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特開2023-46940研磨用組成物、研磨方法および基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046940
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨方法および基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230329BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230329BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20230329BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550Z
C09K3/14 550D
C09G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021155795
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】514071509
【氏名又は名称】フジミ タイワン リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Fujimi Taiwan Limited
【住所又は居所原語表記】No.10,Tongke 1st Rd.,Tongluo Township,Miaoli County 366,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梅田 剛宏
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158AC04
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED04
3C158ED05
3C158ED09
3C158ED10
3C158ED12
3C158ED13
3C158ED15
3C158ED23
3C158ED26
3C158ED28
5F057AA03
5F057AA17
5F057AA28
5F057AA29
5F057AA41
5F057BA15
5F057BA22
5F057BB16
5F057BB25
5F057BB32
5F057BB33
5F057BB37
5F057CA12
5F057CA25
5F057DA03
5F057DA38
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA16
5F057EA17
5F057EA18
5F057EA21
5F057EA22
5F057EA27
5F057EA29
5F057EA32
5F057EB08
5F057EB27
5F057FA37
5F057FA39
(57)【要約】      (修正有)
【課題】研磨対象物に対して高い除去率および他膜種との高い選択比を有し、かつ、安定性がより優れた研磨用組成物及び研磨方法を提供する。
【解決手段】研磨用組成物は、ゼータ電位が正である砥粒、酸化剤、窒素含有界面活性剤、研磨速度向上剤及び水性分散媒を含む。研磨方法は、研磨用組成物を基板20と研磨パッドとの間に導入してから基板に対して研磨を行う工程を含む。基板は、誘電体基材201と金属材料205と、その間に配置されるライナー層203を含む。研磨用組成物は、金属材料に対して高い除去率及び他膜種との高い選択比を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼータ電位が正である砥粒と、
酸化剤と、
窒素含有界面活性剤と
研磨速度向上剤と、
水性分散媒と、
を含む研磨用組成物。
【請求項2】
前記研磨用組成物のpH値が2から4の範囲内にある請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記窒素含有界面活性剤にはアンモニウム塩、アミンオキシド、アミン、またはこれら任意の組み合わせが含まれる、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記窒素含有界面活性剤が、以下の化学式から選ばれた1つで表される化合物を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【化1】

(式中、R、R、R、R、Rは各々独立にC1-C20アルキル基を表し、かつXはハロゲン原子を表す。)
【請求項5】
前記砥粒がシリカである、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
各シリカの表面におけるシラノール基密度が1.0~6.0個/nmである、請求項5に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
前記研磨速度向上剤が硝酸塩である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記酸化剤が過ヨウ素酸である、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記研磨用組成物中に、前記酸化剤が0.01~1wt%、前記砥粒が1~10wt%、前記窒素含有界面活性剤が0.005~0.5wt%、前記研磨速度向上剤が0.5~3wt%占める、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
研磨パッドおよび研磨ヘッドを含む研磨装置を準備する工程、
