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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004646
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ケーブルコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20230110BHJP
   H01R 24/40 20110101ALI20230110BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R24/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106477
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】390033318
【氏名又は名称】日本圧着端子製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120628
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100088834
【氏名又は名称】早川 明
(72)【発明者】
【氏名】西本 憲一
【テーマコード(参考)】
5E087
5E223
【Fターム(参考)】
5E087EE08
5E087FF07
5E087FF13
5E087GG15
5E087GG26
5E087MM05
5E087RR02
5E223AB28
5E223AB60
5E223AC12
5E223AC21
5E223BA12
5E223BA15
5E223CA13
5E223CC09
5E223EA17
5E223EC07
5E223EC32
5E223EC53
5E223GA08
5E223GA22
5E223GA52
(57)【要約】
【課題】高周波性能を低下させることなく、コンタクトをハウジングに固定する構造を有するケーブルコネクタを提供すること。
【解決手段】ケーブルコネクタ10は、相手側コネクタのコンタクトと接触して電気的導通を確立する接触部420を有する筒状のコンタクト410と、当該コンタクト410の延在方向に沿って、前記コンタクト410の周囲を包囲する筒状のコアハウジング210と、前記コンタクト410が前記コアハウジング210内に挿入された場合に、前記コンタクト410が前記コアハウジング210から脱落することを防止する抜け止め構造と、を含み、前記抜け止め構造は、前記コンタクト410の前記接触部420よりも前記相手側コネクタのコンタクトとの嵌合側に位置するように設けられている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタのコンタクトと接触して電気的導通を確立する接触部を有する筒状のコンタクトと、
当該コンタクトの延在方向に沿って、前記コンタクトの周囲を包囲する筒状のコアハウジングと、
前記コンタクトが前記コアハウジング内に挿入された場合に、前記コンタクトが前記コアハウジングから脱落することを防止する抜け止め構造と、を含み、
前記抜け止め構造が、前記コンタクトの前記接触部よりも前記相手側コネクタのコンタクトとの嵌合側に位置するように設けられている、ケーブルコネクタ。
【請求項2】
前記抜け止め構造は、前記コアハウジングに形成されたランス、およびその先端に形成された係止爪と、前記ランスおよび前記係止爪に対応して前記コンタクトに形成された被係止部材と、を含む、請求項1記載のケーブルコネクタ。
【請求項3】
前記被係止部材が、前記コンタクトの前記嵌合側の端部に形成された環状部材である、請求項2記載のケーブルコネクタ。
【請求項4】
前記環状部材が円形である、請求項3記載のケーブルコネクタ。
【請求項5】
前記コンタクトの前記接触部が、前記被係止部材の、前記嵌合側とは反対の位置に形成されており、前記嵌合側とは反対側から前記嵌合側に向けてカンチレバー状に延出している、請求項2から4いずれか一項記載のケーブルコネクタ。
【請求項6】
