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特開2023-46761ロータ、電動モータ、及びロータの組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046761
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ロータ、電動モータ、及びロータの組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/278 20220101AFI20230329BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H02K1/278
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155541
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】大堀 竜
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615SS10
5H615SS15
5H615SS19
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA13
5H622DD01
5H622DD02
5H622DD04
5H622PP03
5H622PP12
5H622PP18
(57)【要約】
【課題】製造コストを低減できるとともに小型化できるロータ、電動モータ、及びロータの組み立て方法を提供する。
【解決手段】マグネットカバー71は、マグネット33の外側面を覆う筒状部71aと、マグネット33の第2端面33bを覆うマグネット端部被覆部71cと、ロータコア32の第2端面32bに当接されるコア当接部71dと、マグネットホルダ70の上からかしめ固定されるかしめ部71eと、を有する。コア当接部71dのロータコア32に当接する箇所とマグネット端部被覆部71cとの間の距離L3は、ロータコア32の第2端面32bとマグネット33の第2端面33bとの間の距離L2よりも長い。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転するシャフトと、
前記シャフトに固定されたロータコアと、
前記ロータコアの外周面に配置され、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の両端から突出されたマグネットと、
前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の一端のみに設けられ、前記ロータコアに当接されるとともに前記マグネットにおける前記回転軸線方向の一端を覆うマグネットホルダと、
前記マグネットの周囲を覆うマグネットカバーと、
を備え、
前記マグネットカバーは、
前記マグネットの外側面を覆う筒状部と、
前記マグネットにおける前記回転軸線方向の他端を覆うマグネット端部被覆部と、
前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の他端に当接されるコア当接部と、
前記マグネットホルダの上からかしめ固定されるかしめ部と、
を有し、
前記コア当接部の前記ロータコアに当接する箇所と前記マグネット端部被覆部との間の距離は、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の他端と前記マグネットにおける前記回転軸線方向の他端との間の距離よりも長い
ことを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記コア当接部は、前記マグネット端部被覆部の内周縁から前記ロータコアの前記回転軸線方向の他端に向かって屈曲延出してなる
ことを特徴とする請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記マグネットカバーは、前記筒状部の前記回転軸線方向の他端と前記マグネット端部被覆部とを連結し、前記回転軸線方向の外側に向かって凸となるように形成された張り出し部を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の一端と前記マグネットにおける前記回転軸線方向の一端との間の距離は、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の他端と前記マグネットにおける前記回転軸線方向の他端との間の距離よりも長い
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロータと、
前記ロータの周囲に設けられ、前記ロータに対する磁気的な吸引力や反発力を生成するステータと、
を備える
ことを特徴とする電動モータ。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロータの組み立て方法であって、
前記マグネットの外側面に前記マグネットカバーの前記筒状部を圧入し、前記マグネットカバーを装着するカバー装着工程と、
前記カバー装着工程の後、前記マグネットカバーの前記コア当接部の上から前記ロータコアの前記回転軸線方向の他端のみを受け治具によって押さえるコア受け工程と、
前記コア受け工程の後、かしめ治具を用い、前記マグネットホルダの上から前記筒状部における前記回転軸線方向の一端をかしめることにより、前記かしめ部を形成するかしめ工程と、
を有する
ロータの組み立て方法。
【請求項7】
前記マグネットカバーは、前記筒状部の前記回転軸線方向の他端における全周と前記マグネット端部被覆部の全周とを連結し、前記回転軸線方向の外側に向かって凸となるように形成された張り出し部を有し、
前記カバー装着工程において、圧入治具によって前記張り出し部を押圧することにより、前記マグネットの外側面に前記筒状部を圧入する
ことを特徴とする請求項6に記載のロータの組み立て方法。
【請求項8】
前記カバー装着工程において、前記マグネットの外側面に前記筒状部を圧入した後、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の他端に、前記コア当接部を押圧して突き当てる突き当て工程を有する
