(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004656
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】廃棄物処理プラント及び廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
B09B 3/65 20220101AFI20230110BHJP
B09B 3/60 20220101ALI20230110BHJP
C10L 3/08 20060101ALI20230110BHJP
C10L 5/40 20060101ALI20230110BHJP
C02F 11/02 20060101ALI20230110BHJP
C02F 11/04 20060101ALI20230110BHJP
B01D 53/85 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B09B3/00 C
B09B3/00 A
C10L3/08
C10L5/40
C02F11/02
C02F11/04 A
B01D53/85
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106491
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】508047738
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000615
【氏名又は名称】弁理士法人Vesta国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安野 民雄
【テーマコード(参考)】
4D002
4D004
4D059
4H015
【Fターム(参考)】
4D002AB02
4D002AC10
4D002BA17
4D002CA20
4D002GB00
4D004AA03
4D004AA04
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4D059BE01
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4D059CC01
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4D059EB15
4H015AA01
4H015AA12
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA02
4H015BA09
4H015BB03
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】エネルギコストを抑え、廃棄物をバイオガス及び資源化物に有効利用できること。
【解決手段】廃棄物1Aの一部、即ち、高含水の被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵して熱や電気等のエネルギに変換できるバイオガスGを生成すると共に、メタン発酵後のメタン発酵残渣物110を、廃棄物1Aの残り、即ち、低含水の固形状の選別残留物10Aと、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合してまとめて被好気発酵処理物100とし、それを好気発酵させて乾燥させることにより、固形燃料原料210及び/または堆肥原料220を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物をメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物とそれ以外の低含水の選別残留物とに分別し、前記被メタン発酵処理物をスラリー状に調質する前処理設備と、
前記スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵しバイオガスを生成するメタン発酵設備と、
前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成する混合作業部と、
前記被好気発酵処理物を好気発酵させて乾燥する好気発酵乾燥設備と、
前記被好気発酵処理物の前記好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物から固形燃料原料及び/または堆肥原料を選別する後処理設備と
を具備することを特徴とする廃棄物処理プラント。
【請求項2】
更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から廃水を回収し、濾過したのち、前記好気発酵乾燥設備で好気発酵している前記被好気発酵処理物に散水する第1の循環水設備を具備することを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理プラント。
【請求項3】
更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から排出される空気を好気性微生物が含まれるバイオフィルタによって生物脱臭して外部に排気する脱臭設備と、
前記脱臭設備のバイオフィルタに散水し、前記散水の余剰水を回収して、前記バイオフィルタの前記散水に再使用する第2の循環水設備と
を具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の廃棄物処理プラント。
【請求項4】
更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から排出された空気が入力され、当該空気の湿気を低下させて前記脱臭設備に出力されるエアプレナム室を具備することを特徴とする請求項3に記載の廃棄物処理プラント。
【請求項5】
更に、前記バイオガスを精製した後、燃料として使用し熱電供給するコジェネレーション設備を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の廃棄物処理プラント。
【請求項6】
廃棄物をメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物とそれ以外の低含水の選別残留物とに分別し、前記メタン発酵処理物をスラリー状に調質する前処理工程と、
前記スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵しバイオガスを生成するメタン発酵工程と、
前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成する混合工程と、
前記被好気発酵処理物を好気発酵させて乾燥する好気発酵乾燥工程と、
前記被好気発酵処理物の前記好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物から固形燃料原料及び/または堆肥原料を選別する後処理工程と
を具備することを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項7】
前記好気発酵乾燥工程では、前記好気発酵する前記被好気発酵処理物から染み出た廃水を回収し、濾過したのち、前記被好気発酵処理物に散水することを特徴とする請求項6に記載の廃棄物処理方法。
【請求項8】
更に、前記好気発酵乾燥工程で前記被好気発酵処理物が好気発酵している室内から排出された空気を、好気性微生物が含まれるバイオフィルタにより生物脱臭して外部に排気する脱臭工程を具備し、
前記脱臭工程では、前記バイオフィルタに散水し、当該散水の余剰水を回収して前記バイオフィルタの前記散水に再使用することを特徴とする請求項6または請求項7に記載の廃棄物処理方法。
【請求項9】
前記好気発酵乾燥工程と前記脱臭工程の間で、前記被好気発酵処理物が好気発酵している前記室内から排出された空気の相対的湿度を低下させる排気調節工程を有し、
前記脱臭工程では、前記排気調節工程で調湿した空気を前記生物脱臭して外部に排気することを特徴とする請求項8に記載の廃棄物処理方法。
【請求項10】
更に、前記バイオガスを精製した後、燃料として使用し熱電供給するバイオガス利用工程を具備することを特徴とする請求項6乃至請求項9の何れか1つに記載の廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭、レストラン、料亭、ホテル、スーパーマーケット等で発生する生ごみ、紙、プラスチック等が混在した廃棄物をバイオマス資源として利活用するための廃棄物処理プラント及び廃棄物処理方法に関するものであり、特に、エネルギコストを抑えることができる廃棄物処理プラント及び廃棄物処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家庭や、レストラン、料亭、ホテル、スーパーマーケット等の飲食物提供を行なう産業や、学校や、その他の事業所から排出される生活ごみ等の多くは自治体により指定された方法で数種類に分別収集され、生野菜、果実、肉類、その他の生ごみ等の有機廃棄物は、焼却処分場において可燃物として他の可燃ごみと一緒に焼却処分されている。
しかし、近年では、環境負荷の観点から生ごみを資源として再利用することにより少しでも焼却量を減少させる努力がなされ、例えば、生ごみ等を好気的な環境下で発酵熟成させて堆肥化し、有機肥料としリサイクルする方法や、スラリー状とした生ごみ等を嫌気的な環境下でメタン発酵させてメタンガス化(バイオガス化)する方法等が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、処理施設に搬入される生ごみ等の食品廃棄物の乾燥物を再溶解工程で溶解水で溶解して液状有機性廃棄物に戻し、液状有機性廃棄物をメタン発酵工程でメタン発酵させてバイオガスを回収する食品廃棄物の再資源化方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、廃棄物をメタンガス化(バイオガス化)する場合には、液状有機性廃棄物をメタン発酵させるから、大量に生じるスラリー状または液状の発酵残渣(消化液とも呼ばれる)の処理にかかる経済的負担が大きい問題がある。
例えば、特許文献1では、メタン発酵後の発酵残渣は液肥として、もしくはコンポスト化して農地還元することの記載がある。しかしながら、液肥を散布できる広大な牧草地や畑等の敷地環境がプラントの近くになく、遠く離れた土地に散布する場合には、水分の多い発酵残渣の運搬に多大なエネルギコスト等の費用が生じる。また、大量に施用できない土地環境の場合には、発酵残渣を貯留する大型のタンク設備も必要となってくる。更に、輸送する場合や貯蔵する場合の臭気対策にもコストが掛かる。加えて、こうした発酵残渣は、リンや窒素分を多く含むことから、土壌や地下水汚染を生じさせない施肥量等の制御、管理も必要となってくる。
【0006】
一方、発酵残渣を液肥として施用できる農地が周辺に整っていない場合等には、例えば、発酵残渣を固液分離してその脱水固形分をコンポスト化したり焼却処理したりすることになるが、発酵残渣の液分、脱水後ろ液は、有機物、リン、窒素分を多く含むことからそのまま下水や河川に放流することができないから、排水に大掛かりな浄化設備(廃水処理設備)を併設する必要があり、浄化に使用するエネルギコストが高額になる問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、エネルギコストを抑え、廃棄物をバイオガス及び資源化物に有効利用できる廃棄物処理プラント及び廃棄物処理方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明の廃棄物処理プラントは、廃棄物をメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物と、それ以外の低含水の選別残留物とに分別し、前記メタン発酵処理物をスラリー状に調質する前処理設備と、前記スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵しバイオガスを生じるメタン発酵設備と、前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記分別した前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成する混合作業部と、前記被好気発酵処理物を好気発酵させて乾燥する好気発酵乾燥設備と、前記被好気発酵処理物の前記好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物から固形燃料原料及び/または堆肥原料を選別する後処理設備とを具備するものである。
【0009】
上記前処理設備は、収集された廃棄物において、通常、生ゴミ、紙屑等を収容した塵袋を破袋してから、メタン発酵に供する被メタン発酵処理物と、それ以外の選別残留物とに分別し、前記被メタン発酵処理物をスラリー状に調質するものであり、例えば、破砕機、破砕分別機等の選別機、混合攪拌・調節槽等で構成される。
【0010】
ここで、上記分別は、例えば、粒度や重量(浮力)を基準に選別することができ、所定のアンダーサイズ重量物の画分を生ゴミ等の易分解性有機物を多く含み高含水の被メタン発酵処理物とし、所定のオーバーサイズ軽量物の画分をそれ以外の低含水の選別残留物とすることができる。ここでは、収集された廃棄物から主に高含水物である生ゴミ等を被メタン発酵処理物として分別できればよい。
また、上記調湿とは、攪拌等によって被メタン発酵処理物を細分化、均質化し、メタン発酵に適した所定の固形分濃度のスラリー状に被メタン発酵処理物を調節することを意味する。
上記分別と調質は、通常、別途の機械で行われるものであるが、分別と調質を同時に行うものであってもよい。
なお、上記廃棄物とは、家庭や事業所で排出された生ごみや紙屑等の燃やせるごみである家庭系一般廃棄物や事務系廃棄物、産業廃棄物としての食品廃棄物、動食物性残渣等の廃棄物である。
【0011】
上記メタン発酵設備は、前記スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵し、バイオガスを生成するものであり、例えば、攪拌手段、加温手段、温度調節手段、ポンプ等を備え気密構造とした縦型または横型のメタン発酵装置(メタン発酵槽)から構成される。
【0012】
上記混合作業部は、前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記分別した前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成するものであり、それら原料を混合機で混合するものであってもよいし、ホイールローダー、ショベル等で原料を均一に混合作業する作業場であってもよい。
【0013】
ここで、上記嵩密度調節材としては、好気発酵させる被好気発酵処理物の堆積物中に通気のための所定の空隙を形成できるように堆積物を嵩増しできるものであればよく、好ましくは、吸水性、吸湿性を有し、微生物を担持できる材料、例えば、木材チップや、好気発酵乾燥処理物から選別した固形燃料原料を固形燃料化してなる固形燃料を使用できる。
また、上記微生物付着体は、種菌として機能し、被好気発酵処理物の好気発酵を進行させる好気性微生物が付着したものであればよく、例えば、好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物の一部を使用できる。
ところで、木材チップや固形燃料等の嵩密度調節材であっても、好気発酵、乾燥後は、好気性細菌が付着するから、それは微生物付着体としても機能する。したがって、嵩密度調節材と微生物付着体の添加は、必ずしも別途に区別されることなく、兼用であってもよい。
【0014】
上記好気発酵乾燥設備は、前記被好気発酵処理物を好気発酵し、その発酵熱で乾燥させるものである。好ましくは、前記被好気発酵処理物に空気を供給する送風によって前記被好気発酵処理物の好気発酵及び乾燥の進行を促進する。例えば、ファン(ブロア)等を備え空気の導入及び排出を制御した気密構造の好気発酵乾燥装置で構成される。
【0015】
上記後処理設備は、前記好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物から、例えば、磁気選別等で不燃物、また、近赤外線選別等で塩化ビニルを除去し、固形燃料原料または堆肥原料を選別するものであり、例えば、磁気選別装置、近赤外線装置、粒度・重量選別装置等から構成される。
【0016】
