(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046598
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】スカイビング加工機
(51)【国際特許分類】
B23F 5/16 20060101AFI20230329BHJP
B23B 23/00 20060101ALI20230329BHJP
B23B 1/00 20060101ALI20230329BHJP
B23F 23/06 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B23F5/16
B23B23/00 A
B23B1/00 Z
B23F23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155285
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】川端 光弘
(72)【発明者】
【氏名】林 真宣
(72)【発明者】
【氏名】布村 一洋
(72)【発明者】
【氏名】秋月 啓作
【テーマコード(参考)】
3C025
3C045
【Fターム(参考)】
3C025HH03
3C045AA10
3C045FE01
(57)【要約】
【課題】工具や工具主軸との干渉を回避し、加工精度の悪化や工具寿命の低下を防止することが可能なスカイビング加工機を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明にかかるスカイビング加工機100の構成は、ワーク主軸110と、ベース120と、ベース120に着脱可能に取り付けられ、ワーク主軸110と同じ方向に延びてワーク主軸110の前方に心押し軸152を配置する心押しアッシィ140とを備え、心押しアッシィ140はワーク主軸110を中心とする複数の位置に取付可能であることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク主軸と、
ベースと、
前記ベースに着脱可能に取り付けられ、前記ワーク主軸と同じ方向に延びて該ワーク主軸の前方に心押し軸を配置する心押しアッシィとを備え、
前記心押しアッシィは前記ワーク主軸を中心とする複数の位置に取付可能であることを特徴とするスカイビング加工機。
【請求項2】
前記心押しアッシィは前記ワーク主軸と連結および分離可能であり、
前記複数の位置は、前記心押しアッシィを前記ワーク主軸に連結させた状態で回動させた位置であることを特徴とする請求項1に記載のスカイビング加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心押しアッシィを備えたスカイビング加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
心押し台は旋盤にはよく見られる構成であるが、スカイビング加工機においても軸物ワーク(長尺のワーク)を加工する場合には心押し台が有効である。例えば特許文献1に記載の工作機械1は、主軸台13と対向して心押し台15および心押し軸29が配置されている(
図2参照)。特許文献2に記載の歯切り盤1は、ワークピースホルダ3の心押し台3’が心押し台アーム12に配置されている(
図2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-244582号公報
【特許文献2】特開2018-176415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
心押し台はワークの中心線に沿って移動して、ワークの先端を支持する。旋盤であればワークの側方に工具が位置するが、スカイビング加工ではワーク軸と工具軸が対向して配置されて所定の軸交差角を持っていて、工具はワーク軸に近接している。このためスカイビング加工では心押し台が工具や工具主軸と干渉しやすく、心押し台を配置することが困難であった。また配置できたとしても、干渉を回避するために工具径を大きくしたり、工具ホルダーを長くしたりする必要があった。すると工具の剛性が低下して加工精度が悪化したり、工具寿命が低下したりするという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、工具や工具主軸との干渉を回避することで心押し台の配置を容易にし、加工精度の悪化や工具寿命の低下を防止することが可能なスカイビング加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかるスカイビング加工機の代表的な構成は、ワーク主軸と、ベースと、ベースに着脱可能に取り付けられ、ワーク主軸と同じ方向に延びてワーク主軸の前方に心押し軸を配置する心押しアッシィとを備え、心押しアッシィはワーク主軸を中心とする複数の位置に取付可能であることを特徴とする。
【0007】
上記心押しアッシィはワーク主軸と連結および分離可能であり、複数の位置は、心押しアッシィをワーク主軸に連結させた状態で回動させた位置であるとよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、工具や工具主軸との干渉を回避することで心押し台の配置を容易にし、加工精度の悪化や工具寿命の低下を防止することが可能なスカイビング加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態にかかるスカイビング加工機のワーク軸周辺を説明する図である。
【
図2】心押しアッシィの位置の切替を説明する図である。
【
図3】心押しアッシィの位置の切替を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかるスカイビング加工機100のワーク軸周辺を説明する図である(工具軸については
図4参照)。
図1に示す本実施形態のスカイビング加工機100はワーク102の切削加工を行う。本実施形態では、ワーク102の外周に歯車104を創成する例を用いて図示している。
【0012】
本実施形態のスカイビング加工機100は、ワーク102をチャックするワーク主軸110を有する。ベース120は回転可能にワーク主軸110に取り付けられている。
【0013】
またベース120には、心押しアッシィ140が取り付けられている。心押しアッシィ140は取付部142においてボルト144によってベース120に着脱可能に取り付けられている。心押しアッシィ140は、油圧シリンダ146とアーム150が略L字状に配置されている。油圧シリンダ146はベース120からワーク主軸110と同じ方向に延びている。アーム150は油圧シリンダ146の先からワーク主軸110の中心に向かって延びて、ワーク主軸110の前方に心押し軸152を配置する。
