(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046949
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 3/58 20060101AFI20230329BHJP
E06B 7/28 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
E06B3/58 C
E06B7/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155810
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】杉本 みく
(72)【発明者】
【氏名】小山 晋一郎
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016AA04
2E016BA00
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC01
2E016DA05
2E016DB02
2E016DB03
2E016DC03
(57)【要約】
【課題】障子と枠体との係合状態を維持できるようにすることによって、枠体からの障子の外れを阻止すること。
【解決手段】建具は、上枠、下枠及び左右の縦枠を有するとともに上枠及び下枠に溝部を有する枠体と、上桟、下桟及び左右の縦框を有する框体の内側に面材を有し、上端部及び下端部が溝部に挿入されることによって上枠及び下枠に保持される障子と、障子よりも室内側の縦枠に、内側に向けて突出するように着脱可能に取り付けられ、障子が枠体から外れることを阻止する外れ止め部材と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠及び左右の縦枠を有するとともに前記上枠及び前記下枠に溝部を有する枠体と、
上桟、下桟及び左右の縦框を有する框体の内側に面材を有し、上端部及び下端部が前記溝部に挿入されることによって前記上枠及び前記下枠に保持される障子と、
前記障子よりも室内側の前記縦枠に、内側に向けて突出するように着脱可能に取り付けられ、前記障子が前記枠体から外れることを阻止する外れ止め部材と、を備える、建具。
【請求項2】
前記外れ止め部材は、前記縦枠の延び方向の中央部近傍に取り付けられる、請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記外れ止め部材は、左右の前記縦枠にそれぞれ取り付けられる、請求項1又は2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上枠及び下枠に設けたレール溝に、障子の上部及び下部をケンドン式に収納して支持し、左右の縦枠では障子を支持しない建具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この建具では、障子が地震の縦揺れによって上方に浮き上がることによって、障子が下枠から外れることを阻止するために、障子の下桟のハンドルの固定部に、下枠のレール溝内に向けて突出する係止舌片を有する外れ止め部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、地震による縦揺れによって障子が下枠から外れる場合以外に、枠体から障子が外れる原因についてさらに検討した。その結果、枠体の施工不良等によって下枠が撓んだ場合等に、障子が下方に移動して障子と上枠との係合が解除され、障子が枠体から外れるおそれがあることが判明した。
【0005】
しかしながら、障子と上枠との係合状態を維持するために、障子の下桟に加えて上桟にも外れ止め部材を取り付けることは、障子の取り付け作業の煩雑化につながるため、好ましくない。
【0006】
よって、発明者は、簡単な構造で障子と枠体との係合状態を維持できるようにすることによって、枠体からの障子の外れを阻止する、という課題を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の建具は、上枠、下枠及び左右の縦枠を有するとともに前記上枠及び前記下枠に溝部を有する枠体と、上桟、下桟及び左右の縦框を有する框体の内側に面材を有し、上端部及び下端部が前記溝部に挿入されることによって前記上枠及び前記下枠に保持される障子と、前記障子よりも室内側の前記縦枠に、内側に向けて突出するように着脱可能に取り付けられ、前記障子が前記枠体から外れることを阻止する外れ止め部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4A】外れ止め部材の取り付け位置を説明する図である。
