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特開2023-46822ブッシング装置、及びガラス繊維の製造方法
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  • 特開-ブッシング装置、及びガラス繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046822
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】ブッシング装置、及びガラス繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/092 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
C03B37/092
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155621
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松浦 禅
(57)【要約】
【課題】ターミナルの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることを可能にしたブッシング装置、及びガラス繊維の製造方法を提供する。
【解決手段】ブッシング装置12は、溶融ガラスMGを流出するノズル群Nを有するブッシング13と、ブッシング13を通電加熱するためのターミナル14とを備える。ブッシング装置12のターミナル14は、ブッシング13の第1側部13aに接続される第1ターミナル14aと、ブッシング13の第1側部13aとは反対側の第2側部13bに接続される第2ターミナル14bとを含む。ターミナル14は、ブッシング13における第1側部13aと第2側部13bとの間の中間部13cに接続される中間ターミナル14cを含む。中間ターミナル14cの断面形状は、非円形状である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ガラスを流出するノズル群を有するブッシングと、
前記ブッシングを通電加熱するためのターミナルと、を備えるブッシング装置であって、
前記ターミナルは、前記ブッシングの第1側部に接続される第1ターミナルと、
前記ブッシングの前記第1側部とは反対側の第2側部に接続される第2ターミナルと、
前記ブッシングにおける前記第1側部と前記第2側部との間の中間部に接続される中間ターミナルとを含み、
前記中間ターミナルの断面形状が非円形状である、ブッシング装置。
【請求項2】
前記中間ターミナルの断面形状は、多角形状である、請求項1に記載のブッシング装置。
【請求項3】
前記中間ターミナルの断面形状は、長方形状である、請求項1に記載のブッシング装置。
【請求項4】
複数の前記中間ターミナルを備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のブッシング装置。
【請求項5】
前記ノズル群は、第1ガラスストランドを得るための第1ノズル群と、第2ガラスストランドを得るための第2ノズル群と、を備え、
前記中間ターミナルは、前記第1ノズル群と前記第2ノズル群との間に沿った中間部に接続される、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のブッシング装置。
【請求項6】
前記中間ターミナルは、前記ブッシングに接続され、前記ブッシングの側方に延びる基端部と、前記基端部の先端から下方に延びる延出部とを有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のブッシング装置。
【請求項7】
溶融ガラスを流出するノズル群を有するブッシングと、前記ブッシングを通電加熱するためのターミナルと、を備えるブッシング装置を用いて、ガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、
前記ブッシング装置の前記ターミナルは、前記ブッシングの第1側部に接続される第1ターミナルと、
前記ブッシングの前記第1側部とは反対側の第2側部に接続される第2ターミナルと、
前記ブッシングにおける前記第1側部と前記第2側部との間の中間部に接続される中間ターミナルとを含み、
前記中間ターミナルの断面形状が非円形状であり、
