IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機照明株式会社の特許一覧

特開2023-46504レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具
<>
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図1
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図2
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図3
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図4
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図5
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図6
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図7
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図8
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図9
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図10
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図11
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図12
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図13
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図14
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図15
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図16
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図17
  • 特開-レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046504
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/04 20060101AFI20230329BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20230329BHJP
   F21V 29/77 20150101ALI20230329BHJP
   F21V 29/502 20150101ALI20230329BHJP
   F21S 8/02 20060101ALN20230329BHJP
   F21Y 105/18 20160101ALN20230329BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230329BHJP
【FI】
F21S8/04 100
F21V5/00 510
F21V29/77
F21V29/502 100
F21S8/02 400
F21Y105:18
F21Y115:10 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155127
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 振一郎
(57)【要約】
【課題】照明光の色ムラ及び照度ムラの少ない配光制御を行うことができる、レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具を提供する。
【解決手段】レンズアレイは、各LED素子に対して一対一となるように設けられ、LED素子が発する光の配光を制御する複数のレンズを備えている。レンズは、入射側の端面に形成され、内部にLED素子が配置される凹部と、レンズの外面を形成し、凹部からレンズの内部に入光した光を、光軸方向に向かって全反射させるレンズ外側面と、を有している。レンズは、レンズ外側面が複数の面に分割されて多面体状とされた構成、及び凹部又はレンズの出射面にマイクロレンズ部が設けられた構成のうち、少なくとも一つの構成を有している。複数のレンズのうち一部又は全部のレンズが、光軸方向を回転軸として周方向の向きが異なるように配置されている。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLED素子から発せられる光の配光を制御するレンズアレイであって、