ことを特徴とする請求項7に記載のロータの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ、電動モータ、及びロータの組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータは、コイルが巻回されたティースを有するステータと、ステータの径方向内側に回転自在に設けられたロータと、を備える。ロータは、シャフトと、シャフトに固定される円柱状のロータコアと、ロータコアに設けられたマグネットと、を備える。
このような構成のもと、コイルに通電することによりステータに形成された鎖交磁束とロータコアに設けられたマグネットとの間に磁気的な吸引力や反発力が生じ、ロータが継続的に回転する。
【0003】
ロータにマグネットを配置する形の1つに、ロータコアの外周面にマグネットを組み付けるSPM(Surface Permanent Magnet)形がある。この種のSPM形のモータでは、異物等によりマグネットが損傷してしまうことを防止するために、ロータコアにマグネットの外表面全体を覆うマグネットカバーが設けられている。
マグネットカバーは、マグネットの径方向外側の外周面を覆う筒状部(円筒部)と、筒状部の軸方向両端に一体成形された2つのフランジと、を有する。2つのフランジのうちの一方は、ロータコアへの組み付け前は円筒状に形成されている。そして、ロータコアにマグネットカバーを組み付けた後、かしめることによりフランジになる。
【0004】
また、ロータコアの軸方向両端からマグネットの軸方向両端を突出させる、いわゆるマグネットをオーバーハングに構成する場合がある。このように構成することで、マグネットの軸方向両端からロータコアの軸方向両端への磁束漏れを抑制できる。このため、マグネットの有効磁束が増大し、電動モータの特性を向上できる。
【0005】
ここで、ロータコアの軸方向端面とマグネットの軸方向端面とがほぼ同一平面上に位置されている場合、マグネットカバーの2つのフランジは、ロータコアとマグネットとの両者に当接する。このため、マグネットカバーを設けることによってマグネットに作用する応力は、ロータコアとマグネットとに分散される。
【0006】
しかしながら、マグネットがオーバーハングに構成されている場合、マグネットカバーの2つのフランジは、マグネットのみに当接する。この結果、マグネットカバーによってマグネットに作用する応力が大きくなり、マグネットが損傷してしまう可能性があった。このため、ロータコアの軸方向両側にマグネットホルダを設け、マグネットに作用する応力を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-35187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、2つのマグネットホルダを設ける分、ロータの部品点数が増加してしまい、製造コストが増大するという課題があった。
また、2つのマグネットホルダを設ける分、ロータの軸長が長くなってしまい、ロータの小型化に限界があるという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、製造コストを低減できるとともに小型化できるロータ、電動モータ、及びロータの組み立て方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明に係るロータは、回転軸線回りに回転するシャフトと、前記シャフトに固定されたロータコアと、前記ロータコアの外周面に配置され、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の両端から突出されたマグネットと、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の一端のみに設けられ、前記ロータコアに当接されるとともに前記マグネットにおける前記回転軸線方向の一端を覆うマグネットホルダと、前記マグネットの周囲を覆うマグネットカバーと、を備え、前記マグネットカバーは、前記マグネットの外側面を覆う筒状部と、前記マグネットにおける前記回転軸線方向の他端を覆うマグネット端部被覆部と、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の他端に当接されるコア当接部と、前記マグネットホルダの上からかしめ固定されるかしめ部と、を有し、前記コア当接部の前記ロータコアに当接する箇所と前記マグネット端部被覆部との間の距離は、前記ロータコアにおける前記回転軸線方向の他端と前記マグネットにおける前記回転軸線方向の他端との間の距離よりも長いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2つのマグネットホルダのうち、回転軸線方向の他端側のマグネットホルダを削除できる。このため、ロータの部品点数を低減でき、ロータの製造コストを低減できる。また、マグネットホルダを1つ削除する分、ロータの軸長を短くでき、ロータを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態におけるモータユニットの斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】本発明の実施形態におけるロータを減速部側からみた斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3に示すロータの分解斜視図である。
図6】本発明の実施形態におけるマグネットカバーの組み付け工程を示す説明図である。
図7】本発明の実施形態におけるマグネットカバーの組み付け工程を示す説明図である。
図8】本発明の実施形態におけるマグネットカバーの組み付け工程を示す説明図である。
図9】本発明の実施形態におけるマグネットカバーの組み付け工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
<モータユニット>
図1は、本発明に係る電動モータ2を用いたモータユニット1の斜視図である。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
