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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046527
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   C21D 1/64 20060101AFI20230329BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20230329BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
C21D1/64
F27D9/00
C21D1/00 B
C21D1/00 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155159
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 徹
(72)【発明者】
【氏名】中田 綾香
(72)【発明者】
【氏名】幸田 尚久
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮介
【テーマコード(参考)】
4K034
4K063
【Fターム(参考)】
4K034AA02
4K034AA17
4K034FA05
4K034FA06
4K034FB07
4K034FB11
4K034FB15
4K063AA05
4K063BA02
4K063CA03
4K063CA08
4K063EA05
(57)【要約】
【課題】被処理物の冷却のための旋回流を形成できる熱処理装置の全体の構成を短くすることができ、冷却槽で旋回流を形成するための部品を簡素な構造で製作でき、旋回流形成のための部品を装置内で容易に設置することができる、熱処理装置を提供する。
【解決手段】熱処理装置1は、被処理物10が配置される筒状の冷却槽13と、被処理物10に熱処理を施すための冷媒を冷却槽13へ導入する導入管14と、を備える。導入管14は、冷却槽13と接続される側の端部において冷媒の流れの方向を変更するとともに冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れを形成する変換部材21を備える。変換部材21は、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びており、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)を備えている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が配置される筒状の冷却槽と、
前記被処理物に熱処理を施すための冷媒を前記冷却槽へ導入する導入管と、を備え、
前記冷却槽の長手方向と前記導入管の長手方向とが異なる方向で前記冷却槽と前記導入管とが接続される熱処理装置において、
前記導入管は、前記冷却槽と接続される側の端部において前記冷媒の流れの方向を変更するとともに前記冷却槽の周方向に沿って回転する前記冷媒の流れを形成する変換部材を備え、
前記変換部材は、前記導入管の底面側と上面側との間に亘って前記冷却槽の長手方向に沿って延びており、前記冷却槽の長手方向から視た状態で前記冷却槽の内周形状に沿った、湾曲又は屈曲した面を備えている、熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置において、
前記面は、前記冷却槽の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている、熱処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の熱処理装置であって、
前記面は、複数設けられ、
複数の前記面は、前記冷却槽の長手方向から視た状態で螺旋状に並んで配置されている、熱処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱処理装置であって、
前記変換部材は、
前記面として構成され、前記導入管の端部側に向かって凹むように湾曲又は屈曲して配置される第1の面と、
前記面として構成され、前記冷却槽の中心軸方向を介して前記第1の面と対向する位置に配置されるとともに、前記第1の面と反対側に向かって凹むように湾曲又は屈曲して配置される第2の面と、
を備えている、熱処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の熱処理装置であって、
前記変換部材は、前記面として構成され、前記第1の面と前記第2の面との間で前記第2の面と対向する位置に配置されるとともに、前記第2の面と反対側に向かって凹むように湾曲又は屈曲して配置される第3の面、を更に備えている、熱処理装置。
【請求項6】
請求項3又は請求項4に記載の熱処理装置であって、
前記変換部材は、
前記導入管の底面側と上面側との間に亘って前記冷却槽の長手方向に沿って延び、前記第1の面が設けられた第1の部材と、
前記導入管の底面側と上面側との間に亘って前記冷却槽の長手方向に沿って延び、前記第2の面が設けられた第2の部材と、
を備えている、熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物に対して冷媒を供給して熱処理を施す熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被処理物に対して冷媒を供給して熱処理を施す熱処理装置として、筒状の冷却槽に被処理物を配置し、冷却槽に導入した冷媒を冷却槽内で旋回流とすることで、被処理物を均一に冷却することを目的とした熱処理装置が知られている(例えば、特許文献1乃至3を参照)。
【0003】
特許文献1に記載された熱処理装置は、冷却槽としての円筒形状のカバー3の内部に被処理物としての鋼管Wが配置され、カバー3に冷媒を導入することで、鋼管Wの熱処理を行うように構成されている。円筒形状のカバー3の内部においては、鋼管Wを支持する鋼管支持板5が設けられている。鋼管支持板5は、カバー3の内周に密着して取り付けられ、カバー3の内周に沿って螺旋状に延びるように設けられている。特許文献1の熱処理装置は、鋼管支持板5によって、カバー3内に導入した冷媒の流れを、カバー3の内部で鋼管Wの外周面に沿った旋回流とし、鋼管Wを均一に冷却するように構成されている。
【0004】
特許文献2に記載された熱処理装置は、冷却槽としての円筒形のカバーの内部に被処理物としての鋼管1が配置され、円筒形のカバーに冷媒を導入することで、鋼管1の熱処理を行うように構成されている。円筒形のカバーの内部においては、上部整流板4及び下部整流板5が設けられている。上部整流板4及び下部整流板5は、円筒形のカバーの内周に密着して取り付けられ、円筒形のカバーの内周に沿って螺旋状に延びるように設けられている。特許文献2の熱処理装置は、上部整流板4及び下部整流板5によって、円筒形のカバー内に導入した冷媒の流れを、円筒形のカバーの内部で鋼管1の外面で螺旋状に流動する旋回流とし、鋼管1を均一に冷却するように構成されている。
【0005】
特許文献3に記載された熱処理装置は、貯留槽12内に浸漬される旋回流発生部19を有し、旋回流発生部19の内部に被処理物としてのワーク1が配置され、旋回流発生部19内に冷媒を導入することで、ワーク1の熱処理を行うように構成されている。旋回流発生部19は、内部にワーク1が配置される冷却槽としての筒状の壁部21を有しており、筒状の壁部21には、壁部21の内周に沿って螺旋状に延びる螺旋溝22が設けられている。特許文献3の熱処理装置は、螺旋溝22によって、壁部21内に導入した冷媒の流れを、筒状の壁部21の内部でワーク1の周りを流動する旋回流とし、ワーク1を均一に冷却するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-84172号公報
【特許文献2】特開2018-162480号公報
【特許文献3】特開2015-160992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至特許文献3に開示された熱処理装置においては、冷却槽へ冷媒を導入して更に冷却槽内を流動する冷媒の流れを旋回流として形成するに際し、冷却槽の内周に沿って螺旋状に延びる構造体を設ける必要がある。このため、特許文献1乃至特許文献3に開示された熱処理装置では、旋回流の形成のために冷却槽の長手方向に沿って螺旋状に長く延びる構造体を設ける必要があり、冷却槽の長さが長くなり、熱処理装置の全体の構成が長くなってしまうという問題がある。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2に開示された熱処理装置では、旋回流を形成するためには、筒状の冷却槽の内周に沿って螺旋状に延びる板状の3次元に立体的な形状の部品が必要となる。また、特許文献3に開示された熱処理装置では、旋回流を形成するためには、筒状の壁部の内周に沿って螺旋状に延びる溝が設けられた3次元に立体的な形状の部品が必要となる。また、特許文献1及び特許文献2に開示された熱処理装置では、旋回流を形成するための部品は、筒状の冷却槽の内部で冷却槽の内周に沿って螺旋状に延びるとともに冷却槽の内周に密着して取り付けられるようにして設置される。このため、特許文献1及び特許文献2に開示された熱処理装置では、旋回流を形成するために3次元に立体的な螺旋状部品を熱処理装置内へ固定することが容易でないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みることにより、被処理物の冷却のための旋回流を形成できる熱処理装置の全体の構成を短くすることができ、冷却槽で旋回流を形成するための部品を簡素な構造で製作でき、旋回流形成のための部品を装置内で容易に設置することができる、熱処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するために、本発明のある局面に係わる熱処理装置は、被処理物が配置される筒状の冷却槽と、前記被処理物に熱処理を施すための冷媒を前記冷却槽へ導入する導入管と、を備え、前記冷却槽の長手方向と前記導入管の長手方向とが異なる方向で前記冷却槽と前記導入管とが接続される熱処理装置に関する。そして、本発明のある局面に係わる熱処理装置は、前記導入管は、前記冷却槽と接続される側の端部において前記冷媒の流れの方向を変更するとともに前記冷却槽の周方向に沿って回転する前記冷媒の流れを形成する変換部材を備え、前記変換部材は、前記導入管の底面側と上面側との間に亘って前記冷却槽の長手方向に沿って延びており、前記冷却槽の長手方向から視た状態で前記冷却槽の内周形状に沿った、湾曲又は屈曲した面を備えている。
【0011】