請求項2の発明の廃棄物処理プラントは、更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から廃水を回収し、前記廃水に混ざり込んだ異物を除くフィルタに通したのち、前記好気発酵乾燥設備で好気発酵している前記被好気発酵処理物に散水する第1の循環水設備を具備するものである。
【0017】
上記第1の循環水設備は、前記好気発酵乾燥設備からの廃水、即ち、前記好気発酵乾燥設備で好気発酵している前記被好気発酵処理物から染み出た浸出液や散水の余剰水を回収し、それに含まれた異物をフィルタで除去したのち、前記好気発酵乾燥設備で好気発酵させている前記被好気発酵処理物に散水するものであり、例えば、前記好気発酵設備から廃水を出力し前記好気発酵設備に戻す循環路、濾過フィルタ、ポンプや、散水装置等から構成される。
【0018】
請求項3の発明の廃棄物処理プラントは、更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から排出される空気を好気性微生物が含まれるバイオフィルタによって生物脱臭して外部に排気する脱臭設備と、前記脱臭設備のバイオフィルタに対しに散水により水分を供給し、前記散水の余剰水を回収して、前記散水に再使用する第2の循環水設備とを具備するものである。
【0019】
上記脱臭設備は、好気性微生物を付着した木材チップ等の担体または好気性微生物を付含有している土壌等からなるバイオフィルタに対し前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記発酵乾燥設備から排出される空気を通風することでバイオフィルタに含まれる好気性微生物によって分解脱臭するものであり、例えば、好気性微生物を付着した木材チップ等の担体や土壌を充填した生物脱臭装置等から構成される。
また、上記第2の循環水設備は、前記脱臭設備のバイオフィルタに対しに散水により水分を供給すると共に、前記散水の余剰水を回収して、前記散水に再使用するものであり、例えば、前記脱臭設備から散水の余剰水を出力し前記脱臭設備に戻す循環路、ポンプ、散水装置等から構成される。
【0020】
請求項4の発明の廃棄物処理プラントは、更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から排出された空気が入力され、当該空気の湿気を低下させて前記生物脱臭設備に出力されるエアプレナム室を具備するものである。
前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から排出される空気と前記好気発酵乾燥設備から排出される空気よりも相対的湿度が低い空気とが入力されて混合され、その混合空気が前記生物脱臭設備に出力されるエアプレナム室を具備するものである。
【0021】
上記エアプレナム室は、所定の容積空間を有し、前記好気発酵乾燥設備から排出される空気が入力され、また、前記好気発酵乾燥設備から排出される空気よりも相対的湿度が低い空気も入力されることにより、そこで、前記好気発酵乾燥設備から排出された空気と前記好気発酵乾燥設備から排出される空気よりも相対的湿度が低い空気とが混合された調湿によって、好気発酵乾燥設備から排出される空気の湿気を低下させ、好気発酵乾燥設備から排出される空気よりも相対的に湿度が低下した空気を前記生物脱臭設備に出力するものである。なお、上記好気発酵乾燥設備から排出される空気よりも相対的湿度が低い空気とは、前記好気発酵乾燥設備から排出される空気よりも常に湿気が少ないことまでを要求するものではなく、好気発酵乾燥設備から排出される湿気の高い空気を、エアプレナム室で湿気低下できていればよい。
【0022】
請求項5の発明の廃棄物処理プラントは、更に、前記バイオガスを精製したのち燃料として使用し熱電供給するコジェネレーション設備を有するものである。
上記コジェネレーション設備は、例えば、ガスエンジン発電機及び蒸気ボイラや熱交換器等から構成され、前記バイオガスを精製したのち燃料として使用し電力と熱を生成するものである。例えば、バイオガスを燃料に使用してガスエンジン発電機で発電すると共に、そのときの廃熱を蒸気ボイラや熱交換器等によって温水または蒸気として取り出し、その温水または蒸気を前記メタン発酵設備の加温または保温に使用してもよい。
【0023】
請求項6の発明の廃棄物処理方法は、前処理工程で廃棄物をメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物と、それ以外の低含水の選別残留物とに分別し、また、前記メタン発酵処理物をスラリー状に調質し、メタン発酵工程で前記スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵してバイオガスを生じ、混合工程で前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記選別した前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成し、好気発酵乾燥工程で前記被好気発酵処理物を好気発酵させて乾燥し、後処理工程で前記被好気発酵処理物の前記好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物から固形燃料原料及び/または堆肥原料を選別するものである。
【0024】
上記前処理工程は、収集された廃棄物において、通常、生ゴミ、紙屑等を収容した塵袋を破袋してから、メタン発酵に供する被メタン発酵処理物と、それ以外の選別残留物とに分別し、前記メタン発酵処理物をスラリー状に調質する工程である。
【0025】
ここで、上記分別は、例えば、粒度や重量(浮力)を基準に選別することができ、所定のアンダーサイズ重量物の画分を生ゴミ等の易分解性有機物を多く含み高含水の被メタン発酵処理物とし、所定のオーバーサイズ軽量物の画分をそれ以外の低含水の選別残留物とすることができる。ここでは、収集された廃棄物から主に高含水物である生ゴミ等を被メタン発酵処理物として分別できればよい。
また、上記調湿とは、攪拌等によって被メタン発酵処理物を細分化、均質化し、メタン発酵に適した所定の固形分濃度のスラリー状に被メタン発酵処理物を調節することを意味する。
上記分別と調質は、通常、別途の機械で行われるものであるが、分別と調質を同時に行うものであってもよい。
なお、上記廃棄物とは、家庭や事業所で排出された生ごみや紙屑等の燃やせるごみである家庭系一般廃棄物や事務系廃棄物、産業廃棄物としての食品廃棄物、動食物性残渣等の廃棄物である。
【0026】
また、上記メタン発酵工程は、スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵し、バイオガスを生成する工程である。
【0027】
更に、上記混合工程は、前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記分別した前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成する工程である。
【0028】
ここで、上記嵩密度調節材としては、好気発酵させる被好気発酵処理物の堆積物中に通気のための所定の空隙を形成できるように堆積物を嵩増しできるものであればよく、好ましくは、吸水性、吸湿性を有し、微生物を担持できる材料、例えば、木材チップや、好気発酵乾燥処理物から選別した固形燃料原料を固形燃料化してなる固形燃料を使用できる。
また、上記微生物付着体は、種菌として機能し、被好気発酵処理物の好気発酵を進行させる好気性微生物が付着したものであればよく、例えば、好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物の一部を使用できる。
ところで、木材チップや固形燃料等の嵩密度調節材であっても、好気発酵、乾燥後は、好気性細菌が付着するから、それは微生物付着体としても機能する。したがって、嵩密度調節材と微生物付着体の添加は、必ずしも別途に区別されることなく、兼用であってもよい。
【0029】
上記好気発酵乾燥工程は、前記被好気発酵処理物を好気発酵し、その発酵熱によって、乾燥させるものである。好ましくは、前記被好気発酵処理物に空気を供給する送風によって前記被好気発酵処理物の好気発酵及び乾燥の進行を促進する。
【0030】
そして、上記後処理工程は、例えば、磁気選別等で不燃物、また、近赤外線選別等で塩化ビニルを除去し、固形燃料原料及び/または堆肥原料を選別する工程である。
【0031】
請求項7の発明の廃棄物処理方法の前記好気発酵乾燥工程では、好気発酵させている前記被好気発酵処理物から染み出た廃水(浸出液)を回収し、濾過したのち、前記被好気発酵処理物に対し散水するものである。即ち、好気発酵させている前記被好気発酵処理物から染み出た浸出液や散水の余剰水を回収し、それに含まれた異物をフィルタで除去したのち、好気発酵させている前記被好気発酵処理物に散水するものである。
【0032】
請求項8の発明の廃棄物処理方法は、更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している室内の空気を好気性微生物が含まれるバイオフィルタにより生物脱臭して外部に排気する脱臭工程を具備し、前記脱臭工程では、前記バイオフィルタに散水して水分を供給すると共に、前記散水の余剰水を回収して前記散水に再使用するものである。
【0033】
上記脱臭工程は、好気性微生物を付着した木材チップ等の担体または好気性微生物を含んだ土壌等からなるバイオフィルタに対し前記被好気発酵処理物を好気発酵している室内の空気を通風することでバイオフィルタに含まれる好気性微生物によって分解脱臭する工程である。そして、この脱臭工程では、前記バイオフィルタに対しに散水により水分を供給すると共に、前記散水の余剰水を回収して、前記散水に再使用している。
【0034】
請求項9の発明の廃棄物処理方法は、前記発酵乾燥工程と前記脱臭工程の間で、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記室内から排出された空気の湿気を低下させる排気調節工程を有し、前記脱臭工程では、前記排気調節工程で調湿した空気を前記生物脱臭して外部に排気するものである。
【0035】
上記排気調節工程は、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記室内から排出された空気と、当該空気よりも相対的湿度が低い空気との混合により、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記室内から排出された空気の湿気を低下させて調湿する工程であり、その混合された調湿空気が前記生物脱臭工程に供されるものである。
【0036】
請求項10の発明の廃棄物処理方法は、前記バイオガスを精製したのち燃料として使用し熱電供給するバイオガス利用工程を有するものである。
上記バイオガス利用工程は、前記バイオガスを精製したのち燃料として使用し電力と熱を生成する工程である。例えば、ガスエンジン発電機及び蒸気ボイラや熱交換器等によりバイオガスを燃料に使用してガスエンジン発電機で発電すると共に、そのときの廃熱を蒸気ボイラや熱交換器等によって温水または蒸気として取り出すことができるし、その温水または蒸気をメタン発酵時の加温または保温に使用してもよい。勿論、精製されたバイオガスは天然ガスとして利用することもできる。
【発明の効果】
【0037】
請求項1の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、廃棄物をメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物と、それ以外の低含水の選別残留物とに分別し、前記メタン発酵処理物をスラリー状に調質する前処理設備と、前記スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵してバイオガスを生成するメタン発酵設備と、前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成する混合作業部と、前記被好気発酵処理物を好気発酵させて乾燥する好気発酵乾燥設備と、前記被好気発酵処理物の前記好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物から固形燃料原料及び/または堆肥原料を選別する後処理設備とを具備するから、廃棄物の一部をメタン発酵処理して、熱や電気等のエネルギに変換できるまたは天然ガス等として利用できるバイオガスを生成すると共に、メタン発酵処理したメタン発酵残渣物を、廃棄物の残りと、嵩密度調節材及び微生物付着体と混合してまとめ、それらを好気発酵させて乾燥させることにより、固形燃料原料及び/または堆肥原料を生成する。
【0038】
特に、メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣物を、廃棄物の残りの選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び微生物付着体を加えて被好気発酵処理物を作成することで、その被好気発酵処理物では好気性微生物の生育、活性化に適度な水分と易分解性有機物量があるから、また、嵩密度調節材の配合により所定の空隙が確保されて通気が良いから、微生物付着体に付着している好気性微生物が優勢して活発に動作し、好気発酵が進行する。そして、その発酵熱で、スラリー状のメタン発酵残渣物に含まれていた多量の水分を蒸発により除去することが可能である。よって、加熱乾燥の熱エネルギを要することなく水分を乾燥除去でき、排水設備を必要としないから、エネルギコストを抑えて廃棄物を有効に再資源化できる。
【0039】
請求項2の発明に係る廃棄物処理プラントは、更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵する前記好気発酵乾燥設備から廃水を回収し、濾過したのち、前記好気発酵乾燥設備で好気発酵している前記被好気発酵処理物に散水する第1の循環水設備を具備することにより、被好気発酵処理物から染み出た廃水を排気水として排出することなく回収し、フィルタで異物を除去したのち被好気発酵処理物への散水に使用し、好気発酵乾燥設備で好気発酵させている被好気発酵処理物に均一な水分補給を行う。よって、請求項1に記載の効果に加えて、好気発酵及び乾燥の処理効率を高めることができる。
【0040】
請求項3の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記発酵乾燥設備から排出される空気を好気性微生物が含まれたバイオフィルタにより生物脱臭して外部に排気する脱臭設備を具備することにより、被好気発酵処理物を好気発酵する好気発酵乾燥装置から排出される臭気を含んだ空気が生物脱臭装置で脱臭処理された後、外部に排気されるから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、臭気を外に排出しない。
また、脱臭設備の前記バイオフィルタに散水して水分を供給すると共に、その余剰水を回収して、再び散水に使用する第2の循環水設備を有することにより、バイオフィルタの好気性微生物の活性に必要な水分を補充し、また、その水分供給を均等化できるから、更に、散水の余剰水の再利用によりバイオフィルタの好気性微生物を移動させて好気性微生物の分布を均等化できるから、臭気成分の安定した脱臭効率が得られる。更に、散水の余剰水を繰り返し再利用するから、外部からの水分の補充を最小限に抑えることが可能で、低コストで済む。
【0041】
請求項4の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、前記被好気発酵処理物を好気発酵している前記好気発酵乾燥設備から排出された空気と前記好気発酵乾燥設備から排出される空気よりも相対的湿度が低い空気とが入力されて混合され、その混合空気が前記脱臭設備に出力されるエアプレナム室を具備することにより、好気発酵乾燥設備から排出される空気がエアプレナム室でそれよりも相対的湿度が低い乾いた空気との混合によって低湿に調湿されたのち、脱臭設備で生物脱臭され外部に排気される。
【0042】
即ち、被好気発酵処理物を好気発酵し乾燥させる好気発酵乾燥設備から排出される湿度の高い空気は、エアプレナム室で湿度の低い空気と混合されることによって、相対的に湿度を低下させてから脱臭設備に入力される。よって、請求項3に記載の効果に加えて、好気発酵乾燥設備から排気された水蒸気が脱臭設備内で排気水とし排出されて過剰に溜まり難く、外部に排気する水分量を多くできる。
【0043】
