(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046866
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】掘削装置
(51)【国際特許分類】
E21B 7/20 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
E21B7/20
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155698
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】591278116
【氏名又は名称】諸木 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】諸木 一義
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BA04
2D129BB03
2D129DA12
2D129EA02
2D129EA24
(57)【要約】
【課題】簡素な構成にてケーシングの外周面の摩耗を抑制することができる掘削装置を提供する。
【解決手段】簡素な構成にてケーシングの外周面の摩耗を抑制することができる掘削装置を提供する。掘削装置は、筒形のケーシングと、該ケーシングの外周面から径方向外向きに突出した凸部と、該凸部に係止する係止部を有するチャック装置と、該チャック装置に対し、前記ケーシングの周方向への回転及び前記ケーシングの軸方向への移動を行う回転押込み装置とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形のケーシングと、
該ケーシングの外周面から径方向外向きに突出した凸部と、
該凸部に係止する係止部を有するチャック装置と、
該チャック装置に対し、前記ケーシングの周方向への回転及び前記ケーシングの軸方向への移動を行う回転押込み装置と
を備える掘削装置。
【請求項2】
前記凸部は前記周方向に複数並ぶ
請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
前記凸部は直線状をなす
請求項1又は2に記載の掘削装置。
【請求項4】
前記凸部は前記軸方向に延びる
請求項1から3のいずれか一つに記載の掘削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、大径(例えば、直径1000~3000mm)のケーシングを回転させて地中に押込み、掘削する掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
筒形のケーシングと、チャック装置と、回転押込み装置とを備える掘削装置がある。ケーシングの外周面に凹部が形成され、チャック装置は凹部に嵌合するツメを備える。地中に設置された杭を撤去する場合、地上において、ケーシングは杭の周囲に同軸的に配置される。ケーシングの内径は杭よりも大きい。回転押込み装置は、凹部にツメを嵌合させた状態でチャック装置をケーシングの軸回りに回転させて、所望の深さまで地中に押し込む(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケーシングが地中に押し込まれている間にケーシングの外周面は全体的に摩耗する。外周面に凸部を設け、摩耗を防止することが考えられるが、凹部に加えて凸部を設けることによって、ケーシングの構造は複雑化する。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡素な構成にてケーシングの外周面の摩耗を抑制することができる掘削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る掘削装置は、筒形のケーシングと、該ケーシングの外周面から径方向外向きに突出した凸部と、該凸部に係止する係止部を有するチャック装置と、該チャック装置に対し、前記ケーシングの周方向への回転及び前記ケーシングの軸方向への移動を行う回転押込み装置とを備える。
【0007】
本開示においては、ケーシングの外周面に凸部を設け、外周面の摩耗を抑制することができる。また凸部は係止部が係止する被係止部としても機能する。即ち、凸部は被係止部として機能すると共に摩耗防止機能をも有し、複数の機能を一つの構成によって実現する。
