(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046861
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】車両用ドア支持装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/622 20150101AFI20230329BHJP
B60J 5/10 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
E05F15/622
B60J5/10 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155690
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】山形 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】朝子 雅弘
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA02
2E052DB02
2E052EA01
2E052EB01
2E052EC01
2E052GB11
2E052GB16
2E052GC02
2E052GC06
2E052GD08
(57)【要約】
【課題】ブレーキ部材の安定性と耐久性とが向上した車両用ドア支持装置を提供する。
【解決手段】車両用ドア支持装置10は、車体2に接続される第1接続端20aと、ドア3に接続される第2接続端25aとをそれぞれ有し、車体2に対してドア3を開位置に保持する第1支持部材15Aと第2支持部材15Bとを備える。これらはそれぞれ、第1接続端20aを有する筒状の収容部21と、収容部21の端部21aとは反対側に連なる筒状のカバー部22と、第2接続端25aを構成する端部21bを有し、この端部21bとは反対側がカバー部22内に収容され、カバー部22に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材25と、可動部材25内に配置されたスピンドル34と、カバー部22に対する可動部材25の相対移動によってスピンドル34を回転させる変換機構37と、スピンドル34との軸方向の相対位置が固定されるように配置され、スピンドル34に対して回転抵抗を与えるブレーキ部材50Aとを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に接続される第1接続端と、ドアに接続される第2接続端とをそれぞれ有し、前記車体に対して前記ドアを開位置に保持する第1支持部材と第2支持部材とを備え、
前記第1支持部材と前記第2支持部材とはそれぞれ、
前記第1接続端と前記第2接続端とのうちの一方を構成する端部を有する筒状の収容部と、
前記収容部の前記端部とは反対側に連なる筒状のカバー部と、
前記第1接続端と前記第2接続端とのうちの他方を構成する端部を有し、この端部とは反対側が前記カバー部内に収容され、前記カバー部に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材と、
前記可動部材内に配置されたスピンドルと、
前記カバー部に対する前記可動部材の相対移動によって前記スピンドルを回転させる変換機構と、
前記スピンドルとの前記軸方向の相対位置が固定されるように配置され、前記スピンドルに対して回転抵抗を与えるブレーキ部材と
を備える、車両用ドア支持装置。
【請求項2】
前記第1支持部材と前記第2支持部材との少なくとも一方は、前記スピンドルに接続され、前記スピンドルを回転させる電動モータを備える、請求項1に記載の車両用ドア支持装置。
【請求項3】
前記第1支持部材と前記第2支持部材との少なくとも一方は、前記可動部材内に配置され、前記カバー部に対して前記可動部材を進出する向きへ付勢するコイルスプリングを備える、請求項1又は2に記載の車両用ドア支持装置。
【請求項4】
前記ブレーキ部材は、前記収容部に固定して配置されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ドア支持装置。
【請求項5】
前記ブレーキ部材は、前記カバー部に固定して配置されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ドア支持装置。
【請求項6】
前記ブレーキ部材は、
金属から成り、前記スピンドルを取り囲む筒状の本体部と、
前記本体部の内面に設けられた樹脂層と
を備え、
前記本体部には、前記本体部の中心軸に向かって窪み、前記樹脂層を介して前記スピンドルに接する接触部が設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用ドア支持装置。