請求項5の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、更に、前記バイオガスを精製し、前記精製したバイオガスを燃料として使用することにより熱電供給するコジェネレーション設備を具備するから、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、バイオガスのエネルギとしての利用効率が高いものであり、バイオガスをより有効利用できる。特に、廃熱を温水または蒸気として取り出し、メタン発酵設備の加温や保温に使用することもできるから、メタン発酵設備の加温や保温にかかるコストを抑えることができる。
【0044】
請求項6の発明に係る廃棄物処理方法によれば、前処理工程にて廃棄物をメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物と、それ以外の低含水の選別残留物とに分別し、また、前記メタン発酵処理物をスラリー状に調質し、メタン発酵工程にて前記スラリー状にした被メタン発酵処理物をメタン発酵しバイオガスを生じ、混合工程にて前記被メタン発酵処理物の前記メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣を、前記選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び好気性微生物を付着した微生物付着体を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物を作成し、好気発酵乾燥工程にて前記被好気発酵処理物を好気発酵させて乾燥し、後処理工程にて前記被好気発酵処理物の前記好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物から固形燃料原料及び/または堆肥原料を選別するから、廃棄物の一部をメタン発酵処理して熱や電気等のエネルギとして変換できるまたは天然ガス等として利用できるバイオガスを生成すると共に、メタン発酵処理したメタン発酵残渣物を、廃棄物の残りと、嵩密度調節材及び微生物付着体と混合してまとめ、それらを好気発酵させて乾燥させることにより、固形燃料原料及び/または堆肥原料を生成する。
【0045】
特に、メタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣物を、廃棄物の残りの選別残留物と混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材及び微生物付着体を加えて被好気発酵処理物を作成することで、その被好気発酵処理物では好気性微生物の生育、活性化に適度な水分と易分解性有機物量があるから、また、嵩密度調節材の配合により所定の空隙が確保されて通気が良いから、微生物付着体に付着している好気性微生物が優勢して活発に動作し、好気発酵が進行する。そして、その発酵熱で、スラリー状のメタン発酵残渣物に含まれていた多量の水分を蒸発により除去することが可能である。よって、加熱乾燥の熱エネルギを要することなく水分を乾燥除去でき、排水設備を必要としないから、エネルギコストを抑えて廃棄物を有効に再資源化できる。
【0046】
請求項7の発明に係る廃棄物処理方法によれば、前記好気発酵乾燥工程では、好気発酵する前記被好気発酵処理物から染み出た廃水を回収し、濾過したのち、前記被好気発酵処理物に散水している。即ち、前記被好気発酵処理物から染み出た廃水を排気水として排出することなく回収し、フィルタで異物を除去したのち被好気発酵処理物への散水に使用し、好気発酵させている被好気発酵処理物に均一な水分補給を行う。よって、請求項6に記載の効果に加えて、好気発酵及び乾燥の処理効率を高めることができる。
【0047】
請求項8の発明に係る廃棄物処理方法によれば、更に、前記被好気発酵処理物を好気発酵している室内の空気を好気性微生物が含まれたバイオフィルタにより生物脱臭して外部に排気する脱臭工程を具備することにより、被好気発酵処理物を好気発酵する室内から排出される臭気を含んだ空気が脱臭処理された後、外部に排気されるから、請求項6または請求項7に記載の効果に加えて、臭気を外に排出しない。
また、前記脱臭工程では前記バイオフィルタに散水して水分を供給すると共に、その余剰水を回収して、再び散水に使用することにより、バイオフィルタの好気性微生物の活性に必要な水分を補充し、また、その水分供給を均等化できるから、更に、散水の余剰水の再利用によりバイオフィルタの好気性微生物を移動させて好気性微生物の分布を均等化できるから、臭気成分の安定した脱臭効率が得られる。また、散水の余剰水を繰り返し再利用するから、外部からの水分の補充を最小限に抑えることが可能で、低コストで済む。
【0048】
請求項9の発明に係る廃棄物処理プラントによれば、前記好気発酵乾燥工程と前記脱臭工程の間で、前記被好気発酵処理物を好気発酵している室内から排出された空気と当該排出空気よりも相対的湿度が低い空気とを混合する排気調節工程を有し、前記脱臭工程では、前記排気調節工程で混合された空気を前記生物脱臭して外部に排気するから、被好気発酵処理物を好気発酵している室内から排出される空気がそれよりも相対的湿度が低い乾いた空気との混合によって低湿に調湿されたのち、生物脱臭され外部に排気される。
【0049】
即ち、被好気発酵処理物を好気発酵し乾燥させる室内から排出された湿度の高い空気は、湿度の低い空気と混合されることによって、相対的に湿度を低下させてから、脱臭に供される。よって、請求項8に記載の効果に加えて、被好気発酵処理物を好気発酵し乾燥させる室内から排気された水蒸気が排気水として脱臭工程の脱臭設備内で排出し難く、外部に排気する水分量を多くできる。
【0050】
請求項10の発明に係る廃棄物処理方法によれば、更に、前記バイオガスを精製し後、燃料として使用することにより熱電供給するバイオガス利用工程を具備するから、請求項6乃至請求項9の何れか1つに記載の効果に加えて、バイオガスのエネルギとしての利用効率が高いものであり、バイオガスをより有効利用できる。特に、廃熱を温水または蒸気として取り出し、メタン発酵させるメタン発酵装置の加温や保温に使用することもできるから、メタン発酵時の加温や保温にかかるコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1は本発明の実施の形態に係る廃棄物処理プラントにおける廃棄物処理工程のフローチャートである。
【
図2】
図2は本発明の実施の形態に係る廃棄物処理プラントの前処理工程、メタン発酵工程の概念図である。
【
図3】
図3は本発明の実施の形態に係る廃棄物処理プラントの混合工程、好気発酵乾燥工程、排気調節工程、及び脱臭工程の概念図である。
【
図4】
図4は本発明の実施の形態に係る廃棄物処理プラントの後処理工程の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態において、図示の同一記号及び同一符号は、同一または相当する機能部分であるから、ここではその重複する説明を省略する。
【0053】
まず、本発明の実施の形態の廃棄物処理プラントにおける廃棄物処理の全体の概略流れを、主に
図1のフローチャートを参照して説明する。
家庭内または事業所で生ゴミ、紙屑等の燃やせるごみとして排出され、塵収集車11で収集、搬送されてきた家庭系または事業系一般廃棄物等の廃棄物1Aは、建屋110内の受入ヤードY1で受け入れられると、まず、前処理工程として、ステップS11の破砕工程で破砕機14によって廃棄物1Aの生ごみ、紙、プラスチック類等を収容していた塵袋が破られ、また、粗破砕や押し潰し等によって減容化される。
【0054】
破袋された廃棄物1Aは、続くステップS12の分別工程で、選別機18による粒度や重量(風力)選別によって、所定の粒径以上で軽量のオーバーサイズの画分を選別残留物10Aとし、それ以外の、所定の粒径未満のアンダーサイズ画分をメタン発酵に供する被メタン発酵処理物10Bとして分別する。この粒度や重量選別では、廃棄物1Aのうちメタン発酵での分解に好適な有機物を多く含む生ゴミ等の高含水物や寸法の小さい湿った紙屑等がアンサーサイズの画分に分別されてメタン発酵に供される高含水の被メタン発酵処理物10Bとして選別され、廃棄物1Aのうち寸法の大きな生ゴミの他、寸法の大きな乾いた紙屑、ポリ袋を含むプラスチック、布類等はオーバーサイズの画分に分別され低含水の選別残留物10Aに含まれる。
【0055】
ステップS12の分別工程で選別された選別残留物10Aは、建屋110内の廃棄物ストックヤードY2に搬送され次の処理を待つ一方、ステップS12の分別工程で選別された被メタン発酵処理物10Bは、建屋110内の選別廃棄物ピットP1に投入される。
ここで、受入ヤードY1で受け入れられた産業廃棄物としての食品廃棄物や動植物残渣等の廃棄物1Bは、ポリ袋、プラスチック等の混在が少ないことから、上記破砕や選別を行うことなく選別廃棄物ピットP1に投入し、そこでまとめることも可能である。以下、選別廃棄物ピットP1に投入された動植物残渣等の廃棄物1Bもまとめて、被メタン発酵処理物10Bとする。
選別廃棄物ピットP1に投入された高含水の被メタン発酵処理物10Bは、ステップS13の調湿工程で、混合調整槽19に投入され、ミキサー(撹拌機)等による攪拌で固形分が細分化され、所定の固形分濃度のスラリー状の被メタン発酵処理物10Bに調質される。
【0056】
スラリー状の被メタン発酵処理物10Bは、次のステップS20のメタン発酵工程で、メタン発酵設備のメタン発酵槽21に投入されて、そこで嫌気性微生物によりメタン発酵(嫌気発酵)され、メタンガスを含むバイオガスGを生成する。
【0057】
メタン発酵槽21で生成されたバイオガスGは、バイオガス供給工程として、ステップS31の精製工程で脱硫装置等の精製装置31によって精製されたのち、ガスホルダ32に一時的に蓄えられ、そこから、バイオガス利用設備としてのコジェネレーション設備のガスエンジンの発電機等に送給され、ステップS32のバイオガス利用工程で燃料として利用されて電気や熱に変換される。
【0058】
一方、メタン発酵槽21で被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵した後のスラリー状のメタン発酵残渣150は、メタン発酵槽21から回収され、建屋110内の混合作業部としての混合ヤードY3に搬送される。この混合ヤードY3には、上述した建屋110内の廃棄物ストックヤードY2から搬送してきた選別残留物10Aも収集され、そこで、メタン発酵残渣150及び選別残留物10A、更には、メタン発酵残渣150及び選別残留物10Aの堆積物内に通気の空隙を多く形成するために嵩増しする木材チップ等の嵩密度調節材2、及び、好気性微生物が多く付着した好気発酵残渣細粒物等の微生物付着体3が混合され、好気発酵に供される被好気発酵処理物100が作成される。
即ち、ステップS40の混合工程で、被メタン発酵処理物10Bを嫌気発酵させた後のスラリー状のメタン発酵残渣150と、選別残留物10Aと、嵩密度調節材2と、微生物付着体3とが混合され、好気発酵に供される被好気発酵処理物100が作成される。
【0059】
次に、この被好気発酵処理物100は、建屋110内に全体あるいは一部が格納された好気発酵乾燥設備における好気発酵乾燥装置120のコンクリート製のハウジング121内に積み込まれ、そこで、ステップS50の好気発酵乾燥工程として所定の日数、好気発酵され、乾燥される。
このとき、好気発酵乾燥装置120では、ハウジング121内の被好気発酵処理物100に散水(噴霧)を行っている。特に、本実施の形態では、建屋110内やハウジング121内に排出された廃水、即ち、廃棄物1A,1B、選別残留物10A、被メタン発酵処理物10B、メタン発酵残渣150から染み出た廃水等を回収し、フィルタ172で濾過し、その濾過した水をハウジング121内への散水(噴霧)に使用している。更に、好気発酵乾燥装置120のハウジング121では、空気(臭気)の排出と建屋110内の新鮮な空気(導入空気)の取り入れとの入れ替えを行うことによって酸素を補充し、また、ハウジング121内を所定の温度及び負の気圧に制御している。
【0060】
ここで、本実施の形態では、ハウジング121から排出された湿気を多く含む空気(臭気)は、ステップS60の排気調節工程として、エアプレナム室130に導入され、そこで、ハウジング121の室外の建屋110内から取り入れた導入空気と混合された後、建屋110の屋外に設置された脱臭設備の生物脱臭装置140に送られる。
そして、ステップS70の生物脱臭工程として、エアプレナム室130からの混合空気は、それに含まれていた臭気成分が生物脱臭装置140にて、好気性微生物が付着した木材チップ等の担体を堆積してなるバイオフィルタ142を通過することでバイオフィルタ172内の好気性微生物によって分解脱臭され、外部、即ち、屋外の大気中へと排気(放出)される。
このとき、生物脱臭装置140では、バイオフィルタ172に対し散水を行っており、散水の余剰水は回収し、再び散水として再利用している。
【0061】
一方、好気発酵乾燥装置120で好気発酵、乾燥を終えた好気発酵乾燥処理物200は、後処理工程としてステップS81の選別工程で、磁気選別等によって不燃物230及び赤外線選別等によって塩化ビニル240を除去し、また、例えば、寸法や重力(比重)等の基準で、固形燃料原料210及び/または堆肥原料220と、上述したステップS40の混合工程で混合した木材チップ等の嵩密度調節材2と、好気性微生物が付着した微生物付着体3として使用される好気発酵残渣細粒物とに分別される。
【0062】
こうして、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、生ごみ、プラスチック、紙、布等が混在している家庭や事務系の一般廃棄物等の廃棄物1Aを粒度等の基準で、メタン発酵させる廃棄物、即ち、生ごみ等の易分解性有機物を多く含む高含水の被メタン発酵処理物10Bと、それ以外の選別残留物10Aとに分別し、その選別した被メタン発酵処理物10Bを、場合によっては、産業廃棄物の食品廃棄物や動植物性残渣等の廃棄物1Bもまとめた被メタン発酵処理物10Bを、メタン発酵させることにより、バイオガスGを生成する。
また、被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵した後のメタン発酵残渣150は、廃棄物1Aから被メタン発酵処理物10Bを選別した残りの選別残留物10Aとまとめられ、更には、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合されて、被好気発酵処理物100を形成し、その被好気発酵処理物100を好気発酵して乾燥させることにより、固形燃料原料210や堆肥原料220等を生成する。即ち、プラスチック、紙、布等が混在している廃棄物1A,1BからバイオガスGを生成すると共に、固形燃料原料21や堆肥原料22等に再資源化(リサイクル)するものである。
【0063】
特に、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵した後のメタン発酵残渣150を、廃棄物1Aから被メタン発酵処理物10Bを選別した残りの選別残留物10Aとまとめ、更に、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合して被好気発酵処理物100を作成することにより、その被好気発酵処理物100では、その堆積物内部に適度な空隙による通気が確保されることで、水分過剰な部分や酸欠部分の発生が抑えられて嫌気発酵が抑制され、好気発酵及び乾燥が進行し、水分を外気へ水蒸気として放出することができる。よって、格別固液分離処理、排水処理、加熱処理等の設備を設けることなくエネルギコストを抑えて廃水の水分を処理することができる。
【0064】
次に、本実施の形態の廃棄物処理プラントの全体構成及び廃棄物処理の全体の流れの詳細を、主に、
図2乃至
図4を参照して説明する。
本実施の形態の廃棄物処理プラントの建屋110内の受入ヤードY1に下され、建屋110内に受け入れられた廃棄物1A,1Bのうち、塵収集車11で燃やせるごみ(可燃ごみ)として収集された家庭系または事業系一般廃棄物等の廃棄物1Aは、ホイールローダー12等が中継し、ベルトコンベア13等を介して破砕機14のホッパーに投入される。破砕機14は外力を加えることにより破袋し、また、大きな固形物を破砕して断片化したり、押し潰して減容化したりするものである。即ち、低速回転する破砕機14は、受入れ廃棄物1Aに対して、多段減容、均一化と破袋を行うという破袋機能、押し潰し機能、破砕機能を有し、プラスチック、紙、布等を収容した塵袋の破袋と粗破砕を行っている。よって、この破砕機14で処理した結果の廃棄物1Aは、受け入れられた廃棄物1Aが破袋され、減容化されたものである。なお、本発明を実施する場合には、破砕機14は、少なくとも破袋機能があればよく、その破砕方式も、例えば、衝撃、せん断力、回転力、圧縮力等の何れであってもよい。
