(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046430
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】制御装置、便器装置、およびトイレ
(51)【国際特許分類】
E03D 9/02 20060101AFI20230329BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20230329BHJP
E03D 11/11 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
E03D9/02
E03D5/10
E03D11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021154998
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】酒井 三恵
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【テーマコード(参考)】
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D038AA01
2D038GA01
2D038KA00
2D038ZA00
2D039AA02
2D039DB08
2D039EA00
2D039FC09
(57)【要約】
【課題】薬剤の投入後に便器装置が使用されて薬剤の効果が薄れてしまうことを防ぐことのできる制御装置、便器装置、およびトイレを提供する。
【解決手段】薬剤投入時刻を検知する。薬剤投入時刻に薬剤を便器の内部に投入するよう便器装置に指示し、薬剤投入時刻から投入期間が経過するまでの間に便器の洗浄が行われたときに薬剤を投入するよう便器装置に指示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤投入時刻を検知する時刻管理部と、
前記薬剤投入時刻に薬剤を便器の内部に投入するよう便器装置に指示し、前記薬剤投入時刻から投入期間が経過するまでの間に前記便器の洗浄が行われたときに前記薬剤を投入するよう前記便器装置に指示する薬剤管理部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記薬剤を投入する予定の時刻である基準時刻を決定する基準時刻決定部を備える請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記時刻管理部は、前記基準時刻を前記薬剤投入時刻として検知する
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
現在時刻を取得する取得部を有し、
前記薬剤管理部は、前記現在時刻が前記基準時刻を過ぎたときに前記薬剤を投入するよう前記便器装置に指示し、
前記時刻管理部は、前記薬剤を投入するよう前記便器装置に指示した時刻を前記薬剤投入時刻として検知する
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記基準時刻決定部は、前記便器の一日の使用履歴に基づいて、一日の内で前記便器の使用頻度が最も低い頻度低下期間に含まれる時刻を前記基準時刻と決定する
請求項2から請求項4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記投入期間の少なくとも一部の期間が、前記頻度低下期間に含まれる請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記薬剤管理部は、前記基準時刻の前後の所定時間において前記洗浄が行われた後のタイミングを前記薬剤投入時刻と検知する
請求項2から請求項6の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記薬剤管理部は、前記薬剤投入時刻からの経過期間と前記薬剤投入時刻を基準とした投入期間との差が閾値未満の場合には、前記薬剤の投入を制限する
