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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023046997
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】電磁ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/00 20060101AFI20230329BHJP
【FI】
F16D55/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155880
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 康一朗
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA62
3J058AA69
3J058AA78
3J058AA88
3J058BA21
3J058BA70
3J058CD19
3J058EA15
3J058FA37
(57)【要約】
【課題】ブレーキ全体を分解することなく緩衝材を着脱することができる電磁ブレーキ装置の提供。
【解決手段】電磁ブレーキ装置1は、電磁コイル10が設けられた固定鉄心11と、固定鉄心11に対向配置される可動鉄心12と、可動鉄心12を固定鉄心11から離反する方向に付勢する制動ばね111と、固定鉄心11および可動鉄心12に着脱可能に装着され、固定鉄心11と可動鉄心12との間に配置される緩衝材15と、を備える。緩衝材15には、互いに離間して配置される複数の緩衝部15aと、緩衝部15aよりも伸び率が大きい弾性材で形成され、複数の緩衝部15aを互いに連結する連結部15bとが設けられる。通電状態のときは、複数の緩衝部15aが固定鉄心11および可動鉄心12により挟持され、電非通電状態のときは、複数の緩衝部15aが非挟持状態とされる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁コイルが設けられた固定鉄心と、
前記固定鉄心に対向配置され、制動対象のブレーキディスクに押し付けられるブレーキパッドを有する可動鉄心と、
前記可動鉄心を前記固定鉄心から離反する方向に付勢する制動ばねと、
前記固定鉄心および/または前記可動鉄心に着脱可能に装着され、前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に配置される緩衝材と、を備え、
前記緩衝材には、互いに離間して配置される複数の緩衝部と、前記緩衝部よりも伸び率が大きい弾性材で形成され、前記複数の緩衝部を互いに連結する連結部とが設けられ、
前記電磁コイルが通電状態のときは、前記可動鉄心が電磁力により前記固定鉄心側に吸引されて前記ブレーキパッドと前記ブレーキディスクとが離間し、かつ、前記複数の緩衝部が前記固定鉄心および前記可動鉄心により挟持され、
前記電磁コイルが非通電状態のときは、前記可動鉄心が前記制動ばねにより前記固定鉄心から離反して前記ブレーキパッドが前記ブレーキディスクに押圧され、かつ、前記複数の緩衝部が非挟持状態とされる、電磁ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁ブレーキ装置において、
前記緩衝材の少なくとも一部が、前記固定鉄心および前記可動鉄心の外周面から外部へ突出している、電磁ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁ブレーキ装置において、
前記固定鉄心の外周面には第1のフランジが形成され、
前記可動鉄心の外周面には、前記第1のフランジと対向するように第2のフランジが形成され、
前記緩衝材は前記第1のフランジと前記第2のフランジとの間に配置され、
前記複数の緩衝部は、通電状態において前記第1のフランジおよび前記第2のフランジにより挟持され、非通電状態において非挟持状態とされる、電磁ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁ブレーキ装置において、
前記連結部は、前記固定鉄心と前記可動鉄心との間の隙間領域と外部とを遮蔽する、電磁ブレーキ装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁ブレーキ装置において、
