(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046506
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】炉蓋
(51)【国際特許分類】
C10B 25/06 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
C10B25/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155131
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】二井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】川戸 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】若松 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】鋤崎 敏彦
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012BA01
4H012BA07
(57)【要約】
【課題】本開示は、シールプレートの変形を抑制可能なコークス炉の炉蓋を提供することを目的の一つとしている。
【解決手段】ある態様の炉蓋10は、コークス炉100の窯口84を閉塞可能な炉蓋であって、窯口84の炉枠82に当接するためのナイフエッジ部12が設けられるシールプレート1と、シールプレート1の炉外側に重ねて配置されるスライドプレート2と、を備える。スライドプレート2は、スライドプレート本体21と、当該スライドプレート本体21から厚み方向に突出して窯口84の短手方向に延びる横リブ22と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の窯口を閉塞可能な炉蓋であって、
前記窯口の炉枠に当接するためのナイフエッジ部が設けられるシールプレートと、
前記シールプレートの炉外側に重ねて配置されるスライドプレートと、
を備え、
前記スライドプレートは、スライドプレート本体と、当該スライドプレート本体から厚み方向に突出して前記窯口の短手方向に延びる横リブと、を有する、炉蓋。
【請求項2】
前記スライドプレート本体には、前記シールプレートを前記スライドプレートに当接させるためのボルトを通す複数のボルト孔が、前記窯口の長手方向に所定の間隔で設けられ、
前記長手方向位置において、前記横リブは、前記複数のボルト孔と重ならない位置に配置される、請求項1に記載の炉蓋。
【請求項3】
前記スライドプレートは、前記スライドプレート本体から厚み方向に突出して前記長手方向に延びる縦リブを有し、前記縦リブは前記横リブの横方向外側に配置される、請求項1または2に記載の炉蓋。
【請求項4】
前記横リブは、前記縦リブに連続している、請求項3に記載の炉蓋。
【請求項5】
前記スライドプレート本体には、前記スライドプレートの炉外側に重ねて設けられる炉蓋フレームに対してスライド可能な複数のスライド部材が設けられ、
前記横リブは、前記複数のスライド部材のうち前記窯口の短手方向に離れて配置される2つのスライド部材の間に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の炉蓋。
【請求項6】
前記横リブは、前記2つのスライド部材に連続している、請求項5に記載の炉蓋。
【請求項7】
前記横リブの前記スライドプレート本体からの突出寸法は、前記スライドプレート本体の厚さ寸法以上であり、前記スライド部材の前記スライドプレート本体からの突出寸法以下である、請求項5または6に記載の炉蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉用の炉蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の窯口を開閉する炉蓋が知られている。特許文献1には、炉蓋フレームの炉内側に炉口気密重合部材が設けられたコークス炉蓋が記載されている。この炉口気密重合部材は、コークス炭化炉の出入口近傍の炉壁周面に当接するフランジ部材が周設された耐熱金属製シールプレートと、シールプレートの炉内側に設けられた金属製炉内プレートと、シールプレートの炉外側に設けられ、炉蓋フレームに対して摺動可能な金属製スライドプレートを有する。これらの炉内プレート、シールプレートおよびスライドプレートは、複数のボルトによって一体化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、炉蓋について以下の認識を得た。コークス炉の炉蓋のシール性能を確保するために、炉体側の炉枠面と、炉蓋側のシールプレートのナイフエッジ部との密着度を得ることが重要となる。しかし、コークス炉の炉内温度は1000℃以上の高温であり、コークス炉に当接する炉蓋には大きな熱負荷が加わる。シールプレートは、この熱負荷による膨張と収縮とを繰り返すことにより変形する。この変形により、シールプレートの密着度が低下してシール性能が不十分になる。