各前記LED素子に対して一対一となるように設けられ、前記LED素子が発する光の配光を制御する複数のレンズを備え、
前記レンズは、入射側の端面に形成され、内部に前記LED素子が配置される凹部と、
前記レンズの外面を形成し、前記凹部から前記レンズの内部に入光した光を、光軸方向に向かって全反射させるレンズ外側面と、を有し、
前記レンズは、前記レンズ外側面が複数の面に分割されて多面体状とされた構成、及び前記凹部又は前記レンズの出射面にマイクロレンズ部が設けられた構成のうち、少なくとも一つの構成を有しており、
複数の前記レンズのうち一部又は全部の前記レンズが、光軸方向を回転軸として周方向の向きが異なるように配置されている、レンズアレイ。
【請求項2】
複数の前記レンズは、光軸方向を回転軸として周方向の向きが異なるように配置された一部の前記レンズを1ブロックとし、該1ブロックを複数並べて配置した構成とされている、請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項3】
複数の前記レンズは、光軸方向を回転軸として周方向の向きが異なるように配置された前記レンズを回転対称として配置された構成である、請求項1に記載のレンズアレイ。
【請求項4】
LED素子を有する表面実装型のLEDパッケージが、基板上に複数実装されたLEDモジュールと、
請求項1~3のいずれか一項に記載のレンズアレイと、を備えた、照明器具。
【請求項5】
前記LEDモジュールから発せられる熱を放熱するヒートシンクをさらに備え、
前記LEDモジュールと前記レンズアレイは、共通の固定部材で前記ヒートシンクに固定されている、請求項4に記載の照明器具。
【請求項6】
前記LEDモジュールと前記レンズアレイの周囲を覆って保護する保護カバーをさらに備えている、請求項4又は5に記載の照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数のLEDモジュールから発せられる光の配光を制御するレンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、天井等に設置され、室内空間などの照明空間に光を照射する照明器具が知られている。例えば工場、倉庫又は体育館などの天井の高い空間に設置される照明器具では、高い位置からでも明るく照らせるように、大光量が必要となる一方で、低消費電力化及び小型軽量化に対する要求が高い。そこで、光学効率(光取り出し効率)の良い照射を行うことができるように、天井の高さに合わせたレンズを用いて、ビームを絞る配光制御などが行われる。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のLEDモジュールに対して、大型化することなく、光学効率のよい配光制御を行うことができるレンズアレイ及び照明器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-133005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたレンズアレイ及び照明器具は、レンズの径を大きくすることなく、効率良く配光を絞ることができる。しかしながら、照明光の色ムラ及び照度ムラの少ない配光制御を行うという点において、レンズアレイの改善の余地がある。
【0006】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、照明光の色ムラ及び照度ムラの少ない配光制御を行うことができる、レンズアレイ及び該レンズアレイを備えた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るレンズアレイは、複数のLED素子から発せられる光の配光を制御するレンズアレイであって、各前記LED素子に対して一対一となるように設けられ、前記LED素子が発する光の配光を制御する複数のレンズを備え、前記レンズは、入射側の端面に形成され、内部に前記LED素子が配置される凹部と、前記レンズの外面を形成し、前記凹部から前記レンズの内部に入光した光を、光軸方向に向かって全反射させるレンズ外側面と、を有し、前記レンズは、前記レンズ外側面が複数の面に分割されて多面体状とされた構成、及び前記凹部又は前記レンズの出射面にマイクロレンズ部が設けられた構成のうち、少なくとも一つの構成を有しており、複数の前記レンズのうち一部又は全部の前記レンズが、光軸方向を回転軸として周方向の向きが異なるように配置されているものである。