【0014】
上記の油圧シリンダ146に油圧を供給することによって、アーム150がワーク主軸110に対して近接または離接する方向に移動する。ガイド148はアーム150の伸縮動作を案内する。
【0015】
心押し軸152には、ワーク102の一端に当接するセンター154が嵌められる。なお、本実施形態のスカイビング加工機100では、心押し軸152に対してセンター154が嵌め込まれる構成を例示した。ただし、これに限定するものではなく、センター154に替えてチャック等の他の部品(不図示)を嵌め込んでもよい。
【0016】
ここで、例えば旋盤であればベッドの両端にワーク主軸と心押し台を備えている。すなわち、旋盤ではワークを挟んで両側にワーク主軸と心押し台が独立して設けられている。上述した特許文献1(特開2013-244582号公報)に記載のスカイビング加工機でも、やはりベッドの両端に主軸台と心押し台が配置されている。特許文献2(特開2018-176415号公報)に記載のスカイビング加工機でも同様に、ワークを挟んでワーク主軸の反対側に心押し台アームが配置されている。
【0017】
しかしながら本発明においては、ワーク主軸110およびベース120は、スカイビング加工機100に取り付けられていて、心押しアッシィ140はベース120を介してまた油圧シリンダ146はワーク主軸110と同じ方向に延びている。そしてアーム150が回り込むように曲がって、心押し軸152をワーク主軸110の前方に配置している。すなわち、心押しアッシィ140はワーク主軸110と並んで配置されているのであって、ワークを挟んだ工具軸の反対側に配置されているのではない。従ってアーム150より前方の空間には心押しのための部材がなく、工具軸200(
図4参照)が移動可能な空間を確保している。
【0018】
図2および
図3は、心押しアッシィ140の位置の切替を説明する図である。本実施形態において心押しアッシィ140は、
図2に示すようにワーク主軸110の図示奥側の位置(
図3に示す取付位置122a)と、ワーク主軸110に対して図示手前側の位置(
図2に示す取付位置122b)に取付可能である。そして
図1と対比すると、
図2および
図3においては油圧シリンダ146が延びてアーム150がワーク主軸110から離間している。
【0019】
取付位置122a、122bには、油圧シリンダ146に油を供給する油供給孔124が形成されていて、心押しアッシィ140に対して不図示の油圧ホースが接続される。心押しアッシィ140が取り付けられていない方の取付位置122aまたは122bにおいては、油供給孔124は露出した状態となっている。そこで、油供給孔124が露出した取付位置122aまたは122bに対して蓋体130を取り付けることで、ワーク102を切削加工した際に生じる切りくず(不図示)が油供給孔124に入り込むことを防ぐことができる。
【0020】
複数の取付位置122a、122bは、心押しアッシィ140をワーク主軸110に連結させた状態で回動させた位置となっている。心押しアッシィ140はワーク主軸110と連結部材160によって連結および分離可能である。
【0021】
心押しアッシィ140を
図2に示す位置(取付位置122a)から
図3に示す位置(取付位置122b)に切り替える際には、まず
図2に示すようにボルト162を用いて連結部材160を心押しアッシィ140とワーク主軸110に連結する。そして取付部142をベース120に固定しているボルト144を抜く。これにより、ベース120への心押しアッシィ140の固定が解除され、心押しアッシィ140がワーク主軸110に支持される。
【0022】
心押しアッシィ140をワーク主軸110に支持させたら、
図2に示す矢印A方向にワーク主軸110を回動させる。
図3に示すように心押しアッシィ140をワーク主軸110の手前側(取付位置122b)に配置したら、ボルト144によって取付部142をベース120に取り付け、連結部材160およびボルト162を心押しアッシィ140およびワーク主軸110から取り外す。これにより、心押しアッシィ140は、ワーク主軸110から分離され、ベース120に固定される。そして、
図3の取付位置122aには蓋体130を取り付ける。
【0023】
図4は、ワーク102の加工時の状態を説明する図である。
図4(a)は、
図2に示すスカイビング加工機100によるワーク102の加工時の状態を例示する図である。
図4(b)は、
図3に示すスカイビング加工機100によるワーク102の加工時の状態を例示する図である。
図4(a)および(b)ともにスカイビング加工機100を上方から観察した状態を図示している。
【0024】
図4(a)に例示するように、工具軸200をワーク主軸110の手前側からワーク102に接近させる場合は、心押しアッシィ140をワーク主軸110の奥側に配置する。これにより工具軸200およびカッタ210が心押しアッシィ140と干渉することを回避することができる。一方、
図4(b)に例示するように、工具軸200をワーク主軸110の奥側からワーク102に接近させる場合は、心押しアッシィ140をワーク主軸110の手前側に配置する。この場合においても、工具軸200およびカッタ210が心押しアッシィ140と干渉することを回避することができる。
【0025】
上記説明したように本実施形態のスカイビング加工機100によれば、ワーク主軸110に対して心押しアッシィ140を連結し、心押しアッシィ140をワーク主軸110に対して回動させる。これにより、複数の位置(取付位置122a・122b)に心押しアッシィ140を配置することができる。
【0026】
このとき、ワーク主軸110の奥側または手前側の一方には心押しアッシィ140が配置され、他方の空間に工具軸200を配置することができる。したがって、最小限のスペースでスカイビング加工機100と工具軸200との干渉を回避することができる。その結果、工具軸の大型化を抑制することができ、工具の剛性が低下して加工精度が悪化したり、工具寿命が低下したりすることを防止可能となる。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は斯かる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、心押しアッシィを備えたスカイビング加工機として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…スカイビング加工機、102…ワーク、104…歯車、110…ワーク主軸、120…ベース、122a…取付位置、122b…取付位置、124…油供給孔、130…蓋体、140…心押しアッシィ、142…取付部、144…ボルト、146…油圧シリンダ、148…ガイド、150…アーム、152…心押し軸、154…センター、160…連結部材、162…ボルト、200…工具軸、210…カッタ