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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004644
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】水切部材
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/16 20060101AFI20230110BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B60J1/16 G
B60J1/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106474
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】596002767
【氏名又は名称】トヨタ自動車九州株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】加治 茂
【テーマコード(参考)】
3D127
【Fターム(参考)】
3D127AA12
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF26
(57)【要約】
【課題】既存のドアガラスに簡単にも簡単に後付け対応して部材取付けに要する手間を可及的削減でき、コストを低減化することができ、ドアガラス下端縁に沿って流れる侵入水をドア内蔵部品に水濡れ干渉しない位置で水切りして落水させ、ドア内蔵部品の被水損傷を未然に防止できる水切部材を提供する。
【解決手段】ガラス下端縁部に固定される支持体と、支持体に設けられ、ガラス下端縁部に下側から支持体を介して密着される水切体と、を備え、水切体は、所定厚みを有し、ガラス下端縁部への密着状態でガラス下端縁の両側面に面当接すると共に同両側面から外方へ突出することにより流水経路の上流側に対向して流水を遮断して落水させる水切面部を有してなることとした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のドアガラスのガラス下端縁の伸延方向に沿って形成される水が流れる流水経路の中途部に設置されて流水を車両ドア内部の所定位置に落水させる水切部材であって、
前記流水経路に沿って伸延し、前記ガラス下端縁部に固定される支持体と、
前記支持体に設けられ、前記ガラス下端縁部に下側から前記支持体を介して密着される水切体と、を備え、
前記水切体は、所定厚みを有し、
前記ガラス下端縁部への密着状態で前記ガラス下端縁の両側面に面当接すると共に同両側面から外方へ突出することにより前記流水経路の上流側に対向して流水を遮断して落水させる水切面部を有することを特徴とする水切部材。
【請求項2】
前記水切体は、略方形状の弾性ブロック材からなり、方形一側面を前記水切面部としたことを特徴とする請求項1に記載の水切部材。
【請求項3】
前記支持体は、前記水切体を越流する水を落水するための水切孔を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水切部材。
【請求項4】
前記支持体は、
前記流水経路の上流側で前記水切体を設置するための設置部と、
前記流水経路の下流側で前記ガラス下端縁部に固定するための固定部と、
を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水切部材。
【請求項5】
前記支持体は、前記ガラス下端縁部の下面に対向する底側壁と、
前記底側壁の一側端縁で立ち上がり、前記ガラス下端縁部の内外側面のうち少なくとも一側面に対向する一側壁と、を備え、
前記底側壁は前記設置部と前記水切孔を有すると共に、前記一側壁は前記固定部を有することを特徴とする請求項4に記載の水切部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のドアガラスに設けられる水切部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、車両ドアDは、ドアガラスFGに付着した水が外面を伝って車両ドア内部Sへ不用意に侵入した場合に、同侵入水Wを車両ドア内部Sから外側へ排出する水切り孔Hを底部に備えている。なお、図6は、車両ドアの内部構造を示している。
