(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046482
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】半田付け方法
(51)【国際特許分類】
B23K 3/02 20060101AFI20230329BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B23K3/02 R
B23K1/00 330D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155100
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】314000280
【氏名又は名称】株式会社アンド
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 満男
(57)【要約】
【課題】半田片が供給される軸線方向に貫通した半田孔を有する鏝先を用いてピン端子とピン端子に巻き付けられた巻線とを半田付けする場合に、巻線が鏝先によってピン端子の根元方向に押し下げられる虞がなく、しっかりとした半田付けが可能な半田付け方法を提供する。
【解決手段】鏝先5aが、鏝先5aの半田片Whの供給方向下流端から半田片Whの供給方向上流側に所定の長さLで、半田孔51の内径d以上の幅を有し、鏝先5aの外周面から半田孔51の内周面に至る開口部52を有し、ピン端子Pおよび鏝先5aの少なくとも一方が、ピン端子Pの軸線方向に対して略垂直方向に移動して、ピン端子Pが開口部52を通って鏝先5aの半田孔51内に挿入され、次いで、半田孔51内に半田片Whが供給され、加熱された鏝先5aによって半田片Whが溶融されてピン端子Pと巻線83とが半田付けされる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒形状で、半田片が供給される軸線方向に貫通した半田孔を有する加熱可能な鏝先を用いて、電子部品の部品本体から外方に突出したピン端子と、前記ピン端子に巻き付けられた巻線とを半田付けする半田付け方法であって、
前記半田孔の内径が、前記ピン端子に巻き付けられた前記巻線の最外周径以上であり、
前記鏝先が、前記鏝先の前記半田片の供給方向下流端から前記半田片の供給方向上流側に所定の長さで、前記半田孔の内径以上の幅を有し、前記鏝先の外周面から前記半田孔の内周面に至る開口部を有し、
前記巻線が巻き付けられた前記ピン端子および前記鏝先の少なくとも一方が、前記ピン端子の軸線方向に対して略垂直方向に移動して、前記巻線が巻き付けられた前記ピン端子が前記開口部を通って前記鏝先の前記半田孔内に挿入され、
次いで、前記半田孔内に半田片が供給され、
加熱された前記鏝先によって前記半田片が溶融されて前記ピン端子と前記巻線とが半田付けされることを特徴とする半田付け方法。
【請求項2】
前記開口部の幅が、鏝先の半径方向外方から内方に向かって連続して狭くなっている請求項1記載の半田付け方法。
【請求項3】
前記半田孔内に供給された前記半田片の供給方向前端が前記ピン端子または前記巻線に当接する請求項1又は2記載の半田付け方法。
【請求項4】
前記半田片が前記半田孔に供給される前から前記鏝先が加熱されている請求項1~3のいずれかに記載の半田付け方法。
【請求項5】
前記請求項1~4のいずれかに記載の半田付け方法に用いられる鏝先であって、
略筒形状で、
半田片が供給される軸線方向に貫通し、内径が前記ピン端子に巻き付けられた前記巻線の最外周径以上である半田孔と、
前記鏝先の前記半田片の供給方向下流端から前記半田片の供給方向上流側に所定の長さで、前記半田孔の内径以上の幅を有し、前記鏝先の外周面から前記半田孔の内周面に至る開口部と
を有することを特徴とする鏝先。
【請求項6】
前記開口部の幅が、鏝先の半径方向外方から内方に向かって連続して狭くなっている請求項5記載の鏝先。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半田付け方法に関し、より詳細には、電子部品の部品本体から外方に突出したピン端子と、前記ピン端子に巻き付けられた巻線とを半田付けする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品の部品本体から外方に突出したピン端子と、このピン端子に巻き付けられた巻線との半田付けは、一般に、ピン端子に巻線が巻き付けられた後、ピン端子の先端を下方にしてピン端子の根元付近まで半田槽に浸漬することで行われていた(例えば特許文献1)。またこのとき、ピン端子と巻線との半田付けを確実かつ強固にするため、一般に、ピン端子の半田槽への浸漬は複数回行う必要があった。そしてまた、このようなピン端子の半田槽への浸漬において、特許文献2では、巻線のピン端子への巻き付き間隔を疎にして、半田付けをより確実かつ強固にする技術も提案されている。
【0003】
このような半田槽への浸漬を複数回行う従来の半田付け作業では生産性の向上に限界があった。
【0004】