モータユニット1は、例えば、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる。
図1図2に示すように、モータユニット1は、電動モータ2と、電動モータ2の回転を減速して出力する減速部3と、電動モータ2の駆動制御を行うコントローラ4と、を備える。
【0015】
以下の説明において、単に「軸方向」という場合は、電動モータ2のシャフト31の回転軸線C方向に沿う方向を意味するものとする。単に「周方向」という場合は、シャフト31の周方向を意味するものとする。単に「径方向」という場合は、シャフト31の径方向を意味するものとする。
【0016】
<電動モータ>
電動モータ2は、ステータ8に電力を供給する際にブラシを必要としない、いわゆるブラシレスモータである。電動モータ2は、モータケース5と、モータケース5内に収納された円筒状のステータ8と、ステータ8の径方向内側に配置され、ステータ8に対して回転自在に設けられたロータ9と、を備える。
【0017】
<モータケース>
モータケース5は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた材料によって形成されている。モータケース5は、軸方向で分割可能に構成された第1モータケース6と、第2モータケース7と、からなる。第1モータケース6と第2モータケース7とは、それぞれ有底円筒状に形成されている。
第1モータケース6は、底部10が減速部3のギアケース40と一体成形されている。底部10の径方向略中央には、電動モータ2のシャフト31を挿通可能な貫通孔10aが形成されている。
【0018】
第1モータケース6及び第2モータケース7の各開口部6a,7aには、径方向外側に向かって張り出す外フランジ部16,17がそれぞれ形成されている。モータケース5は、外フランジ部16,17同士を突き合わせて内部空間が形成されている。この内部空間に、ステータ8及びロータ9が配置されている。
【0019】
<ステータ>
ステータ8は、モータケース5の内周面に固定されている。ステータ8は、積層した電磁鋼板等からなるステータコア20と、ステータコア20に巻回される複数のコイル24と、を備える。ステータコア20は、円環状のコア本体部21と、コア本体部21の内周部から径方向内側に向かって突出する複数(例えば、6つ)のティース22と、を有する。コア本体部21の内周面と各ティース22は、樹脂製のインシュレータ23によって覆われている。コイル24は、インシュレータ23の上から対応する所定のティース22に巻回されている。各コイル24は、コントローラ4からの給電により、ロータ9の回転に寄与する鎖交磁束を形成する。
【0020】
<減速部>
減速部3は、モータケース5と一体化されたギアケース40と、ギアケース40内に収納されたウォーム減速機構41と、を備える。ギアケース40は、アルミニウム合金等の放熱性に優れた金属材料によって形成されている。ギアケース40は、一面に開口部40aを有する箱状に形成されている。ギアケース40は、ウォーム減速機構41を内部に収容するギア収容部42を有する。ギアケース40の側壁40bには、第1モータケース6が一体成形されている箇所に、第1モータケース6の貫通孔10aとギア収容部42を連通する開口部43が形成されている。
【0021】
ギアケース40の底壁40cには、円筒状の軸受ボス49が突出形成されている。軸受ボス49は、ウォーム減速機構41の出力軸48を回転自在に支持するためのものであり、内周側に図示しない滑り軸受が配置されている。軸受ボス49の先端部には、内周面に、図示しないOリングが装着されている。軸受ボス49の外周面には、剛性確保のための複数のリブ52が突設されている。
【0022】
ギア収容部42に収容されたウォーム減速機構41は、ロータ9のシャフト31と一体に形成されたウォーム軸44と、ウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45と、により構成されている。ウォーム軸44は、軸方向の両端部が軸受46,47を介してギアケース40に回転軸線(軸心)C回りに回転自在に支持されている。ウォームホイール45には、電動モータ2の出力軸48が同軸に、かつ一体に設けられている。
【0023】
ウォームホイール45と出力軸48とは、これらの回転軸線が、ウォーム軸44(電動モータ2のシャフト31)の回転軸線Cと直交するように配置されている。出力軸48は、ギアケース40の軸受ボス49を介して外部に突出している。出力軸48の突出した先端には、モータ駆動する対象物品と接続可能なスプライン48aが形成されている。
【0024】
また、ウォームホイール45には、図示しないセンサマグネットが設けられている。このセンサマグネットは、コントローラ4に設けられた後述の磁気検出素子61によって回転位置が検出される。つまり、ウォームホイール45の回転位置は、コントローラ4の磁気検出素子61によって検出される。
【0025】
<コントローラ>
コントローラ4は、磁気検出素子61が実装されたコントローラ基板62を有する。コントローラ基板62は、ギアケース40の開口部40a内に配置されている。コントローラ基板62に実装された磁気検出素子61は、ウォームホイール45のセンサマグネットに対向している。ギアケース40の開口部40aは、カバー63によって閉塞されている。
【0026】
コントローラ基板62には、ステータコア20から引き出された複数のコイル24の端末部が接続されている。コントローラ基板62には、カバー63に設けられたコネクタ11(図1参照)の端子が電気的に接続されている。コントローラ基板62には、磁気検出素子61の他に、コイル24に供給する駆動電圧を制御するFET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子からなるパワーモジュールや、電圧の平滑化を行うコンデンサ(いずれも図示しない)等が実装されている。
【0027】
<ロータ>
図3は、ロータ9を減速部3側からみた斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図3に示すロータ9の分解斜視図である。