前記成形工程では、前記ブッシングの通電加熱により前記溶融ガラスを加熱する、ガラス繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシング装置、及びガラス繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、ガラス繊維の製造には、溶融ガラスを流出するノズル群を備えるブッシングが用いられる。特許文献1のブッシングには、ブッシングを通電加熱するためのターミナルが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-024967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなブッシング装置のターミナルは、ブッシングの第1側部に接続される第1ターミナルと、ブッシングの第1側部とは反対側の第2側部に接続される第2ターミナルとから構成されている。このようなブッシングにおける第1側部と第2側部との間の中間部にさらに中間ターミナルを接続することで、ブッシングの中間部に流れる電流を調整することが可能となる。これにより、例えば、ブッシングの中間部の発熱量をより精密に調整することができる。このようなブッシングの使用時には、例えば中間ターミナルの通電による発熱等によって中間ターミナルを構成する材料が揮発する場合がある。中間ターミナルを構成する材料の揮発は、ブッシング装置の寿命を短くする一因となっている。
【0005】
本発明の目的は、ターミナルの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることを可能にしたブッシング装置、及びガラス繊維の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するブッシング装置は、溶融ガラスを流出するノズル群を有するブッシングと、前記ブッシングを通電加熱するためのターミナルと、を備えるブッシング装置であって、前記ターミナルは、前記ブッシングの第1側部に接続される第1ターミナルと、前記ブッシングの前記第1側部とは反対側の第2側部に接続される第2ターミナルと、前記ブッシングにおける前記第1側部と前記第2側部との間の中間部に接続される中間ターミナルとを含み、前記中間ターミナルの断面形状が非円形状である。
【0007】
この構成によれば、上記中間ターミナルと同じ断面積であり、断面形状が円形状の中間ターミナルよりも、表面電力密度を小さくすることができる。すなわち、上記中間ターミナルでは、断面形状が円形状の中間ターミナルよりも外面の温度上昇を抑えることができる。これにより、中間ターミナルを構成する材料の揮発を抑えることができる。
【0008】
上記ブッシング装置において、前記中間ターミナルの断面形状は、多角形状であってもよい。
上記ブッシング装置において、前記中間ターミナルの断面形状は、長方形状であってもよい。この構成によれば、中間ターミナルの表面電力密度を比較的単純な形状でより小さくすることができる。
【0009】
上記ブッシング装置は、複数の前記中間ターミナルを備えてもよい。この構成によれば、複数の中間ターミナルを利用してブッシングの中間部に流れる電流を調整することで、ブッシングの中間部の発熱量をさらに精密に調整することができる。これにより、ブッシングの温度調整の精度をより高めることができるため、例えば、ガラスフィラメントの繊維径の均一性をより高めることが可能となる。
【0010】
上記ブッシング装置において、前記ノズル群は、第1ガラスストランドを得るための第1ノズル群と、第2ガラスストランドを得るための第2ノズル群と、を備え、前記中間ターミナルは、前記第1ノズル群と前記第2ノズル群との間に沿った中間部に接続されてもよい。この構成によれば、例えば、第1ノズル群に供給される溶融ガラスの温度と第2ノズル群に供給される溶融ガラスの温度との均一性を高めることができる。これにより、例えば、第1ノズル群から得られる第1ガラスストランドの繊維径と第2ノズル群から得られる第2ガラスストランドの繊維径との均一性を高めることが可能となる。
【0011】
上記ブッシング装置において、前記中間ターミナルは、前記ブッシングに接続され、前記ブッシングの側方に延びる基端部と、前記基端部の先端から下方に延びる延出部とを有してもよい。この構成によれば、例えば、中間ターミナルをブッシングの熱の影響を受け難い方向に延ばすことで、ブッシングの熱の影響を受け難い箇所で導線を接続することが可能となる。これにより、例えば、中間ターミナルと導線との接続部分がブッシングから受ける熱を抑えることで、接続部分の耐久性を高めることが可能となる。
【0012】
