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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046723
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/08 20060101AFI20230329BHJP
   B60N 2/14 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B60N2/08
B60N2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155469
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】山根 政明
(72)【発明者】
【氏名】北島 啓一郎
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA02
3B087BA09
3B087BB02
3B087BC05
3B087BC08
3B087BC15
3B087DE08
(57)【要約】
【課題】ロアレールの予め定められた位置にシート本体を停止させた状態で、シート本体の位置検出をより確実に行えるようにすることである。
【解決手段】回転機構30によるシート本体11の回転が、ロアレール21の予め定められた位置で許容される構成とされており、ロアレール21には、シート本体が予め定められた位置に到達することでアッパレール22を止めるストッパ部材50が位置決めされて取付けられていると共に、位置検出機構40は、ストッパ部材50を感知することでシート本体の位置を検出するように構成されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロアレールの延びる方向にスライド移動可能に組付けられているアッパレールと、前記アッパレール上でシート本体を回転させる回転機構と、前記シート本体の位置を検出する位置検出機構とを備えた車両用シート装置において、
前記回転機構による前記シート本体の回転が、前記ロアレールの予め定められた位置で許容される構成とされており、
前記ロアレールには、前記シート本体が予め定められた位置に到達することで前記アッパレールを止めるストッパ部材が位置決めされて取付けられていると共に、前記位置検出機構は、前記ストッパ部材を感知することで前記シート本体の位置を検出するように構成されている車両用シート装置。
【請求項2】
前記ストッパ部材には、前記ロアレールに設けられた孔部に嵌合される位置決め用の嵌合部が設けられている請求項1に記載の車両用シート装置。
【請求項3】
前記ロアレールには、その延びる方向において多数のスライドロック孔が所定間隔を隔てて形成されていると共に、前記アッパレールには、前記多数のスライドロック孔のいずれかに嵌合するロック機構が設けられており、
前記嵌合部は、前記多数のスライドロック孔のいずれかに嵌合する請求項2に記載の車両用シート装置。
【請求項4】
前記ロアレールの延びる方向と直交する方向を幅方向とした場合に、前記ストッパ部材は、前記ロアレール内で幅方向に拡げられる一対の拡開片を有し、前記一対の拡開片の少なくとも一つに前記嵌合部が設けられている請求項2又は3に記載の車両用シート装置。
【請求項5】
シート本体側に設けられた前記位置検出機構は、前記ストッパ部材に接することにより、前記シート本体の位置を検出するように構成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
【請求項6】
前記ストッパ部材は、前記ロアレールに対して着脱自在に取付けられている請求項1~5のいずれか一項に記載の車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド機構と回転機構とを備えた車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。この車両用シート装置は、シート本体を車両前後方向に移動させるスライド装置(スライド機構)と、スライド装置上でシート本体を回転させる回転装置(回転機構)とを備えている。ここでスライド装置は、車室フロアに固定されたロアレールと、ロアレールの延びる車両前後方向にスライド移動可能に組付けられているアッパレールとを有し、アッパレール上にシート本体及び回転装置が配設されている。そして車両用シート装置によると、アッパレール上のシート本体を、例えば車両前向きの着座位置とドア開口部側を向く乗降位置間で回転させられるようになる。