外部ハウジングをさらに有し、当該外部ハウジングは内部に収容室を備え、当該収容室には前記コアハウジングが収容される、請求項1から5いずれか一項記載のケーブルコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルコネクタに関し、特に、高周波に適合するケーブルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、同軸ケーブルコネクタの一例が開示されている。この同軸ケーブルコネクタは、同軸ケーブルの外部導体に円筒状の外部コンタクトを接続し、この外部コンタクトを外部ハウジングの端子収容室に挿入し、外部コンタクトの径方向外側に張り出すように形成されたフランジを、外部ハウジングに形成されたハウジングランスの係止爪に係止するとともに、外部ハウジングに装着されるリテーナによってロックすることにより、外部コンタクトが外部ハウジングから脱落しないようにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-153464公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された従来の同軸ケーブルコネクタにおいては、外部コンタクトを外部ハウジングに固定するために、外部コンタクトにフランジを形成していた。また、他の従来の同軸ケーブルコネクタにおいては、外部コンタクトにランスを形成していた。そして、これらのフランジやランスを外部ハウジングの端子収容室内に対応して形成した段差に係止していた。しかしながら、フランジやランスを形成した場合、外部コンタクトの径方向の形状が複雑となり、また、外部ハウジングとの間にも空間や段差が生じ、結果として高周波性能が低下する恐れがあった。
【0005】
本発明の目的は、高周波性能を低下させることなく、コンタクトをハウジングに固定する構造を有するケーブルコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のケーブルコネクタは、
相手側コネクタのコンタクトと接触して電気的導通を確立する接触部を有する筒状のコンタクトと、
当該コンタクトの延在方向に沿って、前記コンタクトの周囲を包囲する筒状のコアハウジングと、
前記コンタクトが前記コアハウジング内に挿入された場合に、前記コンタクトが前記コアハウジングから脱落することを防止する抜け止め構造と、を含み、
前記抜け止め構造が、前記コンタクトの前記接触部よりも前記相手側コネクタのコンタクトとの嵌合側に位置するように設けられている、ケーブルコネクタである。
【0007】
また、本発明の一態様において、前記抜け止め構造は、前記コアハウジングに形成されたランス、およびその先端に形成された係止爪と、前記ランスおよび前記係止爪に対応して前記コンタクトに形成された被係止部材と、を含む。
【0008】
また、本発明の一態様において、前記被係止部材は、前記コンタクトの前記嵌合側の端部に形成された環状部材である。
【0009】
また、本発明の一態様において、前記環状部材は円形である。
【0010】
また、本発明の一態様において、前記コンタクトの前記接触部は、前記被係止部材の、前記嵌合側とは反対の位置に形成されており、前記嵌合側とは反対側から前記嵌合側に向けてカンチレバー状に延出している。
【0011】
また、本発明の一態様は、外部ハウジングをさらに有し、当該外部ハウジングは内部に前記コアハウジングが収容される収容室を有する。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明によれば、高周波性能を低下させることなく、コンタクトをハウジングに固定する構造を有するケーブルコネクタを提供することができる。
【0013】
上記本発明の一態様によれば、コンタクトがコアハウジングから嵌合方向側に脱落することを防止できる。
【0014】
上記本発明の一態様によれば、被係止部材の強度を向上させることが可能となる。
【0015】
上記本発明の一態様によれば、コンタクトを、コアハウジングに対して、嵌合方向の中心軸を中心としてどの向きに回転させた場合でも装着することが可能となる。
【0016】
上記本発明の一態様によれば、コンタクトをコアハウジングに係止させるための被係止部材を、コンタクトの接触部よりも嵌合側に形成することが可能となり、被係止部材が高周波性能に及ぼす影響を低減できる。
【0017】
上記本発明の一態様によれば、コンタクトとコアハウジングの組立体を外部ハウジングに取付ける構成とすることで、ケーブルコネクタを容易に組み立てることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(A)は、本実施形態における雌型同軸ケーブルコネクタの外観斜視図であり、図1(B)は、本実施形態における雌型同軸ケーブルコネクタを主要構成部分に分解した分解斜視図である。
図2図2(A)は、本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタの雌ハウジング組立体の分解斜視図であり、図2(B)は、図2(A)の雌ハウジング組立体を嵌合方向前後及び上下方向に広がる平面で切断して側方から見た場合の断面図である。
図3図3(A)は、本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタの雌コアハウジング組立体の分解斜視図であり、図3(B)は、図3(A)の雌コアハウジング組立体を分解して嵌合方向前後及び上下に広がる平面で切断して側方から見た場合の断面図である。