ガラス繊維の製造方法は、溶融ガラスを流出するノズル群を有するブッシングと、前記ブッシングを通電加熱するためのターミナルと、を備えるブッシング装置を用いて、ガラスフィラメントを成形する成形工程を備えるガラス繊維の製造方法であって、前記ブッシング装置の前記ターミナルは、前記ブッシングの第1側部に接続される第1ターミナルと、前記ブッシングの前記第1側部とは反対側の第2側部に接続される第2ターミナルと、前記ブッシングにおける前記第1側部と前記第2側部との間の中間部に接続される中間ターミナルとを含み、前記中間ターミナルの断面形状が非円形状であり、前記成形工程では、前記ブッシングの通電加熱により前記溶融ガラスを加熱する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ターミナルの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態におけるガラス繊維の製造を説明する説明図である。
図2】ブッシング装置を示す概略斜視図である。
図3】変更例のブッシング装置を示す概略正面図である。
図4】変更例のブッシング装置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、ブッシング装置、及びガラス繊維の製造方法の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
<ガラス繊維の製造装置の概要>
図1に示すように、ガラス繊維の製造装置11は、ブッシング装置12を備えている。ブッシング装置12は、溶融ガラスMGを流出するノズル群Nを有するブッシング13と、ブッシング13を通電加熱するためのターミナル14とを備えている。ブッシング13のノズル群Nは、ガラスフィラメントGFを成形する。
【0017】
ガラス繊維の製造装置11は、ガラスフィラメントGFに液体状の集束剤を塗布するアプリケータ15と、集束剤が塗布された多数のガラスフィラメントGFを集束させるギャザリングシュー16とを備えている。多数のガラスフィラメントGFは、ギャザリングシュー16により集束されることで、ガラスストランドGSが得られる。なお、図示を省略するが、ガラス繊維の製造装置11は、ガラスストランドGSを往復移動させるトラバースと、トラバースを通過したガラスストランドGSを巻き取るコレットとを備えている。
【0018】
溶融ガラスMGのガラスとしては、例えば、Eガラス(アルカリ含有量2%以下のガラス)、Dガラス(低誘電率ガラス)、ARガラス(耐アルカリ性ガラス)、Cガラス(耐酸性のガラス)、Mガラス(高弾性率のガラス)、Sガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Tガラス(高強度、高弾性率のガラス)、Hガラス(高誘電率のガラス)、NEガラス(低誘電率のガラス)が挙げられる。ガラスの密度は、例えば、2.0~3.0g/cmである。
【0019】
<ブッシング装置>
図1及び図2に示すように、ブッシング装置12のブッシング13は、溶融ガラスMGが供給されるブッシング本体17と、ブッシング本体17の底部に設けられたベースプレート18とを備えている。ブッシング本体17には、図示を省略した供給口から溶融ガラスMGが供給される。ブッシング本体17は、ベースプレート18上の異物の堆積を抑えるためのスクリーンを備えていてもよい。
【0020】
ベースプレート18は、4辺形状の底面を有している。本実施形態のベースプレート18は、長方形状の底面を有しているが、例えば、正方形状等の底面を有していてもよい。図面では、X軸に沿った方向が左右方向であり、Y軸に沿った方向が前後方向であり、Z軸に沿った方向が上下方向である。ベースプレート18の長手方向は、X軸に沿った方向であり、ベースプレート18の短手方向は、Y軸に沿った方向である。
【0021】
ブッシング13のノズル群Nは、ベースプレート18の底面に設けられている。各ノズルNaには、溶融ガラスMGが供給され、ガラスフィラメントGFが引き出される。図面では、ブッシング13のノズル群Nを簡略化して示しているが、ノズル数は、800~10000本であることが好ましく、2000~8000本であることがより好ましい。
【0022】
ブッシング装置12のターミナル14は、第1ターミナル14a、第2ターミナル14b、及び中間ターミナル14cを含んでいる。
第1ターミナル14aは、ブッシング13の第1側部13aに接続されている。第2ターミナル14bは、ブッシング13の第1側部13aとは反対側の第2側部13bに接続されている。中間ターミナル14cは、ブッシング13における第1側部13aと第2側部13bとの間の中間部13cに接続されている。
【0023】
本実施形態の第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bは、ベースプレート18の長手方向において向かい合うように配置されている。中間ターミナル14cは、ベースプレート18の長手方向において中央に配置されているが、ブッシング13の第2側部13bよりも第1側部13aに近い位置、又は第1側部13aよりも第2側部13bに近い位置に配置されていてもよい。中間ターミナル14cは、ブッシング本体17の正面に接続されているが、ブッシング本体17の背面に接続されていてもよい。