【0008】
本開示の一実施形態に係る掘削装置は、前記凸部は前記周方向に複数並ぶ。
【0009】
本開示においては、凸部を周方向に複数並べることによって、ケーシングの外周面全体と地中との間に隙間を設けやすくする。
【0010】
本開示の一実施形態に係る掘削装置は、前記凸部は直線状をなす。
【0011】
本開示においては、凸部の形状が単純なので、ケーシングに凸部を効率良く設けることができる。
【0012】
本開示の一実施形態に係る掘削装置は、前記凸部は前記軸方向に延びる。
【0013】
本開示においては、係止部との軸方向での位置決めが容易になる。またケーシングの回転によって外周面の周囲全体の土砂を攪拌することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の一実施形態に係る掘削装置にあっては、ケーシングの外周面に凸部を設け、外周面の摩耗を抑制することができる。また凸部は係止部が係止する被係止部としても機能する。即ち、凸部は被係止部として機能すると共に摩耗防止機能をも有し、複数の機能を一つの構成によって実現することができる。即ち簡素な構成にて、外周面の摩耗の抑制を含む複数の機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】掘削装置の一部を略示する部分拡大破断斜視図である。
【
図3】チャック装置の把持状態を拡大して示す正面断面図である。
【
図4】チャック装置の非把持状態を拡大して示す正面断面図である。
【
図6】凸部の構成を変更したケーシングの略示部分拡大正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明を実施の形態に係る掘削装置を示す図面に基づいて説明する。
図1は掘削装置を略示する部分破断斜視図、
図2は掘削装置の一部を略示する部分拡大破断斜視図、
図3はチャック装置の把持状態を拡大して示す正面断面図、
図4はチャック装置の非把持状態を拡大して示す正面断面図、
図5はツメの斜視図である。
【0017】
掘削装置10は、
図1に示す如く、ケーシング20と、ケーシング20を把持するチャック装置60と、チャック装置60を回転させつつ押込みするための回転押込み装置35とを備える。ケーシング20は、掘削装置10の中央部に設けた配置スペースSに配置される。
【0018】
図3及び
図4に示す如く、ケーシング20は、上下方向を軸方向とした円筒形の内筒22及び外筒23を備える。外筒23の内側に内筒22が同軸的に配置されている。内筒22の外周面と外筒23の内周面との間に複数のリブ24が溶接等によって設けられ、リブ24によって内筒22及び外筒23は連結される。
【0019】
ケーシング20の外周面20a、即ち外筒23の外周面に複数の凸部31が設けられている。凸部31はケーシング20の軸方向に沿って直線的に延びた角棒状をなす。凸部31はケーシング20の軸方向寸法略全体に亘って設けられる。以下、ケーシング20の軸方向を単に軸方向とも称し、ケーシング20の径方向を単に径方向とも称する。なお凸部31は、ケーシング20の軸に交差するように斜めに形成されてもよいし、曲線状に、例えば螺旋状に形成されてもよい。
【0020】
複数の凸部31は外周面20aの周方向に沿って間隔W毎に離れた各垂線Z上に配置されている。間隔Wは、後述する複数のツメ70における周方向の配置間隔に対応する寸法である。本実施例では、間隔Wは周方向における略90度の位相間隔に対応し、四つの凸部31が外周面20aに設けられている。なお、凸部31の個数は三つ以下でもよいし、五つ以上でもよい。
【0021】
チャック装置60はケーシング20の周囲に配置される。チャック装置60はツメ駆動部59と、複数のツメ70とを備える。ツメ駆動部59は支持装置61と、保持装置62とを備える。支持装置61は、外周面20aを囲うロアリング66及びアッパリング64と、シリンダ63とを有する。アッパリング64はベアリング65を介してロアリング66の上側に設けられる。ロアリング66は周方向に回転可能である。シリンダ63は上下動可能であり、アッパリング64の下部を支持する。シリンダ63は、後述するスラストフレーム51に支持される。保持装置62の詳細は後述する。