【
図4B】外れ止め部材の取り付け位置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の建具の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、建具としてのFIX窓1を示している。FIX窓1は、いわゆる嵌め殺し窓であり、建物躯体の矩形の開口部100の内周に沿って設けられる額縁101の内側に取り付けられている。FIX窓1は、掃除等のために障子3が取り外される場合以外では、開口部100を開閉しない。
【0010】
図1は、FIX窓1を室内側から見た正面図である。
図2及び
図3において、X1方向はFIX窓1の室外側を示し、X2方向はFIX窓1の室内側を示す。FIX窓1の室外側の額縁101の内側には、FIX窓、引違い窓等の他の窓(図示せず)がさらに取り付けられてもよい。これによって、額縁101の内側に二重窓が構築され、断熱性及び遮音性がさらに向上する。本実施形態のFIX窓1は、既存の窓(図示せず)の室内側に後付けすることができる。
【0011】
FIX窓1は、額縁101の内側に設けられる枠体2と、枠体2の内側に納められる障子3と、外れ止め部材4と、を有する。枠体2は、上枠21と、下枠22と、左右の縦枠23,24と、を矩形に枠組みすることによって構成される。障子3は、枠体2の内側に取り外し可能に嵌め込まれている。外れ止め部材4は、障子3が枠体2から外れることを阻止するための部材である。
【0012】
枠体2の上枠21は、樹脂材によって一体に押出し成形されている。上枠21は、室外側に配置される断面矩形の中空構造を有する第1ホロー部211と、室内側に配置される断面矩形の中空構造を有する第2ホロー部212と、第1ホロー部211及び第2ホロー部212の上端部同士を連結する平板状の基板部213と、を有する。第1ホロー部211、第2ホロー部212及び基板部213は、上枠21の延び方向の全長に亘って延びている。本実施形態の第1ホロー部211及び第2ホロー部212は、基板部213から下方に向けて同一の高さで突出しているが、必ずしも同一の高さで突出していなくてもよい。
【0013】
第1ホロー部211と第2ホロー部212とは、室内外方向に離隔して平行に配置される。これによって、第1ホロー部211と第2ホロー部212と基板部213との間には、上枠21の延び方向の全長に亘る溝部214が形成される。溝部214は、下方に向けて開放し、障子3の上端部を収容する。基板部213は、溝部214の内底面を構成する。第1ホロー部211の下端部には、室内側に向けて突出し、障子3の室外側の面に弾性的に接触する封止部215が一体に設けられる。第2ホロー部212の下端部には、室外側に向けて突出し、障子3の室内側の面に弾性的に接触するヒレ部216が一体に設けられる。上枠21は、基板部213を貫通する固定ねじSC1によって、額縁101の上部内面に固定される。
【0014】
枠体2の下枠22は、樹脂材によって一体に押出し成形されている。下枠22は、室外側に配置される断面矩形の中空構造を有する第1ホロー部221と、室内側に配置される断面矩形の中空構造を有する第2ホロー部222と、第1ホロー部221及び第2ホロー部222の下端部同士を連結する平板状の基板部223と、を有する。第1ホロー部221、第2ホロー部222及び基板部223は、下枠22の延び方向の全長に亘って延びている。本実施形態の第1ホロー部221及び第2ホロー部222は、基板部223から上方に向けて同一の高さで突出しているが、必ずしも同一の高さで突出していなくてもよい。
【0015】