図4】本実施形態のコアハウジングを示す図であり、図4(A)は上面図、図4(B)は側面図、図4(C)は底面図、図4(D)は図4(A)のIVD-IVD線で切断して側方から見た場合の断面図、図4(E)はコアハウジングを嵌合方向前方から後方を見た場合の正面図である。
図5】本実施形態の中心コンタクトの外観斜視図である。
図6】本実施形態の雌外側コンタクト組立体の分解斜視図である。
図7】本実施形態の外側コンタクトを示す図であり、図7(A)は製造中の外側コンタクトがストリップキャリアに接続された状態を示す斜視図、図7(B)は図7(A)の上面図、図7(C)は側面図、図7(D)は底面図、図7(E)は図7(B)のVIIE-VIIE線で切断して側方から見た場合の断面図である。
図8】本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタを構成するフェルールの外観斜視図である。
図9】本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタの組立工程を示す図であり、図9(A)は同軸ケーブルを雌コアハウジング組立体に挿入し、ケーブル外皮を除去して編組導体を露出させた状態を示す外観斜視図、図9(B)は編組導体周囲にフェルールを装着した状態を示す外観斜視図、図9(C)は編組導体をフェルール周囲に折り返した状態を示す外観斜視図、図9(D)は芯線に中心コンタクトを圧着した状態を示す外観斜視図、図9(E)は雌外側コンタクト組立体を同軸ケーブルに接続した状態を示す外観斜視図である。
図10】本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタの組立工程を示す図であり、図10(A)はコアハウジングを雌外側コンタクト組立体に装着する前の状態を示す外観斜視図、図10(B)は図10(A)の嵌合方向前方から後方を見た場合の正面図、図10(C)は図10(B)のXC-XC線で切断して側方から見た場合の断面図、図10(D)はコアハウジングを雌外側コンタクト組立体に装着する途中の状態を示す外観斜視図、図10(E)は図10(D)の嵌合方向前方から後方を見た場合の正面図、図10(F)は図10(E)のXF-XF線で切断して側方から見た場合の断面図、図10(G)はコアハウジングを雌外側コンタクト組立体に装着完了した状態を示す外観斜視図、図10(H)は図10(G)の嵌合方向前方から後方を見た場合の正面図、図10(I)は図10(H)のXI-XI線で切断して側方から見た場合の断面図、図10(J)は図10(I)のXJ部分の拡大図である。
図11】本実施形態の雌同軸ケーブルコネクタの組立工程を示す図であり、図11(A)は外部ハウジングに図10(G)の組立体を挿入する前の状態を示す側面図、図11(B)は図11(A)の状態を嵌合方向前後方向及び上下方向に広がる平面で切断して側方から見た場合の断面図、図11(C)は外部ハウジングに図10(G)の組立体を挿入完了した状態を示す側面図、図11(D)は図11(C)の状態を嵌合方向前後方向及び上下方向に広がる平面で切断して側方から見た場合の断面図、図11(E)は外部ハウジングにリテーナを完全に装着した状態を示す側面図、図11(F)は図11(E)の状態を嵌合方向前後方向及び上下方向に広がる平面で切断して側方から見た場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタ10を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明のケーブルコネクタとして雌型同軸ケーブルコネクタ10を例示して説明するものであって、本発明をこの雌型同軸ケーブルコネクタ10に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された他の形態のケーブルコネクタにも等しく適用されるべきものである。
【0020】
図1を参照し、雌型同軸ケーブルコネクタ10の全体構成について説明する。本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタ10は、雌ハウジング組立体100、雌コアハウジング組立体200、雌中心コンタクト300、雌外側コンタクト組立体400、フェルール500、を含み、これらは後述する工程にしたがって組み立てられ、同軸ケーブルRに接続される。
【0021】
なお、以下の説明においては、同軸ケーブルRが延在する方向を「嵌合方向」あるいは「前後方向」と呼び、これに対して直交する方向、つまり図1(A)、図1(B)における紙面上下方向を、「上下方向」と呼び、嵌合方向と上下方向の両方に直交する方向を「幅方向」と呼ぶこととする。また、特に、嵌合方向のうち、相手側コネクタに向かう方向、つまり図1(A)、図1(B)における紙面左下に向かう方向を「嵌合方向前方」、相手側コネクタから離れる方向、つまり図1(A)、図1(B)における紙面右上に向かう方向を「嵌合方向後方」と呼ぶこととする。
