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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046989
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】鉄道車両用台車
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/26 20060101AFI20230329BHJP
   B61F 5/30 20060101ALI20230329BHJP
   F16F 15/04 20060101ALI20230329BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20230329BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20230329BHJP
   F16F 1/04 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B61F5/26
B61F5/30 C
F16F15/04 P
F16F15/08 K
F16F1/387 A
F16F1/387 C
F16F1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155869
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】森 加久見
(72)【発明者】
【氏名】大庭 拓也
(72)【発明者】
【氏名】花井 勝祥
(72)【発明者】
【氏名】矢追 貴士
(72)【発明者】
【氏名】金屋 大三
(72)【発明者】
【氏名】滝野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】神谷 翔太
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA05
3J048BA08
3J048BC02
3J048DA01
3J048EA15
3J059AA01
3J059BA01
3J059BA42
3J059BA43
3J059BB01
3J059BC01
3J059BC06
3J059CB02
3J059GA02
(57)【要約】
【課題】直線区間における走行安定性を維持しつつ、曲線区間における操舵性を高められる鉄道車両用台車を提供する。
【解決手段】本開示は、台車枠と、異なる車軸をそれぞれ保持する第1軸箱及び第2軸箱と、第1軸箱を支持する第1支持装置と、台車枠のレール方向において第1支持装置とずれた位置で第2軸箱を支持する第2支持装置とを備える鉄道車両用台車である。第1支持装置及び第2支持装置は、上下方向、レール方向、及び枕木方向の少なくともいずれかの方向において弾性変形する第1弾性体と、台車枠に支持されると共に、第1弾性体を保持する保持部材と、台車枠と保持部材とに挟まれた介在部材と、を有する。第2支持装置の介在部材は、第1支持装置の介在部材よりも硬い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台車枠と、
異なる車軸をそれぞれ保持する第1軸箱及び第2軸箱と、
前記第1軸箱を支持する第1支持装置と、
前記台車枠のレール方向において前記第1支持装置とずれた位置で前記第2軸箱を支持する第2支持装置と、
を備え、
前記第1支持装置及び前記第2支持装置は、それぞれ、
上下方向、前記レール方向、及び枕木方向の少なくともいずれかの方向において弾性変形するように構成された第1弾性体と、
前記台車枠に支持されると共に、前記第1弾性体を保持する保持部材と、
前記台車枠と前記保持部材とに挟まれた介在部材と、
を有し、
前記第2支持装置の前記介在部材は、前記第1支持装置の前記介在部材よりも硬い、鉄道車両用台車。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用台車であって、
前記第1支持装置及び前記第2支持装置は、それぞれ、