【0008】
本開示に係る照明器具は、LED素子を有する表面実装型のLEDパッケージが、基板上に複数実装されたLEDモジュールと、上記レンズアレイと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、複数のレンズのうち一部又は全部のレンズが、光軸方向を回転軸として周方向の向きが異なるように配置されているので、回転方向に光を混ぜ合わせることができ、配光形状を悪化させずに、色ムラ及び照度ムラを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る照明器具を分解して示した斜視図である。
図2】実施の形態に係るレンズアレイを入射側から示した斜視図である。
図3】実施の形態に係るレンズアレイを照射側から示した斜視図である。
図4】実施の形態に係る照明器具の固定部材を示した斜視図である。
図5】実施の形態に係る照明器具であって、固定部材を用いてレンズアレイをヒートシンクに固定させた状態を示した説明図である。
図6】実施の形態に係るレンズアレイのレンズを入射側から見た斜視図である。
図7】実施の形態に係るレンズアレイのレンズを照射側から見た斜視図である。
図8】実施の形態に係るレンズアレイのレンズを入射側から見た平面図である。
図9】実施の形態に係るレンズアレイのレンズを照射側から見た平面図である。
図10】実施の形態に係るレンズアレイの一部分の縦断面図である。
図11】実施の形態に係るレンズアレイのレンズを通過する光の光路を示した光線図である。
図12】実施の形態に係る照明器具の配光曲線を示したグラフである。
図13】実施の形態に係る照明器具100から照射された光のシミュレーション結果を、従来の照明器具から照射された光のシミュレーション結果と比較して示した説明図である。
図14】実施の形態に係る照明器具の照射面イメージのシミュレーション結果を、従来の照明器具の照射面イメージのシミュレーション結果と比較して示した説明図である。
図15】実施の形態におけるレンズの配置例を、従来のレンズの配置例と比較して示した説明図である。
図16】実施の形態に係るレンズの異なる配置例を、従来のレンズの配置例と比較して示した説明図である。
図17】実施の形態に係るレンズアレイのレンズの変形例を示した説明図である。
図18】実施の形態に係るレンズアレイのレンズの変形例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には、同一符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化する。また、各図に記載の構成について、その形状、大きさ、及び配置等は、本開示の範囲内で適宜変更することができる。
【0012】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る照明器具100を分解して示した斜視図である。図1では、上方を天井側とし、下方を照射側とする。図2は、実施の形態に係るレンズアレイ3を入射側から示した斜視図である。図3は、実施の形態に係るレンズアレイ3を照射側から示した斜視図である。図4は、実施の形態に係る照明器具100の固定部材7を示した斜視図である。図5は、実施の形態に係る照明器具100であって、固定部材7を用いてレンズアレイ3をヒートシンク1に固定させた状態を示した説明図である。
【0013】
本実施の形態に係る照明器具100は、例えば工場、倉庫又は体育館などの天井の高い空間に好適に使用されるものであるが、ダウンライト又はシステム天井などに使用してもよい。照明器具100は、図1に示すように、ヒートシンク1と、LEDモジュール2と、レンズアレイ3と、保護カバー6と、を備えている。照明器具100は、天井側である上側から照射空間側である下側へ向かって、ヒートシンク1、LEDモジュール2、レンズアレイ3、保護カバー6の順に配設されている。
【0014】
(ヒートシンク1)
ヒートシンク1は、図1に示すように、平板状のベース部10と、ベース部10の上面から立ち上がる複数枚の放熱フィン11と、を有している。ヒートシンク1は、例えばアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属を鋳造用金型に押し込んで成形される。ベース部10の下面には、熱伝導シート5を介してLEDモジュール2が取り付けられる。熱伝導シート5は、ヒートシンク1のベース部10とLEDモジュール2の基板20との間の隙間を埋めて、ヒートシンク1への熱伝導を高めるために設けられている。
