(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047032
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】微酸性次亜塩素酸水溶液
(51)【国際特許分類】
C01B 11/04 20060101AFI20230329BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230329BHJP
B01J 39/05 20170101ALI20230329BHJP
B01J 39/07 20170101ALI20230329BHJP
B01J 47/024 20170101ALI20230329BHJP
C02F 1/76 20230101ALI20230329BHJP
【FI】
C01B11/04
C02F1/42 Z
B01J39/05
B01J39/07
B01J47/024
C02F1/76 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155924
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】721004086
【氏名又は名称】株式会社EXELIM
(71)【出願人】
【識別番号】521197438
【氏名又は名称】有限会社アプリ
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和則
(72)【発明者】
【氏名】堤 絵美
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛一郎
【テーマコード(参考)】
4D025
4D050
【Fターム(参考)】
4D025AA10
4D025AB05
4D025BA09
4D025BA10
4D025BB02
4D025BB07
4D025DA10
4D050AA01
4D050AA08
4D050AA12
4D050AB06
4D050BB06
(57)【要約】
【課題】 安定な微酸性次亜塩素酸水溶液とその製造法を提供する。
【解決手段】次亜塩素酸ナトリウム溶液とイオン交換樹脂とのイオン交換時間を短くし、これを段階的または循環的に繰り返すことによって、安定的にpHを調整することができる。その結果、製造時の塩素ガス放出を極力抑え、濃度とpHが調整された安定な微酸性次亜塩素酸水溶液を製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次亜塩素酸塩水溶液を、陽イオン交換樹脂と短時間で複数回作用させることによって、段階的にイオン交換を行い、副反応を抑制し、安定的に微酸性次亜塩素酸水溶液を製造する方法。
【請求項2】
次亜塩素酸塩水溶液を、陽イオン交換樹脂に複数回作用させることによって、段階的にpH調整を行い、塩素の発生を抑制し、安定的に微酸性次亜塩素酸水溶液を得る請求項1に記載の微酸性次亜塩素酸水溶液の製法。
【請求項3】
次亜塩素酸塩水溶液を、陽イオン交換樹脂に複数回作用させることによって、段階的に陽イオンを除去し、イオン性の副生成物を低減することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の微酸性次亜塩素酸水溶液の製法。
【請求項4】
次亜塩素酸塩水溶液を循環させ、陽イオン交換樹脂に、連続的に短時間で複数回作用させ、pHを調整しながら、陽イオンを除去する微酸性次亜塩素酸水溶液の製造方法。
【請求項5】
イオン交換槽を含む溶液循環部とタンクを備える装置であって、装置内で次亜塩素酸塩水溶液を循環させ、陽イオン交換樹脂に、連続的に短時間で複数回作用させ、pHをモニタリングしつつ、陽イオンを除去する微酸性次亜塩素酸水溶液の製造装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4に記載のいずれかの製法、または請求項5に記載の製造装置によって得られたpH5.5~pH6.5の微酸性次亜塩素酸水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン交換樹脂を用いてpH調整され、イオン性不純物を低減した微酸性次亜塩素酸水溶液、及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、その酸化力によって、広範な殺菌スペクトルや消臭性能などを有しているため、公衆衛生上も非常に重要な物質であり、全世界で非常に幅広く使用されている。次亜塩素酸ナトリウム使用の大きな問題の一つは、有機物と接触した際に生じる発癌性のトリハロメタンの生成である。そのため、次亜塩素酸ナトリウムの使用は、その用途に応じて、使用濃度が制限されている。
【0003】