【請求項7】
前記接触部は、前記中心軸の周方向に沿って複数設けられている、請求項6に記載の車両用ドア支持装置。
【請求項8】
車体に接続される第1接続端と、ドアに接続される第2接続端とを有し、前記車体に対して前記ドアを開位置に保持する支持部材を備え、
前記支持部材は、
前記第1接続端と前記第2接続端とのうちの一方を構成する端部を有する筒状の収容部と、
前記収容部の前記端部とは反対側に連なる筒状のカバー部と、
前記第1接続端と前記第2接続端とのうちの他方を構成する端部を有し、この端部とは反対側が前記カバー部内に収容され、前記カバー部に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材と、
前記可動部材内に配置されたスピンドルと、
前記カバー部に対する前記可動部材の相対移動によって前記スピンドルを回転させる変換機構と、
前記スピンドルとの前記軸方向の相対位置が固定されるように配置され、前記スピンドルに対して回転抵抗を与えるブレーキ部材と
を備える、車両用ドア支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには、軸方向に伸縮駆動することによってドアを開閉動作させる車両用ドア支持装置が設けられている。車両用ドア支持装置には、ドアを開状態に維持するため、又は、ドアの急激な開閉を防止するため、ブレーキ機構が設けられている場合がある。
【0003】
特許文献1に記載の車両用ドア支持装置は、軸方向に延びる固定軸と、固定軸を覆うように配置され、固定軸に対して伸縮する可動部材とを備える。固定軸と可動部材との間には、可動部材の伸縮に対して抵抗を与える弾性部材(ブレーキ部材)が設けられている。具体的には、弾性部材は固定軸の軸方向の端部に、可動部材の内面と接するように固定されている。可動部材が伸縮した際、弾性部材と可動部材の内面との間に摩擦力が生じ、可動部材の直動方向の摺動に抵抗が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用ドア支持装置では、可動部材の直動方向の摺動に対して抵抗を与えているため、可動部材が伸縮した際、弾性部材は、可動部材の内面における軸方向の略全長にわたって接する。すなわち、弾性部材は可動部材の広い範囲に対して接する。そのため、可動部材の伸縮によって弾性部材の位置がずれるおそれがあり、また、弾性部材が摩耗し易い。換言すると、弾性部材の安定性と耐久性とが悪い。
【0006】
本発明は、ブレーキ部材の安定性と耐久性とが向上した車両用ドア支持装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体に接続される第1接続端と、ドアに接続される第2接続端とをそれぞれ有し、前記車体に対して前記ドアを開位置に保持する第1支持部材と第2支持部材とを備え、前記第1支持部材と前記第2支持部材とはそれぞれ、前記第1接続端と前記第2接続端とのうちの一方を構成する端部を有する筒状の収容部と、前記収容部の前記端部とは反対側に連なる筒状のカバー部と、前記第1接続端と前記第2接続端とのうちの他方を構成する端部を有し、この端部とは反対側が前記カバー部内に収容され、前記カバー部に対して軸方向に相対的に移動可能な筒状の可動部材と、前記可動部材内に配置されたスピンドルと、前記カバー部に対する前記可動部材の相対移動によって前記スピンドルを回転させる変換機構と、前記スピンドルとの前記軸方向の相対位置が固定されるように配置され、前記スピンドルに対して回転抵抗を与えるブレーキ部材とを備える、車両用ドア支持装置を提供する。
【0008】
本発明によれば、ドアの開閉に伴って可動部材がカバー部に対して相対移動することによって、スピンドルが回転する。その際、ブレーキ部材を介して、スピンドルの回転に抵抗が与えられる。そのため、ドアの開閉速度が緩やかになり、ドアの急激な開閉が防止され得る。また、ブレーキ部材は、スピンドルとの軸方向の相対位置が固定されて配置されている。換言すると、スピンドルの直動に対して抵抗を与える場合と異なり、スピンドルに対するブレーキ部材の位置が、スピンドルの軸方向に沿って変位しない。そのため、スピンドルとブレーキ部材との相対位置が変位する場合に比べ、ブレーキ部材の位置のずれや摩耗が抑制され、ブレーキ部材の安定性と耐久性とが向上し得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブレーキ部材の安定性と耐久性とが向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の車両用ドア支持装置を用いた車両を示す斜視図。
