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特開2023-46411リチウムイオン電池用正極材料及び製造方法並びに用途
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  • 特開-リチウムイオン電池用正極材料及び製造方法並びに用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046411
(43)【公開日】2023-04-04
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用正極材料及び製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230328BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20230328BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230328BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022167421
(22)【出願日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】202111115015.9
(32)【優先日】2021-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518246268
【氏名又は名称】貴州振華新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】周 朝毅
(72)【発明者】
【氏名】向 黔新
(72)【発明者】
【氏名】黄 金
(72)【発明者】
【氏名】余 ▲イエ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 麗娟
(72)【発明者】
【氏名】武 陽
(72)【発明者】
【氏名】胡 安生
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA01
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD04
4G048AD06
4G048AE05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050FA13
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より高い容量を有するだけでなく、電池のサイクル中のインピーダンス増加が相対的に小さく、サイクル中の容量低下などが防止されるリチウムイオン電池用正極材料及び製造方法を提供する。
【解決手段】正極材料は多孔質構造を有し、細孔径が2~20nmのメソ孔の細孔体積は総細孔体積の90%以上を占め、原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び2回の粉砕を行うことにより製造される。通常のリチウムイオン電池用正極材料と比べて、本発明のリチウムイオン電池用正極材料の含有する細孔は主にメソ孔であり、且つメソ孔の細孔径が主に2~20nmの範囲にあり、粒子の内部にはマクロ孔がほぼ存在せず、粒子同士間の細孔分布が比較的合理であり、リチウムイオンの輸送のためのチャンネルを提供できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質構造を有し、
細孔径が2~20nmのメソ孔の細孔体積は総細孔体積の90%以上を占める、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用正極材料。
【請求項2】
前記細孔径が3~20nmの細孔の体積は、メソ孔の総体積の60%以上を占める、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【請求項3】
前記正極材料の比表面積は、0.25~1.5m/gである、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【請求項4】
前記正極材料のDv50粒径が2.00~6.00μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【請求項5】
前記正極材料の総遊離リチウム量が2000ppm未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【請求項6】
前記正極材料がリチウム元素、ニッケル元素及びマンガン元素を含み、前記正極材料のニッケル元素の含有量は、マンガン元素の含有量より大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【請求項7】
化学式1に示される元素組成を含み、
前記化学式1は、Li1+aNiMnCoであり、ただし、0≦a≦0.25、0.5<x≦0.97、0<y≦0.42、0≦z≦0.09、0≦m≦0.03であり、
ただし、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる、
ことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【請求項8】
原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び2回の粉砕を行うステップを含む、
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項9】
1回目の焼成温度は750~980℃であり、定温時間は8~40時間であり、2回目の焼成温度は650~920℃であり、定温時間は5~20時間である、
ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記焼成雰囲気が空気、酸素又は空気と酸素の混合ガスである、
ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法は、
粉砕後の物質を金属A源と混合するステップ(1)と、
ステップ(1)の混合物を焼成、粉砕するステップ(2)と、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップ(2)において前記焼成温度は300~780℃であり、定温時間は3~14時間である、
ことを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記Li源は、リチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩である、
ことを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項14】
