(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046438
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】波力発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/14 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
F03B13/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155027
(22)【出願日】2021-09-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】515052512
【氏名又は名称】株式会社中山事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100167818
【弁理士】
【氏名又は名称】蓑和田 登
(72)【発明者】
【氏名】中山 繁生
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA02
3H074AA12
3H074BB11
3H074CC02
3H074CC50
(57)【要約】
【課題】よりエネルギー変換効率の高く、且つ充分な電力を得ることができる波力発電装置を提供する。
【解決手段】波力発電装置1は、中空部2aを有して水面に浮かぶ浮遊体2と、浮遊体2内の中空部2aにバネ3を介して取り付けられて水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体4と、振動体4の上下運動に基づいてバネ3を介して駆動されて発電する発電体5と、を備える。浮遊体2は、略紡錘形状を有して水中で直立姿勢を保つ本体部21と、その本体部21の上側に一体形成されて本体部21の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部22と、を有する。この構成により、波力発電装置1は、よりエネルギー変換効率の高く、且つ充分な電力を得ることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有して水面に浮かぶ浮遊体と、
前記浮遊体内の中空部にバネを介して取り付けられ、水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体と、
前記振動体の上下運動に基づいて、前記バネを介して駆動されて発電する発電体と、を備え、
前記浮遊体は、略紡錘形状を有して水中で直立姿勢を保つ本体部と、その本体部の上側に一体形成されて前記本体部の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部と、を有する、ことを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
前記浮遊体の本体部は、その側面に水の抵抗を受けにくい流線形状を有する、ことを特徴とする請求項1記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記波力発電装置は、前記浮遊体が揺れの無い水面に浮遊している状態において、前記本体部は直立姿勢を保ち、且つ前記凸部の下端が水面より上側に位置する、ことを特徴とする請求項1又は2記載の波力発電装置。
【請求項4】
前記浮遊体内に形成される中空部は、前記略紡錘形状の本体部の鉛直方向に沿って、縦長に形成される、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の波力発電装置。
【請求項5】
前記発電体は、
前記振動体の上下運動を回転運動に変換する変換手段と、
前記変換手段を介して取り出された回転力により回転すると共に、発電機を駆動する回転体と、を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の波力発電装置。
【請求項6】
前記回転体はフライホイールである、ことを特徴とする請求項5記載の波力発電装置。
【請求項7】
前記バネのバネ定数及び前記振動体の質量は、前記バネの伸縮周期がより長くなるよう設定される、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の波力発電装置。
【請求項8】