前記研磨パッドと前記研磨ヘッドとの間に基板を準備する工程、および
請求項1~9のうちいずれか1項に記載の研磨用組成物を前記基板と前記研磨パッドとの間に導入してから前記基板に対して研磨を行う工程、
を含む研磨方法。
【請求項11】
前記基板が、
前記研磨ヘッドに対面する第1の表面および前記研磨パッドに対面する第2の表面を有する誘電体基材と、
少なくとも一部が前記誘電体基材の前記第2の表面に配置される金属材料と、
含む、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項12】
前記金属材料がタングステンである、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項13】
前記基板が、前記誘電体基材と前記金属材料との間に配置されるライナー層をさらに含む、請求項10に記載の研磨方法。
【請求項14】
前記ライナー層には金属窒化物層、バリア膜、またはこれらの組み合わせが含まれる、請求項13に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は研磨用組成物およびそれを用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の半導体産業においては、余分な材料を除去するため、または次の層の回路構造に完全に平坦な基板を提供するために、通常、平坦化技術を利用して半導体基板表面またはウェーハ表面の平坦度を高めている。平坦化技術には、サーマルフロー、エッチバックプロセス、および化学機械研磨(chemical mechanical polishing, CMP)プロセス等が含まれる。サーマルフローおよびエッチバックプロセスは、半導体基板表面またはウェーハ表面の局部平坦化を達成させることができ、CMPは半導体基板表面またはウェーハ表面の全面平坦化の効果を達成させることができる。CMP技術は、研磨性および腐食性を有する研磨用組成物用い、研磨パッドおよび研磨ヘッドにより半導体基板表面またはウェーハ表面の材料と不規則な構造を除去することで、平坦化の目的を達成させている。
【0003】
平坦化プロセスであるCMPプロセスで用いられる研磨用組成物の成分は、研磨対象物によって変わる。特許文献1~4には、異なる研磨対象物を処理するのに用いられ、成分の異なる研磨用組成物が開示されている。特許文献1~4から、研磨用組成物の組成には通常、酸化剤および砥粒が含まれることがわかる。酸化剤は、研磨対象物を酸化して硬度の比較的低い酸化物にすることができるため、後続の砥粒による物理研磨の進行において都合がよく、よってCMPプロセスの除去率を高めることができる。しかしながら、研磨対象物の除去率を一層高めることのできる研磨用組成物が依然求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-061612号公報
【特許文献2】特開2016-194006号公報
【特許文献3】特開2009-224767号公報
【特許文献4】特開2016-149402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研磨対象物に対して高い除去率および他膜種との高い選択比を有し、かつ安定性がより優れた研磨用組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の1態様は、ゼータ電位が正である砥粒、酸化剤、窒素含有界面活性剤、研磨速度向上剤、および水性分散媒を含む研磨用組成物を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、上記目的を達成することのできる研磨方法であって、研磨パッドおよび研磨ヘッドを含む研磨装置を準備する工程、研磨パッドと研磨ヘッドとの間に基板を準備する工程、および研磨用組成物を基板と研磨パッドとの間に導入してから基板に対して研磨を行う工程を含み、その中、研磨用組成物が、ゼータ電位が正である砥粒、酸化剤、窒素含有界面活性剤、研磨速度向上剤、および水性分散媒を含む、研磨方法をさらに提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の研磨用組成物は、除去すべき材料に対して高い除去率および他膜種との高い選択比を有し、かつ安定性がより優れている。本発明の研磨方法を用いれば、より品質の良い半導体基板表面またはウェーハ表面を得ることができ、かつ半導体基板またはウェーハの製造コスト低下を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の詳細な説明により、添付の図面と対応させながら、より十分に開示する。
図1図1は、本発明の実施形態による研磨方法のフローチャートである。
図2図2Aおよび図2Bは、本発明の実施形態による研磨方法の異なる段階における基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態のみに限定されることはない。
【0011】
本明細書中で「含む」が使用されるとき、それは記載された特徴の部材、整数、ステップ、操作、素子、組成、および/またはこれらの群の存在を示すが、1つまたは複数の他の特徴の部材、整数、ステップ、操作、素子、組成、および/またはこれらの群の存在または増加を排除するものではないということが、理解されるであろう。本明細書において単数の形式が用いられるとき、前後の文に特に明記されていない限り、それに複数の形式も含まれるよう意図されている。
【0012】
本明細書で特定の数値範囲を表すのに用いる「a~b」という表現は、「≧a、≦b」と定義される。
【0013】
<研磨用組成物>
