(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046683
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】回転テーブル装置
(51)【国際特許分類】
H02K 11/22 20160101AFI20230329BHJP
H02K 21/24 20060101ALI20230329BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20230329BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20230329BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H02K11/22
H02K21/24 M
F16C19/36
F16C33/58
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155406
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】高嶋 大介
(72)【発明者】
【氏名】坂井 哲也
【テーマコード(参考)】
3J701
5H611
5H621
5H641
【Fターム(参考)】
3J701AA26
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA56
3J701FA44
3J701FA53
3J701GA60
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB06
5H611BB08
5H611BB09
5H611PP05
5H611QQ03
5H611RR01
5H611UA04
5H611UA07
5H621BB06
5H621JK13
5H641BB06
5H641BB17
5H641GG02
5H641GG07
5H641GG10
5H641GG26
5H641GG29
5H641HH03
5H641JA03
(57)【要約】
【課題】小型で、かつ、合理的な工程で製造できる、品質の安定した回転テーブル装置を提供すること。
【解決手段】本開示に従った回転テーブル装置は、基台部と、軸受と、前記軸受を介して前記基台部に対して回転可能に支持されたテーブルと、前記テーブルを前記軸受の回転方向に回転させるモータと、を備える。前記モータは、扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルが複数並べて配置され、前記基台部に固定されたコイル列と、前記コイル列と対向して配置され、板状の複数の磁石が磁極を交互に異にして前記テーブルの周方向に並べて配置され、前記テーブルに固定された磁石列と、を含む。前記テーブルの外周面に、全周にわたってスケールが印字されている。前記スケールを読み取るためのセンサが、前記基台部に配設されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台部と、
軸受と、
前記軸受を介して前記基台部に対して回転可能に支持されたテーブルと、
前記テーブルを前記軸受の回転方向に回転させるモータと、を備え、
前記モータは、
扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルが複数並べて配置され、前記基台部に固定されたコイル列と、
前記コイル列と対向して配置され、板状の複数の磁石が磁極を交互に異にして前記テーブルの周方向に並べて配置され、前記テーブルに固定された磁石列と、
を含み、
前記テーブルの外周面に全周にわたってスケールが印字されており、
前記スケールを読み取るためのセンサが前記基台部に配設されている、
回転テーブル装置。
【請求項2】
前記コイル列は前記コアレスコイルが複数並べられて円環の一部をなすコイル列であり、
前記磁石列は前記磁石が前記テーブルの全周に並べて配置された円環状の磁石列である、
請求項1に記載の回転テーブル装置。
【請求項3】
前記テーブルは、
上面が平坦面に形成された円盤状の載置部と、
前記載置部の下に位置し、前記載置部よりも小径である軸部と、を含み、
前記スケールは、前記軸部の外周面に印字されており、
前記センサを含むエンコーダヘッドは、当該エンコーダヘッドの全体が前記載置部の下に位置するよう前記基台部上に配設されている、
請求項1または請求項2に記載の回転テーブル装置。
【請求項4】