そこで、例えば特許文献3では、略筒形状で、半田片が供給される軸線方向に貫通した半田孔を有する加熱可能な鏝先を用いて、ピン端子と巻線とを半田付けすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-74030号公報
【特許文献2】特開2007-49105号公報
【特許文献3】再表2008-23461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記提案の略円筒形状の鏝先を用いて半田付けを行う場合、
図9に示すように、鏝先5bがピン端子Pに対して、上下方向に所定距離離れて、両者の中心軸線C
1と中心軸線C
2とが略同一直線上となるように相対的に移動した後、鏝先5bがピン端子Pに対して接近する方向に相対移動して(
図9に破線で示す)、巻線83が巻き付けられたピン端子Pが鏝先5bの半田孔51内に挿入される。
【0007】
しかしながら、鏝先5bの中心軸線C
1とピン端子Pの中心軸線C
2とが略同一直線とならずズレた場合には、
図10に示すように、鏝先5bの半田孔51の下面開口周縁と巻線83とが当接して巻線83が、鏝先5bの相対移動によってピン端子Pの根元方向に押し下げられて巻線83の巻き付き間隔が短くなる虞がある。巻線83の巻き付き間隔が狭くなると溶融半田がピン端子Pと巻線83と間に十分に浸入できず半田付けが不十分になる虞がある。このため、ピン端子Pと巻線83との半田付けを行う場合には鏝先5bのピン端子Pに対する相対移動には他の場合よりも精密な制御が要求される。
【0008】
そこで本発明の目的は、前記の略筒形状の鏝先を用いてピン端子と巻線とを半田付けする場合において、鏝先のピン端子に対する移動制御が通常の移動制御の精度と同程度であっても、鏝先によって巻線がピン端子の根元方向に押し下げられる虞がなく、しっかりとした半田付けが可能な半田付け方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成する本発明の一態様に係る半田付け方法は、略筒形状で、半田片が供給される軸線方向に貫通した半田孔を有する加熱可能な鏝先を用いて、電子部品の部品本体から外方に突出したピン端子と、前記ピン端子に巻き付けられた巻線とを半田付けする半田付け方法であって、前記半田孔の内径が、前記ピン端子に巻き付けられた前記巻線の最外周径以上であり、前記鏝先が、前記鏝先の前記半田片の供給方向下流端から前記半田片の供給方向上流側に所定の長さで、前記半田孔の内径以上の幅を有し、前記鏝先の外周面から前記半田孔の内周面に至る開口部を有し、前記巻線が巻き付けられた前記ピン端子および前記鏝先の少なくとも一方が、前記ピン端子の軸線方向に対して略垂直方向に移動して、前記巻線が巻き付けられた前記ピン端子が前記開口部を通って前記鏝先の前記半田孔内に挿入され、次いで、前記半田孔内に半田片が供給され、加熱された前記鏝先によって前記半田片が溶融して前記ピン端子と前記巻線とが半田付けされることを特徴とする。
【0010】
前記構成の半田付け方法において、前記開口部の幅が、鏝先の半径方向外方から内方に向かって連続して狭くなっている構成であってもよい。
【0011】
また前記構成の半田付け方法において、前記半田孔内に供給された前記半田片の供給方向前端が前記ピン端子または前記巻線に当接する構成であるが好ましい。
【0012】
また前記構成の半田付け方法において、前記半田片が前記半田孔に供給される前から前記鏝先が加熱されている構成であるが好ましい。
【0013】
また本発明によれば、前記記載の半田付け方法に用いられる鏝先であって、略筒形状で、半田片が供給される軸線方向に貫通し、内径が前記ピン端子に巻き付けられた前記巻線の最外周径以上である半田孔と、前記鏝先の前記半田片の供給方向下流端から前記半田片の供給方向上流側に所定の長さで、前記半田孔の内径以上の幅を有し、前記鏝先の外周面から前記半田孔の内周面に至る開口部とを有することを特徴とする鏝先が提供される。
【0014】
前記構成の鏝先において、前記開口部の幅が、鏝先の半径方向外方から内方に向かって連続して狭くなっている構成であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の半田付け方法によれば、鏝先はピン端子に対してピン端子の軸線方向に対して略垂直方向に相対移動し、ピン端子が鏝先の半田孔内に挿入されるので、鏝先のピン端子に対する移動制御が通常の移動制御の精度と同程度であっても、ピン端子に巻き付けられた巻線が鏝先によってピン端子の根元方向に押し下げられることはない。これにより、良好な半田付けが確実に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明において使用可能な鏝先の一形態を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態にかかる半田付け装置APの一例の斜視図である。
【
図6】装置本体A1の内部構造を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す装置本体A1の概略垂直断面図である。
【
図8】