【0005】
特許文献1に記載の炉蓋では、シールプレート、炉内プレートおよびスライドプレートが埋込みボルトで一体化されており、シールプレートの皺等の変形を抑えるために、スライドプレートの幅方向両端から25~100mmの位置に数多くの埋込みボルトが用いられている。つまり、この炉蓋は、埋込みボルトの数を増やすことにより、シールプレートの変形を抑えている。
【0006】
シールプレートは所定の頻度で交換することが望ましく、交換時の作業性を確保するためにはシールプレートを固定するための埋込みボルトの数を少なくすることが望ましい。しかし、特許文献1の炉蓋は、作業性を確保するために埋込みボルトの数を減らすと、シールプレートの変形を所望レベルに抑制できない。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、シールプレートの変形を抑制可能なコークス炉の炉蓋を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の、炉蓋は、コークス炉の窯口を閉塞可能な炉蓋であって、窯口の炉枠に当接するためのナイフエッジ部が設けられるシールプレートと、シールプレートの炉外側に重ねて配置されるスライドプレートと、を備える。スライドプレートは、スライドプレート本体と、当該スライドプレート本体から厚み方向に突出して窯口の短手方向に延びる横リブと、を有する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シールプレートの変形を抑制可能なコークス炉の炉蓋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施形態の炉蓋の概略的な水平断面を示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の炉蓋のスライドプレートを示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図2のスライドプレートのA-A線に沿った水平面で切断した断面図である。
【
図5】
図5は、
図2のスライドプレートのB-B線に沿った水平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0014】
まず、本開示の概要を説明する。コークス炉の炉蓋のシール性能は、炉枠と、炉蓋のシールプレートのナイフエッジ部との密着度が重要となる。しかしながら、コークス炉の炉内は1000℃以上の高温で、これに当接する炉蓋は大きな熱負荷を受ける。そのため、シールプレートは熱膨張により変形し、シール性能を悪化させることとなる。このように、シールプレートは熱変形を起こすため、定期的にシールプレートを交換し、炉蓋のシール性能を維持することが重要である。
【0015】
特許文献1に記載の炉蓋では、シールプレート、炉内プレートおよびスライドプレートを埋込ボルトで一体にする構成であり、埋込ボルトの位置をスライドプレートの横方向両端から25~100mmの範囲とすることで、シールプレートの変形(皺)を抑制させ、シール性能の改善を行っている。しかし、この構成では、埋込ボルトの本数が大幅に増えるため、シールプレートの交換に多大な工数がかかり、メンテナンス性が悪い。また、この構成では、埋込ボルトのボルト孔を通じてガス漏れやタール漏れを生じる可能性が高くなる。
【0016】
シールプレートは、炉内側の炉内プレートと大気側のスライドプレートに挟まれる構造となっている。炉蓋の炉内側は高温にさらされ、大気側は大気冷却されるため、内外面で温度差が大きくなり、各プレートは反りを生じやすい。本発明者は、シールプレートの反り変形を抑制する観点で、スライドプレートの大気側の反り変形を抑制することが有効であるとの知見を得ている。
【0017】