前記固定鉄心および前記可動鉄心には、それぞれの対向面の外縁領域にリング状の溝がそれぞれ形成され、
前記複数の緩衝部は、前記固定鉄心の前記溝と前記可動鉄心の前記溝との間において、前記溝の円周方向に互いに離間して配設され、
前記連結部は、前記固定鉄心の外周面と前記可動鉄心の外周面とに掛け渡されて前記固定鉄心と前記可動鉄心との間の隙間領域を覆い、かつ、前記複数の緩衝部の外周側に前記複数の緩衝部と一体に形成されたリング状の弾性部材である、電磁ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベータの巻上機のブレーキ装置として電磁ブレーキが使用されている。そのような電磁ブレーキ装置において、起動時に発生する騒音を低減することを目的として、固定鉄心と可動鉄心の間に緩衝材として弾性体を設置する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。緩衝材は、弾性体の経年劣化により定期的にメンテナンスする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-180626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の電磁ブレーキ装置では、緩衝材を交換する際にブレーキを分解しなければならない。そのため、長いメンテナンス時間を要し、長時間のエレベータ停止が必要となってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様による電磁ブレーキ装置は、電磁コイルが設けられた固定鉄心と、前記固定鉄心に対向配置され、制動対象のブレーキディスクに押し付けられるブレーキパッドを有する可動鉄心と、前記可動鉄心を前記固定鉄心から離反する方向に付勢する制動ばねと、前記固定鉄心および/または前記可動鉄心に着脱可能に装着され、前記固定鉄心と前記可動鉄心との間に配置される緩衝材と、を備え、前記緩衝材には、互いに離間して配置される複数の緩衝部と、前記緩衝部よりも伸び率が大きい弾性材で形成され、前記複数の緩衝部を互いに連結する連結部とが設けられ、前記電磁コイルが通電状態のときは、前記可動鉄心が電磁力により前記固定鉄心側に吸引されて前記ブレーキパッドと前記ブレーキディスクとが離間し、かつ、前記複数の緩衝部が前記固定鉄心および前記可動鉄心により挟持され、前記電磁コイルが非通電状態のときは、前記可動鉄心が前記制動ばねにより前記固定鉄心から離反して前記ブレーキパッドが前記ブレーキディスクに押圧され、かつ、前記複数の緩衝部が非挟持状態とされる、電磁ブレーキ装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブレーキ全体を分解することなく緩衝材を着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明に係る電磁ブレーキ装置が用いられるエレベータ用巻上機の一例を示す図である。
図2図2は、A矢視図である。
図3図3は、電磁ブレーキ装置の縦断面図である。
図4図4は、B-B断面を示す図である。
図5図5は、C1-C1断面およびC2-C2断面を示す図である。
図6図6は、通電状態および非通電状態における緩衝材の状態を説明する図である。
図7図7は、可動鉄心側から固定鉄心および緩衝材を見た図である。
図8図8は、上述した実施の形態の変形例1を説明する図である。
図9図9は、上述した実施の形態の変形例2を説明する図である。
図10図10は、上述した実施の形態の変形例3を説明する図である。
図11図11は、変形例3における非通電状態および通電状態での緩衝材を示す図である。
図12図12は、上述した実施の形態の変形例4を説明する図である。
図13図13は、緩衝部が外部に突出する場合を説明する断面図である。
図14図14は、緩衝部が外部に突出する場合の緩衝材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。そのため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0009】
図1,2は、本発明に係る電磁ブレーキ装置が用いられるエレベータ用巻上機100の一例を示す図である。図1は、エレベータ用巻上機100の正面図である。図2は、図1のA矢視図である。エレベータ用巻上機100は、主に、乗りかごを昇降させるロープ(不図示)が装架されるシーブ3と、ブレーキディスク4と、3つの電磁ブレーキ装置1とを備える。シーブ3およびブレーキディスク4は、モータフレーム5および軸支持部6により回転支持された軸7に固定されている。シーブ3およびブレーキディスク4は、モータフレーム5に内蔵されたモータにより回転駆動される。