【0022】
なお、本実施形態では、ケーブルコネクタを雌型同軸ケーブルコネクタ10に適用した場合を説明しているが、本発明は雌型のコネクタに限定されず、下記に説明する雌型同軸ケーブルコネクタ10の要部の構成に対応する雄型のコネクタに適用したものであってもよい。
【0023】
図2(A)、図2(B)を参照して、雌ハウジング組立体100について説明する。雌ハウジング組立体100は、外部ハウジング110と、リテーナ130とを含む。
【0024】
外部ハウジング110は、内部に収容室を有し、この収容室には、後述するコアハウジング210が収容される。外部ハウジング110は、内部が中空となった筒状の直方体形状であり、上板111、底板112、側板113、114を有する。上板111、底板112、側板113、114に四方を囲まれた内部は略円筒形状の収容室であるコアハウジング収容空間115が形成されており、このコアハウジング収容空間115は外部ハウジング110を前後方向に貫通している。コアハウジング収容空間115には後述する雌コアハウジング組立体200が収容される。コアハウジング収容空間115の嵌合方向前方側は嵌合端116、嵌合方向後方側はワイヤ挿入端117となっている。
【0025】
上板111にはロックアーム118が連結部119を介して接続されており、ロックアーム118は連結部119を支点として上下方向に回動可能となっている。このロックアーム118は、雌型同軸ケーブルコネクタ10が図示しない相手方コネクタに接続された際に、対応して形成された係止突起に係合され、これによって相手方コネクタとの係合状態が維持される。
【0026】
底板112には、幅方向2箇所にリテーナ挿入口(図示せず)が形成され、コアハウジング収容空間115と連通している。また、底板112には、2つのリテーナ挿入口に挟まれた中間部分にハウジングランス120が設けられる。ハウジングランス120は、ワイヤ挿入端117側で底板112と一体に接続され、嵌合端116方向に向かって底板112からカンチレバー型に延び、2つのリテーナ挿入口の間の部分を先端部分とし、この先端部分に上方に向けて突起した係止爪121が形成されている。
【0027】
リテーナ130は、基部131と、この基部131の幅方向外端部分から上方に向かって延びる一対の係止脚部132、133を有している。係止脚部132、133は、外部ハウジング110のリテーナ挿口に挿入でき、後述する雌コアハウジング組立体200をコアハウジング収容空間115の内部に係止する。係止脚部132、133は、リテーナ130が、リテーナ挿入口に、後述する完全ロック状態まで挿入されると、雌コアハウジング組立体200の環状溝部に挿入され、雌コアハウジング組立体200の、コアハウジング収容空間115内における前後方向の移動を阻止する。
【0028】
次に、図3(A)、図3(B)、図4(A)~図4(E)を参照して、雌コアハウジング組立体200について説明する。図3(A)に示すように、雌コアハウジング組立体200は、コアハウジング210、ワイヤシールキャップ230、ワイヤシール240、嵌合側シール250を含む。
【0029】
図4(A)~図4(E)に示すように、コアハウジング210は、後述の外側コンタクト410の延在方向に沿って、外側コンタクト410の径方向周囲を開口なく包囲する筒状の部材である。コアハウジング210は、嵌合端212、ワイヤ挿入端213を有する樹脂製で筒状に形成されたコアハウジング本体211を有する。つまり、コアハウジング本体211は、嵌合端212からワイヤ挿入端213までの間に孔や開口がない構造である。コアハウジング本体211の内部には、後述する雌外側コンタクト組立体400を収容するコンタクト収容空間214が嵌合端212からワイヤ挿入端213までを貫通するように形成される。コンタクト収容空間214の形状、つまりコアハウジング本体211の内形状は、好ましくは円筒形状である。
【0030】
コアハウジング本体211の外表面には、嵌合方向中央部分に、環状溝部215が外周面に沿って径方向内側に窪むように形成されている。この環状溝部215には、外部ハウジング110のハウジングランス120の係止爪121が係止されるとともに、リテーナ130の係止脚部132、133が挿入され、コアハウジング210が外部ハウジング110内部で前後方向に移動することを阻止する。
【0031】
コアハウジング本体211の、環状溝部215よりも嵌合端212側には、径方向内側に向かって窪んだ嵌合側溝部216が形成されている。また、コアハウジング本体211の、環状溝部215よりもワイヤ挿入端213側には、径方向内側に向かって窪んだ挿入端側溝部217が形成されている。嵌合側溝部216には、後述する嵌合側シール250が嵌め合わされ、挿入端側溝部217には後述するワイヤシールキャップ230の係止爪が係止される。したがって、雌コアハウジング組立体200が外部ハウジング110に対して組み込まれた際に、コアハウジング210のコアハウジング本体211は、コアハウジング収容空間115の内部において、嵌合側シール250を超えて相手方コネクタとの嵌合方向へさらに延びていることになる。