【0065】
次に、破砕機14で破袋、粗破砕された廃棄物1Aは、選別機18で、寸法(粒度)及び重量(風力)選別によって、所定の粒度未満、即ち、アンダーサイズ画分の被メタン発酵処理物10Bと、所定の粒度以上または軽量物、即ち、オーバーサイズ画分の選別残留物10Aとに分別される。
アンダーサイズ画分の被メタン発酵処理物10Bは、廃棄物1Aのうち、寸法が小さい生ごみ、湿った紙類等が多く含まれ、選別残留物10Aよりも高含水率であり、易分解性有機物が多く含有されている。一方、オーバーサイズ画分の選別残留物10Aは、廃棄物1Aのうち、寸法が大きい生ごみの他、乾いた紙類、草木類、布類、ポリ袋を含むプラスチック(樹脂)等が多く含まれる。
なお、本発明を実施する場合には、破砕、分別、調質は各別途の工程であってもよいし、破砕と分別が同時、または、分別と調質が同時、または、破砕と分別と調質が同時に行われるものであってもよい。
【0066】
そして、廃棄物1Aから選別した選別残留物10Aは、建屋110内の廃棄物ストックヤードY2に搬送、収集され、次の処理を待つ。
一方、廃棄物1Aから選別した被メタン発酵処理物10Bは、建屋110内の選別廃棄物ピットP1に投入される。
【0067】
本発明を実施する場合、選別廃棄物ピットP1には、塵収集車11やアームロール車等で運搬され、建屋110内で受入ヤードY1に下された廃棄物1A,1Bのうち、産業廃棄物の食品廃棄物、動植物性残渣、紙屑、木屑、繊維屑等の廃棄物1Bが直接投入されることもある。産業廃棄物の食品廃棄物、動植物性残渣、紙屑、木屑、繊維屑等が分別して収集された廃棄物1Bであれば、プラスチック類等のメタン発酵の不適合物が混在していても少ない含有量であるから、破砕、選別することなく、選別廃棄物ピットP1に投入してもよいし、破砕機14で塵袋の破袋や破砕を行った後、選別することなく、選別廃棄物ピットP1に投入してもよい。勿論、産業廃棄物の食品廃棄物、動植物性残渣、紙屑、木屑、繊維屑等の廃棄物1Bであっても、家庭系または事業系一般廃棄物等の廃棄物1Aと同様に、破砕選別してから、選別廃棄物ピットP1に投入してもよい。
以下、選別廃棄物ピットP1に投入された動植物残渣等の廃棄物1Bもまとめて、被メタン発酵処理物10Bとする。
【0068】
選別廃棄物ピットP1に収集された高含水の被メタン発酵処理物10Bは、次に、ポンプ等を使用して混合調整槽19に移送されて、混合調整槽19内に投入され、そこで、ミキサー(撹拌機)等による攪拌によって固形物が細分化され、湿式または乾式の発酵方式に応じた所定の固形物濃度のスラリー状の被メタン発酵処理物10Bに調節される。メタン発酵方式が乾式方式であれば15~40質量%、湿式方式であれば10質量%前後の固形物濃度に調節される。
【0069】
通常、生ゴミを多く含んだ被メタン発酵処理物10Bでは、特別に外部から水分を添加しなくとも、固形分濃度が10~30質量%程度のスラリー状とすることもできるが、必要に応じて、外部から水分を添加することも可能である。このとき、後述する貯水タンク173A,173Bや貯水タンク183内の水を使用することも可能である。または、家畜糞尿、有機汚泥、廃飲料、動植物性油等の液状の廃棄物を受け入れ、その水分を使用し、所定の固形濃度に調節するようにしてもよい。
【0070】
そして、混合調整槽19により均質化されたスラリー状の被メタン発酵処理物10Bは、次に、ポンプ等を使用してメタン発酵槽21に定量的に供給される。
なお、混合調整槽19により均質化されたスラリー状の被メタン発酵処理物10Bは、直接メタン発酵槽21に定量的に供給してもよいし、図示しないスラリー供給調整槽で貯留し、そこからメタン発酵槽21に定量的に供給するようにしてもよい。
即ち、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、破砕機14、選別廃棄物ピットP1、混合調節槽19等を備えた前処理設備を有し、また、メタン発酵設備としてのメタン発酵槽21を有する。
【0071】
スラリー状の被メタン発酵処理物10Bを収容したメタン発酵槽21では、その内部が所定の嫌気条件下及び温度に設定され、嫌気性微生物(メタン生成菌)により被メタン発酵処理物10Bのメタン発酵が行われる。
メタン発酵槽21は、例えば、鉄筋コンクリート製や鋼板製等のハウジングで形成された気密構造とされるが、ここでは、槽内構造は特に問われず、湿式または乾式の発酵方式や発酵温度等に応じた設計とされる。
メタン発酵槽21でのメタン発酵処理物10Bのメタン発酵処理方式は、乾式方式でも湿式方式でもよく、湿式方式であれば、例えば、酸生成とメタン生成を一緒にした1槽式や、可溶化槽を設けた2槽式、或いは、多層式や固定床等の発酵槽が使用され35℃付近の中温発酵または55℃付近の高温発酵とされる。一方、乾式方式であれば、例えば、ドランコ方式やコンボガス方式の連続式、或いは、ビオフェルム方式のバッチ式等の発酵槽が使用され、55℃付近の高温発酵とされる。中でもドランコ方式では、密閉系での連続処理であるから、臭気対策に好ましい。
【0072】
好ましくは、例えば、メタン発酵槽21に投入するスラリー状の被メタン発酵処理物10Bの固形分濃度を15~30質量%程度として、55℃程度の高温条件下でメタン発酵させる乾式方式である。こうした高温条件下の乾式方式であれば、混合調節槽19での外部からの水分の補充を最小限として、メタン発酵残渣150の水分量を抑え、即ち、メタン発酵残渣150の含水率を少なくし、後の好気発酵乾燥装置120での乾燥処理の負荷を少なくし、メタン発酵残渣150から排出される廃水量を抑えることができる。また、乾式メタン発酵法であれば、固形分濃度の高いスラリー状の被メタン発酵処理物10Bを複雑な可溶化処理なしに高負荷で処理するから、固形分の処理効率を高くでき、また、固形分濃度が高いことで菌体濃度を高く保ち、発酵槽単位容積当りの有機物のバイオガス化の速度を高めることができる。後のスクリューコンベア41でのメタン発酵残渣150の搬送等の機械的操作条件を考慮しても、メタン発酵槽21に投入するスラリー状の被メタン発酵処理物10Bの固形分濃度は15~30質量%程度が好ましい。
特に、本実施の形態では、生ごみ、紙ごみ等が混在した被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵させるものであるから、高い有機物負荷がかけられ、メタン発酵を阻害するアンモニア態窒素の蓄積を抑えてバイオガスGの発生効率を高めることも可能である。
【0073】
なお、こうしたメタン発酵槽21におけるスラリー状の被メタン発酵処理物10Bのメタン発酵は、まず、可溶化・加水分解工程で、通性嫌気性菌や偏性嫌気性菌によって、被メタン発酵処理物10B中の炭化水素、たんぱく質、脂質(脂肪)、繊維質等の生分解性高分子有機物が単糖類、ペプチド、アミノ酸、グリセリン、脂肪酸等に加水分解され、低分子化される。次に、酸発酵工程で、酸発酵菌によって、加水分解された低分子有機物がアルコール、酪酸、プロピオン酸等の揮発性脂肪酸(VFA)、二酸化炭素、硫化水素、アンモニアへと分解される。続いて、水素と酢酸生成工程で、酢酸菌によって、酪酸やプロピオン酸等の炭素数が3以上の脂肪酸から酢酸、または、二酸化炭素と水素或いはギ酸に分解される。最後に、メタン生成工程で、メタン生成菌により、酢酸或いは水素から、メタンと二酸化炭素のバイオガスGや水が発生する。
【0074】
本実施の形態の廃棄物処理プラントにおいて、メタン発酵槽21で生成されたメタン及び二酸化炭素のバイオガスGは、バイオガスGから硫化水素や硫黄酸化物を除去する脱硫装置や、二酸化炭素を分離する二酸化炭素選択透過膜等を備えた分離装置や、水分除去装置等のバイオガスGを精製する精製装置31で不純物が除去されて精製された後、ガスホルダ32に一時的に貯留される。なお、脱硫装置での脱硫方式としては、特に問われず、例えば、乾式脱硫、湿式脱硫、生物脱硫等が採用される。また、水分除去装置での水分除去の方法としては、例えば、慣性衝突式や吸着式等が使用できる。更に、ガスホルダ32のバイオガスGを貯留する貯蔵方式も特に問われず、例えば、湿式、二十膜式、鋼製被覆型メンブレン式、吸着貯蔵式等を採用することができる。
【0075】
更に、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、図示しないガスフレア(余剰ガス燃焼装置)を設けており、余剰のバイオガスGが発生した場合には、図示しないガスフレアによりバイオガスGの余剰ガスを安全に燃焼して放出する。
【0076】
そして、本実施の形態の廃棄物処理プラントにおいては、ガスホルダ32から、ガス利用設備としてのガスコージェネレーション設備33に送給され、そこで、電力や熱に変化される。例えば、ガスコージェネレーション設備33ではガスエンジン発電機等の発電機を備え、精製したバイオガスGを発電機で燃焼させてエンジンを動かし、その力で発電機を回して発電させることで、電力を得て電気として供給することができ、また、発電と同時に生じる廃熱を熱交換器や蒸気ボイラ等で温水や蒸気として取り出すことができる。
【0077】
即ち、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、ガスコージェネレーション設備33からメタン発酵設備のメタン発酵槽21にガスコージェネレーション設備33で生じた廃熱の温水や蒸気を供給する供給手段を設けており、ガスコージェネレーション設備33において発電に伴い生じた廃熱の温水や蒸気は、メタン発酵槽21の加温、保温の熱源として使用する構成としている。つまり、ガス利用設備としてガスコージェネレーション設備33は、ガスエンジン発電機及び熱交換器や蒸気ボイラ等で構成される。
ガスコージェネレーション設備33で発生した電力は、外部に供給することもできるし、プラント内で使用してもよい。勿論、ガスコージェネレーション設備33で生成した余剰の廃熱の温水・蒸気も外部へ供給してもよい。
【0078】
特に、本実施の形態の廃棄物プラントでは、後述するように、メタン発酵残渣150を選別残留物10Aとまとめ、更に、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合して、被好気発酵処理物100を作成し、それを好気発酵させてその発酵熱や送風で水分を乾燥させることにより、エネルギコストを抑えて水分を処理することができ、水分を処理する加熱乾燥や浄化にバイオガスGのエネルギを利用しなくてもよいから、バイオガスGの有効利用効率が高いものとなる。
【0079】
なお、本発明を実施する場合には、ガス利用設備としてボイラを設置し、精製したバイオガスGをボイラの燃料として使用してもよいし、ガスホルダ32から精製したバイオガスGを都市ガス設備へ供給し、バイオガスGを都市ガス原料として使用してもよい。その他にも精製したバイオガスGを燃料電池の燃料に利用したり、ガス自動車の燃料として利用したりしてもよい。即ち、精製されたバイオガスGは天然ガスとして利用してもよい。
【0080】
一方、メタン発酵槽21で被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵させた後のスラリー状のメタン発酵残渣(消化液)110は、メタン発酵槽21から排出、回収して、固液分離することなく、スクリューコンベア41を介し、建屋110内の混合作業部としての混合ヤードY3に設置した計量供給装置42に移送される。なお、この間、一時的にメタン発酵残渣150を貯留する貯留槽を設けてもよい。また、メタン発酵残渣150には嫌気性微生物が含まれるからメタン発酵残渣150の一部を回収し、混合調整槽19に返却して、被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵させる種菌として使用することも可能である。
【0081】
混合ヤードY3には、選別残留物10Aが収集された建屋110内の廃棄物ストックヤードY2から搬送してきた選別残留物10Aが下され、また、計量供給装置42からメタン発酵残渣150が供給され、選別残留物10A及びメタン発酵残渣150が混合しまとめられる。更には、それらに、嵩増しをする木材チップ等の嵩密度調節材2及び好気性微生物が付着した発酵残渣細粒物等の微生物付着体3も加わり、それらをホイールローダー等による混合作業によって均一に混合し、好気発酵に供される被好気発酵処理物100を形成する。
【0082】
ここで、選別残留物10A及びメタン発酵残渣150に混合する嵩密度調節材2としては、好気発酵させる被好気発酵処理物100の堆積物を嵩増しして、堆積物内に通気の空隙を形成できる所定寸法の有機材料であればよく、好ましくは、吸水性、吸湿性があり微生物を担持できる有機材料、例えば、木材チップ等の木質資材や、好気発酵乾燥処理物200から選別した固形燃料原料210を固形燃料化してなる固形燃料のRDF(Refuse Derived Fuel)やRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)等が使用できる。
木材チップや固形燃料は低コストであり、好気性微生物を担持しやすいことで繰り返しの再使用で効率の良い好気発酵処理を促進できる。よって、低コストで好気発酵の促進を可能とする。特に、固形燃料のRDFでは、生ゴミの分解物の含有量が多いことで好気性微生物の好気性発酵による発熱(発酵熱)が期待でき、被好気発酵処理物100の好気発酵、乾燥の進行の促進効果を期待できる。
【0083】
こうした被好気発酵処理物100の堆積物内に所定の空隙を形成するための木材チップや固形燃料等の嵩密度調節材2は、例えば、直径が20mm以上、50mm未満、より好ましくは、20mm以上、48mm以下、更に好ましくは、22mm以上、48mm以下の範囲内で、長さが20mm以上、250mm以下、より好ましくは、50mm以上、230mm以下、更に好ましは、80mm以上、200mm以下の範囲内が好適である。寸法が大きすぎるものでは、選別残留物10A及びメタン発酵残渣150の処理量が少なくなるから、不経済な運転となる一方、寸法が小さすぎるものでは、堆積物の下部で所定の空隙を確保できずに通気不足となりやすいことで処理速度が遅くなり、発酵及び乾燥の処理効率が低下する。寸法が当該範囲内であれば、堆積物の下部であっても所定の空隙を確保し酸欠不足を防止できて効率的な発酵、乾燥処理ができ、かつ、経済的な運転となる。よって、能率の良い処理を可能とする。
【0084】
また、好気性微生物を付着した微生物付着体3を混合することで好気発酵の処理効率を高めている。この微生物付着体3としては、好気発酵済みの好気発酵乾燥処理物200であれば好気性微生物が多く付着していることから、好気発酵乾燥処理物200から固形燃料原料210や堆肥原料220を選別したときの残りの好気発酵残渣細粒物や木材チップ等の嵩密度調節材2を微生物付着体3として戻して使用することができる。したがって、好気発酵処理された後の木材チップ等の嵩密度調節材2は微生物付着体3としても機能する。勿論、好気性微生物を付着した別の担体を使用してもよい。
【0085】
次に、このようにして建屋110内の混合ヤードY3で作成した、メタン発酵残渣150、選別残留物10A、嵩密度調節材2及び微生物付着体3を混合してなる被好気発酵処理物100は、建屋110内に搬入搬出口を有し建屋110と連続して設置された発酵乾燥装置120のハウジング121の室内にホイールローダー等によって搬入され、そこで好気発酵及び乾燥処理される。
【0086】
ここで、好気発酵乾燥装置120のハウジング121は、例えば、コンクリート製で形成され、室内と室外の空気流を結果的に遮断できる程度の封止状態を維持して、室外温度に一致しない程度に室内温度を制御自在とする構成であればよい。
ハウジング121は、通常、搬入搬出口がその室内と室外の空気流を遮断できる扉で開閉自在とされる。なお、仮に、搬入搬出口と扉との間に隙間があっても、室内側が負圧で室内から室外方向の空気流が防止され、室外から室内方向の空気流であれば許容される。扉は被好気発酵処理物100の積み込み及び好気発酵乾燥処理物200の積み出し時にのみ開けられ、処理工程時には常に閉じられた状態にある。
発酵乾燥装置120のハウジング121の台数は、複数台が好ましいが1台であってもよく、複数台の場合には、バッチ処理によって運転され、稼働日数及び処理量から、その容量及び台数を決定できる。なお、ハウジング121の全体形状は、特に問われず、底面及び両側面と天井面を形成する断面四角形の筒状であってもよいし、ドーム型の筒状であってもよい。
【0087】