本発明の研磨用組成物は、ゼータ電位が正である砥粒、酸化剤、窒素含有界面活性剤、研磨速度向上剤、および水性分散媒を含む。
【0014】
上述した課題を解決するメカニズムについて、本発明者は以下のように推測する。
【0015】
窒素含有界面活性剤が酸性環境下でゼータ電位が正である砥粒と相互作用することで、酸化タングステン表面に対する機械研磨速度が加速し、タングステン除去速度が高まると考えられる。かかるメカニズムは推測に基づくものであって、それが正しいか否かが本発明の技術範囲に影響することはない。
【0016】
以下、研磨用組成物に含まれる各成分、研磨対象物等について説明を行う。
【0017】
<pH値>
本発明の研磨用組成物のpH値は、1以上が好ましく、1.5以上であるとより好ましく、2以上であるとさらに好ましい。本発明の研磨用組成物のpH値は、7未満であると好ましく、5以下であるとより好ましく、4以下であるとさらに好ましい。本発明の研磨用組成物のpH値は2~4の範囲にあるのが好ましい。pHが上記範囲にあると、本発明の研磨用組成物がタングステンに対して高い除去率および他膜種との高い選択比を備え得るようになると共に、安定性がより高まる。
【0018】
<砥粒>
本明細書にいう「ゼータ(ζ)電位」とは、互いに接触する固体と液体とが相対運動を行うときに、両者の界面で生じる電位差のことであり、系の安定に直接反映するものである。懸濁液系中の粒子のゼータ電位が0に近い場合、それら粒子は凝集し易く、よってその系は不安定で保存が困難であるということを表す。懸濁液系中の粒子が明らかに負値または正値であるゼータ電位を有している場合、それら粒子は強く反発し合い、系中によく分散するため、系の安定性が高まるということを表す。本発明の砥粒のゼータ電位は、5mV以上であることが好ましく、10mV以上であることがより好ましく、20mV以上であることがさらに好ましい。かかる範囲のゼータ電位を有する砥粒によって、研磨速度および研磨用組成物の安定性が高まり得る。
【0019】
ここで、研磨用組成物中の砥粒のゼータ電位は、研磨用組成物を大塚電子株式会社製ELS-Z2に供し、測定温度25℃でフローセルを用いてレーザードップラー法(電気泳動光散乱測定法)で測定し、得られたデータをSmoluchowskiの式で解析することにより、算出することで測定することができる。
【0020】
研磨用組成物中の砥粒の例には、限定はされないが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ダイアモンドまたは炭化ケイ素が含まれ得る。砥粒は単独で用いても、また2種類以上を組み合わせて用いてもよい。砥粒は市販品を使用してもよいし、合成品を使用してもよい。
【0021】
砥粒の種類としては、好ましくはシリカであり、より好ましくはコロイダルシリカである。コロイダルシリカの製造方法としては、ケイ酸ソーダ法、ゾルゲル法が挙げられ、いずれの製造方法で製造されたコロイダルシリカであっても、本発明の砥粒として好適に用いられる。しかしながら、金属不純物低減の観点から、高純度で製造できるゾルゲル法により製造されたコロイダルシリカが好ましい。
【0022】
ゾルゲル法によるコロイダルシリカの製造は、従来公知の手法を用いて行うことができ、具体的には、加水分解可能なケイ素化合物(例えば、アルコキシシランまたはその誘導体)を原料とし、加水分解・縮合反応を行うことにより、コロイダルシリカを得ることができる。
【0023】
砥粒がシリカである実施形態において、ゼータ電位が正である砥粒は、コロイダルシリカ表面に位置するシラノール基を構成する水素原子の少なくとも一部を、アルミニウム、クロム、チタン、ジルコニウム、鉄、亜鉛、スズ、スカンジウム、ガリウムまたはこれらよりなる群の金属原子から誘導された金属カチオンで置換して得ることができるが、本発明はこれに限定されない。別の実施形態において、ゼータ電位が正である砥粒は、例えばアミン基または4級カチオン基であるカチオン性基を砥粒の表面に結合させることにより得ることができる。本発明で用いるゼータ電位が正である砥粒は、自ら作製して得るか、または市販品を購入することができる。
【0024】
本明細書中にいう「シラノール基」とは、シリカ粒子表面のケイ素原子と直接結合してなる水酸基を指し、立体配置または立体配位に特に制限はない。また、シラノール基の生成条件等にも特に制限はない。本明細書中にいう「シラノール基密度」とは、シリカ粒子表面の単位面積当たりのシラノール基の数を指し、シリカ粒子表面の電気特性または化学特性を表す指標となる。砥粒にシリカが含まれ得る実施形態において、砥粒のシラノール基密度は0~10.0個/nmが好ましく、1.0~6.0個/nmであるとより好ましく、1.5~5.7個/nmであると最も好ましい。研磨用組成物中の砥粒が上記範囲内のシラノール基密度を有していると、研磨用組成物は良好な研磨特性を実現することができると共に、安定性がより優れるものとなる。
【0025】
ここで、研磨用組成物中の砥粒のシラノール基密度はBET法により測定した比表面積および滴定により測定したシラノール基の量に基づいて計算し求めたものである。例えば、G.W.Searsによる「Analytical Chemistry, vol.28, No.12, 1956, 1982~1983」に記載された中和滴定を用いたシアーズ(Sears)滴定法により、シリカ(研磨砥粒)表面の平均シラノール基密度(単位:個/nm)算出することができる。
【0026】
ここで、砥粒の形状は、特に制限されず、球形状であってもよいし、非球形状であってもよい。非球形状の具体例としては、三角柱や四角柱などの多角柱状、円柱状、円柱の中央部が端部よりも膨らんだ俵状、円盤の中央部が貫通しているドーナツ状、板状、中央部にくびれを有するいわゆる繭型形状、複数の粒子が一体化しているいわゆる会合型球形状、表面に複数の突起を有するいわゆる金平糖形状、ラグビーボール形状等、種々の形状が挙げられ、特に制限されない。