前記Li源が、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
集電体と、集電体に担持された正極材料とを含み、前記正極材料が請求項1に記載のリチウムイオン電池用正極材料である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池正極。
【請求項16】
正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が請求項15に記載のリチウムイオン電池正極である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の技術分野に属し、リチウムイオン電池用正極材料及び製造方法並びに用途に関する。
【背景技術】
【0002】
2019年、新エネルギー市場が劇的な変化を迎え、電気自動車が増え続けることで、リチウムイオン電池のエネルギー密度と費用対効果に対するニーズが高まる一方である。そのうち、リチウム・コバルト・ニッケル・マンガン三元系正極材料でコバルトは希少資源であり、価格が高いことから、費用対効果を高めるとともに高エネルギー密度を保証するために、ニッケル又はマンガン元素の含有量を適切に高めることで、コバルトの使用量を減らす。ニッケルの含有量を高めると高容量の電池を提供できるが、ニッケルの含有量が増えると、材料の構造が不安定になり、電解質溶液と反応しやすく、また充放電が繰り返し行われることで、正極材料にクラックが発生して、リチウムイオン電池のサイクル寿命が短縮され、インピーダンスが上昇し、容量が低下してしまう。そのために、新しい材料を開発し又は新しい材料を見つけて、希少資源であるコバルトに取って代わるか材料中のコバルトの使用量を低減させることが急務となる。
【0003】
中国特許CN102280636Aは、正極活物質、その製造方法及びそれを含むリチウム二次電池を開示しており、当該リチウム二次電池の正極活物質は、共沈法で前駆体を調製し、次にリチウム源と混合し焼成処理を行って得られるものであり、当該材料は、約10nm~約60nmの平均直径を有する細孔を含み、且つ当該材料の細孔率は約0.5%~約20%であり、当該材料は良好な粒子強度を有するため、押圧後の破砕は防止又は低減され、当該材料は、電解質と反応しにくく、且つ良好な熱安定性を表しているため、高容量のリチウム二次電池の提供が可能である。しかし、当該材料の化学式LiNiCoMn(ただし、0.45≦x≦0.65、0.15≦y≦0.25、0.15<z≦0.35)から分かるように、当該材料のコバルト含有量は高く、容量が不十分であるため、費用対効果が要件を満たすことができない。
【0004】
中国特許CN108123119Aは、リチウム二次電池用ニッケル系活物質、その製造方法及びそれを含む正極を備えるリチウム二次電池を開示しており、当該特許では、リチウム前駆体と金属水酸化物の混合物を、酸素雰囲気下で、低温熱処理し、次に高温熱処理することにより、ニッケル系活物質を得て、当該物質は、2つ以上のプレート状の一次粒子の凝集体を含む二次粒子を備え、前記二次粒子の少なくとも一部は、前記プレート状の一次粒子が放射形に配列された構造を含み、前記二次粒子の外部は、前記二次粒子の内部に比べて大きい気孔度(細孔率)を有すると説明しているが、当該特許ではどの分野の課題を改善するかは言及されていない。
【0005】
中国特許CN1856890は、リチウム二次電池正極材料用のリチウム複合酸化物粒子、当該粒子を用いたリチウム二次電池正極及びリチウム二次電池を開示しており、当該特許は、リチウム二次電池電極材料のリチウム複合酸化物粒子を開示し、電池の低温負荷特性を向上させ且つ正極の製造での塗工性を改善することができると説明している。当該材料は、水銀圧入法を用いる測定で、次の条件(A)を満たすと同時に次の条件(B)と条件(C)の少なくとも1つの条件を満たさなければならない。条件(A):水銀圧入曲線において、圧力が50MPaから150MPaに増える時に水銀の圧入量は0.02cm/g以下である。条件(B):水銀圧入曲線において、圧力が50MPaから150MPaに増える時に水銀の圧入量は0.01cm/g以上である。条件(C):平均細孔半径は、10~100nmであり、且つ、細孔分布曲線は、上端が細孔半径0.5~50μmに位置するメインピーク、及び上端が細孔半径80~300nmに位置するサブピークを有する。当該特許は、主に低温特性に着眼するもので、高温特性までは配慮していない。
【0006】
中国特許CN104272520Aは、非水電解質二次電池及びその製造方法を開示しており、当該特許では、当該非水電解質二次電池の正極を構成する正極合材層は、水銀ポロシメータで測定される細孔分布曲線において、細孔径が0.05μm~2μmの範囲に微分細孔容量のピークAと当該ピークAより小孔径側に位置するピークBとを有し、前記細孔分布曲線は、前記ピークAと前記ピークBとの間において微分細孔容量が極小値となる極小点Cを有し、前記ピークAの微分細孔容量X及び前記ピークBの微分細孔容量Xのうち微分細孔容量の大きい方の微分細孔容量Xの前記極小点Cの微分細孔容量Xに対する比(X/X)が0.6以上であると説明している。当該特許は、主に、電池を製造するプロセスで、過充電添加剤を添加することによって電池のガス発生などの問題を低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術で正極材料の細孔径が大きすぎるため、殆どがマクロ孔材料であり、マクロ孔の存在でリチウムイオンの移動経路が長すぎるため、リチウムイオン電池に高い容量を提供できないばかりか、リチウムイオン電池が充放電を繰り返す過程で、正極材料粒子にクラックが発生して、リチウムイオン電池がサイクル中に容量が低下したり、内部抵抗が増大したり、ガスが発生する。
【0008】
本発明は、従来技術の欠点に対して、リチウムイオン電池用正極材料を提供し、当該正極材料は直径の小さいメソ孔を含み、これらのメソ孔はリチウムイオンの移動により多くの経路を提供し且つ経路が短いため、リチウムイオン電池はより高い容量を有するだけでなく、本発明の方法で製造されるリチウムイオン電池用正極材料は、リチウムイオン電池が充放電する過程で、正極材料にはほぼクラックが発生しないため、リチウムイオン電池材料のサイクル中の容量低下などが防止される。本発明は、さらに、前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法、及び前記リチウムイオン電池用正極材料を含むリチウムイオン電池を提供し、さらに、デジタル式電池、パワー電池又は蓄電池の分野における前記リチウムイオン電池用正極材料又はリチウムイオン電池の用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術的解決手段は、次のとおりである。
本発明は、リチウムイオン電池用正極材料を提供し、当該正極材料は多孔質構造を有し、
細孔径が2~20nmのメソ孔の細孔体積は総細孔体積の90%を占める。
【0010】
