(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046857
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】芝草刈機用の刈取装置
(51)【国際特許分類】
A01D 34/64 20060101AFI20230329BHJP
A01D 34/81 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
A01D34/64 B
A01D34/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155677
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】大内 和也
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA12
2B083BA18
2B083CA09
2B083CA13
2B083GA01
2B083HA46
2B083HA60
(57)【要約】
【課題】簡素で安価な構成で、刈刃カバー天板上に載った芝、草を効率よく刈刃カバー外方へ排出できるとともに、刈刃プーリに直接身体の一部(手、足)が触れることのない安全な芝草刈機の刈取装置を提供することを課題とする。
【解決手段】刈刃カバー1の天板2を上下挿通する刈刃軸ボス3aに枢支する刈刃軸3上端部に、ベルト駆動により略水平回転する刈刃プーリ4と、刈刃軸3下端部には刈刃カバー1内で略水平回転する刈刃5を設けた芝草刈機用の刈取装置において、刈刃プーリ4の水平面部6に複数の吸引穴7と、該水平面日部6から下方へ向け突出する複数枚の排塵羽根8を設け、側面視刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wを含む範囲、且つ、刈刃カバー1天板2から所定高さH位置に、刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wと略同幅、又は、上下幅Wよりも広幅のプーリガード9を、刈刃プーリ4外周縁4aに沿って設けた芝草刈機用の刈取装置の構成とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈刃カバー(1)の天板(2)を上下挿通する刈刃軸ボス(3a)に枢支する刈刃軸(3)上端部に、ベルト駆動により略水平回転する刈刃プーリ(4)と、刈刃軸(3)下端部には刈刃カバー(1)内で略水平回転する刈刃(5)を設けた芝草刈機用の刈取装置において、刈刃プーリ(4)の水平面部(6)に複数の吸引穴(7)と、該水平面部(6)から下方へ向け突出する複数枚の排塵羽根(8)を設け、側面視刈刃プーリ(4)と排塵羽根(8)との上下幅(W)を含む範囲、且つ、刈刃カバー(1)天板(2)から所定高さ(H)位置に、刈刃プーリ(4)と排塵羽根(8)との上下幅(W)と略同幅、又は、上下幅(W)よりも広幅のプーリガード(9)を、刈刃プーリ(4)外周縁(4a)に沿って設けたことを特徴とする芝草刈機用の刈取装置。
【請求項2】
刈刃カバー(1)天板(2)上側の刈刃軸ボス(3a)外周部に、末広がり形状の膨出部(10)を設けたことを特徴とする請求項1に記載の芝草刈機用の刈取装置。
【請求項3】
刈刃プーリ(4)のベルト巻回範囲に亘って、刈刃プーリ(4)外周縁(4a)に沿って接近するプーリガード(9)を設け、該プーリガード(9)がベルトストッパの機能を兼用していることを特徴とする請求項1又は2に記載の芝草刈機用の刈取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝草刈機の刈刃カバーの天板上に、刈った芝や草が載って停滞することを防止する排塵機能と、刈刃プーリ部の側方から身体の一部(手、足)を入れた際に、刈刃プーリの回転部に直接触れることがない安全機能を有する刈取装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、芝草刈機等の刈刃は、エンジン出力軸のプーリから刈刃プーリに巻回するVベルトによって回転駆動され、このVベルトを張緩して駆動を入り切り可能に構成されている。これらの芝草刈機の刈刃カバーの天板上面には刈った芝や草、塵埃等が載って停滞する不都合があった。特に車体中央部に操縦者が着座するシートを備え、シート下方の車体腹部に刈取装置を備えた乗用草刈機では、刈取装置の上方にシートやステップが配置されるので、刈刃カバー天板上に載った芝、草の掃除が困難であった。又、刈刃カバー天板上に載った芝、草等の掃除をしようとして、車体側方から手を入れた際に、刈刃プーリが回転中であった場合には、回転中の刈刃プーリに触れてしまい、怪我をする可能性があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡素で安価な構成で、刈刃カバー天板上に載った芝、草を効率よく刈刃カバー外方へ排出できるとともに、刈刃プーリに直接身体の一部(手、足)が触れることのない安全な芝草刈機の刈取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、刈刃カバー1の天板2を上下挿通する刈刃軸ボス3aに枢支する刈刃軸3上端部に、ベルト駆動により略水平回転する刈刃プーリ4と、刈刃軸3下端部には刈刃カバー1内で略水平回転する刈刃5を設けた芝草刈機用の刈取装置において、刈刃プーリ4の水平面部6に複数の吸引穴7と、該水平面日部6から下方へ向け突出する複数枚の排塵羽根8を設け、側面視刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wを含む範囲、且つ、刈刃カバー1天板2から所定高さH位置に、刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wと略同幅、又は、上下幅Wよりも広幅のプーリガード9を、刈刃プーリ4外周縁4aに沿って設けたことを特徴とする芝草刈機用の刈取装置の構成とする。