【0027】
砥粒のサイズは特に制限されない。例えば、本発明の研磨用組成物中、砥粒の平均一次粒子径の下限は、1nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、20nm以上であることがさらに好ましい。また、本発明の研磨用組成物中、砥粒の平均一次粒子径の上限は、100nm以下であること好ましく、80nm以下であることがより好ましく、65nm以下であることがさらに好ましく、50nm以下が特に好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に発生しうるスクラッチなどのディフェクトを抑えることができる。なお、砥粒の平均一次粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた画像観察に基づいて算出される。
【0028】
本発明の研磨用組成物中、砥粒の平均二次粒子径の下限は、10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましく、50nm以上であることが特に好ましい。また、本発明の研磨用組成物中、砥粒の平均二次粒子径の上限は、200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましく、120nm以下であることがさらに好ましく、90nm以下であることが特に好ましい。このような範囲であれば、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物の表面に発生しうるスクラッチなどのディフェクトを抑えることができる。
【0029】
なお、二次粒子とは、砥粒(一次粒子)が研磨用組成物中で会合して形成する粒子をいう。砥粒の平均二次粒子径は、例えば、レーザー回折散乱法に代表される動的光散乱法により測定することができる。
【0030】
砥粒の含有量(濃度)は特に制限されない。研磨用組成物の総重量を100wt%として、研磨用組成物中の砥粒の含有量は0.01wt%以上であると好ましく、0.1wt%以上であるとより好ましく、1wt%以上であると最も好ましい。研磨用組成物中の砥粒の含有量が多いほど、研磨用組成物の研磨対象物に対する除去率は高くなる。研磨用組成物中の砥粒の含有量は20wt%以下が好ましく、15wt%以下であるとより好ましく、10wt%以下であると最も好ましい。研磨用組成物中の砥粒の含有量が少ないほど、研磨対象物表面のスクラッチ欠陥率は低くなる。つまり、研磨用組成物中の砥粒の含有量は、0.01~20wt%の範囲内にあるのが好ましく、0.1~15wt%の範囲内にあるとより好ましく、1~10wt%の範囲内にあると最も好ましい。1実施形態において、研磨用組成物中の砥粒の含有量は5wt%である。研磨用組成物中の砥粒の含有量が上記範囲内にあると、研磨用組成物は、研磨対象物のスクラッチ欠陥率を低く保ちつつ、研磨対象物に対する除去率を高めることができ、これにより優れた研磨特性が備わる。
【0031】
<酸化剤>
本発明の研磨用組成物中の酸化剤は、研磨対象物を酸化させて酸化物を形成することのできる任意の化合物であってよい。酸化剤は特に制限されない。酸化剤の例としては、限定はされないが、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、オゾン水、銀(II)塩、鉄(III)塩、過マンガン酸、クロム酸、重クロム酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過硫酸、ジクロロイソシアヌル酸およびそれらの塩等が含まれる。この中で好ましくは過酸化水素、鉄塩、次亜塩素酸、過ヨウ素酸、過硫酸であり、より好ましくは過ヨウ素酸である。
【0032】
酸化剤の含有量(濃度)に特に制限はない。研磨用組成物の総重量を100wt%として、研磨用組成物中の酸化剤の含有量は0.01wt%以上が好ましく、0.05wt%以上であるとより好ましく、0.1wt%以上であると最も好ましい。研磨用組成物中の酸化剤の含有量が多いほど、研磨用組成物の研磨対象物に対する化学研磨効果がより強くなる。研磨用組成物中の酸化剤の含有量は10wt%以下が好ましく、5wt%以下であるとより好ましく、1wt%以下であると最も好ましい。研磨用組成物中の酸化剤の含有量が少ないほど、研磨用組成物の研磨対象物に対する物理研磨作用がより強くなる。つまり、研磨用組成物中の酸化剤の含有量は0.01~10wt%の範囲内にあるのが好ましく、0.05~0.5wt%の範囲内にあるとより好ましく、0.1~1wt%の範囲内にあると最も好ましい。研磨用組成物中の酸化剤の含有量が上記範囲内にあると、研磨用組成物は、物理研磨効果と化学研磨効果とが平衡に達し、これにより優れた研磨特性が備わる。
【0033】
<窒素含有界面活性剤>
本発明の研磨用組成物中に用いる窒素含有界面活性剤は、アンモニウム塩、アミンオキシド、アミン、またはこれら任意の組み合わせとするのが好ましい。窒素含有界面活性剤は、以下の化学式から選ばれた1つで表される化合物が好ましい。
【0034】
【化1】
【0035】
式中、R、R、R、R、Rは各々独立にC1-C20アルキル基を表し、かつXはハロゲン原子を表す。
【0036】