図6に示す装置本体A1に設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。
【
図9】従来の鏝先を用いた正常な場合の半田付けの概説図である。
【
図10】従来の鏝先を用いた半田付けの正常でない場合の半田付けの概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る半田付け方法およびそれに用いる半田付け装置の鏝先について図に基づき説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0018】
(鏝先)
図1および
図2に、本発明において使用可能な鏝先の一形態を示す。
図1は鏝先5aの斜視図であり、
図2は鏝先5aの下部の水平断面図である。鏝先5aは、円筒形状であり中心軸線C
1を中心とし軸線方向(
図1の上下方向)に貫通した断面円形の半田孔51を備える。また、鏝先5aは下端外周部に外周面から半田孔51の内周面に至る開口部52を備える。開口部52は、鏝先5aの下端から上方に長さL(
図1に図示)で、中心軸線C
1方向に対して垂直方向の幅Wが幅W1から幅W2まで鏝先5aの半径方向内方に向かって連続的に小さくなる形状を有する。なお、幅W2は半田孔51の内径dに等しい。また鏝先5aは、開口部52よりも上方に半田孔51と外周面とを連通するリリース孔53を有する。リリース孔53は、溶融した半田によって半田孔51の下端開口がせき止められたときに、不図示のガス供給部から供給される窒素ガスや気化したフラックスなどを鏝先5aの外に逃がす役割を果たす。
【0019】
開口部52の幅Wは、通常、最小では幅W2(半田孔51の内径d)と同じであり、最大では鏝先5aの外径Dと同じである。開口部52の幅Wの好ましい範囲は半田孔51の内径dよりも大きく鏝先5aの外形Dよりも小さい範囲である。このような範囲であれば、鏝先5aとピン端子Pの移動前(挿入前)の位置が正規の位置からズレた場合あるいは鏝先5aの相対移動方向が正規の方向からズレた場合であっても、開口部52の側面によってピン端子Pが鏝先5aの半田孔51内に案内される。なお、半田孔51の内径dは、後述するピン端子Pに巻き付けられた巻線83の最外周径以上に設定されている。
【0020】
(半田付け工程)
図3および
図4に半田付け工程図を示す。
図3および
図4は中心軸線C
1および中心軸線C
2を含む平面での電子部品の部品本体81と鏝先5aの部分垂直断面図である。半田付け対象であるトランスなどの電子部品8(
図5に図示)は、部品本体81と、部品本体81に植設されたピン端子Pと、部品本体81に形成された引出し溝82を通って部品本体81から引き出されピン端子Pに巻き付けられた巻線83とを備える。
【0021】
後段において
図5に基づき説明するように、半田付け装置APの制御手段Contが、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、
図3(a)に示すように、鏝先5aを、鏝先5aの外周面がピン端子Pに巻き付けられた巻線83に接触せず且つ鏝先5aの下端面が部品本体81のピン端子P植設面の近傍位置(第1位置)に移動させる。次いで、
図3(b)に示すように、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、鏝先5aをピン端子Pの中心軸線C
2に対して垂直方向すなわち
図3の左方向に移動させて、巻線83が巻き付けられたピン端子Pを鏝先5aの半田孔51内に位置させる(第2位置)。好ましくは、ピン端子Pの中心軸線C
2と鏝先5aの中心軸線C
1とが同一直線上となるように位置させる。
【0022】
ここで、第1位置が設定位置からズレた場合や第1位置から第2位置への移動の方向がズレた場合に、鏝先5aが、第1位置から第2位置へ相対的に移動する際にピン端子Pに巻き付けられた巻線83に接触したときであっても、巻線83にはピン端子Pの中心軸線C2の方向に垂直な力が加わるだけで中心軸線C2の方向に力は加わらないので、巻線83がピン端子Pの根元方向に押し下げられて巻線83の巻き付け間隔が短くなる虞はない。
【0023】
第2位置において、鏝先5aの下面と部品本体81のピン端子Pの植設面との間隔は、可能な限り小さくするのが望ましい。巻線83が巻き付けられたピン端子Pの周囲が鏝先5aの半田孔51の内周面で多く囲われることで、巻線83およびピン端子Pが鏝先5aからの輻射熱等で加熱されやすくなる。このためには開口部52の中心軸線C1方向の長さLはピン端子Pの部品本体81からの突出高さ超であるのが好ましい。
【0024】
次に、
図3(c)に示すように、鏝先5aの半田孔51に半田片Whが供給される。ここで、鏝先5aの半田孔51の内径dは、前述のように、ピン端子Pに巻き付けられた巻線83の最外周径以上である。(当然ながら半田孔51の内径dは半田片Whの外径よりも大きい。)そして、半田孔51の内周面とピン端子Pに巻き付けられた巻線83の最外周との間の最大隙間が、半田孔51に供給される半田片Whの外径よりも小さくなるよう設定されるのが望ましい。これにより、半田孔51内に供給された半田片Whは、ピン端子Pまたは巻線83の先端部分に当接する。なお、鏝先5aの中心軸線C
