(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004670
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】車両運搬車
(51)【国際特許分類】
B60P 7/06 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B60P7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106512
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】595048739
【氏名又は名称】株式会社四国車体
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 永策
(57)【要約】
【課題】容易かつ安全に積載車両を積載し固定して運搬できる車両運搬車を提供する。
【解決手段】荷台2の積載車両3の横ずれ阻止する横ずれストッパ機構1を備える車両運搬車100であって、横ずれストッパ機構1が、積載車両3の走行機構3Aを係止して幅方向の横ずれを阻止するストッパ10と、ストッパ10を荷台上面2aから突出して走行機構3Aを係止して積載車両3の横ずれを阻止する突出位置と、荷台上面2aと同一平面ないし下方の収納位置とに移動させる上下機構20とを備える。横ずれストッパ機構1は、積載車両3の搭載状態において、上下機構20で突出位置に移動してストッパ10が積載車両3の横ずれを阻止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台の積載車両の横ずれ阻止する横ずれストッパ機構を備える車両運搬車であって、
前記横ずれストッパ機構が、
積載車両の走行機構を係止して幅方向の横ずれを阻止するストッパと、
前記ストッパを、
前記荷台上面から突出して前記走行機構を係止して積載車両の横ずれを阻止する突出位置と、
前記荷台上面と同一平面ないし下方の収納位置とに移動させる上下機構とを備え、
前記横ずれストッパ機構は、
積載車両の搭載状態において、前記上下機構で突出位置に移動して前記ストッパが積載車両の横ずれを阻止することを特徴とする車両運搬車。
【請求項2】
請求項1に記載の車両運搬車であって、
前記ストッパが、
積載車両の両側の前記走行機構の間に突出して、
前記走行機構の内側を係止して積載車両の横ずれを阻止することを特徴とする車両運搬車。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両運搬車であって、
前記ストッパが、
積載車両の両側の各々の前記走行機構の内側を係止する一対の前記ストッパを備えることを特徴とする車両運搬車。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記ストッパが、
前記突出位置において、積載車両の横ずれに起因する押圧力で、前記荷台の幅方向に変位する前記ストッパが前記荷台に接触する接触部を有し、
前記接触部が前記荷台に接触して、前記ストッパが前記荷台に支持されて前記走行機構を係止して積載車両の横ずれを阻止することを特徴とする車両運搬車。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記ストッパの下端が、
前記突出位置において、前記荷台上面より下方に位置することを特徴とする車両運搬車。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記ストッパが、積載車両の走行機構であるキャタピラーを係止して横ずれを阻止することを特徴とする車両運搬車。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記上下機構が、それ自体が伸縮して前記ストッパを上下方向に移動するシリンダを有し、
前記シリンダが、
第1の端部を直接又はリンク機構を介して前記ストッパに連結して、
第2の端部を前記荷台またはシャーシに連結してなることを特徴とする車両運搬車。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記上下機構は、
さらに、突出位置と収納位置に前記ストッパを移動自在に前記荷台またはシャーシに連結してなる傾動アームを備え、
前記傾動アームの第1の端部が、垂直面内で傾動自在に前記荷台またはシャーシに連結され、第2の端部が前記ストッパに傾動自在に連結され、
前記傾動アームが傾動して前記ストッパが突出位置と収納位置に移動されることを特徴とする車両運搬車。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記ストッパが前記荷台に回動自在に連結され、
前記上下機構が、
前記ストッパを回動して、前記ストッパの上端を前記荷台上面から突出させることで、前記ストッパを収納位置から突出位置に移動することを特徴とする車両運搬車。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記上下機構が、
前記荷台の収納位置と突出位置とに移動自在に連結してなる前記ストッパに連結してなるワイヤーと、
前記ワイヤーを牽引して前記ストッパを収納位置から突出位置に引き上げる巻き取り機構とを備える車両運搬車。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記上下機構が、
前記荷台に回動自在に連結してなるハンドルと、
前記ハンドルの回転で前記ストッパを上下方向に移動する駆動機構とを備えることを特徴とする車両運搬車。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の車両運搬車であって、
前記ストッパが、
前記荷台の中央部であって幅方向に移動自在に配置されてなる、
第1のストッパと第2のストッパとからなる一対のストッパを備え、
前記横ずれストッパ機構が、
さらに、前記一対のストッパを前記荷台の幅方向に移動する水平駆動機構を備え、
前記水平駆動機構が、
前記一対のストッパを前記荷台の幅方向に移動して、
前記一対のストッパが、積載車両の前記走行機構の内側を係止して、積載車両の横ずれを阻止する車両運搬車。
【請求項13】
請求項12に記載の車両運搬車であって、
前記水平駆動機構が、
前記一対のストッパを前記荷台の幅方向に移動して前記走行機構を押圧して、積載車両を前記荷台上の所定の位置に移動させて、
積載車両の前記走行機構の内側を係止して、積載車両の横ずれを阻止する車両運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台上の積載車両の横ずれを阻止する横ずれストッパ機構を備える車両運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
車両運搬車で積載車両を積み降ろし及び運搬する際に、走行中の振動や衝撃、加速と停止、カーブでの遠心力、道路の傾斜や凹凸、さらには泥砂土や水分や雪、氷などが荷台面や積載車両の走行機構に付着するなどにより、積載車両が荷台上を滑って横ずれして転落、横転し大きな事故となる危険性がある。特に、重機など重い積載車両で、キャタピラー(登録商標)の走行機構には泥砂土や水分や雪、氷などがが付着し易く、車両運搬車の荷台上への積み降ろし及び運搬する際には、より慎重な配慮が要求される。そこで、一般的にベルトやワイヤーなどで、積載車両を車両運搬車に固定している。しかし、ベルトやワイヤーを積載車両のキャタピラーなど前後左右の4か所以上に通して運搬車両に固定することは、手間及び時間がかかる。近距離の運搬移動の際、また積載と運搬を繰り返し同様の作業を行うことで慣れが生じるなど、この手間と時間を惜しんで固定作業を省略することで大きな事故につながるおそれがある。
【0003】
以上のベルトやワイヤーによる固定の欠点を解消する重機緊締機を備えた重機運搬車は開発されている(特許文献1参照)。この重機緊締機は、重機の走行機構であるキャタピラの固定金具を油圧シリンダーで荷台の幅方向に移動させる。積載する重機が小型の場合、キャタピラ固定金具頭部を重機のキャタピラまたは走行機構の全巾よりやや広げ、荷台の適当な位置に重機を停止し、キャタピラ固定金具頭部を縮めることで外側から重機のキャタピラなどを挟み込み、また、積載する重機が大型の場合、キャタピラ固定金具頭部を積載する重機のキャタピラまたは走行機構の全巾よりやや狭め、荷台の適当な位置に重機を停止し、キャタピラ固定金具頭部を広げることで内側から重機のキャタピラ等を押し出すことで積載する重機を固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この車両運搬車は、常時、キャタピラ固定金具頭部が荷台表面から突出した状態にある。そのため、積載車両を積載する際、積載する前に積載車両の車幅、走行機構の間隔を確認した上で、キャタピラ固定金具頭部の位置を調整して、積載車両のキャタピラまたは走行機構がキャタピラ固定金具頭部の上に乗り上げることがないようにする必要がある。キャタピラ固定金具頭部の上に乗り上げることがないよう確認しながら積載作業を行う場合もある。積載車両のキャタピラが、キャタピラ固定金具頭部の上に乗り上げると、キャタピラ固定金具頭部の移動が困難となり、さらにバランスを崩して積載車両が横ずれして転落、横転する危険性が生じ得るからである。また、ストッパで外側から挟み込む場合においては、積載車両のキャタピラの外側にキャタピラ固定金具頭部を配置する必要があり、荷台と同じ横幅の重機を積載することができず、キャタピラ固定金具が積載する重機の最大幅を制限する弊害もある。