【0010】
各電磁ブレーキ装置1は、モータフレーム5の外周面に設けられたブレーキ支持部8に支持されている。複数のブレーキ支持部8はモータフレーム5の外周面の周方向に離間した位置に配置されている。各電磁ブレーキ装置1は、ブレーキディスク4の回転を制動する制動状態と、ブレーキディスク4の回転を許容する解放状態とに切り替え可能に構成されている。
【0011】
図3,4は、電磁ブレーキ装置1の要部を示す図である。図3は、電磁ブレーキ装置1の縦断面図である。図4は、図3のB-B断面を示す図である。電磁ブレーキ装置1は、電磁コイル10を内蔵した固定鉄心11と、固定鉄心11と離間して対向配置された可動鉄心12とを備えている。固定鉄心11は、図4に示すように円盤状に形成されている。電磁コイル10は、固定鉄心11に形成されたリング状の溝110内に収められている。溝110の外側には、制動ばね111が配設される穴112が複数形成されている。複数の穴112は溝110を囲むように分散して設けられている。
【0012】
固定鉄心11と対向配置される可動鉄心12も、固定鉄心11と同様に円盤状に形成されている。可動鉄心12には、ブレーキディスク4との対向面にロッド121が設けられている。ロッド121の先端には、ブレーキパッド13aが設けられている。ブレーキパッド13aに対して、ブレーキパッド13bが、ブレーキディスク4を間にしてブレーキパッド13aと対向して配置されている。ブレーキパッド13bは、電磁ブレーキ装置1のボディに形成されたロッド14の先端に設けられている。固定鉄心11の対向面の外縁領域にはリング形状の溝113が階段状に形成されている。可動鉄心12の対向面にも、固定鉄心11の溝113と対向する外縁領域に、リング状の溝123が階段状に形成されている。固定鉄心11と可動鉄心12との間には、緩衝材15が、固定鉄心11の外周面と可動鉄心12の外周面とに掛け渡されるように装着される。
【0013】
図4に示すように、緩衝材15は、互いに離間して配置される複数の緩衝部15aと、複数の緩衝部15aを互いに連結する連結部15bとを備えている。緩衝部15aと連結部15bとは、伸び率の異なる弾性材(例えば、ゴム等)で形成されている。複数の緩衝部15aは、連結部15bの内周側に一体に形成されている。連結部15bには、緩衝部15aよりも伸び率の大きい材料が用いられる。実施例として、緩衝部15aはシリコンゴム、連結部15bはエチレンプロピレンゴムが弾性材の材料として用いられる。
【0014】
図4に示す例では、8つの緩衝部15aが等間隔で円形に配置されている。図5は、図4のC1-C1断面およびC2-C2断面を示す図である。連結部15bの厚さh2は、緩衝部15aの厚さh1よりも大きく設定されている。図3に示すように、緩衝材15は、連結部15bが固定鉄心11および可動鉄心12の外周面に掛け渡されることで、固定鉄心11および可動鉄心12に装着されている。
【0015】
複数の緩衝部15aは、固定鉄心11の溝113と可動鉄心12の溝123との間の隙間空間に配置されている。緩衝部15aの径方向の最大寸法L1は、鉄心11,12の溝113,123の径方向の幅L2よりも若干小さく設定されている。そのため、図3に示すように、緩衝部15aの内周側先端と、溝113,123の内周側端面との間には隙間が形成されている。
【0016】
電磁ブレーキ装置1の制動時には、電磁コイル10は非通電状態とされる。非通電時には、可動鉄心12は、図3に示す制動ばね111の付勢力によってブレーキディスク4の方向に駆動される。図3は非通電状態を示したものであって、ブレーキパッド13aがブレーキディスク4に押圧されている。ブレーキディスク4は一対のブレーキパッド13a,13bにより挟圧され、回転状態から停止状態となる。
【0017】
図6は、電磁コイル10が通電状態および非通電状態における緩衝材15の状態を説明する図である。緩衝部15aの厚さh1は、非通電状態における溝113の底面と溝123の底面との間隔h3よりも小さく設定されている。そのため、非通電状態では、緩衝部15aは、固定鉄心11と可動鉄心12とにより挟圧されていない状態になっている。また、連結部15bの厚さh5は、h5>h3のように設定されている。そのため、通電状態および非通電状態のいずれにおいても、固定鉄心11と可動鉄心12との間の隙間領域Sと外部空間とは、連結部15bによって遮蔽されている。その結果、外部から隙間領域Sへの異物の混入を防止することができる。