1とピン端子Pの中心軸線C
2とが同一直線上になくズレていた場合であっても、半田孔51内に供給された半田片Whが、ピン端子Pまたは巻線83の先端部分に当接する限りにおいて当該ズレは許容される。
【0025】
半田孔51内に供給された半田片Whは、通常は半田孔51の内周面にその一部が接触するので(半田孔51の内周面に接触せずにピン端子P上や巻線83上に半田片Whが立った場合を除いて)、鏝先5aから伝熱によって半田片Whは直接的に加熱される。なお、鏝先5aの加熱は半田片Whが半田孔51に供給される前から加熱されている。具体的には、半田付け装置APの主電源が入れられた時からヒーターユニット4により加熱され鏝先5aは所定温度で保持されている。
【0026】
半田孔51内に供給された半田片Whは、鏝先5aからの伝熱によって短時間で溶融温度まで加熱される。半田片Whの加熱溶融過程において溶融温度が半田よりも低いフラックスがまず溶融して半田片Whの表面に流出する。フラックスは半田よりも熱伝導率が高いのでフラックスを介して鏝先5aから半田片Whへの伝熱が加速される。また、半田片Whから流下した一部のフラックスがピン端子Pおよび巻線83の表面の酸化膜を除去するとともに半田付け過程でのピン端子Pおよび巻線83の酸化を防止する。
【0027】
そして、半田片Whの温度が溶融温度に達すると溶融し、ピン端子Pの上部で溶融半田MSは表面張力によって略球状になり、ピン端子Pが半田溶融温度以上に加熱されると流下して、
図4(d)に示すように、ピン端子Pと巻線83とを半田付けする。
【0028】
その後、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、
図4(e)に示すように、鏝先5aをピン端子Pの中心軸線C
2に対して垂直方向すなわち
図4の右方向に移動させて第2位置から第1位置にする。次いで、鏝先5aは中心軸線C
1方向で部品本体81から離れる方向すなわち
図4の上方向に移動されて次の半田付け作業が行われる。
【0029】
なお、半田付け終了後、鏝先5aは直ちに中心軸線C
1方向で部品本体81から離れる方向すなわち
図4の上方向に移動して次の半田付け作業を行うようにしてもよい。
【0030】
(半田付け装置の全体構成)
図5は、以上説明した鏝先5aを用いて半田付けを行う半田付け装置APの斜視図であって、半田付け装置APが、治具Gjに従来公知の手段で固定された電子部品8のピン端子Pと、ピン端子Pに巻き付けられた巻線83とを半田付けする場合の図である。電子部品8の部品本体81の上面には上方に突出するように2本のピン端子Pが植設され、ピン端子Pの各々には巻線83が巻き付けられている。
【0031】
半田付け装置APは、多関節アームAmを有する移動手段としてのマニピュレーターMLと、マニピュレーターMLの先端に取り付けられた装置本体A1と、マニピュレーターML及び装置本体A1の動作を制御する制御装置Contとを備える。マニピュレーターMLは基台Bs上に設置され、多関節アームAmは複数の関節部の各々において回転可能とされている。制御手段Contは、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、装置本体A1を
図5に示すX方向、Y方向、Z方向の所望位置に移動させる。また制御手段Contは、後述する装置本体A1のカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6及びヒーターユニット4(いずれも
図6に図示)の動作を制御する。なお、本実施形態ではカッターユニット2、駆動機構3、半田送り機構6が半田片供給手段を構成する。
【0032】
半田付け装置APによって半田付けを行う場合、装置本体A1が、マニピュレーターMLによってX方向、Y方向及びZ方向に移動されて、鏝先5aは、外周面がピン端子Pに巻き付けられた巻線83に接触せず且つ鏝先5aの下端面が部品本体81のピン端子P植設面の近傍位置に移動する。その後、鏝先5aがピン端子Pに接近する方向に移動され、鏝先5aの半田孔内に巻線83が巻き付けられたピン端子Pが挿入される。なお、本実施形態では、装置本体A1を移動させているが、装置本体A1を固定し治具Gjを移動させる、あるいは装置本体A1と治具Gjの両者を移動させても構わない。
【0033】
このような鏝先5aの制御手段Contによる移動制御は、予め入力設定された値に基づき行ってもよいし、接触センサーなど不図示の検知手段による検知信号に基づき行ってもよい。
【0034】
(装置本体A1)
図6に装置本体A1の斜視図を、
図7に、
図6に示す装置ユニットUの垂直断面図を示す。
図8は、
図7に示す装置ユニットUに設けられた駆動機構の一部の分解斜視図である。なお、
図6では、筐体の一部を切断し、装置本体A1の内部を表示するようにしている。
【0035】
図6に示すように、装置本体A1は、装置ユニットUと、装置ユニットUをZ方向の所定距離範囲で移動可能に支持する支持部材SPと、装置ユニットUと支持部材SPを覆うカバーC(
図6の破線)とを有する。
【0036】