好ましくは、前記細孔径が3~20nmの細孔の体積がメソ孔の総体積の60%以上を占め、好ましくは、前記細孔径が5~19nmの細孔の体積が、メソ孔の総体積の40%以上を占める。
【0011】
好ましくは、前記正極材料の比表面積が0.25~1.5m/gであり、好ましくは、前記正極材料のDv50粒径が2.00~6.00μmであり、より好ましくは、前記正極材料の総遊離リチウム量が2000ppm未満である。
【0012】
好ましくは、当該正極材料がリチウム元素、ニッケル元素及びマンガン元素を含み、当該正極材料のニッケル元素の含有量は、マンガン元素の含有量より大きい。
【0013】
好ましくは、前記正極材料が化学式1に示される元素組成を含み、
前記化学式1は、Li1+aNiMnCoであり、ただし、0≦a≦0.25、0.5<x≦0.97、0<y≦0.42、0≦z≦0.09、0≦m≦0.03であり、
ただし、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる。
【0014】
本発明は、さらに、原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び2回の粉砕を行うステップを含む前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法を提供する。
【0015】
好ましくは、1回目の焼成温度が750~980℃であり、焼成時間が8~40時間であり、2回目の焼成温度が650~920℃であり、焼成時間が5~20時間であり、好ましくは、前記焼成雰囲気が空気、酸素又は空気と酸素の混合ガスである。
【0016】
好ましくは、前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法が、
粉砕後の物質を金属A源と混合するステップ(1)と、
ステップ(1)の混合物を焼成、粉砕するステップ(2)と、をさらに含む。
【0017】
好ましくは、ステップ(2)において前記焼成温度が300~780℃であり、焼成時間が3~14時間であり、より好ましくは、前記焼成雰囲気が空気、酸素又は空気と酸素の混合ガスである。
【0018】
好ましくは、前記製造方法において、前記Li源がリチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩であり、好ましくは、前記Li源が、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる。
【0019】
本発明は、さらに、前記製造方法から製造されるリチウムイオン電池用正極材料を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、集電体と、集電体に担持された正極材料とを含むリチウムイオン電池正極を提供し、前記正極材料は、前記リチウムイオン電池用正極材料である。
【0021】
本発明は、さらに、正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が前記リチウムイオン電池正極であることを特徴とするリチウムイオン電池を提供する。
【0022】
本発明は、さらに、デジタル式電池、パワー電池又は蓄電池の分野における前記リチウムイオン電池用正極材料、又は前記リチウムイオン電池正極、又は前記リチウムイオン電池の用途を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
通常のリチウムイオン電池用正極材料と比べて、本発明のリチウムイオン電池用正極材料の含有する細孔は主にメソ孔であり、且つメソ孔の細孔径が主に2~20nmの範囲にあり、且つ2~20nmの範囲のメソ孔の細孔体積の総細孔体積に占めるパーセントは90%を超えており、粒子の内部にはマクロ孔がほぼ存在せず、粒子の構造が比較的安定しており、充放電を繰り返しても粒子が壊れないため、良いサイクル特性を有し、粒子同士間の細孔分布が比較的合理であり、リチウムイオンの輸送のためのチャンネルを提供できるため、高い容量を提供できるとともに、電池のサイクル中のインピーダンス増加が相対的に小さい。前記範囲を超えると、リチウムイオンの輸送距離が増大し、容量が低下し、インピーダンスが急激に増加する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、実施例1で製造したリチウムイオン電池用正極材料の細孔径分布曲線図である。
図2図2は、実施例2で製造したリチウムイオン電池用正極材料の細孔径分布曲線図である。
図3図3は、実施例6で製造したリチウムイオン電池用正極材料の細孔径分布曲線図である。
図4図4は、実施例7で製造したリチウムイオン電池用正極材料の細孔径分布曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例の目的、技術的解決手段及び技術的効果がより明瞭になるよう、本発明の実施例に係る技術的解決手段を明瞭かつ完全に説明する。以下に説明する実施例は全ての実施例ではなく、本発明の実施例の一部である。当業者が本発明の実施例から、新規性のある作業をせず他の実施例を得た場合に、そのいずれも本発明の保護範囲に属する。
【0026】
本発明の説明において、細孔径分布とは、異なる細孔径の細孔の体積の総細孔体積に占める割合の細孔径に対する変化を指す。
【0027】
本発明の説明において、メソ孔とは、細孔径が2~50nmである細孔、即ち2nm以上且つ50nm以下の細孔を指し、マイクロ孔は、細孔径が2nm未満の細孔であり、マクロ孔は、細孔径が50nmを超える細孔である。
【0028】
以下、前記技術的解決手段をよりよく理解するために、本発明をより詳しく説明する。
【0029】
本発明は、リチウムイオン電池用正極材料を提供し、当該正極材料は多孔質構造を有し、
細孔径が2~20nmのメソ孔の細孔体積は総細孔体積の90%を占める。
【0030】
本発明の好ましい実施形態において、前記細孔径が3~20nmの細孔の体積は、メソ孔の総体積の60%以上を占め、好ましくは、前記細孔径が5~19nmの細孔の体積が、メソ孔の総体積の40%以上を占める。
【0031】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記正極材料の比表面積は、0.25~1.5m/gであり、好ましくは、前記正極材料のDv50粒径が2.00~6.00μmであり、より好ましくは、前記正極材料の総遊離リチウム量が2000ppm未満である。
【0032】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、当該正極材料は、リチウム元素、ニッケル元素及びマンガン元素を含み、当該正極材料のニッケル元素の含有量は、マンガン元素の含有量より大きい。
【0033】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記正極材料は、化学式1に示される元素組成を含み、
前記化学式1は、Li1+aNiMnCoであり、ただし、0≦a≦0.25、0.5<x≦0.97、0<y≦0.42、0≦z≦0.09、0≦m≦0.03であり、