【0018】
一方、電磁ブレーキ装置1の制動を解除する場合には、電磁コイル10は通電状態とされる。電磁コイル10が通電状態になると、電磁力により可動鉄心12が固定鉄心11に吸引される。この電磁力は、複数の制動ばね111による付勢力よりも大きく設定される。通電状態では、電磁力が制動ばね111の付勢力に打ち勝って、可動鉄心12が固定鉄心11側に移動する。その結果、ブレーキパッド13aがブレーキディスク4から離間し、ブレーキディスク4は一対のブレーキパッド13a,13bの挟圧から解放され、制動解除状態となる。
【0019】
電磁コイル10が通電状態になって可動鉄心12が固定鉄心11に吸引されると、緩衝材15の複数の緩衝部15aが固定鉄心11と可動鉄心12とにより挟圧される。この挟圧により、通電状態においては、複数の緩衝部15aが厚さ方向に圧縮変形される。緩衝材15は、可動鉄心12が固定鉄心11に吸引されたときの衝突音を低減させる目的で設けられている。
【0020】
非通電状態では、符号Gで示す部分において、溝113,123の側面と緩衝部15aとの間に隙間が生じている。一方、通電状態では、緩衝部15aが図示縦方向に変形して、溝113,123の側面と緩衝部15aとの隙間がゼロになっている。この隙間寸法は、通電時の緩衝部15aの変形量を考慮して設定される。
【0021】
次に、図7を参照して、緩衝材15の固定鉄心11および可動鉄心12への着脱を説明する。図7は、可動鉄心12側から固定鉄心11および緩衝材15を見た図である。二点鎖線で示す緩衝材15は、固定鉄心11および可動鉄心12に装着された状態を示す。図6に示したように、非通電状態では、緩衝材15の緩衝部15aは、固定鉄心11および可動鉄心12に対して非挟持状態(非挟圧状態)になっている。
【0022】
上述したように、連結部15bは、緩衝部材として機能する緩衝部15aよりも伸び率が大きい弾性材で形成されている。作業員は、緩衝材15の連結部15bを、図7の矢印で示すように固定鉄心11および可動鉄心12の外側方向に拡張変形させ、固定鉄心11の外側を軸方向に移動させて取り外す。緩衝材15を固定鉄心11および可動鉄心12に装着する場合には、取り外す場合と逆の作業を行えばよい。
【0023】
上述したように、本実施の形態では、連結部15bを緩衝部15aよりも伸び率が大きい弾性材で形成しているので、連結部15bを図7に示すように容易に拡張変形させることができる。そのため、緩衝材15が固定鉄心11と可動鉄心12との間に挟圧されていない非通電状態であれば、電磁ブレーキ装置1を分解することなく、緩衝材15を容易に交換することができる。その結果、メンテナンス作業性が向上し、メンテナンスに要する時間を低減することができる。
【0024】
さらに、図3に示すように、連結部15bが、固定鉄心11の外周面と可動鉄心12の外周面とに掛け渡されるように設けられているので、固定鉄心11と可動鉄心12との間の隙間領域Sと外部空間とは、連結部15bによって遮蔽される。その結果、外部から隙間領域Sへ異物が混入するのを防止することができる。
【0025】
(変形例1)
図8は、上述した実施の形態の変形例1を説明する図である。変形例1では、固定鉄心11の外周面にフランジ114が形成され、可動鉄心12の外周面にフランジ124が形成されている。図8に示す非通電状態においては、フランジ114およびフランジ124の対向面の間隔は、上記実施の形態の場合と同じh3(図6参照)に設定される。また、フランジ114の非対向面とフランジ124の非対向面との間隔h6は、連結部15bの厚さh5よりも小さく設定されている。その他の構成は、図3に示した構成と同様であるので説明を省略する。
【0026】
緩衝材15は、フランジ114とフランジ124との間に装着される。すなわち、連結部15bはフランジ114とフランジ124との間に掛け渡され、複数の緩衝部15aはフランジ114とフランジ124との間に配置される。連結部15bの厚さh5は、h5>h6のように設定されている。連結部15bは、フランジ114,124の側方に突出しているだけでなく、連結部15bの厚さ方向両端がフランジ114,124に対して軸方向(図示左右方向)に突出している。そのため、緩衝材15を鉄心11,12から外す際に、連結部15bの軸方向に突出している部分を利用することで、取り外し作業がより容易となる。