この構成によると、導入管に供給された冷媒は、導入管を流動し、導入管における冷却槽が接続される側の端部に配置された変換部材へと到達する。そして、変換部材に到達した冷媒は、導入管の底面側と上面側との間に亘って冷却槽の長手方向に沿って延びる変換部材の面に沿って流動しながら、導入管の長手方向に沿った流れから冷却槽の長手方向に沿った流れへと、流れの方向が変更される。更に、冷媒は、冷却槽の長手方向から視た状態で冷却槽の内周形状に沿った面であって湾曲又は屈曲した面に沿って流動し、冷却槽の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成される。このため、変換部材によって、冷媒の流れ方向が変更されるとともに、冷却槽の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成されるように、冷媒の流れの形態が変換される。変換部材によって流れの形態が変換された冷媒は、冷却槽の周方向に沿って回転するとともに導入管の底面側から上面側へと向かって流れて導入管から冷却槽へと導入される。そして、冷却槽へ導入された冷媒は、冷却槽の周方向に沿って回転しながら冷却槽の長手方向に沿って流動する旋回流を形成しながら冷却槽を流動する。この冷媒の旋回流により、冷却槽中に配置された被処理物が、被処理物の周囲全体から均一に冷却されることになる。
【0012】
よって、上記の構成によると、冷却槽と接続される導入管において、冷却槽の長手方向に沿って延びるとともに、冷却槽の長手方向から視た状態で冷却槽の内周形状に沿った面であって湾曲又は屈曲した面が設けられた変換部材が設置されることで、冷却槽内の被処理物を均一に冷却する旋回流を形成することができる。このため、上記の構成によると、導入管から供給される冷媒を冷却槽へ導入して更に冷却槽内を流動する冷媒の流れを旋回流として形成するに際し、冷却槽の内周に沿って螺旋状に延びるような構造体を設ける必要がない。よって、旋回流の形成のために冷却槽の長手方向に沿って螺旋状に長く延びる構造体を設ける必要がないため、冷却槽を短くでき、熱処理装置の全体の構成を短くすることができる。
【0013】
また、上記の構成によると、変換部材は、湾曲又は屈曲していて冷却槽の長手方向から視た状態で冷却槽の内周形状に沿った面を備えて導入管の底面側と上面側との間に亘って延びる2次元加工で済む面の部品として形成されるため、冷却槽において旋回流を形成するための部品を簡素な構造で製作することができる。
【0014】
また、2次元加工で済む面の部品として形成されるため、旋回流形成のための部品を装置内で容易に固定することができる。
【0015】
したがって、上記の構成によると、被処理物の冷却のための旋回流を形成できる熱処理装置の全体の構成を短くすることができ、冷却槽で旋回流を形成するための部品を簡素な構造で製作でき、旋回流形成のための部品を装置内で容易に固定することができる、熱処理装置を提供することができる。
【0016】
(2)前記面は、前記冷却槽の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている場合がある。
【0017】
この構成によると、導入管を流動して変換部材に到達した冷媒は、冷却槽の長手方向から視た状態で螺旋状に配置された面に沿って回転するように流動する。このため、変換部材の面によって、回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0018】
(3)前記面は、複数設けられ、複数の前記面は、前記冷却槽の長手方向から視た状態で螺旋状に並んで配置されている場合がある。
【0019】
この構成によると、導入管を流動して変換部材に到達した冷媒は、冷却槽の長手方向から視た状態で螺旋状に並んで配置された複数の面に沿って回転するように流動する。このため、変換部材の複数の面によって、回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0020】
(4)前記変換部材は、前記面として構成され、前記導入管の端部側に向かって凹むように湾曲又は屈曲して配置される第1の面と、前記面として構成され、前記冷却槽の中心軸方向を介して前記第1の面と対向する位置に配置されるとともに、前記第1の面と反対側に向かって凹むように湾曲又は屈曲して配置される第2の面と、を備えている場合がある。
【0021】
この構成によると、導入管を流動して変換部材に到達した冷媒は、変換部材の第1の面に沿って回転するように流動し、次いで、第2の面にも沿って回転するように流動する。このため、第1の面と第2の面とによって、回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0022】
(5)前記変換部材は、前記面として構成され、前記第1の面と前記第2の面との間で前記第2の面と対向する位置に配置されるとともに、前記第2の面と反対側に向かって凹むように湾曲又は屈曲して配置される第3の面、を更に備えている場合がある。
【0023】
この構成によると、導入管を流動して変換部材に到達した冷媒は、変換部材の第1の面に沿って回転するように流動し、次いで、第2の面にも沿って回転するように流動し、その後更に第3の面にも沿って回転するように流動する。このため、第1の面、第2の面、及び第3の面によって、より安定した回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0024】
(6)前記変換部材は、前記導入管の底面側と上面側との間に亘って前記冷却槽の長手方向に沿って延び、前記第1の面が設けられた第1の部材と、前記導入管の底面側と上面側との間に亘って前記冷却槽の長手方向に沿って延び、前記第2の面が設けられた第2の部材と、を備えている場合がある。
【0025】
変換部材を一体もので作製すると、導入管と冷却槽との間の開口よりも変換部材の大きさが大きい場合には、導入管と冷却槽との間の開口から変換部材を挿入して組み付けることが困難となる。しかし、この構成によると、変換部材を第1の部材と第2の部材とに分割して設けることで、導入管と冷却槽との間の開口から変換部材を挿入して組み付けることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、被処理物の冷却のための旋回流を形成できる熱処理装置の全体の構成を短くすることができ、冷却槽で旋回流を形成するための部品を簡素な構造で製作でき、旋回流形成のための部品を装置内で容易に固定することができる、熱処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施の形態に係る熱処理装置を模式的に示す図である。
図2】熱処理装置の冷却槽と導入管とを示す斜視図である。
図3】冷却槽及び導入管を正面側から見た断面図である。
図4】冷却槽及び導入管の平面図であって、冷却槽について断面で示す図である。
図5図2に示す冷却槽及び導入管の一部を拡大して示す斜視図である。
図6図4に示す冷却槽及び導入管の一部を拡大して示す平面図である。
図7】導入管における変換部材を示す斜視図である。
図8】導入管における変換部材を示す平面図である。
図9】比較例における冷媒の流れの流線を解析した結果を示す図である。
図10】実施例における冷媒の流れの流線を解析した結果を示す図である。
図11】比較例における冷却槽内での冷媒の流速分布を解析した結果を示す図である。
図12】実施例における冷却槽内での冷媒の流速分布を解析した結果を示す図である。
図13図13(A)は、第1の変形例に係る変換部材を示す斜視図であり、図13(B)は、第1の変形例の変換部材を示す平面図である。
図14図14(A)及び図14(B)は、第1の変形例の変換部材を備える導入管及び冷却槽の組み立て形態について説明する斜視図である。
図15図15(A)は、第2の変形例に係る変換部材を示す平面図である。図15(B)は、第3の変形例に係る変換部材を示す平面図である。図15(C)は、第4の変形例に係る変換部材を示す平面図である。
図16】第5の変形例に係る変換部材を示す平面図である。
図17】第6の変形例に係る変換部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。
【0029】
[熱処理装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施の形態に係る熱処理装置を模式的に示す図である。図1を参照して、熱処理装置1は、被処理物10に対して熱処理を施すための装置として構成されている。より具体的には、熱処理装置1は、加熱槽12にて被処理物10を加熱し、加熱した被処理物10を冷却槽13に搬送し、冷却槽13において被処理物10に対して冷媒を供給して熱処理を施す装置として構成されている。
【0030】
熱処理装置1の加熱槽12での加熱処理としては、例えば、焼鈍処理、焼き戻し処理、浸炭処理などを例示することができる。また、熱処理装置1の冷却槽13での冷却処理としての熱処理としては、焼入処理などを例示することができる。本実施形態では、焼入処理を例にとって説明する。また、本実施形態では、冷却槽13にて被処理物10に熱処理を施すために用いられる冷媒としては、例えば、ポリマー水溶液が用いられる。尚、冷却槽13での熱処理に用いられる冷媒は、ポリマー水溶液に限らず、被処理物10を冷却可能な流体であればよい。例えば、冷媒として、冷却水、或いは焼入油などが用いられてもよい。
【0031】
本実施形態では、熱処理装置1の冷却槽13にて熱処理が施される被処理物10は、鋼等の金属部品であり、例えば、筒状に延びる中空の軸状の部品である。筒状に延びる中空の軸状の部品としての被処理物10としては、例えば、円筒状の鋼管、長手方向に沿って断面積がテーパ状に減少する中空の軸状の部品、長手方向に沿って段階的に段状に断面積が減少する中空の軸状の部品、多角形状等の円形以外の断面形状を有する筒状の部品を例示することができる。
【0032】
また、熱処理装置1において熱処理される被処理物としては、中空の軸状の部品に限らず、円形断面の中実の軸状の部品、歯車又は軸受けなどの長さが短い部品も例示することができる。尚、長さが短い歯車又は軸受け等に対して熱処理が施される場合は、歯車又は軸受け等が軸方向に複数重ねられた状態で熱処理されてもよい。また、被処理物10の材料としては、実用上、焼入処理を必要とする材料を例示することができる。このような材料として、SCM材(クロムモリブデン鋼鋼材)、SCr材(クロム鋼鋼材)、SNCM材(ニッケルクロムモリブデン鋼鋼材)、SUJ(高炭素クロム軸受鋼鋼材)等を例示することができる。
【0033】
熱処理装置1は、後述するように、加熱槽12での加熱後の被処理物10を冷却槽13で冷却して熱処理する際に、冷却槽13内での冷媒の流れを旋回流とすることで、被処理物10の周囲に形成される旋回流によって被処理物10を均一に冷却するように構成されている。
【0034】
熱処理装置1は、搬送装置11、加熱槽12、冷却槽13、導入管14、冷媒タンク15、ポンプ16、ドレン通路17、等を備えて構成されている。
【0035】
搬送装置11は、被処理物10を吊下げた状態で支持するとともに、支持した被処理物10を加熱槽12と冷却槽13とに対して搬送する装置として構成されている。搬送装置11は、例えば、加熱槽12、冷却槽13、ドレン通路17及び冷媒タンク15の上方に設置された本体部11aと、本体部11aに支持される水平移動部11bと、水平移動部11bに支持される上下移動部11cとを備えている。
【0036】
水平移動部11bは、本体部11aによって駆動されて水平方向に沿って移動するように構成されている。図1では、水平移動部11bの移動方向について両端矢印A1で示している。上下移動部11cは、被処理物10を吊下げた状態で支持するとともに、水平移動部11bによって駆動されて上下方向に沿って移動するように構成されている。尚、図1では、上下移動部11cの移動方向について両端矢印A2で示している。また、上下移動部11cは、被処理物10を吊下げた状態で支持する支持軸11dと、支持軸11dの下端部に設けられて被処理物10を受ける受け部11eとを有している。支持軸11dは、上下方向に延びた状態で水平移動部11bによって上下方向に移動自在に支持されている。更に、支持軸11dは、中空の軸状の部品としての被処理物10を上下方向に貫通した状態で被処理物10を吊下げ支持するように構成されている。また、受け部11eは、支持軸11dの下端部に設けられた円盤状の部材として設けられ、支持軸11dが貫通した被処物10の下端部を下方から受けるように構成されている。