前記スケールを構成する目盛りのそれぞれは、長さ0.2mm~10mm、深さ0.1~100μmであって前記軸部の外周面に形成された凹部である、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転テーブル装置。
【請求項5】
前記テーブルと、前記軸受の外輪とが一体の部品として構成されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転テーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定部であるベッドと、円盤状の回転テーブルと、それらの間に配置される軸受と、を備え、リニアモータによって回転駆動される回転テーブル装置が知られている。リニアモータは、扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルから成る電機子コイルと、多数の板状のマグネットから成る界磁マグネットと、から構成される。例えば特許文献1の回転テーブル装置では、ベッドにコイルが固定され、回転テーブルにマグネットが固定されており、コイルとマグネットとが対向するように配置されている。この回転テーブル装置では、テーブルの回転角に対応する範囲のテーブルの外周面に、テープ状のスケールが接着されている。ベッドに配置された光学センサがスケールを読み込むことによって、テーブルの位置が検出される。
【0003】
回転テーブル装置として、テーブルの回転が一定の回転角内に制限されず、360°あるいはそれ以上の角度で回転する無限回転テーブル装置が知られている。例えば特許文献2は、ベッドに対してテーブルを無限回転させる回転テーブル装置を開示している。特許文献2の回転テーブル装置では、テーブルの軸部にリング状のスケールを嵌め込むことが記載されている。全周にスケールが設けられたリング部材は、テーブルの軸部の外周側に挿入されるとともに、ねじによってテーブルに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-72960号公報
【特許文献2】特開2020-120430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型で、かつ、合理的な工程で製造できる、品質の安定した回転テーブル装置に対するニーズがある。そこで、小型で、かつ、合理的な工程で製造できる、品質の安定した回転テーブル装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った回転テーブル装置は、基台部と、軸受と、前記軸受を介して前記基台部に対して回転可能に支持されたテーブルと、前記テーブルを前記軸受の回転方向に回転させるモータと、を備える。前記モータは、扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルが複数並べて配置され、前記基台部に固定されたコイル列と、前記コイル列と対向して配置され、板状の複数の磁石が磁極を交互に異にして前記テーブルの周方向に並べて配置され、前記テーブルに固定された磁石列と、を含む。前記テーブルの外周面に、全周にわたってスケールが印字されている。前記スケールを読み取るためのセンサが、前記基台部に配設されている。
【発明の効果】
【0007】
上記回転テーブル装置によれば、小型で、かつ、合理的な工程で製造できる、品質の安定した回転テーブル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1における回転テーブル装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における回転テーブル装置を示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1における回転テーブル装置を示す一部断面拡大図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における回転テーブル装置のベッドを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1における回転テーブル装置のベッドおよびベッドに固定される部材を示す平面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1における回転テーブル装置のベッドおよびベッドに固定される部材を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1における回転テーブル装置のテーブルを示す平面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1における回転テーブル装置のテーブルを示す断面斜