【0003】
ところで上記した車両用シート装置では、シート本体の回転を、ロアレールの予め定められた位置で行いたいとの要請がある。例えば車両では、ドア開口部の車両後側にセンターピラーが立設されているため、このセンターピラーと干渉しない位置(予め定められた位置)でシート本体を回転させる。この場合、先ず、センターピラーと干渉しない位置までシート本体を車両前側にスライド移動させたのち、当該位置で停止したシート本体を、回転装置にて着座位置から乗降位置まで回転させる。そして上記した構成では、停止したシート本体の位置を検出し、ロアレールに対してアッパレールをスライドロックした上で、シート本体を回転させることが望ましい。例えばアッパレールを、ロアレールに取付けられたストッパ部材に当てることで停止させる。つづいてシート本体側に設けたリミットスイッチと、ロアレールに設けたスイッチドッグとの接触から、ロアレールに対するシート本体の位置を検出することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-312363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで上記した構成では、ロアレールに対するアッパレールの停止と、シート本体の位置検出とを別の部材で行っている。このような構成では、各部材の配設位置がバラついた場合、このバラつきを踏まえてシート本体の位置検出を行う必要があり、当該バラつきが大きいほど位置検出の調整が難しくなる。本発明は上述の点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、ロアレールの予め定められた位置にシート本体を停止させた状態で、シート本体の位置検出をより確実に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、第1発明の車両用シート装置は、ロアレールの延びる方向にスライド移動可能に組付けられているアッパレールと、アッパレール上でシート本体を回転させる回転機構と、シート本体の位置を検出する位置検出機構とを備えている。そして車両用シート装置では、回転機構によるシート本体の回転が、ロアレールの予め定められた位置で許容される構成とされている。この種の構成においては、ロアレールの予め定められた位置にシート本体を停止させた状態で、シート本体の位置検出をより確実に行えることが望ましい。そこで本発明のロアレールには、シート本体が予め定められた位置に到達することでアッパレールを止めるストッパ部材が位置決めされて取付けられていると共に、位置検出機構は、ストッパ部材を感知することでシート本体の位置を検出するように構成されている。本発明では、ロアレールに取付けられたストッパ部材によってアッパレールを停止させて、シート本体を予め定められた位置に配置させる。そして位置検出機構が、ロアレールに位置決めされたストッパ部材を感知することで、シート本体の位置をより確実に検出することができるようになる。
【0007】
第2発明の車両用シート装置は、第1発明の車両用シート装置において、ストッパ部材には、ロアレールに設けられた孔部に嵌合される位置決め用の嵌合部が設けられている。本発明では、孔部と嵌合部の嵌合によって、ロアレールに対してストッパ部材をより確実に位置決めして取付けられるようになる。
【0008】
第3発明の車両用シート装置は、第2発明の車両用シート装置において、ロアレールには、その延びる方向において多数のスライドロック孔が所定間隔を隔てて形成されていると共に、アッパレールには、多数のスライドロック孔のいずれかに嵌合するロック機構が設けられており、嵌合部は、多数のスライドロック孔のいずれかに嵌合する。本発明では、ロアレールに対してアッパレールをロックするためにスライドロック孔が精度良く形成されている。そこでスライドロック孔を嵌合部との嵌合に利用することで、ロアレールに対してストッパ部材を更に確実に位置決めして取付けられるようになる。
【0009】
第4発明の車両用シート装置は、第2発明又は第3発明の車両用シート装置において、ロアレールの延びる方向と直交する方向を幅方向とした場合に、ストッパ部材は、ロアレール内で幅方向に拡げられる一対の拡開片を有し、一対の拡開片の少なくとも一つに嵌合部が設けられている。本発明では、ロアレール内で幅方向にストッパ部材を拡げることにより、嵌合部を孔部に嵌合させられるようになる。
【0010】