【0032】
コアハウジング210の嵌合端212側には、ランス218、及びこのランス218の嵌合側の先端部に、コアハウジング210の径中心方向に向けて突出した係止爪219、およびコアハウジング210の嵌合端212に形成された環状部220が設けられる。ランス218は、嵌合側溝部216付近においてコアハウジング本体211と一体に形成され、そこからカンチレバー型に嵌合方向前方に向かって延び、嵌合端212に達しない位置において、環状部220から離開した先端部を有し、この先端部に係止爪219が形成された構成となっている。
【0033】
さらに、コアハウジング210のコンタクト収容空間214には、挿入端側溝部217の内面側に内側に径が縮小した張り出し部221が形成されており、コンタクト収容空間214をワイヤ挿入端213と隔てている。張り出し部221よりもワイヤ挿入端213側の空間はワイヤ収容部222となっている。
【0034】
ワイヤシールキャップ230は、図3(A)、図3(B)に示すように、コアハウジング210のワイヤ挿入端213側の外周部分に嵌め込まれるものである。ワイヤシールキャップ230は、円筒形状で、コアハウジング210のワイヤ挿入端213と挿入端側溝部217との間の周囲を覆うことが可能な長さの胴部231、コアハウジング210のワイヤ挿入端213の、同軸ケーブル挿通部分を除く端面部分を覆う端面232、嵌合側端部で径方向内側に向かって環状に突起した係止爪233を有する。
【0035】
ワイヤシール240は、図3(A)に示すように、コアハウジング210のワイヤ収容部222に配置され、コアハウジング本体211とここに挿入される同軸ケーブルRの外面との間に配置され、コアハウジング本体211の内面と同軸ケーブルRとの間をシールする。ワイヤシール240は樹脂製で前後方向に所定幅を有し、また径方向に所定厚みを有する円筒状の部材であり、内面外面にそれぞれ凹凸が形成されている。この凹凸は、雌型同軸ケーブルコネクタ10が組み立てられた際に、同軸ケーブルRの外面、およびコアハウジング210の内面の両方に密接する。
【0036】
嵌合側シール250は、コアハウジング210の嵌合側溝部216の周囲に嵌め込まれる樹脂製の環状部材である。嵌合側シール250は、コアハウジング210の嵌合端212側において、コアハウジング本体211と外部ハウジング110との間に配置され、コアハウジング本体211と、外部ハウジング110のコアハウジング収容空間115の内面、及びコアハウジング210周囲に嵌合される相手側コネクタの部材との間をシールする。
【0037】
次に、図5を参照して、雌中心コンタクト300について説明する。雌中心コンタクト300は、金属製で、同軸ケーブルRの中心導体に圧着接続される把持部301を有する基端部302と、この基端部302から嵌合方向前方に延びる筒状のコンタクト部303とを有する。筒状のコンタクト部303の嵌合方向前方部分は、嵌合側の端部から後方に向かって複数のスリット304が形成されることによりある程度の弾性を有する複数のコンタクト片305に分割されている。コンタクト片305の中心部分に、相手側コネクタのピン状の中心コンタクトが挿入されると電気的導通が成立する。
【0038】
次に、図6図7(A)~図7(E)を参照して、雌外側コンタクト組立体400について説明する。雌外側コンタクト組立体400は、筒状のコンタクトである外側コンタクト410と、その内部に収容される絶縁体430を含む。
【0039】
図7(A)~図7(E)に示すように、外側コンタクト410は、金属板をプレス加工することによって筒形状となるように形成された部材で、本体胴部411、ケーブル挿入端側に形成された外皮圧着部412、外側導体接続部413、嵌合側端部に形成されたコンタクト片414、及び嵌合側端部に形成された環状部材415を含む。外側コンタクト410の外形状は、コアハウジング本体211のコンタクト収容空間214の内形状に対応した筒状であり、好ましくは円筒形状である。
【0040】
本体胴部411は、金属平板を、前後方向に延在する円筒形となるようにプレス加工することによって形成されるが、特に、径方向外側および径方向内側の両方に向かって凹凸のない形状となるように形成されている。つまり、本体胴部411の外面は、つばやフランジが形成されていない構成となっている。
【0041】
外皮圧着部412は、基部から円周方向に広がって延びる一対の外皮把持片416を有し、ここに同軸ケーブルRの外皮部分が挿入されて圧着される。
【0042】
外側導体接続部413は、本体胴部411と外皮圧着部412の間にあって、外皮圧着部412と同様に、基部から円周方向に広がって延びる一対の外側導体把持片417を有し、ここに、後述するフェルール500の周囲に折り返された同軸ケーブルRの編組導体が挿入されて圧着される。
