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特開2023-46616柱部材製作用型枠装置及び柱部材の製作方法
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  • 特開-柱部材製作用型枠装置及び柱部材の製作方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046616
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】柱部材製作用型枠装置及び柱部材の製作方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 13/02 20060101AFI20230329BHJP
   E04G 21/02 20060101ALI20230329BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
E04G13/02 A
E04G21/02 103Z
E04G21/12 105A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155310
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000219598
【氏名又は名称】東海コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅之
(72)【発明者】
【氏名】門田 有城
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博喜
【テーマコード(参考)】
2E150
2E172
【Fターム(参考)】
2E150HD03
2E150HD12
2E172AA05
(57)【要約】
【課題】高所作業に依らずにプレキャストコンクリート製の柱部材を製作することを可能にする。
【解決手段】柱部材製作用の型枠装置1を地盤面、または床面14より下方に底面13を有するピット12の底面13上に設置され、プレキャストコンクリート製の柱部材の底面を形成するための底せき板2と、柱部材の側面を形成するための側せき板3から構成し、地盤面、または床面14をピット12の周囲に位置させる。側せき板3を互いに分離自在に接合される複数個の側せき板材31から構成する。複数個の側せき板材31の内、少なくともいずれか2個の側せき板材31、31を対向させ、その少なくとも一方を対向する方向に相対移動自在にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤面、または床面より下方に底面を有するピットの前記底面上に設置され、プレキャストコンクリート製の柱部材の底面を形成するための底せき板と、前記柱部材の側面を形成するための側せき板とを備え、
前記地盤面、または前記床面は前記ピットの周囲に位置していることを特徴とする柱部材製作用型枠装置。
【請求項2】
前記側せき板は互いに分離自在に接合される複数個の側せき板材から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の柱部材製作用型枠装置。
【請求項3】
前記複数個の側せき板材の内、少なくともいずれか2個の前記側せき板材は対向し、その少なくとも一方は対向する方向に相対移動自在であることを特徴とする請求項2に記載の柱部材製作用型枠装置。
【請求項4】
前記複数個の側せき板材の内、少なくとも平面上、直交する方向に位置するいずれか2個の前記側せき板材に、前記柱部材の上部に接続するプレキャストコンクリート製の梁部が一体となった仕口部を形成するための仕口せき板が支持されていることを特徴とする請求項2、もしくは請求項3に記載の柱部材製作用型枠装置。
【請求項5】
地盤面、または床面より下方に底面を有するピットの前記底面上に設置された底せき板と側せき板とで包囲された領域にプレキャストコンクリート製の柱部材を構成する柱鉄筋を配筋する工程と、
前記ピットの周囲の前記地盤面、または前記床面の上方から、前記底せき板上の、前記側せき板に包囲された領域に前記柱部材を構成するコンクリートを打設する工程とを含み、前記柱部材を製作することを特徴とする柱部材の製作方法。
【請求項6】
前記側せき板は互いに分離自在に接合される複数個の側せき板材から構成されており、
前記複数個の側せき板材の内、少なくとも直交する方向に位置するいずれか2個の前記側せき板材に、前記柱部材の上部に接続するプレキャストコンクリート製の梁部が一体となった仕口部を形成するための仕口せき板が支持されており、
前記仕口せき板に包囲された領域に前記仕口部を構成する梁鉄筋を配筋する工程と、