図2から図5に示すように、ロータ9は、ステータ8の径方向内側に微小隙間を介して回転自在に配置されている。ロータ9は、シャフト31に固定されたロータコア32と、ロータコア32の外周面に組み付けられた4つのマグネット33と、ロータコア32の減速部3とは反対側の第1端面(請求項のロータコアにおける回転軸線方向の一端の一例)32aに配置されるマグネットホルダ70と、ロータコア32及びマグネット33をマグネットホルダ70とともに軸方向及び径方向外側から覆う金属製のマグネットカバー71と、を備える。シャフト31は、減速部3のウォーム軸44と一体に形成されている。
【0028】
<ロータコア>
ロータコア32は、円筒状のコア本体部34と、コア本体部34の外周面から放射方向に突出する4つの突極35と、を有する。ロータコア32は、例えば、軟磁性粉を加圧成形したり、複数の電磁鋼板を軸方向に積層したりして形成されている。
ロータコア32には、ロータ9の回転軸線Cを中心としたシャフト保持孔72が形成されている。シャフト保持孔72に、シャフト31が圧入固定されて保持される。これにより、ロータコア32は、シャフト31とともに回転軸線C回りに回転する。
【0029】
シャフト保持孔72の内周面には、径方向外側に向かって延びる4つの逃げ溝73が形成されている。各逃げ溝73は、周方向に等間隔で配置されている。各逃げ溝73は、シャフト保持孔72の径方向内側と連通されている。各逃げ溝73は、ロータコア32の軸方向全体に渡って形成されている。各逃げ溝73の径方向外側の端部は、円弧状の係合部73aとされている。係合部73aには、後述するマグネットホルダ70の係止爪74(コア規制部)が嵌入される。
【0030】
4つの突極35は、コア本体部34の外周上に等間隔に突出し、かつ軸方向に延びている。コア本体部34の外周面は、ロータ9の回転軸線Cを中心とした円形状に形成されている。各突極35の周方向の側面は、平坦に形成されている。ロータコア32の周方向で隣接する2つの突極35間に、マグネット33が組み付けられる。
【0031】
<マグネット>
マグネット33としては、例えば、フェライト磁石が用いられる。しかしながら、マグネット33は、これに限られるものではなく、ネオジムボンド磁石やネオジム焼結磁石等を適用することも可能である。
【0032】
マグネット33は、軸方向からみて円弧状に形成されている。具体的には、マグネット33の内側面は、ロータ9の回転軸線Cを中心とした円弧形状(コア本体部34の外周面とほぼ合致する円弧形状)に形成されている。マグネット33の内側面は、コア本体部34の外周面に当接されている。
【0033】
マグネット33の外側面は、内側面よりも曲率半径の小さい円弧形状に形成されている。ロータ9の回転軸線Cからマグネット33の外側面の最大膨出部33c(マグネット33の周方向中央、図5参照)までの距離とロータ9の回転軸線Cから各突極35の径方向外側の端部までの距離とは、ほぼ同じである。
マグネット33の周方向の長さは、周方向に隣接する2つの突極35間の長さとほぼ同等か若干短い程度である。
【0034】
マグネット33の軸方向の長さは、ロータコア32(コア本体部34及び突極35)の軸方向長さよりも長い。マグネット33は、ロータコア32に組み付けられた状態において、このロータコア32の軸方向両端から突出している。ロータコア32の第1端面32aとマグネット33の減速部3とは反対側の第1端面(請求項のマグネットにおける回転軸線方向の一端の一例)33aとの間の距離L1は、ロータコア32における減速部3側の第2端面(請求項のロータコアにおける回転軸線方向の他端の一例)32bとマグネット33における減速部3側の第2端面(請求項のマグネットにおける回転軸線方向の他端の一例)33bとの間の距離L2よりも長い。
【0035】
<マグネットカバー>
マグネットカバー71は、例えばステンレス等の非磁性の金属板に深絞り加工等を施して形成される。マグネットカバー71は、ロータコア32及びマグネット33の外周面を覆う筒状部71aと、筒状部71aの減速部3側端(マグネット33の第2端面33b側端)に一体成形された張り出し部71bと、張り出し部71bの径方向内側端に一体成形されたマグネット端部被覆部71cと、マグネット端部被覆部71cの径方向内側端から径方向内側に向かって屈曲延出されたコア当接部71dと、筒状部71aの減速部3とは反対側端に一体成形されたかしめ部71eと、を備える。
【0036】
張り出し部71bは、筒状部71aの端部から減速部3側(軸方向の外側)に向かって凸となるように、かつ径方向内側に向かって折り返すように形成されている。張り出し部71bは、筒状部71aの全周に渡って形成されている。
張り出し部71bの折り返された径方向内側端からマグネット端部被覆部71cが径方向内側に向かって張り出すように延出されている。
【0037】
コア当接部71dは、マグネット端部被覆部71cの内周縁からロータコア32の第2端面32bに向かって、かつ軸方向に沿って屈曲延出された縦壁71fと、縦壁71fのロータコア32側の端部から径方向内側に向かって張り出すように屈曲延出された当接壁71gと、からなる。ロータコア32にマグネットカバー71を装着した状態(以下、マグネットカバー71の装着状態という)では、ロータコア32の第2端面32bに、コア当接部71dの当接壁71gが当接される。
【0038】
ここで、コア当接部71dの当接壁71gのうち、ロータコア32の第2端面32bに当接される一面71hと、マグネット端部被覆部71cのうち、マグネット33側の一面71iとの間の距離(請求項におけるコア当接部のロータコアに当接する箇所とマグネット端部被覆部との間の距離の一例)L3は、ロータコア32における減速部3側の第2端面32bとマグネット33における減速部3側の第2端面33bとの間の距離L2よりも長い。このため、マグネットカバー71の装着状態では、マグネット端部被覆部71cは、マグネット33の第2端面33bに接触されない。
【0039】
また、マグネットカバー71において、コア当接部71dの縦壁71fと筒状部71aとの間の径方向の距離L4は、マグネット33の最大膨出部33cでの径方向の厚さTよりも長い。このため、マグネットカバー71の装着状態では、コア当接部71dの縦壁71fは、マグネット33の内側面に接触されない。