【0006】
本発明は、以上の弊害を解消することを目的に開発されたもので、本発明の一目的は、積載車両の横ずれを防止しながら、荷台には横幅の広い積載車両を搭載でき、しかも積載車両を簡単かつ容易に荷台に積み降ろしして安全に運搬できる車両運搬車を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明の一実施態様に係る車両運搬車は、荷台の積載車両の横ずれ阻止する横ずれストッパ機構を備える車両運搬車であって、横ずれストッパ機構が、積載車両の走行機構を係止して幅方向の横ずれを阻止するストッパと、ストッパを荷台上面から突出して走行機構を係止して積載車両の横ずれを阻止する突出位置と、荷台上面と同一平面ないし下方の収納位置とに移動させる上下機構とを備えている。横ずれストッパ機構は、積載車両の搭載状態において、上下機構でストッパを突出位置に移動して、積載車両の走行機構にストッパを係止して横ずれを防止する。
【0008】
以上の車両運搬車は、積載車両の横ずれを防止しながら、荷台には横幅の広い積載車両を搭載でき、しかも積載車両を簡単かつ容易に荷台に積み降ろしして安全に運搬できる特長がある。横ずれストッパ機構が、突出位置のストッパで走行機構を係止して積載車両の幅方向の横ずれを阻止でき、かつ、上下機構で収納位置にストッパを収納することで、積載車両の荷台への積み降ろしの際にストッパが障害となることがないからである。
【0009】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、ストッパが、積載車両の両側の走行機構の間に突出して、走行機構の内側を係止して積載車両の横ずれを阻止する。
【0010】
以上の車両運搬車は、キャタピラーの内側にストッパを係止するので、キャタピラーの外側にはストッパを配置する必要がなく、荷台を積載車両を積載するスペースに最大限利用でき、荷台の横幅に等しい積載車両を搭載して、横ずれを確実に阻止できる特長がある。
【0011】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、ストッパが、積載車両の両側の各々の走行機構の内側を係止する一対の前記ストッパを備える。
【0012】
以上の車両運搬車は、左右一対のストッパが両側の各々の走行機構の内側を係止して、積載車両の横ずれを阻止するので、キャタピラー重機などの積載車両をより確実に横ずれしない状態で荷台に搭載でき、かつ、荷台には横幅の広い積載車両を搭載できる特長がある。
【0013】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、ストッパが、突出位置において、積載車両の横ずれに起因する押圧力で、荷台の幅方向に変位するストッパが荷台に接触する接触部を有している。接触部が荷台に接触して、ストッパが荷台に支持されて走行機構を係止して積載車両の横ずれを阻止する。
【0014】
以上の車両運搬車は、積載車両の横ずれを確実に防止して、積載車両を安全に運搬できる特長がある。突出位置において、ストッパの接触部が、荷台に接触することで荷台に支持されたストッパが強固に走行機構を係止できるからである。
【0015】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、ストッパの下端が、突出位置において、荷台上面より下方に位置する。
【0016】
以上の車両運搬車は、積載車両の横ずれを確実に防止して、積載車両を安全に運搬できる特長がある。突出位置において、ストッパの荷台上面よりも下の部分が、荷台に接触することで荷台に支持されたストッパが強固に走行機構を係止できるからである。
【0017】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、ストッパが、積載車両の走行機構であるキャタピラーを係止して横ずれを阻止する。
【0018】
以上の車両運搬車は、重機の走行機構であるキャタピラーをストッパで係止して積載車両の重機の横ずれを阻止して、安全に走行できる特長がある。
【0019】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、上下機構が、それ自体が伸縮してストッパを上下方向に移動するシリンダを有している。シリンダが、第1の端部を直接又はリンク機構を介してストッパに連結して、第2の端部を荷台またはシャーシに連結してなる。
【0020】
以上の車両運搬車は、シリンダを伸縮してストッパを確実に突出位置と収納位置に移動して積載車両の横ずれを阻止できる特長がある。
【0021】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、上下機構が、さらに、突出位置と収納位置にストッパを移動自在に荷台またはシャーシに連結してなる傾動アームを備えている。傾動アームの第1の端部が、垂直面内で傾動自在に荷台またはシャーシに連結され、第2の端部がストッパに傾動自在に連結され、傾動アームが傾動してストッパが突出位置と収納位置に移動される。
【0022】
以上の車両運搬車は、簡単で強固な構造で、ストッパを上下方向に移動自在に荷台またはシャーシに連結して積載車両の横ずれを阻止できる特長がある。
【0023】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、ストッパが荷台に回動自在に連結され、上下機構が、ストッパを回動して、ストッパの上端を荷台上面から突出させることで、ストッパを収納位置から突出位置に移動する。
【0024】
以上の車両運搬車は、簡単で強固な構造で、ストッパの姿勢を変更自在に荷台に連結して、ストッパを収納位置と突出位置に移動して積載車両の横ずれを阻止できる特長がある。
【0025】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、上下機構が、荷台の収納位置と突出位置とに移動自在に連結してなるストッパに連結してなるワイヤーと、ワイヤーを牽引してストッパを収納位置から突出位置に引き上げる巻き取り機構とを備える。
【0026】
以上の車両運搬車は、ワイヤーを介してストッパを収納位置から突出位置に上昇できるので、巻き取り機構のウインチなを装備する車両にあっては、ウインチを上下機構の駆動機構に併用してワイヤーを巻き取って、ストッパを収納位置から突出位置に移動して積載車両の横ずれを阻止できる特長がある。
【0027】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、上下機構が、荷台に回動自在に連結してなるハンドルと、ハンドルの回転でストッパを上下方向に移動する駆動機構とを備える。
【0028】
以上の車両運搬車は、手動のハンドルでストッパを突出位置と収納位置に移動できるので、シリンダなどの専用の駆動機構を設けることなく、簡単で部品コストを低減して積載車両の横ずれを阻止できる特長がある。
【0029】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、ストッパが、荷台の中央部であって幅方向に移動自在に配置されてなる、第1のストッパと第2のストッパとからなる一対のストッパを備え、横ずれストッパ機構が、さらに、一対のストッパを荷台の幅方向に移動する水平駆動機構を備えている。水平駆動機構が、一対のストッパを荷台の幅方向に移動して、一対のストッパが積載車両の走行機構の内側を係止して、積載車両の横ずれを阻止する。
【0030】
以上の車両運搬車は、積載車両の横ずれを確実に防止して、容易かつ安全に積載車両を積載して運搬できる特長がある。水平駆動機構で一対のストッパを荷台の幅方向に移動させて、一対のストッパが積載車両の各々の走行機構に触れる位置で内側から係止できるからである。積載車両の横ずれを初期移動から阻止し、積載車両の振動など細かな動きも抑制して、積載車両の横ずれをより確実に防止できる。また、一対のストッパが積載車両の各々の走行機構の内側から外側に向けて押圧して係止することで、荷台上の積載車両を固定できる。水平駆動機構で一対のストッパを荷台の幅方向に移動でき、様々な車種、走行機構の間隔及び位置などに対応して積載車両の走行機構を内側から係止できる。水平駆動機構で一対のストッパを荷台の幅方向に移動させて、積載車両の載せ降ろしの際にストッパが障害とならず、スムーズ、容易かつ安全に積載車両を載せ降ろしして運搬できる。
【0031】