本実施の形態の発酵乾燥装置120では、ハウジング121の上部から室内空気をファン(ブロア)165で吸気し、その空気を圧縮してハウジング121の下面から噴出することでハウジング121内の空気を循環させる空気循環部163を形成し、ハウジング121内に積み込まれた被好気発酵処理物100に対し送風による空気の供給を行っている。
また、ハウジング121の室内空気を排出する空気排出部162と、ハウジング121の室内にハウジング121の室外の建屋110内の空気を導入する空気導入部161が形成されており、ハウジング121の室内を常に負圧に維持する通気を行っている。
【0088】
本実施の形態の発酵乾燥装置120においては、ハウジング121室外の建屋110内の空気をハウジング121室内に取り込む空気導入部161のハウジング121室内への入力と、ハウジング121の上部から吸気した空気を下部から噴出して循環させる空気循環部163のハウジング121室内への入力とをまとめており、それら空気導入部161及び空気循環部163の合流した経路にファン(ブロア)165を配設し、ファン165の吸い込みによってハウジング121の上部から出力した空気とハウジング121室外の建屋110内から取り入れた空気とをまとめてハウジング121の下面から噴出させている。
【0089】
特に、本実施の形態の発酵乾燥装置120では、ファン165の入力側(吸気側)であって空気導入部161及び空気循環部163の合流前の経路で、空気導入部161においてハウジング121室外の建屋110内から導入する空気量を調節できるダンパ(流量調節のバルブ)166aが配設されている。また、空気導入部161の合流前の経路で空気循環部163にもハウジング121の上部から吸気する空気量を調節するダンパ166bが配設されている。これより、空気導入部161による新鮮な空気の入力と、空気循環部163による循環させる空気の入力との切替えを行うことなく、ダンパ166a及びダンパ166bによって両者の入力量を個別に調節することでハウジング121室内の温度、酸素量及び負圧に維持する圧力の調節を可能とする。
【0090】
したがって、本実施の形態の発酵乾燥装置120では、空気導入部161及び空気循環部163の合流経路に配設したファン165の駆動によって、空気循環部163においてハウジング121の上部から室内の空気が吸気され、また、空気導入部161においてハウジング121室外の建屋110内から空気が吸気されて、空気導入部161及び空気循環部163の合流経路でそれらハウジング125から出力した空気と、ハウジング121室外の建屋110内から取り込まれた導入空気とが混合され、それがファン165から吹き出され圧縮空気としてハウジング121の下面から噴出される。
即ち、ハウジング121の下面から噴出させてハウジング121内に入力する圧縮空気は、空気循環部163におけるハウジング121の上部から吸気した空気と、空気導入部161におけるハウジング121室外の建屋110内から取り込んだ導入空気とが混合された空気としている。
こうして、ハウジング121の下面から、空気導入部161におけるハウジング12の室外の建屋110内から取り込んだ新鮮な空気(導入空気)がハウジング121に供給されることで、ハウジング121内に酸素が補充される。
【0091】
そして、本実施の形態では、このように空気循環部163におけるハウジング121の上部から吸気した空気と、空気導入部161におけるハウジング121室外の建屋110内から取り込んだ導入空気との混合空気をハウジング121室内の下部から被好気発酵処理物100に対し送風し供給していることで、その混合空気では、ハウジング121の上部から吸気した空気よりも相対的に湿気が低下しているから、被好気発酵処理物100内を上から下に通過する際に被好気発酵処理物100内の水分を蒸発させやすいものとなる。
【0092】
即ち、空気循環部163においてハウジング121室内の上部から吸気した空気は、被好気発酵処理物100からの水分や散水による水分が蒸発した湿気を多く含む一方で、通常、ハウジング121室外の建屋110内から取り込んだ空気は相対的に湿気が少ないものとなるから、両者を混合してハウジング121の下面から噴出し、被好気発酵処理物100に通気させる空気は、ハウジング121の上部から出力した空気よりも相対的に湿度が低下したものになる。よって、被好気発酵処理物100に通気させる空気により被好気発酵処理物100中の水分を乾燥させる乾燥効率を高めることが可能である。
【0093】
更に、通常、臭気対策から通気に乏しい構造とする建屋110では、冬場であっても外気温の影響を受けにくいものとなるところ、空気導入部161では、外気ではなく建屋110内の空気を取り込むことで、冬場であっても空気導入部161からの導入空気の温度低下が抑えられ、好気性微生物への負荷も少なく、好気発酵及び乾燥の処理効率の低下を抑えることができる。即ち、外気温の変化に大きく影響されずに空気導入部161からの導入空気の温度変化が抑えられることで、好気性微生物への負荷も少なく、好気発酵及び乾燥の処理効率を維持することが可能である。
【0094】
また、本実施の形態では、ファン165が動作した状態では、空気循環部163及び空気導入部161の空気流は停止することなく、空気導入部161により被好気発酵処理物100に常に酸素が供給されることで、好気性微生物による被好気発酵処理物100の好気的発酵及び乾燥の処理効率が高いものとなる。なお、被好気発酵処理物100の搬入時及び好気発酵乾燥処理物200の搬出時を含めファン165を常に動作させることにより、ハウジング121内の吸引及び排気口の目詰まりを防止することもできる。必要に応じファン165をインバータ制御による速度制御することによって風量を調節してもよいし、回転速度を落として省エネルギ運転を行うことも可能である。バッチ処理する複数のハウジング121を設ける場合には、ファン165はハウジング121の1台毎の配設が好ましい。
更に、本実施の形態の発酵乾燥装置120では、ハウジング121内の空気を循環させる空気循環部163のハウジング121内への入力と、建屋110内からの空気を導入する空気導入部161のハウジング121内への入力とをまとめているから、部品点数を少なく安価に構成することができる。
【0095】
そして、本実施の形態の発酵乾燥装置120では、ハウジング121の室内空気を外部に排出する空気排出部162が形成され、また、そこにハウジング121内から排出する空気量を調節するダンパ163cが配設されている。したがって、ダンパ166a、166b、166cによって空気排出部162の外部に排気する空気量(m3/min)と空気導入部161の建屋110内から導入する空気量(m3/min)を制御することによって、ハウジング121の室内を負圧に維持してハウジング121の室内の臭気が室外に漏れ出さないようにし、また、ハウジング121の室内の温度、酸素量等の調節を可能としている。
【0096】
即ち、本実施の形態の発酵乾燥装置120においては、ハウジング121室外の建屋110内からハウジング121室内に導入する空気量と、ハウジング121の上部から吸気してハウジング121の下部に戻す循環の空気量と、ハウジング121から外部に排気する空気量とをダンパ166a、166b、166cでそれぞれ個別に調節できるようにし、ハウジング121室内が正圧にならないようにし、つまり、室内側が負圧で室内から室外方向の空気流を防止してハウジング121室外に室内の臭気が出ないようにし、また、ハウジング121室内を好気性微生物の生育に適した温度及び酸素環境や乾燥を促進させる通風量に制御している。
なお、後述するように、ハウジング121室内の空気を排出する空気排出部162はエアプレナム室130に繋がっており、そこで、ハウジング121室外の建屋内110からの導入空気と混合されたのち、生物脱臭装置140で脱臭処理され、外気(大気)へと排出される。
【0097】
また、本実施の形態の発酵乾燥装置120では、ハウジング121の上部からハウジング121室内に水を噴霧している。これにより、被好気発酵処理物100を好気性発酵する好気性微生物の活性、生育に必要な水分を均一に付加できるから、好気発酵の処理効率を高めることができる。
【0098】
特に、本実施の形態では、ハウジング121室内で排出される廃水、即ち、ハウジング121内に積み込まれた被好気発酵処理物100から染み出た浸出液や散水の余剰水、更には、ハウジング121以外の他の場所で排出(生成)される廃水、例えば、廃棄物1A,1B、被メタン発酵処理物10B、メタン発酵残渣150、選別残留物10A、被好気発酵処理物100から浸出した浸出液や設備の洗浄水等の廃水、それらを回収、収集し、フィルタ172で異物等を濾過した後、ハウジング121の室内に噴霧する散水に使用している。
【0099】
即ち、本実施の形態では、ハウジング121から排出される廃水、更には、ハウジング121以外の建屋110内等から排出される廃水を回収し、それらをハウジング121室内に積み込んだ被好気発酵処理物100に噴霧する第1の循環水設備171を形成している。
【0100】
ハウジング121では、その底部に排水溝を形成し、そこから被好気発酵処理物100に含まれていた水や噴霧した余剰水の廃水がハウジング121室外に排出されて回収され、廃水に含まれている異物等をフィルタ172で取り除いたのち、その濾過した水をハウジング121室内に戻し、室内の上部からハウジング121室内を加湿する散水として噴霧する。
また、ハウジング121室外の建屋110内でも、廃水を回収する集水構造を設け、ハウジング121から回収した廃水と同様に、その回収した廃水からフィルタ172で異物等を取り除いた後、その濾過した水をハウジング121の室内の上部からハウジング121室内を加湿する散水として噴霧する。
つまり、本実施の形態の第1の循環水設備171では、ハウジング121から排出される廃水及びハウジング121とは別途の場所から排出される廃水をも回収し、それをフィルタ172で濾過したのち、ハウジング121の天井側に設けた散水ノズルでハウジング121室内に水滴として噴霧する。
【0101】
この第1の循環水設備171には、ハウジング121から排出される廃水やハウジング121以外の場所で排出される廃水がまとめられる貯水タンク173Aと、貯水タンク173Aからポンプ等で加圧して出力した水を濾過するフィルタ172と、フィルタ172を通過した清浄水を貯留する貯水タンク173Bとが配設されており、貯水タンク173Bにまとめられた水がポンプ等で加圧されて、ハウジング121室内に設けた噴霧ノズルに圧送され、噴霧ノズルから噴霧される。なお、フィルタ172は、廃水に含まれているごみ、砂、微粒子等を除去するものであればよく、好気性微生物は通してよいものである。
また、本実施の形態では、後述する生物脱臭装置140に散水した水を回収して再利用する第2の循環水設備181からの水もバルブ等を介しての第1の循環水設備171の貯水タンク173Aに導入できるように供給路174を設けている。更に、工業用水や飲用水等の外部からの水もバルブ等を介して貯水タンク173Bに導入できるようにしている。
【0102】
したがって、ハウジング121から排出された水と、ハウジング121以外の建屋110内等の場所で生成した水とが、貯水タンク173Aでまとめられる。そして、貯水タンク173Aに収集した水は、ポンプ等によって、フィルタ172に圧送され、そこで、異物等が取り除かれたのち、貯水タンク173Bに入力される。そして、貯水タンク173Bに収集した水が、ポンプ等で加圧しハウジング121の室内に設けた噴霧ノズルに圧送され、噴霧ノズルから噴霧される。
【0103】
こうして、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、被好気発酵処理物100に含まれていた水分、またハウジング121室内に噴霧された水の余剰水も含め、ハウジング121室内に排出された廃水は、ハウジング121の底部に形成した排水溝からハウジング121室外に排出され、貯水タンク173A、フィルタ172、貯水タンク173Bを介して、散水として利用されることで、外部に排出しない構造である。更に、ハウジング121以外の場所で生成した廃水についても、それ回収し、それを被好気発酵処理物100への散水に利用し、外部に排出しない構造としている。
【0104】
また、本実施の形態の第1の循環水設備171では、貯水タンク173A、173Bを設けていることで、水分量の変動にも対応でき、貯水タンク173A、173B内の水が不足する場合に、第2の循環水設備181からの水や外部から水を補充することで、過剰な水分の貯留を防止してコストを抑えることができる。
【0105】
そして、このように第1の循環水設備171により、ハウジング121室内からの廃水を回収して、更には、ハウジング121以外の建屋110内から生じた廃水をも回収して、それをハウジング121室内に噴霧することで、好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内で好気発酵させている被好気発酵処理物100に対し水分供給の均等化及び水分補給を可能とするから、好気発酵及び乾燥の偏在が防止され被好気発酵処理物100全体で好気発酵の均一化が可能で、好気発酵及び乾燥の効率的な処理を可能とする。
【0106】
特に、好気発酵乾燥装置120においてハウジング121室内で被好気発酵処理物100から染み出した廃水を外部に排出することなくフィルタ172で異物を除去したのち被好気発酵処理物100に散水し、また、その散水の余剰水も含めて廃水を回収し繰り返し散水に使用するものであり、ハウジング121内で生じた廃水は好気性微生物を含むから、それを水滴として噴霧する水にも、好気性微生物が含まれることで、被好気発酵処理物100に対して好気性微生物を均一に分布させて好気性発酵による処理効率を高めることができる。即ち、水滴の噴霧により、好気性微生物を上から下に移動させることにもなり、効率のよい好気発酵処理を可能とする。
【0107】
更に、ハウジング121室内からの廃水及びハウジング121以外の建屋110内から生じた廃水をも回収して散水に使用するから効率的な好気発酵処理のための好気性微生物に必要な水分を低コストでまかなうことができ、また、廃水を外部に排出しないものであるから排水のための浄化を不要化できる。
【0108】
なお、ハウジング121の排水溝に落下した水の排出は、所定量に収集されたタイミングでポンプ等で吸引し、貯水タンク173Aに集水してもよいし、排水が所定以上溜まったときに貯水タンク173A側に流れるようにしてもよい。また、ハウジング121の排水の構成部品とハウジング121室内に空気を入力する構成部品とを兼用させてもよい。即ち、第1の循環水設備171においてハウジング121の下部に設けた排水溝から排出された水を貯水タンク側に流す排水の管路と、空気導入部161や空気循環部163のハウジング121に導入する空気を上記管路を介して排水溝側から導入するものとしてもよい。この場合には、排水された水を吸引ポンプ等で貯水タンク173A側に流すときには、空気の導入を中止するソフトウエアの切り替えで行えばよいから、部品点数を少なくできる。勿論、別途で構成することも可能である。
【0109】
こうして、本実施の形態の好気発酵乾燥装置120では、被好気発酵処理物100が積み込まれたハウジング121室内に第1の循環水設備171によって水滴が噴霧され、また、空気導入部161によるハウジング121室外の建屋110内の空気の導入によって常に酸素が補充されることで、微生物付着体3を含んだ被好気発酵処理物100中の好気性微生物が活性化され、好気性微生物による被好気発酵処理物100の好気性発酵が進行する。
【0110】
特に、本実施の形態の好気発酵乾燥装置120では、空気排出部162によるハウジング121室内の空気を排気する排気量、空気導入部161によるハウジング121室外からの空気の導入量及び空気循環部163によるハウジング121室内を循環させる空気量の調節による温度、圧力、酸素量の制御によって、主に好気性微生物の活発化、生育に適した環境を維持することで効率的な好気性発酵処理を可能としている。そして、本実施の形態では、こうした好気発酵乾燥装置120の情報をびで管理し、制御している。例えば、ハウジング121の少なくとも室内温度及び室内圧力の情報や、ハウジング121室外の建屋110内の温度の情報や、空気排出部162のハウジング121室内から排出される空気の温度の情報や、第1の循環水設備171によりハウジング121内に噴霧する水温の情報等がセンサで検出されてコンピュータCOMPに入力される。こうしたコンピュータCOMPに入力された情報は、空気導入部161のダンパ166a、空気循環部163のダンパ166b、空気排出部162のダンパ166c、ファン165等の制御に使用される。