【0043】
コンタクト片414は、本体胴部411の嵌合方向前方側であって、環状部材415の嵌合方向後方側の位置に、本体胴部411と一続きに形成される。コンタクト片414は、U字形状のスリット418によって環状部材415および後述する接続梁419と隔てられており、嵌合方向後方側から、つまり本体胴部411の嵌合方向前方側の端部から、嵌合方向前方に向かってカンチレバー状に延出しており、径方向に弾性を有する。コンタクト片414の、嵌合方向前方の先端部分には、わずかに径方向内側に突出した接触点420が設けられる。コンタクト片414の接触点420は、本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタ10が相手側コネクタと嵌合された際に、相手側コネクタのコンタクトと接触して電気的導通を確立する接触部となる。
【0044】
環状部材415は、外側コンタクト410の嵌合方向前端において環状に形成された部材であり、外側コンタクト410がコアハウジング210のコンタクト収容空間214に挿入された際に、外側コンタクト410がコアハウジング210から脱落することを防止する被係止部材となる。環状部材415は、本体胴部411とは接続梁419によって接続されているのに対し、コンタクト片414とはスリット418によって隔てられている。環状部材415の形状は、嵌合方向前方から後方を見た場合に円形であるが、正四角形や正八角形等の多角形状であってもよい。
【0045】
絶縁体430は、図6に示すように、絶縁性の樹脂で形成され、所定肉厚を有する円筒形の部材であり、絶縁本体431とその内部に前後方向に貫通する中心コンタクト収容路432を有する。絶縁本体431の外径は外側コンタクト410の本体胴部411の内径に略等しく、中心コンタクト収容路432の内径は雌中心コンタクト300の外径と略等しくなるように形成されている。この絶縁体430は、中心コンタクト収容路432内に雌中心コンタクト300を保持し、絶縁本体431の外周を外側コンタクト410によって保持される。
【0046】
また、絶縁体430の嵌合方向の長さは、この絶縁体430が、雌中心コンタクト300の径方向周囲と、同軸ケーブルRの、後述するフェルール500が嵌め合わされた部位から露出する絶縁体の径方向周囲を包囲する長さであり、またこの長さは、外側コンタクト410の本体胴部411、コンタクト片414、および環状部材415の内部に延在する長さでもある。
【0047】
次に、図8を参照して、フェルール500について説明する。図8に示すように、フェルール500は、金属製で円筒形に形成された部材である。フェルール500の内径は、同軸ケーブルRの編組導体の外径に略等しい。フェルール500は、同軸ケーブルRの外皮をはがした後に露出する編組導体の周囲に嵌め込まれる。さらに、この編組導体の、フェルール500から嵌合方向前方側に露出した編組導体が、フェルール500の外表面上に嵌合方向後方に向けて折り返され、外側コンタクト410の外側導体把持片417の間に挿入されて把持され、フェルール500との間に圧着接続される。
【0048】
なお、本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタ10は、外側コンタクト410がコアハウジング210内に挿入された際に、外側コンタクト410がコアハウジング210から脱落することを防止する抜け止め構造を含んでいる。この抜け止め構造は、コアハウジング210に形成されたランス218、およびその先端に形成された係止爪219と、このランス218および係止爪219に対応して外側コンタクト410に形成された被係止部材とを含む。この被係止部材は、外側コンタクト410の嵌合側端部に形成された環状部材415である。
【0049】
この抜け止め構造は、外側コンタクト410のコンタクト片414に形成される接触点420よりも相手側コネクタのコンタクトとの嵌合側、つまり嵌合方向前方側に位置するように設けられている。
【0050】
[組立方法]
次に、図9(A)-図9(E)、図10(A)-図10(J)、図11(A)-図11(F)を参照して、本実施形態の雌型同軸ケーブルコネクタ10の組立方法を説明する。まず、同軸ケーブルRを切断した後、雌コアハウジング組立体200に挿入する。具体的には、同軸ケーブルRの先端を、ワイヤシールキャップ230とコアハウジング210に、ワイヤ挿入端213からコンタクト収容空間214に挿入し、嵌合端212から引き出す。次いで、図9(A)に示すように、同軸ケーブルRの外皮を所定長さ除去し、編組導体を露出させる。露出する編組導体の長さは、フェルール500の長さよりも長くなるようにされる。
【0051】
次に、図9(B)に示すように、露出した編組導体の周囲にフェルール500を嵌め合わせる。このとき、フェルール500の嵌合方向後方側の端部が同軸ケーブルRの外皮の嵌合方向前方側の端部に達するようにする。