【
図9】第1実施形態の変形例を示す
図2の線IX-IXにおける断面図。
【
図10】第1実施形態の変形例を示す
図9と同様の断面図。
【
図11】第2実施形態の従動式の支持部材の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るドア支持装置(車両用ドア支持装置)10を車両1に用いた状態を示す。
図1を参照すると、ドア支持装置10は、円筒状の支持部材15A,15Bを備え、これらが車体2とバックドア(ドア)3との間に配置されている。
図1において車両1の左側に位置する支持部材(第1支持部材)15Aは、バックドア3の開閉に従って伸縮する従動式で、
図1において車両1の右側に位置する支持部材(第2支持部材)15Bは、電動で伸縮する電動式である。支持部材15Aが電動式で、支持部材15Bが従動式であってもよい。
【0012】
図2を併せて参照すると、支持部材15Aは、軸L1と同軸上に、第1ハウジング20と第2ハウジング25とを備える。第1ハウジング20は、車体2に支持部材15Aの基端として接続される接続端(第1接続端)20aを有する。第2ハウジング25は、バックドア3に支持部材15Aの先端として接続される接続端(第2接続端)25aを有する。第1ハウジング20をバックドア3に接続し、第2ハウジング25を車体2に接続してもよい。第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が進出することで、車体2に対してバックドア3が開位置に保持される。第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が後退することで、車体2に対してバックドア3を閉じることができる。
【0013】
図2を参照すると、第1ハウジング20は、円筒状の収容部21と、収容部21に連なる円筒状のカバー部22とを備える。
【0014】
収容部21の内部には、後述の電動モータ70(
図3参照)を配置可能なモータ用空間21cが設けられている。本実施形態では、支持部材15Aのモータ用空間21cには、後述の電動モータ70(
図3参照)が配置されていない。収容部21は端部21aと、端部21aとは反対側の端部21bとを備え、端部21aが接続端20aである。接続端20aは開口しており軸端部材23Aによって閉塞されている。端部21bとモータ用空間21cとの間には、後述のブレーキ部材50Aが配置される円柱状のブレーキ部材用空間21dが設けられている。モータ用空間21cとブレーキ部材用空間21dとは、貫通孔21eが設けられた保持壁21dで隔たれている。
【0015】
カバー部22は、収容部21の端部21bに螺合して連設されている。本実施形態では、カバー部22の外径は、収容部21の外径と同一である。カバー部22の内部には、第2ハウジング25が後退するための第2ハウジング用空間22aと、後述のスピンドルナット38及びプッシュロッド39が後退するためのスピンドル用空間22cとが設けられている。
【0016】
第2ハウジング25は、カバー部22内に同軸に配置され、カバー部22に対して軸L1方向に相対的に移動可能な円筒状の可動部材である。第2ハウジング25の外径は、第1ハウジング20の内径よりも小さく、第1ハウジング20内に収容される。第2ハウジング25は、接続端25aを備える。接続端25aは開口しており、軸端部材26によって閉塞されている。接続端25aを含む軸端部材26は、第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が基端側に後退した状態でも、第1ハウジング20(カバー部22)の先端部20bから突出している。
【0017】
支持部材15Aは、伸縮機構30を備える。
【0018】
伸縮機構30は、第1ハウジング20に対して第2ハウジング25を進出させるコイルスプリング32と、第1ハウジング20に対する第2ハウジング25の移動(伸縮)をガイドするスピンドル34及び変換機構37とを備える。
【0019】
コイルスプリング32は、第1ハウジング20(カバー部22)に対して第2ハウジング25を先端側に進出する向きへ弾性的に付勢する。コイルスプリング32は、第2ハウジング25内と第2ハウジング用空間22aとに収容され、第2ハウジング25と同軸に配置されている。コイルスプリング32は、一端が第1ハウジング20に当接し、他端が第2ハウジング25に当接している。
【0020】
スピンドル34は、軸L1に沿って延びるように、第2ハウジング25とカバー部22との内部に軸L1と同軸に配置されている。スピンドル34の基端部34aは、カバー部22から突出し、収容部21に挿入されている。
【0021】