【0003】
また、車両ドア内部Sには、ドアガラスFGのガラス下端縁FG1の下方の所定位置で、例えば、ドアガラス昇降装置やドアロック装置などのドア内蔵部品Pが複雑に配設されている。
【0004】
車両ドア内部Sへの侵入水Wは、ドアガラスFGを伝い流れてドアフレームDFとドアガラスFGとの前後側の下方隅部分に集中し、ウエストラインWLに沿って設けたモールとドアガラスFGとの間の前後側の隙間部分から侵入する水である場合が殆どである。
【0005】
すなわち、侵入水Wは、図6に示すように、車両ドア内部Sの上側で露出したドアガラスFGのガラス下端縁FG1に沿って流水経路Rを形成し、そのまま流勢を失わずにその下方位置にあるドア内蔵部品Pへ向かって落下し、同ドア内蔵部品Pに被水干渉してドア内蔵部品Pの腐食劣化や漏電などの不具合を生じさせる原因となる。
【0006】
このようなドア内蔵部品への被水損傷を防止するべく、ガラス下端縁の形状を変更したり(例えば、特許文献1参照。)、ガラス下端縁の全域に細長状の樋部を付設したりして(例えば、特許文献2参照。)、ガラス下端縁からの侵入水の落水位置をドア内蔵部品に水被り干渉しない位置へ変更する水切技術が種々提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6-49130号公報
【特許文献2】特開2004-324350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の水切技術は、車体ごとに異なる車両ドア形状に合わせつつ限られた車両ドア内部において他の車両ドア部品に取り付け干渉しないように都度、ドアガラス形状を変更したり大型の樋部を設計して取り付けなければならない問題がある。
【0009】
すなわち、上記従来の技術によれば、ドアガラス形状の変更や個々のドアガラスに適応させる樋部の設計など、部材取付けに要する手間を徒に増加させるばかりか、コストが高額化する問題があった。さらには、既に流通している車体の既設ドアガラスに簡単に後付け対応できない問題があった。
【0010】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、既存のドアガラスに簡単に後付け対応して部材取付けに要する手間を可及的削減でき、コストを低減化することができ、ドアガラス下端縁に沿って流れる侵入水をドア内蔵部品に水濡れ干渉しない位置で水切りして落水させ、ドア内蔵部品の被水損傷を未然に防止できる水切部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明では、(1)車両用のドアガラスのガラス下端縁の伸延方向に沿って形成される水が流れる流水経路の中途部に設置されて流水を車両ドア内部の所定位置に落水させる水切部材であって、前記流水経路に沿って伸延し、前記ガラス下端縁部に固定される支持体と、前記支持体に設けられ、前記ガラス下端縁部に下側から前記支持体を介して密着される水切体と、を備え、前記水切体は、所定厚みを有し、前記ガラス下端縁部への密着状態で前記ガラス下端縁の両側面に面当接すると共に同両側面から外方へ突出することにより前記流水経路の上流側に対向して流水を遮断して落水させる水切面部を有することを特徴とする水切部材を提供する。
【0012】
また、本発明に係る水切部材は、以下(2)~(5)の点に特徴を有する。
(2)前記水切体は、略方形状の弾性ブロック材からなり、方形一側面を前記水切面部としたこと。
(3)前記支持体は、前記水切体を越流する水を落水するための水切孔を有すること。
(4)前記支持体は、前記流水経路の上流側で前記水切体を設置するための設置部と、前記流水経路の下流側で前記ガラス下端縁部に固定するための固定部と、を有すること。
(5)前記支持体は、前記ガラス下端縁部の下面に対向する底側壁と、前記底側壁の一側端縁で立ち上がり、前記ガラス下端縁部の内外側面のうち少なくとも一側面に対向する一側壁と、を備え、前記底側壁は前記設置部と前記水切孔を有すると共に、前記一側壁は前記固定部を有すること。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、車両用のドアガラスのガラス下端縁の伸延方向に沿って形成される水が流れる流水経路の中途部に設置されて流水を車両ドア内部の所定位置に落水させる水切部材であって、前記流水経路に沿って伸延し、前記ガラス下端縁部に固定される支持体と、前記支持体に設けられ、前記ガラス下端縁部に下側から前記支持体を介して密着される水切体と、を備え、前記水切体は、所定厚みを有し、前記ガラス下端縁部への密着状態で前記ガラス下端縁の両側面に面当接すると共に同両側面から外方へ突出することにより前記流水経路の上流側に対向して流水を遮断して落水させる水切面部を有することとしたため、既存のドアガラスに簡単に後付け対応して部材取付けに要する手間を可及的削減でき、コストを低減化することができ、ドアガラス下端縁に沿って流れる侵入水をドア内蔵部品に水濡れ干渉しない位置で水切りして落水させ、ドア内蔵部品の被水損傷を未然に防止できる効果がある。