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記薬剤投入時刻と、当該薬剤投入時刻を基準とした前記投入期間を示す表示情報を出力する請求項1から請求項8の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記薬剤管理部は、前記便器の内部の溜水面の高さを前記薬剤が投入される前に比べて下げるよう前記便器装置を制御した後に前記薬剤を投入するように前記便器装置を制御する
請求項1から請求項9の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
便器と、
前記便器の内部に薬剤を投入する薬剤投入部と、
前記便器の内部に洗浄水を供給する洗浄部と、を備え、
前記薬剤管理部が、前記薬剤投入部に薬剤を投入するよう指示する
請求項1から請求項10の何れか一項に記載の制御装置を備えた便器装置。
【請求項12】
便器と、
前記便器の内部に薬剤を投入する薬剤投入部と、
前記便器の内部に洗浄水を供給する洗浄部と、を備え、
前記薬剤投入部が薬剤を投入するよう制御し、前記洗浄部が前記溜水面の高さを下げるよう制御する
請求項10に記載の制御装置を備えた便器装置。
【請求項13】
制御装置を備える便器装置と、操作装置と、便器とを有し、
前記制御装置が、
薬剤投入時刻を検知する時刻管理部と、
前記薬剤投入時刻に薬剤を便器の内部に投入するよう前記便器装置に指示し、前記薬剤投入時刻から投入期間が経過するまでの間に前記便器の洗浄が行われたときに前記薬剤を投入するよう前記便器装置に指示する薬剤管理部と、
を備えるトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、便器の洗浄を制御する制御装置、便器装置、およびトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
便器の洗浄を目的として薬剤を便器に投入することが行われている。関連する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1には、予定時間経過又は予定時刻になると、対象部位へ所定量の殺菌水を供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような便器装置に薬剤を投入する場合、薬剤の投入後に使用者が便器装置を使用すると、薬剤が洗浄水によって流れてしまい、薬剤による便器洗浄などの効果が薄れてしまう。
【0005】
そこでこの開示は、薬剤の投入後に便器装置が使用されて薬剤の効果が薄れてしまうことを防ぐことのできる制御装置、便器装置、およびトイレを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、制御装置は、薬剤投入時刻を検知する時刻管理部と、前記薬剤投入時刻に薬剤を便器の内部に投入するよう便器装置に指示し、前記薬剤投入時刻から投入期間が経過するまでの間に前記便器の洗浄が行われたときに前記薬剤を投入するよう前記便器装置に指示する薬剤管理部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示のトイレに備わる便器装置を示す図である。
【
図2】本開示の便器装置の内部構成の概略図である。
【
図3】本開示の制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】本開示の制御装置の処理フローを示す第一の図である。
【
図6】本開示の制御装置の処理フローを示す第二の図である。
【
図7】本開示の制御装置の処理フローを示す第三の図である。
【
図8】本開示の表示情報の例を示す第一の図である。
【
図9】本開示の表示情報の例を示す第二の図である。
【
図10】本開示の制御装置の処理フローを示す第四の図である。
【
図11】本開示の制御装置の処理フローを示す第五の図である。
【
図12】本開示の制御装置の最小構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、便器装置1は、トイレ100内に設けられる。便器装置1は、便器本体2と、便座ボックス4と、便蓋5と、便座6とを少なくとも備える。便座ボックス4は、便器本体2の上側に設置される。便座ボックス4には制御装置10が備わる。制御装置10は、リモコン装置8と通信する。制御装置10は、リモコン装置8からの信号に従って、便器装置1に備わる各機能を制御する。制御装置10の内部の制御処理に基づいて、便器装置1に備わる各機能を制御してもよい。一例として制御装置10は便鉢内部に洗浄水を流して洗浄する洗浄部20を制御する。