前記仕口せき板に包囲された領域にコンクリートを打設する工程とを含み、
前記仕口部付きの柱部材を製作することを特徴とする請求項5に記載の柱部材の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャストコンクリート製の柱部材を製作するための柱部材製作用型枠装置、及びそれを用いて柱部材を製作する柱部材の製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート製の柱部材を製作する場合、内周面が柱部材の断面形状をしたせき板を地上、または床面上に組み立て、せき板を外周側から支保工で拘束した状態で、せき板の内部に柱筋を配筋し、コンクリートを打設する方法が一般的である(特許文献1、2参照)。せき板は繰り返して使用可能にするために、閉鎖した筒状の中空部材を周方向に複数個に分割した形状に形成される。
【0003】
いずれの例でも柱部材を立てた状態で製作する場合には、せき板と支保工を地盤面上に、または床面上に立設することになるため、地盤面上等に、作業者がせき板の最上部、または最上部のせき板での配筋作業とコンクリートの打設作業を行える程度の高さまで足場を組み立てることが必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平3-9467号公報(明細書第6頁第5行~第9頁第8行、第1図~第3図)
【特許文献2】特開平3-212562号公報(公報第2頁下左欄第14行~第3頁下右欄第5行、第1図~第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
せき板の最上部での作業は高所作業になり、作業中、転落等の危険を伴うため、危険を回避するための安全帯等の使用が不可欠になる。
【0006】
本発明は上記背景より、高所作業に依らずにプレキャストコンクリート製の柱部材を製作することが可能な柱部材製作用型枠装置及び柱部材の製作方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の柱部材製作用型枠装置は、地盤面、または床面より下方に底面を有するピットの前記底面上に設置され、プレキャストコンクリート製の柱部材の底面を形成するための底せき板と、前記柱部材の側面を形成するための側せき板とを備え、前記地盤面、または前記床面は前記ピットの周囲に位置していることを構成要件とする。
【0008】
床面は地盤面上に構築される、あるいは構築されているコンクリート造等の底版やスラブ、または仮設で設置される鋼板製等の床版等の上面を指す。ピットは「地盤面や床面より相対的に低い位置に底面を有する」空間であり、底面上に底せき板と側せき板を設置可能で、コンクリート硬化後に柱部材を側せき板から離脱可能であるよう、少なくともピット内で側せき板が脱型可能な大きさの平面積を有する。但し、ピットの底面は地階である必要はなく、例えばある床面上に設置された足場やサポート(支保工)上に床面が敷設された場合には、相対的に下に位置する床面がピットの底面になる。
【0009】
ピットの深さ、すなわち地盤面や床面からピットの底面までの深さは、必ずしも1本の柱部材の全長に近い程度の大きさである必要はなく、ピットの周囲に位置する地盤面や床面上での作業、または側せき板の上部での作業が高所作業にならない程度の深さにあればよい。「地盤面や床面より相対的に低い位置の底面上に底せき板と側せき板を設置すること」に技術的意義があるため、ピットの深さは製作すべき柱部材で言えば、柱部材の全長程度から、全長の数分の1程度の大きさの範囲にあればよい。
【0010】
ピットの底面が地盤面や床面より下方に位置し、地盤面や床面上、または側せき板上での作業が高所作業にならない程度の深さにあることで、柱部材を構成する柱鉄筋の配筋とコンクリートの打設作業等が高所作業にならなくなるため、作業中の転落等の危険は回避され、安全帯等の使用も不要になる。
【0011】
底せき板と側せき板は、これらに包囲された領域に打設されたコンクリートの硬化後に、コンクリートから離脱可能な性能を持てば、形態は問われない。側せき板3は基本的には図2図4に示すように脱型の作業上、互いに分離自在に接合される複数個の側せき板材31から構成されることが適切であるが(請求項2)、必ずしもその必要はない。例えば側せき板3の内周面に離形剤を塗布することで、コンクリートの硬化後に柱部材を吊り上げるときにコンクリート表面から離脱することができれば、筒形状等に、単一部材で形成されることもある。
【0012】
