(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023004687
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】輪止め設置支援装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230110BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B66F9/24 Z
B66F11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106540
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】庄司 光孝
(72)【発明者】
【氏名】矢野 政孝
(72)【発明者】
【氏名】船津 俊明
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333FA08
(57)【要約】
【課題】輪止め部材が設置適正位置に正しく設置されるようにすることが可能な輪止め設置支援装置を提供する。
【解決手段】輪止め設置支援装置は、複数のタイヤ車輪5を備えた高所作業車1において、輪止め部材70を設置するのに適した設置適正位置に、輪止め部材を設置する際の位置合せ用の目印となるガイドマーク100を表示するとともに、設置された輪止め部材70を検出可能なガイド表示・輪止め検出器80を備えて構成される。輪止め部材70が設置適正位置に正しく設置されていない場合には、ジャッキ10f,10rの伸縮作動が規制される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪を備えて走行可能な車両において、駐車中の前記車両の移動を規制するための輪止め部材の設置を支援する輪止め設置支援装置であって、
駐車中の前記車両において前記輪止め部材を設置するのに適した設置適正位置に、前記輪止め部材を設置する際の位置合せ用の目印となるガイドマークを表示させるガイド手段を備えたことを特徴とする輪止め設置支援装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記車両の車体に設けられ、前記設置適正位置に光を照射して前記ガイドマークを投映する光照射器を有して構成されることを特徴とする請求項1に記載の輪止め設置支援装置。
【請求項3】
前記車両の車体には、駐車中の前記車体の水平面に対する傾斜を検出可能な傾斜検出器が設けられており、
前記ガイド手段は、前記傾斜検出器により検出された前記車体の傾斜に基づき、前記複数の車輪のうちの所定車輪の少なくとも坂下側に前記設置適正位置を設定することを特徴とする請求項1もしくは2に記載の輪止め設置支援装置。
【請求項4】
前記設置適正位置に前記輪止め部材が設置されているか否かを検出する輪止め検出手段を備えたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の輪止め設置支援装置。
【請求項5】
前記輪止め検出手段は、前記車両の車体に設けられ、前記設置適正位置に向けて光を照射し、その反射光に基づき前記輪止め部材の有無を検出する光センサを有して構成されることを特徴とする請求項4に記載の輪止め設置支援装置。
【請求項6】
前記車両の車体には、下方に伸長作動して接地した状態で前記車体を持ち上げ支持するジャッキ装置が設けられており、
前記輪止め検出手段により前記輪止め部材が前記設置適正位置に設置されていないことが検出された場合に、前記ジャッキ装置の作動を規制するジャッキ作動規制手段を備えたことを特徴とする請求項4もしくは5に記載の輪止め設置支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高所作業車などの車両の逸走を防止する輪止め部材の設置を支援する輪止め設置支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車などの車両(作業車両)においては、車両を駐車して作業を行う場合に、駐車ブレーキ(サイドブレーキ)による車輪の制動に加えて、この車輪と駐車路面との間に楔形状の輪止め部材(単に「輪止め」とも称する)を設置することで車両の逸走防止を図っている。従来、作業者が輪止めを設置せずに作業を開始してしまうことを防止するための安全装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この安全装置では、輪止めが左右の車輪の坂下側に設置されているか否かを検出し、輪止めが設置されていない場合は、警告を発するとともにジャッキ装置の操作を規制するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輪止めは、車輪に対し設置適正位置(例えば、輪止めが、前後方向に平行となり車輪の幅の中央部でトレッド面と接触する位置)に設置されないと十分な効果を発揮できない虞がある。