図2に示すように、便器装置1の制御装置10は薬剤投入部30を制御して、便鉢内部に貯めた溜水の面(以下、溜水面Lと呼ぶ)に薬剤Mを投入する。なおリモコン装置8は操作装置の一態様である。制御装置10はリモコン装置8以外の操作装置と通信接続し当該操作装置からの信号に従って便器装置1に備わる各機能を制御してもよい。
【0009】
制御装置10のコンピュータは、
図3で示すようにCPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、HDD104、通信モジュール105、等のハードウェアを備える。
【0010】
制御装置10のCPU101は、予め制御装置10が記憶する制御プログラムを実行する。これによって制御装置10は、制御部11、取得部12、基準時刻決定部13、時刻管理部14、薬剤管理部15、洗浄管理部16の各機能を発揮する(
図4)。制御部11は、制御装置10の各機能部を制御する。取得部12は、外部の装置から情報を取得する。基準時刻決定部13は、便器の内部である便鉢に薬剤を投入するための薬剤投入時刻を検知するための基準時刻を決定する。時刻管理部14は、薬剤投入時刻を検知する。薬剤管理部15は、薬剤投入時刻に薬剤を便器の内部に投入するよう便器装置1に指示し、薬剤投入時刻から投入期間が経過するまでの間に便器の洗浄が行われたときに薬剤を投入するよう便器装置に指示する。洗浄管理部16は、洗浄信号を取得すると、便鉢の洗浄のための洗浄水を流す指示を便器装置1へ行う。
【0011】
本開示の制御装置10は、薬剤投入時刻に基づいて便鉢に薬剤を投入する制御を行う。この薬剤は、一例として便鉢内部の溜水面Lと便鉢内面との交線Aに付着するカビを除菌、殺菌等する薬剤である。便鉢内部の溜水は時間の経過と共に蒸発し、または排水口内部へ多少の水が流れることにより減少し溜水面Lが下降する。この溜水面Lの下降に伴い、下降前の溜水面Lから下降後の溜水面Lの間の便鉢内面に残る水分等の影響により便鉢内面にカビが増殖する場合がある。本開示の制御装置10はこの溜水面Lのカビ等の発生を、薬剤を投入することによって、除菌、殺菌して防止する。
【0012】
一例として、制御装置10は、薬剤投入時刻を検知し、薬剤投入時刻に薬剤を便鉢に投入する指示を薬剤投入部30に行う。制御装置10は、薬剤投入時刻を基準とする所定の投入期間内に便器の洗浄が行われたかどうかを判定する。所定の投入期間は本開示においては6時間とするが、投入期間は6時間以上または6時間未満であってもよい。所定の投入期間は、薬剤の投入によって溜水面Lのカビ等の発生を、除菌、殺菌により防止する効果が得られる期間であればどのような長さの期間であってもよい。制御装置10は、投入期間内に便器装置1が利用され、洗浄水による便鉢内部の洗浄が行われた場合、薬剤の再投入を判定する。このような処理により制御装置10は、薬剤が溜水面Lと便鉢内面との交線A近傍を所定の投入期間覆うようにすることで、カビの除菌や殺菌を行うために効果的な時間が減らないように制御する。制御装置10は、便鉢内部を溜水面のカビなどの発生による除菌、殺菌の時間を所定の投入期間分確保することができる。
【0013】
(第一実施形態)
第一実施形態の制御装置10の処理について説明する。第一実施形態における制御装置10は、HDD104等の記憶部に基準時刻を記憶する。当該基準時刻はユーザがリモコン装置8を用いて設定し取得部12が取得して記憶部に記録した時刻であってよい。または基準時刻は予め記憶部が記憶する時刻であってもよい。基準時刻決定部13は、規則された時刻を基準時刻と決定する(ステップ100)。または基準時刻決定部13が所定の基準時刻決定処理に基づいて自動で設定した時刻であってもよい。一例として基準時刻は午前0時である例を示す。
図5で示すように、基準時刻決定部13は、基準時刻を決定し、その基準時刻を記憶部に記録する基準時刻決定処理を行う(ステップS100)。この処理の例の詳細は第三実施形態に示す。
【0014】