【0015】
ベース部10には、LEDモジュール2及び保護カバー6を取り付けるための接合孔が複数形成されている。また、ベース部10の中央部には、図5に示すように、レンズアレイ3を固定させる固定部材7がネジ込まれるネジ孔10aが形成されている。放熱フィン11は、ベース部10の上面に対して、略垂直な面を有する板状である。ヒートシンク1は、ベース部10の下面に取り付けられたLEDモジュール2から伝わった熱を放熱フィン11から空気中に放出する。
【0016】
(LEDモジュール2)
LEDモジュール2は、図1に示すように、LED(Light Emitting Diode)素子を有する複数のLEDパッケージ21が略円形状の基板20に配置された構成である。LEDパッケージ21は、SMD(Surface Mounted Device)タイプ(表面実装型)である。また、LEDパッケージ21は、白色光を発する。LEDモジュール2は、LEDパッケージ21が配置された発光面が照射方向に向いている。
【0017】
基板20の中央部には、レンズアレイ3をヒートシンク1に固定させる固定部材7の軸部を通すための貫通孔20aが形成されている。また、図示は省略するが、基板20には、ヒートシンク1のベース部10にLEDモジュール2を接合させる接合部材を通すための接合孔が形成されている。接合部材は、例えばネジ等である。LEDモジュール2は、熱伝導シート5を介して基板20をヒートシンク1のベース部10の下面に当接させ、接合孔に通した接合部材を、ヒートシンク1のベース部10に形成された接合孔にねじ込むことでベース部10に固定される。なお、熱伝導シート5には、接合部材の軸部を通すための貫通孔が形成されている。
【0018】
なお、LEDの一般的な特性として、LEDパッケージ21に流れる電流またはLED素子の温度が低くなると、LEDパッケージ21自体の発光効率(1m/W)が高くなる。所要の光量を得るのに、多くのLEDパッケージ21を実装した方が、一粒のLEDパッケージ21あたりに流れる電流を減らすことができ、かつ、熱の集中を抑えることができる。したがって、大型のLEDパッケージ21に大電流を流して発光させるよりも、小粒なLEDパッケージ21を数多く基板上に実装した方が、同等の発光量(光束)を得ながら、発光効率(1m/W)を高くすることができる。
【0019】
(レンズアレイ3)
レンズアレイ3は、図1に示すように、LEDパッケージ21から発せられた光を配光制御するものである。レンズアレイ3は、樹脂又はガラスなどの光透過性を有する材料で形成されるが、内部に拡散材料が混ざっている材料で形成してもよい。
【0020】
レンズアレイ3は、平面視においてLEDモジュール2の基板20と略同じ大きさである。レンズアレイ3は、図2に示すように、LEDモジュール2側に向かって突出した複数のレンズ4を有している。レンズアレイ3は、複数のレンズ4の周囲を囲う外周部分が枠部30とされている。レンズアレイ3は、複数のレンズ4と枠部30とが一体成形されたものである。レンズアレイ3は、LEDモジュール2の発光面を覆うように配置され、LEDモジュール2及び熱伝導シート5を間に挟んでヒートシンク1に固定される。
【0021】
レンズ4は、各LEDパッケージ21に対して一対一となるように、各LEDパッケージ21に対応させて設けられ、LEDパッケージ21から照射される光が目標の方向へ進むように光の配光を制御するものである。各LEDパッケージ21から発せられる全方位の光を、対応するレンズ4により配光制御することで、光学効率(光取り出し効率)をよくすることができる。なお、レンズ4の詳細な構造及び配光については、後述する。
【0022】
なお、レンズ4とLEDパッケージ21とは、個数が一致していなくてもよい。つまり、レンズ4は、対向して存在するLEDパッケージ21と一対一の関係であればよく、LEDパッケージ21が未実装となるレンズ4が存在してもよい。
【0023】
枠部30には、図2に示すように、LEDモジュール2に向かって突き出すボス部31が設けられている。ボス部31は、枠部30と一体成形される。ボス部31は、枠部30の周方向に沿って一定の間隔をあけて8個設けられている。ボス部31は、LEDモジュール2に向かって反るレンズアレイ3の反りを抑制するために設けられている。ボス部31は、レンズアレイ3がLEDモジュール2に向かって反ろうとすると、LEDモジュール2の基板20に突き当たって、当該反りを抑制する。また、ボス部31がLEDモジュール2の基板20に突き当たることで、レンズアレイ3の位置ずれを抑制することもできる。なお、ボス部31の個数は、図示した8個に限定されず、レンズアレイ3の大きさ及び形状に応じて適宜変更して設けるものとする。