前記第1弾性体とは独立して、上下方向、前記レール方向、及び前記枕木方向の少なくともいずれかの方向において弾性変形するように構成された第2弾性体をさらに有し、
前記第1支持装置の前記第2弾性体は、前記第2支持装置の前記第2弾性体よりも柔らかい、鉄道車両用台車。
【請求項3】
請求項2に記載の鉄道車両用台車であって、
前記第1支持装置及び前記第2支持装置それぞれにおいて、
前記第1弾性体は、少なくとも上下方向において弾性変形するように構成され、
前記第2弾性体は、少なくとも前記レール方向において弾性変形するように構成される、鉄道車両用台車。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄道車両用台車であって、
前記第1支持装置及び前記第2支持装置それぞれにおいて、
前記第1弾性体は、コイルバネであり、
前記保持部材は、前記台車枠を貫通する挿通部を有し、
前記介在部材は、前記挿通部と前記台車枠との間に配置された筒体である、鉄道車両用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の台車には、車軸を保持する軸箱が軸箱支持装置を介して連結される。軸箱支持装置は、軸箱の上下方向、枕木方向、及びレール方向の荷重を負担する弾性体(例えば軸バネ、積層ゴム等)を有する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6309596号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の軸箱支持装置のレール方向の剛性が高い(つまり、軸箱が変位しにくい)と、曲線区間における操舵性が低下し、車輪の向きと進行方向との差であるアタック角が大きくなる。アタック角が大きくなると、軋み音が発生したり、車輪の摩耗量及びレールの摩耗量が多くなったりする。
【0005】
これに対し、軸箱支持装置のレール方向の剛性を低くする(つまり、軸箱を変位し易くする)ことで、アタック角を小さくできる。しかしながら、軸箱支持装置の剛性を低くすると、直線区間における鉄道車両の走行安定性の低下を招く。
【0006】
本開示の一局面は、直線区間における走行安定性を維持しつつ、曲線区間における操舵性を高められる鉄道車両用台車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、台車枠と、異なる車軸をそれぞれ保持する第1軸箱及び第2軸箱と、第1軸箱を支持する第1支持装置と、台車枠のレール方向において第1支持装置とずれた位置で第2軸箱を支持する第2支持装置と、を備える鉄道車両用台車である。
【0008】
第1支持装置及び第2支持装置は、それぞれ、上下方向、レール方向、及び枕木方向の少なくともいずれかの方向において弾性変形するように構成された第1弾性体と、台車枠に支持されると共に、第1弾性体を保持する保持部材と、台車枠と保持部材とに挟まれた介在部材とを有する。第2支持装置の介在部材は、第1支持装置の介在部材よりも硬い。
【0009】
このような構成によれば、介在部材の硬さの差異によって、第1支持装置の剛性を第2支持装置の剛性よりも小さくできる。そのため、第1支持装置を鉄道車両のレール方向前方に配置することで、曲線区間における操舵性を高められる。また、第2支持装置の剛性によって、直線区間における走行安定性を維持できる。
【0010】
本開示の一態様では、第1支持装置及び第2支持装置は、それぞれ、第1弾性体とは独立して、上下方向、レール方向、及び枕木方向の少なくともいずれかの方向において弾性変形するように構成された第2弾性体をさらに有してもよい。第1支持装置の第2弾性体は、第2支持装置の第2弾性体よりも柔らかくてもよい。このような構成によれば、第2支持装置の剛性を維持しつつ、第1支持装置の剛性を効果的に小さくできる。そのため、曲線区間における操舵性の向上効果を促進できる。
【0011】
本開示の一態様では、第1支持装置及び第2支持装置それぞれにおいて、第1弾性体は、少なくとも上下方向において弾性変形するように構成され、第2弾性体は、少なくともレール方向において弾性変形するように構成されてもよい。このような構成によれば、介在部材及び第2弾性体がそれぞれ、第1支持装置のレール方向(つまり前後方向)における剛性に寄与する。これにより、第1軸箱が水平面内にて(つまり上下方向と平行な軸を中心に)回転し易くなるため、曲線区間における操舵性の向上効果が促進される。