本発明の他の実施態様に係る車両運搬車は、水平駆動機構が、一対のストッパを荷台の幅方向に移動して走行機構を押圧して、積載車両を荷台上の所定の位置に移動させて、積載車両の走行機構の内側を係止して、積載車両の横ずれを阻止する。
【0032】
以上の車両運搬車は、積載車両の横ずれを確実に防止して、容易かつ安全に積載車両を載せ降ろしして運搬できる特長がある。積載車両がズレた位置や斜めに積載された場合など、荷台の所定の位置姿勢以外に積載車両が積載された場合に、水平駆動機構により一対のストッパが、積載車両を荷台上の所定の位置に移動させて、積載車両の走行機構の内側を係止して、積載車両の横ずれを阻止できるからである。これにより、積載車両を一旦降車して積載をやり直す必要がなく、積載車両を容易に短時間で効率よく、しかも安全に、荷台の所定の位置に移動修正して固定できる。積載車両の積み降ろしには時間と手間がかかるのみならず、積み降ろしの際に転落、横転の危険性が生じ得る。特に重心が高い位置にある車両を、車両運搬車の荷台上という高い位置に積載する場合、よりその危険性が高まる。例えば、右ハンドルの車両の場合、運転席が積載車両の中央ではなく積載車両の右側に配置され、また積載する際に積載車両付近でボンネットなどより下の範囲は死角となり積載車両の位置や走行機構と荷台の両端との間隔を確認できないことから、車両運搬車の荷台の所定の位置に積載車両の中心や重心が位置するように安全にスムーズに積載することは容易でない。積載車両が同一車種とは限らず、運転者の技術経験を必要とする。特に重機など運転席の配置などにより同様またはそれ以上の困難を伴う場合もあり、積み降ろしのやり直しは普通車以上に時間と手間、安全面の配慮を必要とする場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両運搬車の概略斜視図である。
【
図2】
図1に係る車両運搬車の横ずれストッパ機構を示す概略垂直断面図である。
【
図3】横ずれストッパ機構の変形例を示す概略断面図である。
【
図4】
図3に示す横ずれストッパ機構の概略平面図である。
【
図5】横ずれストッパ機構の他の変形例を示す概略断面図である。
【
図6】横ずれストッパ機構の他の変形例を示す概略断面図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る車両運搬車の概略斜視図である。
【
図8】
図7に係る車両運搬車の横ずれストッパ機構を示す概略垂直断面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る車両運搬車の使用例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0035】
本明細書において「走行機構」は、車両を走行させるために両側に設けているキャタピラー(登録商標)、車輪、または特殊車両などにおけるこれらに類するものを意味する。本発明の「積載車両」は、走行機構を備える車両であり、キャタピラー(登録商標)で走行する重機に限定されない。積載車両は、主に土木、建築、運搬作業、工事現場などで用いられる重機、例えば、ブルドーザ、ショベルカー、ダンプカー、ホイールローダー、クレーン車、特殊車両などの他、トラック、乗用車、農業用のトラクター等を含むものとする。
【0036】
本明細書において、垂直方向とは、荷台に対して垂直の方向を示す。水平方向とは、荷台に対して平行な面上の方向を示す。左右とは、例えば車両運搬車の荷台の幅方向、すなわち短手方向(幅)の中央を通る中央線を基準とした場合、車両運搬車の上から見て水平方向において中央線より右側、または中央線より左側を示す。車両運搬車100の荷台2上において左右方向とは荷台2の短手方向を、前後方向とは長手方向を示す。
(実施の形態1)
【0037】
図1~
図6は、本発明の実施形態1に係る車両運搬車100を示している。
図1は車両運搬車100の概略斜視図、
図2は車両運搬車100の横ずれストッパ機構1の概略垂直断面図、
図3は横ずれストッパ機構1の変形例を、
図4は
図3の概略平面図を、
図5及び
図6は横ずれストッパ機構1の変形例を、それぞれ示している。
(横ずれストッパ機構1)
【0038】
これら図に示す車両運搬車100は、荷台2上の積載車両3の横ずれ阻止する横ずれストッパ機構1を備える。横ずれストッパ機構1は、キャタピラー(登録商標)で走行する重機などの積載車両3の走行機構3Aを係止して、積載車両3の幅方向の横ずれを阻止するストッパ10と、ストッパ10を突出位置と収納位置に上下方向に移動する上下機構20とを備える。横ずれストッパ機構1は、積載車両3の走行機構3Aに内側にストッパ10を係止して、積載車両3の横ずれを阻止する。以下の図に示す積載車両3は、走行機構3Aをキャタピラー(登録商標)とする。ただし、本発明は走行機構をキャタピラー(登録商標)に特定するものではないので、ストッパは、例えば、走行機構の車輪を係止して積載車両の横ずれを阻止することもできる。
(ストッパ10)
【0039】
ストッパ10は、荷台2上に突出する突出位置に移動されて、走行機構3Aを係止して積載車両3の幅方向の横ずれを阻止する。ストッパ10は、積載車両3が荷台2に積載された状態で突出位置に移動され、それ以外の場合は収納位置に収納される。ストッパ10の突出位置とは、ストッパ10の上端が荷台上面2aから突出し、積載車両3のキャタピラー(登録商標)などの走行機構3Aを係止して積載車両3の横ずれを阻止できる位置である。ストッパ10の収納位置とは、ストッパ10の上端が荷台上面2aと同じ高さ、あるいは荷台上面2aよりも下方の位置であって、荷台2に積載車両3を積み降ろしするときに、荷台上面2aを積載車両3が移動してストッパ10が邪魔にならない位置である。ストッパ10の上端が荷台上面2aと同じ高さとは、厳密な意味ではなく、ストッパ10が荷台上面2aの積載車両3の移動の障害とならない、積載車両3の移動により危険性を高めることがない範囲の高低差がある場合も含むものとする。
【0040】
図1及び
図2に示すように、ストッパ10は、積載車両3の両側の走行機構3であるキャタピラーの間である、荷台2の中央部に、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bの一対のストッパ10を設ける。ストッパ10は、後述する上下機構20で収納位置から荷台上面2aに突出する突出位置に移動されて、積載車両3の走行機構3Aの内側を係止して積載車両3の横ずれを阻止する。ストッパ10を積載車両3の両側の走行機構3の間に設けることで、車両運搬車100の荷台2を積載車両3を積載するスペースに最大限利用できる。仮に、車両運搬車の荷台上で、積載車両の両側の走行機構の外側に横ずれ阻止機構を設ける場合、横ずれ阻止機構の配置スペース分だけ積載できる積載車両の車幅が狭くなり制限される。しかも、走行機構の外側を係止するために横ずれ阻止機構を荷台の両側の端部に設ける必要があり、両側端の横ずれ阻止機構の配置スペース分だけ両側から狭くなり、積載できる車両幅が制限され、車両運搬車の荷台の幅をを積載車両を積載するスペースに十分利用できない。これに対し、
図1及び
図2の車両運搬車100は、荷台2の中央部側、積載車両3の両側の走行機構3Aの間、つまり、両側の走行機構3Aの内側にストッパ10を突出させて走行機構3Aを係止するので、両側の走行機構3の外側には走行機構を係止する機構を配置するスペースを確保する必要がなく、車両運搬車100の荷台2の幅を最大限に活かし、荷台2の横幅に等しい積載車両3を積載しながら、横ずれを確実に阻止できる特長がある。
【0041】
図1は、ストッパ10が、荷台上面2aから突出する突出位置にある車両運搬車100の概略斜視図を示す。
図2Aは
図1の概略横断面図で、ストッパ10が上下機構20で突出位置に上昇された状態を示している。
図2Aの上下方向の矢印に示すように、後述する上下機構20で、ストッパ10は収納位置と突出位置とに移動される。
図1及び
図2の車両運搬車100は、積載車両3の両側の走行機構3の間である荷台2の中央部分に、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bからなる一対のストッパ10を設ける。このストッパ10は、左右で一対となり、車両運搬車100の上から見て、車両運搬車100の荷台2の短手方向の中央を通る中央線よりも右側に第1のストッパ10a、左側に第2のストッパ10bが配置される。これらの図に示すストッパ10は、積載車両3の右側走行機構3aの横ずれを阻止するストッパ10を第1のストッパ10aとし、積載車両3の左側走行機構3bの横ずれ阻止するストッパを第2のストッパ10bとする。第1のストッパ10aと第2のストッパ10bは、各々積載車両3の両側の走行機構3Aの内側を係止して、荷台2上で積載車両3が横ずれするのを阻止して、積載車両3が荷台から転落し、あるいは転落して横転することを防止する。
【0042】