ただし、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる。
【0034】
本発明は、さらに、原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び2回の粉砕を行うステップを含む前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法を提供する。
ただし、1回目の焼成温度は、750~980℃であり、焼成時間は、8~40時間であり、2回目の焼成温度は、650~920℃であり、焼成時間は、5~20時間であり、好ましくは、前記焼成雰囲気が空気、酸素又は空気と酸素の混合ガスである。
【0035】
本発明の好ましい実施形態において、前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法は、さらに、
粉砕後の物質を金属A源と混合するステップ(1)と、
ステップ(1)の混合物を焼成、粉砕するステップ(2)と、を含む。
ただし、ステップ(2)において前記焼成温度は、300~780℃であり、焼成時間は、3~14時間であり、より好ましくは、前記焼成雰囲気が空気、酸素又は空気と酸素の混合ガスである。
【0036】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、前記製造方法で、前記Li源は、リチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩であり、好ましくは、前記Li源が、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる。
【0037】
本発明は、さらに、前記製造方法から製造されるリチウムイオン電池用正極材料を提供する。
【0038】
本発明のもう1つの好ましい実施形態において、本発明の前記リチウムイオン電池用正極材料は、原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び2回の粉砕を行うステップを含む製造方法から製造される。
好ましくは、本発明の前記リチウムイオン電池用正極材料において、1回目の焼成温度は、750~980℃であり、焼成時間は、8~40時間であり、2回目の焼成温度は、650~920℃であり、焼成時間は、5~20時間である。
【0039】
好ましくは、本発明の前記リチウムイオン電池用正極材料において、前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法は、さらに、
粉砕後の物質を金属A源と混合するステップ(1)と、
ステップ(1)の混合物を焼成、粉砕するステップ(2)と、を含む。
好ましくは、本発明の前記リチウムイオン電池用正極材料において、ステップ(2)において前記焼成温度は、300~780℃であり、焼成時間は、3~14時間である。
【0040】
本発明は、さらに、集電体と、集電体に担持された正極材料とを含むリチウムイオン電池正極を提供し、前記正極材料は、前記リチウムイオン電池用正極材料である。
【0041】
本発明は、さらに、正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が前記リチウムイオン電池正極であることを特徴とするリチウムイオン電池を提供する。
【0042】
本発明のリチウムイオン電池は、セパレータと、アルミラミネートフィルムとをさらに含む。具体的に言えば、その電極は正極と負極とを含み、正極は、正極集電体、正極集電体にコーティングされた正極活物質、接着剤、導電助剤などの材料から作製され、正極活物質は、前記リチウムイオン電池用正極材料である。負極は、集電体、集電体にコーティングされた負極活物質、接着剤、導電助剤などの材料から作製され、セパレータは、当業界で正極と負極を互いに隔離させるために一般に使用されるPP/PEフィルムであり、アルミラミネートフィルムは、正極、負極、セパレータ及び電解質の被覆材である。
【0043】
前記接着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシ化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジェンゴム、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジェンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなど、及びそれらの組み合わせを含み、役割は、正極活物質粒子同士間及び正極活物質粒子と集電体の接着性を改善させることである。
【0044】
前記導電助剤は、炭素系材料、金属系材料及び導電性ポリマーの1種又は2種以上を含む。前記炭素系材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック及び炭素繊維の1種又は2種以上であり、前記金属系材料は、銅、ニッケル、アルミニウム又は銀の金属粉末又は金属繊維であり、前記導電性ポリマーは、ポリフェニレン誘導体である。
【0045】
本発明は、さらに、デジタル式電池、パワー電池又は蓄電池の分野における前記リチウムイオン電池用正極材料、又は前記リチウムイオン電池正極、又は前記リチウムイオン電池の用途を提供する。
【0046】
以下、特定の実施例で本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0047】
以下の実施例で使用する試薬及び装置の情報は、表1-1、表1-2及び表2に示すとおりである。
【0048】
【表1-1】
【0049】
【表1-2】
【0050】
【表2】
【0051】
(実施例1)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、46.11kgの水酸化リチウム一水和物、0.256kgのナノ二酸化チタン及び100.0kgの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.68Mn0.32(OH)(電池用、広東佳納能源科技有限公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を930℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量60%、ガス流量8L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温20時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を800℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量60%、ガス流量8L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温8時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して2回目の焼成半製品を得た。