【0024】
第1ターミナル14a、第2ターミナル14b、及び中間ターミナル14cの断面形状は、非円形状である。本実施形態の第1ターミナル14a、第2ターミナル14b、及び中間ターミナル14cの断面形状は、長四角形状である。
【0025】
第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bの全体形状は、板状である。第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bは、両主面を前後に向けるように配置されているが、例えば、両主面を上下に向けるように配置されていてもよい。
【0026】
中間ターミナル14cの全体形状は、板状である。中間ターミナル14cは、ブッシング13に接続され、ブッシング13の側方に延びる基端部P1と、基端部P1の先端から下方に延びる延出部P2とを有している。中間ターミナル14cの基端部P1及び延出部P2は、両主面を左右に向けるように配置されている。
【0027】
なお、中間ターミナル14cの基端部P1は、両主面を上下に向けるように配置されるとともに、延出部P2は、両主面を前後に向けるように配置されてもよい。
ブッシング13及びターミナル14の材料としては、例えば、貴金属又は貴金属合金が挙げられる。貴金属は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、又はオスミウムである。ブッシング13及びターミナル14の材料は、耐久性を高めるという観点から、白金、又は白金合金であることが好ましい。白金合金としては、例えば、白金ロジウム合金が挙げられる。
【0028】
<ガラス繊維の製造方法>
次に、ガラス繊維の製造方法について、ブッシング装置12の主な作用とともに説明する。
【0029】
ガラス繊維の製造方法は、上記ブッシング装置12を用いて、ガラスフィラメントGFを成形する成形工程を備えている。成形工程では、ブッシング13に供給された溶融ガラスMGがブッシング13のノズル群Nから流出されることにより、ガラスフィラメントGFが成形される。成形工程では、ブッシング13の通電加熱により溶融ガラスMGを加熱する。詳述すると、ターミナル14は、図示を省略した電源に接続されている。このようなターミナル14を用いてブッシング13に通電することで、ブッシング13を抵抗加熱することができる。本実施形態のブッシング装置12は、第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bに加えて中間ターミナル14cを備えている。この中間ターミナル14cを利用して、ブッシング13の中間部13cの電流を出し入れすることが可能となる。すなわち、中間ターミナル14cを利用してブッシング13の中間部13cに流れる電流を調整することで、ブッシング13の中間部13cの発熱量をより精密に調整することができる。これにより、ブッシング13の温度調整の精度を高めることができるため、例えば、ガラスフィラメントGFの繊維径の均一性を高めることが可能となる。
【0030】
ブッシング装置12の上記中間ターミナル14cの断面形状は、非円形状である。この構成によれば、上記中間ターミナル14cと同じ断面積であり、断面形状が円形状の中間ターミナルよりも、表面電力密度を小さくすることができる。すなわち、本実施形態の中間ターミナル14cでは、断面形状が円形状の中間ターミナルよりも外面の温度上昇を抑えることができる。これにより、中間ターミナル14cを構成する材料の揮発を抑えることができる。
【0031】
また、ブッシング装置12の上記中間ターミナル14cは、上記中間ターミナル14cと同じ断面積であり、断面形状が円形状の中間ターミナルよりも、表面積が大きい。このため、中間ターミナル14cの表面からの放熱を促進することができる。これによっても、中間ターミナル14cの材料の揮発を抑えることが可能となる。
【0032】
<試作例>
次に、中間ターミナルについて試作例を挙げて説明する。
試作例1の中間ターミナルの断面形状は、長方形状である。試作例2の中間ターミナルの断面形状は、円形状である。試作例1の中間ターミナルの断面積と試作例2の中間ターミナルの断面積は、同一である。試作例1,2の中間ターミナルは、いずれも白金製である。試作例1,2の中間ターミナルの寸法等の詳細を表1に示す。
【0033】
【表1】
表2には、試作例1,2の中間ターミナルの使用例を示している。表2に示すように、試作例1の中間ターミナルを、印加電流を800Aとする使用条件1で使用した場合、表面電力密度は、6.6W/cmとなる。一方、試作例2の中間ターミナルを、印加電流を800Aとする使用条件1で使用した場合、表面電力密度は、9.2W/cmとなる。