視図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1における回転テーブル装置のテーブルおよび磁石列を示す平面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2における回転体および軸受を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、実施の形態2における回転体および軸受を示す断面斜視図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2における回転体を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に従った回転テーブル装置は、基台部と、軸受と、前記軸受を介して前記基台部に対して回転可能に支持されたテーブルと、前記テーブルを前記軸受の回転方向に回転させるモータと、を備える。前記モータは、扁平で環状に巻回された三相のコアレスコイルが複数並べて配置され、前記基台部に固定されたコイル列と、前記コイル列と対向して配設され、板状の複数の磁石が磁極を交互に異にして前記テーブルの周方向に並べて配置され、前記テーブルに固定された磁石列と、を含む。前記テーブルの外周面に、全周にわたってスケールが印字されている。前記スケールを読み取るためのセンサが、前記基台部に配設されている。
【0010】
従来、テーブルに他部品のワーク等を取り付け、ワークを回転させる目的で使用される回転テーブル装置が知られている。このような回転テーブル装置として、ダイレクトドライブサーボモータによって駆動される回転テーブル装置が知られている。例えば60°や150°等の一定の回転角の範囲内を往復運動する回転テーブル装置が知られている。また、360°以上回転する無限回転テーブル装置も知られている。いずれの場合も、基台に固定されたセンサがテーブルに設けられたスケールの目盛りを読み取ることによってテーブルの位置を検出する、位置検出機構が設けられていることが多い。
【0011】
テーブルにスケールを取り付ける方法として、テーブルの外周面に目盛りが記されたテープを接着する方法、目盛りが記されたリング(リングスケール)をテーブルの外周に嵌める方法が知られている。ここで、無限回転テーブル装置では、テーブル外周面の全周にわたってスケールを設ける必要がある。テープ式スケールを無限回転テーブル装置に適用する場合、テーブル装置の1台ごとにテープを取り付ける垂直位置および水平位置、位相、原点位置等を精密に調整するため、工数とスキルが必要とされていた。また、テープのつなぎ目ができることが避けられなかった。このため、無限回転テーブル装置において、スケールが設けられたリングスケールをテーブルに取り付けることが提案されている(例えば特許文献2)。
【0012】
一方、リングスケールは径方向に数mmから10mm程度の厚みを有する。このため、特に小型の無限回転テーブル装置では、リングスケールの設置スペースを設けると、マグネットやコイルモジュールの設置スペースが相対的に小さくなり、十分なトルクを得ることが難しいという課題が生じた。この状況下で検討が重ねられ、テーブルの外周面の全周に直接スケールを印字することが想到された。
【0013】
本開示にかかる回転テーブル装置によれば、スケール部材の設置スペースが不要で、小型でありながら、テープを取り付ける必要が無く、合理的な製造工程によって安定した品質を有する回転テーブル装置が提供される。また、テーブルの外周面にスケールを印字するという構成によって、部品点数の削減が可能であり、組み立てが容易になり、部品の公差の積み上げによる誤差が縮小されるため品質の安定性に優れる。また、スケール部材を用いないことにより、回転部分の偏心が抑制され、精度維持と品質安定が図られる。
【0014】
前記回転テーブル装置において、前記コイル列は、前記コアレスコイルが複数並べられて円環の一部をなすコイル列であり、前記磁石列は、前記磁石が前記テーブルの全周に並べて配置された円環状の磁石列であってよい。この構成によれば、回転角が一定範囲内に制限されない、無限回転テーブル装置が得られる。
【0015】
前記回転テーブル装置において、前記テーブルは、上面が平坦面に形成された円盤状の載置部と、前記載置部の下に位置し、前記載置部よりも小径である軸部と、を含んでよい。前記スケールは、前記軸部の外周面に印字されており、前記センサを含むエンコーダヘッドは、当該エンコーダヘッドの全体が前記載置部の下に位置するよう前記基台部上に配設されていてもよい。この構成によれば、テーブル載置部の大きさを確保しながらも、回転テーブル装置の全体を小型に構成できる。
【0016】