具体的には、以下のように、ストッパ10が積載車両3の横ずれを阻止する。右側ハンドルの車両運搬車100の場合、車両の後方から見てハンドル側が右側とする。左右で一対のストッパ10が、積載車両3の左右の走行機構3Aの間の突出位置に配置されることで、例えば、荷台2上の積載車両3が左側に横ずれすると、右側の第1のストッパ10aが積載車両3の右側走行機構3aの内側を係止し、第1のストッパ10aがストッパとなって横ずれを停止して、積載車両3がそれ以上左側に横ずれすることを抑止できる。逆に、荷台2上の積載車両3が右側に横ずれすると、左側の第2のストッパ10bが積載車両3の左側走行機構3bの内側を係止して、第2のストッパ10bがストッパとなって横ずれを停止でき、積載車両3がそれ以上右側に横ずれすることを抑止できる。
【0043】
図1及び
図2の積載車両3の両側の各々の走行機構3Aの内側を係止する一対のストッパ10を備える。ただし、図示しないが、荷台の短手方向に所定の幅とする幅広のストッパを設けることで、積載車両の両側の走行機構の間にひとつのストッパを備えることもできる。また図示しないが、例えば、積載車両の走行機構の前方、後方を別々に係止するために第1のストッパ及び第2のストッパを各々2分割にしたり、走行機構の前方、中間、後方など走行機構の位置、個数に合わせて、第1のストッパ及び第2のストッパを各々分割して配置したり、走行機構を複数か所で係止するため、左右両側にそれぞれ複数のストッパを設けることもでき、さらに左右両側のストッパを同数または異なる数にできる。
【0044】
図1のストッパ10は、荷台2の長手方向に伸びる直線状として、ストッパ10の断面形状を同一の形状にする。直線状のストッパ10は、例えば、キャタピラのように走行機構3Aが直線状に伸びる形状に合う。また、積載車両3の横ずれ方向が一定でなくても対応でき、直線状のストッパ10のいずれかの位置で走行機構3Aを係止できる。ただし、図示しないが、例えば、ストッパを走行機構と接触する部分に凹凸を設けるなど部分的に異なる形状、厚みなどにできる。ストッパ10は、積載車両3の横ずれに起因する押圧力に十分に耐え得る耐荷重強度が必要であり、要求される強度に応じて部分的に異なる形状、厚み、部分的に異なる材質などにしたり、さらに補強を施したり、ストッパの表面を滑らない素材で覆う、またはこれらを組み合わせることもできる。またさらに、ストッパは、キャタピラを挟み込む形状、差し込んでキャタピラを抑える形状などの係止部を、走行機構が接触する位置に設けることで、横ずれした積載車両の走行機構がストッパを乗り越えることを防止して、積載車両の横ずれをより確実に阻止することもできる。
【0045】
ストッパ10と積載車両3の走行機構3Aとの接触部分において、ストッパ10がひとつの走行機構3Aに対して複数点または線状もしくは面状に接触できる形状とすることが好ましい。例えば、図示しないが、ストッパと積載車両の走行機構とが接触する部分において、積載車両3の横ずれに起因する押圧力がストッパの特定の1点に集中することなく、ストッパが走行機構にある程度面的広がりをもって接触できるようにして積載車両の横ずれを阻止し、また積載車両の走行機構を傷付けることを可及的に防止するために、弾力性のある素材をストッパの接触面側に設けることができる。
【0046】
左右両側に設けている一対のストッパ10は、好ましくは長さ、幅、形状、大きさなどを左右対称とする。ストッパは、曲線や部分的に異なる形状など他の形状にもすることもできる。図示しないが、例えば、ストッパが積載車両の走行機構であるキャタピラや車輪などと接触する部分において走行機構が滑ることのない形状、例えば積載車両の走行機構が嵌まる凹形状などにもできる。ストッパは、特定の材質に限定するものではなく、積載車両が移動、スライドした際に、積載車両の走行機構の移動、スライドを止めることができる十分な強度を有する適切な材質を選択する。また、第1のストッパ及び第2のストッパを2以上設ける場合、前後のストッパを異なる長さ、形状にでき、また異なる配置にできる。ストッパは、積載車両の前後方向の移動、スライドも含めて制限できるよう長さ、形状、配置を定めることもできる。
【0047】
ストッパ10が荷台2上の突出位置に移動され、ストッパ10が走行機構3Aの内側に接触してストッパーとして機能することで積載車両3の移動、スライドを停止できる。ストッパ10の突出位置は、荷台2に積載された積載車両3の走行機構3Aの位置に合わせて最適に定められる。ストッパ10の突出位置は、積載された積載車両3の走行機構3Aに可能な限り近い位置が好ましい。積載車両3の移動、スライドの距離を短くできるからである。他方で、走行機構の位置、間隔が異なる積載車両を積載する車両運搬車100の場合には、異なる車種に対応できるようにある程度の間隔をもってストッパ10の突出位置を定めることができる。ストッパ10が走行機構3Aの内側に接触してストッパーとして機能した際に、反対側の走行機構3Aが荷台2上に位置できるように、ストッパ10の突出位置から荷台2の短手方向の端部までの長さを定める必要がある。
【0048】
本発明において、ストッパ10が積載車両3の走行機構3Aに接触する面積の大きさ、ストッパ10の形状、ストッパ10が突出する高さなどを特定するものでない。ストッパ10の形状は、積載車両の車種、車重、走行機構の態様、積載車両の係止状態などにより、ストッパに作用する押圧力などに応じて、また静止中のみならず、走行による振動、道路状態などをも考慮して、接触面積の大きさ、突出高さ、外形等を特定して、ストッパ10が走行機構3Aを係止して積載車両3の横ずれを阻止する最適な範囲とする。突出位置にあるストッパ10が車両運搬車100の荷台面2a上面から突出する高さは、例えば3cm~20cmとする。好ましくは5cmから16cmとする。
図1及び
図2のストッパ10は、四角形の側面を走行機構3Aの内側に接触させて係止するが、この形状に限定するものではない。さらにストッパ10は、車両運搬車100の走行中に荷台2が振動したり衝撃を受けた場合に、積載車両3の走行機構3Aが乗り越えることのない高さ及び形状とする。図示しないが、例えば、ストッパが積載車両の走行機構と接触する面の形状を、アンダーカット状とし、あるいは上部に引っ掛かりを設けた逆L字状など引掛け部を設けることで、積載車両の走行機構がストッパを乗り越えることを防止することもできる。キャタピラー(登録商標)の側面と上面を係止する逆L字上として、走行機構を確実に係止できる。さらにストッパは、高強度と軽量化を図るレール形状など、積載車両、走行機構、接触の態様、加えられる押圧力などに応じ最適な形状にできる。ストッパ10は、特定の材質に限定するものではなく、ストッパ10が積載車両3の走行機構3Aに接触して移動を制限できる十分な強度を有する適切な金属やプラスチック等の材質を選択する。
(ストッパ開口8)
【0049】
ストッパ10が車両運搬車100の荷台面2aに対して上下に移動するために、車両運搬車100の荷台2には、収納位置のストッパ10を内側に配置しているストッパ開口8を設けている。ストッパ開口8は、その内形をストッパ10の外形よりもわずかに大きく、内側に配置するストッパ10を上下方向に移動できるストッパ隙間8aを設けている。
図1及び
図2のストッパ開口8は、長方形として内側に平面視を長方形とするストッパ10を配置している。突出位置にあるストッパ10は、係止する積載車両3が横ずれする状態で荷台2の幅方向の押圧力を受ける。ストッパ10は、好ましくは、
図2に示すように、突出位置においてストッパ10の下部をストッパ開口8の内側に配置して、ストッパ開口8でストッパ10の横ずれを阻止する。このストッパ隙間8aは、ストッパ10を上下方向に移動でき、かつ係止する積載車両3の横ずれに起因する押圧力で、荷台2の幅方向に変位するストッパ10をストッパ開口8の内面に接触する隙間、たとえば3mm~10mmとする。この構造は、積載車両3の横ずれによる押圧力でストッパ10が荷台2の幅方向に移動する変位量をストッパ開口8の内面で特定制限できる。重いキャタピラー(登録商標)などの重機は、横ずれ力が強くなって、ストッパ10に強い押圧力が作用することがあるが、ストッパ開口8で変位量を特定制限できる構造は、ストッパ10を荷台2の連結する連結機構に、ストッパ10を幅方向の変位を小さくする強度が要求されない。このことは、連結機構を簡素化して、軽量化できる特長がある。さらに、ストッパ隙間8aには、ゴム状弾性体の緩衝材などの閉塞材を配置して、積載車両3がストッパ10に衝突する衝撃を吸収でき、また、ストッパ隙間8aに埃、泥などの異物が侵入するのを防止できる。なお、ストッパ隙間8aは、取り外しできる閉塞材を配置することもできる。
【0050】
さらに、
図1及び
図2に示すように、ストッパ開口8は、ストッパ10が上下垂直方向に移動できるよう荷台2に設けられ、ストッパ開口8の内側にストッパ10を案内し、ストッパ10の下面側に垂直姿勢にシリンダ21を連結する構造とする。この上下機構20は、ストッパ開口8を所定の高さの筒状として、筒状のストッパ開口8をストッパ10を案内するガイド筒9として、ストッパ10を上下方向に移動する。この上下機構20は、簡単な構造でストッパ10を突出位置と収納位置に移動できる。この上下機構20は、ストッパ開口8をストッパ10のガイド筒9とするので、ストッパ隙間8aを狭くして、ストッパ10を水平姿勢に保持して上下方向に移動できる。また、積載車両3の横ずれに起因する押圧力によるストッパ10の荷台2の幅方向の変位を抑制できる。図示しないが、例えば、ストッパ側に突起設けこれを案内する溝をストッパ開口側のガイド筒に設けて、溝に沿ってストッパを上下動させることもできる。