【0024】
また、図2及び図3に示すように、レンズアレイ3の中心部には、図4に示す固定部材7を通すための固定部32が形成されている。固定部32は、LEDモジュール2に向かって突き出す円筒状とされている。図5に示すように、固定部32は、照射側に形成された第1孔部32aと、LEDモジュール側に形成された第2孔部32bと、を有している。第2孔部32bは、第1孔部32aよりも大径とされ、第1孔部32aとの間に段差部32cが形成されている。
【0025】
固定部材7は、図4及び図5に示すように、一例としてネジである。固定部材7の軸部は、ネジ頭部70から軸方向に延びる第1軸部71と、第1軸部71の先端面から軸方向に延びる第2軸部72と、を有している。第1軸部71及び第2軸部72は、円柱体形状である。第1軸部71は、第2軸部72よりも大径とされている。また、第1軸部71は、第2孔部32bの長さよりも長く形成されている。なお、図示することは省略したが、第2軸部72の外面には、螺旋状のネジ溝が形成されている。固定部材7は、照射側からレンズアレイ3の固定部32へ軸部が挿入され、LEDモジュール2の基板20の貫通孔20a及び熱伝導シート5に形成された貫通孔に軸部が通され、ヒートシンク1のベース部10に形成されたネジ孔10aに第2軸部72がねじ込まれる。このとき、図5に示すように、ネジ頭部70は、第1孔部32aと第2孔部32bとの間の段差部32cに突き当たり、第1孔部32aに収まる。また、第1軸部71は、固定部32の第2孔部32bに収まる。なお、本実施の形態では、第1軸部71が第2孔部32bの長さよりも長いので、固定部材7を締め付けた際に、第1軸部71の端面をLEDモジュール2の基板20に突き当てることができ、締結力によって樹脂製の固定部32が基板20に強く接触して潰れる事態を防止することができる。このように、固定部32に挿入した固定部材7によって、レンズアレイ3及びLEDモジュール2が共締めされた状態で、レンズアレイ3がヒートシンク1のベース部10に固定される。
【0026】
(保護カバー6)
保護カバー6は、図1に示すように、LEDモジュール2及びレンズアレイ3の周囲を覆って保護するものである。保護カバー6は、LEDモジュール2が発した光を透過させる透明のカバーである。保護カバー6は、凹状であり、上面の開口縁に沿って外方へ突き出すフランジ部60が形成されている。保護カバー6は、凹内部にLEDモジュール2及びレンズアレイ3を収容した状態で、フランジ部60の上面をヒートシンク1のベース部10に当てがい、フランジ部60に形成された貫通孔に通したネジ等の接合部材によってヒートシンク1のベース部10に取り付けられる。照明器具100は、例えば体育館で遊んでいる子供が投げたボールが衝突するなど、外部からの衝撃を受けても、保護カバー6によってLEDモジュール2及びレンズアレイ3が保護されているので、例えば不点灯になるなどの不具合を防止できる。
【0027】
次に、本実施の形態に係るレンズアレイ3の構造及び配光を、図6図13に基づいて詳細に説明する。図6は、実施の形態に係るレンズアレイ3のレンズ4を入射側から見た斜視図である。図7は、実施の形態に係るレンズアレイ3のレンズ4を照射側から見た斜視図である。図8は、実施の形態に係るレンズアレイ3のレンズ4を入射側から見た平面図である。図9は、実施の形態に係るレンズアレイ3のレンズ4を照射側から見た平面図である。図10は、実施の形態に係るレンズアレイ3の一部分の縦断面図である。図11は、実施の形態に係るレンズアレイ3のレンズ4を通過する光の光路を示した光線図である。図12は、実施の形態に係る照明器具100の配光曲線を示したグラフである。図12の横軸は光軸方向Pを0°としたときの出射方向の角度を示し、縦軸は光度[cd]を示している。
【0028】
また、図13は、実施の形態に係る照明器具100から照射された光のシミュレーション結果を、従来の照明器具から照射された光のシミュレーション結果と比較して示した説明図である。図13(a)は、従来の照明器具から照射された光のシミュレーション結果である。図13(b)は、実施の形態に係る照明器具100から照射された光のシミュレーション結果である。図14は、実施の形態に係る照明器具100の照射面イメージのシミュレーション結果を、従来の照明器具の照射面イメージのシミュレーション結果と比較して示した説明図である。図14(a)は、従来の照明器具の照射面イメージのシミュレーション結果である。図14(b)は、実施の形態に係る照明器具100の照射面イメージのシミュレーション結果である。図15は、実施の形態におけるレンズ4の配置例を、従来のレンズの配置例と比較して示した説明図である。図15(a)は、従来のレンズの配置例である。図15(b)は、実施の形態におけるレンズ4の配置例である。