本明細書中にいう「C1-C20アルキル基」とは、1~20個の炭素原子を含む飽和炭化水素化分子から1つの水素原子を除いた後に残る一価炭化水素基を指す。C1-C20アルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐アルキル基、または環状アルキル基であってよい。直鎖状の例には、限定はされないが、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基が含まれ得る。分岐アルキル基の例には、限定はされないが、イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、t-アミル基、ネオペンチル基、3-メチルペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1-メチル-1-プロピルブチル基、1,1-ジプロピルブチル基、1,1-ジメチル-2-メチルプロピル基、1-メチル-1-イソプロピル-2-メチルプロピル基が含まれ得る。環状アルキルの例には、限定はされないが、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルネニル基が含まれ得る。
【0037】
窒素含有界面活性剤は、以下の化学式から選ばれた1つで表される化合物であるとより好ましい。
【0038】
【化2】
【0039】
式中、mおよびnは各々独立に1~10の数字を表す。
【0040】
窒素含有界面活性剤の含有量(濃度)に特に制限はない。研磨用組成物の総重量を100wt%として、研磨用組成物中の窒素含有界面活性剤の含有量は0.001wt%以上が好ましく、0.005wt%以上であるとより好ましく、0.01wt%以上であると最も好ましい。研磨用組成物中の窒素含有界面活性剤の含有量は1wt%以下が好ましく、0.5wt%以下であるとより好ましく、0.2wt%以下であると最も好ましい。つまり、研磨用組成物中の窒素含有界面活性剤の含有量は0.001~1wt%が好ましく、0.005~0.5wt%であるとより好ましく、0.01~0.2wt%であると最も好ましい。研磨用組成物は、含有量が上記範囲内にある窒素含有界面活性剤を含んでいると、優れた研磨特性が備わる。
【0041】
<研磨速度向上剤>
本発明の研磨用組成物中の研磨速度向上剤は、研磨対象物の除去率を高めるために用いる化合物である。研磨速度向上剤に特に制限はない。研磨速度向上剤の例には、限定はされないが、窒素含有化合物、無機酸塩、第四級アンモニウム化合物、またはこれら任意の組み合わせが含まれ得る。1実施形態において、研磨速度向上剤は硝酸塩である。
【0042】
研磨速度向上剤の含有量(濃度)に特に制限はない。研磨用組成物の総重量を100wt%として、研磨用組成物中の研磨速度向上剤の含有量は0.1wt%以上が好ましく、0.5wt%以上であるとより好ましく、1.0wt%以上であると最も好ましい。研磨用組成物中の研磨速度向上剤の含有量は5.0wt%以下が好ましく、3.0wt%以下であるとより好ましく、1.5wt%以下であると最も好ましい。つまり、研磨用組成物中の研磨速度向上剤の含有量は0.1~5.0wt%の範囲内にあるのが好ましく、0.5~3.0wt%の範囲内にあるとより好ましく、1.0~1.5wt%の範囲内にあると最も好ましい。
【0043】
<水性分散媒>
研磨用組成物中の水性分散媒の作用は、上述した各成分を研磨用組成物中に溶解または分散させることである。水性分散媒の例に特に制限はない。また、水性分散媒中の水の含有量に特に制限はなく、水性分散媒の総重量に対し、50wt%以上であるのが好ましく、90wt%であるとより好ましく、水のみであるとさらに好ましい。研磨対象物の汚染や他の成分の作用を阻害することを抑制するという観点から、分散媒としては、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。このような水としては、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好適である。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、水としては、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水等を用いることが好ましい。1実施形態において、水性分散媒には脱イオン水が含まれる。
【0044】
各成分の分散性または溶解性を高めることができるのであれば、水性分散媒は水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。有機溶媒に特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。水と有機溶媒との混合溶媒とする場合、水と混合した有機溶媒が好ましい。有機溶媒を使用する場合、水と有機溶媒とを混合して混合溶媒を作った後、その混合溶媒に各成分を加えて混合してもよいし、各成分を有機溶媒に分散または溶解した後、水と混合してもよい。また、有機溶媒は単独でも、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
<pH調整剤>
研磨用組成物はpH調整剤をさらに含んでいてよい。pH調整剤は、研磨用組成物のpH値を適した範囲内に調整することにより、研磨用組成物の化学研磨効果を高めることができる、または研磨用組成物の分散安定性を高めることができる。本発明の研磨用組成物に用いられるpH調整剤に特に制限はなく、本発明の研磨用組成物のpH値を所望の範囲に調整できさえすればよい。本発明で用いるpH調整剤はアルカリ性物質が好ましく、その例としては、限定はされないが、窒素含有化合物、無機塩基、第四級アンモニウム化合物、またはこれら任意の組み合わせが含まれ得る。1実施形態において、pH調整剤は、水酸化アンモニウム(NHOH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、またはこれら任意の組み合わせであってよい。pH調整剤は単独でも、または2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