なお、こうしたコンピュータ制御により各工程の自動制御が可能で、例えば、好気発酵乾燥装置120での通気制御も可能であり、センサによる温度、湿度、酸素濃度、或いは二酸化炭素濃度をモニタできる。これによって最終製品の品質保証が可能となる。水分量、酸素濃度、工程変数の制御が自動化され、高効率化され、しかも、安全な均一処理であるばかりか、ロット毎の処理記録が残り、自治体の諸規制に対する適合性の証明もできる。
【0111】
ここで、本実施の形態の好気発酵乾燥装置120における微生物による発酵過程では、まず、初期の数日間には、被好気発酵処理物100中の易分解性の有機物質、例えば、たんぱく質、アミノ酸、糖質等をバクテリア、糸状菌等が積極的に分解し、被好気発酵処理物100、延いてはハウジング121室内の温度を上昇させる。易分解性の物質が消費され温度が高温になると、高温性好気性の放線菌等が有機物の分解に携わるようになり、ヘミセルロースやセルロースの分解が始まり、温度は最高60℃~80℃になる。この高温環境によって雑菌類が死滅することで処理物の衛生化が図れる。好ましくは、65℃以上、48時間以上で病原菌等が殺菌される。続いて30℃~50℃の中温域を維持し、有機物の分解を更に促進させる。その後、ハウジング121室外から取り入れる空気導入部161の空気量を増やして、冷却及び乾燥を促進させる。
【0112】
こうして、本実施の形態の好気発酵乾燥装置120では、好気性微生物による被好気発酵処理物100の分解、好気発酵が進み、また、発酵熱、通気による乾燥が進む。即ち、この好気発酵乾燥工程(ステップS50)では、バクテリア、糸状菌等の好気性微生物によって、酸素及び被好気発酵処理物100の有機物が消費されて二酸化炭素及びエネルギ(熱)が生産され、ここで発生した熱は、被好気発酵処理物100の温度を上昇させ、被好気発酵処理物100を乾燥させる。
【0113】
特に、本実施の形態では、好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内に新鮮な空気を取り入れる空気導入部161では、外気ではなくハウジング121室外の建屋110内の空気を取り入れ、ハウジング121室内に導入している。このとき、本実施の形態では、空気導入部161と空気循環部163を合流させて、空気循環部163のハウジング121室内の上部から出力した空気と、ハウジング121室外の建屋110内の空気とを混合させ、ハウジング121室内の下部から入力して、その混合空気を被好気発酵処理物100に送風、通気させる構成であるから、被好気発酵処理物100の内部にも均一に酸素が補充され、好気発酵及び乾燥が効率的に進行する。
【0114】
ここで、ハウジング121室内は散水によって加湿され、また、好気発酵により温度が上昇することで空気循環部163のハウジング121室内の上部から出力した空気は湿気及び温度が高くなる一方、空気導入部161のハウジング121室外の建屋110内から取り入れる空気は、相対的に湿度及び温度が低く乾いたものである。
したがって、本実施の形態では、空気循環部163のハウジング121室内の上部から出力した空気と、ハウジング121室外の建屋110内から取り入れた導入空気とを混合し、ハウジング121室内の下部から入力していることで、被好気発酵処理物100に対し下方から上方に通気させる空気は、空気循環部163のハウジング121室内の上方から出力した空気よりも相対的に湿度の低い空気である。よって、被好気発酵処理物100を通気させる空気は、被好気発酵処理物100中の水分の蒸発、即ち、乾燥の促進を可能とする。そして、空気排出部162から排出する湿気量を多くできる。
【0115】
特に、空気導入部161では、外気ではなくハウジング121室外の建屋110内の空気を取り入れるから、外気と比較し、外気温の影響を受け難い。即ち、負圧に維持して臭気の漏れを防止している気密性の高い建屋110内では、冬場でも外気に比べ温度を高く維持可能であり、外気温と比較し一年を通して少ない温度変化に制御も可能である。したがって、冬場であってもハウジング121室内に外気の冷気が取り込まれることなく、建屋110内の比較的暖かい空気をハウジング121室内に取り入れていることが可能であり、外気温の変化があっても、ハウジング121室内に積み入れた被好気発酵処理物100の好気発酵及び乾燥処理の効率を維持できるものとなる。即ち、冬場であっても空気導入部161の空区と空気循環部163の空気と温度差を小さくでき、空気導入部161の空気がハウジング121室内から出力された空気と混合したときに水分の凝縮を生じ難く被好気発酵処理物100中の水分の蒸発、即ち、乾燥を促進できる。また、空気導入部161で建屋110内の空気をハウジング121室内に取り入れるものでは、冷たい外気が導入されないことで、微生物への負荷も少なく、ハウジング121室内の温度制御が容易で微生物の活性も低下し難く、効率的に発酵及び乾燥を進行させることができる。
【0116】
好気発酵乾燥装置120において、好気性微生物により好気発酵され、その発酵熱及び通気(送風)によって乾燥された後の好気発酵乾燥処理物200は、ホイールローダー12等が中継し次の選別工程(ステップS81)の建屋110内にある後処理設備に搬出される。
図4に示したように、本実施の形態の後処理設備では、磁気選別や近赤外線選別等で不燃物230や塩化ビニル240を除去し、また、粒度及び重量選別によって、例えば、所定のオーバーサイズ重量物として選別される嵩密度調節材2と、所定のオーバーサイズ軽量物として選別される固形燃料原料210と、所定のアンダーサイズ細粒物として選別される堆肥原料220または微生物付着体3としての発酵残渣細粒物とに分別される。
【0117】
例えば、本実施の形態の後処理設備においては、最初に粒度及び重量選別機151で所定の空気流による浮力及び所定サイズのメッシュの篩(フルイ)で比重、重量、粒子の大きさで選別する。なお、このとき選別機151に導入した空気流は、サイクロン152に導き、渦流で塵芥を下に落として除去し、サイクロン152の上部から塵芥を除去した空気を排出している。サイクロン152の出力側にもファンで吸引するのが効果的である。
【0118】
この選別機151では主に大きな木材チップ(木辺)等の嵩密度調節材2を含む所定のオーザーサイズ及び所定重量以上の重量物と、主に紙やプラスチック等が含まれる所定のオーザーサイズで所定の重量未満の軽量物と、主に生ごみの分解物が含まれる所定のアンダーサイズの細粒物とに分別する。
【0119】
選別機151で選別された所定のオーバーサイズで所定重量以上の重量物は、主に、大きな木材チップ等の嵩密度調節材2を含むから、磁気選別機153による磁気選別または手選別等によって鉄類、磁気等の不燃物230を除去したのち、混合ヤードY3に返送され、嵩密度調節材2として再利用される。
また、選別機151で選別した所定のアンダーサイズの細粒物は、磁気選別機153による磁気選別等によって鉄類、磁気等の不燃物230を除去したのち、堆肥原料220及び/または発酵残渣細粒物である微生物付着体3として利用される。即ち、堆肥原料220としてもよいし、発酵残渣細粒物は好気性微生物を多く付着するから混合ヤードY3に返送され、種菌の微生物付着体3として使用してもよい。
更に、選別機151で選別した所定のオーザーサイズで所定重量未満の軽量物は、紙、プラスチック等を含むから、赤外線選別機154による赤外線選別によって塩化ビニル240を除去したのち、固形燃料製造原料210とされる。
【0120】
固形燃料原料210は、固形燃料製造工程で、例えば、乾いたプラスチック、木質材、紙、布等の熱量調整材と混合され、また、粉砕機で粉砕され、更に、鉄や石等の不燃物230を除去し、成形機で成形されることによって固形燃料化され、固形燃料211となる。なお、成形工程では、必要に応じ腐敗防止剤等の添加材が添加される。また、このときの固形燃料製造工程、特に成形工程で生じた臭気、水蒸気等は、生物脱臭装置140に送給し、そこで脱臭した後、外へ排気している。
こうして成形された固形燃料211は、輸送性、貯蔵性に優れ、燃料として扱いやすくなり、多用途(暖房、発電等)に使用できる。
なお、固形原料燃料210はベーラー(圧縮梱包機)で圧縮梱包することによって固形燃料製造工程への移送を容易にすることができる。
また、堆肥原料220は、別途の熟成床で、上述の好気発酵乾燥のときと同様、散水と通気を行いながら、数日から数週間寝かせて熟成させ、その後、用途や使用条件に合わせた篩分けや、必要があれば更なる熟成を経て、高品位な堆肥221を得ることができる。
【0121】
ところで、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、発酵乾燥装置120において空気導入部161及び空気循環部163のハウジング121室内に入力する空気量よりも、空気排出部162のハウジング121室内から排出する空気量を大きく設定し、ハウジング121室内を負圧に維持することでハウジング121室外に臭気が出る可能性を皆無としているが、空気排出部162のハウジング121室内から排出した空気(臭気)は、生物脱臭装置140で脱臭処理してから外部に排気している。
【0122】
特に、本実施の形態の廃棄物処理プラントにおいては、ハウジング121室内の排出した空気の風路を形成する空気排出部162がエアプレナム室130に繋がっており、そのエアプレナム室130ではハウジング121室外の建屋110内の空気も導入していることで、そこで、ハウジング121室内から排出した空気とハウジング121室外の建屋110内の空気とが混合される。そして、そのエアプレナム室130の室内空気が生物脱臭装置140に送給される。
【0123】
なお、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、ハウジング121室外の建屋110内からエアプレナム室130に空気を導入する経路には、ダンパ136Aやファン(図示せず)等が配設し、エアプレナム室130に入れる建屋110内からの空気量を調節できるようにし、また、エアプレナム室130に入るハウジング121室内から排出した空気量もダンパ166cによって調節できるようにし、両者の調節によって、エアプレナム室130の湿度が所定以下となるように制御できるようにしている。
また、エアプレナム室130から生物脱臭装置140までの空気の経路には、ファン135及びダンパ136Bが配設されており、エアプレナム室130からの空気はファン(ブロア)135で加圧されて生物脱臭装置140に送給され、また、ダンパ136Cによってエアプレナム室130から生物脱臭装置140に送給する空気量を調節できるようにしている。なお、建屋110内からエアプレナム室130に空気を導くファンやエアプレナム室130から生物脱臭装置140に空気を導くファン135は、回転数制御ができるようにインバータ制御することで、必要に応じて回転速度を落として省エネルギ運転を行うようにしてもよい。
【0124】
本発明を実施する場合には、必要に応じ、エアプレナム室130から生物脱臭装置140まで経路の途中にはスクラバー装置137を配設し、エアプレナム室130からの空気に含まれる有害物質等を除去してから、生物脱臭装置140に供給するようにしてもよい。更には、化学脱臭装置を設けることも可能である。化学脱臭装置では、フィルタ媒体中を強制通過させ、そこで、ガス中に含まれる水溶性の化合物がフィルタ媒体を覆っている湿潤状態のバイオフィルムに溶解吸収される。なお、バイオフィルムは、水分と多糖類、バクテリアのエコシステムに起因する物質や微生物に由来する物質で構成された薄い層であり、気流中のガスがバイオフィルムの中に入ると、汚染物質は、微生物と接触し、化合物が分解されることになる。
【0125】
エアプレナム室130からの空気が導入される脱臭設備を構成する生物脱臭装置(バイオフィルタ装置)140は、通常、建屋110の屋外に設置され、例えば、木材チップ、堆肥床、土壌、ビート等の好気性微生物が付着あるいは自然状態で好気性微生物が存在している担体からなるバイオフィルタ142を上方が開放されている収容槽141内に堆積して収容してなる。なお、バイオフィルタ142としては、好ましくは、吸湿性、調湿性を有し、所定の寸法形状の充填によって通気を確保できる木材チップが好適である。
詳細には、生物脱臭装置140では、収容槽141の底面から所定高さの位置で上下に空間を区画し通気孔を有する床材143を設置し、その床材143の上に、木材チップ等の担体を堆積しバイオフィルタ142を形成する。そして、エアプレナム室130からの空気は、収容槽141の下方の床材143で区画された下の空間に導入され、床材143の通気孔を通って、木材チップ等の担体が堆積されたバイオフィルタ142内を下から上に通って流れ、収容槽141の上方から大気へと放出される。
【0126】
そして、収容槽141の下方から入力された空気がバイオフィルタ142内を下から上に向かって通り抜ける際に、空気に含まれていた臭気成分が、バイオフィルタ142の木材チップ等の担体に付着している好気性微生物の好気的発酵により消費(分解、消化)される。
【0127】
こうして、好気発酵乾燥装置120から排気された臭気を含んだ空気は、エアプレナム室130で建屋110内から取り入れた導入空気と混合された後、生物脱臭装置(バイオフィルタ装置)140に入力され、そこでバイオフィルタ172により生物脱臭され、大気に放出される。
なお、このような好気性微生物の生物的処理による消化によって脱臭を行う生物脱臭装置140では、好気発酵乾燥装置120から排気された悪臭ガスが、例えばCO2やH2Oのような無害な物質や、SO4
-やNO3
-のような無機イオンに分解されて放出されるが、このとき、後処理が必要な残渣を発生することもなく、また、焼却するものでもないから、CO2やNOXの排出も最小限に抑えられる。
【0128】
このとき、生物脱臭装置(バイオフィルタ装置)140では、木材チップ等の担体が堆積してなるバイオフィルタ142に対して収容槽141の上方から散水を行っている。これにより、収容槽141の下方から入力された臭気を分解、消費する木材チップ等の担体に付着した好気性微生物の活性、生育に必要な水分を均一に付加、補充できるから、安定した脱臭効率が得られる。
【0129】
特に、本実施の形態では、散水の余剰水を回収、収集し、それを再び散水に再利用している。即ち、本実施の形態では、収容槽141の上方から散水され、底部に落下した余剰水を回収しそれを再び収容槽141の上方から散水する第2の循環水設備181を形成している。
【0130】
収容槽141内では、散水の余剰水が床材143の通過孔を通って床材の下の空間に流下し、そこから、収容槽141の外に排出されて、貯水タンク183に集水され、貯水タンク183からポンプ等によって、収容槽141の上側に設けた噴霧ノズルに圧送し、噴霧ノズルからバイオフィルタ142に水滴として噴霧される。
また、第2の循環水設備181では、工業用水や飲用水等の外部からの水をバルブ等を介して貯水タンク183に補充できるようにしている。
なお、本実施の形態では、第1の循環水設備171においてハウジング121室内に噴霧する水の供給量が不足する場合等には、バルブ等を設けた供給路174を介して第2の循環水設備181の貯水タンク183に収集した水を第1の循環水設備171の貯水タンク173Aに供給できるようにしている。
【0131】
こうして、第2の循環水設備181により、バイオフィルタ172に散水によって水を供給し、また、その散水した余剰水を排出、回収してそれをバイオフィルタ172への散水に再利用することで、バイオフィルタ172に対し好気性微生物の発酵、生育に必要な水分の補給及び水分供給の均等化を可能とし、安定した脱臭処理効率を得ることができる。特に、バイオフィルタ172を通過して回収された散水の余剰水は好気性微生物を含むから、それを水滴として噴霧する水にも、好気性微生物が含まれることで、バイオフィルタ172に対して好気性微生物を均一に分布させて好気性発酵による消化効率を高めることができる。即ち、水滴の噴霧により、好気性微生物を上から下に移動させることにもなり、効率の良い臭気処理が可能となる。
更に、散水の余剰水を回収して再使用するから安定した脱臭効率のための好気性微生物に必要な水分を低コストでまかなうことができ、また、散水の余剰水を外部に排出しないものであるから排水のための浄化を不要化できる。
【0132】
なお、収容槽141内において、床材143と底面との間の空間に落下した水の排出は、所定量に収集されたタイミングでポンプ等で吸引し、貯水タンク183に集水してもよいし、排水が所定以上溜まったときに貯水タンク183側に流れるようにしてもよい。また、ここでは、収容槽141内に床材143と底面との間の空間に入力されて床材143の通気孔を通ってバイオフィルタ172に入る空気の風路と、バイオフィルタ172に散水され、床材143の通気孔を通って床材143と底面との間の空間に落下した水の通路を供給していることで、部品点数を少なくできるが、別途で構成することも可能である。