さらに、前記本体部の側面において水平方向に突出し、且つ角度調整可能に取り付けられたウイングを備える、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の波力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波の振動を電力に変換する波力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの化石燃料の使用に起因した環境問題が深刻化しており、自然エネルギーを利用して発電する発電装置が注目を受けている。その内の一つである波力発電装置は波エネルギーを電気エネルギーに変換するものである。波エネルギーは、空気より重い水の運動エネルギーを利用するため、面積あたりの発電効率が他の自然エネルギーよりも優れており、このため波力発電装置は将来の発電装置として有望視されている。
【0003】
波力発電の方法は様々知られており、例えば、海面に浮かべたブイ状の波力発電装置を用いて、波による上下動で浮遊体の内部のバネを伸縮往復運動させ、これと共に回転体を回転させて発電するものが知られている。
【0004】
例えば、水面の変動に応じて往復直線運動する振動体と、該当該振動体の往復直線運動に基づいて駆動されて発電する発電機とを備えて、当該振動体の質量に対して質量を付加する付加質量体を有した波力発電装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この波力発電装置は、バネ定数が高く、長さの短いバネを使用することができ、小型化を図ることができる。また、浮体の浮力バネ係数を調整するため、浮体がその側面から外方に突出する突出体を備え、この突出体を回転させることによって、水面における浮体断面積が調整可能となる波力発電装置も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5627528号公報
【特許文献2】特開2012-215121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような従来の波力発電装置は、発電効率や耐久性など、未だに多くの問題を抱えているのが現状である。例えば、上記特許文献1に示す波力発電装置では、固く短いバネを使用しているため、 平常時の穏やかな波ではバネを伸縮させることができず、その結果、発電効率が悪いという問題がある。
【0007】
また、より発電効率に優れ、好ましくは化石燃料を全く使用せずに十分な電力を得る波力発電装置を実現することには、今後膨大な需要があることは疑う余地がない。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、よりエネルギー変換効率の高く、且つ充分な電力を得ることができる波力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る波力発電装置は、中空部を有して水面に浮かぶ浮遊体と、前記浮遊体内の中空部にバネを介して取り付けられ、水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体と、前記振動体の上下運動に基づいて、前記バネを介して駆動されて発電する発電体と、を備え、前記浮遊体は、略紡錘形状を有して水中で直立姿勢を保つ本体部と、その本体部の上側に一体形成されて前記本体部の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部と、を有することを特徴とする。
【0010】
この波力発電装置において、前記浮遊体の本体部は、その側面に水の抵抗を受けにくい流線形状を有することが好ましい。
【0011】
この波力発電装置において、前記波力発電装置は、前記浮遊体が揺れの無い水面に浮遊している状態において、前記本体部は直立姿勢を保ち、且つ前記凸部の下端が水面より上側に位置することが好ましい。
【0012】
この波力発電装置において、前記浮遊体内に形成される中空部は、前記略紡錘形状の本体部の鉛直方向に沿って、縦長に形成されることが好ましい。
【0013】
この波力発電装置において、前記発電体は、前記振動体の上下運動を回転運動に変換する変換手段と、前記変換手段を介して取り出された回転力により回転すると共に、発電機を駆動する回転体と、を備えることが好ましい。
【0014】
この波力発電装置において、前記回転体はフライホイールであることが好ましい。
【0015】
この波力発電装置において、前記バネのバネ定数及び前記振動体の質量は、前記バネの伸縮周期がより長くなるよう設定されることが好ましい。
【0016】