【0014】
具体的には、落水がドア内蔵部品に水被り干渉しない車両ドア内の領域部(以下、単に非被水領域部と称する。)に相対するガラス下端縁部(以下、単に非被水部位と称する。)に水切体を配置することにより、流水経路上流側に水切面部を配向させる。このように配向した水切面部が、流水を受けて堰き止め遮断し、流勢を減衰させてドア内部への落水位置を変更する落水面部として機能する。
【0015】
すなわち、ガラス下端縁の流水経路中途の非被水部位で流水を強制的に遮断して下方の非被水領域部へピンポイントに落下させ、ドア内蔵部品の水濡れによる腐食劣化や電装系損傷などの被水損傷を可及的防止できる効果がある。
【0016】
また、ドアガラスや周辺部品の形状を変更することなく市場に流通する車両の既設ドアガラス下端縁の非被水部位にピンポイントで付設するだけの簡単な後付け作業でドア内蔵部品の被水損傷防止効果が発揮されるため、部材取付けの作業性を向上させてコストを大幅に削減できる効果がある。
【0017】
また、請求項2に係る発明によれば、前記水切体は、略方形状の弾性ブロック材からなり、方形一側面を前記水切面部としたため、支持体を介したガラス下端縁部への密着状態で弾性変形し、同下端縁部の両側面に隙間なく水密に圧着することができ、水切面部で流水を遮断して落水させる水切機能を確実に生起させることができる。
【0018】
また、水切体を種々のガラス下端縁の形状に合わせて都度、成形加工することなく同下端縁へ密着させることができ、部材取付けの作業性をさらに向上させることができ、部材コストを低減化できる効果がある。
【0019】
また、請求項3に係る発明によれば、前記支持体は、前記水切体を越流する水を落水するための水切孔を有することとしたため、流水経路の流水量が多かったり流勢が激しかったりして流水が水切体を越流した場合の越流水を水切孔で落水して水切りする、いわゆる水切面部と水切孔とによる2段階水切を実現することができる効果がある。
【0020】
また、請求項4に係る発明によれば、前記支持体は、前記流水経路の上流側で前記水切体を設置するための設置部と、前記流水経路の下流側で前記ガラス下端縁部に固定するための固定部と、を有することとしたため、固定部が設置部で設置された水切体よりもガラス下端縁部の流水経路の下流側に配置されるため、固定部を流水から遠ざけて固定部への被水を防止でき、水切部材のドアガラスへの固定状態を安定化させることができる効果がある。
【0021】
また、請求項5に係る発明によれば、前記支持体は、前記ガラス下端縁部の下面に対向する底側壁と、前記底側壁の一側端縁で立ち上がり、前記ガラス下端縁部の内外側面のうち少なくとも一側面に対向する一側壁と、を備え、前記底側壁は前記設置部と前記水切孔を有すると共に、前記一側壁は前記固定部を有することとしたため、支持体を底側壁と一側壁とからなる単純形状として部材コストを可及的低減化することができる。また、固定部がガラス下端縁部の内外側面のいずれか一側面に固定されることとなるため、固定部への被水可能性をさらに低減化できるだけでなく、取り付けの位置決めが容易となり取付け作業性をさらに向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る水切部材の構成を示す説明図である。
図2】本実施形態に係る水切部材のドアガラスへの取付状態を示す模式的説明図である。
図3】本実施形態に係る水切部材のドアガラスへの取付状態を示す模式的説明図である。
図4】本実施形態に係る水切部材の水切機能を示す模式的説明図である。
図5】本実施形態に係る水切部材の水切機能を示す模式的部分拡大図である。