【0006】
又、刈刃カバー1天板2上側の刈刃軸ボス3a外周部に、末広がり形状の膨出部10を設けたことを特徴とする芝草刈機用の刈取装置の構成とする。
【0007】
又、刈刃プーリ4のベルト巻回範囲に亘って、刈刃プーリ4外周縁4aに沿って接近するプーリガード9を設け、該プーリガード9がベルトストッパの機能を兼用していることを特徴とする芝草刈機用の刈取装置の構成とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明は、刈刃カバー1の天板2を上下挿通する刈刃軸ボス3aに枢支する刈刃軸3上端部に、ベルト駆動により略水平回転する刈刃プーリ4と、刈刃軸3下端部には刈刃カバー1内で略水平回転する刈刃5を設けた芝草刈機用の刈取装置において、刈刃プーリ4の水平面部6に複数の吸引穴7と、該水平面日部6から下方へ向け突出する複数枚の排塵羽根8を設け、側面視刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wを含む範囲、且つ、刈刃カバー1天板2から所定高さH位置に、刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wと略同幅、又は、上下幅Wよりも広幅のプーリガード9を、刈刃プーリ4外周縁4aに沿って設けているので、刈刃プーリ4が回転すると刈刃プーリ1の吸引穴7から空気が吸引され、排塵羽根8の回転により風力が発生し、その排塵羽根8側方へ流れる風力をプーリガード9に当てて下方に方向修正し、刈刃カバー1天板2上に載った芝、草を刈刃カバー1外方へ効率良く排出させることができる。又、広幅のプーリガード9を設けているので、回転中の刈刃プーリ1に身体の一部が側方から直接触れ難くなるので安全性を向上できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、刈刃カバー1天板2上側の刈刃軸ボス3a外周部に、末広がり形状の膨出部10を設けているので、刈刃軸ボス3a近傍の周辺部の芝、草が末広がり形状の斜面に沿って外方へ排出され易く、弱い風力で効率良く芝、草排出が可能である。又、刈刃軸3を枢支する刈刃軸ボス3aを膨出部10に取着することにより、刈刃カバー1や刈刃軸ボス3aの剛性を高く維持できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、刈刃プーリ4のベルト巻回範囲に亘って、刈刃プーリ4外周縁4aに沿って接近するプーリガード9を設け、該プーリガード9がベルトストッパの機能を兼用しているので、別途、ベルトストッパを設ける必要がなく、刈刃カバー1天板2上に載った芝、草を刈刃カバー1外方へ効率良く排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】乗用草刈機の刈刃駆動構成を示す全体平面図。
【
図5】刈刃プーリの平面図および本発明の要部を示す断正面図。
【
図6】排塵羽根の別実施例を示す平面図および断側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を、乗用草刈機へ実施する場合の形態について説明する。車体14中央部に操縦者が着座するシート15を設け、シート15下側腹部には昇降自在の刈取装置Kを備え、シート15前方には、ハンドルポスト16や前輪17,17を操向するハンドル18を設けてある。シート15からハンドルポスト16の基部の間にはステップ19を形成し、該ハンドルポスト16には、原動機20始動用のキースイッチ21や手動操作用のアクセルレバー、走行チェンジレバー、チョークレバー、アワーメータ(図示せず)等を設けている。シート15後方には原動機20を設け、この原動機20の動力を刈取装置Kに伝動し刈刃5を回転させて草を刈取ることができる。原動機20の動力は、原動機20下部に設けた走行用のHST(油圧無段変速装置)22にも伝動され、ミッションケース23を介して後輪24,24を駆動している。原動機20は下方に向け出力軸20aを突出し、出力軸20aには刈取装置KとHST22を駆動するための刈刃Vベルト25、及び走行Vベルト26を巻回する上下2段のエンジンプーリ27を取着している。走行Vベルト26は、エンジンプーリ27の上段側とミッションケース23上側に設けたミッションプーリ23pとの間に巻回し伝動している。又、刈刃Vベルト25は、エンジンプーリ27の上段側と刈取装置Kの刈刃軸3上端部に取着の刈刃プーリ4との間に巻回し、テンションプーリ28により刈刃Vベルト25を張ったり緩めたりすることで、刈刃プーリ4への伝動を入、切操作することができるクラッチ機構を設けてある。刈刃軸3の下端部には刈刃ブレード29を含む刈刃5を枢支してあり、Bは、前記クラッチ機構により刈刃プーリ4への伝動を切った際に、刈刃5の惰性回転を短時間で停止させるためのブレーキ機構である。