上記特許文献に記載の安全装置では、輪止めが車輪に設置されたことは検出できるが、輪止めの設置状態の詳細までは検出することができず、そのため、輪止めが適正位置からずれた状態で設置される虞がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、輪止め部材が設置適正位置に正しく設置されるようにすることが可能な輪止め設置支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の車輪を備えて走行可能な車両において、駐車中の前記車両の移動を規制するための輪止め部材の設置を支援する輪止め設置支援装置であって、駐車中の前記車両において前記輪止め部材を設置するのに適した設置適正位置に、前記輪止め部材を設置する際の位置合せ用の目印となるガイドマークを表示させるガイド手段(例えば、実施形態におけるガイドマーク投射制御部65、ガイドマーク投射部81)を備えて構成される。
【0007】
上記構成の輪止め設置支援装置において、前記ガイド手段は、前記車両の車体に設けられ、前記設置適正位置に光を照射して前記ガイドマークを投映する光照射器(例えば、実施形態におけるガイド表示・輪止め検出器80)を有して構成されることが好ましい。
【0008】
また、上記構成の輪止め設置支援装置において、前記車両の車体には、駐車中の前記車体の水平面に対する傾斜を検出可能な傾斜検出器(例えば、実施形態における車体傾斜検出器91)が設けられており、前記ガイド手段は、前記傾斜検出器により検出された前記車体の傾斜に基づき、前記複数の車輪のうちの所定車輪の少なくとも坂下側に前記設置適正位置を設定することが好ましい。
【0009】
また、上記構成の輪止め設置支援装置において、前記設置適正位置に前記輪止め部材が設置されているか否かを検出する輪止め検出手段(例えば、実施形態における輪止め設置判定部66、輪止め検出部82)を備えることが好ましい。
【0010】
また、上記構成の輪止め設置支援装置において、前記輪止め検出手段は、前記車両の車体に設けられ、前記設置適正位置に向けて光を照射し、その反射光に基づき前記輪止め部材の有無を検出する光センサ(例えば、実施形態におけるガイド表示・輪止め検出器80)を有して構成されることが好ましい。
【0011】
また、上記構成の輪止め設置支援装置において、前記車両の車体には、下方に伸長作動して接地した状態で前記車体を持ち上げ支持するジャッキ装置が設けられており、前記輪止め検出手段により前記輪止め部材が前記設置適正位置に設置されていないことが検出された場合に、前記ジャッキ装置の作動を規制するジャッキ作動規制手段(例えば、実施形態における作動制御部61)を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る輪止め設置支援装置によれば、駐車中の車両において輪止め部材を設置するのに適した設置適正位置に、輪止め部材を設置する際の位置合せ用の目印となるガイドマークを表示させることで、このガイドマークに従って輪止め部材を設置するように作業者に促すことができるので、輪止め部材が設置適正位置に正しく設置されるようにすることが可能となる。
【0013】
また、設置適正位置に輪止め部材が設置されているか否かを検出する輪止め検出手段を備えるとともに、輪止め検出手段により輪止め部材が設置適正位置に設置されていないことが検出された場合に、ジャッキ装置の作動を規制するジャッキ作動規制手段を備えることで、設置適正位置に輪止め部材が設置されていない状態でジャッキ装置が作動されて、車両が逸走してしまうことを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る輪止め設置支援装置を備えた高所作業車の側面図である。
【
図2】上記輪止め設置支援装置の機能ブロック図である。
【
図3】上記高所作業車に備えられた輪止め部材の側面図である。
【
図4】上記輪止め設置支援装置の各ガイド表示・輪止め検出器の配置位置を示す模式図である。
【
図5】上記ガイド表示・輪止め検出器の設置状態を示す模式図である。
【
図6】上記ガイド表示・輪止め検出器により表示されるガイドマークを例示する模式図である。
【
図7】上記輪止め設置支援装置による輪止め設置支援の説明に供する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る輪止め設置支援装置を備えた車両として高所作業車1を
図1に示しており、まず、
図1を参照して高所作業車1の全体構成について概要説明する。
【0016】
高所作業車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2は、タイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)が配設されたシャシフレームと、このシャシフレーム上に取り付けられたサブフレーム
とからなる車体フレームを備えて構成されている。