本発明者の検討により、スライドプレートに横方向に延びる横リブを複数設けることによって、スライドプレートの横方向の変形を抑制し、その結果、シールプレートの変形を抑制して炉蓋のシール性能を改善できることが判明している。この構成は、シール性能を維持するための埋込ボルトを設ける必要がない。埋込ボルトの数に応じてボルト孔の数も少なくできるため、ボルト孔を通じたガス漏れやタール漏れの可能性を低くでき、また、良好なメンテナンス性を実現できる。以下、実施形態を参照して本開示の炉蓋を具体的に説明する。
【0018】
[実施形態]
まず、
図1、
図2を参照して、本開示の実施形態に係る炉蓋10の全体構成を説明する。
図1は、炉蓋10の水平断面を示す断面図である。
図2は、スライドプレート2の正面図である。この図では、左側に全体図(a)を示し、右側に縦方向の上部を拡大した拡大図(b)を示す。炉蓋10は、コークス炉100の炭化室7の窯口84を開閉可能な構造体である。説明の便宜上、炉蓋10の正面視における水平な左右方向を横方向と、炉蓋10の正面視における鉛直な上下方向を縦方向と、炉蓋10の正面視における前後方向を厚み方向という。この例では、窯口84の短手方向は横方向に沿った方向であり、窯口84の長手方向は縦方向に沿った方向である。横方向、縦方向および厚み方向は、互いに直交している。また、厚み方向において、外部から炉内に向かう方向を炉内側といい、その逆方向を炉外側という。このような方向の表記は炉蓋10の姿勢を制限するものではなく、炉蓋10は、任意の姿勢で使用されうる。
【0019】
炉蓋10は、耐火煉瓦や不耐火物材料などの耐火材料8を使用して築造されたコークス炉100の窯口84の周縁部に装着された炉枠82を押圧しながら閉塞し、コークス炉100の炭化室7内を気密化する構造体である。この例では、正面視において、炉蓋10または窯口84の長手方向は縦方向であり、短手方向は横方向である。炉蓋10は、炉蓋フレーム5と、スライドプレート2と、シールプレート1と、炉内プレート4と、耐火煉瓦6とを主に含む。
【0020】
炉蓋フレーム5は、鋳造により形成された枠体構造の鋼鉄製フレーム部材である。炉蓋フレーム5は、スライドプレート2の炉外側に略平行に設けられる。炉蓋フレーム5は、縦方向に長尺な窯口84に対応する大きさであって、窯口84を開閉可能に設けられている。炉蓋フレーム5の炉内側には、厚み方向の順に、スライドプレート2、シールプレート1、炉内プレート4および耐火煉瓦6が取り付けられる。スライドプレート2、シールプレート1、炉内プレート4および耐火煉瓦6を総称するときは「炉蓋重合体」ということがある。
【0021】
スライドプレート2は、主面の炉内側に設けられたシールプレート1、炉内プレート4および耐火煉瓦6を支持する鋼鉄製の構造体である。スライドプレート2は、これらの被支持部材の重量にも耐えまた高温度にも湾曲変形する事なく一定の形状が保持されることが望ましい。スライドプレート2は、図示しないピンを介して炉蓋フレーム5に取り付けられ、炉蓋フレーム5に対して縦方向にスライド可能に支持される。スライドプレート2は、主に、縦方向及び横方向に延在する。
【0022】
シールプレート1は、シールプレート本体11と、窯口84の炉枠82に当接するためのナイフエッジ部12とを有する。シールプレート本体11は、縦方向及び横方向に延在する鋼鉄製の板状部材である。ナイフエッジ部12は、炉枠82に当接することによって炉蓋10の外周をシールする。ナイフエッジ部12は、炉枠82に当接するナイフエッジ断面形状(刃形断面形状)を有する部材である。シールプレート本体11は、正面視で、縦方向に長尺な矩形を有し、縦方向でスライドプレート2の上下両側から張り出すとともに、横方向でスライドプレート2の左右両側から張り出す寸法を有する。ナイフエッジ部12は、シールプレート本体11の外周縁に溶接により接合されている。
【0023】
シールプレート1は、スライドプレート2の炉内側に重ねて設けられる。換言すれば、スライドプレート2は、シールプレート1の炉外側に重ねて配置される。シールプレート本体11は、その主面がスライドプレート2の主面に当接して、スライドプレート2に支持される。シールプレート1は、厚み方向にスライドプレート2と炉内プレート4との間に挟持される。
【0024】