前記回転テーブル装置において、前記スケールを構成する目盛りのそれぞれは、長さ0.2mm~10mm、深さ0.1~100μmであって前記軸部の外周面に形成された凹部であってよい。このようなスケール目盛りは、レーザ加工等の汎用的な製造技術によって作製可能であり、かつ、センサ読み取り精度は充分である。
【0017】
前記回転テーブル装置において、前記テーブルと、前記軸受の外輪とが一体の部品として構成されていてもよい。テーブルと軸受の外輪とが一体の部品として構成され、かつテーブルの外周面にスケールが印字されるという構成によれば、部品点数が一層削減され、組み付けの調整が不要となる。また、軸受外輪の軌道面の加工とテーブル外周面の加工をワンチャックで行うことが可能となり、合理的な製造工程によって高精度の回転テーブル装置が得られる。
【0018】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の回転テーブルの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1における回転テーブル装置1の構造を示す概略斜視図である。
図1において、Z軸方向は、回転テーブル装置のテーブルの回転軸(軸受の回転軸)Rが延びる方向である。
図2は、回転テーブル装置1の断面図であり、
図1中のII-IIで切断した状態を示す。
図3は、
図2からいくつかの部材を省略し、一部を拡大して示す断面図である。
【0020】
まず、回転テーブル装置1の概略的な構成を説明する。
図1を参照して、実施の形態1における回転テーブル装置1は、固定部である基台部10と、基台部10に対して回転可能であるテーブル20と、を備える。基台部10は、ベッド11を含む。ベッド11に、カバー61が固定されている。カバー61は、エンコーダヘッド82(
図2)を覆うカバーである。カバー61によって、エンコーダヘッド82の光学センサの読み取り精度が確保され、また、センサ部分への埃の進入が防止される。
【0021】
テーブル20は、回転軸Rを中心として回転可能である。テーブル20は、中空円盤状の部分である載置部21と、載置部21の下に位置する軸部22とを含む。軸部22の外径は、載置部21の外径よりも小さい。載置部21の上面は平坦に形成されている。載置部21および軸部22は、一体に形成された一部品である。軸部22の外周面22aに、全周にわたってスケール81が印字されている。
【0022】
載置部21には、載置部21を厚み方向(Z軸方向)に貫通する複数のねじ穴9が形成されている。ねじ穴9は、外部部品であるワークを取り付けるために利用される。回転テーブル装置1では、ねじ穴9が周方向に等間隔に8箇所設けられているが、この数は特に限定されない。また、載置部21には、載置部21を厚み方向に貫通する複数のねじ穴16が形成されている。ねじ穴16に、ねじ46が挿入されている。
【0023】
載置部21には、原点信号を生成するためのリファレンスマークを取り付けることができる、取り付け穴18が設けられている。また、載置部21には、原点前センサ等のためのセンサドグを取り付けることができる、取り付け穴19が設けられている。本開示の回転テーブル装置では、リファレンスマークおよび原点前センサは必須の構成ではないため、取り付け穴18,19は利用しなくてもよい。また、載置部に取り付け穴18,19が設けられていなくてもよい。
【0024】
図2を参照して、回転テーブル装置1は軸受70を備える。軸受70は、例えばクロスローラベアリングである。
図2では、軸受70の転動体は省略されている。軸受70の外輪71は、ベッド11に固定されている。ベッド11の下面から厚み方向に貫通するねじ穴17にねじ47が挿入されている。ねじ47がベッド11と外輪71を固定している。内輪72は、テーブル20に固定されている。ねじ46が、テーブル20と内輪72を固定している。すなわち、テーブル20は、軸受70を介して、基台部10に対して回転可能に支持されている。
【0025】
テーブル20の下面に、磁石51が取り付けられている。ベッド11における、磁石51と対向する位置に、コアレスコイルであるコイル52が取り付けられている。磁石51は、テーブル20の周方向に複数並べられて磁石列56を形成している(
図9)。コイル52は、磁石列56に対応する位置に複数並べられて、コイル列57を形成している(
図5)。コイル52に電流が流れると、磁石51とコイル52とから構成されるモータ50が機能してトルクが発生し、テーブル20が回転する。
【0026】