(接触部11)
【0051】
図2のほか、後述する
図3などに示すように、ストッパ10は、ストッパ10が荷台2に接触する接触部11を有する。接触部11は、突出位置において、ストッパ10が荷台2に接触する部分のみならず、ストッパ10が積載車両3の横ずれに起因する押圧力で、荷台2の幅方向に変位されて、荷台2に接触する部分をも含むものとする。接触部11は、ストッパ10が荷台2に直接または間接的に接触する部分である。ストッパ10の接触部11により、ストッパ10が荷台2に接触する状態で、ストッパ10が強固に荷台2に支持されて走行機構3を係止して積載車両3の横ずれを確実に阻止できる。
【0052】
さらに、
図2A~
図2Cに示すように、ストッパ10は、突出位置において、ストッパ10の下端10dが荷台上面2aより下方に位置する高さにして、ストッパ10の荷台上面2aより下方を接触部11にできる。突出位置においてストッパ10の荷台上面2aより下方に位置する接触部11が荷台2に接触して、ストッパ10が荷台2に支持されて走行機構3を強固に係止できる。
図2Aは、横ずれストッパ機構1の荷台2の短手方向の概略垂直断面図を示す。
図2Aにおいて、ストッパ10の下面を平面としながら、突出位置において、シリンダ21とストッパ10との連結面10cが荷台上面2aより下方に位置するストッパ10の高さとし、ストッパ10の突出高(h1)よりストッパ10の高さ(h2)を高くしてなる。
図2Aにおいて、接触部11の高さ(s1)は、ストッパ10の高さ(h2)で調整できる。
【0053】
図2Bは、ストッパ10の荷台2の長手方向の概略垂直断面図の一部を示す。
図2Bのストッパ10は、シリンダ21とストッパ10との連結部以外の部分において、シリンダ21とストッパ10との連結面10cよりストッパ10の下端10dが下に位置するものとし、ストッパ10の上面からシリンダ21とストッパ10との連結面10cまでの長さ(h3)より、ストッパ10の上面からストッパ10の下端10dまでの長さ(h4)が長くしてなる。
図2Bにおいて、接触部11の高さ(s2)は、ストッパ10の上面からストッパ10の下端10dまでの長さ(h4)で調整できる。接触部11は、ストッパ10の長手方向に伸びる側面の大きな面積で荷台2の垂直面と接触できる。
【0054】
図2Cは、ストッパ10の荷台2の短手方向の概略要部垂直断面図を示す。
図2Bのシリンダ21とストッパ10との連結部以外の部分に加えて、さらに、
図2Cはシリンダ21とストッパ10との連結部においても、接触部11を設けることができる。
図2Cに示すように、ストッパ10は、例えば、ストッパ10の下部を筒状にするなど、シリンダ21とストッパ10との連結部において、シリンダ21とストッパ10との連結面10cよりストッパ10の下端10dが下に位置するものとし、ストッパ10の上面からシリンダ21とストッパ10との連結面10cまでの長さ(h5)より、ストッパ10の上面からストッパ10の下端10dまでの長さ(h6)が長くしてなる。
図2Cにおいて、接触部11の高さ(s3)は、ストッパ10の上面からストッパ10の下端10dまでの長さ(h6)で調整できる。
【0055】
以上のように、突出位置において、ストッパ10の下端10dが荷台上面2aより下方に位置するようにストッパ10の高さを設定することで、まず、ストッパ10のうち、荷台上面2aから突出する部分で、走行機構の3Aを係止する。そして、ストッパ10のうち、荷台上面2aより下方の部分で、走行機構の3Aを係止する部分と反対側で接触部11が荷台2の垂直面に接触して、ストッパ10が荷台2に支持されて走行機構の3Aを強固に係止できる。さらに、突出位置においてストッパ10が荷台2に接触する接触部11の面積を大きくして、ストッパ10がより強固に荷台2に支持されて走行機構3を係止できる。また、積載車両3の横ずれに起因する押圧力でストッパ10の傾きや荷台2の幅方向に変位を抑制できる。ストッパ10が強固に荷台2に支持されて走行機構3を係止でき、また、変位量を抑制できることで、ストッパ10を上下機構20を介して荷台2またはシャーシ5に連結する連結機構に、ストッパ10を幅方向の変位を小さくする強度が要求されない構造にできる。図示しないが、積載車両の横ずれに起因して押圧される側のストッパの下端付近の側面に突起などを設けて、押圧されたストッパの傾きや変位を抑制する構造にできる。
【0056】
ストッパ10の接触部11は、荷台2のひとつの面、例えば、荷台2の垂直面または荷台2の上向き水平面または傾斜面に接触する位置に配置でき、また、荷台2の2以上の面に接触するような、接触部11及び荷台2の形状、構造にできる。例えば、
図2A~
図2Cの接触部11は、荷台2の垂直面に接触し、
図3の接触部11は、少なくとも荷台2の上向き水平面に接触する。
【0057】
図示しないが、ストッパの接触部は、突出位置において間接的に荷台に接触することもできる。例えば、ストッパと走行機構の間に、挟み部をストッパまたは荷台に取り付ける、または挟み込むことで、ストッパと走行機構の間隔を小さくして、またはストッパと走行機構を挟み部を介して間接的に接触させて、積載車両の移動、スライド範囲を抑えることもできる。また、ストッパの接触部、または荷台側に複数の車輪を配列し、突出位置のストッパがいずれかの側に設けられた車輪を介して間接的に荷台に接触できる。接触部11の形状は、ストッパ10の形状とストッパ10との接触態様に対応させて最適に定めらる。例えば、一方に突起、他方に溝などの凹凸形状のように一方が他方にはまり込む形状にして接触部が荷台に接触した際に互いに位置ズレしないようにできる。また、凹凸などの形状にすることで、接触する両側の強度を向上できる。
(上下機構20)
【0058】
上下機構20は、ストッパ10を収納位置から突出位置に、または突出位置から収納位置に移動させる機構である。
図1及び
図2に示すように、上下機構20は、積載車両3が荷台2に搭載された状態においては、ストッパ10を突出位置に配置して、積載車両3のキャタピラー(登録商標)などの走行機構3Aに係止して積載車両3の横ずれを阻止し、積載車両3を積み降ろしするタイミングでは、ストッパ10が荷台2を移動する積載車両3に邪魔にならない収納位置に降下させて、容易かつ安全に積載車両3を積み降ろしする。上下機構20は、以下に記載される特定の構造に限定されず、現在販売され、または今後改良開発されるストッパを収納位置と突出位置に移動できる機構を使用できる。
【0059】
図1及び
図2の上下機構20は、それ自体が伸縮してストッパ10を上下方向に移動するシリンダ21とする。シリンダ21は、第1の端部21aを直接又はリンク機構を介してストッパ10に連結し、第2の端部21bを荷台2またはシャーシ5に連結される。
図2のシリンダ21は、ストッパ10の真下に設けられ、垂直方向に伸縮してストッパ10を上下方向に移動する。図において、シリンダ21の第1の端部21aを直接シリンダ21に、シリンダ21の第2の端部21bをシャーシ5に連結してなる。シリンダ21は、例えば、油圧シリンダを使用できる。油圧シリンダ13は、小型の油圧ポンプで大きな力を発揮でき、応答速度が早く、コントロールし易く、省エネルギー回路のためポンプが停止してもある程度の圧力を保持できる、作動油自体に防錆、潤滑効果があり機器内部の摩耗が少ないなど長所がある。
【0060】
シリンダ21などの上下機構20は、ひとつのストッパ10に対して1または2以上設けることができる。
図1において、シリンダ21を、第1のストッパ10a及び第2のストッパ10bに各々2基ずつ合計4基設ける例を示すが、シリンダを、第1のストッパ及び第2のストッパに各々1基ずつ合計2基にでき、また、シリンダをまとめて1基にし、または、シリンダを5基以上設けることもできる。また図示しないが、シリンダは、2段式を使用できる。上下機構の省スペース化に資する。シリンダの出力荷重は、ロッドの先端に連結されるストッパの全体を上下に移動できる出力とすることができる。したがって、ストッパの重量、大きさ、積載車両の横ずれによる押圧力などに応じて最適な範囲に設定できる。
(変形例)
【0061】
以下、
図3~
図6に、横ずれストッパ機構1、特に上下機構20の変形例とこれに合わせたストッパ10を示す。
図3及び
図4の横ずれストッパ機構1の上下機構20は、さらに、突出位置と収納位置にストッパを移動自在に荷台2またはシャーシ5に連結してなる傾動アーム25を備えてなる。
【0062】
図3に示す上下機構20は、ストッパ10を水平姿勢に保持しながら上下方向に移動できるように荷台2またはシャーシ5に連結している傾動アーム25と、ストッパ10と荷台2またはシャーシ5とに連結しているシリンダ21とを備える。傾動アーム25は、それ自体が傾動してストッパ10を突出位置と収納位置に移動する。