【0034】
また、試作例1の中間ターミナルを、印加電流を1000Aとする使用条件2で使用した場合、表面電力密度は、10.3W/cmとなる。一方、試作例2の中間ターミナルを、印加電流を1000Aとする使用条件2で使用した場合、表面電力密度は、14.4W/cmとなる。
【0035】
このように試作例1の中間ターミナルでは、試作例2の中間ターミナルよりも表面電力密度を低く抑えることができる。
【0036】
【表2】
<ガラスストランドの用途>
次に、ガラス繊維の製造方法で得られたガラスストランドGSの用途について説明する。
【0037】
ガラスストランドGSは、例えば、所定の長さに切断されたチョップドストランドとして利用することができる。また、ガラスストランドGSは、ミルドファイバ、ロービング、ヤーン、マット、クロス、テープ、又は組布等として利用することができる。ガラスストランドGSの用途としては、例えば、車両用途、電子材料用途、建材用途、土木用途、航空機関連用途、造船用途、物流用途、産業機械用途、及び日用品用途が挙げられる。
【0038】
<第1実施形態の作用及び効果>
次に、第1実施形態の作用及び効果について説明する。
(1-1)ブッシング装置12は、溶融ガラスMGを流出するノズル群Nを有するブッシング13と、ブッシング13を通電加熱するためのターミナル14とを備えている。ブッシング装置12のターミナル14は、ブッシング13の第1側部13aに接続される第1ターミナル14aと、ブッシング13の第1側部13aとは反対側の第2側部13bに接続される第2ターミナル14bとを含む。ターミナル14は、ブッシング13における第1側部13aと第2側部13bとの間の中間部13cに接続される中間ターミナル14cをさらに含む。中間ターミナル14cの断面形状は、非円形状である。
【0039】
この構成によれば、上記中間ターミナル14cと同じ断面積であり、断面形状が円形状の中間ターミナルよりも、表面電力密度を小さくすることができる。すなわち、上記中間ターミナル14cでは、断面形状が円形状の中間ターミナルよりも外面の温度上昇を抑えることができる。これにより、中間ターミナル14cを構成する材料の揮発を抑えることができる。従って、中間ターミナル14cの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることが可能となる。
【0040】
(1-2)ブッシング装置12の中間ターミナル14cの断面形状は、長方形状であることが好ましい。この場合、中間ターミナル14cの表面電力密度を比較的単純な形状でより小さくすることができる。
【0041】
(1-3)ブッシング装置12の中間ターミナル14cは、ブッシング13に接続され、ブッシング13の側方に延びる基端部P1と、基端部P1の先端から下方に延びる延出部P2とを有している。この場合、例えば、中間ターミナル14cをブッシング13の熱の影響を受け難い方向に延ばすことで、ブッシング13の熱の影響を受け難い箇所で導線を接続することが可能となる。これにより、例えば、中間ターミナル14cと導線との接続部分がブッシング13から受ける熱を抑えることで、接続部分の耐久性を高めることが可能となる。
【0042】
(1-4)ブッシング装置12の第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bの断面形状は、非円形状である。この場合、第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bを構成する材料の揮発も抑えることができる。従って、第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bの寿命を延ばすことで、ガラス繊維の生産性を高めることが可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
ブッシング装置12、及びガラス繊維の製造方法の第2実施形態について第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0044】
図3及び図4に示すように、第2実施形態のブッシング装置12は、ブッシング13の第1側部13a側から順に第1ノズル群N1と、第2ノズル群N2と、第3ノズル群N3とを有している。第2実施形態のガラス繊維の製造装置11では、第1ノズル群N1により成形されたガラスフィラメントGFから第1ガラスストランドGS1を得ることができる。また、第2実施形態のガラス繊維の製造装置11では、第2ノズル群N2により成形されたガラスフィラメントGFから第2ガラスストランドGS2を得ることができる。また、第2実施形態のガラス繊維の製造装置11では、第3ノズル群N3により成形されたガラスフィラメントGFから第3ガラスストランドGS3を得ることができる。