本実施形態では、スピンドル34は、円柱状で、螺旋部34bと支持部34cとを有する。螺旋部34bには、螺旋状に溝が設けられている。支持部34cは、螺旋部34bより基端部34a側に配置され、螺旋状の溝を有さない。スピンドル34は、支持部34cを介して、カバー部22内に配置された軸受35に回転可能に支持されている。また、スピンドル34cの基端部34aは、貫通孔21eを介して、モータ用空間21cに挿入されている。支持部34cには、後述のブレーキ部材50Aがカバー部22内で回転抵抗を与えるように配置されている。
【0022】
変換機構37は、カバー部22に対する第2ハウジング25の相対移動によって、軸L1を中心としてスピンドル34を回転させる。換言すると、変換機構37は、第2ハウジング25のカバー部22に対する相対的な直線運動をスピンドル34の回転運動に変換する。変換機構37は、スピンドルナット38、プッシュロッド39、及びガイド管40を備える。これらは、第2ハウジング25の径方向において、コイルスプリング32とスピンドル34との間に配置されている。具体的には、コイルスプリング32の内側にガイド管40が配置され、ガイド管40の内側にプッシュロッド39が収容され、プッシュロッド39の一端にスピンドルナット38が固定されている。
【0023】
スピンドルナット38及びプッシュロッド39と、ガイド管40及び第1ハウジング20とは相対的に回転しないように係合されている。そのため、バックドア3の開閉時、スピンドルナット38のガイド管40に対する相対的な直線運動は、スピンドル34の回転運動に変換される。つまり、バックドア3の開閉に伴い、スピンドル34は軸L1方向の位置が固定された状態で回転する。
【0024】
スピンドル34の支持部34cには、スピンドル34を取り囲むようにブレーキ部材50Aが軸L1と同軸に配置されている。具体的には、ブレーキ部材50Aは、ブレーキ部材用空間21dに配置され、軸受35とブレーキ部材用空間21dとの間に配置された保持部材46によって軸L1方向の位置が固定されている。換言すると、ブレーキ部材50Aの一端が保持壁21dに当接し、ブレーキ部材50Aの他端が保持部材46に当接することによって、ブレーキ部材50Aの軸L1方向の位置が固定されている。つまり、ブレーキ部材50Aは、スピンドル34に対しての軸L1方向の相対位置が固定されるように配置されている。保持部材46は、軸受35を介して収容部21とカバー部22とによって挟持されることで固定される。また、詳細は後述するが、ブレーキ部材50Aは円筒状で、軸L1方向にそってスリット55e(
図5参照)を備える。ブレーキ部材50Aは、スピンドル34の支持部34cによって径方向外側に向かって収容部21に圧接されることで、収容部21に回転不可能に固定されている。具体的には、ブレーキ部材50Aの外径は、ブレーキ部材用空間21dの径より小さく、ブレーキ部材50Aにスピンドル34の支持部34cが挿入されることによって、ブレーキ部材50Aは径方向に拡張し、収容部21に圧接される。
【0025】
図4を参照すると、ブレーキ部材50Aは、本体部55と樹脂層60とを備える。
【0026】
図5から
図7を併せて参照すると、本体部55は、金属(例えばステンレス)から成り、中心軸L2を中心とする円筒状である。また、本体部55には、中心軸L2の周方向に沿って略等角度に4つの接触部55a,55b,55c,55dが設けられている。接触部55a~55dは、中心軸L2に向かって窪むように設けられている。また、本体部55は、スリット55eと開口55f,55g,55hとを備える。スリット55eは、中心軸L2に沿って、かつ、本体部55の全長にわたって、接触部55a,55bの間に幅hで設けられている。開口55f~55hは、中心軸L2の周方向に沿って幅hで設けられている。すなわち、スリット55eと開口55f~55hとは、同じ幅hで設けられている。開口55fは、接触部55a,55bの間に設けられている。開口55gは、接触部55b,55cの間に設けられている。開口55hは、接触部55c,55dの間に設けられている。本実施形態の支持部材15Aでは、中心軸L2に沿って2組の接触部55a~55dが設けられ、2組の接触部55a~55dにわたって1組の開口55f~55hが設けられている。2組の開口55f~55hが中心軸L2に沿って設けられていてもよい。つまり、1組の接触部55a~55dに対して1組の開口55f~55hが設けられていてもよい。また、本体部55は中心軸L2に対して垂直に分割されていてもよい。つまり、1組の接触部55a~55d及び開口55f~55hをそれぞれ備える2つのブレーキ部材を中心軸L2に沿って直列に配置してもよい。若しくは、本体部55は中心軸L2に沿って分割されていてもよい。つまり、例えば開口55gの代わりにスリット55eをさらに備えてもよい。