【0037】
搬送装置11は、被処理物10を上下移動部11cで吊下げて支持した状態で、上下移動部11cを水平移動部11bによって駆動して下方に移動させ、被処理物10を加熱槽12内に上方から挿入して配置する。加熱槽12内に配置された被処理物10に対して、加熱槽12内での加熱処理が行われる。加熱槽12での加熱処理後、搬送装置11は、上下移動部11cを水平移動部11bによって駆動して上方に移動させ、加熱槽12から被処理物10を引き上げる。そして、搬送装置11は、水平移動部11bを本体部11aによって駆動し、被処理物10を支持した上下移動部11cが冷却槽13の上方に位置するまで、水平移動部11bを水平方向に移動させる。次いで、搬送装置11は、上下移動部11cを水平移動部11bによって駆動して下方に移動させ、被処理物10を冷却槽13内に上方から挿入して配置する。冷却槽13には、冷媒タンク15との間で導入管14及びドレン通路17を介して循環する冷媒が、被処理物10の全体が浸漬可能な高さ位置に対応する液面Cの位置まで満たされている。尚、図1では、冷却槽13内での冷媒の液面Cを破線で示している。冷媒が満たされた冷却槽13内に被処理物10が配置されることで、被処理物10が冷却槽13内の冷媒に浸漬され、被処理物10の熱処理が行われる。冷却槽13内での熱処理後、搬送装置11は、上下移動部11cを水平移動部11bによって駆動して上方に移動させ、冷却槽13から被処理物10を引き上げる。これにより、被処理物10の熱処理が完了する。
【0038】
加熱槽12は、搬送機構11によって被処理物10が搬入される加熱室12aを有し、加熱室12aの内部に配置された被処理物10に対して加熱処理を施すように構成されている。加熱槽12は、例えば、加熱室12a内に設置された加熱コイル(図示省略)を有し、加熱室12a内に配置された被処理物10に対して、誘導加熱による加熱を行うように構成されている。
【0039】
冷却槽13は、被処理物10が配置される筒状の槽として構成され、上下方向に沿って延びるように設けられている。冷却槽13は、冷媒タンク15との間で導入管14及びドレン通路17を介して循環する冷媒が、被処理物10の全体が浸漬可能な高さ位置に対応する液面Cの位置まで満たされるように構成されている。導入管14は、被処理物10に熱処理を施すための冷媒を冷却槽13へ導入する管状の構造体として構成されている。導入管14は、水平方向に沿って延びるように設けられ、冷却槽13の下端側の端部と接続している。このため、冷却槽13の長手方向と導入管14の長手方向とが異なる方向で冷却槽13と導入管14とが接続されている。尚、冷却槽13及び導入管14の具体的な構成については、後で詳述する。
【0040】
冷媒タンク15は、冷却槽13との間で循環しながら冷却槽13へと供給される冷媒を冷媒の循環経路上で一旦溜めるタンクとして設けられている。冷媒タンク15は、ドレン通路17を介して冷却槽15に接続されている。冷媒タンク15は、熱交換器(図示省略)を有しており、冷却槽13からドレン通路17を経て戻った冷媒を熱交換器によって冷却するように構成されている。ドレン通路17は、冷却槽13にて被処理物10を冷却した冷媒を冷媒タンク15へと戻す冷媒の流路として設けられている。ドレン通路17は、冷却槽13の上端側と接続するとともに、冷媒タンク15の上端部と接続している。冷却槽13において液面Cを超える冷媒が冷却槽13からオーバーフローしてドレン通路17へと流出し、ドレン通路17から冷媒タンク15へと戻ることになる。
【0041】
また、冷媒タンク15は、冷媒供給通路18を介して導入管14と接続している。冷媒供給通路18は、冷媒タンク15内で冷却された冷媒を導入管14へと供給する冷媒の流路として設けられている。冷媒供給通路18は、冷媒タンク15の下端側と接続するとともに、導入管14における冷却槽13と接続される側の端部とは反対側の端部において導入管14に接続している。また、冷媒供給通路18には、ポンプ16が設けられている。ポンプ16は、冷媒供給通路18を介して、冷媒タンク15に溜められた冷媒を吸い込んで導入管14へと供給するように構成されている。
【0042】
[冷却槽]
図2は、熱処理装置1の冷却槽13と導入管14とを示す斜視図である。図3は、冷却槽13及び導入管14を正面側から見た断面図である。図4は、冷却槽13及び導入管14の平面図であって、冷却槽13について断面で示す図である。図5は、図2に示す冷却槽13及び導入管14の一部を拡大して示す斜視図である。図6は、図4に示す冷却槽13及び導入管14の一部を拡大して示す平面図である。尚、図3では、冷却槽13内に配置される被処理物10を二点鎖線で図示している。
【0043】
図1乃至図6を参照して、冷却槽13は、被処理物10が配置される筒状の槽として設けられており、本実施形態では、円筒状の槽として構成されている。冷却槽13は、上下方向に沿って円筒状に延びるように構成されており、本実施形態では、円筒状に延びる冷却槽13の長手方向は、上下方向と平行になっている。尚、冷却槽13の長手方向については、図2及び図3において両端矢印L1で示している。また、冷却槽13は、円筒状に設けられた周壁部13aと、周壁部13aの下端部に設けられた底壁部13bとを有している。
【0044】
冷却槽13の周壁部13aの上端部には、円形断面で開口する上端開口13cが設けられている。即ち、周壁部13aは、上端が開放されている。搬送装置11の上下移動部11cによって支持された被処理物10は、上端開口13cから冷却槽13内に挿入され、冷却槽13内に配置される。また、周壁部13aの上端側の側部には、ドレン通路17が接続している。ドレン通路17は、周壁部13aの上端側と連通しており、冷却槽13に導入管14から導入された冷媒は、周壁部13aに沿ってドレン通路17に接続する高さ位置まで上昇した後、ドレン通路17へと流出する。
【0045】
冷却槽13の底壁部13bは、導入管14の端部と接続している。底壁部13bには、底壁部13dを貫通するように冷却槽13の下端側に向かって開口し、導入管13の端部と連通する下端開口13dが設けられている。下端開口13dは、例えば、矩形形状に開口するように設けられている。導入管14から冷却槽13へ導入される冷媒は、下端開口13dを通過して冷却槽13内へ導入される。
【0046】
[導入管]
図1乃至図6を参照して、導入管14は、冷却槽13に冷媒を導入するための管状の構造体として設けられ、管本体20と、管本体20内に配置される変換部材21と、を備えている。
【0047】
管本体20は、断面が矩形の角筒状の部材として設けられており、水平方向に沿って角筒状に延びるように構成されている。角筒状に延びる管本体20の長手方向が、導入管14の長手方向となる。尚、導入管14及び管本体20の長手方向については、図2乃至図4において両端矢印L2で示している。また、管本体20は、矩形断面で細長く延びる箱状の形状を有しており、上壁20aと、底壁20bと、一対の側壁20c及び20dと、一対の端壁20e及び20fとを有している。上壁20aは、導入管14の上面側の壁部として設けられており、底壁20bは、導入管14の底面側の壁部として設けられている。また、一対の側壁20c及び20dは、上下方向に沿った高さを有する壁部であって導入管14の長手方向に沿って平行に延びる壁部として設けられている。一対の側壁20c及び20dは、導入管14の長手方向に対して水平方向で垂直な方向である導入管14の幅方向の両側の壁部を構成している。尚、導入管14の幅方向については、図4及び図6において両端矢印Wで示している。一対の端壁20e及び20fは、導入管14の長手方向における両端部の端面を外部に対して閉じる壁部として設けられている。
【0048】
また、管本体20は、管本体20の長手方向における一方の端部の上面側において、即ち、上壁20aの長手方向における一方の端部において、冷却槽13の下端部と接続されている。管本体20の長手方向の一方の端部の上面における冷却槽13と接続する部分には、冷却槽側開口22aが開口している(図3を参照)。冷却槽側開口22aは、管本体20と接続する冷却槽13の底壁部13bに設けられた下端開口13dに対応して開口している。尚、本実施形態では、管本体20の冷却槽側開口22aと冷却槽13の下端開口13dとは、同じ開口面積で同一形状の開口として形成されており、上下方向で重なるように配置されている。ただし、管本体20の冷却槽側開口22aと、冷却槽13の下端開口13dとは、同一形状でなくてもよく、例えば、管本体20の冷却槽側開口22aが冷却槽13の下端開口13dよりも開口面積が大きい開口として形成されていてもよい。
【0049】
また、管本体20は、その長手方向における他方の端部の上面側において、即ち、上壁20aの長手方向における他方の端部において、冷媒供給通路18の下端部と接続されている。管本体20の長手方向の他方の端部の上面における冷媒供給通路18と接続する部分には、供給通路側開口22bが開口している。冷媒供給通路18の下端部は開口しており、供給通路側開口22bには、冷媒供給通路18の下端部が接続している。冷媒供給通路18から供給される冷媒は、冷媒供給通路18の下端部から管本体20の供給通路側開口22bへと流入し、管本体20の長手方向に沿って流動する。そして、管本体20を流動した冷媒は、管本体20の冷却槽側開口20aから冷却槽13の下端開口13dへと流入し、冷却槽13を流動する。
【0050】
上述の通り、本実施形態では、角筒状に延びる導入管14の管本体20の長手方向は、水平方向と平行になっている。そして、導入管14に接続する冷却槽13の長手方向は、上下方向と平行になっている。このため、冷却槽13の長手方向と導入管14の長手方向とが異なる方向で冷却槽13と導入管14とが接続されており、本実施形態では、冷却槽13の長手方向と導入管14の長手方向とが直角に交わる方向で冷却槽13と導入管14とが接続されている。尚、冷却槽13の長手方向と導入管14の長手方向とが直角に交わる形態に限らず、冷却槽13の長手方向と導入管14の長手方向とが直角以外の角度で斜めに交差する方向で冷却槽13と導入管14とが接続される形態が実施されてもよい。
【0051】
図7は、導入管14における変換部材21を示す斜視図である。図8は、導入管14における変換部材21を示す平面図である。図1乃至図8を参照して、変換部材21は、導入管14において、管本体20の内部に配置されており、導入管14の長手方向における一方の端部に配置されている。そして、変換部材21は、導入管14における冷却槽13と接続される側の端部において冷媒の流れを変更するとともに冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れを形成する部材として設けられている。以下、変換部材21について更に詳しく説明する。
【0052】
変換部材21は、図2乃至図8に示すように、第1の部材23と第2の部材24とを備えて構成されている。第1の部材23と第2の部材24とは、いずれも、管本体20の内部に配置され、管本体20における冷却槽13に接続される側の端部に配置されている。そして、管本体20における冷却槽13に接続される側の端部において、第1の部材23は、端壁20eに隣接して配置され、第2の部材24は、第1の部材23に対して端壁20e側と反対側に配置されている。