【0133】
特に、本実施の形態では、上述したように、空気排出部162で好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内から排出した空気は、エアプレナム室130で、ハウジング121室外の建屋110内の空気と混合されてから、生物脱臭装置140に入力され、そこから外気へと排気させている。
【0134】
ここで、好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内は散水によって加湿され、また、好気発酵により温度が上昇することで、ハウジング121の室内上部から排出しエアプレナム室130に入力される空気排出部163の空気は、温度と湿気が高くなる一方、別途エアプレナム室130に入力されるハウジング121室外の建屋110内の空気は、相対的に湿度や温度が低く乾いた空気である。
【0135】
したがって、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、エアプレナム室130において、ハウジング121室内の上部から排出された空気排出部162の空気と、ハウジング121室外の建屋110内の空気とが混合されることで、エアプレナム室130から生物脱臭装置140に送給する空気は、ハウジング121の上部から排出された空気排出部162の空気よりも相対的に湿度や温度が低下したものとすることができる。
【0136】
このため、エアプレナム室130で湿気を低下させた混合空気では、それが入力される生物脱臭装置140内で空気の湿気が凝縮し難いものとなり、ハウジング121室内から排出された湿気の水分が、生物脱臭装置140で排気水として生成して第2の循環水設備181の水分として滞留し難く、ハウジング121室内から排出された湿気の水分量を大気中に放出しやすいものである。即ち、大気中に放出する水分量を多くできる。
【0137】
よって、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、第1の循環水設備171や第2の循環水設備172に水分が貯留し難い構成であり、格別排水用の浄化設備を設けなくとも、廃棄物1A,1Bからの水分量を大気中に放出して消費できるから、排水処理のエネルギコストを抑えることが可能である。
【0138】
更に、通常、臭気対策から通気に乏しい構造とする建屋110では、冬場であっても外気温の影響を受けにくいものとなるところ、エアプレナム室130では、外気ではなく建屋110内の空気を取り込むことで、冬場であってもエアプレナム室130への導入空気の温度低下が抑えられることで、エアプレナム室130の混合空気が送給される生物脱臭装置140のバイオフィルタ142に含まれる好気性微生物への負荷も少なくでき、脱臭効率の低下を抑えることができる。即ち、外気温の変化に大きく影響されずにエアプレナム室130からの混合空気の温度変化が抑えられることで、バイオフィルタ142の好気性微生物への負荷も少なく、脱臭効率の安定化が可能である。
【0139】
こうして、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、廃棄物1A,1Bの一部である主に生ゴミ等が含まれた高含水の被メタン発酵被処理物10Bをメタン発酵させてバイオガスGを生成し、更に、被メタン発酵被処理物10Bをメタン発酵させた後のスラリー状のメタン発酵残渣150は、固液分離することなく、廃棄物1A,1Bの残りの選別残留物10Aと一緒にまとめ、更に、嵩密度調節材2及び微生物付着体3を加えて被好気発酵処理物100を形成し、それを好気発酵させて、その発酵熱及び通気により乾燥させることで固形燃料原料210及び/または堆肥原料210を生成し、また、水分を蒸気として排気するものである。
【0140】
スラリー状のメタン発酵残渣150を廃棄物1A,1Bの残り、即ち、低含水の固形物状の選別残留物10Aと一緒にまとめ、更に、嵩密度調節材2及び微生物付着体3を加えてそれらを好気発酵するものでは、選別残留物10Aの有機物及びメタン発酵残渣150の残渣有機物が豊富にあり、また、スラリー状のメタン発酵残渣150からの水分もあり、更に、嵩密度調節材2の配合によって堆積しても通気が確保されて被好気発酵処理物100内の通気不足による酸欠が防止され嫌気性細菌の動きが抑えられから、微生物付着体3の好気性微生物が活性化されて優勢して活発に動作し、好気発酵が進行する。よって、外部から加熱エネルギを投入しなくとも、その発酵熱により被好気発酵処理物100内の水分を蒸発させることができる。
【0141】
また、被好気発酵処理物100を好気発酵させる好気発酵乾燥装置120では、ハウジング121室内の上方から吸気した空気を下方から圧縮空気として噴出する空気循環部163を形成し、ハウジング121室内の上方から吸気した空気を、空気導入部161によってハウジング121室外の建屋110内から取り入れた導入空気と共に、被好気発酵処理物100に送風しており、被好気発酵処理物100へ空気を圧送する通気によって好気発酵及び乾燥の進行が促進される。特に、空気循環部163により、好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内に堆積した被好気発酵処理物100においては下方から上方に向かって空気が流れる空気の通り道が形成され、被好気発酵処理物100を攪拌することなく被好気発酵処理物100に対する空気、酸素の供給の均等化によって好気発酵の偏在を防止し、被好気発酵処理物100全体の好気発酵及び乾燥の処理効率を良くできる。
【0142】
このように本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、スラリー状のメタン発酵残渣150を脱水処理することなく、廃棄物1A,1Bから被メタン発酵処理物10Bを選別した残りの選別残留物10Aと混合し、更に、嵩密度調節材2及び微生物付着体3を加えることで、好気発酵させてその発酵熱で水分を蒸発させて脱臭装置140を介して大気中へ放出でき、メタン発酵残渣150の水分を浄化して排水(放流)する浄化設備や加熱乾燥させる加熱設備を要しないから、設備運用コスト、エネルギコストを抑え、低エネルギ、低コストで廃棄物1A,1Bのリサイクル(再資源化)が可能である。
【0143】
また、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、第1の循環水設備171によって、被好気発酵処理物100を好気発酵している好気発酵乾燥装置120の被好気発酵処理物100から染み出た廃水を回収し、フィルタ172で濾過して異物を除去したのち、好気発酵乾燥装置120で好気発酵させている被好気発酵処理物100に散水するから、被好気発酵処理物100において好気性微生物に必要な水分の均等供給を可能とし、好気発酵の偏在を防止して、好気発酵及び乾燥の処理効率を高くすることができる。
そして、好気発酵乾燥装置120からの廃水を外部に排出しない構成であり、排水のための浄化を設けない。即ち、第1の循環水設備171は、好気発酵乾燥装置120から回収した水が収容され、また、外部からの水を補充できる第1の貯水タンク173A,173Bを有し、更に、第1の循環水設備171及び第2の循環水設備181は、第2の貯水タンク183の水を第1の貯水タンク173A,173Bの水に供給自在な供給路175を設けており、第1の貯水タンク173A,173Bで貯水し、第1の貯水タンク173A,173B内の水が欠乏或いは少量になった場合に第2の貯水タンク183または外部から補充すればよいから、外部からの水分の補給を最小限に抑え、過剰な水分の貯留を防止し、コストを抑えると共に、排水のための浄化を不要とする。
【0144】
特に、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内の上方から吸気した空気をハウジング121室内の下方から送風して循環させる空気循環部163と、ハウジング121室内に建屋110内の空気を取り入れる空気導入部161とが合流し、空気循環部163でハウジング121室内の上から吸気した空気と空気導入部161でハウジング121室外の建屋110内から取り入れた導入空気との混合空気をハウジング121室内の下方から被好気発酵処理物100に送風する。
【0145】
したがって、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、空気循環部163で循環させるハウジング121室内の上方から吸気した高湿気の空気を、空気導入部161でハウジング121室外の建屋110内から取り入れた導入空気との混合によって相対的に湿度を低下させ、その湿気を低下させた混合空気を、ハウジング121室内の下方から被好気発酵処理物100に対して供給し、被好気発酵処理物100の下から上へ通過させる。よって、被好気発酵処理物100に通気させる空気が被好気発酵処理物100中の水分を気化させやすいものとなる。故に、被好気発酵処理物100の乾燥の処理効率を向上させることができる。
【0146】
更に、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、好気乾燥発酵乾装置120のハウジング121室内に導入する空気導入部161の空気は、外気ではなく、臭気漏れを防止するために負圧に維持して気密性を高くした建屋110内の空気である。よって、冬場等の外気温が低いときでも、空気導入部161からハウジング121室内に冷気が導入されることなく比較的温度が高い空気が維持されるから、空気循環部163の空気との混合で凝縮水が生じるのが防止され、水分の気化効率、即ち、乾燥効率を維持できる。
【0147】
したがって、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、被好気発酵処理物100の乾燥の高い処理効率が維持され、廃棄物1A,1Bの処理量が多くても、水分を蒸発させやすい構成で、第1の循環水設備171での過剰な水分の貯留を防止でき、排水のための浄化を不要とする。
【0148】
加えて、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、第2の循環水設備181によって脱臭装置140の好気性微生物を含んだバイオフィルタ142に散水した水の余剰水も回収し、散水に再利用しているから、脱臭装置140に散水した水も外部に排出しない構成であり、外部からの水分の補充を最小限とし、過剰な水分の貯留を防止し、排水のための浄化を設けない。即ち、第2の循環水設備181は、脱臭装置140から回収した水が収容され、また、外部からの水を補充できる第2の貯水タンク183を有し、第2の貯水タンク183の水が欠乏したときに或いは少なくなった際には外部から補充すればよいから、外部からの水分の補充を最小限に抑え、過剰な水分の貯留を防止して、コストを抑えると共に、排水のための浄化を不要とする。
【0149】
特に、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内から排出された空気が、エアプレナム室130で建屋110内から取り入れた導入空気と混合されてから、生物脱臭装置140に供給され、そこで生物脱臭されて外部に排気される。
ここで、エアプレナム室130に入力される空気排出部162のハウジング121の上部から排出した空気は、ハウジング121室内が散水によって加湿されまた温度が高くなることで、湿気の高い空気となる。一方、別途エアプレナム室130に入力されるハウジング121室外の建屋110内の空気は、相対的に湿度が低く乾いた空気である。
したがって、本実施の形態では、空気排出部162のハウジング121室内から排出された空気と、ハウジング121の室外の建屋110内の空気とがエアプレナム室130において混合されることで、エアプレナム室130から生物脱臭装置140に圧送される空気では、空気排出部162のハウジング121室内から排出された空気よりも相対的に湿度が低下したものとなる。
【0150】
即ち、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、ハウジング121室内から排出した高湿気の空気を、エアプレナム室130でハウジング121室外の建屋110内から取り入れた導入空気との混合によって相対的に湿度を低下させ、その湿気を低下させた混合空気を、生物脱臭装置140に供給し、バイオフィルタ142の下から上へ通過させて外部へ排気する。よって、ハウジング121室内から排出した空気の湿気が生物脱臭装置140内で凝縮水(排気水)として排出されるのが抑制され、外気に放出する水分量を多くできる。したがって、生物脱臭装置140の水分を扱う第2の循環水設備181に過剰に水分が溜まり難いものである。
即ち、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、廃棄物1A,1Bの処理量が多くても、水分を大気中に排気しやすい構成で、第2の循環水設備181での過剰な水分の貯留を防止でき、排水のための浄化を不要とする。
【0151】
よって、本実施の形態では、好気発酵による発酵熱及び通気によって水分を乾燥し、その水分が生物脱臭装置141や第2の循環水設備181で排気水として排出されるのを防止し、大気中に放出する水分量を多くできることで、廃棄物1A,1Bからの水分を乾燥除去でき、廃水が溜り難い構造である。したがって、廃棄物1A,1Bからの水分を大気に放出させやすいことで、廃棄物1A,1Bを多量に処理する場合であっても、プラント内に水分が貯留し難く、廃棄物1A,1Bからの水分を外部に排出する排水設備の不要化を可能とし、低エネルギコストで廃棄物1A,1BからバイオガスG及び再資源化物(固形燃料211及び/または堆肥221)に有効利用できる。
【0152】
以上説明してきたように、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、廃棄物1Aをメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物10Bと、それ以外の低含水の選別残留物10Aとに分別し、また、被メタン発酵処理物10Bをスラリー状に調質する、破砕機14や混合調節槽19等から構成される前処理設備と、スラリー状にした被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵しバイオガスGを生成するメタン発酵槽21等から構成されるメタン発酵設備と、被メタン発酵処理物10Bのメタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣150を、前処理設備で分別した選別残留物10Aと混合し、更に、嵩増しする木材チップ等の嵩密度調節材2及び好気性微生物を付着した好気発酵残渣細粒物等の微生物付着体3を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物100を作成する混合作業部Y3と、被好気発酵処理物100を好気発酵させて乾燥する好気発酵乾燥装置120等から構成される好気発酵乾燥設備と、被好気発酵処理物100の好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物200から不燃物230及び塩化ビニル240を除去し、固形燃料原料210及び/または堆肥原料220を選別する粒度及び重量選別機151、磁気選別機153、赤外線選別機154等から構成される後処理設備とを具備するものである。
【0153】
したがって、本実施の形態の廃棄物処理プラントでは、廃棄物1Aの一部、即ち、高含水の被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵して熱や電気等のエネルギに変換できるバイオガスGを生成すると共に、メタン発酵後のメタン発酵残渣物110を、廃棄物1Aの残り、即ち、低含水の固形状の選別残留物10Aと、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合してまとめて被好気発酵処理物100とし、それを好気発酵させて乾燥させることにより、固形燃料原料210及び/または堆肥原料220を生成する。
【0154】