図6】車両ドアの内部構造を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の要旨は、車両用のドアガラスのガラス下端縁の伸延方向に沿って形成される水が流れる流水経路の中途部に設置されて流水を車両ドア内部の所定位置に落水させる水切部材であって、前記流水経路に沿って伸延し、前記ガラス下端縁部に固定される支持体と、前記支持体に設けられ、前記ガラス下端縁部に下側から前記支持体を介して密着される水切体と、を備え、前記水切体は、所定厚みを有し、前記ガラス下端縁部への密着状態で前記ガラス下端縁の両側面に面当接すると共に同両側面から外方へ突出することにより前記流水経路の上流側に対向して流水を遮断して落水させる水切面部を有することを特徴とする水切部材を提供することにある。
【0024】
また、前記水切体は、略方形状の弾性ブロック材からなり、方形一側面を前記水切面部としたことに特徴を有する。
【0025】
また、前記支持体は、前記水切体を越流する水を落水するための水切孔を有することに特徴を有する。
【0026】
また、前記支持体は、前記流水経路の上流側で前記水切体を設置するための設置部と、前記流水経路の下流側で前記ガラス下端縁部に固定するための固定部と、を有することに特徴を有する。
【0027】
また、前記支持体は、前記ガラス下端縁部の下面に対向する底側壁と、前記底側壁の一側端縁で立ち上がり、前記ガラス下端縁部の内外側面のうち少なくとも一側面に対向する一側壁と、を備え、前記底側壁は前記設置部と前記水切孔を有すると共に、前記一側壁は前記固定部を有することに特徴を有する。
【0028】
以下、本発明に係る水切部材の実施形態について説明する。図1(a)及び図1(b)はそれぞれ水切部材の構成を示す後方斜視図及び平面図、図2(a)及び図2(b)はそれぞれ水切部材のドアガラスへの取付状態を示す模式的側面図及び水切部材の構成を示す側面図、図3(a)及び図3(b)はそれぞれ水切部材のドアガラスへの取付状態を示す模式的斜視図及び水切部材の構成を示す前方斜視図、図4はドアガラスの下端縁に取付けられた水切部材の水切機能を説明する模式的側面図、図5はドアガラスの下端縁に取付けられた水切部材の水切機能を説明する模式的部分拡大側面図である。
【0029】
また、以下では、特に方向視を定めない限り、上下側は車両上下側、前後側は車両前後側、内外側は車両内外側、とする。また、以下の本実施形態では、車両右側のフロントドアのドアガラスに取付けられる構成を一例として説明するが、車両左側のフロントドアのドアガラス、車両左右側のリアドアのドアガラスであっても対応できることは勿論である。
【0030】
一般的に広く普及している車両ドアDのドアガラスFGは、図6に示すように、車両ドア内部Sの上側で露出するガラス下端縁FG1について、前後側の角部を面取りした前後端部FG2、FG3と、前後端部FG2、FG3との間で略直線状に伸延する直線部FG4と、を有して側面視下方凸状に形成している。
【0031】
なお、本実施形態に係るドアガラスFGは、ガラス下端縁FG1の前後端部FG2、FG3をサジ面に面取りしたものを一例としている。
【0032】
また、車両ドア内部Sには、図6に示すように、ドアガラスFGのガラス下端縁FG1の直線部FG13で接続し、ドアガラスFGを昇降させるためのレギュレータP1と、レギュレータP1を上下駆動させるモータP2とからなるガラス昇降装置などのドア内蔵部品Pが配設されている。
【0033】
このドア内蔵部品Pは、ドアガラスFGのガラス下端縁FG1の前後方向の大部分に相対する下方位置で車両ドア内部Sの中央部分に配設されており、車両ドア内部Sで露出したガラス下端縁FG1を伝って落ちる侵入水Wに曝される可能性がある。
【0034】
換言すれば、落水がドア内蔵部品Pの配設位置から外れてドア内蔵部品Pが水被りしない車両ドア内部Sの非被水領域部S1は、車両ドア内部Sにおいてドア内蔵部品Pが配設されていない空間部となる。
【0035】
このような車両ドア内部Sの構造において、本実施形態に係る水切部材Aは、図4に示すように、車両ドアDのドアガラスFGのガラス下端縁FG1の伸延方向に沿って形成される水が流れる流水経路Rの中途部に設置されて、流水を車両ドア内部Sの所定位置、すなわち非被水領域部S1へ落水させるように構成している。
【0036】
侵入水Wの流水経路Rは、ガラス下端縁FG1において、面取りされ傾斜した前後端部FG2、FG3に沿って形成される傾向にある。すなわち、水切部材Aの配設部位となる流水経路Rの中途部とは、ガラス下端縁FG1において非被水領域部S1に相対する非被水部位として機能するガラス下端縁部FG10であり、ガラス下端縁FG1の前端部FG2又は後端部FG3の少なくともいずれかの一端部を含んだ部分である。