第5発明の車両用シート装置は、第1発明~第4発明のいずれかの車両用シート装置において、シート本体側に設けられた位置検出機構は、ストッパ部材に接することにより、シート本体の位置を検出するように構成されている。本発明では、シート本体側の位置検出機構が、位置決めされたストッパ部材に接するように構成されているため、シート本体の位置検出をより精度良く行うことができる。
【0011】
第6発明の車両用シート装置は、第1発明~第5発明のいずれかの車両用シート装置において、ストッパ部材は、ロアレールに対して着脱自在に取付けられている。本発明では、必要に応じてロアレールからストッパ部材を取外すことができるため、ロアレールに対するストッパ部材の取付け位置の調整をより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る第1発明によれば、ロアレールの予め定められた位置にシート本体を停止させた状態で、シート本体の位置検出をより確実に行えるようになる。また第2発明によれば、ロアレールの予め定められた位置にシート本体をより確実に停止させることができる。また第3発明によれば、ロアレールの予め定められた位置にシート本体をより確実に停止させた状態で、シート本体の位置検出を更に確実に行えるようになる。また第4発明によれば、ロアレールの予め定められた位置にシート本体を更に確実に停止させることができる。また第5発明によれば、シート本体の位置検出をより精度良く行うことができる。そして第6発明によれば、シート本体の位置検出を更に精度良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】着座位置のシート本体を示す車両用シート装置の模式斜視図である。
図2】乗降位置のシート本体を示す車両用シート装置の模式斜視図である。
図3】車両用シート装置の下部側の模式側面図である。
図4】ロアレールとロック機構の模式断面図である。
図5】ストッパ部材の模式斜視図である。
図6図5に示すストッパ部材の分解斜視図である。
図7】閉じ状態のストッパ部材とロアレールの模式斜視図である。
図8】ストッパ部材を取付けたロアレールの模式断面図である。
図9】位置検出機構との位置関係を示すロアレールの模式断面図である。
図10】回転機構の模式断面図である。
図11】ストッパ部材の動きを示す車両用シート装置の模式拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図1図11を参照して説明する。各図には、車両の前後方向と左右方向と上下方向を示す矢線を適宜図示する。図1及び図2では、便宜上、車両用シート装置を実線で図示し、その他の車両の構成を二点破線で図示する。また図3及び図11では、便宜上、シートレッグを二点破線で図示又は省略すると共に、その内側の部材を実線で図示する。
【0015】
図1及び図2に示す車両用シート装置10は、車両2の左側に設置されるシート装置である。この車両用シート装置10は、図3を参照して、シート本体11を車両前後方向にスライド移動させるスライド機構20と、そのスライド機構20上でシート本体11を回転させる回転機構30と、シート本体11の位置を検出する位置検出機構40とを備えている。ここでスライド機構20は、車室フロアF側に埋設状に固定されて車両前後方向に延びる左右一対のロアレール21と、左右一対のロアレール21に沿って前後スライドする左右一対のアッパレール22とを備えている。そしてアッパレール22は、ロック機構23の働きにより、ロアレール21に対して多段階でスライドロックできるように構成されている。
【0016】
そして車両用シート装置10では、シート本体11が、後述する回転機構30の働きにより、図1に示す車両前向きの着座位置と、図2に示すドア開口部4側を向く乗降位置の間で回転できるように構成されている。ここで車両2では、車両用シート装置10の左側に、スライドドア(図示省略)で開閉可能に構成されたドア開口部4が設けられ、ドア開口部4の車両後側にセンターピラー5が立設されている。そこで車両用シート装置10では、先ず、センターピラー5と干渉しない位置(予め定められた位置)までシート本体11を車両前側にスライド移動させ、当該位置で停止したシート本体11を回転機構30にて着座位置から乗降位置まで回転させる。そして上記した構成では、図3に示す停止したシート本体11の位置を正確に検出し、ロアレール21に対してアッパレール22をスライドロックした上で、シート本体11を回転させることが望ましい。そこで本実施例では、後述するストッパ部材50を利用して、ロアレール21の予め定められた位置にシート本体11を停止させた状態で、シート本体11の位置検出をより確実に行えるようにした。以下、車両用シート装置10の詳細を説明する。