特に、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、廃棄物1Aから選別し、調質したスラリー状の被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵した後のスラリー状のメタン発酵残渣物110は、廃棄物1Aから被メタン発酵処理物10Bを選別した残りの低含水な選別残留物10Aと混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材2及び微生物付着体3を加えた状態で好気発酵させるものである。即ち、スラリー状のメタン発酵残渣物110を、選別残留物10A、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合して被好気発酵処理物100とし、それを好気発酵させる。
【0155】
このようにスラリー状のメタン発酵残渣物110を、廃棄物1Aの選別した残りの選別残留物10Aと嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合した被好気発酵処理物100では、メタン発酵残渣物110の残渣有機物と選別残留物10Aの有機物とにより好気性微生物の繁殖に必要な分解性有機物量と適度な水分がある。また、嵩増しする嵩密度調節材2の混合により被好気発酵処理物100の堆積物内部に所定の空隙が確保されて通気がよく、酸素供給が均等化される。よって、嫌気性微生物の活動が抑えられ、被好気発酵処理物100に混合されている微生物付着体3に付着している好気性微生物が優勢して活発に動作することで好気性発酵が進行し、好気発酵による発酵熱で外部から加熱エネルギを加えなくとも、スラリー状の被メタン発酵処理物10Bを含んだ被好気発酵処理物100の水分を蒸発させ、乾燥させるができる。また、本実施の形態では、被好気発酵処理物100に空気を送風し通気していることで好気発酵及び乾燥の進行速度も速く、効率的に好気発酵及び乾燥が進行する。
【0156】
こうして、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、スラリー状のメタン発酵残渣物110を選別残留物10Aと嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合して被好気発酵処理物100を作成し、それを好気発酵させることにより、好気発酵の発酵熱や通気(送風)によってスラリー状のメタン発酵残渣物110の水分を乾燥(蒸発)させることができる。よって、加熱エネルギを加えなくともスラリー状のメタン発酵残渣物110の水分を乾燥除去でき、排水を浄化する浄化装置及び加熱乾燥の装置を持つことなく廃棄物1A,1Bの発酵処理による再資源化を可能とする。即ち、エネルギコストを抑えて廃棄物1A,1BをバイオガスG及び資源化物(固形燃料原料210及び/または堆肥原料220)に有効利用できる
【0157】
更に、本実施の形態の廃棄物処理プラントは、被好気発酵処理物100を好気発酵している好気発酵乾燥装置120から排出される廃水を回収し、フィルタ172で濾過して異物を除去したのち、好気発酵乾燥装置120で好気発酵させている被好気発酵処理物100に散水する第1の循環水設備171を具備するものである。
【0158】
即ち、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、好気発酵乾燥装置120において被好気発酵処理物100から染み出した廃水を排気水として排出することなくフィルタ142で異物を除去したのち被好気発酵処理物100に散水し、また、その散水の余剰水も含めて好気発酵乾燥装置120から排出される廃水を回収し、散水に繰り返し使用する。したがって、好気発酵乾燥装置120で好気発酵させている被好気発酵処理物100に対し水分供給の均等化を可能とするから、好気発酵の偏在を防止し好気発酵及び乾燥の処理効率を高めることができる。そして、好気発酵乾燥装置120からの廃水を外部に排出しないものであり、排水のための浄化も不要である。
【0159】
本実施の形態の廃棄物処理プラントは、更に、被好気発酵処理物100を好気発酵している好気発酵乾燥装置120から排出される空気を生物脱臭して外部に排気する脱臭設備としての生物脱臭装置140と、生物脱臭装置140の好気性微生物を含んだ木材チップ等の担体を堆積してなるバイオフィルタ142に散水し、散水の余剰水を回収して、再び、バイオフィルタ142への散水に再利用する第2の循環水設備181とを具備するものである。
【0160】
したがって、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、被好気発酵処理物100を好気発酵する好気発酵乾燥装置120から排出される臭気を含んだ空気を生物脱臭装置140で脱臭処理してから外部に排気するから、臭気を外に排出しない。
特に、第2の循環水設備181によって、好気発酵乾燥装置120から排出される臭気を含んだ空気を生物脱臭する生物脱臭装置140の好気性微生物が付着している木材チップ等が堆積してなるバイオフィルタ142に対し散水して水分を供給するから、バイオフィルタ142に対し水分供給を均等化でき、また、散水の余剰水を排気水として排水することなく回収して散水に繰り返し再利用することで、バイオフィルタ142の好気性微生物を移動させて好気性微生物の分布を均等化できるから、臭気成分の安定した脱臭効率が得られる。
また、散水の余剰水を排気水として排出しないから、排水のための浄化を不要とし、低コストで済む。
【0161】
本実施の形態の廃棄物処理プラントは、更に、被好気発酵処理物100を好気発酵している好気発酵乾燥設備としての好気発酵乾燥装置120から排出される空気と好気発酵乾燥装置120から排出される空気よりも相対的湿度が低い空気とが入力されて混合され、その混合空気が脱臭設備としての生物脱臭装置140に出力されるエアプレナム室130を具備するものである。
【0162】
したがって、本実施の形態の廃棄物処理プラントによれば、好気発酵乾燥装置120から排出される空気が、エアプレナム室130でそれよりも相対的湿度が低い乾いた空気と混合されて湿度を低下させた後に、生物脱臭装置140で生物脱臭され外部に排気されるから、好気発酵乾燥装置120から排気された水蒸気が生物脱臭装置140内で排気水として排出され難く、外部に排気する水分量を多くできる。よって、生物脱臭装置140及び第2の循環水設備181に水分が過剰に溜まり難く、排水設備の不要化を可能とする。
【0163】
本実施の形態の廃棄物処理プラントは、更に、バイオガスGを精製したのち、燃料として使用して熱電供給するコジェネレーション設備33を具備するから、バイオガスGのエネルギとしての利用効率が高いものであり、バイオガスGをより有効利用できる。特に、廃熱を温水または蒸気として取り出し、メタン発酵設備としてのメタン発酵槽21の加温や保温に使用することもできるから、メタン発酵槽21の加温や保温にかかるコストを抑えることができる。
【0164】
また、上記実施の形態は、廃棄物1Aをメタン発酵に供する高含水の被メタン発酵処理物10Bと、それ以外の低含水の選別残留物10Aとに分別し、また、被メタン発酵処理物10Bをスラリー状に調質する破砕工程(ステップS11)、分別工程(ステップS12)及び調湿工程(ステップS13)からなる前処理工程と、スラリー状にした被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵しバイオガスGを生成するメタン発酵工程(ステップ20)と、被メタン発酵処理物10Bのメタン発酵後のスラリー状のメタン発酵残渣150を、分別工程(ステップS12)で分別した選別残留物10Aと混合し、更に、嵩増しする木材チップ等の嵩密度調節材2及び好気性微生物を付着した好気発酵残渣細粒物等の微生物付着体3を加え、好気発酵に供する被好気発酵処理物100を作成する混合工程(ステップS40)と、被好気発酵処理物100を好気発酵させて乾燥する好気発酵乾燥工程(ステップS50)と、被好気発酵処理物100の好気発酵、乾燥後の好気発酵乾燥処理物200から不燃物230及び塩化ビニル240を除去し、固形燃料原料210及び/または堆肥原料220を選別する選別工程(ステップS81)からなる後処理工程とを具備する廃棄物処理方法の発明と捉えることもできる。
【0165】
こうした本実施の形態の廃棄物処理方法では、廃棄物1Aの一部、即ち、高含水の被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵して熱や電気等のエネルギに変換できるバイオガスGを生成すると共に、メタン発酵後のメタン発酵残渣物110を、廃棄物1Aの残り、即ち、低含水の固形状の選別残留物10Aと、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合してまとめて被好気発酵処理物100とし、それを好気発酵させて乾燥させることにより、固形燃料原料210及び/または堆肥原料220を生成する。
【0166】
特に、本実施の形態の廃棄物処理方法によれば、廃棄物1Aから選別し、調質したスラリー状の被メタン発酵処理物10Bをメタン発酵した後のスラリー状のメタン発酵残渣物110は、廃棄物1Aから被メタン発酵処理物10Bを選別した残りの低含水な選別残留物10Aと混合し、更に、嵩増しする嵩密度調節材2及び微生物付着体3を加えた状態で好気発酵させるものである。即ち、スラリー状のメタン発酵残渣物110を、選別残留物10A、嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合して被好気発酵処理物100とし、それを好気発酵させる。
【0167】
このようにスラリー状のメタン発酵残渣物110を、廃棄物1Aの選別した残りの選別残留物10Aと嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合した被好気発酵処理物100では、メタン発酵残渣物110の残渣有機物と選別残留物10Aの有機物とにより好気性微生物の繁殖に必要な分解性有機物量と適度な水分がある。また、嵩増しする嵩密度調節材2の混合により被好気発酵処理物100の堆積物内部に所定の空隙が確保されて通気がよく、酸素供給が均等化される。よって、嫌気性微生物の活動が抑えられ、被好気発酵処理物100に混合されている微生物付着体3に付着している好気性微生物が優勢して活発に動作することで好気性発酵が進行し、好気発酵による発酵熱で外部から加熱エネルギを加えなくとも、スラリー状の被メタン発酵処理物10Bを含んだ被好気発酵処理物100の水分を蒸発させ、乾燥させるができる。また、本実施の形態では、被好気発酵処理物100に空気を送風し通気していることで好気発酵及び乾燥の進行速度も速く、効率的に好気発酵及び乾燥が進行する。
【0168】
こうして、本実施の形態の廃棄物処理方法によれば、スラリー状のメタン発酵残渣物110を選別残留物10Aと嵩密度調節材2及び微生物付着体3と混合して被好気発酵処理物100を作成し、それを好気発酵させることにより、好気発酵の発酵熱や通気(送風)によってスラリー状のメタン発酵残渣物110の水分を乾燥(蒸発)させることができる。よって、加熱エネルギを加えなくともスラリー状のメタン発酵残渣物110の水分を乾燥除去でき、排水を浄化する浄化装置及び加熱乾燥の装置を持つことなく廃棄物1a,1bの発酵処理による再資源化を可能とする。即ち、エネルギコストを抑えて廃棄物1a,1bをバイオガスG及び資源化物(固形燃料原料210及び/または堆肥原料220)に有効利用できる
【0169】
更に、本実施の形態の廃棄物処理方法は、好気発酵乾燥工程(ステップS50)において好気発酵している被好気発酵処理物100から染み出た廃水(浸出液)を回収し、フィルタ172で濾過して異物を除去したのち、被好気発酵処理物100に散水するものである。
【0170】
本実施の形態の廃棄物処理方法によれば、好気発酵乾燥装置120において被好気発酵処理物100から染み出した廃水を排気水として排出することなくフィルタ142で異物を除去したのち被好気発酵処理物100に散水し、また、その散水の余剰水も含めて好気発酵乾燥装置120から排出される廃水を回収し、散水に繰り返し使用する。したがって、好気発酵乾燥装置120で好気発酵させている被好気発酵処理物100に対し水分供給の均等化を可能とするから、好気発酵の偏在を防止し好気発酵及び乾燥の処理効率を高めることができる。そして、被好気発酵処理物100から染み出した廃水を外部に排水しないものであり、排水のための浄化も不要である。
【0171】
また、本実施の形態の廃棄物処理方法は、更に、好気発酵乾燥工程(ステップS50)で被好気発酵処理物100を好気発酵する好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内から排出される空気を生物脱臭して外部に排気する脱臭工程(ステップS70)を具備し、脱臭工程(ステップS70)では、生物脱臭するバイオフィルタ142に散水し、その余剰水を回収して、再び、バイオフィルタ142の散水に再利用するものである。
【0172】
したがって、本実施の形態の廃棄物方法によれば、被好気発酵処理物100を好気発酵する好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内から排出される臭気を含んだ空気を生物脱臭装置140で脱臭処理してから外部に排気するから、臭気を外に排出しない。
特に、脱臭工程(ステップS70)では、好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内から排出される臭気を含んだ空気を生物脱臭する生物脱臭装置140の好気性微生物が付着している木材チップ等が堆積してなるバイオフィルタ142に対し散水して水分を供給するから、バイオフィルタ142に対し水分供給を均等化でき、また、散水の余剰水を排気水として排水することなく回収して散水に繰り返し再利用することで、バイオフィルタ142の好気性微生物を移動させて好気性微生物の分布を均等化できるから、臭気成分の安定した脱臭効率が得られる。
また、散水の余剰水を排気水として排出しないから、排水のための浄化を不要とし、低コストで済む。
【0173】
更に、本実施の形態の廃棄物処理方法は、好気発酵乾燥工程(ステップS50)と脱臭工程(ステップS70)の間で、被好気発酵処理物を好気発酵しているハウジング121室内から排出された空気と当該排出空気よりも相対的湿度が低い空気とを混合する排気調節工程(ステップS60)を有し、脱臭工程(ステップS70)では、排気調節工程(ステップS60)で混合された空気を生物脱臭して外部に排気するものである。
【0174】
したがって、本実施の形態の廃棄物処理方法によれば、被好気発酵処理物100を好気発酵し乾燥させる好気発酵乾燥装置120のハウジング121室内から排出される湿度の高い空気は、湿度の低い空気と混合されることによって、相対的に湿度が低下され、脱臭に供されるから、ハウジング121室内から排気された水蒸気が生物脱臭する生物脱臭装置140内で排気水として排出され難く、外部に排気する水分量を多くできる。よって、生物脱臭装置140及び第2の循環水設備181に水分が過剰に溜まり難く、排水設備の不要化を可能とする。
【0175】
また、本実施の形態の廃棄物処理方法によれば、更に、バイオガスGを精製したのち、燃料として使用して熱電供給するバイオガス利用工程(ステップS32)を具備するから、バイオガスGのエネルギとしての利用効率が高いものであり、バイオガスGをより有効利用できる。特に、廃熱を温水または蒸気として取り出し、メタン発酵設備としてのメタン発酵槽21の加温や保温に使用することもできるから、メタン発酵槽21の加温や保温にかかるコストを抑えることができる。
【0176】
なお、上記好気発酵では、好気性微生物の使用を前提として説明してきたが、嫌気性微生物の付着が皆無であることを意味するものではなく、好気性微生物の働く環境を作ることを意味するものである。
本発明を実施するに際しては、廃棄物処理プラント及び廃棄物処理方法のその他の部分の構成、成分、配合、製造方法等については、上記実施例に限定されるものではない。また、本発明の実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を許容値内で若干変更してもその実施を否定するものではない。
【符号の説明】
【0177】
1A,1B 廃棄物
2 嵩密度調節材
3 微生物付着体
21 メタン発酵槽
10A 選別残留物
10B 被メタン発酵処理物
33 コジェネレーション設備
100 被好気発酵処理物
110 建屋
120 好気発酵乾燥装置
130 エアプレナム室
140 生物脱臭装置
142 バイオフィルタ
150 メタン発酵残渣
171 第1の循環水設備
181 第2の循環水設備
200 好気発酵乾燥処理物
210 固形燃料原料
220 堆肥原料
Y3 混合ヤード(混合作業部)
G バイオガス