ベッド11には、支持台12がねじ48によって固定されている。支持台12上に、エンコーダヘッド82が固定されている。エンコーダヘッド82は、テーブル20の載置部21が軸部22よりも外方に張り出した部分である、載置部21の下面21bの下に、配置されている。エンコーダヘッド82は、カバー61でカバーされている。なお、ここで「外方」とは、テーブル20の回転軸Rから離れる方向を意味している。
【0027】
図3を参照して、ベッド11には、回転軸R(
図2)と中心を同じくする第1円環部102が設けられている。第1円環部102は、その周囲と比較して相対的に厚みの大きな部分である。軸受70の外輪71の外周面71bが、第1円環部102の内周面102bと密着している。外輪71は、ベッド11にインロー嵌合されている。
【0028】
テーブル20の軸部22の外周面22aに、スケール81が印字されている。スケール81と対向して、エンコーダヘッド82が配設されている。スケール81とエンコーダヘッド82の間には、エンコーダヘッド82のセンサがスケール目盛りを読み取り可能である隙間35が形成されている。隙間35の幅は、スケール目盛りを読み取り可能とするため、装置全体の大きさや各部品の配置に関わらずほぼ同じである。例えば、テーブル20の載置部21の外径が65mmである回転テーブル装置では、ベッド11の大きさは65mm~75mm×75mm~85mm程度とできる。エンコーダヘッド82の背面82cは、載置部21の外周面21aから外方に突出していない。つまり、エンコーダヘッド82は、載置部21の下に収容されている。回転テーブル装置1は、リングスケールを備えず、テーブルに直接スケール81が印字されている。このため、テーブルとセンサを近接して配置できる。この構成によって、回転テーブル装置のコンパクト化が可能である。また、センサの読み取り精度の向上が期待できる。また、載置部21の下にエンコーダヘッド82を収容する構成によって、載置部21の面積を確保しながらも全体がコンパクトに構成された回転テーブル装置が得られる。
【0029】
次に、回転テーブル装置における固定側である、回転テーブル装置1の基台部10および基台部10に固定される部材の詳細を説明する。
図4は基台部10を構成するベッド11の斜視図である。
図5は、ベッド11およびベッド11に固定される部材を示す平面図である。
図6は、ベッド11およびベッド11に固定される部材を示す斜視図である。
【0030】
図4を参照して、ベッド11は全体が鋼板で構成された一体の部材である。大略的に、ベッド11は、中央部に、回転軸Rを中心とする穴103が形成されている。穴103と同心円状に、環状の凹部である第1凹部101が形成されている。第1凹部101と連続して、第2凹部105が形成されている。第2凹部105は、ベッド11の端面11eに至る凹部である。ベッド11を厚み方向(Z軸方向)に貫通するねじ穴13が、ベッド11の4箇所に形成されている。ねじ穴13を利用して、ベッド11を外部部材に固定できる。
【0031】
穴103の径は、軸受70の外輪71(
図3)の内周面の径とほぼ等しい。穴103の周縁に、第2円環部104がある。第2円環部104には、ベッド11の厚み方向(Z軸方向)に貫通するねじ穴17が周方向に等間隔に複数形成されている。第2円環部104の外側の周縁に沿って、第1円環部102がある。第1円環部102の内周面102bと、第2円環部104の上面104aとによって形成される段部に、軸受70の外輪71(
図3)がインロー嵌合される。
【0032】
図5は、ベッド11に固定される部材の一部を示している。
図5を参照して、第1凹部101の上面101aには、第1凹部101の形状に対応する絶縁フィルムである第1絶縁体53が配置されている。第1絶縁体53の上に、コイル52が配置される。コイル52はそれぞれ、扁平で環状に巻回されたコアレスコイルである。15個のコイル52が、円環の一部をなすコイル列57を構成している。コイル52は3相コイルであり、コイル列57においては、一方の端からU相、V相、W相の順に繰り返して配列されている。なお、実施の形態1においてコイル列には15個のコイルが含まれるが、コイル列に含まれるコイルの数や配置は、モータの大きさや所望のトルクに応じて変更できる。配設するコイル52を3つ増やして、第1凹部101の全周に並ぶ円環状のコイル列を形成してもよい。コイル52は、カラー42を介して、基板14(
図6)とともに、ねじ41によってベッド11に固定されている。
【0033】
ベッド11には、支持台12、カバー61が固定されている。カバー61の中央側の端面61bは、テーブル20の載置部21の外周面21aと僅かな隙間をあけて対向する弧状に形成されている。カバー61の内部に、エンコーダの信号線や電力線等の部品(不図示)が収容される。
【0034】
図6は
図5に基板14を付加して示す斜視図である。