【0053】
第1の部材23及び第2の部材24は、いずれも、湾曲した部分を有する板状の部材として設けられている。そして、第1の部材23及び第2の部材24は、いずれも、導入管14の管本体20の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びるように設けられている。より具体的には、第1の部材23は、管本体20の内部において、端壁20e側で、底壁20bと上壁20aとの間に亘って冷却槽13の長手方向と平行な上下方向に沿って延びるように設けられている。そして、第2の部材24は、管本体20の内部において、第1の部材23に対して端壁20eと反対側で、底壁20bと上壁20aとの間に亘って冷却槽13の長手方向と平行な上下方向に沿って延びるように設けられている。第1の部材23と第2の部材24とが上記のように設けられていることで、変換部材21は、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びるように設けられている。
【0054】
第1の部材23の高さは、管本体20の高さと同等に設定されている。より具体的には、第1の部材23の高さ、即ち、第1の部材23の上下方向の長さは、管本体20の高さ、即ち、底壁20bと上壁20aとの上下方向の距離と同等に設定されている。尚、第1の部材23は、例えば、下端部が底壁20bに固定され、上端部が上壁20aに当接しているが、この通りでなくてもよい。第1の部材23は、上端部が上壁20aに固定され、下端部20bが底壁20bに当接していてもよい。また、第1の部材23は、下端部が底壁20bに固定されている場合、第1の部材23の表面に沿った冷媒の流れへの影響がほぼ発生しない程度に、上端部が隙間を介して上壁20aと対向していてもよい。また、第1の部材23は、上端部が上壁20aに固定されている場合、第1の部材23の表面に沿った冷媒の流れへの影響がほぼ発生しない程度に、下端部が隙間を介して底壁20bと対向していてもよい。
【0055】
また、第1の部材23の幅は、管本体20の幅と同等に設定されている。より具体的には、第1の部材23の幅、即ち、導入管14の幅方向における第1の部材23の長さは、管本体20の幅、即ち、導入管14の幅方向における側壁20cと側壁20dとの距離と同等に設定されている。尚、第1の部材23は、例えば、幅方向の一方の端部が側壁20cに当接し、幅方向の他方の端部が側壁20dに当接しているが、この通りでなくてもよい。第1の部材23は、第1の部材23の表面に沿った冷媒の流れへの影響がほぼ発生しない程度に、幅方向の一方の端部が隙間を介して側壁20cと対向していてもよい。また、第1の部材23は、第1の部材23の表面に沿った冷媒の流れへの影響がほぼ発生しない程度に、幅方向の他方の端部が隙間を介して側壁20dと対向していてもよい。
【0056】
第2の部材24の高さは、管本体20の高さと同等に設定されている。より具体的には、第2の部材24の高さ、即ち、第2の部材24の上下方向の長さは、管本体20の高さ、即ち、底壁20bと上壁20aとの上下方向の距離と同等に設定されている。尚、第2の部材24は、例えば、下端部が底壁20bに固定され、上端部が上壁20aに当接しているが、この通りでなくてもよい。第2の部材24は、上端部が上壁20aに固定され、下端部20bが底壁20bに当接していてもよい。また、第2の部材24は、下端部が底壁20bに固定されている場合、第2の部材24の表面に沿った冷媒の流れへの影響がほぼ発生しない程度に、上端部が隙間を介して上壁20aと対向していてもよい。また、第2の部材24は、上端部が上壁20aに固定されている場合、第2の部材24の表面に沿った冷媒の流れへの影響がほぼ発生しない程度に、下端部が隙間を介して底壁20bと対向していてもよい。
【0057】
また、第2の部材24の幅は、管本体20の幅よりも小さく設定されている。より具体的には、第2の部材24の幅、即ち、導入管14の幅方向における第2の部材24の長さは、管本体20の幅、即ち、導入管14の幅方向における側壁20cと側壁20dとの距離よりも小さく設定されている。そして、第2の部材24の幅方向における一方の端部は、側壁20dに当接し、第2の部材24の幅方向における他方の端部は、冷媒が流動する流路を確保できるように、側壁20cから離間して配置されている。導入管14を流動して第2の部材24が配置されている領域まで到達した冷媒は、第2の部材24と側壁20cとの間を通過して流動することになる。
【0058】
また、第1の部材23は、冷却槽13の長手方向から視た状態で(即ち、上下方向に視た状態で)、導入管14の端部側である端壁20e側に向かって円弧状に張り出すように湾曲して延びる第1の湾曲部25を有している。そして、第1の部材23における円弧状に湾曲して延びる第1の湾曲部25は、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿って延びるように配置されている。尚、冷却槽13の長手方向から視た状態での冷却槽13の内周形状、即ち、周壁部13aの内周形状は、円形状である。そして、円弧状に湾曲して延びる湾曲部25は、円形状である冷却槽13の内周形状の円弧部分に沿って延びるように配置されている。
【0059】
第1の湾曲部25が上記のように構成されていることで、第1の湾曲部25における湾曲した内側の面25a、即ち、第1の湾曲部25における端壁20e側と反対側を向いた面25aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面25aとして構成されている。そして、第1の湾曲部25の面25aは、導入管14の端部側である端壁20a側に向かって円弧状に凹むように湾曲して配置されている。第1の湾曲部25の面25aは、導入管14の端部側に向かって凹むように湾曲して配置される本実施形態の第1の面を構成している。
【0060】
また、第2の部材24は、第2の湾曲部26と、第3の湾曲部27と、第2の湾曲部26と第3の湾曲部27とを連結する連結部28とを有している。
【0061】
第2の部材24の第2の湾曲部26は、冷却槽13の中心軸方向を介して第1の部材23の第1の湾曲部25と対向する位置に配置されている。尚、冷却槽13の中心軸方向については、図6において点Pで示している。第1の湾曲部25に対向する第2の湾曲部26の幅は、第1の湾曲部25の幅よりも小さく設定されている。より具体的には、第2の湾曲部26の幅、即ち、導入管14の幅方向における第2の湾曲部26の長さは、第1の湾曲部25の幅、即ち、導入管14の幅方向における第1の湾曲部25の長さよりも小さく設定されている。また、第2の湾曲部26は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の端部側である端壁20e側とは反対側に向かって円弧状に張り出すように湾曲して延びている。このため、第2の湾曲部26は、第1の湾曲部25が円弧状に張り出す側と反対側に向かって円弧状に張り出すように湾曲して延びている。そして、円弧状に湾曲して延びる第2の湾曲部27は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、円形状である冷却槽13の内周形状の円弧部分に沿って延びるように配置されている。
【0062】
第2の湾曲部26が上記のように構成されていることで、第2の湾曲部26における湾曲した内側の面26a、即ち、第2の湾曲部26における端壁20e側を向いた面26aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面26aとして構成されている。そして、第2の湾曲部26の面26aは、冷却槽13の中心軸方向を介して第1の湾曲部25の面25aと対向する位置に配置されるとともに、第1の湾曲部25の面25aと反対側に向かって凹むように湾曲して配置されている。第2の湾曲部26の面26aは、冷却槽13の中心軸方向を介して第1の湾曲部25の面25a(第1の面25a)と対向する位置に配置されるとともに、面25a(第1の面25a)と反対側に向かって凹むように湾曲して配置される本実施形態の第2の面を構成している。
【0063】
第2の部材24の第3の湾曲部27は、第1の部材23の第1の湾曲部25と第2の部材24の第2の湾曲部26との間で第2の湾曲部26と対向する位置に配置されている。第2の湾曲部26に対向する第3の湾曲部27の幅は、第2の湾曲部26の幅よりも小さく設定されている。より具体的には、第3の湾曲部27の幅、即ち、導入管14の幅方向における第3の湾曲部27の長さは、第2の湾曲部26の幅、即ち、導入管14の幅方向における第2の湾曲部26の長さよりも小さく設定されている。また、第3の湾曲部27は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の端部側である端壁20e側に向かって円弧状に張り出すように湾曲して延びている。このため、第3の湾曲部27は、第1の湾曲部25が円弧状に張り出す側と同じ側に向かって円弧状に張り出すように湾曲して延びている。また、第3の湾曲部27は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の中心軸方向と第1の湾曲部25との間に配置されている。更に、第3の湾曲部27は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の中心軸方向を中心とした円形状の冷却槽13の内周形状と同心円上で円弧状に延びるように設けられている。このため、円弧状に延びる第3の湾曲部27は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の内周形状に同心状に沿って延びるように配置されている。
【0064】
第3の湾曲部27が上記のように構成されていることで、第3の湾曲部27における湾曲した内側の面27a、即ち、第3の湾曲部27における第2の湾曲部26側を向いた面27aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に同心状に沿った、湾曲した面27aとして構成されている。そして、第3の湾曲部27の面27aは、第1の湾曲部25の面25aと第2の湾曲部26の面26aとの間で第2の湾曲部26の面26aと対向する位置に配置されるとともに、第2の湾曲部26の面26aと反対側に向かって凹むように湾曲して配置されている。第3の湾曲部27の面27aは、第1の湾曲部25の面25a(第1の面25a)と第2の湾曲部26の面26a(第2の面26a)との間で面26a(第2の面26a)と対向する位置に配置されるとともに、面26a(第2の面26a)と反対側に向かって凹むように湾曲して配置される本実施形態の第3の面を構成している。
【0065】
連結部28は、第2の部材24において、第2の湾曲部26と第3の湾曲部27とを連結する部分として設けられている。連結部28は、第2の湾曲部26から連続して延びて第3の湾曲部27へと連続して接続している。そして、連結部28は、第2の湾曲部26の端部から、第2の湾曲部26と第1の湾曲部25との略中間の位置まで延びるように設けられている。また、本実施形態では、連結部28は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の長手方向に沿って直線状に延びるように設けられている。