「地盤面、または床面はピットの周囲に位置し」とは、地盤面や床面14(以下、床面14等)がピット12の周囲のいずれかに位置し、ピット12に面する(臨む)位置にあることを言う。床面14等はまた、ピット12内の状況を確認しながら、柱部材を製作するための作業床を兼ねることもある。「作業床を兼ねる」とは、基本的には床面14等が柱部材の製作のための作業床として利用されることを言うが、図1図4に示すように側せき板3の上部に一体化した作業床8に床面14等が連続的に配置されるか、支持する等により作業床8上での作業を床面14等が補うように利用されること、あるいは床面14等上に作業床が直接、もしくは間接的に設置されるようなことも含む。
【0013】
「柱部材製作のための(作業床)」とは、主に作業床上で底せき板2上の、側せき板3に包囲された領域に柱部材を構成するコンクリートを打設する作業を言うが、側せき板3に包囲された領域に柱鉄筋を配筋する作業等を含むこともある。配筋作業はピット12の底面13上でも行われる。この他、予め柱主筋15とせん断補強筋から組まれた鉄筋籠を底せき板2上に降下させることもあり、そのための作業、または補助的な作業がピット12の底面13上で、または床面14等上で行われることもある。
【0014】
図3に示すように側せき板3が互いに分離自在に接合される複数個の側せき板材31から構成される場合(請求項2)、複数個の側せき板材31が組み合わせられ、接合されたときの側せき板3の形状は図1図4に示すように平面上、閉じた筒形状になるが、1個の側せき板材31の形状と側せき板材31の個数は任意である。この場合(請求項2)、側せき板3の周方向に隣接する2個の側せき板材31、31はボルト31bやピン、クランプ等の連結具で着脱自在に接合される。
【0015】
複数個の場合、側せき板3は少なくとも2個の側せき板材31に分割されるが、脱型と組み合わせ作業を単純化させる上では、少なくともいずれか2個の側せき板材31が対向し、その少なくとも一方を対向する方向に相対移動自在にすることが合理的である(請求項3)。この場合、側せき板3は例えば直交する2個(2枚)の板状(版状)の側せき板材31と、少なくとも1個の平面上、L字形状の側せき板材から、または4個(4枚)の板状の側せき板材31から構成される。側せき板3が例えば円筒形状である場合、側せき板材31は曲面板状に形成される。
【0016】
少なくともいずれか2個の側せき板材31、31が対向し、移動自在な場合(請求項3)、移動自在な側せき板材31は例えばその下端部等に接続(軸支)される車輪(ローラ)6がピット12の底面13上を転動することで、または図3図4に示すように側せき板材31の下端部(スライド材4)がピット12の底面13上に敷設されたレール5に軸支された車輪6上を摺動することで移動自在になる。車輪6を使用する場合、側せき板材31の下端部(スライド材4)生じる摩擦力が低減されるため、側せき板材31の移動が円滑になり、脱型とその後の再組み立ての作業効率が向上する。
【0017】
側せき板3が複数個の側せき板材31から構成される場合(請求項2、請求項3)には、複数個の側せき板材31の内、少なくとも平面上、直交する方向に位置するいずれか2個の側せき板材31に、柱部材の上部に接続するプレキャストコンクリート製の梁部が一体となった仕口部を形成するための仕口せき板9が支持されることもある(請求項4)。「少なくともいずれか2個の側せき板材」は柱部材が隅柱であれば、直交する2個の側せき板材31であり、側柱であれば、3個の側せき板材31、中柱であれば、4個の側せき板材31になる。
【0018】
仕口せき板9は柱部材の上部に接続する梁部材を構成する梁鉄筋の端部を支持し、梁部材の一部である梁部(仕口部)を構成するコンクリートの打設領域を区画し、梁部を形成するせき板の役目を持つ。
【0019】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の柱部材製作用型枠装置を用いる場合、地盤面、または床面14より下方に底面13を有するピット12の前記底面13上に設置された底せき板2と側せき板3とで包囲された領域にプレキャストコンクリート製の柱部材を構成する柱鉄筋を配筋する工程と、前記ピット12の周囲の前記地盤面、または前記床面14の上方から、前記底せき板2上の、前記側せき板3に包囲された領域に前記柱部材を構成するコンクリートを打設する工程とを経て柱部材が製作される(請求項5)。
【0020】
請求項4に記載の柱部材製作用型枠装置を用いる場合、側せき板3は互いに分離自在に接合される複数個の側せき板材31から構成される。また前記複数個の側せき板材31の内、少なくとも直交する方向に位置するいずれか2個の前記側せき板材31、31に、前記柱部材の上部に接続するプレキャストコンクリート製の梁部が一体となった仕口部を形成するための仕口せき板9が支持される。この場合、請求項5に記載の方法に加え、前記仕口せき板9に包囲された領域に前記仕口部を構成する梁鉄筋を配筋する工程と、前記仕口せき板9に包囲された領域にコンクリートを打設する工程とを経て仕口部付きの柱部材が製作される(請求項6)。コンクリートは底せき板2上の側せき板3内と、その上に載る仕口せき板9内に同時に打設され、仕口せき板9内にある梁鉄筋はコンクリート中に埋設される。