【0017】
[スライド機構(ロアレール、アッパレール)]
図3に示すスライド機構20は、上記したように、ロアレール21と、アッパレール22と、ロック機構23とを有している。ロアレール21は、図3及び図4を参照して、車両前後方向に延びる中空角形に形成されており、その上壁部211には、アッパレール22が組付けられるスライド溝部212が車両前後方向に延びるように形成されている。またロアレール21では、そのスライド溝部212の左右の内縁部分が下側に略直角に曲げられており、この曲げられた内縁部分で形成された左内壁部213と右内壁部214が、車両前後方向に延びる縦壁状に配置されている。ここでロアレール21の延びる方向(車両前後方向)に直交する方向(左右方向)を幅方向とした場合に、ロアレール21の左内壁部213と右内壁部214とは、後述するアッパレール22の下部を差込めるように、幅方向に適宜の間隔をあけて配置されている。そして左内壁部213には、ロアレール21の延びる方向に多数のスライドロック孔21Hが所定間隔を隔てて形成されている(図3では、便宜上、一部のスライドロック孔に符号21Hを付し、その他のスライドロック孔の符号を省略する)。また右内壁部214にも、左内壁部213と同様に、ロアレール21の延びる方向に多数のスライドロック孔21Hが所定間隔を隔てて形成されている。
【0018】
また図3に示すアッパレール22は、側面視で前後に長い板状に形成されており、その上側に回転機構30とシート本体11とが取付けられている。そしてアッパレール22は、その下部側がロアレール21のスライド溝部212に差込まれて組付けられることで、ロアレール21の延びる車両前後方向にスライド移動可能に組付けられている。このアッパレール22には、ロアレール21に対して転動可能なローラ220と、ロアレール21に対する位置(車両前後方向の位置)をロックするためのロック機構23が設けられている。ロック機構23は、図3及び図4を参照して、アッパレール22側からスライドロック孔21Hに延びるように形成されたロックプレート231と、このロックプレート231をスライドロック孔21Hに差込む方向に動かす作動機構(図示省略)とを有している。そしてロック機構23がロック動作して、図3に示すロアレール21に設けられた多数のスライドロック孔21Hのいずれかにロックプレート231が嵌合する。これにより、ロアレール21に対してアッパレール22がスライドロックされて、アッパレール22上のシート本体11の前後のスライド移動が禁止されるようになる。
【0019】
[ストッパ部材]
図3に示すストッパ部材50は、ロアレール21内に取付けられる部材であり、アッパレール22に当たることでそのスライド移動を止められるようになっている。このストッパ部材50は、図5を参照して、その本体部分が左右一対の拡開片51,52によって構成されている。一対の拡開片51,52は、車両前後方向に長い板状に形成されており、その下部側が、車両前後方向に延びるヒンジピン53で回動可能に連結されている。即ち、左側の拡開片51には、図6に示すように、その下部前側にヒンジピン53が通されて回動可能に支持される支持板部50aが右側に張り出すように設けられ、下部後側には、アッパレールを受ける受け板部50dが設けられている。また右側の拡開片52にも、その下部前側と下部後側とにヒンジピン53が通されて回動可能に支持される支持板部50b、50cが左側に張り出すように設けられている。
【0020】
そして図5図7を参照して、ヒンジピン53は、スプリング状の付勢部材54が巻装された状態で各支持板部50a~50cに通されると共に、ヒンジピン53の頭部が左側の拡開片51の受け板部50dで覆われる。これにより、一対の拡開片51,52の上部側は、各支持板部50a~50cに通されたヒンジピン53を中心として、図5に示すように左右方向(ロアレールの幅方向)に広げられるようになる。さらに一対の拡開片51,52の上部側は、付勢部材54によって広げられる方向に付勢されている。また付勢部材54の付勢力に抗して、図7に示すように各拡開片51,52を向き合せた閉じ状態とすることにより、一対の拡開片51,52を、ロアレール21のスライド溝部212に差し込めるようになる。
【0021】
[嵌合部、接触部]