【0027】
(変形例2)
図9は、上述した実施の形態の変形例2を説明する図である。上述した実施の形態では、固定鉄心11および可動鉄心12の対向面にリング形状の溝113,123が形成されていたが、変形例2では、固定鉄心11および可動鉄心12の対向面は平らに形成されている。緩衝材15の連結部15bは、固定鉄心11の外周面と可動鉄心12の外周面とに掛け渡されている。緩衝材15の複数の緩衝部15aは、固定鉄心11および可動鉄心12の平らな対向面の間に配置される。
【0028】
図9は非通電状態を示したものであり、緩衝部15aの厚さh7は、固定鉄心11と可動鉄心12との間隔h8よりも小さく設定されている。非通電状態では、緩衝部15aは、固定鉄心11および可動鉄心12によって挟圧されていない。図示は省略するが、通電状態では、可動鉄心12が固定鉄心11に吸引され、緩衝部15aが固定鉄心11および可動鉄心12によって挟圧される。その他の構成は、図3に示した構成と同様であるので説明を省略する。変形例2では、固定鉄心11および可動鉄心12に対して溝113,123を形成していないので、加工コストの低減をさらに図ることができる。
【0029】
(変形例3)
図10,11は、上述した実施の形態の変形例3を説明する図である。図10は、緩衝材15の平面図とD-D断面とを示す図である。図11は、非通電状態および通電状態における緩衝材15の状態を示したものである。上述の図4,5に示す緩衝材15では、複数の緩衝部15aを円形状に分散配置し、その複数の緩衝部15aの外周側に連結部15bを一体に形成した。一方、変形例3における緩衝材15では、図10に示すように、連結部15bは、円形に配置された複数の緩衝部15aの外周側から内周側に亘って形成されている。
【0030】
図11に示すように、非通電状態では、溝113の底面と溝123の底面との間隔h3に対して、緩衝部15aの厚さh1はh1<h3のように設定されている。一方、通電状態における溝113,123の底面間の間隔h4はh4<h1となり、緩衝部15aは鉄心11,12間に挟圧される。緩衝材15を鉄心11,12に着脱する際には、緩衝部15aの外周側に形成されている連結部15bの部分を把持することで、着脱作業を容易に行うことができる。また、非通電状態および通電状態のいずれにおいても、鉄心11,12間の隙間領域Sは、緩衝部15aの内周側に形成されている連結部15bの部分によって塞がれている。そのため、外部から隙間領域Sへの異物混入が防止できる。
【0031】
なお、図10,11に示す例では、連結部15bが鉄心11,12の外周面から外部に突出する構成であったが、図13,14に示すように、緩衝部15aが外部に突出する構成としても良い。図13は、図3の場合と同様の電磁ブレーキ装置1の断面図である。図14は、緩衝材15の平面図である。図14に示すように、緩衝部15aの外周と連結部15bの外周とは同一の円周上にある。図13に示すように、同一円周上の緩衝部15aが存在する領域では、緩衝部15aが鉄心11,12の外周面から外部に突出する。一方、同一円周上の緩衝部15aが存在しない領域では、連結部15bが鉄心11,12の外周面から外部に突出している。そのため、外部に突出している緩衝部15aまたは連結部15bを利用して、緩衝材15の着脱を容易に行うことができる。
【0032】
(変形例4)
図12は、上述した実施の形態の変形例4を説明する図である。変形例4では、緩衝材15の連結部15bの形状が図3に示した構成と異なり、緩衝材15の断面形状がL字形状になっている。そして、リング状の連結部15bを固定鉄心11の外周面に係合させることで、緩衝材15を固定鉄心11に装着する。もちろん、連結部15bを可動鉄心12と係合させて、緩衝材15を可動鉄心12に装着するようにしても良い。
【0033】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0034】