【0029】
レンズ4は、図6図10に示すように、円錐台形状である。レンズ4は、入射側の端面に第1凹部41が形成され、照射側の端面に第2凹部42が形成されている。第1凹部41と第2凹部42との間には、平板状のレンズ中央部43(図10を参照)が設けられている。レンズ中央部43は、上面が第1凹部41の溝底面を形成し、下面が第2凹部42の溝底面を形成する。
【0030】
図10に示すように、LEDモジュール2とレンズアレイ3とを組み合わせた状態で、レンズ4の第1凹部41の内部に、LEDパッケージ21の発光部分が配置される。LEDパッケージ21から照射された光は、第1凹部41の溝側面41a及び溝底面からレンズ4の内部に入光する。LEDパッケージ21の発光部分となる凸状部分を第1凹部41の溝側面41aで囲むことで、LEDパッケージ21から照射され、半球方向に広がる光を、第1凹部41の溝側面41aに効率よく取り込むことができる。
【0031】
第1凹部41の溝側面41aは、図10に示すように、開口面から底面に向かって緩やかなS字カーブ形状とされ、開口面から溝底面に向かって孔径が小さくなるように形成されている。これにより、溝側面41aから入光する光の量を増やしつつ、第1凹部41の溝側面41aと、第1凹部41の内部に配置されたLEDパッケージ21の発光部分との間に、十分なスペースを設けることができ、LEDパッケージ21をレンズ4に干渉しないように配置することができる。なお、第1凹部41の溝側面41aは、図示したS字カーブ形状に限定されず、例えば直線状の傾斜面としてもよいし、角度の異なる二つの傾斜面としてもよいし、その他形状でもよい。
【0032】
また、第1凹部41の溝底面は、平面状とされている。第1凹部41の溝底面には、マイクロレンズ部44が設けられている。マイクロレンズ部44は、六角形状(ハニカム状)のマイクロレンズの集合体である。マイクロレンズ部44を設けることで、レンズ中央部43に入射する光を適度に拡散(指向性を持った拡散)させることができ、凸部45の外側面45aから照射される色ムラを抑制することができる。なお、マイクロレンズ部44は、図示した六角形状(ハニカム状)に限定されず、例えば丸形状のマイクロレンズの集合体でもよいし、その他の形状でもよい。
【0033】
また、レンズ4は、図6図10に示すように、円錐台の外面を形成するレンズ外側面40が、上底部分と下底部分との間で緩やかな弧を描くように形成されている。このレンズ外側面40は、複数の面に分割された多面体状とされ、第1凹部41の溝側面41aからレンズ4の内部に入光した光を、光軸方向Pに向かって全反射させる構成とされている。
【0034】
なお、図示したレンズ4は、多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44を有する構成を示したが、これらのうち少なくとも一方を有していればよい。例えば、レンズ4は、マイクロレンズ部44を有する構成であれば、レンズ外側面40を多面体状ではなく1つの湾曲面とした構成としてもよい。また、図示したレンズ4は、多面体状のレンズ外側面40を有する構成であれば、マイクロレンズ部44を省略してもよい。
【0035】
第2凹部42の溝側面は、開口面から中間部にかけて形成された内方に凹む湾曲面部42aと、湾曲面部42aの端部から溝底まで形成された平面状の傾斜面部42bと、を有している。湾曲面部42aと傾斜面部42bとは連続して形成されている。第2凹部42は、開口面から底面に向かって孔径が小さくなるように形成されている。なお、中間部とは、照明器具100の垂直方向において、第2凹部42における開口面と溝底面との間の略中央部分である。
【0036】
第2凹部42の溝底面には、照射側に向かって突き出す凸部45が設けられている。凸部45は、照射側に向かって窄まる円錐台の形状である。凸部45は、円錐台の外側面45aが、複数の面に分割された多面体状とされている。凸部45の外径は、マイクロレンズ部44が設置される第1凹部41の溝底面の内径よりも大きい。このように、凸部45を設けることで、図11に示すように、第1凹部41の溝底面(マイクロレンズ部44)に入光した光は、凸部45の外側面45aにて内向きに屈折され、レンズ4に再入射することなく、第2凹部42から照射空間に出射されるため、効率良く(光の取り出し効率が良く)配光を絞ることができる。
【0037】