【0045】
第2実施形態の中間ターミナル14cは、第1ノズル群N1と第2ノズル群N2との間に沿った中間部13cに接続される中間ターミナル14cと、第2ノズル群N2と第3ノズル群N3との間に沿った中間部13cに接続される中間ターミナル14cとを含む。
【0046】
次に、第2実施形態の作用及び効果について説明する。
(2-1)ブッシング装置12は、複数の中間ターミナル14cを備えている。この構成によれば、複数の中間ターミナル14cを利用してブッシング13の中間部13cに流れる電流を調整することで、ブッシング13の中間部13cの発熱量をさらに精密に調整することができる。これにより、ブッシング13の温度調整の精度をより高めることができるため、例えば、ガラスフィラメントGFの繊維径の均一性をより高めることが可能となる。
【0047】
(2-2)中間ターミナル14cは、第1ノズル群N1と第2ノズル群N2との間に沿った中間部13cに接続されている。この場合、例えば、第1ノズル群N1に供給される溶融ガラスMGの温度と第2ノズル群N2に供給される溶融ガラスMGの温度との均一性を高めることができる。これにより、例えば、第1ノズル群N1から得られる第1ガラスストランドGS1の繊維径と第2ノズル群N2から得られる第2ガラスストランドGS2の繊維径との均一性を高めることが可能となる。本実施形態の中間ターミナル14cは、第2ノズル群N2と第3ノズル群N3との間に沿った中間部13cに接続される中間ターミナル14cをさらに含む。このため、第1ガラスストランドGS1の繊維径、第2ガラスストランドGS2の繊維径、及び第3ガラスストランドGS3の繊維径の均一性を高めることが可能となる。
【0048】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・第1実施形態のブッシング装置12は、複数の中間ターミナルを備えていてもよい。なお、複数の中間ターミナルの形状は、互いに同じであってもよいし、異なってもよい。
・第2実施形態のブッシング装置12における一対の中間ターミナル14cの形状は、互いに同じ形状であるが、一対の中間ターミナル14cの形状は、互いに異なる形状であってもよい。
【0050】
・第2実施形態のブッシング装置12において、中間ターミナル14cの数を単数又は3つ以上に変更してもよい。
・第2実施形態のブッシング装置12の第3ノズル群N3を省略してもよい。
【0051】
・第2実施形態のブッシング装置12を4つ以上のノズル群を備えるように変更してもよい。
・第2実施形態のブッシング装置12において、一方の中間ターミナル14cをブッシング本体17の正面に接続し、他方の中間ターミナル14cをブッシング本体17の背面に接続してもよい。また、第2実施形態のブッシング装置12において、一対の中間ターミナル14cをブッシング本体17の背面に接続してもよい。
【0052】
・第2実施形態のブッシング装置12において、例えば、中間ターミナル14cを第1ノズル群N1と第2ノズル群N2との間に沿った中間部13c以外の中間部13cに配置することもできる。
【0053】
・各実施形態のブッシング装置12において、中間ターミナル14cの断面形状は、長四角形状以外の多角形状であってもよい。中間ターミナル14cの断面形状としては、例えば、三角形状、正方形状、五角形状、六角形状等が挙げられる。また、中間ターミナル14cの断面形状は、例えば、星形状等の凹凸を有する形状であってもよい。このように中間ターミナル14cが凹凸を有する断面形状を有することで、表面電力密度をより小さくすることができる。
【0054】
・各実施形態のブッシング装置12における中間ターミナル14cの延出部P2を省略してもよい。
・各実施形態のブッシング装置12における中間ターミナル14cの延出部P2を例えば、上方に延びる延出部に変更することもできる。
【0055】
・各実施形態のブッシング装置12において、第1ターミナル14a及び第2ターミナル14bの少なくとも一方の断面形状を長四角形状以外の多角形状や円形状に変更することもできる。
【符号の説明】
【0056】
12…ブッシング装置
13…ブッシング
13a…第1側部
13b…第2側部
13c…中間部
14…ターミナル
14a…第1ターミナル
14b…第2ターミナル
14c…中間ターミナル
GF…ガラスフィラメント
GS…ガラスストランド
GS1…第1ガラスストランド
GS2…第2ガラスストランド
MG…溶融ガラス
N…ノズル群
N1…第1ノズル群
N2…第2ノズル群
P1…基端部
P2…延出部
図1
図2
図3
図4