次亜塩素酸は次亜塩素酸ナトリウムを酸で中和して得られる。次亜塩素酸(HClO)は次亜塩素酸イオン(ClO-)よりも、殺菌能力が高いことが知られている。そのため、次亜塩素酸ナトリウムよりも低い濃度で、十分な殺菌力を示す。
【0004】
しかしながら、次亜塩素酸は一般的に非常に不安定で、特定の金属イオン、有機物、光の存在下では容易に分解し、濃度が低下するため、保存が難しいことが知られている。また、次亜塩素酸の安定性は、その水溶液の水素イオン濃度、すなわちpHによっても大きく異なることが知られている。次亜塩素酸の水溶液中での存在比率はpHに依存し、pH3以下では、次亜塩素酸は分解し、塩素分子となり、その結果塩素ガスが放出されるため、人体にも有毒である。
【0005】
また、濃度が高い領域では、次亜塩素酸は不均化反応を起こし、一部が強酸となり、塩素ガスが放出されるため、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のように高濃度で保管することが非常に難しい。前記内容、及びこの点が次亜塩素酸水溶液の製造方法の問題となっていた。
【0006】
非特許文献1には、次亜塩素酸水溶液の安定性と殺菌性能について報告されている。次亜塩素酸水溶液が熱やUV照射下では非常に不安定で容易に分解すること、有機物や金属イオン存在下で、半減期が数時間程度に短縮されることなどが述べられている。この文献に記載されているような条件を参考に、次亜塩素酸水溶液を製造、及び保管することが重要である。
【0007】
次亜塩素酸の製法としては、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を塩酸水溶液や酢酸水溶液などの酸性水溶液で中和する2液法がある。大部分の次亜塩素酸水溶液がこの方法で製造されるが、この方法では、製造中の塩素ガス放出が避け難く、次亜塩素酸濃度が低下してしまう。また中和反応の結果、生成したイオン性の塩が副生成物として残ってしまうことが問題である。
【0008】
食塩水の電解を用いた方法も開発されており、原料は水と食塩であるため、安価で安全である。電解法は電極や隔膜などを備えた装置を必要とし、加えて装置のメンテナンスも必要である。
【0009】
このような状況を鑑みて、イオン交換樹脂を用いた次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpH調整の方法が開示されている。イオン交換樹脂を用いる方法の一番の利点は、副生成物であるイオン性の塩が、生成物から除去されることである。
【0010】
特許文献1には、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の両方を順次用いて、イオン性不純物を出来る限り取り除くことを目的とした次亜塩素酸水溶液調製法が開示されている。
【0011】
イオン交換樹脂とはスチレン系樹脂(スチレン・ジビニルベンゼンの共重合体)やアクリル樹脂などに酸性官能基や塩基性官能基を一定の割合で担持したものである。これを用いた中和反応は、水溶液中では一種の固液反応である。そのため、例えば、陽イオン交換樹脂の水溶液中の長時間の浸漬は水溶液のpHを大きく低下させてしまう。このことは酸性官能基がカルボン酸である弱酸性のイオン交換樹脂においても起こりうる。
【0012】
イオン交換樹脂を用いたpH調整法は、陽イオン交換樹脂と水とを前もってバッチで混合し酸性水溶液を調整する方法や、陽イオン交換樹脂を不織布などに入れ、水溶液をフローで反応させる方法がある。陽イオン交換樹脂は酸性官能基を樹脂に担持したものであるため、長く水溶液を浸漬させていると、pHが必要以上に低下してしまう。そのため、陽イオン交換樹脂としてカルボン酸を担持した弱酸性のイオン交換樹脂を用いる方法が開発された。しかしながら、弱酸性の陽イオン交換樹脂を使用した場合でさえ、浸漬時間が長いとpHは3より低い値となってしまう。
【0013】
特許文献2には、次亜塩素酸水溶液の製造時にpHが低下しすぎて塩素が発生しないようにすることを目的として、弱酸性の陽イオン交換樹脂を用いた次亜塩素酸水溶液調製法が開示されている。次亜塩素酸カルシウムと弱酸性陽イオン交換樹脂を不織布に入れて用いた次亜塩素酸水溶液の製造装置についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6-206076
【特許文献2】特開2013-1620
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Biocontrol Science 2017, 22(4), 223. “Stability of Weakly Acidic Hypochlorous Acid Solution and Microbicidal Activity”
【0016】