【0012】
本開示の一態様では、第1支持装置及び第2支持装置それぞれにおいて、第1弾性体は、コイルバネであり、保持部材は、台車枠を貫通する挿通部を有し、介在部材は、挿通部と台車枠との間に配置された筒体であってもよい。このような構成によれば、第1支持装置及び第2支持装置から台車枠への振動伝達を抑制しつつ、曲線区間における操舵性を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは、直線区間を走行している状態の実施形態における鉄道車両の模式的な底面図であり、図1Bは、曲線区間を走行している状態の実施形態における鉄道車両の模式的な底面図である。
図2図2は、図1の鉄道車両用台車の模式的な平面図である。
図3図3は、図2の第1支持装置を側方から視た模式的な部分断面図である。
図4図4は、図2の第1支持装置の模式的な平面図である。
図5図5は、図3の蓋近傍の模式的な拡大図である。
図6図6は、図3のVI-VI線での模式的な断面図である。
図7図7は、図3のVII-VII線での模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1Aに示す鉄道車両100は、車体101と、第1台車1Aと、第2台車1Bと、第1車軸102Aと、第2車軸102Bと、第3車軸102Cと、第4車軸102Dと、複数の車輪103とを備える。
【0015】
第1台車1A及び第2台車1Bは、車体101を下方から支持している。第1台車1A及び第2台車1Bは、鉄道車両100のレール方向において、互いに離れて配置されている。
【0016】
第1車軸102A及び第2車軸102Bは、第1台車1Aに支持されている。第3車軸102C及び第4車軸102Dは、第2台車1Bに支持されている。複数の車輪103は、車軸102A-102Dにそれぞれ取り付けられ、レール上を走行する。
【0017】
<第1台車>
図2に示すように、第1台車1Aは、台車枠2と、第1軸箱3A(いわゆる第2位の軸箱)と、第2軸箱3B(いわゆる第4位の軸箱)と、第3軸箱3C(いわゆる第1位の軸箱)と、第4軸箱3D(いわゆる第3位の軸箱)と、第1支持装置4A(いわゆる第2位の支持装置)と、第2支持装置4B(いわゆる第4位の支持装置)と、第3支持装置4Cと(いわゆる第1位の支持装置)、第4支持装置4D(いわゆる第3位の支持装置)とを有する。
【0018】
(台車枠)
台車枠2は、車体101の下部に取り付けられている。台車枠2は、横梁21と、第1側梁22(いわゆる第2位の側梁)と、第2側梁23(いわゆる第1位の側梁)とを有する。
【0019】
横梁21は、鉄道車両100のレール方向と直交する枕木方向(つまり枕木の延伸方向)に延伸している。第1側梁22及び第2側梁23は、横梁21に取り付けられている。第1側梁22及び第2側梁23は、枕木方向において互いに離れて配置されている。第1側梁22及び第2側梁23は、それぞれ、レール方向に延伸している。
【0020】
第1側梁22は、第1支持装置4Aが取り付けられた第1側梁外側端部22Aと、第2支持装置4Bが取り付けられた第1側梁内側端部22Bとを有する。第1側梁外側端部22Aは、第1側梁内側端部22Bに対し、レール方向における外側(つまり、第2台車1Bから遠い位置)に配置されている。
【0021】
第2側梁23は、第3支持装置4Cが取り付けられた第2側梁外側端部23Aと、第4支持装置4Dが取り付けられた第2側梁内側端部23Bとを有する。第2側梁外側端部23Aは、第2側梁内側端部23Bに対し、レール方向における外側に配置されている。
【0022】
(軸箱)
第1軸箱3Aは、第1支持装置4Aによって支持されている。第2軸箱3Bは、第2支持装置4Bによって支持されている。第3軸箱3Cは、第3支持装置4Cによって支持されている。第4軸箱3Dは、第4支持装置4Dによって支持されている。
【0023】