時刻管理部14は、制御装置10の内部に設けられた時計機能部から現在の時刻を取得する(ステップS101)。時刻管理部14は取得した現在時刻と、薬剤を投入する予定の時刻である基準時刻とを比較して両者が一致したかを判定する(ステップS102)。時刻管理部14は、現在時刻と基準時刻とが一致した場合には、薬剤投入時刻であることを検知する(ステップS103)。この処理は、時刻管理部14が、基準時刻に基づいて薬剤投入時刻を検知する処理態様の一例である。時刻管理部14は薬剤管理部15へ薬剤投入時刻の検知を通知する。薬剤管理部15は薬剤投入部30へ薬剤の投入を指示する(ステップS104)。薬剤投入部30は薬剤の投入を行う。時刻管理部14は、時刻と基準時刻とが一致していない場合、時刻が基準時刻を越えているかを判定する(ステップS105)。時刻が基準時刻を越えていると時刻管理部14が判定した場合には、上述のステップS104と同様に、薬剤管理部15は薬剤投入部30へ薬剤の投入を指示する。薬剤投入部30は薬剤の投入を行う。時刻が基準時刻を越えていないと時刻管理部14が判定した場合には、制御部11は終了フラグをOFFに設定する(ステップS115)。制御部11は終了フラグがONに設定されているかを判定し(ステップS120)、終了フラグがONに設定されていない場合にはステップS101と同様に現在の時刻を取得する。
【0015】
本開示における薬剤は便鉢内部の溜水面Lを覆うように、泡の層を溜水面Lに形成する薬剤である。薬剤投入部30は薬剤そのものを便鉢内部へ投入してもよいし、便鉢内部を洗浄する洗浄水に薬剤を溶け込ませて薬剤を投入してもよい。薬剤の投入方法や、当該投入のための便器装置1の機構はどのようなものであってもよい。薬剤管理部15の薬剤の投入指示により、薬剤投入部30は、例えば薬剤が格納された薬剤専用タンクの開口部を開に制御する、または当該タンク内の薬剤を投入するポンプを制御すること等であってよい。薬剤管理部15は薬剤の投入完了を薬剤投入部30から取得した完了信号等により検知すると、洗浄管理部16に薬剤投入時刻を通知する。洗浄管理部16は薬剤投入時刻の通知を取得した後、洗浄信号の取得を待機し、洗浄信号を取得したか否かを判定する(ステップS106)。
【0016】
薬剤管理部15は薬剤投入時刻からの経過時間を計測しており、洗浄信号を取得していない間、薬剤投入時刻からの経過時間が投入期間の6時間を経過したかを判定する(ステップS107)。上述したように投入期間は本開示においては一例として6時間である。従って基準時刻が午前0時である場合、薬剤の投入期間の満了時刻は午前6時となる。薬剤管理部15が薬剤投入時刻からの経過時間が投入期間の6時間を経過したと判定した場合、制御部11は、終了フラグをONに設定する(ステップS116)。ステップS120へ移行する。薬剤管理部15が薬剤投入時刻からの経過時間が投入期間の6時間を経過したと判定していない場合、ステップS106とステップS107の処理を繰り返す。薬剤管理部15による薬剤投入時刻からの経過時間を計測は、ステップS103の薬剤の投入時刻の検知を起点としてその検知時刻からの経過時間を計測してもよいし、ステップS104の薬剤投入の指示を起点としてその指示時刻からの経過時間を計測してもよい。
【0017】
ユーザにより便器装置1が使用された場合、リモコン装置8のリモコン機能部81から送信され通信モジュール105で受信した洗浄信号を薬剤管理部15と洗浄管理部16とが取得する。これによって洗浄管理部16は洗浄信号を取得したことを判定する(ステップS106Yes)。洗浄管理部16は、洗浄信号を取得すると、便鉢の洗浄のための洗浄水を流す指示を洗浄部20へ行う(ステップS108)。当該指示に基づいて洗浄部20は洗浄水を流す。薬剤管理部15は洗浄信号を取得すると、薬剤投入時刻からの経過時間が投入期間の6時間を経過したかを判定する(ステップS109)。薬剤管理部15は洗浄水を流す指示を行った時刻からの経過時間が投入期間の6時間を経過したかを判定するようにしてもよい。ステップS109において薬剤管理部15が薬剤投入時刻(または洗浄水を流す指示を行った時刻)からの経過時間が投入期間の6時間を経過したと判定した場合、制御部11は、終了フラグをONに設定する(ステップS116)。ステップS120へ移行する。制御部11は終了フラグがONに設定されているかを判定し(ステップS120)、Yesの場合には処理を終了する。Noの場合にはステップS101からの処理を繰り返す。ステップS109において薬剤管理部15が薬剤投入時刻からの経過時間が投入期間の6時間を経過していないと判定した場合、薬剤管理部15は薬剤の投入(再投入)を行うと判定する(ステップS110)。薬剤管理部15は、ステップS104の処理に戻り、薬剤投入部30へ薬剤の投入を指示する。薬剤投入部30は薬剤の投入を行う。