イオン交換樹脂の使用におけるpHの低下問題は、イオン交換樹脂の使用量とイオン交換樹脂に作用させる時間を調整することによって解決できる。具体的には、陽イオン交換樹脂を作用させる時間を短く区切るか、陽イオン交換樹脂の使用量を制限すればよい。このようにしてpHが下がりすぎることを原理的に防ぐことができるが、逆に中和反応は不十分となる。
【0017】
イオン交換樹脂の使用におけるもう一つの課題は、使用中にイオン交換樹脂から不純物が溶出して、次亜塩素酸水溶液に混入してしまうことである。不純物が有機物である場合は、次亜塩素酸と反応して、人体にも環境にも有害なトリハロメタンの生成につながる。
【0018】
本発明者らは、次亜塩素酸ナトリウム水溶液をイオン交換樹脂と作用させる時間と回数に着目し、pHを段階的に、または連続的に低減させ、結果として安定的に次亜塩素酸水溶液を製造することが可能であることを見出し、本発明に至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明が解決しようとする課題は、微酸性の次亜塩素酸水溶液を安定的に製造することである。これには製造中の塩素やその他不純物の生成を極力抑えることが含まれる。そのためには製造時のpHを精密に制御することが不可欠である。
【0020】
本発明が解決しようとするもう一つの課題は、安定な微酸性の次亜塩素酸水溶液を製造することである。すなわち、保管を妨げる要因となる副反応を引き起こす不純物が少なく、保管期間が長い、微酸性の次亜塩素酸水溶液を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明においては、次亜塩素酸ナトリウムとイオン交換樹脂を短時間で作用させ、得られた溶液を、一旦タンクを通じて濃度を均一にさせる。このタンク内の水溶液を再び陽イオン交換樹脂と短時間作用させ、タンクに戻す。このことを繰り返し行うことによって、pHを段階的に調整することが可能となる。結果として、安定的に微酸性の次亜塩素酸水溶液が得られる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、製造中のpH調整が原理的に可能であり、pH<3の酸性になることがないため、分解物としての塩素ガスの放出量を極力低減することができる。そのため、次亜塩素酸濃度の調節も容易となる。
【0023】
本発明で得られる次亜塩素酸水溶液は、陽イオン交換樹脂を必要回数作用させることによって得られるため、陽イオンも十分に除去される。従って本発明の方法論の特長として、副生成物の塩を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明における次亜塩素酸の製造装置の概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1:フィルター
2:純水装置
3:希釈装置
4:ポンプ
5:イオン交換槽
6:製品(微酸性次亜塩素酸水溶液)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明において、陽イオン交換樹脂をとは、一般的に華僑ポリスチレンやアクリル樹脂などに、弱酸性陽イオン交換樹脂としてはカルボン酸(-COOH)が担持されたもの、強酸性陽イオン交換樹脂としてはスルホン酸(-SO3H)が担持されたものであり、どちらも用いることができる。ベースとなるイオン交換樹脂の構造や官能基の種類に特に制限はない。重要なのは一回当たりのイオン交換樹脂の作用時間を短くすることである。
【0027】
本発明において、用いる陽イオン交換樹脂のビーズのサイズは、その比表面積から、0.1~1.0mmが望ましいが特に制限はない。イオン交換するのに十分な表面積が確保され、生成物に混入しないことが重要である。また樹脂ビーズの形状に特に制限はない。
【0028】
陽イオン交換樹脂は、不織布等に内包された状態で使用することも出来るが、カートリッジタイプのものも用いることができる。陽イオン交換樹脂の設置方法に関しては、最終製品に混入しないことが重要であり、それ以外は特に制限はない。
【0029】
本発明においては、次亜塩素酸塩として、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の他に、次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)2)、次亜塩素酸カリウム(KClO)も用いることができる。次亜塩素酸カルシウムは所定の分量を水に溶解させ、特定の濃度の次亜塩素酸カルシウム水溶液として用いるか、イオン交換樹脂とともに不織布に入れて用いることができる。
【0030】
次亜塩素酸カルシウム(Ca(ClO)2)以外の固体としては、次亜塩素酸ナトリウム5水和物(NaClO・5H2O)を用いることも可能である。使用方法は次亜塩素酸カルシウムの使用に準ずる。