第1軸箱3A及び第3軸箱3Cは、図1Aに示す外側の第1車軸102Aを保持している。第2軸箱3B及び第4軸箱3Dは、図1Aに示す内側の第2車軸102Bを保持している。
【0024】
(第1支持装置)
第1支持装置4Aは、第1側梁22の第1側梁外側端部22Aに取り付けられると共に、第1軸箱3Aを支持している。
【0025】
図3及び図4に示すように、第1支持装置4Aは、第1弾性体41と、第1保持部材42と、介在部材43と、第2弾性体44と、第2保持部材45と、第3弾性体46と、蓋47とを有する。
【0026】
(第1弾性体)
第1弾性体41は、少なくとも上下方向において弾性変形するように構成されている。具体的には、第1弾性体41は、上下方向と平行な中心軸を有するコイルバネである。
【0027】
第1弾性体41には、第1保持部材42の軸部421が軸方向に挿入されている。第1弾性体41は、第1軸箱3Aの上下方向の荷重を負担する。第1弾性体41の中心軸C1は、第1車軸102Aの軸心P0と交差する。
【0028】
第1弾性体41の上部は、第1側梁22の上梁221と下梁222とを連結する縦板223によって形成された筒体(つまりバネ帽)の内部に配置されている。第1弾性体41の下部は、下梁222よりも下方に突出している。
【0029】
(第1保持部材)
第1保持部材42は、第1軸箱3Aを介して第1車軸102Aに支持されると共に、第1弾性体41を保持している。第1保持部材42は、軸部421と、フランジ部422と
、台座部423と、挿通部424と、ゴム座425とを有する。
【0030】
軸部421は、中心軸が上下方向と平行となるように配置された円筒状の部位である。軸部421の外周面には、第1弾性体41が巻回されている。また、軸部421の内部には、第3弾性体46が配置されている。軸部421の中心軸は、第1車軸102Aの軸心P0と交差する。
【0031】
フランジ部422は、軸部421の上端部に連結された円板状の部位である。フランジ部422の外径は、軸部421の外径よりも大きい。フランジ部422は、第1弾性体41の上端部を保持する。
【0032】
台座部423は、基部423Aと、支持部423Bとを有する。基部423Aは、第1弾性体41の下端部を保持する板状の部位である。基部423Aには、第1軸箱3Aが下方から固定されている。
【0033】
支持部423Bは、基部423Aから上方に突出した柱状の部位である。支持部423Bの上端部は、軸部421内に挿入されている。支持部423Bは、軸部421の内部において、第3弾性体46を支持している。
【0034】
台座部423は、第3弾性体46を介して、軸部421に対して上下方向に移動可能に連結されている。そのため、第1軸箱3Aが上方に変位すると、台座部423は、第1弾性体41を下方から圧縮しながら、上方に移動する。
【0035】
挿通部424は、フランジ部422の上面から上方に突出する円筒状又は円柱状の部位である。挿通部424は、第1側梁22を上下方向に貫通している。具体的には、挿通部424は、上梁221に設けられた貫通孔に挿通されている。挿通部424の外径は、軸部421の外径よりも小さい。
【0036】
ゴム座425は、フランジ部422の上面に配置されている。ゴム座425の中心部には、挿通部424が挿通されている。ゴム座425は、フランジ部422と上梁221とによって上下方向に挟まれている。ゴム座425は、上下方向及び挿通部424の径方向に弾性変形可能である。
【0037】
(介在部材)
介在部材43は、台車枠2と第1保持部材42とに挟まれるように配置されている。具体的には、介在部材43は、第1保持部材42の挿通部424と第1側梁22の上梁221との間に配置された筒体(つまりブッシュ)である。
【0038】
図5に示すように、介在部材43は、挿通部424の外周面のうち、少なくとも上梁221に挿通されている部分を全周にわたって覆っている。介在部材43は、上梁221の貫通孔内に配置され、挿通部424の径方向において上梁221と挿通部424とに挟まれている。また、介在部材43の下端部は、ゴム座425の上面に接触している。
【0039】
第1支持装置4Aにおける介在部材43は、ゴムで構成されている。介在部材43は、挿通部424の径方向に弾性変形可能である。介在部材43は、第1軸箱3Aのレール方向及び枕木方向の荷重を負担する。