pH調整剤の添加量(濃度)としては、研磨用組成物を所望のpH値にできる量を適宜選択することができ、研磨用組成物を後述する好ましいpH値とすることのできる量が好ましい。
【0047】
<他の成分>
本発明の研磨用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分は、特に制限されないが、例えば、濡れ剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤、溶存ガス、還元剤等をはじめとする、公知の研磨用組成物に用いられる各種成分から適宜選択され得る。
【0048】
<研磨用組成物の製造方法>
本発明の研磨用組成物の製造方法は特に制限はなく、例えば、砥粒、酸化剤、窒素含有界面活性剤、研磨速度向上剤、および必要に応じた他の成分(例えばpH調整剤)を水性分散媒(例えば水)中で混合・撹拌して得るものとすることができる。各成分の詳細については上述したとおりである。各成分を混合する温度および混合時間に特に制限はなく、研磨用組成物の各成分が均一に混合されさえすればよい。
【0049】
<研磨対象物>
本発明の研磨対象物は、特に制限はなく、CMPに適用される公知の研磨対象物を用いることができる。よって、研磨対象物の態様様に特に制限はないが、金属材料が充填された基板が好ましく、金属材料と基板との間にライナー層をさらに含む基板であるとより好ましい。基板はシリコン基板が好ましい。1実施形態において、ライナー層には、金属窒化物層、バリア膜、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。バリア膜材料の例には、限定はされないが、チタン、タンタル、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。金属窒化物層には、限定はされないが、窒化チタン、窒化タンタル、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0050】
<研磨方法>
本発明の別の態様は、上記研磨用組成物を用いて研磨対象物に対し研磨を行う研磨方法を提供する。以下、図1ならびに図2Aおよび図2Bを参照にして、本発明の研磨方法をより詳細に説明する。図1は本発明の実施形態による研磨方法10のフローチャートである。図2Aおよび図2Bは、本発明の実施形態による研磨方法10の異なる段階における基板20の断面図である。
【0051】
図1に示されるように、本発明の実施形態による研磨方法10は、研磨パッドおよび研磨ヘッドを含む研磨装置を準備するステップS101、基板を研磨パッドと研磨ヘッドとの間に準備するステップS103、および研磨用組成物を基板と研磨パッドとの間に導入してから、基板に対して研磨を行うステップS105を含む。
【0052】
ステップS101で準備する研磨装置は、特に制限はなく、適した公知の装置を用いることができる。研磨装置は、研磨対象物を保持するホルダーと回転数を変更可能なモータ等とが取り付けてあり、研磨パッド(研磨布)を貼り付け可能な研磨定盤を有する一般的な研磨装置を使用することができる。研磨装置としては、片面研磨装置または両面研磨装置のいずれを用いてもよい。研磨パッドとしては、一般的な不織布、ポリウレタン、および多孔質フッ素樹脂等を特に制限なく使用することができる。研磨パッドには、研磨液が溜まるような溝加工が施されていることが好ましい。
【0053】
ステップS103で研磨パッドと研磨ヘッドとの間に準備する基板は、図2Aで示される構造を有していてよい。図2Aに示されるように、基板20は、誘電体基材201および金属材料205を備える。誘電体基材201には複数の溝があり、金属材料205がこれら凹形の溝中に充填されると共に、少なくとも一部の金属材料205が誘電体基材201の表面上に形成されるか、または誘電体基材201の表面から突き出ている。図2Aは、金属材料205が誘電体基材201の表面全体を覆う実施形態を示しているが、本発明はこれに限定されない。1実施形態において、金属材料205は誘電体基材201の表面の一部のみを覆うものであってよい。1実施形態において、誘電体基材201には酸化ケイ素(SiO)が含まれていてよい。1実施形態において、金属材料205にはタングステンが含まれていてよい。
【0054】
1実施形態において、基板20はライナー層203をさらに含んでいてよい。ライナー層203は、複数の溝がある誘電体基材201上にコンフォーマルに形成されてよく、かつ誘電体基材201と金属材料205との間に配されてよい。ライナー層203は、金属窒化物層、バリア膜またはこれらの組み合わせを含み得る。1実施形態において、バリア膜にはチタン、タンタル、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。1実施形態において、金属窒化物層には窒化チタン、窒化タンタル、またはこれらの組み合わせが含まれ得る。
【0055】
ステップS103において、図2Aに示される構造を有する基板20を、金属材料205を研磨パッドに対面させるようにして、研磨パッドと研磨ヘッドとの間に準備する。次いで、ステップS105において、上記研磨用組成物を基板20と研磨パッドとの間に導入してから、基板20に対して研磨を行う。
【0056】