【0040】
かしめ部71eは、筒状部71aの内側にロータコア32及びマグネット33をマグネットホルダ70とともに配置した状態で、筒状部71aの張り出し部71bとは反対側端をかしめによって塑性変形させることにより形成される。マグネットカバー71の組み付け方法の詳細は後述する。この組み付け方法の説明以外では、マグネットカバー71のかしめ部71eは、かしめられたものとして説明する。
【0041】
なお、マグネットカバー71の肉厚はできる限り薄肉とすることが望ましい。マグネットカバー71の肉厚は、ロータ9とステータ8との間のクリアランス(隙間)の大きさに比例するからである。このクリアランスが大きくなると、ロータ9とステータ8との間の磁気的な吸引力や反発力が減少し、電動モータ2のトルク特性が悪化してしまう。
【0042】
<マグネットホルダ>
図4図5に示すように、マグネットホルダ70は、例えば、硬質樹脂によって形成されている。マグネットホルダ70は、軸方向からみてロータコア32とほぼ重なる形状に形成されている。すなわち、マグネットホルダ70は、ロータコア32のコア本体部34における第1端面32aに重ねて配置される環状部81と、環状部81の外周面から放射状に突出する4つの脚部82と、環状部81及び脚部82の軸方向外側に一体に連結された端部壁83と、を有する。
【0043】
環状部81の内周縁部に、4つの係止爪74が周方向に等間隔で一体成形されている。係止爪74は、軸方向に沿ってロータコア32側に向かって突出している。係止爪74は、断面が半円状に形成されている。係止爪74は、マグネットホルダ70がロータコア32の第1端面32aに組み付けられた際、ロータコア32の内周の逃げ溝73(係合部73a)に嵌合される。マグネットホルダ70は、各係止爪74が対応する逃げ溝73(係合部73a)に嵌合されることにより、ロータコア32との径方向の相対変位が規制される。
また、環状部81におけるコア本体部34と重なる端部には、周方向で隣接する2つの係止爪74の間に、凹部59が形成されている。
【0044】
4つの脚部82は、環状部81の外周上の係止爪74に対応する位置から径方向外側に向かって突出形成されている。4つの脚部82は、ロータコア32における各突極35の軸方向端面に重ねて配置される。4つの脚部82の径方向外側端の位置は、軸方向からみて、対応する突極35の径方向外側端とほぼ同じ位置である。
各脚部82の軸方向の長さH1は、ロータコア32の第1端面32aとマグネット33の第1端面33aとの間の距離L1よりも若干長い。
【0045】
各脚部82の周方向両側面には、環状部81寄りに、一対の圧入突起76が形成されている。各圧入突起76は、軸方向に沿って延び、かつロータコア32に向かうに従って突出高さが漸次低くなるように形成されている。
ロータコア32の外周面にマグネット33を配置し、さらに、ロータコア32にマグネットホルダ70を組み付けると、マグネットホルダ70の周方向で隣接する2つの脚部82間に、各マグネット33の端部が挿入される。このとき、マグネット33の周方向側面が圧入突起76に当接される。これにより、マグネット33の周方向の変位が規制される。
【0046】
端部壁83は、環状部81から径方向外側に張り出すように形成されている。端部壁83は、ロータコア32の軸心Cから脚部82の先端部までの長さとほぼ同寸法の半径の円板形状(孔開き円板形状)である。端部壁83は、周方向で隣接する2つの脚部82の間の空間を脚部82の軸方向外側位置で閉塞している。また、端部壁83は、マグネット33の第1端面33aを微小隙間を介して覆っている。
【0047】
端部壁83には、周方向で隣接する2つの脚部82の間に、円形状の確認孔57が形成されている。確認孔57は、各マグネット33における軸方向の端面と対向する位置に形成されている。これにより、マグネット33を保持したロータコア32とともにマグネットカバー71内にマグネットホルダ70が組み付けた状態(以下、マグネットホルダ70の組み付け状態という)で、各マグネット33の位置をロータコア32の外部から目視確認できる。確認孔57は、各マグネット33と一対一で対応するように4つ設けられている。
【0048】
また、端部壁83は、軸方向外側の面が平坦に形成されている。これに対し、端部壁83のマグネット33側の内面83aには、放射状に延びる複数の補強リブ58が突出形成されている。補強リブ58は、端部壁83における内面83aの周方向で隣接する2つの脚部82の間に各々2つずつ配置されている。
【0049】
補強リブ58は、マグネットホルダ70を樹脂によって例えば射出成形した際、端部壁83の周域に凹みや波うち等の変形が生じるのを抑制する機能を有する。また、補強リブ58は、端部壁83の機械的強度を高める機能を有する。さらに、補強リブ58は、マグネットホルダ70の組み付け状態において、マグネット33の第1端面33aに当接される。これにより、マグネット33に軸方向に過大な荷重がかかった際に、マグネット33の軸方向の変位が規制される。
【0050】
このような構成のもと、マグネットホルダ70における端部壁83の外周部に、かしめ部71eが形成される。すなわち、マグネットカバー71のかしめ部71eは、マグネット33の第1端面33aよりも軸方向外側に位置されている。
【0051】
<マグネットカバーの組み付け方法>
次に、図6から図9に基づいて、マグネットカバー71の組み付け方法について説明する。
図6から図9は、マグネットカバー71の組み付け工程を示す説明図である。
まず、マグネットカバー71を組み付ける前に、予めロータコア32の外周面にマグネット33を配置する。この状態で、ロータコア32の第1端面32aにマグネットホルダ70を仮組みする。以下の説明では、この仮組み状態を予備アッセンブリ79という。
【0052】
この予備アッセンブリ79の状態で、図6に示すように、ロータコア32の第2端面32b側に、マグネットカバー71を配置する。このとき、マグネットカバー71は、ロータコア32側にかしめ部71eを向けて配置する。また、このとき、かしめ部71eはかしめられておらず、張り出し部71bとは反対側(ロータコア32側)に向かうに従って開口面積が漸次大きくなるように末広がり状に形成されている。このように形成されたマグネットカバー71の開口部77を、ロータコア32側に向けて配置する。