【0066】
上述の通り、第1の部材23には、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面25aが設けられている。そして、第2の部材24には、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(26a、27a)が設けられている。このため、第1の部材23及び第2の部材24を備える変換部材21には、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)が備えられている。尚、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)は、本実施形態では、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状の円周と中心位置が同じ同心円に沿って配置されている。
【0067】
また、変換部材21の面(25a、26a、27a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に(即ち、渦巻き状に)配置されている。そして、変換部材21において、面(25a、26a、27a)は、複数設けられており、複数の面(25a、26a、27a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に並んで配置されている。複数の面(25a、26a、27a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態において、面25a、面26a、及び面27aの順番で、外周側から内周側へと縮径する螺旋状に並んで配置されている。
【0068】
[導入管から冷却槽へ導入される冷媒の流れの形態]
次に、図4乃至図6を参照しつつ、導入管14から冷却槽13へ導入される冷媒の流れの形態について説明する。尚、図4乃至図6では、導入管14を流動して冷却槽13へ導入される冷媒の流れを一点鎖線の矢印で示している。
【0069】
図4を参照して、冷媒供給通路18から導入管14へ供給される冷媒は、導入管14の供給通路側開口22bから導入管14の内部に流入する。そして、供給通路側開口22bから流入した冷媒は、導入管14の内部を導入管14の長手方向に沿って流動し、導入管14における冷却槽13が接続される側の端部に配置された変換部材21に到達する。
【0070】
図5及び図6を参照して、変換部材21に到達した冷媒は、第2の部材24の連結部28と管本体20の側壁20cとの間の流路を流動し、第1の部材23へと到達する。第1の部材23へ到達した冷媒は、第1の湾曲部25の湾曲した面25aに沿って流動する。そして、第1の湾曲部25の面25aに沿って流動した冷媒は、第2の部材24の第2の湾曲部26へ向かって流動する。第2の湾曲部26へ到達した冷媒は、第2の湾曲部26の湾曲した面26aに沿って流動し、更に、第3の湾曲部27に向かって流動する。そして、第3の湾曲部27へ到達した冷媒は、第3の湾曲部27の湾曲した面27aに沿って流動する。
【0071】
導入管14の長手方向に沿って流動して変換部材21に到達した冷媒は、上述の通り、第1の部材23の第1の湾曲部25、第2の部材24の第2の湾曲部26及び第3の湾曲部27に沿って流動する。そして、第1の部材23及び第2の部材24は、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びている。このため、導入管14の長手方向に沿って流動して変換部材21に到達した冷媒は、第1の部材23及び第2の部材24に沿って流動することで、冷却槽13の長手方向に沿って流れるように、流れの方向が変更される。また、導入管14を流動して変換部材21に到達した冷媒は、上述の通り、第1の湾曲部25の面25a、第2の湾曲部26の面26a、及び第3の湾曲部27の面27aに沿って流動する。そして、第1の湾曲部25の面25a、第2の湾曲部26の面26a、及び第3の湾曲部27の面27aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面である。このため、第1の湾曲部25の面25a、第2の湾曲部26の面26a、及び第3の湾曲部27の面27aに沿って冷媒が流動することで、冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成される。また、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状の円周と中心位置が同じ同心円に沿って配置されている。このため、湾曲した面(25a、26a、27a)に沿って流動して形成された回転する冷媒の流れは、冷却槽13の中心軸方向を中心として回転する流れとなる。
【0072】
上記のように、導入管14の長手方向に沿って流動して変換部材21に到達した冷媒は、変換部材21によって、導入管14の長手方向に沿った流れから冷却槽13の長手方向に沿った流れへと、冷媒の流れの方向が変更される。更に、冷媒は、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)に沿って流動し、冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成される。このため、冷媒は、変換部材21によって、冷媒の流れ方向が変更されるとともに、冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成されるように、流れの形態が変換される。変換部材21によって流れの形態が変換された冷媒は、冷却槽13の周方向に沿って回転するとともに導入管14の底面側から上面側へと向かって流れ、導入管14の冷却槽側開口22a及び冷却槽13の下端開口13dを経て、冷却槽13へと導入される。そして、冷却槽13へ導入された冷媒は、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流を形成しながら冷却槽13を流動する。この冷媒の旋回流により、冷却槽13中に配置された被処理物10が、被処理物10の周囲全体から均一に冷却されることになる。
【0073】
[導入管から冷却槽へ導入される冷媒の流れの形態の検証]
熱処理装置1の導入管14及び冷却槽13における冷媒の流れの形態について、コンピュータシミュレーションによって解析することで検証を行った。シミュレーションによる検証では、比較例と本実施形態の実施例とについて、同一の流量条件で冷媒を管本体20に供給した場合における管本体20及び冷却槽13の内部での冷媒の流れの形態を解析した。また、比較例では、管本体20内に変換部材21が設置されていない条件で、管本体20及び冷却槽13の内部での冷媒の流れの形態を解析した。一方、実施例では、管本体20内に変換部材21が設置されている条件で、変換部材21を備えた導入管14及び冷却槽13の内部での冷媒の流れの形態を解析した。また、シミュレーションによる冷媒の流れの形態の解析としては、管本体20及び冷却槽13の内部における冷媒の流れの流線と、冷却槽13内での冷媒の流速分布とを解析した。
【0074】
図9は、比較例における冷媒の流れの流線を解析した結果を示す図である。図10は、実施例における冷媒の流れの流線を解析した結果を示す図である。尚、比較例を示す図9において、管本体20及び冷却槽13を流れる冷媒の流線については、F1の符号が付されている。また、実施例を示す図10において、導入管14及び冷却槽13を流れる冷媒の流線については、F2の符号が付されている。
【0075】
図9に示すように、比較例では、管本体20を流動した冷媒は、管本体20の端部に到達すると、冷却槽13の下端開口13dを通過し、管本体20の端部に接続された冷却槽13へと導入される。冷媒が冷却槽13へ導入される際、冷媒の流れは、管本体20に直角に接続する冷却槽13へと急激に流れの方向が変更される。このため、冷媒は、流速分布が不均一となって流れが乱れた状態で、冷却槽13へと導入される。そして、冷却槽13へ導入された冷媒は、冷却槽13内で旋回流を形成することなく、流速分布が不均一で乱れた流れのまま冷却槽13を上方に流動することになる。
【0076】
一方、図10に示すように、実施例では、導入管14を流動した冷媒は、導入管14の端部において、変換部材21によって、冷媒の流れ方向が冷却槽13の長手方向に沿った方向へと変更されるとともに、冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成されるように、流れの形態が変換される。そして、変換部材21によって流れの形態が変換された冷媒は、冷却槽13へ導入され、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流を形成しながら冷却槽13を流動する。
【0077】
図11は、比較例における冷却槽13内での冷媒の流速分布を解析した結果を示す図である。図12は、実施例における冷却槽13内での冷媒の流速分布を解析した結果を示す図である。尚、図11及び図12では、冷却槽13における高さ方向の位置が異なる3つの高さ位置(H1、H2、H3)での水平断面における冷媒の流速分布を示している。冷却槽13における3つの高さ位置(H1、H2、H3)については、図9及び図10にて矢視位置H1、H2、及びH3にてそれぞれ示している。高さ位置H1は、冷却槽13における上端側の位置であり、高さ位置H2は、冷却槽13における高さ方向の中央付近の位置であり、高さ位置H3は、冷却槽13における下端側の位置である。また、各高さ位置(H1、H2、H3)での冷媒の流速分布については、3段階の流速(V1、V2、V3)で示されている。流速V1は、3段階の流速の中で最も速く、流速V1の領域は、ハッチングの無い白色の領域として示されている。流速V2は、3段階の流速の中で2番目に速く、流速V2の領域は、薄くハッチングされた薄いグレーの領域として示されている。流速V3は、3段階の流速の中で最も遅く、流速V3の領域は、濃くハッチングされた濃いグレーの領域として示されている。
【0078】
比較例では、図11に示すように、高さ位置(H1、H2、H3)ごとに冷媒の流速分布が大きく変化し、冷却槽13の周方向に不均一な流れが発生している。一方、実施例では、図12に示すように、どの高さ位置(H1、H2、H3)においても冷媒の流速分布が同様に形成されており、冷却槽13の周方向において均一な流れが形成される。
【0079】
以上の通り、検証の結果、本実施形態の熱処理装置1では、導入管14を流れた冷媒が、変換部材21によって流れの形態が変換されて冷却槽13へ導入され、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流を形成しながら冷却槽13を流動することが実証された。更に、本実施形態の熱処理装置1では、冷却槽13におけるどの高さ位置においても冷媒の流速分布が同様に形成され、冷却槽13の周方向において均一な流れが形成されることが実証された。
【0080】
[本実施形態の作用効果]