第1ホロー部221と第2ホロー部222とは、室内外方向に離隔して平行に配置される。これによって、第1ホロー部221と第2ホロー部222と基板部223との間には、上枠21と同様に、下枠22の延び方向の全長に亘る溝部224が形成される。溝部224は、上方に向けて開放し、障子3の下端部を収容する。基板部223は、溝部224の内底面を構成する。第1ホロー部221の上端部には、室内側に向けて突出し、障子3の室外側の面に弾性的に接触する封止部225が一体に設けられる。第2ホロー部222の上端部には、室外側に向けて突出し、障子3の室内側の面に弾性的に接触するヒレ部226が一体に設けられる。下枠22は、基板部223を貫通する固定ねじSC2によって、額縁101の下部内面に固定される。
【0016】
枠体2の縦枠23,24は、それぞれ樹脂材によって略L字状に一体に押出し成形されている。縦枠23,24は、上枠21と下枠22との間に亘って上下に延びている。縦枠23,24は、額縁101の縦方向に沿って所定幅で延びる基板部231,241と、基板部231,241の室外端部から額縁101の内側に向けて略直角に延びる室外壁部232,242と、室外壁部232,242の内端部から室内側に向けて略直角に延びる当接片部233,243と、を有する。
【0017】
当接片部233,243は、障子3の室外側の面に接触するように、基板部231,241に比べて幅狭に形成される。当接片部233,243の先端には、それぞれ障子3の室外側の面に弾性的に接触する封止部234,244が一体に設けられる。縦枠23,24は、基板部231,241を貫通する固定ねじSC3,SC4によって、額縁101の左右の側部内面にそれぞれ固定される。
【0018】
障子3は、上桟31と、下桟32と、左右の縦框33,34と、を矩形に框組みした框体30の内側に、グレイジングチェンネル351を介してガラス等の面材35を納めることによって構成される。上桟31及び下桟32は、
図2に示すように、金属製芯材311,321と、その外側を覆う樹脂製カバー材312,322と、樹脂製カバー材312,322の上端面及び下端面に装着される樹脂製の上端カバー材313及び下端カバー材323と、によってそれぞれ構成される。縦框33,34は、
図3に示すように、金属製芯材331,341と、その外側を覆う樹脂製カバー材332,342と、によってそれぞれ構成される。
【0019】
図1に示すように、障子3は、左右の縦框33,34の間に上桟31及び下桟32が配置される縦勝ち構造を有する。詳しくは、左右の縦框33,34は、障子3の高さ方向の全長に亘って延びている。上桟31及び下桟32は、左右の縦框33,34の間に配置され、縦框33,34の上端部同士及び下端部同士をそれぞれ連結している。下桟32の室内側の面の中央部には、略コ字型のハンドル36が取り付けられている。
【0020】
障子3は、上枠21の溝部214と下枠22の溝部224に対して、次のようにして室内側からケンドン式で挿入される。まず、障子3の上端部が上枠21の溝部214の奥深くまで挿入される。次に、障子3の下端部が下枠22の溝部224に位置合わせされる。その後、障子3が下降することによって、障子3の下端部が下枠22の溝部224に挿入される。これによって、障子3の上端部及び下端部がそれぞれ溝部214,224に収容され、障子3が上枠21と下枠22とに嵌め込まれて保持される。左右の縦枠23,24は、当接片部233,243の先端の封止部234,244を障子3の室外側の面に当接させるだけであり、障子3を保持しない。
【0021】
上枠21の溝部214と下枠22の溝部224の深さは同一である。しかし、
図2に示すように、下枠22の溝部224の内部には、障子3の下端部を支持する複数の樹脂製のライナー227が所定間隔で設けられている。ライナー227は、ブロック状に形成され、下枠22の第1ホロー部221及び第2ホロー部222の高さよりも少し低い高さを有している。そのため、下枠22の溝部224に収容される障子3の下端面は、下枠22の第1ホロー部221及び第2ホロー部222の上端面よりも若干低い位置に配置される。
【0022】
この状態において、障子3の上端部は、上枠21の溝部214に収容された状態を維持して上枠21と係合している。障子3の下端部は、下枠22の溝部224に収容された状態を維持して下枠22と係合している。上枠21の封止部215及びヒレ部216は、障子3の上端部に対して室外側及び室内側からそれぞれ当接する。これによって、上枠21において、障子3の上端部のガタツキの防止、室外からのごみ等の侵入の阻止、及び気密性の確保が達成される。下枠22の封止部225及びヒレ部226は、障子3の下端部に対して室外側及び室内側からそれぞれ当接する。これによって、下枠22において、障子3の下端部のガタツキの防止、室外からのごみ等の侵入の阻止、及び気密性の確保が達成される。