【0053】
この状態で、張り出し部71bの上に圧入治具91を配置する。
圧入治具91は、マグネットカバー71の張り出し部71b及びコア当接部71dの形状に対応するように形成されている。すなわち、圧入治具91は、張り出し部71bに当接される張り出し部押圧部91aと、コア当接部71dに当接されるコア当接部押圧部91bと、が一体成形されたものである。コア当接部押圧部91bは、円板状に形成されている。コア当接部押圧部91bの外径は、コア当接部71dにおける縦壁71fの内径よりも小さい。このため、コア当接部押圧部91bは、コア当接部71dの当接壁71gのみに当接される。
【0054】
張り出し部押圧部91aからのコア当接部押圧部91bの突出長さH2は、コア当接部71dの当接壁71gのうち、一面71hとは反対側の他面71jと張り出し部71bの最先端との間の距離L5よりも若干長い。
一方、予備アッセンブリ79のマグネットホルダ70側に、第1受け治具92を配置する。第1受け治具92は、マグネットホルダ70の端部壁83に当接される。
【0055】
続いて、図7に示すように、圧入治具91によって、予備アッセンブリ79に向かってマグネットカバー71を押圧しながらマグネット33の外側面にマグネットカバー71の筒状部71aを圧入する。そして、予備アッセンブリ79にマグネットカバー71を装着していく(カバー装着工程)。このとき、かしめ部71eが末広がり状に形成されているので、予備アッセンブリ79にマグネットカバー71を容易に嵌め合わせることができる。
第1受け治具92は、マグネットホルダ70の端部壁83側から圧入治具91の押圧荷重を受ける。
【0056】
ここで、張り出し部押圧部91aからのコア当接部押圧部91bの突出長さH2は、コア当接部71dの当接壁71gのうち、一面71hとは反対側の他面71jと張り出し部71bの最先端との間の距離L5よりも若干長い。このため、カバー装着工程では、マグネットカバー71の張り出し部71bに圧入治具91の張り出し部押圧部91aが当接されるよりも若干先に、マグネットカバー71の当接壁71gに圧入治具91のコア当接部押圧部91bが当接される。
【0057】
ここで、コア当接部71dは、マグネット端部被覆部71cの径方向内側端から径方向内側に向かって屈曲延出されている。このため、軸方向にかかる力に対して弾性変形しやすい。つまり、コア当接部押圧部91bによって当接壁71gを押圧しても、この当接壁71gがロータコア32側に弾性変形して撓んでしまう。この結果、コア当接部押圧部91bによる押圧荷重を、当接壁71gでほとんど受けることがない。そして、マグネットカバー71の張り出し部71bと当接壁71gとに圧入治具91が同時に当接される。
【0058】
張り出し部71bは、筒状部71aの端部から減速部3側(軸方向の外側)に向かって凸となるように、かつ径方向内側に向かって折り返すように形成されている。このため、軸方向にかかる力に対しての機械的強度が高く、張り出し部押圧部91aによる押圧荷重を確実に受ける。
【0059】
この結果、カバー装着工程では、マグネットカバー71の張り出し部71bと当接壁71gとに圧入治具91が同時に当接されるものの、当接壁71gへの押圧力は殆ど無視できる程度となる。そして、張り出し部押圧部91aによって張り出し部71bを押圧する形になり、これによって、マグネット33の外側面にマグネットカバー71の筒状部71aが圧入される。
【0060】
続いて、図8に示すように、ロータコア32の第2端面32bにマグネットカバー71の当接壁71gが当接されるまで、圧入治具91によってマグネットカバー71を予備アッセンブリ79に向かって押圧する。ロータコア32の第2端面32bにマグネットカバー71の当接壁71gが当接されると、当接壁71gの弾性変形がロータコア32の第2端面32bによって抑えられる。
【0061】
このため、当接壁71gにコア当接部押圧部91bが当接されつつ、張り出し部71bと張り出し部押圧部91aとの間に微小隙間Sが生じる。したがって、張り出し部押圧部91aによって筒状部71aを圧入した後、コア当接部押圧部91bによって当接壁71gが確実に押圧される。これにより、ロータコア32におけるコア本体部34の第2端面32bに、当接壁71gが確実に突き当てられる(突き当て工程)。
【0062】
ここで、コア当接部71dの当接壁71gのうち、ロータコア32の第2端面32bに当接される一面71hと、マグネット端部被覆部71cのうち、マグネット33側の一面71iとの間の距離L3は、ロータコア32における減速部3側の第2端面32bとマグネット33における減速部3側の第2端面33bとの間の距離L2よりも長い。このため、マグネットカバー71の装着状態では、マグネット端部被覆部71cは、マグネット33の第2端面33bに接触されない。よって、圧入治具91による押圧荷重がマグネットカバー71を介してマグネット33の第2端面33bに作用されてしまうことがない。
【0063】
また、マグネットカバー71において、コア当接部71dの縦壁71fと筒状部71aとの間の径方向の距離L4は、マグネット33の最大膨出部33cでの径方向の厚さTよりも長い。このため、マグネットカバー71の装着状態では、コア当接部71dの縦壁71fは、マグネット33の内側面に接触されない。よって、圧入治具91による押圧荷重が、マグネットカバー71を介してマグネット33の内側面にかかってしまうことがない。
【0064】
図9に示すように、予備アッセンブリ79にマグネットカバー71を完全に押し込んだ後、マグネットカバー71のコア当接部71dに、圧入治具91に代わって第2受け治具93を配置する。第2受け治具93は、円板状に形成されている。第2受け治具93の外径は、コア当接部71dにおける縦壁71fの内径よりも小さい。このため、第2受け治具93は、コア当接部71dの当接壁71gのみに当接される。すなわち、マグネットカバー71のコア当接部71dの上からロータコア32の第1端面32aのみを第2受け治具93によって押さえる(コア受け工程)。
【0065】