【0022】
図2~
図5に示す如く、ロアリング66の下部に、複数(本実施例では四つ)のツメ70がリンク機構67を介して設けられる。四つのツメ70は周方向に略等間隔を空けて配置される。ツメ70は、直方体の下端部を斜めに切断したようなくさび形をなし、周方向から視認した場合、台形状をなす。ツメ70の傾斜面は径方向外側に位置し、下方に向かうに従ってツメ70の径方向幅が短くなるように傾斜する。前記傾斜面は摺動部72を構成する。ツメ70の上端部に、下側に向けて窪んだ凹部が形成され、凹部にはケーシング20の接線方向に延びる枢軸71が設けられている。ツメ70は枢軸71を介してリンク機構67に連結する。即ち、支持装置61はツメ70を上方から吊って支持する。
【0023】
ツメ70の径方向内側に位置する内面75に凸部74が形成される。凸部74は径方向内側に突出する。凸部74は凸部31に係止する側面74aを備える。ツメ70は平坦な上面70b及び下面70cを備える。ツメ70は、シリンダ63の上下動によって支持装置61と共に上下動し、上位置O(
図4参照)又は下位置I(
図3参照)に配置される。ツメ70はロアリング66と共に周方向に回転可能である。なお凸部74を形成せずに、ツメ70の側面を凸部31に係止させてもよい。
【0024】
回転押込み装置35は、昇降装置40と、回転装置50とを備える。
図1に示す如く、昇降装置40は、上下動可能な複数の水平ジャッキ41と、平置きにされる基盤42と、上下動可能な複数のスラストシリンダ43とを備える。基盤42は上下に貫通した穴を有し、該穴にケーシング20が挿入される。水平ジャッキ41は基盤42の側面に取り付けられ、水平ジャッキ41の上下動によって基盤42の水平度合を調整する。スラストシリンダ43は基盤42の上面に取り付けられ、回転装置50に連結する。スラストシリンダ43の上下動によって、回転装置50は上位置及び下位置の間を上下動し、支持装置61も上下動する。
【0025】
回転装置50は環状のスラストフレーム51を備える。スラストフレーム51は、ロアリング66の下側においてケーシング20の周囲に配置される。スラストフレーム51はスラストシリンダ43に連結される。スラストフレーム51はピニオンギア52、52を内蔵する。ピニオンギア52は上下方向を回転軸方向とする。スラストフレーム51には、モータ53が設けられ、モータ53の駆動によってピニオンギア52は回転する。
【0026】
スラストフレーム51の内周に、ベアリング68を介してコーンリング69が設けられている。コーンリング69は上下軸回りに回転可能である。コーンリング69の上部内周に、上側に向かうに従って内径が拡大するように傾斜した傾斜面が形成されている。該傾斜面は摺動部69aを構成する。摺動部69aの傾斜角度は、ツメ70の摺動部72の傾斜角度に対応する。摺動部69aは摺動部72に摺動可能に接触する。コーンリング69の外周面には大径ギア69cが形成されている。大径ギア69cはピニオンギア52に噛合する。
ベアリング68及びコーンリング69は前述の保持装置62を構成する。保持装置62はツメ70の下部を保持する。
【0027】
図4に示す如く、シリンダ63が支持装置61を上側に移動させた場合、ツメ70は摺動部69aに摺動しながら上昇しつつ、径方向外向きに移動し、凸部74の側面74aは凸部31に係止不能となる。即ち、ツメ70は被把持状態となる。
図3に示す如く、シリンダ63が支持装置61を下側に移動させた場合、ツメ70は摺動部69aに摺動しながら下降しつつ、径方向内向きに移動し、ツメ70は摩擦力によって、ケーシング20の外周面20aに固定され、更に凸部74の側面74aは凸部31に係止可能となる。即ち、ツメ70は把持状態となる。
【0028】
掘削装置10の掘削動作について説明する。初期状態において、ツメ70は非把持状態にあり、回転装置50は上位置にあるとする。ツメ70の側面74aに凸部31が周方向に対向するように、ケーシング20を軸方向に位置決めした後、シリンダ63を下側に移動させ、ツメ70を把持状態にする。把持状態を維持したままモータ53が駆動し、コーンリング69及びツメ70が回転し、ケーシング20が軸周りに回転する。またスラストシリンダ43を下側に移動させて、回転装置50を下降させ、ケーシング20を下降させる。これにより、ケーシング20は地中を掘削することができる。