以上説明したように、本実施形態によると、導入管14に供給された冷媒は、導入管14を流動し、導入管14における冷却槽13が接続される側の端部に配置された変換部材21へと到達する。そして、変換部材21に到達した冷媒は、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びる変換部材21の面に沿って流動し、導入管14の長手方向に沿った流れから冷却槽13の長手方向に沿った流れへと、流れの方向が変更される。更に、冷媒は、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った面であって湾曲した面(25a、26a、27a)に沿って流動し、冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成される。このため、変換部材21によって、冷媒の流れ方向が変更されるとともに、冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成されるように、冷媒の流れの形態が変換される。変換部材21によって流れの形態が変換された冷媒は、冷却槽13の周方向に沿って回転するとともに導入管14の底面側から上面側へと向かって流れて導入管14から冷却槽13へと導入される。そして、冷却槽13へ導入された冷媒は、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流を形成しながら冷却槽13を流動する。この冷媒の旋回流により、冷却槽13中に配置された被処理物10が、被処理物10の周囲全体から均一に冷却されることになる。
【0081】
よって、本実施形態によると、冷却槽13と接続される導入管14において、冷却槽13の長手方向に沿って延びるとともに、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った面であって湾曲した面(25a、26a、27a)が設けられた変換部材21が設置されることで、冷却槽13内の被処理物10を均一に冷却する旋回流を形成することができる。このため、本実施形態によると、導入管14から供給される冷媒を冷却槽13へ導入して更に冷却槽13内を流動する冷媒の流れを旋回流として形成するに際し、冷却槽13の内周に沿って螺旋状に延びるような構造体を設ける必要がない。よって、旋回流の形成のために冷却槽13の長手方向に沿って螺旋状に長く延びる構造体を設ける必要がないため、冷却槽13を短くでき、熱処理装置1の全体の構成を短くすることができる。
【0082】
また、本実施形態によると、変換部材21は、湾曲していて冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った面(25a、26a、27a)を備えて導入管14の底面側と上面側との間に亘って延びる部品として形成されるため、冷却槽13において旋回流を形成するための部品を簡素な構造で製作することができる。
【0083】
また、本実施形態によると、旋回流を形成するための部品としての変換部材21は、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿っているとともに湾曲した面(25a、26a、27a)を有して導入管14の底面側と上面側との間に亘って延びる簡素な構造の部品として形成され、導入管14において、冷却槽13に接続される側の端部に設置することができる。よって、旋回流形成のための部品を装置内で容易に固定することができる。
【0084】
また、本実施形態によると、導入管14を流動して変換部材21に到達した冷媒は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に配置された面(25a、26a、27a)に沿って回転するように流動する。このため、変換部材21の面(25a、26a、27a)によって、回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0085】
また、本実施形態によると、導入管14を流動して変換部材21に到達した冷媒は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に並んで配置された複数の面(25a、26a、27a)に沿って回転するように流動する。このため、変換部材21の複数の面(25a、26a、27a)によって、回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0086】
また、本実施形態によると、導入管14を流動して変換部材21に到達した冷媒は、変換部材21の第1の面25aに沿って回転するように流動し、次いで、第2の面26aにも沿って回転するように流動する。このため、第1の面25aと第2の面26aとによって、回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0087】
また、本実施形態によると、導入管14を流動して変換部材21に到達した冷媒は、変換部材21の第1の面25aに沿って回転するように流動し、次いで、第2の面26aにも沿って回転するように流動し、その後更に第3の面27aにも沿って回転するように流動する。このため、第1の面25a、第2の面26a、及び第3の面27aによって、より安定した回転する冷媒の流れを形成することができる。
【0088】
また、変換部材21を一体もので作製すると、導入管14と冷却槽13との間の開口よりも変換部材21の大きさが大きい場合には、導入管14と冷却槽13との間の開口から変換部材21を挿入して組み付けることが困難となる。しかし、本実施形態によると、変換部材21を第1の部材23と第2の部材24とに分割して設けることで、導入管14と冷却槽13との間の開口から変換部材21を挿入して組み付けることができる。
【0089】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。尚、以下の変形例の説明においては、前述の実施形態と異なる点について説明し、前述の実施形態と同様の構成或いは対応する構成については、図面において同一の符号を付すことで、或いは同一の符号を引用することで、重複する説明を省略する。
【0090】
(1)前述の実施形態では、変換部材21が、第1の部材23と第2の部材24とに分割されて構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、分割されていない一体ものの変換部材の形態が実施されてもよい。図13(A)は、第1の変形例に係る変換部材21aを示す斜視図であり、図13(B)は、第1の変形例の変換部材21aを示す平面図である。
【0091】
図13(A)及び図13(B)に示す変換部材21aは、第1の湾曲部25と第2の湾曲部26と第3の湾曲部27とが一体に設けられた1つの部品として構成されている。第1の湾曲部25と第2の湾曲部26との間には、第1の湾曲部25と第2の湾曲部26とを連結する連結部29が設けられている。連結部29は、第1の湾曲部25から連続して延びて第2の湾曲部26へと連続して接続している。連結部29は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の長手方向に沿って直線状に延びるように設けられている。このため、変換部材21aは、第1の湾曲部25と、連結部29と、第2の湾曲部26と、連結部28と、第3の湾曲部27とが、この順番で連続して延びた状態で一体に設けられている。
【0092】
また、変換部材21aは、前述の実施形態の変換部材21と同様に、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びており、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)を備えている。そして、変換部材21aにおける複数の面(25a、26a、27a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている。
【0093】
第1の変形例の変換部材21aを熱処理装置1において組み付ける際には、導入管14の管本体20の冷却槽側開口22aを、一体ものの変換部材21aが通過できる程度に大きく形成し、冷却槽側開口22aを塞ぐ蓋部材とともに変換部材21aを管本体20に設置してもよい。図14(A)及び図14(B)は、第1の変形例の変換部材21aを備える導入管14及び冷却槽13の組み立て形態について説明する斜視図である。
【0094】
図14(A)に示すように、変換部材21aが熱処理装置1に組み付けられる際には、変換部材21aは、管本体20の冷却槽側開口22aを塞ぐための板状の蓋部材30に固定される。変換部材21aは、蓋部材30に対して、例えば、溶接により固定される。蓋部材30には、固定される変換部材21aの第2の面26aと第3の面27aとが対向した状態で配置される領域に対応する位置に、蓋部材30を貫通する貫通孔30aが設けられている。
【0095】
図14(B)を参照して、変換部材21aが蓋部材30に固定されると、変換部材21aが固定された蓋部材30が管本体20の上壁20aに固定される。このとき、変換部材21aが管本体20の冷却槽側開口22aから管本体20に挿入された状態で、蓋部材30の外周の縁部が、上壁20aにおける冷却槽側開口22aの外周縁部に溶接されることで、蓋部材30が上壁20aに固定される。
【0096】
変換部材21aが固定された蓋部材30が管本体20に固定されると、次いで、冷却槽13の底壁部13bが、導入管14の管本体20の上壁20aに固定される。冷却槽13の底壁部13bは、管本体20の上壁20aに対して、例えば、溶接により固定される。冷却槽13の底壁部13bの下端開口13dは、蓋部材30が嵌ることができる程度の大きさに形成されており、更に、管本体20の上壁20aの幅方向と長手方向とにおいて上壁20aの範囲内に収まる程度の大きさに形成されている。
【0097】
第1の変形例の変換部材21aが設けられた熱処理装置1においては、冷媒は、導入管14を流動して変換部材21aに到達すると、変換部材21aの面(25a、26a、27a)に沿って流動する。これにより、冷却槽13の長手方向に沿った流れへと冷媒の流れの方向が変更されるとともに、冷却槽13の周方向に沿って回転する冷媒の流れが形成されるように、冷媒の流れの形態が変換される。そして、変換部材21aによって流れの形態が変換された冷媒は、冷却槽13の周方向に沿って回転するとともに導入管14の底面側から上面側へと向かって流れ、蓋部材30の貫通孔30a及び冷却槽13の下端開口13dを経て、冷却槽13へと導入される。そして、冷却槽13へ導入された冷媒は、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流を形成しながら冷却槽13を流動する。
【0098】
上述のように、第1の湾曲部25と第2の湾曲部26と第3の湾曲部27とが一体に設けられた1つの部品として構成された変換部材21aの形態が実施されてもよい。
【0099】
(2)前述の実施形態では、変換部材21が、第1の面25aが設けられた第1の部材23と、第2の面26a及び第3の面27aが設けられた第2の部材24とに分割されて構成された形態を例にとって説明したが、この通りに分割された変換部材の形態でなくてもよい。変換部材は、種々の形態の分割部材に分割されて形成されていてもよく、例えば、図15(A)~(C)に例示する変換部材の形態が実施されてもよい。
【0100】
図15(A)は、第2の変形例に係る変換部材21bを示す平面図である。変換部材21bは、3つの分割部材に分割されて構成されており、第1分割部材31と第2分割部材32と第3分割部材33とを備えて構成されている。第1分割部材31、第2分割部材32、及び第3分割部材33は、いずれも、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びるように設けられている。