【0037】
本実施形態の非被水部位として機能するガラス下端縁部FG10は、面取りされて直線部FG4に向かって下方傾斜する前端部FG2と、直線部FG4の前端と、によりなす前側の屈曲角部分、又は、面取りされて直線部FG4に向かって下方傾斜する後端部FG3と直線部FG4の後端によりなす後側の屈曲角部分である。
【0038】
すなわち、本発明に係る水切部材Aは、ドアガラスや周辺部品の形状を変更することなく、ガラス下端縁FG1の非被水部位、すなわちガラス下端縁部FG10にピンポイントで付設するだけの簡単な後付け作業でドア内蔵部品の被水損傷を未然に防止せんとするものである。
【0039】
水切部材Aは、図1(a)~図2(b)に示すように、流水経路Rに沿って伸延し、ガラス下端縁部FG10に固定される支持体10と、支持体10に設けられ、ガラス下端縁部FG10に下側から支持体10を介して密着される水切体20と、を備えて構成している。かかる水切部材Aは、図1(b)に示すように、平面視において、ガラス下端縁部FG10を支持体10と水切体20との幅方向中央に配置するように構成している。
【0040】
水切体20は、図3(a)及び図3(b)に示すように、所定厚みを有し、ガラス下端縁部FG10(前端部FG2)への密着状態でガラス下端縁部FG10の内外側面FG10a、FG10bに面当接すると共に同内外側面FG10a、FG10bから外方へ突出することにより、流水経路Rの上流側に対向して流水を遮断して落水させる水切面部21を有する。
【0041】
すなわち、水切体20は、略方形状のブロック材からなり、幅方向中央でガラス下端縁部FG10に密着して横断面視凹状をなし、凹状の端面部をドアフレームDF側(流水経路Rの上流側)へ対向させる水切面部21に構成している。このような水切体20としては、例えば、幅方向中央の前後方向に沿ってガラス下端縁部FG10を挿嵌する嵌合凹部を形成したものであってもよい。
【0042】
本実施形態の水切面部21は、略方形状の弾性ブロック材からなり、ガラス下端縁部FG10への圧着状態で弾性変形して凹状となり、凹状の前端面部に相当する方形一側面部を水切面部21に構成している。
【0043】
弾性ブロック材としては、可撓性、柔軟性及び多孔質性を有した樹脂部材、例えばエプトを採用することができ、一定量の水を含浸して保水すると共に保水許容量を超えた場合に流水経路Rの上流側に配向する一側端面部を水切面部21として機能させるものであってもよい。
【0044】
これにより、水切体20がガラス下端縁部FG10の内外側面FG10a、FG10bに隙間なく水密に圧着して強力なラップ力を生起し、同圧着状態で水切面部21により流水を遮断して落水させる水切機能を確実に生起させることができる。また、水切部材Aの設置後には、柔軟性があるため車両の振動を吸収して位置ズレを回避することができる。また、水切体20を種々のガラス下端縁FG1に合わせて都度成形加工することなく適応させて部材取付けの作業性をさらに向上させることができ、部材コストを低減化できる。
【0045】
支持体10は、ドアガラスFGと水切体20との間に介在してガラス下端縁部FG10への水切体20の圧着状態を支持するものであり、基本的には、水切部材Aが取付けられるガラス下端縁部FG10の前後形状、すなわち流水経路Rに沿って形成される。
【0046】
この支持体10は、所定位置で、図1(a)~図3(b)に示すように、水切体20を越流する水を落水するための水切孔30を有している。
【0047】
詳細については後述するが、水切孔30は、支持体10の伸延方向において、水切体20に隣接しており、流水経路Rの上流側に相対する水切体20が設けられる部分よりも流水経路Rの下流側に相対する部分に形成している。
【0048】
これにより、図4及び図5に示すように、流水経路Rの流水量が多かったり流勢が激しかったりして侵入水Wが水切体20を越流した場合の越流水を水切孔30で落水して水切りする、いわゆる水切面部21と水切孔30とによる2段階水切を実現する。
【0049】
また、支持体10は、流水経路Rの上流側で水切体20を設置するための設置部11と、流水経路Rの下流側でガラス下端縁部FG10に固定するための固定部12と、を有して構成している。
【0050】