次に、実施の形態に係るレンズアレイ3のレンズ4を通過する光の光路を、図11に基づいて説明する。本実施の形態に係る照明器具100は、図11に示すように、LEDパッケージ21から出射された光のうち、第1凹部41の溝側面41aからレンズ4の内部に入光した光は、多面体状のレンズ外側面40により、光軸方向Pに向かって全反射され、第2凹部42の湾曲面部42aを通過して照射空間に照射される。このように、第1凹部41の溝側面41aからレンズ4の内部に入光した光をレンズ外側面40で全反射させることで、小径かつ効率よく配光を絞ることができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る照明器具100では、図11に示すように、LEDパッケージ21から出射された光のうち、第1凹部41の溝底面(マイクロレンズ部44)を通過した光は、第2凹部42の溝底面から凸部45を通過して照射空間に出射される。凸部45を通過する光のうち、凸部45の外側面45aを通過する光は、光軸方向Pに向かって屈折し、レンズ4に再入射することなく、第2凹部42から照射空間に出射される。つまり、照明器具100では、凸部45に多面体状の外側面45aを設けることで、配光を絞ることができ、かつ、レンズ4への再入射が無くなることで、光学効率が向上する。一方、凸部45を通過する光のうち、凸部45の先端面を通過する光は、屈折することなく、照射空間に出射される。
【0039】
また、図12では、本実施の形態におけるレンズ4を使用した場合の配光と、当該レンズ4を使用せずにLEDモジュール2のみとした場合の配光とを比較して示している。図12に示すように、本実施の形態におけるレンズ4を使用した場合には、ビーム角が絞られ、中心光度が上昇しているので、例えば高天井用の照明器具などで効率よく直下照度を得ることができる。
【0040】
ところで、一般的な白色LEDパッケージは、LED素子の青色発光と、これを励起光として蛍光体が発する黄色主体の光との混光で白色光を得ているが、青色光が蛍光体層を通過する距離の違いにより、方向によって青又は黄に偏った光色となる傾向がある。この白色LEDの光の制御をレンズなどで行った場合、方向による光源の色の偏りがより強調されて、照射面の色ムラとして現れることがある。
【0041】
この対策として、従来は、レンズの入射面又は出射面を、粗面化して拡散性を与えることが行われてきた。しかし、レンズの入射面又は出射面を大きく荒らすほどムラが軽減されるが、配光形状及び光学効率が悪化する傾向がある。そこで、本実施の形態に係る照明器具100では、複数の面に分割されて多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44を有する構成とし、配光形状と光学効率の悪化を抑えながら、適度に光を混合して色ムラを抑制する工夫を行っている。図13は、その効果を示す照射面イメージ(シミュレーション結果)である。図13(a)は、従来の照明器具から照射された光を示した説明図である。図13(b)は、本実施の形態に係る照明器具100から照射された光を示した説明図である。本実施の形態に係る照明器具100では、図13(b)に示すように、色ムラ抑制と同時に、混合手段が無い場合に見られたLEDチップイメージの投影が緩和され、自然な円形の照射イメージとなっていることがわかる。
【0042】
ただし、多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44を粗くするほど光の混合具合が大きくなるが、照明器具100から近い位置の壁に光を照射した場合、図14(a)に示すように、多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44の形状の粗がムラとなって壁に現れることがある。上記したように、レンズの入射面又は出射面を薄く粗面化することで、このムラを改善することもできるが、光学効率と配光を大きく悪化させてしまう。
【0043】
そこで、本実施の形態に係るレンズアレイ3では、すべてのレンズ4が、光軸方向Pを回転軸として周方向の向きが異なるように配置することとしている。例えば、図15に示すように、レンズ外側面40に形成された多面体が、光軸方向Pを中心として周方向に8つに分割された構成である場合、分割された一つの面の傾斜度が45度であるので、各レンズ4を45度よりも小さい回転角で回転させる。例えば、9個のレンズ4が配置された場合、それぞれ回転角を、0度、5度、10度、・・・・40度と、5度ずつ異なるようにする。この場合、回転角45度は、回転角0度と同じである。
【0044】