【0018】
以上の処理により制御装置10は、薬剤を投入した後に薬剤の投入期間の6時間が経過する前に洗浄水と共に薬剤が流れたときには、薬剤を再投入する指示を行う。そして薬剤投入部30は薬剤の再投入を行う。これによって薬剤投入から所定の投入期間が経過する前に便器洗浄が行われたとしても薬剤を繰り返し投入することとなる。従って本開示の便器装置1は、殺菌に効果がある所定の投入期間、薬剤を溜水面Lに留めることになり、薬剤の効果が切れることなく、最初の薬剤投入時刻からの6時間分の投入期間の経過まで薬剤を溜水面Lに付着させてカビの除菌、殺菌を行うことができる。
【0019】
(第二実施形態)
第二実施形態の処理を、
図6を用いて説明する。薬剤管理部15は最初の薬剤投入時刻(または洗浄水を流す指示を行った時刻)から薬剤を再投入すると判定した時刻までの経過時間を、投入期間の6時間から減じた残りの時間が1時間未満などの所定時間未満となる場合、薬剤の再投入を行わないと判定してもよい。例えば薬剤管理部15は、0時に薬剤が投入され、午前5時30分に洗浄信号を取得したとしても午前6時まで残り30分と1時間未満である。このような場合、薬剤管理部15は残りの時間が1時間未満かを判定する(ステップS111)。薬剤管理部15は残りの時間が1時間未満などの所定時間未満の場合には、薬剤の再投入を行わないと判定する(ステップS112)。薬剤管理部15は残りの時間が1時間未満などの所定時間未満でないと判定した場合、ステップS104に移行し薬剤の投入を指示する。これによって、投入期間終了直前の無駄な薬剤の利用を停止することができる。この処理は、薬剤管理部15が、薬剤投入時刻と、投入期間とに基づいて特定した薬剤の投入完了時刻との関係に基づいて、薬剤の再投入をするか否かを判定する処理の一態様である。また当該処理は、薬剤管理部15が、薬剤投入時刻からの経過期間と薬剤投入時刻を基準とした投入期間との差が閾値未満の場合に、薬剤の投入を制限する処理の一態様である。
【0020】
上述のステップS107やステップS109処理では薬剤管理部15は、薬剤投入時刻(または洗浄水を流す指示を行った時刻)からの経過時間が投入期間の6時間を経過したかを判定している。薬剤管理部15は、薬剤投入時刻午前0時からの経過時間6時間に基づいて投入完了時刻の午前6時を算出し、午前6時を越えたか否かを判定するようにしてもよい。午前6時を越えるまでの間に再度、便器装置1が使用された場合には薬剤管理部15は薬剤の再投入を行うと判定してよい。この場合も、午前6時までの残り時間が1時間未満などの所定の時間未満の場合には、薬剤管理部15は、薬剤の再投入を行わないと判定してよい。
【0021】
制御部11は記憶部に記憶する基準時刻に基づいて上述のステップS101からの処理を毎日繰り返す。制御部11は上述のステップS101からの処理を記憶部に記憶する基準時刻に基づいて1週間などの単位期間ごとに繰り返すようにしてもよい。制御部11は、ステップS101からの処理を行っている際に、最後の薬剤投入時刻から、処理終了と判定した時刻までの薬剤の投入期間を算出し、その投入期間が所定の薬剤投入期間である6時間に達したかを判定してもよい。制御部11は最後の薬剤投入時刻から処理終了と判定した時刻までの薬剤の投入期間が6時間に達していない場合には、薬剤の投入期間が所定の6時間に達していないことを示すための表示情報を所定の装置へ送信してもよい。
【0022】
薬剤の投入期間が6時間に達していない場合には十分な除菌、殺菌効果が得られない場合がある。このような場合には、薬剤の投入期間が所定の6時間に達していないことを示すための出力情報を所定の装置へ送信して、その装置が出力情報をディスプレイ等に表示することで、ユーザは十分な除菌、殺菌効果が得られなかったことを認識することができる。制御部11が、薬剤の投入期間が所定の6時間に達していないことを示すための出力情報を処置の装置へ送信した場合、その装置は出力情報に基づいて、ユーザに知らせるLEDランプを点灯状態してもよい。LEDランプが点灯することにより、ユーザに薬剤の投入期間が所定の6時間に達していないことを通知し、ユーザは十分な除菌、殺菌効果が得られなかったことを認識することができる。出力情報の出力先はリモコン装置8であってもよいし、所定のクラウドサーバや端末装置等であってもよい。出力情報は、制御装置10の処理の改善や、基準時刻の変更、薬剤の所定の投入期間の変更などの処理に利用されてよい。