図3に示すように、傾動アーム25の第1の端部25aが、垂直面内で傾動自在に荷台2またはシャーシ5に連結され、第2の端部25bがストッパ10に傾動自在に連結されている。
図3において、実線は収納位置にあるストッパ10を、点線は突出位置にあるストッパ10を、それぞれ示す。図において、ふたつの傾動アーム25が、ストッパ10の両端付近に回動自在に連結されて、傾動アーム25の回動方向に合わせて斜めに配置されたシリンダ21が伸縮することで、ストッパ10は水平姿勢を保ったまま上下方向に移動される。なお、シリンダ21を配置する角度は、傾動アーム25の回動方向により制限されたストッパ10の移動可能な範囲に合わせる必要がある。
【0063】
図3及び
図4のストッパ10は、両端部であってその両側に傾動アーム25を連結している。図のストッパ10は、傾動アーム25を連結している両端部の両側面に切欠部15を設けて、切欠部15に傾動アーム25を配置している。
図4に示すように、この構造は、ストッパ開口8を長方形として、傾動アーム25を両端の両側に連結しているストッパ10を内側に案内できる。ストッパ10の中央部には、シリンダ21を連結している。シリンダ21は両側を垂直面内で傾動できるように、一端をストッパ10の下面に、他端を荷台2またはシャーシ5に連結している。この上下機構20は、シリンダ10を伸縮して、各々の傾動アーム25を傾動させて、ストッパ10を平行姿勢に保持しながら上下方向に移動できる。
【0064】
図4に示す平面図は、傾動アーム25がストッパ10に連結された様子を示す。一対の傾動アーム25がストッパ10の端部を外側から両側を挟んで回動自在に連結されている。一対の傾動アーム25でストッパ10の端部を両側から支持でき、ストッパ10の端部の形状を傾動アーム25の幅に合わせることで、ストッパ開口8を整形にでき、ストッパ隙間8aを最小限の幅にできる。図示しないが、ストッパの端部の内側において外側に向かって両側を挟んで回動自在に連結する構造にもできる。
【0065】
図4に示すように、ストッパ10が傾動アーム25の傾動に沿って移動する場合、突出位置においてストッパ10が荷台2の一部のり上がる形状にして、ストッパ10の下面側が直接荷台2に接触する接触部11にできる。この場合、ストッパ10の端部付近の接触部11は、荷台2の略水平面に接触でき、さらに垂直面にも接触できる。また図示しないが、接触部または荷台のいずれかに車輪を設けて、接触部が車輪を介して間接的に荷台に接触する構造にできる。
【0066】
図3及び
図4の上下機構20は、ストッパ10の両端に傾動アーム25を連結している。図示しないが、上下機構は、ストッパの一方の端部のみに傾動アームを設けることができる。また、ストッパの一方の端部に傾動アームを連結して、他方の端部は蝶番を介して荷台またはシャーシに連結して、蝶番などで代用することもできる。
【0067】
図5の上下機構20は、ストッパ10の一端側を荷台2に回動自在に連結し、他端側にシリンダ21を配置する。車両運搬車100の後方側(図において左側)に配置されたシリンダ21を伸縮して、ストッパ10の片側を上下に移動できる。図において、ストッパ10の一端側(図において右側)の下側に回動軸13を設け、ストッパ10を荷台2に回動自在に連結するが、回動自在に連結される位置はこれに限定されず、ストッパ10の端部の側面など異なる位置で回動自在に連結できる。シリンダ21は、回動軸13と反対側のストッパ10の端部(図において左側)付近に連結されるが、端部から内側に偏在して連結することもできる。端部に連結するシリンダ21は、ストッパ10をスムーズに突出位置に移動でき、図示しないが、端部から中央部に偏在して連結するシリンダは、小さいストロークでストッパを突出位置に移動できる。この上下機構20は、図において点線の突出位置ではストッパ10の上面を荷台上面2aに対して傾斜する姿勢とし、実線の収納位置ではストッパ10の上面を荷台上面2aと平行姿勢とする。また、ストッパ10の一端側を荷台2ではなく、シャーシ5に回動自在に連結できる。ストッパ10の一端側を荷台2またはシャーシ5に回動自在に連結する方法は蝶番など他の連結具でも代用できる。
【0068】
図3ないし
図5のストッパ10は、
図1と同様に、積載車両3の左右両側の各々の走行機構3Aの内側を係止する一対のストッパ10とする。ただし、図示しないが、走行機構の位置、個数に合わせて左右各々のストッパを分割したり、走行機構を複数か所で係止するため、複数のストッパを設けることができる。上下機構20は、ストッパ10に合わせて設けられる。ストッパごとに上下機構を設け、また複数のストッパをまとめて上下動させる上下機構を設けることができる。複数の上下機構を設ける場合は、これらの一部または全部を連動させ、また独立してストッパ10を移動できる。
【0069】
図1~
図5の上下機構20はストッパ10を上下、または斜め方向に移動させるが、上下機構20は、
図6のように、ストッパ10を回動させて姿勢を変更して移動することもできる。
図6A及び
図6Bの上下機構20は、荷台2に回動自在に連結されたストッパ10を所定の角度回動させて、ストッパ10の姿勢を変更してストッパ10の上端を荷台上面2aから突出させる突出位置に移動する例を示す。
図6Aにおいて、ストッパ10が回動軸13で荷台2に回動自在に連結される。図の上下機構20が、回動軸13を中心としてストッパ10を180度回動して、ストッパ10の上端を荷台上面2aから突出させる姿勢とすることで、ストッパ10を収納位置から突出位置に移動する。
【0070】
図に示すように、回動軸13の位置をストッパ10の中央からずらした位置に配置できる。
図6Aに示すように、ストッパ10が荷台2に回動自在に連結される中心の回動軸13の位置は、垂直断面視においてストッパ10の厚みの中央線よりも上側、荷台上面2a側に近い位置に配置されることで、ストッパ10を回動して収納位置と突出位置の姿勢にできる。
図6Aの実線で示す、収納位置にあるストッパ10の上面は、荷台上面2aとほぼ同一、またはやや下に位置する。図の点線は、突出位置にあるストッパ10を示す。収納位置から回動軸13を中心としてストッパ10が180度回動され、ストッパ10の上面が荷台上面2aから突出した突出位置に移動された状態を示す。収納位置のストッパ10の下面が180度回動することで、突出位置のストッパ10の上面となる。
【0071】
また
図6Aに示すように、回動軸13の位置をストッパ10の長手方向の長さの中央線から左右にずらせている。これにより、例えば図の左側のストッパ10は、回動軸13を中心として図の矢印で示す左方向にストッパ10が回動されて、接触部11が荷台2のストッパ保持部8bに収まるようにできる。ストッパ保持部8bは、荷台2に設けられたストッパ開口8に、ストッパ10の接触部11に接触してストッパ10を保持する。ストッパ保持部8bは、ストッパ10の下面を保持できるが、さらに、ストッパ10の側面も支持するようストッパ10が収まる形状に合わせることができる。ストッパ保持部8bは、ストッパ10が積載車両3の走行機構3Aを係止する際に、ストッパ10の側面の接触部11にも接触してストッパ10を保持できる。ストッパ10が接触部11を有し、さらに接触部11がストッパ保持部8bに支持されることで、ストッパ10が荷台2に接触して強固に保持されて、走行機構3Aを確実に係止し積載車両3の横ずれを阻止できる。
【0072】
図6Bにおいても、ストッパ10が荷台2に回動自在に連結される。図の上下機構20が、回動軸13を中心としてストッパ10を90度回動して、ストッパ10の上端を荷台上面2aから突出させる姿勢とすることで、ストッパ10を収納位置から突出位置に移動する。
【0073】
図6Bの回動軸13の位置はストッパ10の端部付近とする。
図6Bの実線で示す、収納位置にあるストッパ10の上面は、荷台上面2aとほぼ同一、またはやや下に位置する。図の点線は、突出位置にあるストッパ10を示す。点線は、収納位置から回動軸13を中心としてストッパ10が90度回動され、突出位置にあるストッパ10の上面が荷台上面2aから突出した位置に移動された状態を示す。
図6Bの左側(車両後方側)のストッパ10において、収納位置のストッパ10の右側面が90度回動することで、突出位置のストッパ10の上面となる。図で示すように、上下機構20は、荷台2の一部のストッパ10とし、回動軸13の位置をストッパ10の左端部付近として、ストッパ10を90度回動して上方に開口するいわば観音開き状にすることで、ストッパ10を収納位置と突出位置の姿勢にできる。
【0074】
さらに、
図6Bに示すように、ストッパ10の形状をL字状にして、突出位置においてストッパ10が荷台2に接触する接触部11を有する形状にできる。図の接触部11が、荷台上面2a、または側面の垂直面、もしくは両方の面に接触できるようにして、ストッパ10が荷台2に保持されて走行機構3Aを係止できる。
【0075】
ストッパ10は、