図14(b)に示すように、光軸方向Pを回転軸として周方向の向きが異なるようにレンズ4を配置したレンズアレイ3では、ムラがなくなっていることが分かる。これは、レンズ4の向きを異なる向きとすることで、回転方向に光を混ぜ合わせることができるからである。つまり、本実施の形態に係る照明器具100では、回転方向に光を混ぜ合わせることができるので、多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44の形状の粗が原因で生じる光のムラを抑制でき、効率よく、色ムラ及び照度ムラの少ない配光制御を行うことができる。
【0045】
なお、本実施の形態に係るレンズアレイ3では、複数のレンズ4のうち一部のレンズ4について、光軸方向Pを回転軸として周方向の向きが異なるように配置してもよい。この場合であっても、光の拡散性(指向性を持った適度な拡散)を得ることができるので、多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44の形状の粗が原因で生じる光のムラを抑制できる。
【0046】
また、本実施の形態に係るレンズアレイ3では、図15(b)に示すように、光軸方向Pを回転軸として周方向の向きが異なるように配置された9個のレンズ4を1ブロックとし、該1ブロックを複数並べて配置した構成でもよい。なお、1ブロックのレンズ4の個数は、図示した9個に限定されず、その他の個数でもよい。この場合であっても、光の拡散性(指向性を持った適度な拡散)を得ることができるので、多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44の形状の粗が原因で生じる光のムラを抑制でき、照明光の色ムラ及び照度ムラの少ない配光制御を行うことができる。
【0047】
また、図16は、実施の形態に係るレンズ4の異なる配置例を、従来のレンズの配置例と比較して示した説明図である。図16(a)は、従来のレンズの配置例である。図16(b)は、実施の形態に係るレンズ4の異なる配置例である。図16(b)に示したレンズアレイ3は、複数のレンズ4のうち、光軸方向Pを回転軸として周方向の向きが異なるように配置されたレンズ4を回転対称に配置した構成である。この場合であっても、光の拡散性を得ることができるので、多面体状のレンズ外側面40及びマイクロレンズ部44の形状の粗が原因で生じる光のムラを抑制でき、照明光の色ムラ及び照度ムラの少ない配光制御を行うことができる。
【0048】
図17及び図18は、実施の形態に係るレンズアレイ3のレンズ4の変形例を示した説明図である。(a)はレンズ4を入射側から見た斜視図、(b)はレンズ4を照射側から見た斜視図、(c)はレンズ4の縦断面図である。図17及び図18に示すように、マイクロレンズ部44と凸部45は、位置を入れ替えてもよい。図17に示したレンズ4は、図6図10においてマイクロレンズ部44を設けた部分に凸部45を形成し、図6図10において凸部45を設けた部分にマイクロレンズ部44を設けた構成である。また、図18に示したレンズ4は、レンズ4の出射面にマイクロレンズ部44を設けた構成である。具体的には、第2凹部42の開口面を平面で塞ぎ、出射面となる当該平面に、マイクロレンズ部44を設けた構成である。
【0049】
以上、実施の形態に基づいてレンズアレイ3及び該レンズアレイ3を備えた照明器具100を説明したが、レンズアレイ3及び該レンズアレイ3を備えた照明器具100は上述した実施の形態の構成に限定されるものではない。上記したレンズアレイ3及び該レンズアレイ3を備えた照明器具100の構成は、一例であって、他の構成要素を含んでもよい。要するに、レンズアレイ3及び該レンズアレイ3を備えた照明器具100は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更及び応用のバリエーションの範囲を含むものである。
【符号の説明】
【0050】
1 ヒートシンク、2 LEDモジュール、3 レンズアレイ、4 レンズ、5 熱伝導シート、6 保護カバー、7 固定部材、10 ベース部、10a ネジ孔、11 放熱フィン、20 基板、20a 貫通孔、21 LEDパッケージ、30 枠部、31 ボス部、32 固定部、32a 第1孔部、32b 第2孔部、32c 段差部、40 レンズ外側面、41 第1凹部、41a 溝側面、42 第2凹部、42a 湾曲面部、42b 傾斜面部、43 レンズ中央部、44 マイクロレンズ部、45 凸部、45a 外側面、60 フランジ部、70 ネジ頭部、71 第1軸部、72 第2軸部、100 照明器具、P 光軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18