【0101】
第1分割部材31は、第1の部材23と同様に形成され、第1の湾曲部25を有しており、第1の面25aが設けられている。第2分割部材32は、第2の湾曲部26を備えて構成されており、第2の面26aが設けられている。第3分割部材33は、第3の湾曲部27を備えて構成されており、第3の面27aが設けられている。尚、第2分割部材32と第3分割部材33との間には、前述の実施形態の連結部28は設けられておらず、第2分割部材32と第3分割部材33とは別体の部材として設けられている。
【0102】
変換部材21bは、第1の面25aが設けられた第1分割部材31と、第2の面26aが設けられた第2分割部材32と、第3の面27aが設けられた第3分割部材33とを備えている。このため、変換部材21bは、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)を備えている。そして、変換部材21bにおける複数の面(25a、26a、27a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている。
【0103】
第2の変形例の変換部材21bが設けられた熱処理装置1においては、冷媒は、導入管14の端部において、変換部材21bの面(25a、26a、27a)に沿って流動して流れの形態が変換され、冷却槽13へと導入される。変換部材21bによって冷媒の流れの形態が変換されることで、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流が形成される。
【0104】
図15(B)は、第3の変形例に係る変換部材21cを示す平面図である。変換部材21cは、3つの分割部材に分割されて構成されており、第1分割部材31aと第2分割部材32aと第3分割部材33aとを備えて構成されている。第1分割部材31a、第2分割部材32a、及び第3分割部材33aは、いずれも、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びるように設けられている。
【0105】
第1分割部材31a、第2分割部材32a、及び第3分割部材33aは、いずれも、管本体20の内部において、管本体20における冷却槽13に接続される側の端部に配置されている。そして、管本体20における冷却槽13に接続される側の端部において、第1分割部材31aは、端壁20eに隣接して配置され、第2分割部材32a及び第3分割部材33aは、第1分割部材31aに対して端壁20e側と反対側に配置されている。更に、第2分割部材32aは、側壁20dに隣接して配置され、第3分割部材33aは、第2分割部材32aに対して側壁20c側であって側壁20cから離間した位置に配置されている。
【0106】
第1分割部材31aは、第1の部材23と同様に形成され、第1の湾曲部25を有しており、第1の面25aが設けられている。
【0107】
第2分割部材32aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で、側壁20d側から導入管14の幅方向の中央側に向かって円周方向に略90°の角度に亘って円弧状に湾曲して延びる湾曲部34を備えて構成されている。また、湾曲部34は、側壁20d側に向かって円弧状に張り出すとともに端壁20eとは反対側にも向かって円弧状に張り出して湾曲して延びるように形成されている。そして、円弧状に湾曲して延びる湾曲部34は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、円形状である冷却槽13の内周形状に沿って延びるように配置されている。このため、第2分割部材32aの湾曲部34における湾曲した内側の面34aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面34aとして構成されている。
【0108】
第3分割部材33aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で、側壁20c側に向かって円弧状に張り出すように湾曲して延びる湾曲部35を備えて構成されている。また、湾曲部35は、円周方向に略180°の角度に亘って円弧状に湾曲して延びるように形成されている。そして、円弧状に湾曲して延びる湾曲部35は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の中心軸方向を中心として円形状の冷却槽13の内周形状と同心円上で円弧状に延びるように設けられている。このため、円弧状に延びる湾曲部35は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の内周形状と同心円上で冷却槽13の内周形状に沿って延びるように配置されている。このため、第3分割部材33aの湾曲部35における湾曲した内側の面35aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面35aとして構成されている。
【0109】
変換部材21cは、面25aが設けられた第1分割部材31aと、面34aが設けられた第2分割部材32aと、面35aが設けられた第3分割部材33aとを備えている。このため、変換部材21cは、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、34a、35a)を備えている。そして、変換部材21cにおける複数の面(25a、34a、35a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている。
【0110】
第3の変形例の変換部材21cが設けられた熱処理装置1においては、冷媒は、導入管14の端部において、変換部材21cの面(25a、34a、35a)に沿って流動して流れの形態が変換され、冷却槽13へと導入される。変換部材21cによって冷媒の流れの形態が変換されることで、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流が形成される。
【0111】
図15(C)は、第4の変形例に係る変換部材21dを示す平面図である。変換部材21dは、2つの分割部材に分割されて構成されており、第1分割部材31bと第2分割部材32bとを備えて構成されている。第1分割部材31b及び第2分割部材32bは、いずれも、導入管14の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びるように設けられている。
【0112】
第1分割部材31bは、第3の変形例に係る変換部材21cの第1分割部材31aと第2分割部材32aとが一体に設けられた構成の部材として設けられている。即ち、第1分割部材31bは、湾曲した面25aが設けられた第1の湾曲部25と、湾曲した面34aが設けられた湾曲部34とを備えて構成されている。第2分割部材32bは、第3の変形例に係る変換部材21cの第3分割部材33aと同様に形成され、湾曲部35を有しており、湾曲した面35aが設けられている。
【0113】
変換部材21cは、第3の変形例の変換部材21cと同様に、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、34a、35a)を備えている。そして、変換部材21cにおける複数の面(25a、34a、35a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている。
【0114】
第4の変形例の変換部材21dが設けられた熱処理装置1においては、冷媒は、導入管14の端部において、変換部材21dの面(25a、34a、35a)に沿って流動して流れの形態が変換され、冷却槽13へと導入される。変換部材21dによって冷媒の流れの形態が変換されることで、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流が形成される。
【0115】
(3)前述の実施形態では、変換部材21が、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)を備えて構成された形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。冷却槽13の内周形状に沿った、屈曲した面を備えて構成された変換部材の形態が実施されてもよい。
【0116】
図16は、第5の変形例に係る変換部材21eを示す平面図である。変換部材21eは、第1の部材23aと第2の部材24aとを備えて構成されている。第1の部材23aと第2の部材24aとは、いずれも、管本体20の内部に配置され、管本体20における冷却槽13に接続される側の端部に配置されている。そして、管本体20における冷却槽13に接続される側の端部において、第1の部材23aは、端壁20eに隣接して配置され、第2の部材24aは、第1の部材23に対して端壁20e側と反対側に配置されている。
【0117】
第1の部材23a及び第2の部材24aは、いずれも、屈曲した部分を有する板状の部材として設けられている。そして、第1の部材23a及び第2の部材24aは、いずれも、導入管14の管本体20の底面側と上面側との間に亘って冷却槽13の長手方向に沿って延びるように設けられている。
【0118】
第1の部材23aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の端部側である端壁20e側に向かって凸状に張り出すように屈曲して延びる第1の屈曲部36を有している。そして、第1の部材23aにおける屈曲して延びる第1の屈曲部36は、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿って屈曲しながら延びるように配置されている。第1の屈曲部36が上記のように構成されていることで、第1の屈曲部36における屈曲した内側の面36a、即ち、第1の屈曲部36における端壁20e側と反対側を向いた面36aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、屈曲した面36aとして構成されている。そして、第1の屈曲部36の面36aは、導入管14の端部側である端壁20a側に向かって凹むように屈曲して配置されている。第1の屈曲部36の面36aは、導入管14の端部側に向かって凹むように屈曲して配置される第1の面を構成している。
【0119】
第2の部材24aは、第2の屈曲部37と、第3の屈曲部38と、第2の屈曲部37と第3の屈曲部38とを連結する連結部39とを有している。
【0120】
第2の部材24aの第2の屈曲部37は、冷却槽13の中心軸方向を介して第1の部材23aの第1の屈曲部36と対向する位置に配置されている。尚、冷却槽13の中心軸方向については、図16において点Pで示している。第1の屈曲部36に対向する第2の屈曲部37の幅は、第1の屈曲部36の幅よりも小さく設定されている。より具体的には、第2の屈曲部37の幅、即ち、導入管14の幅方向における第2の屈曲部37の長さは、第1の屈曲部36の幅、即ち、導入管14の幅方向における第1の屈曲部36の長さよりも小さく設定されている。また、第2の屈曲部37は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の端部側である端壁20e側とは反対側に向かって凸状に張り出すように屈曲して延びている。このため、第2の屈曲部37は、第1の屈曲部36が凸状に張り出す側と反対側に向かって凸状に張り出すように屈曲して延びている。そして、屈曲して延びる第2の屈曲部37は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の内周形状に沿って延びるように配置されている。