2回目の混合:2回目の焼成半製品をミキサーに入れ、起動して撹拌し、さらに0.248kgのナノ二酸化チタンを加えて、30分間混合した。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を750℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量60%、ガス流量8L/分)を流し込み、2回目の混合後の原料を36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温6時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0052】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLiNi0.68Mn0.32Ti0.0063であった。
【0053】
(実施例2)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、45.87kgの水酸化リチウム一水和物、100kgの水酸化ニッケル・マンガン・コバルト前駆体Ni0.65Co0.1Mn0.25(OH)(電池用、貴州中偉正源新材料有限公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を940℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量55%、ガス流量6L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温13時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を850℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量55%、ガス流量6L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温14時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して2回目の焼成半製品を得た。
2回目の混合:2回目の焼成半製品をミキサーに入れ、起動して撹拌し、4.43kgの炭酸ストロンチウムを36メートルのローラーハースキルンに加えて、30分間混合した。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を780℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量55%、ガス流量6L/分)を流し込み、2回目の混合後の原料を36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温7時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0054】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLiNi0.65Co0.1Mn0.25Sr0.03であった。
【0055】
(実施例3)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、29.8kgの無水水酸化リチウム、0.377kgの酸化アルミニウム、100kgの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.97Mn0.03(OH)(電池用、広東佳納能源科技有限公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を750℃に設定し、酸素(ガス流量10L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温40時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を650℃に設定し、酸素(ガス流量10L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温5時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して2回目の焼成半製品を得た。
2回目の混合:2回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れて、起動して撹拌し、200kgの脱イオン水を加え、そして0.614kgのジルコニウムテトラ-n-ブトキシド溶液を加えて、50分間混合し、濾過してケーキを得た。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を550℃に設定し、酸素(酸素流量10L/分)を流し込み、2回目の混合後のケーキを36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温4時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0056】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.15Ni0.97Mn0.03Al0.0037Zr0.0016であった。
【0057】
(実施例4)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、51.97kgの水酸化リチウム一水和物、0.244kgの酸化ホウ素、100kgの水酸化ニッケル・マンガン・コバルト前駆体Ni0.78Co0.07Mn0.15(OH)(電池用、荊門市格林美新材料有限公司)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を880℃に設定し、酸素(ガス流量8L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温25時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を800℃に設定し、酸素(ガス流量8L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温6時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して2回目の焼成半製品を得た。
2回目の混合:2回目の焼成半製品をミキサーに入れ、起動して撹拌し、0.104kgの酸化ホウ素を加えて、40分間混合した。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を500℃に設定し、酸素(ガス流量8L/分)を流し込み、2回目の混合後の原料を36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温8時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料Li1.14Ni0.78Co0.07Mn0.150.01を得た。