【0023】
(第三実施形態)
第三実施形態は、第一実施形態において説明した基準時刻決定処理の詳細に関する処理を示す実施形態である。基準時刻決定部13は、便器装置1の使用履歴データを取得して、その使用履歴データに基づいて使用頻度の低い時間帯を検出し、薬剤の投入期間の6時間が確保できる基準時刻を決定するようにしてもよい。
【0024】
この場合、
図7に示すように、基準時刻決定部13は、制御部11を介してリモコン装置8などから送信された洗浄信号を毎回取得する(ステップS201)。基準時刻決定部13は、洗浄信号を取得した時刻を記憶部に記録する(ステップS202)。基準時刻決定部13は、この洗浄信号の取得時刻に基づいて統計処理し、洗浄信号の取得回数が閾値未満の時間を特定する(ステップS203)。回数は1カ月の各日の1時間毎の洗浄信号の取得回数の平均であってよい。基準時刻決定部13は、例えば洗浄信号の取得回数の平均が閾値未満となる使用頻度低下期間のうち最も長い時間を特定する(ステップS204)。基準時刻決定部13は、連続して取得回数の平均が閾値未満となる使用頻度低下期間のうち最も長い時間が6時間以上かを判定する(ステップS205)。基準時刻決定部13は、当該使用頻度低下期間のうち最も長い時間が6時間以上である場合、その特定した時間において6時間の投入期間を設定する(ステップS206)。基準時刻決定部13は、当該使用頻度低下期間のうち最も長い時間が6時間未満である場合、当該時間の前後に、当該特定した時間に、6時間に達する追加時間を加えた6時間を、投入期間と設定する(ステップS207)。基準時刻決定部13は、設定した投入期間の最初の時刻を基準時刻と決定する(ステップS208)。基準時刻決定部13は、基準時刻を記憶部に記録する(ステップS209)。以上の処理は、第一実施形態のステップS100で説明した基準時刻決定処理を示す。ステップS206において基準時刻決定部13は、例えば午前2時から午前8時までを薬剤の投入期間の6時間として特定する。この時、基準時刻決定部13は、最初の時刻である午前2時を基準時刻と決定してよい。または基準時刻決定部13は、
図8に示すように23時から翌日6時までの使用頻度低下期間において、6時間の投入期間(T)を決定してよい。例えば基準時刻決定部13は、
図8に示すような23時から翌日6時までの使用頻度低下期間の7時間において最初の6時間(23時から5時)を投入期間(T)と設定し、その最初の時刻の23時を基準時刻と決定してよい。
【0025】
基準時刻決定部13は洗浄信号の取得回数の平均が閾値未満となる時間帯の午前2時から午前6時の4時間に基づいて投入期間に足りない2時間を算出し、洗浄信号の取得回数の平均が閾値未満となる時間帯の最初の時刻より2時間早い午前0時を算出する。基準時刻決定部13は、午前0時を基準時刻と決定してもよい。基準時刻決定部13は、投入期間に足りない2時間を算出した後、洗浄信号の取得回数の平均が閾値未満となる時間帯の最後の時刻より2時間遅い午前8時を算出して、午前8時を基準時刻と決定してもよい。つまり基準時刻決定部13は、洗浄信号の取得回数の平均などの統計値が閾値未満となる時間帯とその前後の使用頻度の低い使用頻度低下期間を含む所定期間となる6時間を確保できる期間の最初の時刻を基準時刻と決定すればよい。
図9では使用頻度低下期間となる23時~3自、9時~11時、13時~16時のうち最も長い時間13時~16時の4時間と、その前または後の2時間を加えて、投入期間を設定する。例えば、使用頻度低下期間のうち最も長い時間13時~16時とその前の11時~13時の2時間を加えた6時間を投入期間(T)と設定し、その投入期間の最初の時刻の11時を基準時刻と決定してよい。この処理は、基準時刻決定部13が、便器の一日の使用履歴に基づいて、一日の内で便器の使用頻度が最も低い頻度低下期間に含まれる時刻を基準時刻と決定する処理の一態様である。基準時刻決定部13は、使用履歴データに基づいて、どのように基準時刻を決定してもよい。基準時刻決定部13は、投入期間の少なくとも一部の期間が、頻度低下期間に含まれるように基準時刻を決定してよい。