図6を参照して、基板14の上面14aは、ベッド11の上面11a、第1円環部102の上面102aとおおむね同じ高さになるよう構成されている。基板14の上面14aには、絶縁フィルム等の絶縁体が取り付けられていてもよい。
【0035】
次に、回転テーブル装置における回転側である、回転テーブル装置1のテーブル20およびテーブル20に固定される部材の詳細を説明する。
図7はテーブル20および軸受70を示す平面図である。
図8は、
図7に示すテーブル20および軸受70の断面斜視図である。
図9は、テーブル20の下面を示す。
図9は、テーブル20およびテーブル20に固定される部材を示す平面図である。
【0036】
図7を参照して、テーブル20の軸部22の外周面22aの全周に、スケール81が印字されている。ここで、印字されているとは、センサを用いて検出可能な被検出部が印されていることを意味し、レーザ加工やエッチングによる刻印、印刷、転写、記入等によって作られるマークが形成されていることの全般を含む。スケール81は、多数の目盛り83の集合体である。スケール81は、外周面22aに直接印字されている。直接印字されているとは、シールやリボン等を介さず、外周面22aの表面に直接目盛り83が形成されていることを意味する。好ましくは、目盛り83はレーザ加工やエッチングで外周面22aに形成された微小な凹部(スリット)である。例えば、目盛り83は、長さ0.2mm~10mm、深さ0.1~100μmであって外周面22aに形成された凹部であってよい。目盛り83の間隔は、例えば、1~100μmとできる。目盛り83は等間隔に形成されていてもよく、間隔の異なる部分があってもよい。目盛り83は全周にわたってすべて同じでもよい。また、例えば、目盛り83の一部として、または、目盛り83に加えて、原点位置や特定の位置を示すリファレンスマークが形成されていてもよい。また、一定間隔ごとの目盛りの長さや幅が他の目盛りと異なるようにされていて、他の目盛りと区別可能であってもよい。
【0037】
図8を参照して、テーブル20の中心部は中空である。テーブル20の内周面20cは、載置部21と軸部22とにわたって面一である。テーブル20の中心部を中空とし、かつスケール81を軸部22の外周面22aに直接設ける構成によって、回転部分をより軽量化できる。テーブル20の下面20dには、テーブル20の周方向に沿って延在する円環状の凹部である、第1円環部23および第2円環部24が形成されている。第1円環部23に、軸受70が配置される。第1円環部23を規定する内周面23aと軸受70の内輪72の内周面72aとが接するように、軸受70が配置されている。第2円環部24に、磁石51が配置される。磁石51の厚みと、第2円環部24の深さはおおむね等しい。磁石51は第2円環部24内にほぼ収められ、テーブル20の下面20dからの突出はわずかである。
【0038】
図9を参照して、磁石51は、回転中心に向かって収束する略台形状の面を有する板状の磁石である。互いに隣接して配置された23個の磁石51が、磁石列56を構成している。磁石51は第2円環部24の全周にわたって配置されている。磁石列56は円環状の磁石列である。磁石列56において、磁石51はN極とS極が交互になるように配置されている。なお、磁石の個数は配列の形態はこれに制限されず、磁石のサイズや性能、要求されるトルク等に応じて適宜変更できる。磁石51は例えば、接着剤によってテーブル20に接着されていてもよいし、磁石51の磁力のみでテーブル20に固定されていてもよい。磁石列56は、コイル列57(
図5)に対向するよう配置されている。
【0039】
次に、回転テーブル装置1のモータ50について説明する。
図2、
図5、
図9を参照して、磁石51で構成される磁石列56と、コイル52で構成されるコイル列57とが、モータ50を構成する。テーブル20は、磁石51の磁路を形成するマグネットヨークを兼ねている。コイル52に、U,V,Wの3相のそれぞれに対応する接続部(不図示)から、電力線(不図示)を通じて、電力が供給される。回転テーブル装置1では、基板14が磁石51とコイル52との間に配置されており、給電時にコイル52で発生する熱が磁石51に伝わりにくい。この構成によって、磁石51の温度上昇による磁束密度の低下が低減され、モータ50の出力低下を抑制できる。さらに、テーブル20の回転に伴う気流によって、磁石51の空冷が期待できる。回転テーブル装置1は、軸部の外周に配置されるリングスケールを有さない。このため、軸部22の外周面22aが機器外部に露出し、磁石51も機器外部に近い位置に配置されるため、空冷効果がより高くなる。
【0040】