【発明の効果】
【0021】
柱部材製作用型枠装置は地盤面や床面より下方に底面を有するピットの底面上に設置され、プレキャストコンクリート製の柱部材の底面を形成するための底せき板と、柱部材の側面を形成するための側せき板とを備え、ピットの底面が地盤面や床面より下方に位置するため、柱部材を構成する柱鉄筋の配筋とコンクリートの打設作業等を高所作業にせずに済ませることができる。この結果、作業中の転落等の危険が回避され、安全帯等の使用も不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)はピットの底面上に複数個の側せき板材から構成される側せき板を有する型枠装置を設置し、側せき板の内部に柱鉄筋を配筋し、型枠装置の上部に梁鉄筋を配筋したときの様子を示した平面図、(b)はの縦断面図である。
図2】(a)は図1-(a)に示す側せき板材を分離させた様子を示した平面図、(b)は(a)の縦断面図である。
図3】(a)は図2に示す側せき板材を分離させた様子を示した平面図、(b)は(a)のx-x線断面図である。
図4】(a)は図1-(a)に示す側せき板の詳細を示した平面図、(b)は(a)の立面図、(c)は(a)の(b)に直交する方向の側面図、(d)は底せき板を示した平面図である。
図5】仕口せき板上からコンクリートを打設する状況を示した立面図である。
図6】(a)~(c)は仕口せき板の組み立て手順例を示した斜視図である。
図7】仕口部のコンクリートを柱部材の表面よりふかして打設するためのヌスミせき板の構成例を示した斜視図である。
図8】(a)~(f)は図6に示す仕口せき板を利用して梁鉄筋を配筋する作業の手順例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1-(a)、(b)は地盤面、または床面14より下方に底面13を有するピット12の底面13上に設置され、プレキャストコンクリート製の柱部材の底面を形成するための底せき板2と、柱部材の側面を形成するための側せき板3とを備えた柱部材製作用の型枠装置1をピット12の底面13上に設置した様子を示す。地盤面、または床面(以下、床面14等)はピット12の周囲に位置し、ピット12に面した状態にある。
【0024】
側せき板3は筒形状等、単一部材で形成されることもあるが、図1図2では脱型作業を確実にし、脱型の作業効率を上げる目的から、側せき板3を周方向の一部で互いに分離自在に接合される複数個の側せき板材31から構成している場合の例を示している。図1では特に、各側せき板材31の脱型とその後の再組み立ての作業効率の向上を図る目的から、複数個の側せき板材31の内、少なくともいずれか2個の側せき板材31、31を水平方向に対向させ、その少なくとも一方を対向する方向に相対移動自在にしている。
【0025】
図1図2では側せき板3を4枚(4個)の板状の側せき板材31に分割し、各側せき板材31をピット12の底面13上を往復動自在に底面上に設置している。具体的には図3図4に示すように底面13上に直接、または安定性確保のために底面13上に設置される底板上(以下、底面13上等)の各側せき板31の往復動の方向に向けてレール5を固定すると共に、レール5に沿ってレール5の軸方向に往復動自在なスライド材4をレール5に支持させることで、各側せき板材31を一方向に往復動自在にしている。
【0026】
レール5は図3-(b)、図2-(b)に示すように硬化後のコンクリートから各側せき板材31が脱型されるよう、底せき板2の下方の底面13上等に固定される。図3は4分割された側せき板材31が互いに分離し、脱型した状態を、図4は側せき板材31が互いに接合され、側せき板3を構成している状態を示している。
【0027】
側せき板3を4分割した図3に示す例ではレール5、5は平面上、直交する2方向を向いて底面13上等に固定される。直交するレール5、5は図3-(a)に示すように底せき板2の下で互いに交わるため、図3-(b)に示すように上下に段差が付いて底面13上等に敷設される。下側のレール5は底面13上等に固定され、上側のレール5は下側のレール5に固定される。図面では上側のレール5の軸方向両端部を安定させるために、上側のレール5の両端部の下に下側のレール5と同等の高さの支持材7を配置し、支持材7にも上側のレール5を固定し、支持させている。各方向のレール5、5は側せき板材31を安定させて支持するために、互いに距離を置き、並列して配置される。
【0028】