【0026】
基準時刻決定部13は、洗浄信号の1時間ごとの取得回数などの使用履歴データと、機械学習とを用いて、使用頻度の低い時間帯を含む薬剤の投入期間6時間を設定するための基準時刻を決定してもよい。例えば基準時刻決定部13は1日の1時間ごとの洗浄信号の取得回数を示す場合の使用履歴データと、その使用履歴データの場合の薬剤の推奨投入期間6時間の最初の時刻を示す基準時刻の正解データとの関係を機械学習して生成した学習モデルを記憶する。当該機械学習はクラウドサーバ等の他のコンピュータ装置で行われてよい。制御装置10は当該学習モデルを記憶する。基準時刻決定部13は、基準時刻を決定する際に、便器装置1が設置されている場所の使用履歴データを記憶部から取得して学習モデルにより生成したニューラルネットワーク等の判定器に入力する。基準時刻決定部13は当該判定器から出力された基準時刻を、薬剤の投入期間6時間を設定するための基準時刻と決定してよい。
【0027】
この第三実施形態の処理は、基準時刻決定部13が、便器装置1の使用履歴データに基づいて当該便器装置1の使用頻度の低い所定の投入期間を設定する基準時刻を決定する処理の一態様である。便器装置1の使用頻度の低い所定の投入期間を設定する基準時刻を決定することにより、薬剤の効果が十分発揮される期間である所定の投入期間が経過する前に、便器洗浄が行われてしまう可能性を低減することができる。またこのような処理によれば、予め定めた基準時刻により薬剤を投入する代わりに、トイレ100を利用する家族などの使用状況に応じた所定の投入期間を確保した便鉢内部への投薬による除菌、殺菌を行うことで、便器装置1の使用状況に応じて一日の中で使用頻度がより少ない時間帯に薬剤が留まるようにすることができる。
【0028】
図8及び9の横軸は時刻を表す。
図8及び9縦軸は洗浄信号の取得状況を表す。洗浄信号の取得状況がONのときに洗浄信号を取得したことを表す。制御装置10は、リモコン装置8や端末装置などの出力先に、
図8や
図9で示す、1日の間に洗浄信号を取得したタイミング(
図8中に示すt1~t6、
図9中に示すt11~t17)、投入期間(T)、基準時刻(ta)などを表示する画像情報を出力してよい。表示情報には、薬剤の再投入の時刻や投入期間中に洗浄が行われたタイミング(tb)が確認できるような情報であってもよい。リモコン装置8の表示部82はこの表示情報をディスプレイに表示する。これによってトイレを利用するユーザは、使用頻度低下期間や、薬剤の投入期間(T)、薬剤投入時刻、洗浄した時刻などを確認することができる。
【0029】
(第四実施形態)
薬剤管理部15は、基準時刻に基づいて薬剤投入時刻を検知する際に、基準時刻の前後1時間などの、基準時刻を基準とした所定の期間において薬剤投入時刻を検知してよい。例えば、
図10に示すように、薬剤管理部15は、上述のステップS101と同様に、制御装置10の内部に設けられた時計機能部から時刻を取得する(ステップS301)。薬剤管理部15は取得した現在の時刻と基準時刻とを比較して、現在の時刻が基準時刻の前後1時間で特定される期間に含まれるかを判定する(ステップS302)。例えば基準時刻が0時である場合は、薬剤管理部15は、現在の時刻が午後11時から午前1時までの間の期間に含まれるかを判定する。薬剤管理部15は、現在の時刻が基準時刻の前後1時間で特定される期間に含まれる場合には、洗浄信号を待機し、洗浄信号を取得したかを判定する(ステップS303)。薬剤管理部15は、午後11時から午前1時までの間の期間において制御部11からの洗浄信号を取得した場合、ステップS103の処理と同様に薬剤投入時刻であることを検知し(ステップS304)、薬剤投入部30へ薬剤の投入を指示する(ステップS305)。これによって、薬剤投入部30が薬剤の溜水面への投入を行う。以降の処理は、第一実施形態のステップS106以降の処理と同様である。以上の処理は、薬剤管理部15が、基準時刻の前後の所定時間において洗浄が行われた後のタイミングを薬剤投入時刻と検知する処理の一態様である。このような処理によれば、ある基準時刻を基準としてある期間を定め、その期間における便鉢内部の洗浄が最後の洗浄であると仮定して、薬剤を投入することができる。これによって、薬剤の投入期間の最初の薬剤投入時刻が午前0時などの所定時刻を基準とするある期間においてばらつくことが想定される状況において、薬剤投入時刻を自由に決定することができる。