ステップS105の研磨ステップで用いられる研磨条件に特に制限はなく、研磨用組成物および研磨対象物の特性に応じて適切な条件を適宜設定することができる。研磨荷重(研磨圧力、加工圧力)については、特に制限されないが、一般的には、単位面積当たり0.1psi以上10psi以下であることが好ましく、0.5psi以上8psi以下であることがより好ましく、1psi以上6psi以下であることがさらに好ましい。この範囲であれば、高い研磨速度を得つつ、荷重による基板の破損や、表面に傷などの欠陥が発生することをより抑制することができる。定盤回転数およびキャリア回転数は、特に制限されないが、一般的には、それぞれ、10rpm以上500rpm以下であることが好ましく、20rpm以上300rpm以下であることがより好ましく、30rpm以上200rpm以下であることがさらに好ましい。研磨用組成物を供給する方法も特に制限されず、ポンプ等で連続的に供給する方法(掛け流し)を採用してもよい。研磨用組成物の供給量(研磨用組成物の流量)は、研磨対象物全体が覆われる供給量であればよく、特に制限されないが、一般的には、100mL/min以上5000mL/min以下であることが好ましい。研磨時間は、目的とする研磨結果が得られるよう適宜設定すればよく特に制限されないが、一般的には、5秒間以上180秒間以下であることが好ましい。また、研磨は、In-situ ドレッシングを用いて行うことが好ましい。ここで、In-situ ドレッシングとは、研磨するとともにパッドの目立て(ドレッシング)を行う技術を表す。In-situ ドレッシングによれば、研磨時間に対する研磨速度の均一性をより向上させ、研磨の制御性をより向上させることができる。In-situ ドレッシング部材としては、ダイヤモンドドレッサー等のコンディショナーを用いることが好ましい。
【0057】
研磨完了後、基板20を流水中で洗浄し、スピンドライヤー等で基板に付着した水滴を吹き飛ばして乾燥させると、図2Bに示す構造を有する基板20が得られる。図2Bに示されるように、本発明の研磨方法で処理した基板20は平坦な表面を備え、誘電体基材201の溝中に充填された金属材料205の上表面が誘電体基材201の上表面と共平面となる。
【0058】
本発明の実施形態を詳細に説明したが、これらは説明および例示のためのものであって限定の意図はなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に基づいて解釈されなければならない旨理解される必要がある。
【0059】
本発明は下記する態様および形態を含む。
【0060】
1.ゼータ電位が正である砥粒、酸化剤、窒素含有界面活性剤、研磨速度向上剤、および水性分散媒を含む研磨用組成物。
【0061】
2.研磨用組成物のpH値が2から4の範囲内にある上記1に記載の研磨用組成物。
【0062】
3.窒素含有界面活性剤にはアンモニウム塩、アミンオキシド、アミン、またはこれら任意の組み合わせが含まれる、上記1に記載の研磨用組成物。
【0063】
4.窒素含有界面活性剤が、以下の化学式から選ばれた1つで表される化合物を含む、上記1に記載の研磨用組成物。
【0064】
【化3】
【0065】
式中、R、R、R、R、Rは各々独立にC1-C20アルキル基を表し、かつXはハロゲン原子を表す。
【0066】
5.砥粒がシリカである、上記1に記載の研磨用組成物。
【0067】
6.各シリカの表面におけるシラノール基密度が1.0~6.0個/nmである、上記5に記載の研磨用組成物。
【0068】
7.研磨速度向上剤が硝酸塩である、上記1に記載の研磨用組成物。
【0069】
8.酸化剤が過ヨウ素酸である、上記1に記載の研磨用組成物。
【0070】
9.研磨用組成物中に、酸化剤が0.01~1wt%、砥粒が1~10wt%、窒素含有界面活性剤が0.01~0.1wt%、研磨速度向上剤が0.5~3wt%占める、上記1に記載の研磨用組成物。
【0071】
10.研磨パッドおよび研磨ヘッドを含む研磨装置を準備する工程、研磨パッドと研磨ヘッドとの間に基板を準備する工程、ならびに上記研磨用組成物を基板と研磨パッドとの間に導入してから基板に対して研磨を行う工程を含む研磨方法。
【0072】
11.基板が、研磨ヘッドに対面する第1の表面および研磨パッドに対面する第2の表面を有する誘電体基材と、少なくとも一部が誘電体基材の第2の表面に配置される金属材料と、含む、上記10に記載の研磨方法。
【0073】
12.金属材料がタングステンである、上記10に記載の研磨方法。
【0074】
13.基板が、誘電体基材と金属材料との間に配置されるライナー層をさらに含む、上記10に記載の研磨方法。
【0075】
14.ライナー層には金属窒化物層、バリア膜、またはこれらの組み合わせが含まれる、上記13に記載の研磨方法。
【0076】
[実施例]
以下、実施例および比較例を用いて本発明をより一層詳細に説明する。しかし、本発明の技術範囲は以下の実施例のみに限定されない。また、特に示さない限り、「%」および「部」はそれぞれ「重量%(wt%)」および「重量部」を指す。
【0077】
<研磨用組成物の調製>
実施例において研磨用組成物を調製するのに用いた化合物およびその特性を以下に示す。
コロイダルシリカA:平均一次粒子径は47nm、平均二次粒子径は85nm、ゼータ電位は正、かつシラノール基密度は1.5個/nmのコロイダルシリカ溶液である。
コロイダルシリカB:平均一次粒子径は30nm、平均二次粒子径は63nm、ゼータ電位は正、かつシラノール基密度は1.5個/nmのコロイダルシリカ溶液である。
コロイダルシリカC:平均一次粒子径は35nm、平均二次粒子径は65nm、ゼータ電位は負、かつシラノール基密度は5.7個/nmで表面をスルホン酸(sulfonic acid)で修飾したコロイダルシリカ溶液である。
コロイダルシリカD:平均一次粒子径は50nm、平均二次粒子径は95nm、ゼータ電位は正、かつシラノール基密度は5.7個/nmである。表面をアミノプロピルトリエトキシシラン(aminopropyltriethoxysilane, APTES)で修飾したコロイダルシリカ溶液である。