スライド材4をレール5に往復動自在に支持させる方法は任意であるが、図3図4に示す例では、レール5の軸方向に距離を置いた少なくとも2箇所に車輪(ローラ)6、6を軸支させ、この2個の車輪6、6にスライド材4を支持させることで、スライド材4をその軸方向に往復動自在にレール5に支持させている。この他、図示する車輪6を小型化し、図示する各車輪6の位置の、レール5内部の上下に対にして配置することもできる。
【0029】
2個の車輪6、6はスライド材4がレール5に沿って往復する区間の両側に、例えば軸を水平方向等に向けて軸支される。平面で見れば、図3-(a)に示すように車輪6、6はレール5の軸方向両端部位置と、底せき板2に重なる位置に配置されている。車輪6は軸を鉛直方向に向けて軸支されることもある。
【0030】
レール5の軸方向、あるいは少なくとも2箇の車輪6、6の軸を結ぶ直線の方向は水平方向でもよいが、図3図4に示す例では底せき板2の外周側から中心側へかけて上向きに傾斜させ、側せき板材31の脱型作業をし易くしている。この場合、脱型時に側せき板材31に底せき板材31に外周側への少しの力を加えるだけで移動させることが可能である。逆にレール5の軸方向等を底せき板2の外周側から中心側へかけて下向きに傾斜させれば、脱型状態からの再組み立て作業をし易くすることができる。
【0031】
スライド材4は各側せき板材31の下部に、各側せき板材31に付き、レール5、5の配置に対応して水平方向に距離を置き、平行に2本、固定(接合)される。各スライド材4は図3-(a)、図4-(b)、(c)に示すようにそれを支持する各レール5の幅方向片側に配置される。各スライド材4は図3-(a)に示す分離状態と、図4-(a)に示す接合状態の間を各レール5の少なくとも2個の車輪6、6に支持されながら、往復動する。
【0032】
図面ではレール5の曲げ剛性と捩じり剛性を確保する目的から、レール5に軸方向両端が閉塞した閉鎖断面形状の鋼材(角形鋼管)を使用し、レール5の外部に車輪6を軸支させているが、レール5の断面形状と車輪6の軸支位置は問われない。車輪6をスライド材4が上下から挟み込むように保持する関係で、スライド材4には軸方向両端が閉塞した開放断面形状の鋼材(H型鋼)を使用しているが、スライド材4の断面形状も問われない。
【0033】
各側せき板材31は図3-(a)、(b)に示すように並列する2本のスライド材4、4の上に配置され、両スライド材4、4に接合されて一体化する。4分割された側せき板材31は図3-(a)に示す分離状態から図4-(a)に示す接合状態に移行したときに平面上、閉じた側せき板3を構成する。このとき、隣接(直交)する2枚の側せき板材31、31は例えば側せき板材31の幅方向両側に一体化したフランジ31a、31aが互いに重なり、両フランジ31a、31aを挿通するボルト31bにナットが締結されることにより互いに分離自在に接合される。
【0034】
図示する例では互いに重なるフランジ31a、31aの一方は例えば側せき板材31の本体部分から幅方向両側に張り出した部分であり、他方は側せき板材31の本体部分の幅方向両側から垂直に屈曲した部分になっている。図面では図3に示すように本体部分から張り出した一方のフランジ31aに、他方の屈曲したフランジ31aの孔内に嵌入するピン31cを突設し、ピン31cを隣接する側せき板材31の孔内に差し込むことで、直交する2枚の側せき板材31、31が位置決めされるようにしている。
【0035】
図面ではまた、各側せき板材31の上部に床面14等側へ張り出す作業床8を一体的に接合している。4枚の側せき板材31に一体化した作業床8は側せき板材31が図4-(a)、図1-(a)に示すように側せき板3を構成したときに、側せき板3の上方を開放させながら、周方向に互いに突き合わせられるか、重なり、柱部材を製作するための、例えば柱鉄筋の配筋、コンクリート打設等の作業をするための床として利用可能になる。ピット12の周囲に位置する床面14等は作業床8上での作業を補助するために、または作業床8上での作業に連続する作業をするために利用される。
【0036】
柱部材を構成する、図1-(a)、図2-(a)に示す柱主筋15とせん断補強筋(フープ)16の配筋作業はピット12の底面13上等でも行われるが、配筋の作業効率を上げる上では、予め別の場所で柱主筋15とせん断補強筋16から組み立てられた鉄筋籠を作業床8上や床面14等上で位置調整しながら、上空から底せき板2上に降下させる方法が合理的である。底せき板2上の側せき板3内へのコンクリートの打設も図5に示すように作業床8上で、または床面14等上で打設位置を調整し、また振動を与えながら、行われる。
【0037】