この波力発電装置において、さらに、前記本体部の側面において水平方向に突出し、且つ角度調整可能に取り付けられたウイングを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る波力発電装置は、中空部を有して水面に浮かぶ浮遊体と、浮遊体内の中空部にバネを介して取り付けられて水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体と、振動体の上下運動に基づいてバネを介して駆動されて発電する発電体と、を備える。浮遊体は、略紡錘形状を有して水中で直立姿勢を保つ本体部と、その本体部の上側に一体形成されて本体部の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部と、を有する。この構成により、本発明に係る波力発電装置では、よりエネルギー変換効率の高く、且つ充分な電力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態に係る波力発電装置の全体構成を示す図である。
【
図2】(a)乃至(c)同上波力発電装置の沈み込み時の動作説明図である。
【
図3】(a)乃至(c)同上波力発電装置の浮き上がり時の動作説明図である。
【
図4】実施の形態の変形例に係る波力発電装置の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る波力発電装置に関して図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る波力発電装置は、海面にブイ状の浮遊体を浮かべて、2つの物体(ここでは浮遊体と振動体)を上下方向に互いに相対運動させて発電機を駆動して発電するものである。
【0020】
最初に、本実施の形態に係る波力発電装置1の構造に関して
図1を参照して説明する。この波力発電装置1は、中空部2aを有して水面に浮かぶ浮遊体2と、浮遊体2内の中空部2aにバネ3を介して取り付けられて水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体4と、振動体4の上下運動に基づいてバネ3を介して駆動されて発電する発電体5と、を備える。
【0021】
浮遊体2は、ブイのような略紡錘形状(流線形回転体形状)を有して水中で直立姿勢を保つ本体部21と、その本体部21の上側に一体形成されて本体部21の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部22と、を有する。なお、本実施の形態の説明において、紡錘形とは円柱形で両端側の窄んだ形状である。また、浮遊体2の本体部21は、その側面において、水の抵抗を受けにくい流線形状を有している。また、本実施の形態における水平は
図1における水平方向を意味するものである。
【0022】
浮遊体2の内部に形成される中空部2aは、
図1に示すように、略紡錘形状の本体部21の鉛直方向に沿って、縦長に形成される。この構成により、バネ3の長さを長くでき、その結果、バネ定数及び振動体4の質量を調整することでバネ3の伸縮周期をより長くできる。
【0023】
なお、浮遊体2の素材には、ゴム材、ポリオキシメチレン(PolyOxyMethylene)などの熱可塑性プラスチック樹脂やFRP(繊維強化プラスチック: Fiber Reinforced Plastics)を用いることが考えられる。ポリオキシメチレンは、耐衝撃性や耐摩耗性に優れ、量産にも適し、特に比重が1.1程度なので中空部2aの容量を調整することで水面に適度に浮き、波力発電装置1自体を非常に軽量に構成することが可能となる。
【0024】
バネ3はいわゆる弾性体であって、上下方向に変位した際に、元の位置に戻ろうとする復元力を有する物であり、振動体4を伸縮往復運動させる。変位量に応じて線形な復元力を持つものが好ましい。
【0025】
振動体4は、錘の役目を有し、波力による水面の上下動によって生じる浮遊体2の上下振動を得て、所定の固有周波数にて上下方向に往復直線運動するようになっている。この振動体4は、バネ3を介して、浮遊体2に対して相対運動可能なように支持されている。
【0026】
なお、バネ3のバネ定数及び振動体4の質量は、バネ3の伸縮周期がより長くなる(すなわちバネ3の周波数が小さくなる)ように設定される。より好ましくは、バネ3の伸縮周期と振動体4の振動とを共振させることで、バネ3の振幅幅を増大させて、その結果、より高いエネルギー変換効率を実現できる。このような共振によって、バネ3の伸縮を増幅させ、波力発電装置1の発電効率の向上に寄与できる。
【0027】
発電体5は、振動体4の上下運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する機構を有し、例えば、振動体4の上下運動を回転運動に変換する変換手段(図示せず)と、この変換手段を介して取り出された回転力により回転すると共に、発電機(図示せず)を駆動する回転体5aと、を備える。この回転体5aは、例えばタービン等の発電機を回転させて電力を得る。ここで、上下運動を回転運動に変換する変換手段は、例えば、振動子4の上下運動と連動して上下する伝達棒の上下運動を、ラックと、当該ラックと螺合したピニオンとにより回転運動に変換する。なお、発電体5は、上下運動の運動エネルギーを電気エネルギーに変換する機能を持つものであればその他の構造でも良い。