支持部材SPは、四角形状のYZ平面を有しX方向に所定の厚みを有する板状の基部Mfと、基部MfのX方向一方側面のY方向中央部にY方向に所定幅を有しX方向に突出しZ方向に連続するガイドレールMgと、ガイドレールMgにZ方向に移動可能に取り付けられたブロックMbとを備える。
【0037】
基部MfのZ方向上端部はマニピュレーターMLの多関節アームAmの先端に取り付けられる。ブロックMbには装置ユニットUの壁体11がZ方向の略全域にわたって取り付けられている。すなわち、装置ユニットUはブロックMbに固定され、ブロックMbと一体となってZ方向に移動可能とされている。また、ブロックMbのY方向の一方側面の下端部には移動規制ピン91が側面から外方に向かって垂直に突出して設けられている。
【0038】
一方、基部MfのX方向一方側面のZ方向下部のY方向端部位置には、直方体形状の上ストッパー部93と下ストッパー部94とがZ方向に所定距離隔てて対向するように設けられている。
【0039】
ブロックMbの一方側面に設けられた移動規制ピン91は、基部Mfの上ストッパー部93と下ストッパー部94との間の領域に位置し、初期状態のときすなわち鏝先5aが配線基板Bdに当接していない状態のときは、装置ユニットU及びブロックMbの自重によって移動規制ピン91は下ストッパー部94に当接した状態となっている。換言すると、移動規制ピン91が下ストッパー部94に当接することで、装置ユニットUのZ方向下方への移動が規制される。他方、鏝先5aが配線基板Bdに当接して装置ユニットUがZ方向上方に移動した場合には、移動規制ピン91が上ストッパー部93に当接することで、装置ユニットUのZ方向上方向への移動が規制される。
【0040】
(装置ユニットU)
装置ユニットUは、支持部1、カッターユニット2、駆動機構3、ヒーターユニット4、鏝先5a、半田送り機構6を備えている。
【0041】
支持部1は、立設された平板状の壁体11を備えている。なお、以下の説明では、便宜上、
図6に示すように、壁体11に沿う水平方向をX方向、壁体11と垂直な水平方向をY方向、壁体11に沿う鉛直方向をZ方向とする。例えば、
図6に示すように、壁体11はZX平面を有している。
【0042】
支持部1は、壁体11と、保持部12と、摺動ガイド13と、ヒーターユニット固定部14とを備える。壁体11は、鉛直方向に立設された平板状の壁体である。壁体11は、装置本体A1の支持部材としての役割を果たしている。保持部12は、壁体11のZ方向の下端部より上方にずれた位置に固定されている。保持部12は、駆動機構3の後述するエアシリンダー31を保持する。ヒーターユニット固定部14は、ヒーターユニット4の固定を行う部材であり、壁体11のZ方向の端部(下端部)に設けられている。
【0043】
摺動ガイド13は、壁体11のZ方向の下端部の近傍に固定されている。摺動ガイド13は、カッターユニット2の後述するカッター下刃22と共に、壁体11と固定されており、カッターユニット2の後述するカッター上刃21をX方向に摺動可能にガイドする。
【0044】
摺動ガイド13は、Y方向に対向して対をなす部材である。摺動ガイド13は、一対の壁部131と、抜止部132とを有している。壁部131は、X方向に延びる平板状の部材である。一方の壁部131は、壁体11と接触して配されており、壁体11と反対側の面は、カッター下端22と接触している。また、他方の壁部131は、カッター下刃22の側面と接触している。つまり、一対の壁部131は、カッター下刃22をY方向の両側から挟んでいる。そして、一対の壁部131及びカッター下刃22は、ねじ等の締結具で壁体11に共締めされて固定される。
【0045】
抜止部132は、一対の壁部131のそれぞれに設けられている。一対の壁部131は、カッター下刃22のZ方向上面よりもZ方向に延びており、一対の壁部131のZ方向の上端部から、それぞれ、他方に向かって延びている。すなわち、摺動ガイド13は、一対の抜止部132を備えている。そして一対の抜止部132それぞれのY方向の先端は、接触しない、換言すると、摺動ガイド13には上部に開口を有している。カッター上刃21は、カッター下刃22の上面と、抜止部132との間に少なくとも一部は配される。これにより、カッター上刃21は、X方向にガイドされるとともに、Z方向に抜け止めされる。
【0046】
カッターユニット2は、半田送り機構6によって送られた糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する切断具である。カッターユニット2は、カッター上刃21と、カッター下刃22と、プッシャーピン23とを備えている。
【0047】
上述のとおり、カッター下刃22は摺動ガイド13とともに壁体11に固定される。
図7に示すように、カッター下刃22は、下刃孔221と、ガス流入孔222とを備えている。下刃孔221は、カッター下刃22をZ方向に貫通する貫通孔であり、カッター上刃21の後述する上刃孔211を貫通した糸半田Wが挿入される。下刃孔221の上端の辺縁部は切刃状に形成されている。上刃孔211と下刃孔221とを用いて、糸半田Wを所定長さの半田片Whに切断する。切断された半田片Whは、自重によって又はプッシャーピン23に押されて、下刃孔221の内部を下方に落下する。下刃孔221は、ヒーターユニット4の後述する半田供給孔422を介して、鏝先5aの後述する半田孔51と連通している。下刃孔221の内部を落下した半田片Whは、半田供給孔422に達した後、半田孔51に落下する。