炉内プレート4は、耐火煉瓦6の炉外側に貼り付けられる鋼鉄製の板状部材である。炉内プレート4は、シールプレート1の炉内側に重ねて設けられる。炉内プレート4は、その一方の主面がシールプレート1の主面に当接し、他方の主面が耐火煉瓦6に当接する。炉内プレート4は、単一のプレートで構成されてよいし、複数のプレートを積層して構成されてもよい。炉内プレート4は、耐熱性を有するパッキングシートを含んでもよい。パッキングシートは、耐火煉瓦6との当接面、及び/又は耐火煉瓦6との当接面に設けられてもよい。スライドプレート2、シールプレート1、炉内プレート4は、図示しない埋込ボルトにより一体化される。一例として、埋込ボルトは、炉内プレート4を平面視して、締結ボルト62より、横方向内側に取付けられている。
【0025】
耐火煉瓦6は、炉内側に突出する耐熱性構造体で、炉蓋重合体や炉蓋フレーム5を耐熱保護する。耐火煉瓦6は、耐火煉瓦本体61と、厚み方向に延びる複数の締結ボルト62とを含む。締結ボルト62は、一端が耐火煉瓦本体61の炉外側の面に埋め込まれ、他端が炉外側に向かって厚み方向に突出している。締結ボルト62は、耐火煉瓦本体61の炉外側の面に所定の間隔で配置されている。この例では、縦方向に所定の間隔で配置された締結ボルト62のボルト列が、横方向に離れて2列配置されている。
【0026】
締結ボルト62は、炉内プレート4に設けられたボルト孔44と、シールプレート1に設けられたボルト孔14と、スライドプレート2に設けられたボルト孔24とを貫通して、スライドプレート2の炉外側の面に突出する。ボルト孔44、ボルト孔14およびボルト孔24は、複数の締結ボルト62の配置位置に対応する位置において厚み方向に貫通する。締結ボルト62の突出側にナット63が締結されることにより、埋込ボルトにより一体化されたスライドプレート2、シールプレート1および炉内プレート4は、耐火煉瓦本体61に押し付けられ、耐火煉瓦本体61に固定される。
【0027】
図3、
図4、
図5も参照して、スライドプレート2を説明する。
図3は、スライドプレート2の側面図であり、
図2の拡大図(b)に対応する。
図4は、スライドプレート2の
図2のA-A線に沿った水平面で切断した断面図である。
図5は、スライドプレート2の
図2のB-B線に沿った水平面で切断した断面図である。
【0028】
スライドプレート2は、スライドプレート本体21と、横リブ22と、縦リブ23と、スライド部材31とを有する。スライドプレート本体21は、縦方向及び横方向に延在する鋼鉄製の板状部材である。スライドプレート本体21は、正面視で、横方向よりも縦方向に長尺な矩形を有し、炉蓋フレーム5の正面視の外形輪郭と略同じ大きさを有する。スライドプレート本体21の炉内側の主面は、シールプレート1の炉外側に重ねて配置され、シールプレート1に当接する。
【0029】
図2に示すように、スライドプレート本体21の横方向両端部には、シールプレート1をスライドプレート2に当接させるための締結ボルト62を通す複数のボルト孔24が、縦方向に所定の間隔で設けられている。この例では、縦方向に所定の間隔で配置されたボルト孔24のボルト孔列が、横方向に離れて2列配置されている。
図2では、複数のボルト孔24を区別するために、上から順に第1ボルト孔241、第2ボルト孔242、第3ボルト孔243および第4ボルト孔244と表記している。スライドプレート本体21には、埋込ボルトを通す複数の埋込ボルト孔26が縦方向に所定の間隔で設けられている。この例では、縦方向に配置された4つの埋込ボルト孔26の列が、横方向に離れて2列配置されている。埋込ボルト孔26は、ボルト孔24よりも横方向内側に取付けられている。埋込ボルト孔26の数は、ボルト孔24の数よりも少ない。
【0030】
シールプレート1の変形を抑制する観点で、スライドプレート2の変形を抑制することが重要である。そこで、本実施形態のスライドプレート2は、スライドプレート本体21から炉外側に向かって厚み方向に突出して横方向に延びる横リブ22を有する。横リブ22を有することによりスライドプレート2の横剛性が高まり、スライドプレート2の変形を抑制できる。
図2に示すように、スライドプレート本体21には、縦方向に所定の間隔で複数の横リブ22が設けられる。この例の横リブ22は、横方向及び厚み方向に延在する鋼鉄製の帯状部材である。
図2、
図3では、複数の横リブ22を区別するために、上から順に第1横リブ221、第2横リブ222、第3横リブ223および第4横リブ224と表記している。
【0031】
縦方向において、横リブ22がボルト孔24と重複して配置されると、横リブ22が干渉して締結ボルト62を通しにくくなる。そこで、本実施形態のスライドプレート2では、縦方向位置において、横リブ22は、複数のボルト孔24と重ならない位置に配置される。換言すると、縦方向位置において、横リブ22は、互いに隣接する2つのボルト孔24の間の位置に配置される。この配置により横リブ22が締結ボルト62に干渉する可能性が低くなる。