【0052】
次に、図9(C)に示すように、フェルール500の嵌合方向前端から露出した編組導体を、嵌合方向後方に向けて折り返し、フェルール500の周囲に被せる。
【0053】
次に、折り返した編組導体の径方向内側から嵌合方向前方に向けて延びている誘電体を、所定長さ除去して中心導体を露出させる。なお、図9(A)、図9(B)では、最初から中心導体が露出した状態が図示されており、図示のように、編組導体および誘電体をそれぞれ所定長さで切断して中心導体を露出させる工程を、同軸ケーブルRを雌コアハウジング組立体200に挿入する前に行ってもよい。次いで、図9(D)に示すように、露出した中心導体に雌中心コンタクト300を接続する。具体的には、中心導体を基端部302に挿入し、把持部301を、中心導体が間に介在した状態で基端部302に向けて圧着する。
【0054】
次いで、図9(E)に示すように、雌外側コンタクト組立体400を装着する。具体的には、外側コンタクト410の本体胴部411の内部に絶縁体430を収容した状態で、図9(D)の状態の同軸ケーブルR及び雌中心コンタクト300を挿入する。このとき、同軸ケーブルRの外皮が外皮圧着部412の内側に載置され、フェルール500の周囲に折り返された編組導体が外側導体接続部413の内側に載置される。また、雌中心コンタクト300は絶縁体430の中心コンタクト収容路432内に収容される。そして、外皮圧着部412を同軸ケーブルRの外皮に対して外周方向から圧着する。同様に、外側導体接続部413を同軸ケーブルRのフェルール500周囲に折り返された編組導体に対して外周方向から圧着する。
【0055】
次いで、図10(A)-図10(J)に示すように、外側コンタクト410が装着された同軸ケーブルRを嵌合方向後方に引っ張ることにより、雌外側コンタクト組立体400を雌コアハウジング組立体200内に装着する。図10(A)-図10(C)は、外側コンタクト410が雌コアハウジング組立体200に装着される前の状態を示している。
【0056】
図10(D)-図10(J)に示すように、外側コンタクト410の本体胴部411、外皮圧着部412、外側導体接続部413は、コアハウジング210のコンタクト収容空間214に嵌合方向前方から後方に向けて挿入されていく。このとき、外側コンタクト410の環状部材415がコアハウジング210の係止爪219に接触し、ランス218を径方向外側に変形させる。
【0057】
図10(I)、図10(J)に示すように、環状部材415がコアハウジング210の係止爪219を嵌合方向後方に通過すると、ランス218に加わっていた圧力が解放されてランス218は初期位置に戻る。ことのき、係止爪219は、外側コンタクト410の環状部材415の嵌合方向前端部分に係止され、外側コンタクト410がコアハウジング210から嵌合方向前方に向けて脱落することが阻止される。また、このとき、外側コンタクト410の外皮把持片416の嵌合方向後方の端部がコアハウジング210のコンタクト収容空間214の張り出し部221に到達して当接し、外側コンタクト410がコアハウジング210内で嵌合方向後方へ向けて移動することも制限される。
【0058】
さらに、ワイヤシール240が、コアハウジング210のワイヤ収容部222の内面と、ここに挿入されている同軸ケーブルRの外皮との間をシールし、コンタクト収容空間214に水分が浸入することを防止する。
【0059】
次に、図11(A)-図11(F)に示すように、雌コアハウジング組立体200を、雌ハウジング組立体100に装着する。具体的には、雌コアハウジング組立体200を、外部ハウジング110のコアハウジング収容空間115に、ワイヤ挿入端117側から嵌合方向前方に向けて挿入する。コアハウジング本体211を外部ハウジング110のコアハウジング収容空間115に挿入していくと、コアハウジング本体211の外面が、底板112に形成されたハウジングランス120の先端の係止爪121に接触し、ハウジングランス120は外側、つまり下方に向けて変形する。
【0060】
コアハウジング本体211をさらに嵌合方向前方に移動させると、コアハウジング本体211の環状溝部215が係止爪121の位置まで到達し、ハウジングランス120の変形が解除されて元の形状に戻り、係止爪121がコアハウジング本体211の環状溝部215内に係止される。これにより、コアハウジング210の、外部ハウジング110のコアハウジング収容空間115内での嵌合方向前後方向の移動が制限される。
【0061】
このとき、嵌合側シール250は、コアハウジング210の嵌合側溝部216に嵌め合わされており、コアハウジング210の嵌合端212から嵌合側溝部216部にかけての部位が相手側コネクタの嵌合部分と嵌合された際に、当該相手側コネクタの嵌合部分とコアハウジング210の間をシールし、嵌合部分に水分が浸入するのを防止する。