(1)図3,4,6に示すように、電磁ブレーキ装置1は、電磁コイル10が設けられた固定鉄心11と、固定鉄心11に対向配置され、制動対象のブレーキディスク4に押し付けられるブレーキパッド13aを有する可動鉄心12と、可動鉄心12を固定鉄心11から離反する方向に付勢する制動ばね111と、固定鉄心11および可動鉄心12に着脱可能に装着され、固定鉄心11と可動鉄心12との間に配置される緩衝材15と、を備える。緩衝材15には、互いに離間して配置される複数の緩衝部15aと、緩衝部15aよりも伸び率が大きい弾性材で形成され、複数の緩衝部15aを互いに連結する連結部15bとが設けられ、電磁コイル10が通電状態のときは、可動鉄心12が電磁力により固定鉄心11側に吸引されてブレーキパッド13aとブレーキディスク4とが離間し、かつ、複数の緩衝部15aが固定鉄心11および可動鉄心12により挟持され、電磁コイル10が非通電状態のときは、可動鉄心12が制動ばね111により固定鉄心11から離反してブレーキパッド13aがブレーキディスク4に押圧され、かつ、複数の緩衝部15aが非挟持状態とされる。
【0035】
連結部15bは、緩衝部15aよりも伸び率が大きい弾性材で形成されるので、連結部15bを図7に示すように容易に拡張変形させることができる。そのため、緩衝材15が固定鉄心11と可動鉄心12との間に挟持されていない非通電状態において、電磁ブレーキ装置1を分解することなく、緩衝材15を容易に交換することができる。その結果、メンテナンス作業性が向上し、メンテナンスに要する時間を低減することができる。
【0036】
なお、図3,4,6に示す構成では、連結部15bが固定鉄心11と可動鉄心12との間に掛け渡されて、緩衝材15が固定鉄心11および可動鉄心12に装着される。しかし、緩衝材15が固定鉄心11のみに装着される構成(図12参照)としても良いし、緩衝材15が可動鉄心12のみに装着される構成としても良い。
【0037】
(2)さらに、図3、11または図13,14に示すように、緩衝材15の少なくとも一部が、固定鉄心11および可動鉄心12の外周面から外部へ突出している構成が好ましい。固定鉄心11および可動鉄心12に対して緩衝材15を着脱する際に、外周面から外部へ突出している部分を把持することで、容易に着脱作業を行うことができる。図3、11に示す例では連結部15bが突出しており、図13,14に示す例では緩衝部15aおよび連結部15bの両方が突出している。
【0038】
(3)上述した変形例1(図8参照)のように、固定鉄心11の外周面にフランジ114が形成され、可動鉄心12の外周面には、フランジ114と対向するようにフランジ124が形成され、緩衝材15はフランジ114とフランジ124との間に配置され、複数の緩衝部15aは、通電状態においてフランジ114とフランジ124との間に挟持され、非通電状態において非挟持状態とされる。このように、緩衝材15を鉄心11,12の外周面に突出したフランジ114,124の間に配置することで、緩衝材15の着脱作業が容易となる。
【0039】
(4)図3図10,11に示すように、連結部15bは、固定鉄心11と可動鉄心12との間の隙間領域Sと外部とを遮蔽する構成とするのが好ましい。その結果、外部空間から隙間領域Sへの異物混入を防止することができる。
【0040】
(5)図3,4,6に示すように、固定鉄心11の対向面の外縁領域にはリング状の溝113が形成され、可動鉄心12の対向面の外縁領域にはリング状の溝123が形成されている。固定鉄心11と可動鉄心12との間に配置される緩衝材15に設けられた複数の緩衝部15aは、溝113と溝123との間において円周方向に互いに離間して配設されている。また、緩衝部15aよりも伸び率が大きい連結部15bは、固定鉄心11の外周面と可動鉄心12の外周面とに掛け渡されてそれらの間の隙間領域Sを覆い、かつ、複数の緩衝部15aの外周側にそれらと一体に形成されたリング状の部材である。
【0041】
伸び率が大きい連結部15bの部分を拡張変形させることで、電磁ブレーキ装置1を分解することなく緩衝材15を容易に交換することができ、メンテナンスに要する時間を低減することができる。さらに、連結部15bは、固定鉄心11の外周面と可動鉄心12の外周面とに掛け渡されてそれらの間の隙間領域Sを覆っているので、外部から隙間領域Sへ異物が混入するのを防止することができる。
【0042】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
1…電磁ブレーキ装置、4…ブレーキディスク、10…電磁コイル、11…固定鉄心、12…可動鉄心、13a,13b…ブレーキパッド、15…緩衝材、15a…緩衝部、15b…連結部、100…エレベータ用巻上機、110,113,123…溝、111…制動ばね、114,124…フランジ
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