【0028】
ここで、回転体5aをフライホイールとしても良いし、波力発電装置1内に別体のフライホイールを備えても良い。このフライホイールは、典型的には浮遊体2の鉛直軸と直交する方向に回転可能に装着された円盤形状を有し、フライホイールが回転運動をすると、「ジャイロ効果」によって、円盤を水平に保とうとする回転運動(すなわち浮遊体2を鉛直姿勢に保つ力)が生じる。このため、波による波力発電装置1の水平方向の揺れを防ぎ、波の上下動で発電体5に備わる回転体5aをより効率的に回転できるため、より高いエネルギー変換効率を実現できる。
【0029】
なお、波力発電装置1は、その本体部21の側面から水平方向に突出し、且つ角度調整可能に取り付けられたウイング6を備えても良い。このウイング6は、「浮遊対の浮き沈み」をコントロールする抵抗体となると共に、浮遊体2の姿勢を調整する機能を有する。なお、ウイング6の角度を変えながら浮き沈みを行うことで発電しながら任意の場所へ移動させることも考え得る。
【0030】
波力発電装置1は、浮遊体2が揺れの無い水面に浮遊している状態において、浮遊体2の本体部21は直立姿勢を保ち、且つ凸部22の下端が水面より上側に位置するよう浮遊体2の重量、中空部2aの容量や凸部22の重量や形状が調整される。
【0031】
次に、本実施の形態に係る波力発電装置1の動作原理に関して
図2及び
図3を参照しながら説明する。最初に、沈み込み時においては、
図2(a)に示すように、水面の上下動(揺れ)に応じてバネ3が伸縮し、発電体5のフライホイールが回転して、浮遊体2の鉛直姿勢を維持する役割を有する。
【0032】
そして、
図2(b)に示すように、振動体4の下方への動きと浮遊体2の重量によって振動体4が下降中に浮遊体2が水中へ侵入して沈み込む。次に、
図2(c)に示すように、浮遊体2の凸部22が海面に侵入する際に、凸部22と海面との干渉によって浮遊体2の海水への侵入が急停止される。この急停止によって振動体4により大きな慣性力が働き、バネ3をより伸長するように作用し、その結果、弾性エネルギーを増大させてより効率的に発電が行われる。
【0033】
次に、浮き上がり時には、
図3(a)に示すように、振動体4の重量減と凸部22の浮力が生じて浮遊体2が浮上方向に反転する。そして、
図3(b)に示すように、バネ3の弾性力で振動体4が上昇に反転することで浮遊体2の重量が減り、振動体4の上昇中は浮力で浮遊体2が浮上する。そして、
図3(c)に示すように、バネ3が縮み切ると振動体4は上昇を停止して、その後、下降を開始する。これと同時に、浮遊体2は基本状態(静止水面に浮遊体2を浮かべた時の状態)より高い位置まで上昇して停止することで位置エネルギーを得た後に、沈み込みを開始できる。この結果、勢いを増した浮遊体2の沈み込みが凸部22により再度急停止される。以降、浮遊体2は
図2及び
図3に示す一連の上下動を繰り返すことにより発電する。
【0034】
次に、本実施の形態に係る波力発電装置1が、より高効率に波エネルギーを電気エネルギーに変換できる3つの特徴に関して説明する。
【0035】
第一の特徴として、波力発電装置1は、「水の抵抗を利用した形状とバランス構成」を有する。すなわち、(1)静止状態において凸部22は水面より上部に配置され、(2) 本体部21は流線形回転体を採用した最も水の抵抗を受けない形状を有し、(3)静かな水面に浮遊体2を設置した場合に水面と凸部22の間に空間が形成される。この(1)~(3)の構造上の特徴が相互に作用し、浮遊体2内の中空部2aに配置されたバネの伸縮を増幅させ、この結果、発電効率の向上に寄与する。
【0036】
より具体的には、水面の上下動によるバネ3の伸縮で錘である振動体4が下降する際、浮遊体2の重力が増し、これと共に浮遊体2の流線形の水の抵抗を受けない形状によって浮遊体2が水中へ侵入する。その後、凸部22が水面と干渉した後に水中に沈み込むことで 水の抵抗と浮力の増加を受け、浮遊体2の沈み込みが急停止する。この沈み込みの急停止によって、振動体4に大きな慣性力が働き、バネ3はより伸長し、弾性力を増した後、振動体4は停止して上昇を始める。これと同時に、凸部22による浮力の増加と浮遊体2の重力の減少から、浮遊体2は上昇を開始する。このとき、「浮遊体2の浮上」と「バネ3の伸縮」が共振関係となるとより好ましくバネ3の振動を増幅させ、発電のための弾性エネルギーを増大させる。