【0048】
ガス流入孔222は、カッター下刃22の外側面と下刃孔221とを連通する孔である。不図示のガス供給源から供給されるガスはガス流入孔222に流入する。そして、ガスは、下刃孔221、半田供給孔422を通過して、半田孔51に到達する。なお、ガスとは、半田を加熱して溶融するときに半田の酸化を抑制するために用いられるものである。すなわち、溶融した半田と酸素との接触を抑制するためのガスである。ガスとしては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、二酸化炭素等を挙げることができる。本実施形態の半田付け装置APでは、窒素ガスを供給するものとして説明する。
【0049】
カッター上刃21は、上述したとおり、カッター下刃22のZ方向上面上に配される。カッター上刃21は、摺動ガイド13によって摺動時に摺動方向がX方向になるようガイドされるとともにZ方向に抜け止めされる。すなわち、カッター上刃21は、カッター下刃22のZ方向の上面上をX方向に摺動する。なお、カッター上刃21は、駆動機構3によって摺動される。
【0050】
カッター上刃21は、上刃孔211と、ピン孔212とを備えている。上刃孔211は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である、上刃孔211には、半田送り機構6から送られた糸半田Wが挿入される。上刃孔211の下端の辺縁部は切刃状に形成されている。ピン孔212は、カッター上刃21をZ方向に貫通する貫通孔である。ピン孔212には、プッシャーピン23の後述するロッド部231が、摺動可能に挿入される。
【0051】
プッシャーピン23は、ロッド部231と、ヘッド部232と、バネ233とを有する。ロッド部231は、円柱状の部材であり、ピン孔212に摺動可能に挿入される。また、プッシャーピン23がZ方向下に移動することで、ロッド部23の先端が、ピン孔212から突出する。ヘッド部232はロッド部231の軸線方向の上端に連結される。ヘッド部232は、ピン孔212の内径よりも大きい外径を有する円板形状である。ヘッド部232は、ピン孔212に挿入されない。すなわち、ヘッド部232は、ロッド部231のピン孔212内への移動を制限する、いわゆる、ストッパーとしての役割を果たす。
【0052】
バネ233は、ロッド部231の径方向外側を囲む圧縮コイルばねである。バネ233は、Z方向下端部がカッター上刃21の上面と接触し、Z方向上端部がヘッド部232の下面と接触する。すなわち、バネ233は、カッター上刃21の上面から反力を受け、ヘッド部232をZ方向上に押す。これにより、ヘッド部232と連結されたロッド部231は、Z方向上方に持ち上げられ、ロッド部231の下端が、ピン孔212の下端から突出しないように維持される。なお、ロッド部231のZ方向下端部には、ピン孔212からの抜けを抑制する抜け止め(不図示)が設けられている。
【0053】
プッシャーピン23は、カッター上刃21とカッター下刃22で切断されて下刃孔221に残った半田片Whを下方に押す。そして、プッシャーピン23は、ばね233の弾性力によって、常に上方に、すなわち、カッター下刃22と反対側に押し上げられている。つまり、ロッド部231は、ヘッド部232が押されたときに、ピン孔212のZ方向下端部から下に突出する。そして、ヘッド部232は、駆動機構3の後述するカム部材33に押される。
【0054】
カッター上刃21において、上刃孔211とピン孔212とはX方向に並んで設けられている。カッター上刃21は、X方向に摺動することで、上刃孔211と下刃孔221とが上下に重なる位置、又は、ピン孔212と下刃孔221とが上下に重なる位置に移動する。なお、カッター上刃21は、一方の摺動端部まで摺動したときに上刃孔211と下刃孔221とが重なり、他方の摺動端部まで摺動したときにピン孔212と下刃孔221とが重なるように、摺動してもよい。
【0055】
そして、上刃孔211と下刃孔221とがZ方向に重なっている状態で、半田送り機構6から糸半田Wが送られると、上刃孔211を通過した糸半田Wが、下刃孔221に挿入される。上述のとおり、上刃孔211の下端の辺縁部が切刃状に形成されているとともに、下刃孔221の上端の辺縁部も切刃状に形成されている。そして、カッター上刃21の下面は、カッター下刃22の上面と接触している。そのため、下刃孔221に糸半田Wが挿入されている状態で、カッター上刃21がX方向に摺動することで、上刃孔211および下刃孔221それぞれの切刃によって糸半田Wが切断される。
【0056】