また図5及び図8を参照して、ストッパ部材50には、ロアレール21のスライドロック孔21Hに嵌合可能な位置決め用の爪形状の嵌合部61,62と、後述するドッグブラケットに接する接触部511とが形成されている(図5では、便宜上、左側の各嵌合部に共通の符号61を付し、右側の各嵌合部に共通の符号62を付す)。即ち、左側の拡開片51の上縁には複数の左側の嵌合部61が形成されている。この左側の各嵌合部61は、左側の拡開片51から上側に延びるように形成されていると共に、その上部が外側(各図の左側)且つ下側に向けて曲げられている。さらに左側の拡開片51の上縁には、その後部位置から上側に延びる接触部511が形成されており、この接触部511の後端が最も後側に配置されている。また右側の拡開片52の上縁にも複数の右側の嵌合部62が形成されている。この右側の嵌合部62は、右側の拡開片52の上縁から上側に延びるように形成されていると共に、その上部が外側(各図の右側)且つ下側に向けて曲げられている。そして複数の嵌合部61(62)は、図3に示すロアレール21のスライドロック孔21Hに倣って、車両前後方向に所定間隔を隔てて形成されている。
【0022】
そして図7及び図8を参照して、上記したシート本体11の停止位置を考慮しつつ、ロアレール21に対してストッパ部材50を取付けておく。このとき閉じ状態の一対の拡開片51,52をロアレール21のスライド溝部212に差込んで、ロアレール21の左内壁部213と右内壁部214間に配置する。つづいてロアレール21内の一対の拡開片51,52が、付勢部材54の働きで左右方向(ロアレールの幅方向)に広げられることにより、各拡開片51,52に設けられた各嵌合部61,62がロアレール21の左右のスライドロック孔21Hに嵌合する。ここでスライドロック孔21Hは、アッパレールのスライドロックに使用されるため、ロアレール21に位置精度良く形成されている。そこでスライドロック孔21Hを嵌合部61,62との嵌合に利用することで、この嵌合部61,62の設けられたストッパ部材50を、ロアレール21に対して精度良く位置決めして取付けられるようになる。更にストッパ部材50は、一対の拡開片51,52を閉じ状態とすることで、ロアレール21のスライド溝部212から取外すことができる。こうしてストッパ部材50をロアレール21に対して着脱自在に取付けておくことで、ロアレール21に対するストッパ部材50の取付け位置の調整をより容易に行うことができる。
【0023】
[位置検出機構]
図3に示す位置検出機構40は、ロアレール21に対するシート本体11の位置を検出する機構であり、ストッパ部材50を感知できるように構成されている。この位置検出機構40は、シート本体11側に設けられた検出部41及びドッグブラケット42を有している。ここで検出部41は、リミットスイッチなどの接触式センサであり、後述するドッグブラケット42を感知することで検出信号を発するように構成されている。そして、検出部41の検出信号が図示しない制御部に入力されることで、ロアレール21に対するアッパレール22のスライドロックがなされると共に、シート本体11の回転が許容されるようになる。この検出部41は、シート本体11の適宜の位置に取付けることができ、本実施例では、シート本体11の座部の下側に設けられたシートレッグ111に取付けられている。
【0024】
また図3に示す検出部41の前側且つ下側の位置には、ストッパ部材50と直に接するドッグブラケット42が配設されている。このドッグブラケット42は、側面視で略L字形に形成されており、その前部側が上下方向に延びていると共に後部側が車両前後方向に延びている。そしてドッグブラケット42の前部と後部の間の部分が、回転軸Aを介してシートレッグ111に取付けられている。ここで図3及び図9を参照して、ドッグブラケット42の前部は、その下端部421が略直角に内側(図9の右側)に曲げられており、ロアレール21のスライド溝部212に向けて張り出している。これにより、ドッグブラケット42の曲げられた下端部421は、図11に示すようにストッパ部材50の接触部511に直に接するようになっている。またドッグブラケット42の後部は、自由状態において緩やかに下側に傾いた状態から、回転軸Aを中心に上回動できるように構成されている(図11の二点破線で示す状態と実線で示す状態を参照)。そしてドッグブラケット42の後部の上回動軌跡内には、上述した検出部41のヘッドが配置されている。
【0025】
[回転機構]