【0027】
樹脂層60は、樹脂(例えばフッ素樹脂)から成り、本体部55の内面全体に設けられている。樹脂層60は、接触部55a~55dの内面にのみ設けられていてもよい。
【0028】
ブレーキ部材50Aは、接触部55a~55dに設けられている樹脂層60を介してスピンドル34の支持部34cに接する。そのため、ブレーキ部材50Aは、接触部55a~55dに設けられている樹脂層60を介して、スピンドル34に対して回転抵抗を与える。換言すると、ブレーキ部材50Aによって、スピンドル34の回転が抑制される。
【0029】
図8を参照すると、開口55f~55hは、中心軸L2に沿って幅が滑らかに部分的に拡大する拡大部55jを有してもよい。好ましくは、拡大部55jは、中心軸L2方向において接触部55a~55dと位置合わせされている。
【0030】
ブレーキ部材50Aの内面には、樹脂から成る樹脂層60の代わりに、ゴム等の弾性体が配置されてもよい。また、本体部55は、ゴム等の弾性体で構成されていてもよい。この場合、ブレーキ部材50Aは、樹脂層60を備えず、本体部55のみを備え、弾性体から成る本体部55が直接スピンドル34の支持部34cに接し、スピンドル34の回転に抵抗を与える。
【0031】
また、ブレーキ部材50Aは、板バネであってもよい。この場合、ブレーキ部材用空間21dに板バネが固定され、その固定された部分に対して弾性変形する部分がスピンドル34の支持部34cと接することによって、板バネはスピンドル34の回転に抵抗を与える。
【0032】
図3を参照して、支持部材15Bの構成を説明する。支持部材15Bは、電動モータ70とギア機構44とを備える。また、接続端20aは、軸端部材23Aとは異なる軸端部材23Bによって閉塞されている。これら以外の構成については支持部材15Aと同様であるため、説明を省略する場合がある。
【0033】
前述の通り、支持部材15Bは、電動モータ70の駆動によって伸縮が可能な電動式である。そのため、本実施形態では、バックドア3は自動で開閉され得る。
【0034】
電動モータ70は、正転及び逆転が可能な駆動手段であり、車両1のECU(Electronic Control Unit)に電気的に接続されている。電動モータ70は、モータ用空間21cに配置され、スピンドル34に向かって突出した出力軸70aを備える。出力軸70aは、ギア機構44を介してスピンドル34の基端部34aに接続されている。
【0035】
ギア機構44は、複数のギア45A,45B,45C,45Dを備える。出力軸70aが回転することで、ギア45A~45Dがそれぞれ回転し、スピンドル34が回転する。スピンドル34の回転運動は、変換機構37を介して、スピンドルナット38のガイド管40に対する相対的な直線運動に変換される。これにより、スピンドルナット38及びプッシュロッド39が軸方向に移動する。また、プッシュロッド39の移動によって、第2ハウジング25が第1ハウジング20に対して相対的に移動する。
【0036】
支持部材15Bでは、収容部21は、ブレーキ部材用空間21d(
図2参照)を備えておらず、カバー部22が、スピンドル用空間22cと軸受35との間に円柱状のブレーキ部材用空間22bを備える。スピンドル用空間22cとブレーキ部材用空間22bとは、貫通孔22dが設けられた保持壁22eで隔たれている。貫通孔22dには、スピンドル34の支持部34cが挿入されている。
【0037】
ブレーキ部材用空間22bには、ブレーキ部材50Bが配置され、カバー部22に固定されている。具体的には、ブレーキ部材用空間22bに配置されたブレーキ部材50Bは、軸受35とブレーキ部材用空間22bとの間に配置された保持部材47によって軸L1方向の位置が固定されている。換言すると、ブレーキ部材50Bの一端が保持壁22eに当接し、ブレーキ部材50Bの他端が保持部材47に当接することによって、ブレーキ部材50Bの軸L1方向の位置が固定されている。保持部材47は、軸受35を介して収容部21とカバー部22とによって挟持されることで固定される。ブレーキ部材50Bの構成はブレーキ部材50A(
図4参照)の構成と同様であるため、詳細な図示は省略するが、ブレーキ部材50Bは、1組の接触部55a~55dと開口55f~55hとを備える。また、ブレーキ部材50Bは、ブレーキ部材50Aと同様に、スピンドル34の支持部34cによって径方向外側に向かってカバー部22に圧接されることで、カバー部22に回転不可能に固定されている。
【0038】
以下、本実施形態における支持部材15A,15Bのバックドア3の開閉時の動作について説明する。
【0039】