【0017】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するジャッキ装置10が設けられている。ジャッキ装置10は、前輪5fの後方に配設された左右一対のフロントジャッキ10fと、後輪5rの後方に配設された左右一対のリアジャッキ10rとを有して構成される。各ジャッキ10f,10rは、その内部に設けられたジャッキシリンダ11を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、これにより車両全体を安定させた状態とする。車体2の後端部には、各ジャッキ10f,10rや後述するブーム30等の作動操作を行うための下部操作装置27が設けられている。
【0018】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ24により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための工具箱26が設けられている。
【0019】
ブーム30は、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b及び先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ31の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間には起伏シリンダ23が跨設されており、この起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0020】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト(図示せず)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポストは、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。この垂直ポストには、作業者搭乗用の作業台40が作業台ブラケット(図示せず)を介して取り付けられている。この作業台ブラケットの内部には首振りモータ34(
図2を参照)が設けられており、この首振りモータ34を駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト回りに首振り動(水平旋回動)させることができる。ここで、垂直ポストは、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0021】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等の各操作手段を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ34の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。
【0022】
車体2に設けられたジャッキ装置10(ジャッキ10f,10r)及び高所作業装置(旋回台20、ブーム30、作業台40等)の作動機構は、
図2に示すように、上部操作装置45や下部操作装置27からの操作信号を受けて、ジャッキシリンダ11、旋回モータ24、起伏シリンダ23、伸縮シリンダ31及び首振りモータ34等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、この油圧アクチュエータを作動させるために作動油を供給する油圧ユニット50と、ジャッキ装置10及び高所作業装置等を作動させる動力源となる架装部バッテリ59とを備えて構成される。
【0023】
上部操作装置45もしくは下部操作装置27の操作により出力された操作信号は、コントローラ60に入力される。コントローラ60の作動制御部61は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット50(制御バルブ53)に出力する。
【0024】
油圧ユニット50は、作動油を吐出する油圧ポンプ51と、油圧ポンプ51を駆動するポンプ駆動モータ52と、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ53とを有して構成される。ポンプ駆動モータ52は、架装部バッテリ59からインバータ54を介して供給される電力により回転駆動される。制御バルブ53は、ジャッキシリンダ11に対応する電磁比例制御バルブV1、旋回モータ24に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ23に対応する電磁比例制御バルブV3、伸縮シリンダ31に対応する電磁比例制御バルブV4、首振りモータ34に対応する電磁比例制御バルブV5を有している。この制御バルブ53は、コントローラ60の作動制御部61からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V5のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ51から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(ジャッキ装置10及び高所作業装置の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0025】