図1に示す回転機構30は、スライド機構20上でシート本体11を回転させる機構である。この回転機構30は、図10に示すように、アッパレール22上に配設されたベース部材31に対して、シート本体11を支持する支持部材32を回転移動させられるように構成されている。そして回転機構30は、ベース部材31上に固定された内輪33と、内輪33(外周側)に対して回転可能に支持された外輪34とを備え、この外輪34の上に支持部材32が固定されている。またベース部材31又は支持部材32には、内輪33に対して外輪34を回転させる駆動部(図示省略)が設けられている。これにより、支持部材32に支持されたシート本体11を、ベース部材31に対して内輪33及び外輪34の軸心回りに回転(上方視で略90°回転)させて、着座位置から乗降位置に回転移動させられるようになっている。更に回転機構30では、ベース部材31に対して内輪33の軸心が左側(ドア開口部側)に傾くように取付けられており、内輪33と外輪34とが回転するに従ってシート本体11が次第に前傾(チルト)するようになっている。これにより、図2に示すようにシート本体11を乗降位置に向けて回転移動させることで、シート本体11の前側が低くなるように傾斜させることができる。なお回転機構30によるシート本体11の回転は、図示しない回転ロック機構にてロックできるようになっている。
【0026】
[ストッパ部材の働き]
車両用シート装置10では、図1図3を参照して、シート本体11の回転をロアレール21の予め定められた位置で許容する。即ち、車両用シート装置10では、センターピラー5と干渉しない位置(予め定められた位置)までシート本体11を車両前側にスライド移動させたのち、回転機構30によってシート本体11を着座位置から乗降位置まで回転させる。そして上記した構成では、停止したシート本体11の位置を検出し、ロアレール21に対してアッパレール22をスライドロックした上で、シート本体11を回転させることが望ましい。そこで図3に示すロアレール21には、シート本体11が予め定められた位置に到達することでアッパレール22を止めるストッパ部材50が位置決めされて取付けられていると共に、位置検出機構40は、ストッパ部材50を感知することでシート本体11の位置を検出するように構成されている。
【0027】
上記構成によると、図1図3を参照して、シート本体11をセンターピラー5と干渉しない位置までスライド移動させることで、ロアレール21に取付けられたストッパ部材50にてアッパレール22が停止させられる。このストッパ部材50は、スライドロック孔21Hと嵌合部61,62の嵌合により、ロアレール21に対して位置決めして取付けられている。このため、ストッパ部材50の働きにより、シート本体11をセンターピラー5と干渉しない位置(予め定められた位置)により確実に停止させられるようになる。
【0028】
つづいて図3に示す位置検出機構40により、停止したシート本体11の位置を検出する。この位置検出機構40は、シート本体11側に設けられていると共に、ストッパ部材50に接する(感知する)ことでシート本体11の位置を検出するように構成されている。即ち、図11を参照して、アッパレール22がストッパ部材50に当たる際に、ストッパ部材50に設けられた接触部511が、ドッグブラケット42の下端部421に接するようになる。これにより、ドッグブラケット42の前部が後側に押されて、ドッグブラケット42の後部が回転軸Aを中心に上回動し、この上回動したドッグブラケット42の後部によって検出部41のヘッドが押される。そして検出部41の検出信号が図示しない制御部に入力されることで、図3に示すように、ロアレール21に対してアッパレール22がスライドロックされると共に、シート本体11の回転が許容される。こうして車両用シート装置10によると、ロアレール21に位置決めされているストッパ部材50をシート本体11の位置検出に利用することで、シート本体11の位置をより確実に検出することができる。そして図1及び図2を参照して、シート本体11は、センターピラー5を避けた状態で着座位置から乗降位置まで回転移動すると共に、乗降位置においてシート本体11の前側が低くなるように傾斜したチルト状態となる。
【0029】
以上説明した通り、本実施例では、ロアレール21に取付けられたストッパ部材50によってアッパレール22を停止させて、シート本体11を予め定められた位置に配置させる。そして位置検出機構40が、ロアレール21に位置決めされたストッパ部材50を感知することで、シート本体11の位置をより確実に検出することができるようになる。このため本実施例によれば、ロアレール21に対してアッパレール22を停止させた状態で、シート本体11の位置検出をより確実に行えるようになる。そして上記構成では、シート本体11を所望の位置に停止させられるため、前後長の大きいスライド機構(例えば標準車用のロングスライドレール)をそのまま流用することができる。
【0030】