【0037】
第二の特徴として、波力発電装置1は、「浮上を阻害しない形状とバネ3の周期」を有する。ここで「浮上を阻害しない形状とバネ3の周期」とは、(4)浮遊体2において流線形回転体を採用した最も水の抵抗を受けない形状、(5)バネ3の伸縮周期がより長くなるように設定されたバネ定数と振動体4の質量、である。この2点が相互作用してバネ3の伸縮を増幅させ、発電効率の向上に寄与することができる。
【0038】
より具体的には、この2点の相互作用は、水面の上下動によるバネ3の伸縮で振動体4が上昇する際に、浮遊体2の重力が軽くなり、水の抵抗の少ない流線形上と浮力によって浮遊体2が基本状態より高い位置まで上昇し、位置エネルギーを獲得することあができる。また、その際、浮遊体2内に形成される中空部2aが略紡錘形状の本体部21の鉛直方向に沿って縦長に形成されているため、バネ3の伸縮周期がより長くなるように バネ定数と振動体4の質量を設定することが可能となる。このため、浮力による浮遊体2の上昇時間が長くなり、浮遊体2をより高い位置まで上昇させることが可能となり、より高い位置で浮遊体2は停止して下降を開始すると同時に振動体4も停止して下降を開始する。この結果、より高い位置からの浮遊体2が沈み込みと同時に凸部22による急停止によって振動体4への慣性力が増大し、発電のための弾性エネルギーをより増大できる。
【0039】
第三の特徴として、波力発電装置1は、「水面の上下動を効率的に吸収するための姿勢維持機構」を有する。ここで「水面の上下動を効率的に吸収するための姿勢維持機構」とは (6)波による水平方向の揺れを防ぎ、浮遊体2の鉛直姿勢を維持するための機構である。
【0040】
より具体的には、波力発電装置1はフライホイールを備える。浮遊体2が傾くと水面の上下動を、効率的にバネ3の伸縮に活用することができずエネルギーのロスが多くなる。そこで、波や風による水平方向の揺れを防ぎ、浮遊体2の鉛直姿勢を維持するために、バネ3の伸縮往復運動を回転運動に変換する際に、フライホイールへのエネルギー貯蔵を介して、発電を行う。このことで安定した発電に寄与すると同時に、フライホイール回転によるジャイロ効果で鉛直姿勢を維持できるようになる。
【0041】
以上の説明のように、本実施の形態の波力発電装置1は、中空部2aを有して水面に浮かぶ浮遊体2と、浮遊体2内の中空部2aにバネ3を介して取り付けられて水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体4と、振動体4の上下運動に基づいてバネ3を介して駆動されて発電する発電体5と、を備える。浮遊体2は、略紡錘形状を有して水中で直立姿勢を保つ本体部21と、その本体部21の上側に一体形成されて本体部21の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部22と、を有する。
【0042】
このような波力発電装置1の構成により、よりエネルギー変換効率の高く、且つ充分な電力を得ることができる。従って、波力発電装置1は、発電時に化石燃料を用いることがなく、騒音も自然破壊もなく環境負荷を軽減でき、特に脱炭素化社会の実現には欠かせない技術となり得る。また、浮遊体2の素材に軽量且つ耐久性のある樹脂を用いることで、低価格で量産でき、経済的にも優れた波力発電装置1となる。
【0043】
また、波力発電装置1により、化石燃料による発電から波力発電への革命を実現でき、化石燃料不要、放射性廃棄物問題の解消、太陽光パネルによる有害物質の排出解消、太陽光発電のための自然破壊解消、コストダウンなど多くの問題点を解決し得るものである。
【0044】
(変形例)
本実施の形態の変形例について
図4を参照して説明する。なお、本変形例の波力発電装置1の機能構成は上記実施の形態と同様であるため、その詳細な説明を省略する。本変形例において、波力発電装置1は、「バネの伸縮」と「浮遊対の浮き沈み」の共振関係を制御するため、「浮遊体2の浮き沈み」を調整する抵抗体となると共に、姿勢調整機能を有するウイング6を備える。また、振動体4の重量を調整する機能を備えることで、バネ3の振動周期を調整可能とする。
【0045】
ウイング6は、浮遊体2の移動機能を有してもよい。すなわち、浮遊体2のウイング6の角度を変えながら、浮き沈みを繰り返すことで波力発電装置1の移動制御が可能となる。また、この方法によって移動しながら発電することが可能となる。
【0046】