【0058】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.14Ni0.77Co0.07Mn0.150.01であった。
【0059】
(実施例5)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、48.46kgの水酸化リチウム一水和物、100kgの水酸化ニッケル・マンガン・コバルト前駆体Ni0.79Co0.02Mn0.19(OH)(電池用、広東佳納能源科技有限公司)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を860℃に設定し、酸素(ガス流量7L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温25時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を780℃に設定し、酸素(ガス流量7L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温7時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して2回目の焼成半製品を得た。
2回目の混合:2回目の焼成半製品を撹拌タンクに入れて、起動して撹拌し、80kgの脱イオン水を加え、30分間撹拌した後、すぐにリン元素及びアルミニウム元素を含有する溶液を加えて(最初に0.23kgの硫酸アルミニウムを秤量して2kgの脱イオン水に溶解し、次に0.165kgのリン酸二水素アンモニウムを秤量して5kgの脱イオン水に溶解した)、40分間混合し、濾過してケーキを得た。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を300℃に設定し、空気(空気流量15L/分)を流し込み、2回目の混合後のケーキを36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温14時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0060】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.06Ni0.79Co0.02Mn0.19Al0.00130.0013であった。
【0061】
(実施例6)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、43.24kgの炭酸リチウム、100kgの水酸化ニッケル・マンガン・コバルト前駆体Ni0.62Co0.03Mn0.35(OH)(電池用、広東佳納能源科技有限公司から購入)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を970℃に設定し、空気(空気流量15L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温8時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を910℃に設定し、空気(空気流量15L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温20時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して正極材料を得た。
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.08Ni0.62Co0.03Mn0.35であった。
【0062】
(実施例7)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、43.24kgの炭酸リチウム、100kgの水酸化ニッケル・マンガン・コバルト前駆体Ni0.62Co0.03Mn0.35(OH)(電池用、広東佳納能源科技有限公司)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を970℃に設定し、空気(空気流量15L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温8時間とし、原料を室温に冷却し、篩分けして正極材料を得た。
【0063】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLi1.08Ni0.62Co0.03Mn0.35であった。
【0064】
(実施例8)
原料の混合:200Lプラウシェアミキサーを利用し、起動して撹拌し、46.96kgの水酸化リチウム一水和物、0.256kgのナノ二酸化チタン、100.0kgの水酸化ニッケル・マンガン前駆体Ni0.4Mn0.6(OH)(電池用、広東佳納能源科技有限公司)を加え、2時間撹拌して使用に備えた。
1回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を930℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量60%、ガス流量8L/分)を流し込み、混合後の原料を装置に投入して1回目の焼成を行い、定温20時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕して1回目の焼成半製品を得た。
2回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を800℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量60%、ガス流量8L/分)を流し込み、前記1回目の焼成半製品を36メートルのローラーハースキルンに投入して2回目の焼成を行い、定温8時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、次に脱磁して2回目の焼成半製品を得た。
2回目の混合:2回目の焼成半製品をミキサーに入れ、起動して撹拌し、さらに0.248kgのナノ二酸化チタンを加えて、30分間混合した。
3回目の焼成:36メートルのローラーハースキルンを利用し、焼成温度を750℃に設定し、空気と酸素の混合ガス(酸素含有量60%、ガス流量8L/分)を流し込み、2回目の混合後の原料を36メートルのローラーハースキルンに投入して3回目の焼成を行い、定温6時間とし、原料を室温に冷却し、ジェットミルで粉砕し、脱磁、篩分けして、正極材料を得た。
【0065】
希塩酸で消化しICP分析で検証して、前記正極材料の化学式はLiNi0.4Mn0.6Ti0.0063であった。
【0066】