このような構成の高所作業車1では、目的の作業現場に駐車して所要の作業を行う場合、その作業の開始前(各ジャッキ10f,10rの作動操作を行う前)に、駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)を作動させて左右の後輪5rを制動させてから、その駐車路面と所定のタイヤ車輪5との間に楔形状の輪止め部材70(
図3を参照)を設置して、車両の逸走防止を図るようになっている。
【0026】
輪止め部材70は、
図3に示すように、タイヤ車輪5のトレッド面(踏面)と地面との間に差し込まれて車両の移動(タイヤ車輪5の回転)を防止するタイヤストッパである。
図3には、1つの輪止め部材70のみを図示しているが、実際には4つのタイヤ車輪5に対応する4つの輪止め部材70が用いられる。各輪止め部材70は、高所作業車1の移動時などの不使用時には、車体2の後部に設けられた輪止め格納部(図示せず)に収納される。なお、以下の説明において、4つの輪止め70を区別する必要がある場合には、便宜上、「輪止め部材70A」、「輪止め部材70B」、「輪止め部材70C」、「輪止め部材70D」と呼称する。
【0027】
輪止め部材70は、例えばプラスチック材料を用いて楔形状に形成されている。この輪止め部材70は、
図3に示すように、地面に接地される底部をなす接地部72と、タイヤ車輪5に当接する車輪当接部73と、最上部を形成する頂部74と、接地部72と頂部74とを繋ぐ背面部75と、一対の側面部76とを有している。車輪当接部73は、先端側から基端側に向かって高くなる傾斜面として形成されており、タイヤ車輪5の踏面に当接可能に構成されている。なお、この車輪当接部73は、タイヤ車輪5の曲率半径に対応する湾曲面により形成されていてもよい。以下の説明では、輪止め部材70の前後方向の向きとして、タイヤ車輪5と地面との間に差し込まれる側(図中の左側)を「先端側」と呼称し、その反対側(図中の右側)を「基端側」と呼称する。
【0028】
次に、高所作業車1に設けられた輪止め設置支援装置について、
図4~
図7を追加参照して説明する。高所作業車1には、高所作業車1が駐車している場合に、所定のタイヤ車輪5に対し輪止め部材70が正しく設置されることを支援するための輪止め設置支援装置が設けられている。この輪止め設置支援装置は、
図2に示すように、車体2に設けられたガイド表示・輪止め検出器80と、車体2の傾斜を検出する車体傾斜検出器91と、車体2に設けられたコントローラ60とを備えて構成されている。
【0029】
ガイド表示・輪止め検出器80は、
図2に示すように、1つの筐体内にガイドマーク投
射部81と、輪止め検出部82とを備え、
図4及び
図5に示すように、高所作業車1の車体2における各タイヤ車輪5(前輪5f,後輪5r)の前後の所定位置に設置されている。なお、
図5では、図中左側を車両前方側、図中右側を車両後方側としている。ガイド表示・輪止め検出器80を、その設置位置に応じて区別する須合には、便宜上、前輪前側ガイド表示・輪止め検出器80fa、前輪後側ガイド表示・輪止め検出器80fb、後輪前側ガイド表示・輪止め検出器80ra、後輪後側ガイド表示・輪止め検出器80rbと呼称する。前輪前側ガイド表示・輪止め検出器80faは前輪5fの前側に設けられ、前輪後側ガイド表示・輪止め検出器80fbは前輪5fの後側に設けられている。また、後輪前側ガイド表示・輪止め検出器80raは後輪5rの前側に設けられ、後輪後側ガイド表示・輪止め検出器80rbは後輪5rの後側に設けられている。
【0030】
ガイドマーク投射部81は、例えば、半導体レーザからなるレーザ光源、レーザ光源から射出されたビーム状のレーザ光を走査する走査ミラー、走査ミラーにより走査されたレーザ光を投射するレンズ系等により構成され、後述する設置適正位置設定部64により設定された設置適正位置(駐車中の高所作業車1において輪止め部材を80設置するのに適した位置)にレーザ光を走査照射して、輪止め部材70を設置する際の位置合せ用の目印となるガイドマークを投映表示するようになっている。輪止め検出部82は、例えば、レーザ光を検出する光センサと、ガイドマーク投射部81により設置適正位置に向けて照射されたレーザ光のうちガイド表示・輪止め検出器80に戻る反射光を光センサに導く導光系とを備えて構成され、光センサに入射する反射光の入射角度やレーザ光が照射されてから反射光が戻るまでの時間等(以下、これらを「反射光状態」とも称する)を検出するようになっている。
【0031】
車体傾斜検出器91は、水平面に対する車体2の傾斜角度(車体2の前後方向の傾斜角度)を検出する。車体傾斜検出器91は、車体2の傾斜角度を検出して、その検出した傾斜角度に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。この車体2の傾斜角度は、例えば、車体2が前上がり(頭上げ)の姿勢になっている状態では正(プラス)の角度となり、車体2が前下がり(頭下げ)の姿勢になっている状態では負(マイナス)の角度となる。