設置部11は、図3(b)に示すように、水切体20の底面20aに面対向する上面を有し、同上面で固定手段40を介して水切体20を固定する切片部11aとして支持体10に形成している。
【0051】
切片部11aは、水切体20の底面と略同じ表面積の板状部であって、図3(b)に示すように後述する支持片部11bの下端から一側方へ水平状にせり出して形成され、その上面に水切体20を設置した状態で、図1(b)~図2(b)に示すように前後端面をそれぞれ水切体20の前後端面に面一とするように形成している。
【0052】
換言すれば、水切体20は、流水経路Rの上流側へ向けて固定部12から突出した設置部11としての切片部11aに載置固定された状態で、一側の前端面を切片部11aの前端面に面一とし、切片部11aの前端面と共に流水経路Rの上流側に配向した水切面部21を形成する。
【0053】
すなわち、支持体10は、水切孔30を境に、先端部をガラス下端縁部FG10における流水経路Rの上流側に対応する部分を肉薄幅広とした水切体20を設置するための設置部11に構成すると共に、基端部をガラス下端縁部FG10における流水経路Rの上流側に対応する部分を肉厚幅狭としたガラス下端縁部FG10に固定するための固定部12に構成している。
【0054】
具体的には、支持体10は、図1(b)に示すように、平面視で水切孔30を境に、流水経路Rの上流側に相対して、底側壁13について幅広部としての切片部11aと、一側壁14について肉薄部としての支持片部11bと、により設置部11を配置するように構成している。
【0055】
また、支持体10は、平面視で水切孔30を境に、流水経路Rの下流側に相対して、底側壁13について切片部11aよりも幅狭とした幅狭部と、一側壁14について支持片部11bよりも肉厚とした肉厚部としてガラス対向面部を有する固定部12を配置するように構成している。
【0056】
なお、ガラス下端縁FG1の直線部FG4にモールが装着されている場合には、支持体10の一側壁14は、モール端部に対応するべくモールの厚み分だけ切り欠きモール嵌着溝を形成し、同モール嵌着溝の一側をガラス対向面部、すなわち固定部12とし、同固定部12でモールに接着されることによりモールを介してガラス下端縁FG1に固定される。
【0057】
これにより、ガラス下端縁部FG10に水切部材Aを設置した場合には、支持体10の幅方向の中央部分に沿ってガラス下端縁部FG10が配置することとなり、水切体20のガラス下端縁部FG10への圧接による水切面部21の形成を安定させると共にガラス下端縁部FG10への固定状態を安定化させることができる。
【0058】
また、固定部12は、ガラス下端縁部FG10の一側面に面対向する一側面部を有し、同一側面部で固定手段40を介してガラス下端縁部FG10に固定するガラス対向面として支持体10に形成している。
【0059】
なお、固定手段40は、水切体20や支持体10がそれぞれ設置部11やガラス下端縁部FG10に固定できれば特に限定されず、例えば、耐水性の接着剤や連結ボルトであってもよい。本実施形態の固定手段40は、面貼着可能な接着部材としての両面テープ41を採用している。
【0060】
支持体10は、図2(a)に示すように、面取りされた前端部FG2と直線部FG4によりなすガラス下端縁部FG10の角形状に沿うように、長手方向へ正面視略逆へ字状にすると共に断面視略L字状とし、ガラス下端縁部FG10に外装可能に構成している。
【0061】
これにより、水切部材Aの部材取付作業の際に、ガラス下端縁部FG10の角部に支持体10のへ字形状の内側隅部を位置付けることにより、ガラス下端縁部FG10への水切部材Aの取り付けの位置決めが容易となる。
【0062】
また、支持体10は、図1(a)~図4に示すように、ガラス下端縁部FG10の下面に対向する底側壁13と、底側壁13の一側端縁で立ち上がり、ガラス下端縁部FG10の内外側面FG10a、FG10bのうち少なくとも一側面(本実施形態では外側面FG10b)に対向する一側壁14と、を備え、底側壁13は設置部11と水切孔30を有すると共に、一側壁14は固定部12を有して構成している。
【0063】
底側壁13は、図2(b)に示すように、側面視略逆へ字状に屈曲した肉薄の帯板であって、板面を上下側へ向けている。底側壁13は、流水経路Rの上流側に対応する前端を設置部11をなす切片部11aとし、同切片部11aに隣接する板面部を板幅方向へ方形窓状に切り欠いて水切孔30を形成している。なお、底側壁13の幅員は、少なくともドアガラスFGの厚み以上の長さである。
【0064】