【0032】
図2(b)に示すように、縦方向において、第1横リブ221、第2横リブ222、第3横リブ223および第4横リブ224は、第1ボルト孔241、第2ボルト孔242、第3ボルト孔243および第4ボルト孔244を避け、これらのボルト孔と重ならない位置に配置されている。また、縦方向において、第2横リブ222は、互いに隣接する第1ボルト孔241と第2ボルト孔242の間であって、これらの略中間の位置に配置されている。また、縦方向において、第3横リブ223は、互いに隣接する第2ボルト孔242と第3ボルト孔243の間であって、これらの略中間の位置に配置されている。また、縦方向において、第4横リブ224は、互いに隣接する第3ボルト孔243と第4ボルト孔244の間であって、これらの略中間の位置に配置されている。
図2(a)に示すように、他の横リブ22も同様に配置されている。
【0033】
スライドプレート2の横剛性を高めると、縦剛性とのバランスが変化し、熱応力による歪みが縦方向に集約され、縦方向の反りが大きくなる懸念がある。そこで、本実施形態では、スライドプレート2は、スライドプレート本体21から厚み方向に突出して縦方向に延びる縦リブ23を有し、縦リブ23は、横リブ22の横方向外側に配置される。この配置により横剛性と縦剛性のバランスを改善できる。この例の縦リブ23は、縦方向及び厚み方向に延在する鋼鉄製の帯状部材である。縦リブ23は、単一又は複数の縦リブ体を含んでもよい。
図2(a)の例では、縦リブ23は、横リブ22の左右両側に1条ずつ配置されており、各縦リブ23は、縦方向に配列された複数(この例では3)の第1縦リブ体231、第2縦リブ体232および第3縦リブ体233で構成される。
【0034】
横リブ22は、縦リブ23との間に隙間を空けて離れて配置されてもよいが、
図4の例では、横リブ22は、縦リブ23に連続している。この場合、熱膨張による変形を一層抑制できる。横リブ22は、縦リブ23に溶接等により接合されてもよいし、非接合であってもよい。
図4の例では、第2横リブ222は、横方向に離れて配置される2つの第1縦リブ体231の間において、これらの縦リブ体に溶接により接合されている。
【0035】
図2に示すように、スライドプレート本体21には、スライドプレート2の炉外側に設けられる炉蓋フレーム5に対してスライド可能な複数のスライド部材31が設けられる。
図2(a)の例では、縦方向に所定の間隔で配置されたスライド部材31の部材列が、横方向に離れて2列配置されている。スライド部材31は、スライドプレート本体21の炉外側の主面に溶接等により接合されている。
【0036】
図5の例では、スライド部材31は、縦方向に延びる開口部である開口部312を炉外側に有する角張ったパイプ形状を有する。換言すると、スライド部材31は、角張ったC字状の断面を有する。スライド部材31は、炉蓋フレーム5から炉内側に延びる延伸体52の延伸端に固定されたスライド体51を包囲する。特に、スライド体51は、厚み方向に扁平な略直方体形状を有し、スライド部材31は、スライド体51を収容可能な直方体空間を有する。スライド部材31とスライド体51は、互いに縦方向にスライド可能な隙間を有する。延伸体52は、開口部312を通り、開口部312を縦方向にスライド可能な形状を有する。スライド部材31は、スライド体51をガイドするレールとして機能し、スライド体51は、このレールにガイドされるランナーとして機能する。
【0037】
この例では、延伸体52は、厚み方向に延びる中空円筒形状を有する。連結ボルト53が、炉外側から、炉蓋フレーム5と延伸体52とを厚み方向に貫通してスライド体51に締結される。この構成により、スライド体51は炉蓋フレーム5に支持される。
【0038】
図2、
図5に示すように、横リブ22は、横方向に離れた左右一対のスライド部材31の間に配置されている。横リブ22は、スライド部材31から離れて配置されてもよいが、
図5の例では、横リブ22は、スライド部材31に連続している。この場合、熱膨張による変形を一層抑制できる。横リブ22は、スライド部材31に溶接等により接合されてもよいし、非接合であってもよい。
【0039】
図2、
図5に示すように、縦リブ23は、スライド部材31の横方向外側に配置される。縦リブ23は、スライド部材31との間に隙間を空けて離れて配置されてもよいが、この例では、スライド部材31に連続している。この場合、熱膨張による変形を一層抑制できる。縦リブ23は、スライド部材31に溶接等により接合されてもよいし、非接合であってもよい。