また、その他、波力発電装置1は、海上の気候データなどを自動で取得して、GPS、ソナー、障害物センサーなどを用いてウイング6を用いた自動操舵で波高の海域、風力の大きな海域に到達する。次に、大きな海面の揺れによって、より効率的に発電し、内蔵する蓄電部(図示せず)に蓄電する。蓄電部は、リチウムイオン電池など発電体5で発電された電力を蓄電する。そして、蓄電部に十分な蓄電を終えた波力発電装置1は、ウイング6を利用して自動で港に帰航して、蓄電された電力を供給する。このような波力発電装置1は、上述の実施の形態のように従来に比較して安価なコストで量産できるため、非常に安価な電力供給源となり得る。
【0047】
なお、本発明は、上記実施の形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態において、波力発電装置1は引張りバネを用いる発電体5を備えているが、これを圧縮バネを用いる発電体としても同様の作用効果を奏することができる。また、上記実施の形態においてウイング6を利用して自動で港に寄航(寄港)して、蓄電された電力を供給する代わりに、寄港することなく送電線にて発電した電力を供給することも考え得る。また、上記実施の形態において蓄電部(図示せず)に蓄電する代わりに水素タンクを備え、発電体5で発電された電力にて濾過した海水を電気分解し、発生させた水素を貯蔵する実施形態も可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 波力発電装置
2 浮遊体
2a 中空部
3 バネ
4 振動体
5 発電体
5a 回転体
6 ウイング
21 本体部
22 凸部
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有して水面に浮かぶ浮遊体と、
前記浮遊体内の中空部にバネを介して取り付けられ、水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体と、
前記振動体の上下運動に基づいて、前記バネを介して駆動されて発電する発電体と、を備え、
前記浮遊体は、略紡錘形状を有して水中で直立姿勢を保つ本体部と、その本体部の上側に一体形成されて前記本体部の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部と、を有し、
前記波力発電装置は、前記浮遊体が揺れの無い水面に浮遊している状態において、前記本体部は直立姿勢を保ち、且つ前記凸部の下端が水面より上側に位置し、
前記発電体は、
前記振動体の上下運動を回転運動に変換する変換手段と、
前記変換手段を介して取り出された回転力により回転すると共に、発電機を駆動する回転体と、を備える、ことを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
前記浮遊体の本体部は、その側面に水の抵抗を受けにくい流線形状を有する、ことを特徴とする請求項1記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記浮遊体内に形成される中空部は、前記略紡錘形状の本体部の鉛直方向に沿って、縦長に形成される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の波力発電装置。
【請求項4】
前記回転体はフライホイールである、ことを特徴とする請求項1記載の波力発電装置。
【請求項5】
前記バネのバネ定数及び前記振動体の質量は、前記バネの伸縮周期がより長くなるよう設定される、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の波力発電装置。
【請求項6】
さらに、前記本体部の側面において水平方向に突出し、且つ角度調整可能に取り付けられたウイングを備える、ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の波力発電装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
上記目的を達成するために本発明に係る波力発電装置は、中空部を有して水面に浮かぶ浮遊体と、前記浮遊体内の中空部にバネを介して取り付けられ、水面の波の揺れに応じて上下運動をする振動体と、前記振動体の上下運動に基づいて、前記バネを介して駆動されて発電する発電体と、を備え、前記浮遊体は、略紡錘形状を有して水中で直立姿勢を保つ本体部と、その本体部の上側に一体形成されて前記本体部の水平断面の径より大きな水平断面の径を有する凸部と、を有し、前記波力発電装置は、前記浮遊体が揺れの無い水面に浮遊している状態において、前記本体部は直立姿勢を保ち、且つ前記凸部の下端が水面より上側に位置し、前記発電体は、前記振動体の上下運動を回転運動に変換する変換手段と、前記変換手段を介して取り出された回転力により回転すると共に、発電機を駆動する回転体と、を備えることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】