【0013】
刈取装置Kは、車体14に吊着する左右一対の前リンクアーム30L,30Rと後リンクアーム31L,31Rに取着し、前リンクアーム30L,30R及び後リンクアーム31L,31R各々の上部前側を車体14側に、下部後側を刈取装置Kの刈刃カバー1側に枢支し、操縦者が昇降レバー32を上下操作することで、昇降リンク機構33を介して刈取装置Kを略水平状態で昇降させて草の刈高さを調整することができる。刈取装置Kの前端部には、刈刃カバー1の左右幅に亘って外周カバー34を設け、刈取装置Kの後端中央部にも弾性カバー50を設けている。
【0014】
刈刃カバー1の天板2中央部には、天板2を上下貫通して刈刃軸ボス3aが固着してあり、この刈刃軸ボス3a内に刈刃軸3を挿通枢支してある。刈刃カバー1天板2上側の、刈刃軸3を挿通させた刈刃軸ボス3a外周部には、末広がり形状の膨出部10を設け、該膨出部10上方の刈刃軸3上端部に略水平回転する刈刃プーリ4を設けてある。刈刃軸3の下端部は刈刃軸ボス3aよりも下方に突出してあり、この突出部に刈刃ベース38を嵌合し、刈刃ブレード29と共にナット40で刈刃軸3に螺合し、刈刃ブレード29と刈刃ベース38とをボルト41で取着して、刈刃カバー1内で刈刃ブレード29を含む刈刃5が略水平回転する構成である。39は刈刃軸ボス3aの強度を維持する補強板であり、42は放水皿で、この放水皿42内に上方から給水(図示せず)して刈刃5を回転させることにより、遠心力で水を刈刃カバー1天板2の下面に勢い良く放出し、付着する草や土砂を洗浄することができる洗浄装置である。本実施例の刈刃5は、刈刃ブレード29の両先端部に回動自在に取着した大径の刈刃構成としているが、刈刃ブレード29の両先端部に刈刃部を形成した小径の刈刃構成としても良い。
【0015】
刈刃プーリ4の水平面部6には下方へ向け突設する複数枚の排塵羽根8と複数の吸引穴7を設けてある。側面視刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wを含む範囲、且つ、刈刃カバー1天板2から所定高さHの位置には、刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wと略同幅、又は、上下幅Wよりも広幅のプーリガード9を刈刃プーリ1外周縁4aに沿って設けている。
図3に示すプーリガード9は、その内側に別途天板2、又は、膨出部10から立設するベルトストッパ37を設けた構成である。
図4に示すのは、刈刃プーリ4外周縁4aに沿うプーリガード9を、更に外周縁4aに接近させて、ベルトストッパの役割も兼用させた別実施例の構成である。
図5に示す通り、刈刃Vベルト25の伝動により刈刃プーリ4が回転すると、排塵羽根8の作用により刈刃プーリ4上方周辺の空気を吸引穴7から吸引し、吸引した空気を刈刃プーリ4外周及び下方へ向け排出するが、プーリガード9がない状態では、排塵羽根8側方の外周方向へ排出される風が、刈刃カバー1の天板2上に載る芝草に作用しないまま排出され無駄になるが、刈刃プーリ4と排塵羽根8との上下幅Wと略同幅、又は、上下幅Wよりも広幅のプーリガード9を設けることにより、排塵羽根8側方の外周方向へ排出される風がプーリガード9の内側に当たり風の流れが下方向へ変えられて、天板2上に載る芝草を効率良く外方へ排出させることができる。又、刈刃カバー1天板2上側の刈刃軸ボス3a外周部に、末広がり形状の膨出部10を設けているので、刈刃軸ボス3a近傍の周辺部の芝、草が末広がり形状の傾斜上面に沿って外方へ排出され易く、弱い風力で効率良く芝、草排出が可能である。又、刈刃軸3を枢支する刈刃軸ボス3aを膨出部10に取着することにより、天板2と膨出部10との両方で刈刃軸ボス3aを支持するので、刈刃カバー1や刈刃軸ボス3aの剛性を高く維持できる。更に、広幅のプーリガード9を設けているので、回転中の刈刃プーリ1に身体の一部が側方から直接触れ難くなり安全性を向上できる。
【0016】
図6に示すのは、排塵羽根8の取着方法の異なる別実施例であり、
図6(a)は、刈刃プーリ4の回転方向に対し、排塵羽根8の刈刃軸3に近い側よりも遠い側の位相を遅らせた角度で取着したものである。この構成により、排塵羽根8側方の外周方向への風力を大きくすることができる。
図6(b)は、
図6(a)と同位置に排塵羽根8を取着し、更に、刈刃プーリ4回転方向に対して排塵羽根8を後下方向きに傾斜させて取着すると共に、吸引穴7の数量と大きさを異ならせた構成で、排塵羽根8側方外周方向への風力のみではなく、下方への風力も大きくすることができる。これら排塵羽根8の取着方法や枚数、吸引穴7形状や数は実施例に限定するものではなく、様々な形状、大きさ、数量を変更したものであっても基本的な効力は同様である。又、本発明の刈取装置Kの構成は、乗用草刈機に限定するものではなく、歩行型の草刈機や乗用、又は、歩行型の芝刈機等においても実施可能であり、刈刃5を複数個設けた構成においても実施可能である。又、刈取装置Kの配置は車体14中央腹部に限定するものではなく、車体14前側や後側に配置させても良い。
【符号の説明】
【0017】
1 刈刃カバー
2 天板
3 刈刃軸
3a 刈刃軸ボス
4 刈刃プーリ
4a 外周縁
5 刈刃
6 水平面部
7 吸引穴
8 排塵羽根
9 プーリガード
10 膨出部
H 所定高さ
W 上下幅