前記器官内の前記2D超音波トランスデューサアレイの位置及び向きを示す信号を出力するように構成されたセンサと、
を備える、超音波プローブと、
プロセッサであって、
前記センサによって出力された前記信号を使用して、前記2D超音波トランスデューサアレイによって取得された複数の超音波画像セクションを互いに位置合わせすることと、
前記複数の位置合わせされた超音波画像セクションの結合体を生成して、前記器官の少なくとも一部分のレンダリングを形成することと、
前記レンダリングをユーザに提示することと、を行うように構成されている、プロセッサと、を備える、医療撮像システム。
(18) 前記複数の超音波画像セクションを位置合わせする際に、前記プロセッサが、前記プローブの動きを補償するように構成されている、実施態様17に記載のシステム。
(19) 前記複数の超音波画像セクションを位置合わせする際に、前記プロセッサが、呼吸に起因する動きを補償するように構成されている、実施態様17に記載のシステム。
(20) 前記プロセッサが、前記複数の超音波画像セクションを互いにステッチすることによって、前記結合体を生成するように構成されている、実施態様17に記載のシステム。
図1
図2
図3
【外国語明細書】