カッター上刃21は、カム部材33によってX方向に摺動される。そのため、カッター上刃21及びプッシャーピン23は、カム部材33と同期している。カム部材33は、ピン孔212が下刃孔221とZ方向に重なったときに、ヘッド部232を押す。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときには、プッシャーピン23のロッド部231の先端は、ピン孔212に収容されている。そのため、カッター上刃21がX方向に摺動するときに、ロッド部231の先端とカッター下刃22の上面とが接触するのを抑制し、ロッド部231の先端及び(又は)カッター下刃22の変形、破損等が抑制される。
【0057】
カッター上刃21がX方向に摺動することで、下刃孔211とピン孔212とがZ方向に重なる。ピン孔212が下刃孔211と重なっている状態で、ヘッド部232はカム部材33に押される。これにより、プッシャーピン23が、Z方向下に移動する。プッシャーピン23がピン孔212からZ方向下方に突出すると、プッシャーピン23の一部が下刃孔211に挿入される。下刃孔211の入り口に糸半田を切断した後述の半田片が残っている場合、プッシャーピン23の先端が半田片を押して、半田片は落下する。
【0058】
図6および
図7に示すように、駆動機構3は、エアシリンダー31と、ピストンロッド32と、カム部材33と、スライダー部34と、ガイド柱部35とを有する。エアシリンダー31は保持部12に保持される。エアシリンダー31は、有底円筒状である。エアシリンダー31の内部には、ピストンロッド32が収容されており、外部から供給される空気の圧力でピストンロッド32を摺動駆動(伸縮)させる。エアシリンダー31とピストンロッド32とが駆動機構3のアクチュエーターを構成している。ピストンロッド32は、エアシリンダー31の内部に配されるとともに、一部が常にエアシリンダー31の軸線方向の一方の端部(ここでは、Z方向の下端部)から、突出している。エアシリンダー31は、ピストンロッド32が突出する面がカッターユニット2に向くように、すなわち、Z方向下に向くように、保持部12に保持される。
【0059】
ピストンロッド32は、保持部12に設けられた貫通孔(不図示)を貫通している。ピストンロッド32は、ガイド柱部35と平行に設けられており、ガイド柱部35に沿って直線的に往復動する。ピストンロッド32の先端部は、カム部材33に固定されており、ピストンロッド32の伸縮によって、カム部材33がZ方向に摺動する。カム部材33の摺動は、ガイド柱部35によってガイドされている。
【0060】
図7に示すように、ガイド柱部35は、下端部がカッター下刃22に設けられた凹穴に嵌合されており、カッター下刃22にねじ351でねじ止め固定されている。また、ガイド柱部35の上部は、保持部12に設けられた孔を貫通しており、ピン352によって移動が規制されている。つまり、ガイド柱部35はねじ351によってカッター下刃22と、ピン352によって保持部12と固定されている。
【0061】
なお、本実施形態において、ガイド柱部35は、ねじ351及びピン352によって固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、圧入、溶接等の固定方法で固定されるものであってもよい。また、本実施形態において、ガイド柱部35として円柱状の部材としているが、これに限定されるものではなく、断面多角形状や楕円等を利用してもよい。
【0062】
図7および
図8に示すように、カム部材33は矩形状の部材であり、長辺の一部を矩形状に切り欠いた凹部330と、カム部材33に連結し、ガイド柱部35が貫通する貫通孔を備えた円筒形状の支持部331とを備えている。凹部330には、スライダー部34が(X方向及びZ方向に)摺動可能に配置される。また、支持部331はガイド柱部35と平行に延びる形状を有しており、カム部材33のがたつきを抑制するために設けられている。つまり、カム部材33がある程度厚みを有し、がたつきが発生しにくい構成の場合、円筒形状の部分を省略し、貫通孔だけで支持部331を構成してもよい。
【0063】
そして、カム部材33は、凹部330の中間部分に設けられて中心軸線がガイド柱部35と直交する円柱状のピン332と、凹部330と隣接してプッシャーピン23を押すピン押し部333と、支持部331内部に配置された軸部受334とを備えている。ピン332は、スライダー部34に設けられた後述するカム溝340に挿入される。また、軸部受334は、ガイド柱部35に外嵌し、カム部材33ががたつかないように、円滑に摺動させる部材である。
【0064】
図7および
図8に示すように、スライダー部34は、長方形状の板状の部材であり、カッター上刃21と一体的に形成されている。スライダー部34は、板厚方向に貫通するとともに長手方向に延びるカム溝340を備えている。カム溝340は、ガイド柱部35と平行に延びる第1溝部341を上側に、同じくガイド柱部35と平行に延びる第2溝部342を下側に設けている。そして、第1溝部341と第2溝部342とは、X方向にずれて設けられており、カム溝340は第1溝部341と第2溝部342とを接続する接続溝部343を備えている。
【0065】
カム溝340には、カム部材33のピン332が挿入されており、カム部材33がガイド柱部35に沿って移動することで、ピン332がカム溝340の内面を摺動する。ピン332がカム溝340の接続溝部343に位置するとき、接続溝部343の内面を押す。これにより、スライダー部34及びスライダー部34に一体的に形成されたカッター上刃21がカム部材33の摺動方向(Z方向)と交差する方向(X方向)に移動(カッター下刃22に対して摺動)する。