図6Bの変形例としてさらに、図示しないが、例えば、車両運搬車の荷台上面の一部をストッパとして、このストッパを蝶番などを介して荷台に傾動自在に連結して、ストッパを傾動して突出位置に上昇することもできる。ストッパの傾動方向は、荷台の長手方向のみならず、荷台の中央から端部に向けて短手方向に傾動することもできる。このストッパは、収納位置において荷台上面の平行姿勢にあり、突出位置においては、蝶番の反対側の側縁を荷台上面から突出するように起立姿勢に向かってに傾動して、走行機構に係止させる。このストッパは、収納位置においては、水平姿勢に傾動して、上面を荷台上面と同一面とし、あるいは、ストッパを板状として、荷台の上面に載せた状態とすることもできる。ストッパを傾動する上下機構には、モータの他に、シリンダなども使用できる。シリンダは先端を蝶番から離れた位置に連結し、後端を荷台またはシャーシに連結し、伸張してストッパを突出位置に、収縮して収納位置に配置する。
【0076】
他の図と同様に、
図6に示すストッパ10の形状、サイズ、個数、回動軸の位置、回転角度、回動方向などは例であり、これらに限定されるものではない。積載される積載車両3、走行機構3、車両運搬車1の荷台2などに応じて最適に定められる。ストッパを回動する機構はモータに限定されず、回動軸を中心に回動してストッパの姿勢を変更してストッパを収納位置から突出位置に移動できる、現在販売され、今後改良開発される他の機構を用いることができる。
【0077】
上下機構20は、電動または手動とすることができる。図示しないが、上下機構は、荷台に回動自在に連結してなるハンドルと、このハンドルの回転でストッパを上下方向に移動する駆動機構とを備えることができる。この機構は手動と電動をいずれにもできる。
【0078】
図1ないし
図6の上下機構20は、ストッパ10の下側または斜め下側から押し上げて収納位置から突出位置に移動する機構とするが、それ以外に、ストッパの上側または斜め上側から引き上げる、もしくは横側から押し引きする機構にできる。図示しないが、例えば、上下機構が、荷台の収納位置と突出位置とに移動自在に連結してなるストッパに連結してなるワイヤーと、ワイヤーを牽引してストッパを収納位置から突出位置に引き上げる電動ウインチ又は手動のプーリなどの巻き取り機構とを備えることができる。
(積載車両を積載し、横ずれを阻止する手順)
【0079】
まず、積載車両3を車両運搬車100の荷台2に積載する。荷台2上の走行機構3Aの走行移動をストッパ10が阻害することがないように、ストッパ10は収納位置に配置されて、車両運搬車100は積載車両3を安全かつ簡単に積載できる。図示しないが、例えば、積載車両は自走式により、またはウインチなど牽引機を使用して、さらにまた歩板を使用したり、車両運搬車の荷台を後方に傾斜、スライドさせ、車両運搬車の前方を油圧シリンダでジャッキアップさせて車体自体を後方にかけて傾斜させるなどの方法により車両運搬車の荷台に積載する。積載車両3は、車両運搬車100の荷台2前方に設けられた走行機構止めなどに積載車両3の走行機構3Aが当たる所定の位置で停車される。次に、上下機構20が、ストッパ10を収納位置から突出位置まで移動させて、車両運搬車100の荷台上面2aにストッパ10を突出させた状態とする。突出位置にあるストッパ10で、走行機構3Aの内側が係止されて積載車両3の横ずれを阻止して、車両運搬車100は積載車両3を安全に運搬できる。
【0080】
積載車両が積載される位置は、車両運搬車の荷台の幅方向の中央線上に、積載車両の幅方向の中央線が位置するように積載されることが好ましい。積載車両を荷台の中央に積載し、各々のストッパと走行機構との距離の差を小さくして、積載車両の横ずれ範囲を抑制して、いずれかのストッパが走行機構を素早く係止できるからである。なお、積載車両の重心の位置も必要に応じて考慮する。
(積載車両を降車する手順)
【0081】
積載車両3を降車する手順は、積載車両3を積載する場合と逆の手順で行う。上下機構20が、突出位置にあるストッパ10を収納位置に戻し、ストッパ10の上面を荷台面2aと同一の高さまたは荷台面2aより下の位置に配置させる。車両運搬車100の荷台上面2aにおいてストッパ10が障害になることなく、安全かつ簡単に積載車両3を降車させる。なお、上下機構でストッパを収納位置に完全に下げることなく、ストッパを走行機構のガイドとして機能させて、積載車両を真っ直ぐ後方に移動させて降車させることもできる。
(実施の形態2)
【0082】
図7は実施形態2に係る車両運搬車200の概略斜視図、
図8は車両運搬車200の横ずれストッパ機構201の概略垂直断面図をそれぞれ示す。
図7及び
図8に示す実施形態2に係る車両運搬車200は、横ずれストッパ機構201を備える。横ずれストッパ機構201は、荷台2の中央部であって幅方向に移動自在に配置されてなる、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bとからなる一対のストッパ10と、一対のストッパ10を突出位置と収納位置とに移動させる上下機構20と、さらに、一対のストッパ10を荷台2の幅方向に移動する水平駆動機構30とを備えている。車両運搬車200は、上下機構20が一対のストッパ10を突出位置に移動し、水平駆動機構30が、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bを各々荷台2の中央から端部に向けて移動して、ストッパ10を積載車両3の走行機構3Aの内側に接触させて係止して、車両運搬車200の荷台2の所定の位置に積載された積載車両3の横ずれを阻止できる。水平駆動機構30は、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bで積載車両3の走行機構3Aの内側から押圧して、走行機構3Aを荷台2上に固定するすることで、積載車両3の横ずれを阻止することもできる。なお、
図7及び
図8に示す車両運搬車200における上下機構20は、ストッパ10のみならず、水平駆動機構30を含めて上下に移動させる。上下機構20がストッパ10及び水平駆動機構30を上下できることで、ストッパ10及び水平駆動機構30を荷台面2aと同一の高さまたは荷台面2aよりもやや低い位置として、積載車両3の積載または降車の障害になることがなく、安全かつ効率的に積載降車作業を行うことができる。
【0083】
実施形態1に係る車両運搬車100は、上下機構20でストッパ10を突出させ、突出したストッパ10の位置で積載車両3の移動、スライドを止め、積載車両3がそれ以上の横ずれすることを阻止する。これに対し、実施形態2に係る車両運搬車200は、上下機構20でストッパ10を突出させ、さらに水平駆動機構30が一対のストッパ10を各々荷台2の端部に向けて広がり、各々のストッパ10が走行機構3Aに近づく方向に移動させて、ストッパ10と走行機構3Aの間隔をなくし接触させることで、積載車両3を荷台2に積載されたその位置で積載車両3の移動、スライド自体を止める点に特長がある。積載車両3の横ずれのより走行機構3Aが反動をつけて勢いよくストッパ10に当たることがなく、積載車両3の振動もある程度抑制でき、走行機構3Aがストッパ10を乗り越えることをより確実に抑止できる。車両運搬車200は、ストッパ10が走行機構3Aに接触して横ずれを阻止するからである。水平駆動機構30は、ストッパ10が走行機構3Aの内側から押圧して積載車両3を固定することで、その効果をより大きくできる。
(水平駆動機構30)
【0084】
水平駆動機構30は、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bを各々荷台2の中央から端部に向けて、荷台2の幅方向に移動させる機構である。
図7に示す車両運搬車200は、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bの一対のストッパ10を各々荷台2の中央から端部に向けて移動させる水平駆動機構30を、前方と後方に2基ずつ、合計4基設ける。ただし、図示しないが、ひとつのストッパに対しひとつの水平駆動機構を設け、また、ひとつのストッパに対し3以上の水平駆動機構を設けることもできる。
【0085】
図8Aは、収納位置にあるストッパ10及び水平駆動機構30を示す。
図8Aに示すように、ストッパ10及び水平駆動機構30の上面が荷台面2aと同一の高さまたは荷台面2aよりもやや低い収納位置にある状態で、積載車両3が車両運搬車200の荷台2に積載される。そして、
図8Bに示すように、上下機構20がストッパ10及び水平駆動機構30を荷台2の下の収納位置から上の突出位置まで移動する(上向きの矢印)。次に、水平駆動機構30が、各々のストッパ10を荷台2の幅方向に移動させ(左右方向の矢印)、積載車両3の左右両側の走行機構3Aを内側から係止して積載車両3の横ずれを阻止する。水平駆動機構30は、第1のストッパ10aを車両運搬車200の荷台2の中心線側から外側(右側)に向けて移動させ(右向きの矢印)、第1のストッパ10aで積載車両3の右側走行機構3aを内側から係止すると共に、第2のストッパ10bを車両運搬車200の荷台2の中心線側から外側(左側)に向けて移動させ(左向きの矢印)、第2のストッパ10bで積載車両3の左側走行機構3bを内側から係止する。
【0086】