【0029】
地中に設置済みの杭を撤去する場合、杭の上方の土砂を取り除いて杭頭部を露出させ、配置スペースSが杭の真上に位置するように掘削装置10を地面に設置し、チャック装置60を非把持状態とする。次にケーシング20をクレーン等(図示省略)で吊下げた状態で降下させ、配置スペースSへ上方から挿入していき、ケーシング20の下端側で杭頭部を外嵌する。クレーン等でケーシング20を上下移動させたり、チャック装置60を回転装置50で回転させたりする等して、凸部31とツメ70とを位置合わせをする。そして上述のように、ケーシング20を軸回りに回転させると共に下降させて、杭の周囲を掘削する。
【0030】
掘削回転中には、凸部31が外周面20aに接する土砂を攪拌して流動性のある軟らかい状態にし、地中の掘削孔の内周面に対してケーシング20の外周面20aを滑りやすくする。即ち、凸部31は土砂攪拌機能を有する。なお凸部31以外に、土砂攪拌のための突起を外周面20aに追加してもよい。また凸部74が凸部31に係止するから、掘削回転中に、ツメ70がケーシング20に対して周方向にスリップするのを防止する。なおツメ70の下面70cに係止する係止部を外周面20aに設けてもよい。この場合、ツメ70がケーシング20に対して下方向にスリップするのを防止する。更にツメ70の上面70bに係止する係止部を外周面20aに設けてもよい。
【0031】
回転押込み工程が終了したら、モータ53を停止してケーシング20の回転を止める。続いてシリンダ63を伸ばして、
図4に示す如く、ツメ70を非把持状態にし、シリンダ63を停止する。非把持状態のまま、昇降装置40でチャック装置60を所定距離上昇させる。そして上述のように、ツメ70を把持状態にして、ケーシング20を軸回りに回転させると共に下降させて、杭の周囲を再び掘削する。これらの工程を繰り返す。繰り返して行く間に、ケーシング20の上下寸法が不足した場合には、延長用ケーシング(図示省略)をケーシング20に接続して延長すればケーシング20の地中への押込みを続行できる。ケーシング20の先端が所望深度に到達したら、ケーシング20の内側の杭を持上げが可能な長さ寸法に切断しつつクレーン等で引き抜き、更に、地中からケーシング20も引き抜いて杭の撤去を完了する。必要に応じて、杭の引き抜いた掘削孔に土砂等を埋め戻す作業を追加することもでき、また、掘削孔にコンクリートを打設し、新たな杭を設置することもできる。
【0032】
図6は、凸部31の構成を変更したケーシング20の略示部分拡大縦断面図である。
図6に示す如く、複数の凸部31を軸方向に沿って断続的に並べてもよい。
【0033】
実施の形態に係る掘削装置にあっては、ケーシング20の外周面20aに凸部31を設ける。凸部31は外周面20aの摩耗を抑制することができる。凸部31にはチャック装置60のツメ70が係止する。即ち、凸部31はツメ70が係止する被係止部として機能し、更には土砂攪拌機能及び摩耗防止機能をも有する。即ち三つの機能を一つの構成によって実現することができ、簡素な構成にて、ケーシング20の外周面20aの摩耗の抑制を含む複数の機能を実現することができる。
【0034】
また凸部31を周方向に複数並べることによって、ケーシング20の外周面20a全体と地中との間に隙間を設けやすくする。また凸部31の形状が直線状に形成され、単純な形状なので、例えば溶接によってケーシング20に凸部31を容易に取り付けることができ、凸部31を効率良く設けることができる。
【0035】
また軸方向に凸部31が延びるので、ツメ70との軸方向での位置決めが容易になる。またケーシング20の回転によって外周面20aの周囲全体の土砂を攪拌することができる。また凸部31が所定量摩耗した場合、凸部31に溶接によって肉を盛ることによって、ケーシング20の寿命を延ばすことができる。ケーシング20全体に肉を盛る場合に比べて、凸部31に対してのみ肉を盛ればよいので、肉盛り作業を短時間で終えることができる。
【0036】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0037】
10 掘削装置
20 ケーシング
20a 外周面
31 凸部
35 回転押込み装置
40 昇降装置
50 回転装置
60 チャック装置