【0032】
コントローラ60は、作動制御部61と、車体傾斜判定部62と、輪止め設置支援部63とを有している。作動制御部61は、前述したように、上部操作装置45または下部操作装置27からの操作信号に基づいて、制御バルブ53を電磁駆動して各油圧アクチュエータを作動させることで、ブーム30やジャッキ10f,10rなどの作動を制御する。
【0033】
車体傾斜判定部62は、車体傾斜検出器91により検出された車体2の傾斜角度に基づき、駐車された状態における車体2の姿勢(「駐車姿勢」とも称する)を判定する。例えば、車体傾斜判定部62は、車体傾斜検出器91により検出された車体2の傾斜角度が正の所定角度(例えば+3度)を超過した角度である場合には、車体2の駐車姿勢が前上がり傾斜姿勢であることを判定し、検出された車体2の傾斜角度が負の所定角度(例えば-3度)未満の角度である場合には、車体2の駐車姿勢が前下がり傾斜姿勢であることを判定する。また、車体傾斜判定部62は、検出された車体2の傾斜角度が所定角度範囲(例えば-3度以上+3度以下の範囲)内である場合には、車体2の駐車姿勢が水平姿勢である(又は駐車路面が平坦地である)ことを判定する。
【0034】
輪止め設置支援部63は、設置適正位置設定部64、ガイドマーク投射制御部65、輪止め設置判定部66を有する。設置適正位置設定部64は、車体傾斜判定部62により判定された車体2の駐車姿勢に基づき、タイヤ車輪5に対する輪止め部材70の設置適正位置を設定する。例えば、設置適正位置設定部64は、車体傾斜判定部62により判定された車体2の駐車姿勢が前上がり傾斜姿勢又は前下がり傾斜姿勢である場合には、タイヤ車
輪5(前輪5f及び後輪5r)の坂下側(前上がり傾斜姿勢のときは前輪5f及び後輪5rの後側、前下がり傾斜姿勢のときは前輪5f及び後輪5rの前側)を輪止め部材70の設置適正位置として設定する。また、設置適正位置設定部64は、車体傾斜判定部62により判定された車体2の水平である場合には、後輪5rの前側及び後側を輪止め部材70の設置適正位置として設定する。
【0035】
ガイドマーク投射制御部65は、設置適正位置設定部64により設定された輪止め部材70の設置適正位置に基づき、対応するガイド表示・輪止め検出器80のガイドマーク投射部81を作動させて、ガイドマークを設置適正位置に表示させる。例えば、ガイドマーク投射制御部65は、設置適正位置設定部64により設定された輪止め部材70の設置適正位置が前輪5f及び後輪5rの前側であった場合には、前輪前側ガイド表示・輪止め検出器80faのガイドマーク投射部81を作動させて前輪5fの前側に設定された設置適正位置にガイドマークを表示させるとともに、後輪前側ガイド表示・輪止め検出器80raのガイドマーク投射部81を作動させて後輪5rの前側に設定された設置適正位置に同じくガイドマークを表示させる。同様に、ガイドマーク投射制御部65は、設置適正位置設定部64により設定された設置適正位置が後輪5rの前側及び後側であった場合には、後輪前側ガイド表示・輪止め検出器80ra及び後輪後側ガイド表示・輪止め検出器80rbの各ガイドマーク投射部81を作動させて後輪5rの前側及び後側に設定された設置適正位置にそれぞれガイドマークを表示させる。
【0036】
図6にガイドマークの態様を例示する。
図6(A)には、タイヤ車輪5のトレッド面5aに表示される矩形状の(トレッド面5aに沿って湾曲している)ガイドマーク100Aを例示している。このガイドマーク100Aは、輪止め部材70の車輪当接部73と対応する大きさの領域をタイヤ車輪5のトレッド面5aに投映するものであり、ガイドマーク100Aの左右方向の中心線がトレッド面5aの中心線と一致し、ガイドマーク100Aの左右の辺縁がトレッド面5aの左右の辺縁と平行となるように表示される。
図6(B)には、駐車路面に表示される矩形状のガイドマーク100Bを例示している。このガイドマーク100Bは、輪止め部材70の接地部72と対応する大きさの領域を駐車路面に投映するものであり、ガイドマーク100Bの左右方向の中心線がタイヤ車輪5のトレッド面5aの中心線と一致し、ガイドマーク100Bの左右の辺縁がトレッド面5aの左右の辺縁と平行となるように表示される。なお、ガイドマーク100A,100Bを区別しない場合は、これらを総称して、ガイドマーク100と称する。ガイドマーク100は、その形状を示す各辺縁のみが光るように表示されるものであってもよいし、各辺縁とともにその内部の領域全体が光るように表示されるものであってもよい。
【0037】
輪止め設置判定部66は、設置適正位置にガイドマーク100を表示したガイド表示・輪止め検出器80の輪止め検出部82により検出された上記反射光状態に基づき、ガイドマーク100に合うように輪止め部材70が設置適正位置に正しく設置されているか否かを判定する。なお、輪止め設置判定部66は、例えば、輪止め検出部82により検出された反射光状態に基づき、ガイド表示・輪止め検出器80から設置適正位置までの距離を測定し、設置適正位置に輪止め部材70が設置される前と後とでの距離の変化により、設置適正位置に輪止め部材70が正しく設置されているか否かを判定する。