この状態で、かしめ治具94によってかしめ部71eを径方向内側に折り込むようにかしめる(図9における矢印Y参照;かしめ工程)。
ここで、かしめ部71e側に配置されているマグネットホルダ70は、ロータコア32の第1端面32a及びマグネット33の第1端面33aに重ねて配置されている。このため、マグネットホルダ70における端部壁83の外周部に、かしめ部71eが形成される。
【0066】
すなわち、マグネットカバー71のかしめ部71eは、マグネット33の第1端面33aよりも軸方向外側に位置されている。さらに、ロータコア32の第1端面32a及びマグネット33の第1端面33aとかしめ部71eとの間に、端部壁83の外周部が配置される。このため、端部壁83は、かしめ部71eのかしめ作業時におけるかしめ荷重を受ける。この結果、かしめ治具94によるかしめ荷重がマグネット33にかかってしまうことがない。また、マグネットホルダ70の補強リブ58により、マグネットカバー71の端部のかしめ時に、かしめ荷重によってマグネットホルダ70の端部壁83の外周縁部が変形するのが抑制される。
【0067】
かしめ部71eを塑性変形させることにより、ロータコア32とマグネット33とは、マグネットホルダ70とともにマグネットカバー71の内部に固定される。これにより、マグネットカバー71の組み付けが完了する。
【0068】
<モータユニットの動作>
次にモータユニット1の動作について説明する。
モータユニット1は、コントローラ4から電動モータ2の各コイル24に電力が供給されると、ステータ8に所定の磁界が形成される。この磁界を受けて、磁界とロータ9のマグネット33との間で磁気的な吸引力や反発力が生じる。これにより、ロータ9が継続的に回転される。
ロータ9が回転されると、シャフト31と一体化されたウォーム軸44が回転され、さらにウォーム軸44に噛合されるウォームホイール45が回転される。そして、ウォームホイール45に一体に設けられた出力軸48が回転され、例えば、図示しない車両のワイパー装置が駆動される。
【0069】
このように上述のロータ9は、ロータコア32の軸方向両端からマグネット33が突出されている。このようなマグネット33の周囲を覆うマグネットカバー71は、マグネット33の外側面を覆う筒状部71aと、マグネット33の第2端面33bを覆うマグネット端部被覆部71cと、ロータコア32の第2端面32bを覆うコア当接部71dと、マグネットホルダ70の上からかしめ固定されるかしめ部71eと、を有する。そして、コア当接部71dの当接壁71gのうち、ロータコア32の第2端面32bに当接される一面71hと、マグネット端部被覆部71cのうち、マグネット33側の一面71iとの間の距離L3は、ロータコア32における減速部3側の第2端面32bとマグネット33における減速部3側の第2端面33bとの間の距離L2よりも長い。
【0070】
このため、ロータコア32の両端のそれぞれにマグネットホルダ70を配置することなく、マグネット端部被覆部71c及びコア当接部71dによって、マグネットカバー71を装着する際の押圧荷重がマグネット33にかかってしまうことを防止できる。したがって、マグネット端部被覆部71c及びコア当接部71dをマグネットホルダ70に代えることにより、マグネットホルダ70の数を削減できる。すなわち、ロータ9の部品点数を低減でき、ロータ9の製造コストを低減できる。また、マグネットホルダ70を削減できる分、ロータ9の軸長を短くでき、ロータ9を小型化できる。
【0071】
コア当接部71dは、マグネット端部被覆部71cの内周縁から屈曲延出された縦壁71fと、縦壁71fのロータコア32側の端部から径方向内側に向かって張り出すように屈曲延出された当接壁71gと、からなる。すなわち、コア当接部71dは、マグネット端部被覆部71cの内周縁からロータコア32の第2端面32bに向かって屈曲延出されている。このため、コア当接部71dの形状を簡素化でき、マグネットカバー71の製造コストを低減できる。
【0072】
マグネットカバー71は、筒状部71aの端部から減速部3側(軸方向の外側)に向かって凸となるように、かつ径方向内側に向かって折り返すように形成された張り出し部71bを有する。このため、マグネットカバー71の組み付け時に、張り出し部71bを利用してマグネット33の外側面にマグネットカバー71を圧入できる。
【0073】
張り出し部71bは凸となるように形成されているので、機械的強度を向上させやすい。また、張り出し部71bによって、圧入治具91の張り出し部押圧部91aがマグネットカバー71のマグネット端部被覆部71cに接触してしまうことを防止できる。これらの結果、マグネットカバー71の圧入時に、マグネット端部被覆部71cやコア当接部71dの変形に起因してマグネットカバー71が座屈変形してしまうことを抑制できる。
【0074】
ロータコア32の第1端面32aとマグネット33の第1端面33aとの間の距離L1は、ロータコア32の減速部3側の第2端面32bとマグネット33の第2端面33bとの間の距離L2よりも長い。
ここで、ロータコア32やマグネット33は、軸方向の製造誤差が大きくなりやすい。このため、ロータコア32の第2端面32b側に組み付けられるマグネットカバー71のコア当接部71dを基準とし、このコア当接部71dとは軸方向で反対側、つまりかしめ部71e側の距離を長くすることで、かしめ部71eでロータコア32とマグネット33の製造誤差を吸収させることができる。
【0075】
マグネットカバー71において、コア当接部71dの縦壁71fと筒状部71aとの間の径方向の距離L4は、マグネット33の最大膨出部33cでの径方向の厚さTよりも長い。このため、マグネットカバー71の装着状態では、コア当接部71dの縦壁71fは、マグネット33の内側面に接触してしまうことを防止できる。したがって、マグネットカバー71によってマグネット33に余計な応力がかかることを防止できる。マグネットカバー71によって、マグネット33が損傷してしまうことを防止できる。
【0076】
マグネット33は、ロータコア32に組み付けられた状態において、このロータコア32の軸方向両端から突出している。このため、マグネット33の有効磁束が増大し、電動モータ2の特性を向上できる。