【0040】
(第2弾性体)
図3及び図4に示す第2弾性体44は、第1弾性体41とは独立して、台車枠2の上下方向、レール方向(つまり前後方向)及び枕木方向(つまり左右方向)において弾性変形
するように構成されている。
【0041】
図6に示すように、第2弾性体44は、第1円筒積層ゴム441と、第1内筒442と、第1外筒443と、第1筐体444とを有する。
【0042】
第1円筒積層ゴム441は、複数のゴム板441Aと複数の金属板441Bとを有する。複数のゴム板441Aと複数の金属板441Bとは、円筒の径方向において交互に積層されている。ゴム板441A及び金属板441Bは、第1内筒442の周方向に沿って湾曲している。つまり、複数のゴム板441Aは、それぞれ、円弧状に構成されている。
【0043】
第1円筒積層ゴム441には、径方向において対向する2か所の空隙部441Cが形成されている。空隙部441Cは、ゴム板441A及び金属板441Bが配置されていない空間である。空隙部441Cは、枕木方向において対向する位置に設けられている。第1円筒積層ゴム441は、左右対称の形状を有する。
【0044】
第1内筒442は、第1円筒積層ゴム441の径方向内側に配置され、第1円筒積層ゴム441の内周面に固定された剛性を有する円筒体である。第1内筒442には、第2保持部材45が挿通されている。
【0045】
第1外筒443は、第1円筒積層ゴム441の径方向外側に配置され、第1円筒積層ゴム441の外周面に固定された剛性を有する円筒体である。第1筐体444は、第1外筒443の径方向外側に配置され、第1外筒443の外周面に固定された円筒体である。第1筐体444は、第1軸箱3Aの支持腕31(図3参照)に固定されている。
【0046】
第1円筒積層ゴム441の中心軸(つまり、第1内筒442の中心軸)C2は、第1弾性体41の中心軸C1と平行である。第1円筒積層ゴム441は、上下方向、レール方向及び枕木方向に弾性変形可能である。第2弾性体44は、第1軸箱3Aのレール方向の荷重を主に負担する。
【0047】
(第2保持部材)
第2保持部材45は、台車枠2に支持されると共に、第2弾性体44を保持している。具体的には、第2保持部材45は、第1側梁22の下梁222と、第2弾性体44の第1内筒442とに固定されている。
【0048】
(第3弾性体)
図3及び図4に示す第3弾性体46は、第1弾性体41及び第2弾性体44とは独立して、上下方向、レール方向及び枕木方向において弾性変形するように構成されている。
【0049】
図7に示すように、第3弾性体46は、第2円筒積層ゴム461と、第2内筒462と、第2外筒463とを有する。
【0050】
第2円筒積層ゴム461は、複数のゴム板461Aと複数の金属板461Bとを有する。第2円筒積層ゴム461の構成は、第2弾性体44の第1円筒積層ゴム441と同じである。ただし、第2円筒積層ゴム461では、2か所の空隙部461Cはレール方向に対向する位置に設けられている。そのため、第2円筒積層ゴム461は、前後対称の形状を有する。
【0051】
第2内筒462は、第2円筒積層ゴム461の径方向内側に配置され、第2円筒積層ゴム461の内周面に固定された剛性を有する円筒体である。第2内筒462には、第1保持部材42の支持部423Bが挿通されている。
【0052】
第2外筒463は、第2円筒積層ゴム461の径方向外側に配置され、第2円筒積層ゴム461の外周面に固定された剛性を有する円筒体である。第2外筒463は、第1保持部材42の軸部421の内周面に固定されている。
【0053】
第2円筒積層ゴム461の中心軸(つまり第2内筒462の中心軸)は、第1弾性体41の中心軸C1と一致する。第2円筒積層ゴム461は、上下方向、レール方向及び枕木方向に弾性変形可能である。第3弾性体46は、第1軸箱3Aの枕木方向の荷重を主に負担する。
【0054】
(蓋)
図5に示す蓋47は、第1保持部材42の挿通部424の上端部に連結されている。具体的には、蓋47は、挿通部424のうち上梁221よりも上方に突出した部位に係合する爪47Aを有する。
【0055】
(第2支持装置)