2以上の水平駆動機構を設ける場合は、1以上の水平駆動機構が、他と連動してまたは独立してストッパを左右に移動することができる。水平駆動機構30によって第1のストッパ10a及び第2のストッパ10bが、左右連動して、または各々独立して積載車両3の走行機構3Aを内側から外側に係止、押圧できる。左右両側の一対のストッパ10が連動することで、左右両側の各々の走行機構3Aに線対称的に内側から接触して外側に広げて突っ張るよう係止、押圧できる。例えば、図示しないが、左右の水平駆動機構が独立してストッパを左右に移動できることで、積載車両の走行機構の位置、移動距離、移動方向、状態などに合わせて、押圧する位置や押圧力を調整でき、また水平駆動機構の押圧力の均等化を図ることもできる。例えば、第1のストッパ及び第2のストッパが異なる位置、異なるタイミングで左右の走行機構に接触させて係止、押圧できる。さらに、各々のストッパが異なる押圧力で押圧したり、押圧位置により異なる押圧力で押圧することもできる。また図示しないが、左右の各々のストッパが、2以上に分割され、複数設けられる場合には、各々連動して、または独立して、または一部が独立して積載車両の走行機構を内側から外側に係止、押圧できる。積載車両の走行機構の個数、位置に合わせてストッパ及び水平駆動機構をの個数を定めることができる。例えば、前後左右の4の走行機構に合わせて、前後左右の4のストッパを設け、水平駆動機構を各々のストッパごとに前後左右に4基設けることができる。例えば、積載車両の左右の走行機構の位置や幅が前後の走行機構で異なる場合などに対応して、前方走行機構用のストッパと後方走行機構のストッパ、それぞれに合わせた水平方向を設けて、積載車両の走行機構を内側から外側に係止、押圧できる。
【0087】
水平駆動機構30は、ストッパ10を積載車両3の走行機構3Aの内側から継続して係止、押圧して固定状態にできる。図示しないが、水平駆動機構は、積載車両の走行機構を係止、押圧する位置でストッパを停止ロックできるホールド機能を設けることができる。ホールド機能により、例えば運搬中の振動などでストッパによる係止、押圧が弛まないようにストッパを所定に位置に保持できる。
【0088】
図8A及び
図8Bの水平駆動機構30は、上下機構20の上部に、上下機構20と垂直に連結されている。水平駆動機構30が上下機構20に連結されることで、上下機構20によりストッパ10と共に水平駆動機構30が垂直方向に上下に移動でき、また車両運搬車200の荷台面2aの上に突出したストッパ10を水平駆動機構30で水平方向に左右に移動できる。
図7及び
図8の上下機構20のシリンダ21のストローク方向が上下方向、水平駆動機構30のシリンダ21のストローク方向が荷台2の短手方向であり、上下機構20及び水平駆動機構30にシリンダ21の各々のストローク方向が垂直に交わる。また図の水平駆動機構30はストッパ10に対して垂直に連結されて、水平駆動機構30の押圧力を効率的にストッパ10に伝えることができる。
【0089】
図7及び
図8の上下機構20及び水平駆動機構30にシリンダ21を用いている。シリンダ21はその役割に応じた出力荷重が要求される。上下機構20のシリンダ21の出力荷重は、ロッドの先端に固定されるストッパ10と水平駆動機構30を収納位置と突出位置との上下に移動できる出力とする。水平駆動機構30のシリンダ21の出力荷重は、ロッドの先端に固定されるストッパ10を荷台2の中央から外側に移動して走行機構3Aを係止できる、または走行機構3Aを押圧できる出力とし、ストッパのみならず、積載車両の質量、大きさ、押圧力なども考慮する必要がある。なお、水平駆動機構は、油圧シリンダのほか、例えば、ギアを介した油圧モータ、電動モータなどストッパを垂直方向に上下に移動できるもの全て機構を用いることができる。
【0090】
上下機構20と水平駆動機構30の連結の態様は、図に示すものに限定されるものではない。以下は図示しないが、上下機構を車両運搬車100に記載した機構などにできる。例えば、上下機構により荷台面の一部が観音扉(開き戸)で上方に開くことで、ストッパが傾動されて立ち上がると共に水平駆動機構が上昇することもできる。第一段階ではストッパ10を上昇させ第二段階ではストッパ10を左右方向に移動させるように、段階的に上下機構20と水平駆動機構30を兼用する機構を用いることもできる。なお、図示しないが、上下機構と水平駆動機構が連結しない構造にすることもできる。
(実施の形態3)
【0091】
図9は、実施形態3に係る車両運搬車300の使用例を示している。実施形態3に係る車両運搬車300の横ずれストッパ機構301は、水平駆動機構30が一対のストッパ10を荷台2の幅方向に移動して走行機構3Aを押圧して、積載車両3を荷台2の所定の位置に移動させて、積載車両3の走行機構3Aの内側を係止して、積載車両3の横ずれを阻止する。水平駆動機構30が、第1のストッパ10a及び第2のストッパ10bの各々のストッパ10を荷台2の中央から端部に向けて移動して、積載車両3の走行機構3Aを内側から押圧して、積載車両3を車両運搬車300の荷台2の所定の位置に移動させた上で、各々のストッパ10が走行機構3Aを係止して、積載車両3の横ずれを阻止する。実施形態2に係る車両運搬車200が、荷台2に積載された位置で、各々のストッパ10が走行機構3Aを係止して積載車両3の横ずれを阻止するのに対し、実施形態3に係る車両運搬車300は、一旦荷台2に積載された積載車両3を所定の位置、姿勢に移動修正した上で、各々のストッパ10が走行機構3Aを係止して積載車両3の横ずれを阻止する。なお、図示しないが、積載車両が所定の位置、姿勢に積載された場合など積載車両を移動する必要がない場合は、実施形態3に係る車両運搬車においても積載された位置で積載車両の横ずれを阻止する。
【0092】
図9A及び
図9Bの使用例に示すように、車両運搬車300の水平駆動機構30は、ストッパ10が積載車両3の走行機構3Aを内側から外側に押圧することで、積載車両3を車両運搬車300の荷台2の所定の位置に移動させ、また姿勢を修正して固定できる。車両運搬車300は、積載車両3が荷台2の所定の位置及び姿勢以外に積載された場合に、積載車両3を一旦降車して積載をやり直す必要なく、積載車両3を所定の位置及び姿勢に移動修正して固定でき、容易に短時間で効率よく、かつ安全に積載できる。
【0093】
図9A及び
図9Bは、右寄りに積載された積載車両3を荷台2上において左方向の所定の位置に移動した上で、各々のストッパ10が走行機構3Aを係止して積載車両3の横ずれを阻止する例を示す。図おいて、点線は積載車両3の位置を示す。
図9Aは積載車両3が、車両運搬車300の荷台2上で右寄りの位置に積載された場合を、
図9Bは積載車両3が、車両運搬車300の荷台2上で所定の位置に移動された状態を、それぞれ示す。
図9Aにおいて、積載車両3の左側走行機構3bを内側から外側に、第2のストッパ10bで矢印で示す左側に押圧することで、
図9Aの点線の位置に積載された積載車両3を、
図9Bの点線で示す所定の位置に移動できる。
図9Bの所定の位置に移動された積載車両3の各々の走行機構3Aを、第1のストッパ10aと第2のストッパ10bの左右一対のストッパ10が内側に接触されて係止して、積載車両3の横ずれを阻止する。車両運搬車200と同様に、一対のストッパ10が各々の走行機構3Aを内側から押圧でき、またホールド機能でロックして、積載車両3の横ずれを阻止できる。この他、図示しないが、例えば、荷台に対して斜めに積載された積載車両を所定の位置、姿勢に移動して横ずれを阻止できる。
【0094】
水平駆動機構30のシリンダ21の出力荷重は、シリンダ21でストッパ10が積載車両3の走行機構3Aを内側から押圧して所定の位置に移動できるものとし、積載車両、押圧力、荷台などに応じて適切に定める。図示しないが、水平駆動機構は、第1のストッパと第2のストッパを押圧する一体的にユニット機構として構成できる。この構成は、左右のストッパの高さ調整が不要で、左右のストッパが同じ高さで積載車両の走行機構を内側から外側に押圧でき、またユニットとして車両運搬車への取り付け及び位置決めが容易にできる。また、ユニット機構の外周カバーに所定の強度を持たせ、シャーシに連結固定することで、荷台の補強材とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、積載車両の横ずれを防止しながら、荷台には横幅の広い積載車両を搭載でき、しかも積載車両を簡単かつ容易に荷台に積み降ろしして安全に運搬できる車両運搬車として有効に利用できる。
【符号の説明】
【0096】
100、200、300…車両運搬車
1、201、301…横ずれストッパ機構
2…荷台
2a…荷台上面
3…積載車両
3A…走行機構
3a…右側走行機構
3b…左側走行機構
5…シャーシ
8…ストッパ開口
8a…ストッパ隙間
8b…ストッパ保持部
9…ガイド筒
10…ストッパ
10a…第1のストッパ
10b…第2のストッパ
10c…連結面
10d…下端
11…接触部
13…回動軸
15…切欠部
20…上下機構
21…シリンダ
21a…第1の端部
21b…第2の端部
25…傾動アーム
25a…第1の端部
25b…第2の端部
30…水平駆動機構
s1、s2、s3…接触部の高さ