以上のようなロータ9と、このロータに対する磁気的な吸引力や反発力を生成するステータ8と、により電動モータ2を構成することにより、小型で安価な電動モータ2を提供できる。
【0077】
電動モータ2のモータ特性を向上でき、かつ小型で安価な電動モータ2を提供できるので、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「全ての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」、及び目標9「強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの促進を図る」に貢献することが可能となる。
【0078】
マグネットカバー71を組み付けるにあたって、カバー装着工程と、コア受け工程と、かしめ工程と、を有する。このため、ロータコア32にマグネットカバー71をかしめ固定する際、マグネット端部被覆部71cに余計な荷重がかかってこのマグネット端部被覆部71cが座屈変形してしまうことを防止できる。
カバー装着工程において、圧入治具91によってマグネットカバー71の張り出し部71bを押圧している。このため、マグネットカバー71を圧入する際、マグネットカバー71が座屈変形してしまうことを抑制できる。
【0079】
また、カバー装着工程において、突き当て工程を有する。このように、マグネットカバー71の圧入時に、ロータコア32の第2端面32bに当接する当接壁71gを支持する。このため、マグネット33の第2端面33bに接触されないマグネット端部被覆部71cに余計な荷重がかかってしまうことを確実に防止できる。よって、マグネットカバー71を座屈変形させることなく、ロータコア32にマグネットカバー71を確実に装着することができる。
【0080】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば上述の実施形態では、モータユニット1は、車両のワイパー装置の駆動源として用いられる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、さまざまな電装品の駆動源としてモータユニット1を用いることができる。
【0081】
上述の実施形態では、コア当接部71dは、マグネット端部被覆部71cの内周縁からロータコア32の第2端面32bに向かって、かつ軸方向に沿って屈曲延出された縦壁71fと、縦壁71fのロータコア32側の端部から径方向内側に向かって張り出すように屈曲延出された当接壁71gと、からなる場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、コア当接部71dは、マグネットカバー71の装着状態において、ロータコア32の第2端面32bに当接する形状であればよい。そして、コア当接部71dのロータコア32に当接する箇所とマグネット端部被覆部71cとの間の距離(距離L3)が、ロータコア32の第2端面32bとマグネット33の第2端面33bとの間の距離L2よりも長ければよい。
【0082】
上述の実施形態では、マグネットホルダ70の4つの脚部82の径方向外側端の位置は、軸方向からみて、対応する突極35の径方向外側端とほぼ同じ位置である場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、脚部82の径方向外側端の位置は、軸方向からみて必ずしも対応する突極35の径方向外側端と同じ位置である必要はない。マグネットカバー71のかしめ部71eを形成する際、かしめ荷重がマグネット33に作用しないようにマグネットホルダ70の環状部81から脚部82が突出されていればよい。
【0083】
上述の実施形態では、張り出し部押圧部91aからのコア当接部押圧部91bの突出長さH2は、コア当接部71dの当接壁71gのうち、一面71hとは反対側の他面71jと張り出し部71bの最先端との間の距離L5よりも若干長い場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、長さH2は距離L5より若干短くてもよい。但しこの場合、カバー装着工程において張り出し部71bが座屈、変形しない程度に、張り出し部71bを大きく形成することが望ましい。
【符号の説明】
【0084】
1…モータユニット、2…電動モータ、3…減速部、4…コントローラ、5…モータケース、6…第1モータケース、6a…開口部、7…第2モータケース、7a…開口部、8…ステータ、9…ロータ、10…底部、10a…貫通孔、11…コネクタ、16…外フランジ部、17…外フランジ部、20…ステータコア、21…コア本体部、22…ティース、23…インシュレータ、24…コイル、31…シャフト、32…ロータコア、32a…第1端面(ロータコアにおける回転軸線方向の一端)、32b…第2端面(ロータコアにおける回転軸線方向の他端)、32b…第2端面、33…マグネット、33a…第1端面(マグネットにおける回転軸線方向の一端)、33b…第2端面(マグネットにおける回転軸線方向の他端)、33c…最大膨出部、34…コア本体部、35…突極、40…ギアケース、40a…開口部、40b…側壁、40c…底壁、41…ウォーム減速機構、42…ギア収容部、43…開口部、44…ウォーム軸、45…ウォームホイール、46…軸受、47…軸受、48…出力軸、48a…スプライン、49…軸受ボス、52…リブ、57…確認孔、58…補強リブ、59…凹部、61…磁気検出素子、62…コントローラ基板、63…カバー、70…マグネットホルダ、71…マグネットカバー、71a…筒状部、71b…張り出し部、71c…マグネット端部被覆部、71d…コア当接部、71e…かしめ部、71f…縦壁、71g…当接壁、71h…一面、71i…一面、71j…他面、72…シャフト保持孔、73…溝、73a…係合部、74…係止爪、76…圧入突起、77…開口部、79…予備アッセンブリ、81…環状部、82…脚部、83…端部壁、83a…内面、91…圧入治具、91a…張り出し部押圧部、91b…コア当接部押圧部、92…第1受け治具、93…第2受け治具、94…かしめ治具、C…回転軸線、H1…長さ、H2…突出長さ、L1~L5…距離、S…微小隙間、T…厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9