【0040】
横リブ22のスライドプレート本体21からの突出寸法H1が小さすぎると、変形抑制効果が小さくなる。この突出寸法H1が大きすぎると、製造コストが高くなる。そこで、本実施形態では、横リブ22のスライドプレート本体21からの突出寸法H1は、スライド部材31のスライドプレート本体21からの突出寸法H3以下であり、スライドプレート本体21の厚さ寸法H4以上である。この範囲であれば、製造コストを抑制しつつ変形抑制効果を確保できる。一例として、スライドプレート本体21の厚さ寸法H4は16mmであるとき、横リブ22の突出寸法H1は、20mm以上でスライド部材31の突出寸法H3以下に設定できる。
【0041】
縦リブ23のスライドプレート本体21からの突出寸法H2は、横リブ22の突出寸法H1と実質的に同じであってもよい。
【0042】
以上のように構成された本実施形態の炉蓋10の特徴を説明する。炉蓋10は、コークス炉100の窯口84を閉塞可能な炉蓋であって、窯口84の炉枠82に当接するためのナイフエッジ部12が設けられるシールプレート1と、シールプレート1の炉外側に重ねて配置されるスライドプレート2と、を備える。スライドプレート2は、スライドプレート本体21と、当該スライドプレート本体21から厚み方向に突出して窯口84の短手方向に延びる横リブ22と、を有する。
【0043】
この構成によれば、横リブ22を有することによって、スライドプレート2の横方向の変形を抑制し、ひいてはシールプレート1の変形を抑制できる。その結果、埋込ボルトの数を殆ど増やさずにシール性能の改善が可能になるため、良好なメンテナンス性を実現できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容される。また、図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0045】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0046】
(変形例)
実施形態の説明では、スライド部材31がスライド体51をガイドするレールである例を示したが、本発明はこれに限定されない。スライド部材は、スライド体にガイドされるランナーとして構成されてもよい。
【0047】
実施形態の説明では、縦リブ23がスライド部材31の横方向外側に配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。縦リブは、スライド部材の横方向内側に配置されてもよい。
【0048】
実施形態の説明では、横リブ22及び縦リブ23が、帯状である例を示したが、これらは、棒状やパイプ状等の帯状とは異なる別形状であってもよい。
【0049】
実施形態の説明では、縦リブ23は、横リブ22の左右両側に1条ずつ配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。縦リブは、3条以上配置されてもよいし、縦リブ23および横リブ22は、格子状に互いに交差するように配置されてもよい。
【0050】
実施形態の説明では、
図2に示すように、スライドプレート本体21、横リブ22、縦リブ23、スライド部材31およびボルト孔24が、それぞれ左右対称に配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。スライドプレート本体21、横リブ22、縦リブ23、スライド部材31およびボルト孔24のいずれかは左右非対象に配置されてもよい。また、横リブ22は、縦リブ23に対して完全に垂直でなくてもよく、多少の傾きは許容される。
【0051】
上述の各変形例は実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0052】
上述した実施形態の構成要素と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0053】
1 シールプレート、 2 スライドプレート、 4 炉内プレート、 5 炉蓋フレーム、 6 耐火煉瓦、 10 炉蓋、 11 シールプレート本体、 12 ナイフエッジ部、 21 スライドプレート本体、 22 横リブ、 23 縦リブ、 24 ボルト孔、 31 スライド部材、 61 耐火煉瓦本体、 62 締結ボルト、 82 炉枠、 84 窯口、 100 コークス炉。