【0038】
このように構成された輪止め設置支援装置では、高所作業車1が駐車されると、車体傾斜検出器91により検出された車体2の傾斜角度に基づき、車体傾斜判定部62により車体2の駐車姿勢が判定される。このとき、例えば、車体2の駐車姿勢が、
図7に示すような前上がり傾斜姿勢であると判定された場合には、設置適正位置設定部64により輪止め部材70の設置適正位置がタイヤ車輪5(前輪5f及び後輪5r)の坂下側(前輪5f及び後輪5rの後側)に設定される。そして、ガイドマーク投射制御部65が前輪後側ガイド表示・輪止め検出器80fb及び後輪後側ガイド表示・輪止め検出器80rbの各ガイ
ドマーク投射部81を作動させて、タイヤ車輪5の坂下側に設定された設置適正位置にガイドマーク100を表示させる。
【0039】
次に、ガイドマーク100を表示した前輪後側ガイド表示・輪止め検出器80fb及び後輪後側ガイド表示・輪止め検出器80rbの各輪止め検出部82により、設置適正位置から戻るレーザ光の反射光状態が検出され、この反射光状態に基づき輪止め設置判定部66が、ガイドマーク100に合うように輪止め部材70が各設置適正位置に正しく設置されているか否かを判定する。作動制御部61は、高所作業車1が駐車され、下部操作装置27からのジャッキ操作信号を受け付けたとき、輪止め設置判定部66の判定結果を参照する。そして、作動制御部61は、各設置適正位置に輪止め部材70が正しく設置されていると判定されていた場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を許可し、各設置適正位置に輪止め部材70が正しく設置されていないと判定されていた場合にはジャッキ10f,10rの伸縮作動を規制する。なお、輪止め部材70が各設置適正位置に正しく設置されているか否かを作業者に報知したり警告したりするための報知装置や警告装置(例えば、表示器や音声出力器等により構成される)を設けて、輪止め部材70が正しく設置されていない場合に、作業者の注意を喚起するようにしてもよい。
【0040】
以上、本実施形態によれば、駐車中の車両において輪止め部材70を設置するのに適した設置適正位置にガイドマーク100を表示させることで、このガイドマーク100に合わせて輪止め部材70を設置するように作業者に促すことができるので、作業者によって輪止め部材70の設置状態にばらつきが生じることなく、輪止め部材70が設置適正位置に正しく設置されるようにすることが可能となる。また、設置適正位置に輪止め部材70が正しく設置されていないことが検出された場合には、ジャッキ10f,10rの伸縮作動が規制されるので、設置適正位置に輪止め部材70が正しく設置されていない状態でジャッキ10f,10rが伸縮作動されて、高所作業車1が逸走してしまうことを防止することが可能となる。
【0041】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態では、レーザ光を用いてガイドマークを表示しているが、レーザ光以外の光を用いてガイドマークを表示してもよい。また、ガイドマークの形状は矩形状に限らず、輪止め部材を位置合せしやすい適宜の形状に設定することができる。
【0043】
上記実施形態では、設置適正位置に照射されたレーザ光の反射光に基づいて、輪止め部材が設置適正位置に正しく設置されているか否かを判定しているが、別の手法、例えば、超音波センサや画像認識装置を用いて輪止め部材が設置適正位置に正しく設置されているか否かを判定してもよい。また、上記実施形態では、ガイドマークを表示する手段(ガイドマーク投射部81)と、輪止め部材を検出する手段(輪止め検出部82)とが1つのガイド表示・輪止め検出器80の筐体内に設けられて両者が一体的に構成されているが、ガイドマークを表示する手段と輪止め部材を検出する手段とを別体に構成してもよい。2つの手段を一体的に構成すればこれらをコンパクトに纏めることが可能となり、2つの手段を別体に構成すればこれらの配置位置の自由度を高めることができる。
【0044】
また、上記実施形態では、本発明を適用する車両(作業車両)として、トラックマウント式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、クレーン車などの他の作業車両や、ダンプトラックなどの運搬車両等に適用してもよい。また、上記実施形態では、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の高所作業車や、その両者を具
備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 高所作業車
2 車体
5 タイヤ車輪
10 ジャッキ装置
20 旋回台
27 下部操作装置
30 ブーム
40 作業台
45 上部操作装置
60 コントローラ
61 作動制御部
62 車体傾斜判定部
63 輪止め設置支援部
64 設置適正位置設定部
65 ガイドマーク投射制御部
66 輪止め設置判定部
70 輪止め部材
80 ガイド表示・輪止め検出器
81 ガイドマーク投射部
82 輪止め検出部
91 車体傾斜検出器
100 ガイドマーク