【0121】
第2の屈曲部37が上記のように構成されていることで、第2の屈曲部37における屈曲した内側の面37a、即ち、第2の屈曲部37における端壁20a側を向いた面37aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、屈曲した面37aとして構成されている。そして、第2の屈曲部37の面37aは、冷却槽13の中心軸方向を介して第1の屈曲部36の面36aと対向する位置に配置されるとともに、第1の屈曲部36の面36aと反対側に向かって凹むように屈曲して配置されている。第2の屈曲部37の面37aは、冷却槽13の中心軸方向を介して第1の屈曲部36の面36a(第1の面36a)と対向する位置に配置されるとともに、面36a(第1の面36a)と反対側に向かって凹むように屈曲して配置される第2の面を構成している。
【0122】
第2の部材24aの第3の屈曲部38は、第1の部材23aの第1の屈曲部36と第2の部材24aの第2の屈曲部37との間で第2の屈曲部37と対向する位置に配置されている。第2の屈曲部37に対向する第3の屈曲部38の幅は、第2の屈曲部37の幅よりも小さく設定されている。より具体的には、第3の屈曲部38の幅、即ち、導入管14の幅方向における第3の屈曲部38の長さは、第2の屈曲部37の幅、即ち、導入管14の幅方向における第2の屈曲部37の長さよりも小さく設定されている。また、第3の屈曲部38は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の端部側である端壁20e側に向かって凸状に張り出すように屈曲して延びている。このため、第3の屈曲部38は、第1の屈曲部36が凸状に張り出す側と同じ側に向かって凸状に張り出すように屈曲して延びている。また、第3の屈曲部38は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の中心軸方向と第1の屈曲部36との間に配置されている。更に、第3の屈曲部38は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、円形状の冷却槽13の内周形状と同心円上で屈曲しながら延びるように設けられている。このため、屈曲して延びる第3の屈曲部38は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、冷却槽13の内周形状に同心状に沿って屈曲しながら延びるように配置されている。
【0123】
第3の屈曲部38が上記のように構成されていることで、第3の屈曲部38における屈曲した内側の面38a、即ち、第3の屈曲部38における第2の屈曲部37側を向いた面38aは、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に同心状に沿った、屈曲した面38aとして構成されている。そして、第3の屈曲部38の面38aは、第1の屈曲部36の面36aと第2の屈曲部37の面37aとの間で第2の屈曲部37の面37aと対向する位置に配置されるとともに、第2の屈曲部37の面37aと反対側に向かって凹むように屈曲して配置されている。第3の屈曲部38の面38aは、第1の屈曲部36の面36a(第1の面36a)と第2の屈曲部37の面37a(第2の面37a)との間で面37a(第2の面37a)と対向する位置に配置されるとともに、面37a(第2の面37a)と反対側に向かって凹むように屈曲して配置される第3の面を構成している。
【0124】
連結部39は、第2の部材24aにおいて、第2の屈曲部37と第3の屈曲部38とを連結する部分として設けられている。連結部39は、第2の屈曲部37から連続して延びて第3の屈曲部38へと連続して接続している。そして、連結部39は、第2の屈曲部37の端部から、第2の屈曲部37と第1の屈曲部36との略中間の位置まで延びるように設けられている。また、連結部39は、冷却槽13の長手方向から視た状態で、導入管14の長手方向に沿って直線状に延びるように設けられている。
【0125】
上述の通り、第1の部材23aには、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、屈曲した面36aが設けられている。そして、第2の部材24aには、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、屈曲した面(37a、38a)が設けられている。このため、第1の部材23a及び第2の部材24aを備える変換部材21eには、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(36a、37a、38a)が備えられている。
【0126】
また、変換部材21eの面(36a、37a、38a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている。そして、変換部材21eにおいて、面(36a、37a、38a)は、複数設けられており、複数の面(36a、37a、38a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に並んで配置されている。複数の面(36a、37a、38a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態において、面36a、面37a、及び面38aの順番で、外周側から内周側へと縮径する螺旋状に並んで配置されている。
【0127】
第5の変形例の変換部材21eが設けられた熱処理装置1においては、冷媒は、導入管14の端部において、変換部材21eの面(36a、37a、38a)に沿って流動して流れの形態が変換され、冷却槽13へと導入される。変換部材21eによって冷媒の流れの形態が変換されることで、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流が形成される。
【0128】
(4)前述の実施形態では、変換部材21が、板状に形成された第1の部材23と第2の部材24とを備え、第1の部材23及び第2の部材24において、冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)が備えられている構成を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、変換部材を構成する部材が、板状の部材ではなく、ブロック状の部材として形成されている形態が実施されてもよい。
【0129】
図17は、第6の変形例に係る変換部材21fを示す斜視図である。変換部材21fは、第1の部材23bと第2の部材24bとを備えて構成されている。第1の部材23bは、フロック状の部材として設けられており、例えば、鋳造品として形成される。第1の部材23bには、前述の実施形態の第1の部材23の湾曲した面25aと同じ形状の湾曲した面25aが設けられている。第2の部材24bは、フロック状の部材として設けられており、例えば、鋳造品として形成される。第2の部材24bには、前述の実施形態の第2の部材24の湾曲した面(26a、27a)と同じ形状の湾曲した面(26a、27a)が設けられている。第1の部材23b及び第2の部材24bが上記のように構成されるため、ブロック状の第1の部材23b及び第2の部材24bを備える変換部材21fには、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)が備えられている。また、変換部材21fの面(25a、26a、27a)は、冷却槽13の長手方向から視た状態で螺旋状に配置されている。
【0130】
第6の変形例の変換部材21fが設けられた熱処理装置1においては、冷媒は、導入管14の端部において、変換部材21fの面(25a、26a、27a)に沿って流動して流れの形態が変換され、冷却槽13へと導入される。変換部材21fによって冷媒の流れの形態が変換されることで、冷却槽13の周方向に沿って回転しながら冷却槽13の長手方向に沿って流動する旋回流が形成される。
【0131】
(5)前述の実施形態及び変形例では、旋回流を形成するための変換部材における湾曲又は屈曲した面であって冷却槽の長手方向から視て螺旋状に配置される面が、冷却槽側から視た状態で、外周側から内周側へと時計回り方向で縮径する螺旋状に配置されている形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。変換部材における湾曲又は屈曲した面であって冷却槽の長手方向から視て螺旋状に配置される面が、冷却槽側から視た状態で、外周側から内周側へと反時計回り方向で縮径する螺旋状に配置されている形態が実施されてもよい。
【0132】
(6)前述の実施形態では、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状に沿った、湾曲した面(25a、26a、27a)が、冷却槽13の長手方向から視た状態で冷却槽13の内周形状の円周と中心位置が同じ同心円に沿って配置される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。冷却槽13の長手方向から視た状態で、湾曲した面(25a、26a、27a)が配置される円の中心位置が、冷却槽13の内周形状の円周の中心位置から少しずれるように設定されてもよい。例えば、冷却槽13内に配置される被処理物10の軸中心位置が、冷却槽13の内周形状の円周の中心位置から少しずれて配置される場合、湾曲した面(25a、26a、27a)が配置される円の中心位置が、被処理物10の軸中心位置と一致するように、変換部材21が設置されてもよい。
【0133】
(7)前述の実施形態では、冷却槽の長手方向から視た状態で冷却槽の内周形状に沿った、湾曲した面が、円弧状に湾曲して延びる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、冷却槽の長手方向から視た状態で冷却槽の内周形状に沿った、湾曲した面が、楕円状に湾曲して延びる形態が実施されてもよい。
【0134】
(8)前述の実施形態では、導入管の管本体が、断面が矩形の角筒状の部材として設けられた形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。導入管の管本体は、矩形以外の断面形状の筒状の部材として設けられていてもよく、例えば、断面が円形である円筒状の部材として設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、被処理物に対して冷媒を供給して熱処理を施す熱処理装置として、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
1 熱処理装置
10 被処理物
13 冷却槽
14 導入管
21、21a、21b、21c、21d、21e、21f 変換部材
23、23a、23b 第1の部材
24、24a、24b 第2の部材
25a、26a、27a、34a、35a、36a、37a、38a 面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図16
図17