【0062】
さらに、図11(C)、図11(D)に示すように、リテーナ130の係止脚部132、133を、外部ハウジング110の底板112に形成されたリテーナ挿入口に挿入し、プリセット状態とする。
【0063】
さらに、図11(E)、図11(F)に示すように、リテーナ130の係止脚部132、133をリテーナ挿入口に完全に挿入して完全セット状態とすると、リテーナ130の係止脚部132、133は、コアハウジング210の環状溝部215の、幅方向外側部分に挿通された状態となり、コアハウジング210を嵌合方向に移動させることができなくなる。
【0064】
上記に説明したように、嵌合側シール250からワイヤシール240が装着されるワイヤ収容部222までを単一の樹脂部材であるコアハウジング210で構成することによって、コアハウジング210内部に収容される雌外側コンタクト組立体400及び雌中心コンタクトを外部より防水することができ、また、シール部材の数を少なくすることが可能となる。
【0065】
また、コアハウジング210のコンタクト収容空間214の形状は円筒形であり、その内部に収容される雌外側コンタクト組立体400の外形も円筒形である。したがって、雌外側コンタクト組立体400はコアハウジング210のコンタクト収容空間214内部において嵌合方向前後方向を中心軸として回転させることが可能である。また、コアハウジング210のコアハウジング本体211の外形状の円筒形であり、これを収容する外部ハウジング110のコアハウジング収容空間115の内形状も円筒形状であるから、コアハウジング210を、コアハウジング収容空間115内部において嵌合方向前後を中心軸として回転させることが可能である。これにより、雌型同軸ケーブルコネクタ10を、組み立てた後に、コネクタの向きをケーブルの捻回方向に回動させることが可能であり、芯線が切れやすいケーブルであっても、コンタクト組み立て時に、コンタクトが嵌合方向前後の軸を中心としてどの方向を向いているかというような方向性を考慮せずに雌中心コンタクトに圧着接続することが可能となる。
【0066】
さらに、外側コンタクト410は、コアハウジング210に対して、コアハウジング210の嵌合端212側部分で係止されている。つまり、外側コンタクト410は、コンタクト片414の接触点420よりも嵌合方向前方側において環状部材415が係止爪219に係止されることでコアハウジング210内に保持されている。この構成により、外側コンタクト410の、電流が主に流れる領域を凹凸のない円筒状とすることが可能となり、高周波性能の向上を図ることができる。また、同軸ケーブルRが嵌合方向前方に押された場合であっても、外側コンタクト410がコアハウジング210の嵌合端212から脱落してしまうことを防止することも可能となる。
【0067】
また、上記実施形態においては、コアハウジングと外部ハウジングを別体とした例を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、コアハウジングと外部ハウジングとが一体化したケーブルコネクタであってもよい。
【0068】
また、上記の実施形態においては、ケーブルコネクタを、防水機能を有するコネクタとして例示したが、本発明は上記実施形態に限定されず、非防水のケーブルコネクタであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 雌型同軸ケーブルコネクタ
100 雌ハウジング組立体
110 外部ハウジング
111 上板
112 底板
113、114 側板
115 コアハウジング収容空間
116 嵌合端
117 ワイヤ挿入端
118 ロックアーム
119 連結部
120 ハウジングランス
121 係止爪
130 リテーナ
131 基部
132、133 係止脚部
200 雌コアハウジング組立体
210 コアハウジング
211 コアハウジング本体
212 嵌合端
213 ワイヤ挿入端
214 コンタクト収容空間
215 環状溝部
216 嵌合側溝部
217 挿入端側溝部
218 ランス
219 係止爪
220 環状部
221 張り出し部
222 ワイヤ収容部
230 ワイヤシールキャップ
231 胴部
232 端面
233 係止爪
240 ワイヤシール
250 嵌合側シール
300 雌中心コンタクト
301 把持部
302 基端部
303 コンタクト部
304 スリット
305 コンタクト片
400 雌外側コンタクト組立体
410 外側コンタクト
411 本体胴部
412 外皮圧着部
413 外側導体接続部
414 コンタクト片
415 環状部材
416 外皮把持片
417 外側導体把持片
418 スリット
419 接続梁
420 接触点
430 絶縁体
431 絶縁本体
432 中心コンタクト収容路
500 フェルール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11