車体2に対してバックドア3が閉じられている状態では、第1ハウジング20に対して第2ハウジング25が後退している。この状態では、コイルスプリング32は圧縮され、スピンドルナット38はスピンドル34の基端部34a付近に位置している。
【0040】
バックドア3を開くように開操作すると、支持部材15Bの電動モータ70がECUの指令によって開駆動され、正転する。電動モータ70が正転すると、変換機構37を介してスピンドル34が回転し、カバー部22に対して第2ハウジング25が進出する。この際、コイルスプリング32の弾性力は、第2ハウジング25を進出させる方向に作用し、バックドア3の重量は、第2ハウジング25を後退させる方向に作用する。また、ブレーキ部材50A,50Bの摩擦力は、第2ハウジング25の進出を抑制するように作用する。つまり、電動モータ70の正転方向の駆動力とコイルスプリング32の弾性力とを合わせた力が、バックドア3の重量とブレーキ部材50A,50Bの摩擦力とを合わせた力より大きくなることで、第2ハウジング25はカバー部22に対して進出する。そして、車体2に対してバックドア3が開位置まで回転すると、コイルスプリング32の弾性力、ギア45A~45Dの摩擦力、電動モータ70のコギングトルク、及びブレーキ部材50A,50Bの摩擦力によってバックドア3が保持される。
【0041】
バックドア3を閉じるように閉操作すると、支持部材15Bの電動モータ70がECUの指令によって閉駆動され、逆転する。電動モータ70が逆転すると、変換機構37を介してスピンドル34が回転し、カバー部22に対して第2ハウジング25が後退する。この際、コイルスプリング32の弾性力は、第2ハウジング25を進出させる方向に作用し、バックドア3の重量は、第2ハウジング25を後退させる方向に作用する。また、ブレーキ部材50A,50Bの摩擦力は、第2ハウジング25の後退を抑制するように作用する。つまり、電動モータ70の逆転方向の駆動力とバックドア3の重量とを合わせた力が、コイルスプリング32の弾性力とブレーキ部材50A,50Bの摩擦力とを合わせた力より大きくなることで、第2ハウジング25はカバー部22に対して後退する。
【0042】
バックドア3が開く場合と閉じる場合との両方において、ブレーキ部材50A,50Bは、バックドア3の動きを抑制するように作用する。そのため、仮に電動モータ70が故障し、バックドア3に作用する力のバランスが崩れた場合であっても、ブレーキ部材50A,50Bがバックドア3の動きを抑制し、バックドア3の急激な開閉を防止する。
【0043】
本実施形態によれば、バックドア3の開閉に伴って第2ハウジング25がカバー部22に対して相対移動することによって、スピンドル34が回転する。その際、ブレーキ部材50A,50Bを介して、スピンドル34の回転に抵抗が与えられる。そのため、バックドア3の開閉速度が緩やかになり、バックドア3の急激な開閉が防止され得る。また、ブレーキ部材50A,50Bは、スピンドル34との軸L1方向の相対位置が固定されて配置されている。換言すると、スピンドル34の直動に対して抵抗を与える場合と異なり、スピンドル34に対するブレーキ部材50A,50Bの位置が、スピンドル34の軸L1方向に沿って変位しない。そのため、スピンドル34とブレーキ部材50A,50Bとの相対位置が変位する場合に比べ、ブレーキ部材50A,50Bの位置のずれや摩耗が抑制され、ブレーキ部材50A,50Bの安定性と耐久性とが向上し得る。
【0044】
コイルスプリング32は、バックドア3の開閉時に、バックドア3の重量の一部又は全部を支えるように作用する。そのため、バックドア3を開閉する際に必要な力が軽減され得る。従って、バックドア3を容易に開閉できる。本実施形態では、電動モータ70によってバックドア3が開閉される。そのため、コイルスプリング32が設けられていることで、電動モータ70の出力を低減できる。
【0045】
また、電動モータ70が設けられているため、バックドア3の開閉が自動で行われ得る。従って、バックドア3を容易に開閉できる。
【0046】
さらに、従動式の支持部材15Aと電動式の支持部材15Bとの基本構成部品は共通しているため、異なる部品を用いる場合と比較して、製造コストを低減できる。また、バックドア3を開閉制御する際のバランス調整が容易である。
【0047】
支持部材15Aでは、ブレーキ部材50Aは、ブレーキ部材用空間21bに配置されている。支持部材15Aのモータ用空間21cには、電動モータ70が配置されていないため、ブレーキ部材50Aの長さは任意に設定され得る。そのため、ブレーキ部材50Aがスピンドル34に与える摩擦力を任意に設定できる。
【0048】
また、ブレーキ部材50A,50Bは、樹脂層60を介してスピンドル34に抵抗を与えている。そのため、例えばゴム等の弾性体を介してスピンドル34に抵抗を与える場合と比較して、耐久性が向上し得る。