(試験例1)
下記の方法で実施例1~8に対して、細孔径分布曲線、比表面積、粒径及び総遊離リチウム量を測定した。
【0067】
(1)細孔径分布曲線の測定方法
自動比表面積・細孔分布測定装置(TriStarII3020)を利用して脱着側等温線を測定し、次に、脱着側等温線を利用し、BJH法で計算して、細孔径を横軸、細孔体積比(異なるメソ孔径の細孔の体積のメソ細孔の総体積に占める割合)を縦軸とする細孔径分布曲線を得て、図1図4に示し、細孔径が2~20nmである時の割合(細孔径が2~20nmの細孔の体積の総細孔体積に占める割合)、細孔径が3~20nmである時の割合(細孔径が3~20nmの細孔の体積の総メソ孔体積に占める割合)及び細孔径が5~19nmである時の割合(細孔径が5~19nmの細孔の体積の総メソ孔体積に占める割合)の試験結果は、表3に示すとおりである。
【0068】
(2)比表面積の測定方法
本発明で比表面積はGB/T 19587-2004ガス吸着BET法の重量法を参照して、自動比表面積・細孔分布測定装置(TriStarII3020)で測定し、試験結果は表3に示すとおりである。
【0069】
(3)粒径の測定方法
本発明で粒径はGB/T19077-2016粒度分布分析・レーザー回折法を参照して、Malvern Master Size 2000レーザー式粒度分布測定装置で測定し、試験結果は表3に示すとおりである。
【0070】
(4)総遊離リチウム量の測定方法
30g±0.01gのサンプルを正確に秤量し、サンプルを250mL三角フラスコに加え、マグネチックスターラーを入れて、100mLの脱イオン水を加えた。三角フラスコをマグネチックスターラーに置いて、装置を起動して30分間撹拌した。定性濾紙、漏斗で混合溶液を濾過した。50mLピペットで50mLの濾液を取り出して、100mLビーカーに加え、攪拌子を入れた。ビーカーをマグネチックスターラーに置いて、2滴のフェノールフタレイン指示薬を加えた。0.05mol/L塩酸標準液で、溶液の色が赤色から無色となるまで滴定し、0.05mol/L塩酸標準液の体積V(終点1)を記録した。2滴のメチルレッド指示薬を加えて、指示薬の色が無色から黄色となった。0.05mol/L塩酸標準液で、溶液の色が黄色からオレンジ色となるまで滴定した。ビーカーを加熱炉に置いて、溶液が沸騰するまで加熱した(溶液の色はオレンジ色から黄色となった)。ビーカーを撤去して、室温に冷却した。さらにビーカーをマグネチックスターラーに置いて、0.05mol/L塩酸標準液で、溶液の色が黄色から淡赤色となるまで滴定し、0.05mol/L塩酸標準液の体積V(終点2)を記録した。下式により総遊離リチウム量を計算し、試験結果は表3に示すとおりである。
【0071】
総遊離リチウム量=V×0.05×6.94×2×100%/(m×1000)、
式中、総遊離リチウム量の単位は質量パーセント(%)であり、
mはサンプルの質量で、単位はgであり、
は第2の滴定終点であり、単位はmLであり、
6.94はリチウムの原子量である。
【0072】
【表3】
【0073】
(試験例2)
リチウムイオン電池の製造及び特性評価:
下記の方法でパウチセル454261を製造した。
正極の製造:本発明の正極材料と、導電性カーボンブラック(S.P)、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比94:3:3でN-メチルピロリドン(NMP)に加えて(正極材料とNMPの重量比は2.1:1)十分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成させ、アルミ箔集電体にコーティングして、乾燥し、プレスして極板を得た。
【0074】
負極の製造:負極用人造黒鉛と、導電性カーボンブラック(S.P)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、接着剤(SBR)を重量比95:1:1:3で十分な量の純水に加えて混合し、撹拌して均一なスラリーを形成させ、銅箔集電体にコーティングさせ、乾燥し、プレスして極板を得た。
【0075】
セパレータはPP/PE複合フィルム材料であった。プレス後の正極板、負極板にタブをスポット溶接して、セパレータを挿入した後、巻取機において巻き取ってからパウチ用治具に入れて、上部と側面を封止し、次にオーブンに入れて加熱乾燥し、その後、相対湿度が1.5%未満の環境で9gの電解液を注入し、電解液として質量比がEC:DEC:DMC=1:1:1の混合溶媒を使用し、電解質は1M 六フッ化リン酸リチウムであり、注液して、48時間化成した後、真空引きして封止した。セル型番は454261であった。
【0076】
下記の方法でバッテリテスター(浙江杭可科技提供)において電池の特性試験を行った。
【0077】
1)容量試験
製造したパウチセルをテストラックに接続させ、テストプログラムを立ち上げた。次のとおりにステップを設定した。試験温度を25℃に設定し、4時間静置し、定電流定電圧で4時間充電し(例えば、1/3Cで4.2Vに充電)、一旦停止して、静置し、定電流放電し(例えば、1/3Cで電圧3.0Vまで)、一旦停止した。4時間静置し、定電流定電圧で4時間充電し(例えば、1/3Cで4.3Vに充電)、一旦停止して、静置し、定電流放電し(例えば、1Cで電圧3.0Vまで)、一旦停止した。前記ステップを繰り返して、異なる電圧条件下の容量データを得た。
【0078】
2)サイクル試験
前記容量試験を経た電池を、テストラックに接続させて、テストプログラムを立ち上げ、次のとおりにステップを設定した。試験温度を45℃に設定し、4時間静置し、定電流で4時間充電し(例えば、1Cで4.2Vに充電、又は1Cで4.3Vに充電)、定電圧に切り替えて充電し(例えば、4.2Vで2時間充電、又は4.3Vで2時間充電)、5分間静置して、定電流で4時間放電し(例えば、1Cで電圧3.0Vまで)、5分間静置した。前記定電流充電から始まるステップを繰り返して、サイクル試験を行って、異なる電圧条件下の異なるサイクル回数での容量保持率を得た。
【0079】
3)サイクル後DCR増加試験:
2)のサイクル試験ステップにおいて、定電流放電前に、定電流30秒放電のステップを追加し(30秒内の電圧差を記録し、電流で割って、DCRを得た)、他は同じであった。前記定電流充電から始まるステップを繰り返して、サイクル試験を行って、異なるサイクル回数でのDCR増加率を得た(サイクル後のDCRと1回目のサイクル後のDCRの差を1回目のサイクル後のDCRで割った)。
【0080】
試験結果は、表4に示すとおりである。
【0081】
【表4】
【0082】