一側壁14は、側面視略逆へ字状に屈曲した肉厚の帯板であって、底側壁13の幅方向一端部で直角に立設して板面を内外側へ向けている。一側壁14は、水切孔30よりも後方側で、ガラス下端縁部FG10に対向する対向面部を固定部12に形成している。なお、なお、一側壁14の幅員は、少なくとも水切体20の厚み以上の長さである。
【0065】
また、一側壁14は、図1(a)~図5に示すように、前端部について、後述する水切面部21としての鉛直基端面から前端側へ突出すると共に底側壁13の切片部11aに連結して、切片部11aを片持ち支持する支持片部11bに形成している。換言すれば、支持体10は、底側壁13の切片部11aと、一側壁14の支持片部11bと、より設置部11を前端部に形成している。
【0066】
また、支持体10は、図1(a)~図3(b)に示すように、水切孔30の後方位置で流水経路Rの上流側に対向する第2水切面部31を有している。
【0067】
具体的には、支持体10は、一側壁14において支持片部11bが前方突出する基端面を水切孔30の孔壁一側面と面一とする第2水切面部31に形成して端面視L字状をなし、同第2水切面部31により水切孔30を越えて流れてきた越流水の流勢を減衰遮断して手前側の水切孔30へ落水させることを可能としている。
【0068】
固定部12は、図2(a)~図3(b)に示すように、支持体10の一側壁14において、ガラス下端縁FG1の前端部FG2の略中央一側面部に面対向する中央固定部12aと、ガラス下端縁FG1の直線部FG4の前端一側面部に面対応する後端固定部12bと、の2つで構成している。
【0069】
また、支持体10は、ガラス下端縁部FG10の下面に点接触するための当接リブ15を、水切孔30よりも後方側の上面で、長手方向に所定間隔を隔てて上方突出して複数形成している。
【0070】
当接リブ15は、図2(a)~図2(b)に示すように、底側壁13の上面の所定位置で幅方向に伸延すると共に上方突出させた半円柱状であって、円柱の頂点部分でガラス下端縁部FG10の下面に点接触するように形成している。
【0071】
当接リブ15は、ガラス下端縁部FG10において、前端部FG2の下面に当接対応する前端側の前側リブ15aと、直線部FG4の下面に当接対応する屈曲部近傍の中側リブ15bと後端側の後側リブ15cと、の3つで構成している。
【0072】
これにより、ドアガラスFGの下端縁形状にバラつきがあっても、各当接リブ15でその前端部FG2や直線部FG4に点で接触対応してガラス下端縁部FG10への水切部材Aの取付装着位置の位置決めを容易としている。
【0073】
このように支持体10は、へ字状長辺の先端部を水切体20と水切孔30とを流水経路Rの上流側から下流側にかけて順次隣接配置させる水切機能部とし、それ以外の部分を固定部12や当接リブ15を形成した装着固定機能部として形成している。
【0074】
以上のようにして構成した水切部材Aは、ガラス下端縁FG1において、非被水領域部S1に相対する非被水部位としてのガラス下端縁部FG10に以下の手順で装着される。
【0075】
すなわち、ガラス下端縁部FG10において、侵入水Wの流水経路Rとなる前端部FG2や後端部FG3に対し、水切体20の水切面部21の位置がその下方の非被水領域部S1に相対する非被水位置に位置するように、支持体10を介して位置合わせする。
【0076】
次いで、図2(a)に示すように、支持体10の底側壁13の複数の当接リブ15a、15b、15cをガラス下端縁部FG10の下面に当接させつつ、支持体10の前端側の設置部11に設けた水切体20をガラス下端縁部FG10の下面に圧接させて流水経路Rの上流側に水切面部21を配向させる。
【0077】
次いで、図3(a)に示すように、固定部12に予め貼着状態で設けた固定手段40としての両面テープ41をドアガラスFGの外側面FG10bに面貼着して水切部材Aの部材取付作業を完了する。
【0078】
すなわち、複雑な取付作業工程を要することなく、だれでも簡単にワンタッチで水切部材Aを非被水領域部S1の上方位置に相当するガラス下端縁部FG10にピンポイントで装着できる。
【0079】
このようにしてガラス下端縁部FG10に装着固定された水切部材Aは、図4及び図5に示すように、流水経路Rを伝って流れる侵入水Wを水切体20の水切面部21により遮断して非被水領域部S1へ向けて落水させる。
【0080】