【0023】
外れ止め部材4は、金属製あるいは樹脂製の略直方体状のブロック体からなり、上記のように障子3がケンドン式で枠体2に取り付けられた後の左右の縦枠23,24に、それぞれ着脱可能に取り付けられる。
【0024】
外れ止め部材4は、
図2及び
図3に示すように、障子3の室内側の縦枠23,24の基板部231,241の内面に、取付ねじ41によって、枠体2の内側に向けて突出するように取り付けられる。外れ止め部材4の長さ方向は、縦枠23,24の延び方向に沿っている。外れ止め部材4は、
図2及び
図3に示すように、基板部231,241の内面に取り付けられた状態で、障子3の縦框32,33の室内側の面32a,33aに接している。そのため、障子3が枠体2から室内側に向けて外れる方向に移動した場合に、外れ止め部材4が障子3の縦框33,34に当接することによって障子3の移動を阻止し、障子3と枠体2との係合状態を維持する。
【0025】
本実施形態の外れ止め部材4は、左右の縦枠23,24の延び方向の中央部近傍に1つずつ取り付けられている。外れ止め部材4は、障子3が上方に移動した場合及び障子3が下方に移動した場合のいずれにおいても、障子3の縦框33,34の室内側の面33a,34aに当接することができる。そのため、最少数の外れ止め部材4で、障子3の上端部及び下端部が上枠21及び下枠22からそれぞれ室内側に向けて外れる方向に移動することを阻止することができる。
【0026】
外れ止め部材4の取り付け位置である縦枠23,24の延び方向の中央部近傍は、縦枠23,24の延び方向の中央部を基準にして、その上方及び下方の所定の範囲を含み得る。詳しくは、外れ止め部材4は、
図4A及び
図4Bを参照して、以下の条件を満たす位置に取り付けることができる。これによって、外れ止め部材4の取り付け位置の自由度が向上する。
【0027】
HU≧WU/tanθU+DU 且つ、HL≧WL/tanθL+DL
HU:外れ止め部材4の取り付け位置の上限位置
HL:外れ止め部材4の取り付け位置の下限位置
WU:上枠21の第2ホロー部212の見込み方向の厚み
WL:下枠22の第2ホロー部222の見込み方向の厚み
DU:上枠21の第2ホロー部212の基板部213からの高さ
DL:下枠22の第2ホロー部222の基板部223からの高さ
θU:障子3が上枠21から外れる角度
θL:障子3が下枠22から外れる角度
【0028】
図4Aにおいて、障子3Aは、下端が下枠22から外れる様子を示し、障子3Bは、上端が上枠21から外れる様子を示す。
図4Bにおいて、外れ止め部材4の取り付け位置の上限位置H
Uは、障子3の上端(H
U0)から下方に向かう距離を示し、外れ止め部材4の取り付け位置の下限位置H
Lは、障子3の下端(H
L0)から上方に向かう距離を示す。
【0029】
外れ止め部材4は、左右の縦枠23,24のうちのいずれか一方のみに取り付けられてもよい。本実施形態の外れ止め部材4のように、左右の縦枠23,24にそれぞれ取り付けられる場合は、小さな外れ止め部材4であっても、障子の3の枠体2からの外れを効果的に阻止することができる。
【0030】
本実施形態の外れ止め部材4は、左右の縦枠23,24の同一の高さに配置されているため、左右の外れ止め部材4が室内側からの観察者に対して意匠的に違和感を与えることがない。左右の外れ止め部材4は、障子3の枠体2から室内側に向けて外れる方向の移動を阻止することができるものであれば、左右の縦枠23,24で異なる高さに配置されていてもよい。
【0031】
外れ止め部材4は、略直方体からなるブロック形状に限定されない。図示しないが、外れ止め部材4は、縦枠23,24から枠体2の内側に向けて突出し、障子3の縦框33,34に対して当接可能な形状であれば、円柱形状、板形状等であってもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 FIX窓、 2 枠体、 3 障子、 4 外れ止め部材、 21 上枠、 22 下枠、 23,24 縦枠、 30 框体、 31 上桟、 32 下桟、 33,34 縦框、 35 面材