図5図3図4に示す、底せき板2と側せき板3からなる型枠装置1の上に、柱部材に接続する梁部材との仕口部(接合部)を一体的に形成するための仕口せき板9を載置し、底せき板2と側せき板3に仕口せき板9を合わせた型枠装置1Aにコンクリートを打設しているときの状況を示している。型枠装置1が底せき板2と側せき板3とから構成される場合には、側せき板3の上方からコンクリートが打設される。
【0038】
図6-(c)に仕口せき板9の構成例を示す。仕口せき板9は底せき板2と側せき板3からなる型枠装置1の上部上に載置されてこれに接続可能で、仕口部における柱鉄筋と梁鉄筋の配筋が可能な構造であれば、形態(構成)は任意であるが、図6では図8に示すように仕口部を貫通する梁主筋17の配筋作業を考慮した形態にしている。
【0039】
具体的には図6-(b)に示すように平面上の四隅に、仕口せき板9を構成する4分割された隅部せき板材91を配置し、(c)に示すように隣接する隅部せき板材91、91間に梁主筋17を受ける受け材93付きの下部せき板材92を跨設している。上段側の受け材93の上には図8-(d)に示すように下部せき板材92と対になる上部せき板材94が配置される。図6では分割されている複数個の仕口せき板9の構成材を規則的に、効率的に組み立てるために、底面13上等に設置された定規としてのベッド95上に各構成材を配置している。
【0040】
仕口せき板9は底せき板2と側せき板3からなる型枠装置1の上部に載置された状態で、図5に示すように側せき板3内と仕口せき板9内にコンクリートが打設される。完成する柱部材の上部には梁が接続する仕口部が一体化するが、柱部材が側柱か中柱か等、柱部材の配置位置等に応じ、仕口部に接続する梁の成や幅が柱部材毎に相違することがある。
【0041】
この関係で、図6図8では仕口部のコンクリートを柱部材の表面よりふかして(突出させて)打設することができるよう、相対的に柱部材の表面側を仕口部より凹にするための図7に示すようなヌスミせき板10を図6-(c)、図8-(d)に示すように隅部せき板材91の内側に配置している。ヌスミせき板10を配置した状態でコンクリートを打設した後の柱部材の仕口部の表面は仕口部以外の部分の表面より梁側へ突出した状態に仕上がる。
【0042】
図6-(c)は図7に示すヌスミせき板10の隅部10aと、隣接する隅部10a、10aの下部間に跨設される下部10bを隅部せき板材91の内側に配置した様子を示している。ヌスミせき板10の残りの部分である、隣接する隅部10a、10aの上部間に跨設される上部10cは図8-(d)に示すように梁鉄筋の配筋後に配置される。
【0043】
図8-(a)~(f)は図6-(c)に示す仕口せき板9を利用して梁鉄筋を配筋する手順を示す。図8-(a)は仕口せき板9に一方向の梁鉄筋の内、上端の梁主筋17とせん断補強筋(スターラップ)18、及び仕口部の柱主筋15回りのせん断補強筋(フープ)16を配筋した状態を、(b)は下端の梁主筋17を配筋した様子を、(c)は直交する方向の梁の上端と下端の梁主筋17とせん断補強筋18を配筋した様子を示す。図8-(a)には柱主筋15とせん断補強筋16が表れていないが、図1-(a)、図2-(a)に示すように図8-(a)に示す状態のときには柱主筋15とせん断補強筋16が配筋されている。
【0044】
図8-(d)は仕口せき板9の上部せき板材94とヌスミせき板10の上部10cを配置した様子を、(e)は上部せき板材94の上に、側せき板3の内部に配筋されている柱部材の柱主筋15をその後に打設されるコンクリートから保護するためのキャップを有する保護材11を設置し、仕口せき板9の組み立てと配筋が完了した様子を示す。(f)は(e)を別の角度から見たときの様子を示す。
【0045】
前記のように底せき板2と側せき板3からなる型枠装置1の上部に仕口せき板9が載置されたときのコンクリートの打設状況を図5に示すが、図8-(f)に示す梁鉄筋配筋終了後の仕口せき板9型枠装置1の上部に載置するときには、図6図8に示すベッド95は外され、型枠装置1の内部の空間と仕口せき板9の内部の空間が連通する。
【符号の説明】
【0046】
1……(柱部材製作用)型枠装置、1A……型枠装置(仕口せき板9付き)、
2……底せき板、
3……側せき板、31……側せき板材、31a……フランジ、31b……ボルト、31c……ピン、
4……スライド材、
5……レール、6……車輪(ローラ)、7……支持材、
8……作業床、
9……仕口せき板、91……隅部せき板材、92……下部せき板材、93……受け材、94……上部せき板材、95……ベッド、
10……ヌスミせき板、10a……隅部、10b……下部、10c……上部、
11……保護材、
12……ピット、13……底面、
14……床面、
15……柱主筋、16……せん断補強筋(フープ)、17……梁主筋、18……せん断補強筋(スターラップ)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8