【0030】
(第五実施形態)
制御部11は、便鉢内の溜水面Lを、洗浄水を流した直後の規定の溜水面Lの高さよりも下げる水面高さの制御を行い、薬剤管理部15は便鉢内の溜水面Lが洗浄水を流した直後の規定の溜水面Lの高さよりも下がった後に薬剤を投入するようにしてもよい。薬剤を投入するときは薬剤を投入しないときに比べて溜水面を下げることにより、薬剤がカビなどの発生する位置を覆うように制御することができる。
【0031】
例えば、
図11に示すように、洗浄信号をリモコン装置8から取得した後のステップS103~ステップS104の処理や、上記の第一実施形態のステップS106~ステップS109の処理により、洗浄管理部16は、薬剤の投入を指示したことの信号を薬剤管理部15から取得する(ステップS401)。その後、洗浄管理部16は、洗浄信号を取得する(ステップS402)。洗浄管理部16は、洗浄部20に指示する洗浄指示において、予め定められた洗浄水の量を所定の量減じて洗浄するよう指示する(ステップS403)。これによって薬剤を投入する直前の洗浄において溜水面Lが低下する。当該処理において、洗浄管理部16は、リム吐水口21から洗浄水を供給する第1リム洗浄指示、ジェット吐水口22から洗浄水を供給するジェット洗浄指示、再びリム吐水口21から洗浄水を供給する第2リム洗浄指示を順に行う。第2リム洗浄指示を行わないことで、便器内に供給される洗浄水の量を減らし、溜水面Lを低下させる制御を行うようにしてもよい。これにより、洗浄管理部16は、溜水面Lが1cmほど下がるように洗浄水の量を減じる。一例としての1cmなどの高さは、薬剤を投入し、溜水面に泡が形成されたとき、当該泡が、溜水面Lと便鉢内面との交線Aに付着するカビに当たる高さであってよい。この高さは1cm以外の高さであってもよい。これによって、カビが生じる溜水面Lの位置よりも、投薬時の溜水面Lが下がる。この状態で薬剤管理部15が泡状の薬剤を投入する薬剤投入指示を薬剤投入部30へ出力する(ステップS404)。これによって、当該泡状の薬剤が、溜水面Lと便鉢内面との交線Aに付着するカビに当たるよう制御する。このような制御によれば、溜水面Lに生じたカビの位置を効率よく除菌、殺菌することができる。
図11で示す処理は、薬剤管理部15が、便器の内部の溜水面の高さを薬剤が投入される前に比べて下げるよう便器装置の洗浄部20を制御した後に薬剤を投入するように薬剤投入部を制御する処理の一態様である。
【0032】
上述の各実施形態の説明において、基準時刻決定部13は、薬剤投入時刻から投入完了時刻までの投入期間が夜間になるような基準時刻を決定する場合の説明をしている。しかしながら、基準時刻決定部13は、薬剤投入時刻から投入完了時刻までの投入期間が昼間になるような基準時刻を決定してもよい。
【0033】
図12で示すように、制御装置10は少なくとも時刻管理部14、薬剤管理部15を備えればよい。時刻管理部14は、薬剤投入時刻を検知する。薬剤管理部15は、薬剤投入時刻に薬剤を便器の内部に投入するよう便器を制御し、薬剤投入時刻から投入期間が経過するまでの間に便器の洗浄が行われたときに薬剤を投入する。
【0034】
上述の各装置は内部に、コンピュータシステムを有している。上述した各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等をいう。このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0035】
上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル、差分プログラムであっても良い。
【符号の説明】
【0036】
1・・・便器装置、2・・・便器本体、4・・・便座ボックス、5・・・便蓋、6・・・便座、8・・・リモコン装置、10・・・制御装置、11・・・制御部、12・・・取得部、13・・・基準時刻決定部、14・・・時刻管理部、15・・・薬剤管理部、16・・・洗浄管理部、20・・・洗浄部、30・・・薬剤投入部、81・・・リモコン機能部、82・・・表示部、100・・・トイレ、101・・・CPU、102・・・ROM、103・・・RAM、104・・・HDD、105・・・通信モジュール