図2に示す第2支持装置4Bは、第1側梁22の第1側梁内側端部22Bに取り付けられている。第2支持装置4Bは、台車枠2のレール方向(つまり前後方向)において第1支持装置4Aとずれた位置で第2軸箱3Bを支持している。
【0056】
第2支持装置4Bは、第1支持装置4Aと同じ構造を有する。つまり、第2支持装置4Bは、図4及び図5に示す、第1弾性体41と、第1保持部材42と、介在部材43と、第2弾性体44と、第2保持部材45と、第3弾性体46と、蓋47とを有する。
【0057】
ただし、第2支持装置4Bの介在部材43は、第1支持装置4Aの介在部材43よりも硬い。つまり、第2支持装置4Bの介在部材43のバネ定数(つまり剛性)は、第1支持装置4Aの介在部材43のバネ定数よりも大きい。
【0058】
第2支持装置4Bの介在部材43は、例えば、第1支持装置4Aの介在部材43よりも硬いゴム、又は弾性変形しない剛性材で構成される。この剛性材としては、例えば絶縁性のプラスチックが挙げられる。
【0059】
また、第1支持装置4Aの第2弾性体44は、第2支持装置4Bの第2弾性体44よりも柔らかい。具体的には、第2支持装置4Bの第2弾性体44のレール方向のバネ定数は、第1支持装置4Aの第2弾性体44のレール方向のバネ定数よりも大きい。
【0060】
第2支持装置4Bの第1円筒積層ゴム441の空隙部441Cの大きさ(つまり円周方向の長さ)を第1支持装置4Aの第1円筒積層ゴム441の空隙部441Cの大きさよりも小さくするか、又は第2支持装置4Bの第1円筒積層ゴム441の空隙部441Cを無くすことで、第2支持装置4Bの第2弾性体44を第1支持装置4Aの第2弾性体44よりも硬くできる。
【0061】
また、第2支持装置4Bの第1円筒積層ゴム441を構成するゴム板441Aの硬さ又は厚みを第1支持装置4Aよりも大きくすることで、第2支持装置4Bの第2弾性体44を第1支持装置4Aの第2弾性体44よりも硬くすることも可能である。
【0062】
(第3支持装置及び第4支持装置)
第3支持装置4Cは、第2側梁23の第2側梁外側端部23Aに取り付けられると共に、第3軸箱3Cを支持ししている。第3支持装置4Cは、第1側梁22に変えて第2側梁23に取り付けられている点を除いて、第1支持装置4Aと同じ構造を有する。
【0063】
第4支持装置4Dは、第2側梁23の第2側梁内側端部23Bに取り付けられると共に、第4軸箱3Dを支持ししている。第4支持装置4Dは、第1側梁22に変えて第2側梁23に取り付けられている点を除いて、第2支持装置4Bと同じ構造を有する。
【0064】
つまり、第4支持装置4Dの介在部材43は、第3支持装置4Cの介在部材43よりも硬い。また、第3支持装置4Cの第2弾性体44は、第4支持装置4Dの第2弾性体44よりも柔らかい。
【0065】
<第2台車>
図1Aに示す第2台車1Bは、第1台車1Aを点対称とした構成を有する。つまり、第2台車1Bは、図2に示す、台車枠2と、第1軸箱3Aと、第2軸箱3Bと、第3軸箱3Cと、第4軸箱3Dと、第1支持装置4Aと、第2支持装置4Bと、第3支持装置4Cと、第4支持装置4Dとを有する。
【0066】
第2台車1Bでは、第1軸箱3A、第1支持装置4A、第3軸箱3C及び第3支持装置4Cが、第2軸箱3B、第2支持装置4B、第4軸箱3D及び第4支持装置4Dに対し、レール方向における外側(つまり、第1台車1Aから遠い位置であり、図1Aにおける右側)に配置されている。
【0067】
第2台車1Bの第1軸箱3A及び第3軸箱3Cは、図1Aに示す外側の第4車軸102Dを保持している。第2台車1Bの第2軸箱3B及び第4軸箱3Dは、図1Aに示す内側の第3車軸102Cを保持している。
【0068】
<台車の挙動>
図1Aに示すように、鉄道車両100が直線区間を走行する状態では、車軸102A-102Dは、それぞれ、鉄道車両100の枕木方向と平行となる。
【0069】
一方、図1Bに示すように、鉄道車両100が曲線区間を走行する状態では、車軸102A-102Dは、それぞれ、カーブに追従するように鉄道車両100の枕木方向に対し傾斜する。
【0070】