表3及び図1図4から分かるように、実施例1~6で製造したリチウムイオン電池用正極材料の含有する細孔は主にメソ孔であり、且つメソ孔の細孔径が主に2~20nmの範囲にあり、且つ2~20nmの範囲のメソ孔の細孔体積の総細孔体積に占めるパーセントはいずれも90%を超えており、3~20nmの細孔の体積のメソ孔の総体積に占めるパーセントはいずれも80%以上であり、5~19nmの細孔の体積のメソ孔の総体積に占めるパーセントはいずれも57%以上であった。実施例1~6で製造したリチウムイオン電池用正極材料の比表面積は0.48~1.5m/gと大きく、粒径は2.8~5.6μmと小さかった。実施例7、8で製造した正極材料の含有する細孔は主にメソ孔及びマクロ孔であり、且つ2~20nmの範囲内にあるメソ孔は相対的に少なく、2~20nmの範囲のメソ孔の細孔体積の総細孔体積に占めるパーセントはいずれも40%未満であった。実施例7、8で製造したリチウムイオン電池用正極材料の比表面積は0.25~0.32m/gと小さく、粒径は9.6~10.52μmと大きかった。
【0083】
表4から分かるように、実施例7と比べて、実施例1~6によって提供されたリチウムイオン電池用正極材料は容量が増加し、サイクル特性が向上しており、特に高電圧下でサイクル特性は明らかに向上しており、サイクル後のDCR増加率が明らかに低減していた。実施例7は材料のマクロ孔が多くしかも大きいため、サイクル中にクラックが発生しやすいため、サイクル特性が相対的に悪く、且つ高電圧下の使用に適さず、4.3V下で100回サイクル後の容量保持率は55%だけで、且つサイクル後のDCR増加が大きかった。実施例8はマンガンの含有量がニッケルの含有量を超えているため、実施例1の材料と比べて、低電圧下では容量が発揮できず、高電圧下では容量がぎりぎり発揮できたが、容量が低すぎるため、エネルギー密度の要件を満たすことができない。
【0084】
以上をまとめると、本発明によって提供されるリチウムイオン電池用正極材料はそのメソ孔の細孔径が主に2~20nmの範囲内にあり且つ割合が90%より大きく、それらのメソ孔がリチウムイオンの移動により多くより短い経路を提供しているため、本発明のリチウムイオン電池用正極材料はより高い容量を有し、また、リチウムイオン電池は充放電中に、正極材料にクラックが発生しにくいため、リチウムイオン電池用正極材料のサイクル中の容量低下が防止される。
【0085】
上述したのは、本発明の実施に係る好ましい実施例に過ぎず、本発明への何らかの限定ではない。本発明の趣旨と原理から逸脱せず修正、同等な置換又は改善などを行った場合に、本発明の保護範囲に含むものとする。
【0086】
(付記)
(付記1)
多孔質構造を有し、
細孔径が2~20nmのメソ孔の細孔体積は総細孔体積の90%以上を占める、
ことを特徴とするリチウムイオン電池用正極材料。
【0087】
(付記2)
前記細孔径が3~20nmの細孔の体積は、メソ孔の総体積の60%以上を占める、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【0088】
(付記3)
前記正極材料の比表面積は、0.25~1.5m/gである、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【0089】
(付記4)
前記正極材料のDv50粒径が2.00~6.00μmである、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【0090】
(付記5)
前記正極材料の総遊離リチウム量が2000ppm未満である、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【0091】
(付記6)
前記正極材料がリチウム元素、ニッケル元素及びマンガン元素を含み、前記正極材料のニッケル元素の含有量は、マンガン元素の含有量より大きい、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【0092】
(付記7)
化学式1に示される元素組成を含み、
前記化学式1は、Li1+aNiMnCoであり、ただし、0≦a≦0.25、0.5<x≦0.97、0<y≦0.42、0≦z≦0.09、0≦m≦0.03であり、
ただし、Aは、Mn、Co、Al、Zr、Y、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、Ca、V、Sc、Sr及びBからいずれか1種又は2種以上の元素が選ばれるか、又は、Ti、Al、Mg、Zr、La及びLiの少なくとも1種の元素を含むリン含有化合物から選ばれる、
ことを特徴とする付記1に記載のリチウムイオン電池用正極材料。
【0093】
(付記8)
原料を混合した後に少なくとも2回の焼成及び2回の粉砕を行うステップを含む、
ことを特徴とする付記1~7のいずれか1つに記載のリチウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0094】
(付記9)
1回目の焼成温度は750~980℃であり、定温時間は8~40時間であり、2回目の焼成温度は650~920℃であり、定温時間は5~20時間である、
ことを特徴とする付記8に記載の製造方法。
【0095】
(付記10)
前記焼成雰囲気が空気、酸素又は空気と酸素の混合ガスである、
ことを特徴とする付記9に記載の製造方法。
【0096】
(付記11)
前記リチウムイオン電池用正極材料の製造方法は、
粉砕後の物質を金属A源と混合するステップ(1)と、
ステップ(1)の混合物を焼成、粉砕するステップ(2)と、をさらに含む、
ことを特徴とする付記8に記載の製造方法。
【0097】
(付記12)
ステップ(2)において前記焼成温度は300~780℃であり、定温時間は3~14時間である、
ことを特徴とする付記11に記載の製造方法。
【0098】
(付記13)
前記Li源は、リチウム含有酸化物、リチウム含有フッ化物又はリチウム含有塩である、
ことを特徴とする付記8に記載の製造方法。
【0099】
(付記14)
前記Li源が、無水水酸化リチウム、水酸化リチウム一水和物、炭酸リチウム、硝酸リチウム、酢酸リチウム及びフッ化リチウムから1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする付記13に記載の製造方法。
【0100】
(付記15)
集電体と、集電体に担持された正極材料とを含み、前記正極材料が付記1に記載のリチウムイオン電池用正極材料である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池正極。
【0101】
(付記16)
正極と、負極と、リチウム塩含有電解質とを含み、前記正極が付記15に記載のリチウムイオン電池正極である、
ことを特徴とするリチウムイオン電池。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の技術的解決手段は、次のとおりである。
本発明は、リチウムイオン電池用正極材料を提供し、当該正極材料は多孔質構造を有し、
細孔径が2~20nmのメソ孔の細孔体積は総細孔体積の90%以上を占める。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
本発明は、リチウムイオン電池用正極材料を提供し、当該正極材料は多孔質構造を有し、
細孔径が2~20nmのメソ孔の細孔体積は総細孔体積の90%以上を占める。
【外国語明細書】