【0066】
なお、本実施形態では、カム部材33にピン332、スライド部34にカム溝340を備えた構成を挙げて説明しているが、実際には、カム部材にカム溝、スライド部にピンを備えた構成であってもよい。
【0067】
本実施形態では、駆動機構3のアクチュエーターとして空気圧を用いるものとしているが、これに限定されるものではなく、空気以外の流体(例えば、作動油)を用いるもの(油圧)であってもよい。また、流体を用いるものに限定されるものではなく、モーターやソレノイド等の電力を用いるものであってもよい。本実施形態では、1つのアクチュエーターと、カム及びカム溝を用いて、カッター上刃21の摺動とプッシャーピン23の押下を行っているが、これに限定されない。例えば、カッター上刃21の摺動と、プッシャーピン23の押下とを行うように、アクチュエーターを複数個(2個)備えていてもよい。
【0068】
図6および
図7に示すように、半田送り機構6は、糸半田Wを供給する。半田送り機構6は、一対の送りローラ61と、ガイド管62とを備えている。一対の送りローラ61は、支持壁11に回転可能に取り付けられている。一対の送りローラ61は、糸半田Wの側面を挟んで回転することで、糸半田を下方に送る。なお、一対の送りローラ61は、互いに他方に向かって付勢されており、その付勢力で糸半田Wを挟む。送りローラ61の回転角度(回転数)によって、送り出した糸半田Wの長さが測定(決定)されている。
【0069】
ガイド管62は、弾性変形可能な管体であり、上端は、送りローラ61の糸半田Wが送り出される部分に近接して配置されている。また、ガイド管62の下端は、カッター上刃21の上刃孔211と連通するように設けられている。なお、ガイド管62の下端はカッター上刃21の摺動に追従して移動するものであり、ガイド管62はカッター上刃21が摺動する範囲で過剰に引っ張られたり、突っ張ったりしない長さ、および、形状を有している。
【0070】
ヒーターユニット4は、半田片Whを加熱し、溶融させるための加熱装置であり、
図7に示すように、壁体22の下端部に設けられたヒーターユニット固定部14に固定されている。ヒーターユニット4は、ヒーター41と、ヒーターブロック42とを備える。ヒーター41は、通電により発熱する。ヒーター41は、ここでは、円筒形状のヒーターブロック42の外周面に巻き回された電熱線を有する。
【0071】
ヒーターブロック42は円筒形状を有しており、軸線方向の端部に鏝先5aを取り付けるための断面円形状の凹部421と、凹部421の底部の中心部から反対側に貫通した半田供給孔422とを備えている。ヒーターブロック42は、半田供給孔422と下刃孔221とが連通するように、カッター下刃22に接触して設けられている。ヒーターブロック42をこのように設けることで、半田片Whは、下刃孔221から半田供給孔422に移動する。
【0072】
(半田付け装置の動作)
次に、半田付け装置APの動作について説明する。
図3及び
図5に示すように、制御手段Contが、マニピュレーターMLの多関節アームAmの回転動作を制御して、装置本体A1の鏝先5aを、その外周面がピン端子Pに巻き付けられた巻線83に接触せず且つ鏝先5aの下端面が部品本体81のピン端子P植設面の近傍に位置させる。次いで、制御手段ContはマニピュレーターMLを制御して、鏝先5aをピン端子Pに接近する方向に移動させて、鏝先5aの半田孔51内に巻線83が巻き付けられたピン端子Pが挿入される。
【0073】
次いで、
図3に示すように、鏝先5aの半田孔51に半田片Whが供給される。鏝先5aには、ヒーター41(
図7に図示)からの熱が伝達されており、鏝先5aからの伝熱及び輻射熱、さらには半田孔51内の対流によって加熱される。
図4に示すように、半田片Whの温度が溶融温度に達すると、半田片Whは溶融して溶融半田MSとなって流下してピン端子Pと巻線83とが半田付けされる。半田付け装置APはこの一連の動作を繰り返して電子部品8のピン端子Pと巻線83との半田付けを順次行う。
【0074】
以上説明した実施形態は本発明に係る半田付け方法および鏝先の一例を示したものであり、本発明の効果を阻害しない範囲において種々の変形等は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の半田付け方法によれば、ピン端子Pに巻き付けられた巻線83が鏝先5aによってピン端子Pの根元方向に押し下げられることはなく良好な半田付けが確実に可能となる。
【符号の説明】
【0076】
AP 半田付け装置
A1 装置本体
4 ヒーターユニット
41 ヒーター
42 ヒーターブロック
5a,5b 鏝先
51 半田孔
52 開口部
6 半田送り機構
8 電子部品
81 部品本体
82 引出し溝
83 巻線
C1 鏝先の中心軸線
C2 ピン端子の中心軸線
d 半田孔の内径
D 鏝先の外径
L 開口部の鏝先の軸線方向の長さ
W1,W2 開口部の幅(鏝先の軸線方向に対して垂直な方向の長さ)
P ピン端子
W 糸半田
Wh 半田片