このとき、第1台車1Aにおいて、第1支持装置4Aに支持された第1軸箱3Aは、第2支持装置4Bに支持された第2軸箱3Bよりも台車枠2に対する変位量が大きくなる。同様に、第3支持装置4Cに支持された第3軸箱3Cは、第4支持装置4Dに支持された第4軸箱3Dよりも台車枠2に対する変位量が大きくなる。
【0071】
その結果、第2軸箱3B及び第4軸箱3Dに保持された第2車軸102Bの、車体101の枕木方向に対する傾斜角度が、第1軸箱3A及び第3軸箱3Cに保持された第1車軸102Aの傾斜角度よりも小さくなる。
【0072】
第2台車1Bでも同様の原理から、第2軸箱3B及び第4軸箱3Dに保持された第3車軸102Cの傾斜角度が、第1軸箱3A及び第3軸箱3Cに保持された第4車軸102Dの傾斜角度よりも小さくなる。
【0073】
つまり、鉄道車両100において、レール方向外側の第1車軸102A及び第4車軸102Dの傾斜角度に対し、レール方向内側の第2車軸102B及び第3車軸102Cの傾斜角度が小さくなる。
【0074】
なお、このような第1台車1A及び第2台車1Bの挙動は、第1台車1Aが先頭となる
方向に鉄道車両100が走行する場合と、第2台車1Bが先頭となる方向に鉄道車両100が走行する場合との双方において共通である。
【0075】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)介在部材43の硬さの差異によって、第1支持装置4Aの剛性を第2支持装置4Bの剛性よりも小さくできる。そのため、第1支持装置4Aを鉄道車両100のレール方向前方に配置することで、曲線区間における操舵性を高められる。また、第2支持装置4Bの剛性によって、直線区間における走行安定性を維持できる。
【0076】
(1b)第2弾性体44の硬さを変えることで、第2支持装置4Bの剛性を維持しつつ、第1支持装置4Aの剛性を効果的に小さくできる。そのため、曲線区間における操舵性の向上効果を促進できる。
【0077】
(1c)第1弾性体41が上下方向において弾性変形し、第2弾性体44がレール方向において弾性変形することで、介在部材43及び第2弾性体44がそれぞれ、第1支持装置4Aのレール方向(つまり前後方向)における剛性に寄与する。これにより、第1軸箱3Aが水平面内にて(つまり上下方向と平行な軸を中心に)回転し易くなるため、曲線区間における操舵性の向上効果が促進される。
【0078】
(1d)介在部材43が挿通部424と台車枠2との間に配置された筒体であることで、第1支持装置4A及び第2支持装置4Bから台車枠2への振動伝達を抑制しつつ、曲線区間における操舵性を高められる。
【0079】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0080】
(2a)上記実施形態の鉄道車両用台車において、介在部材は、必ずしも第1保持部材の挿通部と台車枠との間に配置されなくてもよい。また、介在部材は、必ずしも筒体でなくてもよい。
【0081】
(2b)上記実施形態の鉄道車両用台車において、第1支持装置及び第2支持装置は、必ずしも第2弾性体及び第3弾性体を有しなくてもよい。例えば、第1支持装置及び第2支持装置は、上下方向に弾性変形する弾性体のみを有する、いわゆるウィング式の支持装置であってもよい。
【0082】
(2c)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0083】
1A,1B…台車、2…台車枠、3A,3B,3C,3D…軸箱
4A,4B,4C,4D…支持装置、21…横梁、22…第1側梁、23…第2側梁、
31…支持腕、41…第1弾性体、42…第1保持部材、43…介在部材、
44…第2弾性体、45…第2保持部材、46…第3弾性体、47…蓋、
100…鉄道車両、101…車体、102A,102B,102C,102D…車軸、
103…車輪、221…上梁、222…下梁、223…縦板、421…軸部、
422…フランジ部、423…台座部、423A…基部、423B…支持部、
424…挿通部、425…ゴム座、441,461…円筒積層ゴム、
441A,461A…ゴム板、441C,461C…空隙部、442,462…内筒、
443,463…外筒、444…筐体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7