過ヨウ素酸(periodic acid):William Blythe Ltdから購入した50%オルト過ヨウ素酸。
硝酸アンモニウム(ammonium nitrate):富山薬品工業株式会社から購入した50%硝酸アンモニウム。
ラウリルジメチルアミンオキシド(lauryl dimethyl amine oxide):台湾新日化股ふん有限公司より購入。商品名:Tainolin LO。
ポリオキシエチレンラウリルアミン(polyoxyethylene lauryl amine):竹本油脂株式会社より購入。商品名:Pinonin D3110。
ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド(lauryltrimethylammonium chloride):竹本油脂株式会社より購入。商品名:Pinonin B111。
ポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート(polyoxyethylene lauryl ether phosphate):東邦化学工業株式会社より購入。商品名:PHOSPHANOL ML-220。
水酸化アンモニウム(NHOH):台硝股ふん有限公司から購入した29%水酸化アンモニウム。
水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH):SACHEM,Incから購入した35%水酸化テトラエチルアンモニウム。
【0078】
(実施例1)
コロイダルシリカA 50g(シリカ相当分)、過ヨウ素酸4.4g、硝酸アンモニウム11.27g、ラウリルジメチルアミンオキシド0.25gおよび脱イオン水832.08gを1000mLのビーカーに入れて混合した後、水酸化アンモニウムで混合物のpH値を2.1に調整し、実施例1の研磨用組成物を得た。実施例1の研磨用組成物は、コロイダルシリカAを5%(シリカ相当分)、過ヨウ素酸を0.44%、硝酸アンモニウムを1.127%、水酸化アンモニウムを0.045%、ラウリルジメチルアミンオキシドを0.025%含むものである。
【0079】
(実施例2~14および比較例1~7)
砥粒、pH調整剤、窒素含有界面活性剤およびpHを表1から表6に示したものに変えた他は、実施例1と同様の方式により研磨用組成物を作製した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
<研磨性能評価>
(研磨対象物の準備)
研磨対象物としては、表面に厚さ4000Åのタングステン膜または10000Åの酸化ケイ素膜(具体的にはオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)由来の酸化ケイ素;以下、Oxide膜)を形成したシリコンウェーハ(300mm、ブランケットウェーハ)を準備した。
【0087】
(研磨条件)
研磨機:片面CMP研磨機(荏原製作所製、製品名:FREX 300E)
研磨パッド:ポリウレタン製パッド(Dow Electronic Materials社製、製品名:IC1010)
研磨圧力:3.2psi
プラテン(定盤)回転数:95pm
研磨ヘッド(キャリア)回転数:100rpm
研磨用組成物の流量:200ml/min
研磨時間:1分
(除去率の算出)
タングステンに対してはシート抵抗器(KLA-Tencor社製、製品名:OmniMap RS-100)、Oxideに対してはKLA-Tencor社製、製品名:ASET F5xを用い、研磨前後の基板厚さを測定し、除去率を算出した。
【0088】
粘度計(製品名:Cannon-Fenske、柴田科学株式会社製)を用い、上記実施例1から15および比較例1から6の研磨用組成物を80℃で1週間おいた後の粘度変化を測定することで各研磨用組成物の安定性を評価した。粘度変化が0~5%であるとき、その研磨用組成物の安定性は良好であると判断し(〇で表す)、粘度変化が5~10%であるとき、その研磨用組成物の安定性はやや劣ると判断し(△で表す)、粘度変化が>10%であるとき、その研磨用組成物の安定性は良好でないと判断した(×で表す)。
【0089】
上記方法で測定された各研磨用組成物の除去率および安定性を下の表7にまとめた。
【0090】
【表7】
【0091】
<研究>
上表7の結果からわかるように、実施例1から14の研磨用組成物は、実施例15の研磨用組成物に比して安定性に優れていた。実施例1から6および実施例8から14の研磨用組成物はタングステンに対して1600Å/min以上の除去率を有し、実施例1、2、5、6、8および9から15の研磨用組成物はタングステンに対して1800Å/min以上の除去率を有し、かつ実施例8、9、11および12の研磨用組成物は、タングステンに対し得2000Å/min以上の除去率を有していた。このことから、本発明の研磨用組成物が、比較例の研磨用組成物に比して、タングステンに対し高い除去率および他膜種との高い選択比を有することは明らかである。
【0092】
上述した実施形態の特徴は、当該分野において通常の知識を有する者が本発明を理解するのに有益なものである。当該分野において通常の知識を有する者であれば、本発明を基に、他のプロセスおよび構造を設計して変化を加えることで、上記実施形態と同じ目的および/または同じ利点を達成できるということを理解するはずである。当該分野において通常の知識を有する者はまた、かかる均等な置換は本発明の精神および範囲を逸脱しないもので、かつ本発明の精神および範囲を逸脱しない限りにおいて改変、置換または変更を行い得るということも理解するはずである。
【符号の説明】
【0093】
10:方法
S101~S105:ステップ
20:基板
201:誘電体基材
203:ライナー層
205:金属材料
図1
図2
【外国語明細書】