流水経路Rでの侵入水Wの流量が多い場合であっても、図5に示すように、水切体20を乗り越えて越流した越流水を水切孔30により非被水領域部S1に向けて落水させる。なお、ほとんどの侵入水Wが水切体20で水切りされることとなるため越流水は少量となる傾向にあり、水切孔30での落水で十分対応できる。
【0081】
さらに流水経路Rでの侵入水Wの流量が多く流勢が激しい場合であっても、越流水は第2水切面部に突き当たり遮断されて水切孔30に落下誘導されることとなるため、侵入水Wを非被水領域部S1へ効果的に落水する。
【0082】
このようにして、水切部材Aは、車両ドア内部Sの限られたスペースにおいて、流水経路Rを変更して非被水領域部S1へ侵入水Wを強制的に誘導するようにして落水させ、内底面に設けた水切り孔Hから排水し、非被水領域部S1以外に配設されたドア内蔵部品Pを被水損傷から未然に防止する。
【0083】
以上のように、本発明の水切部材は、落水がドア内蔵部品に水被り干渉しない車両ドア内の領域部に相対するガラス下端縁部に水切体を配置することにより、流水経路上流側に水切面部を配向させて、流水経路からの侵入水を、同面部で受けて堰き止め遮断し、流勢を減衰させてドア内部への落水位置を変更してその下方の非被水領域部へピンポイントに落水させ、ドア内蔵部品の水濡れによる腐食劣化や電装系損傷などの被水損傷を可及的防止できる効果がある。
【0084】
また、ドアガラスや周辺部品の形状を変更することなく市場に流通する車両の既設ドアガラス下端縁の非被水部位にピンポイントで付設するだけの簡単な後付け作業でドア内蔵部品の被水損傷防止効果が発揮されるため、部材取付けの作業性を向上させてコストを大幅に削減できる効果がある。
【0085】
また、水切体は、略方形状の弾性ブロック材からなり、方形一側面を水切面部としたため、支持体を介したガラス下端縁部への密着状態で弾性変形し、同下端縁部の両側面に隙間なく水密に圧着することができ、水切面部で流水を遮断して落水させる水切機能を確実に生起させることができる効果がある。
【0086】
また、水切体を種々のガラス下端縁の形状に合わせて都度、成形加工することなく同下端縁へ密着させることができ、部材取付けの作業性をさらに向上させることができ、部材コストを低減化できる効果がある。
【0087】
また、支持体は、水切体を越流する水を落水するための水切孔を有することとしたため、流水経路の流水量が多かったり流勢が激しかったりして流水が水切体を越流した場合の越流水を水切孔で落水して水切りする、いわゆる水切面部と水切孔とによる2段階水切を実現することができる効果がある。
【0088】
また、支持体は、流水経路の上流側で水切体を設置するための設置部と、流水経路の下流側で前記ガラス下端縁部に固定するための固定部と、を有することとしたため、固定部が設置部で設置された水切体よりもガラス下端縁部の流水経路の下流側に配置されるため、固定部を流水から遠ざけて固定部への被水を防止でき、水切部材のドアガラスへの固定状態を安定化させることができる効果がある。
【0089】
また、支持体は、ガラス下端縁部の下面に対向する底側壁と、底側壁の一側端縁で立ち上がり、ガラス下端縁部の内外側面のうち少なくとも一側面に対向する一側壁と、を備え、底側壁は設置部と水切孔を有すると共に、一側壁は固定部を有することとしたため、支持体を底側壁と一側壁とからなる単純形状として部材コストを可及的低減化することができる。また、固定部がガラス下端縁部の内外側面のいずれか一側面に固定されることとなるため、固定部への被水可能性をさらに低減化できるだけでなく、取り付けの位置決めが容易となり取付け作業性をさらに向上させることができる効果がある。
【0090】
すなわち、本発明によれば、既存のドアガラスに簡単に後付け対応して部材取付けに要する手間を可及的削減でき、コストを低減化することができ、ドアガラス下端縁に沿って流れる侵入水をドア内蔵部品に水濡れ干渉しない位置で水切りして落水させ、ドア内蔵部品の被水損傷を未然に防止できる効果がある。
【符号の説明】
【0091】
A 水切部材
R 流水経路
W 侵入水
FG ドアガラス
FG1 ガラス下端縁
FG2 前端部
FG4 直線部
FG10 ガラス下端縁部
10 支持体
11 設置部
12 固定部
13 底側壁
14 一側壁
15 当接リブ
20 水切体
21 水切面部
30 水切孔
31 第2水切面部
40 固定手段
41 両面テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6