ここで、回転テーブル装置の大きさを説明する。回転テーブル装置1の大きさは特に制限されないが、テーブル軸部の外周面に直接スケールを印字する構成によって、従来になく小型の無限回転テーブル装置が得られる。例えば、テーブル20の外径が100mm、ベッドの大きさが100mm×115mmである、無限回転テーブル装置を構成できる。当然ながら、これらの大きさに限定されるものではなく、テーブルの外径は10~1000程度とできる。ベッドの大きさは、1辺が10~1020mm程度とできる。
【0041】
(変形例)
本開示にかかる回転テーブル装置におけるテーブルの変形例を示す。
図10~
図12を参照して、回転体200は、本開示に従う回転テーブル装置を構成する回転部の実施の形態の1例である。回転体200以外の回転テーブル装置の構成は、上述の回転テーブル装置1の構成を必要に応じて変更して適用可能である。回転体200は、テーブルと軸受の外輪とが一体化された一部品でなる点が、実施の形態1のテーブル20との主な相違点である。この相違点を中心に説明する。実施の形態1と同じ構成には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
図10は、回転体200および内輪720を示す斜視図である。
図11は、
図10におけるXI-XIで切断する断面を示す断面図である。
図12は、
図10におけるXI-XI断面の断面斜視図であり、内輪720を省いて示す図である。
【0043】
図10を参照して、回転体200は、中空円盤状の部分である載置部210と、載置部210の下に位置し、載置部210よりも外径の小さな軸部220と、を含む。載置部210の上面は平坦に形成されている。載置部210および軸部220は、一体に形成された一部品である。軸部220の外周面220aに、全周にわたってスケール810が印字されている。スケール810は、前述のスケール81と同様にレーザ加工やエッチング等によって外周面220aの表面上に直接形成された、目盛り830から構成される。
【0044】
図11を参照して、回転体200の内周面200cに、軸受700における転動体91の転走面である軌道面710a、710bが形成されている。すなわち、回転体200は、回転テーブル装置におけるテーブルと軸受の外輪とが一体に構成されてなる部材である。回転体200は、軸受の外輪710を含んでなる。軸部220の内周側が外輪710として機能し、内輪720、転動体91とともに軸受700を構成する。転動体91は円柱状のローラである。軸受700はクロスローラベアリングである。内輪720は、ねじ穴160に挿入されるねじ(不図示)によってベッド(不図示)に固定される。
【0045】
図11、
図12を参照して、回転体200の下面200dには、回転体200の周方向に延在する円環状部の凹部である第1円環部230が形成されている。第1円環部230には、複数の板状の磁石が配列される。内周面200cには軌道面710a、710bが形成されている。製造において、軌道面710a、710bと、外周面220aはワンチャックで加工することが可能であり、合理的な製造工程で製造可能である。
【0046】
回転体200は、スケール810が軸部220の外周面に直接印字されており、さらに、回転テーブル装置におけるテーブルと軸受の外輪とが一体化されている。これらの構成によって、より小型で、無限回転可能な回転テーブル装置を合理的な製造工程によって得ることができる。
【0047】
(その他の変形例)
回転テーブル装置1では、軸受70の外輪71がベッドに固定され、内輪72がテーブル20に固定されている。これに対して、軸受の外輪とテーブルが固定され、内輪とベッドが固定される構造としてもよい。また、回転体200は軸受700の外輪710を含む部材である。これに対して、テーブルと軸受の内輪が一体化される構造としてもよい。これらは、部品のレイアウト、装置の大きさ、質量を考慮して適切に選択されうる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
1 回転テーブル装置、10 基台部、11 ベッド、12 支持台、14 基板、20 テーブル、21、210 載置部、22、220 軸部、23、230 第1円環部、24 第2円環部、35 隙間、41、46、47、48 ねじ、42 カラー、9、13、16、17、160 ねじ穴、18、19 取り付け穴、50 モータ、51 磁石、52 コイル、53 第1絶縁体、56 磁石列、57 コイル列、61 カバー、70、700 軸受、71、710 外輪、72、720 内輪、81、810 スケール、82 エンコーダヘッド、83、830 目盛り、91 転動体、101 第1凹部、102 第1円環部、103 穴、104 第2円環部、105 第2凹部、200 回転体。