【0049】
さらに、ブレーキ部材50A,50Bには、複数の接触部55a~55dが、中心軸L2の周方向に沿って設けられている。そのため、スピンドル34に対する摩擦力を向上することができる。また、接触部55a~55dが設けられているため、本体部55の内面全体でスピンドル34を囲む場合と比較して、スピンドル34をブレーキ部材50A,50Bに挿入し易く、また、摩擦力を任意に設定し易い。
【0050】
なお、ドア支持装置10は、電動式の支持部材15Bの代わりに従動式の支持部材15Aを備えてもよい。すなわち、ドア支持装置10は、2組の従動式の支持部材15Aを備えてもよい。この場合、バックドア3の開閉は手動で行われることになるが、製造コストが低減され得る。また、支持部材15A,15Bが同じ構成であるため、バックドア3の荷重を均等に支持するためのバランス調整を容易に行える。
【0051】
また、ドア支持装置10は、従動式の支持部材15Aの代わりに電動式の支持部材15Bを備えてもよい。すなわち、ドア支持装置10は、2組の電動式の支持部材15Bを備えてもよい。この場合、支持部材15A,15Bが同じ構成であるため、バックドア3の荷重を均等に支持するためのバランス調整を容易に行える。
【0052】
なお、スピンドル34の支持部34cと接触部55a~55dとの間にグリースを塗布してもよい。これにより、ブレーキ部材50Aの使用劣化や温度による摩擦抵抗の変化を防止でき、安定した回転抵抗を得ることができる。
【0053】
図9を参照すると、変形例として、ブレーキ部材50Aは、スリット55eを臨むように径方向外側に向かって突出したフランジ55iを備えてもよい。この場合、収容部21には、フランジ55iに位置合わせされ、軸L1(
図2参照)方向に延びる溝部21gが設けられている。フランジ55iを溝部21gに嵌合することで、ブレーキ部材50Aの中心軸L2周りの姿勢を保持し、ブレーキ部材50Aがスピンドル34と共に回転することを確実に防止できる。
【0054】
図10を参照すると、さらなる変形例として、収容部21に凸部21hを設けてもよい。凸部21hは、ブレーキ部材用空間21dに向かって凸状となっている。凸部21hをスリット55eに嵌合することで、ブレーキ部材50Aの中心軸L2周りの姿勢を保持し、ブレーキ部材50Aがスピンドル34と共に回転することを確実に防止できる。
(第2実施形態)
図11を参照すると、第2実施形態に係るドア支持装置10の構成は、以下の点で第1実施形態と異なる。第2実施形態のその他の構成は第1実施形態と同様であり、第1実施形態と同一ないし同様の要素には同一の符号を付している。
【0055】
第2実施形態では、ドア支持装置10は、支持部材15Aの代わりに支持部材15Cを備える。支持部材15Cは、支持部材15Aの構成に加え、ブレーキ部材50Bを備える。
【0056】
支持部材15Cでは、カバー部22は、第2ハウジング用空間22aと軸受35との間にブレーキ部材用空間22bを備える。ブレーキ部材用空間22bには、ブレーキ部材50Bが配置され、カバー部22に固定されている。
【0057】
第2実施形態におけるドア支持装置10では、支持部材15Cに2つのブレーキ部材50A,50Bが配置されているため、スピンドル34に対する摩擦力が増加し、スピンドル34の回転の抑制が増加され得る。そのため、例えばバックドア3の重量の増加に対応できるなど、ドア支持装置10のバランス調整の自由度が向上し得る。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 車体
3 バックドア(ドア)
10 ドア支持装置(車両用ドア支持装置)
15A,15C 支持部材(第1支持部材)
15B 支持部材(第2支持部材)
20 第1ハウジング
20a 接続端(第1接続端)
20b 先端部
21 収容部
21a,21b 端部
21c モータ用空間
21d ブレーキ部材用空間
21e 貫通孔
21f 保持壁
21g 溝部
21h 凸部
22 カバー部
22a 第2ハウジング用空間
22b ブレーキ部材用空間
22c スピンドル用空間
22d 貫通孔
22e 保持壁
23A,23B 軸端部材
25 第2ハウジング
25a 接続端(第2接続端)
26 軸端部材
30 伸縮機構
32 コイルスプリング
34 スピンドル
34a 基端部
34b 螺旋部
34c 支持部
35 軸受
37 変換機構
38 スピンドルナット
39 プッシュロッド
40 ガイド管
44 ギア機構
45A~45D ギア
46 保持部材
47 保持部材
50A,50B ブレーキ部材 55 本体部
55a~55d 接触部
55e スリット
55f~55h 開口
55i フランジ
55j 拡大部
60 樹脂層
70 電動モータ
70a 出力軸