さらに本実施例では、ロアレール21の孔部(スライドロック孔21H)と嵌合部61,62の嵌合によって、ロアレール21に対してストッパ部材50をより確実に位置決めして取付けられるようになる。特に車両用シート装置10では、ロアレール21に対してアッパレール22をロックするためにスライドロック孔21Hが精度良く形成されている。そこでスライドロック孔21Hを嵌合部61,62との嵌合に利用することで、ロアレール21に対してストッパ部材50を更に確実に位置決めして取付けられるようになる。また本実施例では、ロアレール21内で幅方向にストッパ部材50を拡げることにより、嵌合部61,62をロアレール21の孔部(スライドロック孔21H)に嵌合させられるようになる。また本実施例では、シート本体11側の位置検出機構40が、位置決めされたストッパ部材50に接するように構成されているため、シート本体11の位置検出をより精度良く行うことができる。そして本実施例では、必要に応じてロアレール21からストッパ部材50を取外すことができるため、ロアレール21に対するストッパ部材50の取付け位置の調整をより容易に行うことができる。
【0031】
本実施形態の車両用シート装置は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。本実施形態では、ストッパ部材の構成を例示したが、ストッパ部材の構成を限定する趣旨ではない。例えばストッパ部材は、ロアレールの適宜の位置に位置決めして取付けることができ、ロアレールに予め形成された孔部(スライドロック孔や各種の基準孔)のほか、新たに形成された孔部に位置決めして取付けることができる。なお嵌合部は、爪形状のほか、孔部に嵌合できる各種の形状を取り得る。またストッパ部材は、ヒンジピンのほか、ロアレールの幅方向に延びるレールに一対の拡開片をスライド自在に組付けて幅方向に広げる構成とすることができる。またストッパ部材では、一対の拡開片の少なくとも一方に嵌合部を形成することができる。そしてストッパ部材は、ロアレールに対して着脱自在に取付けてもよく、溶接等の手法を用いて着脱不能に取付けてもよい。なおストッパ部材を着脱自在に取付ける場合には、孔部と嵌合部とからなる嵌合構造のほか、ロアレールに対する係合構造や係止構造などの各種の構造を採用できる。
【0032】
また本実施形態では、スライド機構と回転機構と位置検出機構の構成を例示したが、これら各機構の構成を限定する趣旨ではない。例えばロアレールとアッパレールとを備えたスライド機構は、車両前後方向や車幅方向(左右方向)などの適宜の向きに延設することができる。またシート本体が停止する予め定められた位置は、車両用シート装置の構成や車両の構成部材(各種のピラーや他の車両用シート装置等)の配置位置などを考慮して適宜設定することができる。また回転機構として、内輪及び外輪を用いた構成のほか、リンクを用いた構成を採用することもできる。また車両用シート装置では、ベース部材に対して支持部材をリンクにてチルトさせる構成を採用でき、またシート本体をチルトさせずに回転させる構成を採用することもできる。そして位置検出機構の構成も適宜変更可能であり、スイッチドッグを回転させる場合のほか、スイッチドッグを前後スライドさせて検知部のヘッドを押す構成としてもよい。また検出部(接触式センサ)を、ストッパ部材に直に接するようにシート本体側に取付けておいてもよく、ストッパ部材に取付けられた検出部(又はスイッチドッグ)にシート本体側のスイッチドッグ(又は検出部)が接するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0033】
2 車両
4 ドア開口部
5 センターピラー
10 車両用シート装置
11 シート本体
111 シートレッグ
20 スライド機構
21 ロアレール
21H スライドロック孔
211 (ロアレールの)上壁部
212 (ロアレールの)スライド溝部
213 (ロアレールの)左内壁部
214 (ロアレールの)右内壁部
22 アッパレール
220 (アッパレールの)ローラ
23 ロック機構
231 ロックプレート
30 回転機構
31 ベース部材
32 支持部材
33 内輪
34 外輪
40 位置検出機構
41 検出部
42 ドッグブラケット
421 (ドッグブラケットの)下端部
50 ストッパ部材
50a~50c 支持板部
50d 受け板部
51 左側の拡開片
511 接触部
52 右側の拡開片
53 ヒンジピン
54 付勢部材
61 左側の嵌合部
62 右側の嵌合部
A 回転軸
F 車室フロア
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