【0031】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、イオン交換樹脂を通す前に、水で希釈して、200~1000ppmのものを用いるのが望ましい。濃度が濃い状態でイオン交換を行うと、濃度が高すぎて不均化反応が起こり、強酸や塩素の発生につながるからである。
【0032】
本発明で用いる水は、あらかじめイオンが除去されたイオン交換水(DI Water)、もしくはRO水が望ましく、超純水は最も望ましい。水道水を用いる際は、前もって活性炭その他のフィルターなどを通して、不純物その他の有機成分を可能な限り取り除いてから使用するのが望ましい。
【0033】
本発明において、イオン交換樹脂と次亜塩素酸ナトリウム水溶液の接触時間は1.0秒以内が好ましい。イオン交換樹脂との接液時間が長いと、イオン交換樹脂の種類によらずpHが低くなりすぎて、その結果、塩素ガスが発生するからである。
【0034】
本発明において、イオン交換樹脂と次亜塩素酸ナトリウム水溶液を作用させた水溶液は、一度タンクに移すことが望ましい。このようにして未反応の次亜塩素酸ナトリウム水溶液と次亜塩素酸水溶液が均一になる。
【0035】
本発明において、混合時の温度は必要に応じて昇温または冷却することが可能であるが、基本的に室温20℃下が好ましい。
【0036】
本発明によって製造される次亜塩素酸水溶液のpHは4.5以上7.5以下が望ましい。pH5.0以上、7.0以下はより望ましく、pH5.5以上、6.5以下の微酸性が最も望ましい。
【0037】
本発明によって製造される次亜塩素酸水溶液の濃度は、100ppm以上、3000ppm以下が望ましい。200ppm以上、2000ppm以下がより望ましく、使用上の効果から300ppm以上、1000ppm以下が最も望ましい。
【0038】
本発明によって製造される微酸性次亜塩素酸水溶液中の総陽イオンの総濃度は、100ppm以下が望ましい。50ppm以下がより望ましく、10ppm以下が最も望ましい。
【0039】
本発明における次亜塩素酸水溶液製造方法は、一連のプロセスから成り立っており、それらは、
図1に示された機構を有する装置によって実施可能となる。以下、装置による次亜塩素酸水溶液の製造フローを説明する。
【0040】
本発明で微酸性次亜塩素酸水溶液の製造装置の詳細に関して、
図1を用いて説明する。本発明で用いる製造装置は、機能として、原料投入部、溶液循環部、タンクから成り立っている。
【0041】
原料投入部は、フィルター1、純水装置、フィルター2、希釈装置より構成されている。
【0042】
水は、フィルター1,純水装置、フィルター2を通して、可能な限り有機成分などの不純物を取り除かれ、精製水となり、希釈装置に投入される。
【0043】
希釈装置に投入された精製水を用いて、原料の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を希釈する。希釈装置では、精製水と次亜塩素酸ナトリウム水溶液は混合比率を調整しつつ、目的とする濃度まで希釈される。
【0044】
循環部は、定量ポンプとイオン交換槽とフィルターより構成されている。
【0045】
希釈装置を通して循環部に投入された次亜塩素酸ナトリウム水溶液は、陽イオン交換樹脂と短時間作用し、イオン交換され、フィルターを介して、不純物を取り除き、タンクに移される。
【0046】
タンクでは、イオン交換した次亜塩素酸水溶液と未反応の次亜塩素酸ナトリウムが撹拌されることによって、均一溶液となる。
【0047】
一度のイオン交換で、pHを酸性にした水溶液は、局所的に酸性が強く、そのままでは分解物である塩素の発生につながる。弱酸性陽イオン交換樹脂を用いた場合においても、イオン交換樹脂の接液時間が長ければ、pHは3より小さくなり、塩素発生の可能性がある。また、イオン交換樹脂によるイオン交換後の溶液をそのまま製品として用いる場合は、濃度やpHにバラツキがあるため、結果として安定性にバラツキが生じる。そのため、イオン交換した水溶液は一度タンクに全量投入し、濃度を均一化させることが望ましい。
【0048】
タンク内の次亜塩素酸水溶液を再度循環させて、陽イオン交換樹脂を通すことによって、さらにイオン交換を行う。この時、イオン交換樹脂を作用させる時間は1回目と同様に短いため、原理的にpHが酸性になりすぎることはない。そのため、本発明において塩素の発生は極力抑えられる。また製造時のpH調整や塩素濃度調整などの安定性も向上する。
【0049】
本発明においては、
図1に示す装置を用いることによって、イオン交換、タンク内での濃度均一化の一連のプロセスを、溶液を循環させることによって連続的に行うことが可能となる。このようにして、pH値が連続的に低下する。そのため、pHの精密な調整が循環時間を調整することによって可能となる。
【0050】
一般に、次亜塩素酸はpHが低いときは分解し、濃度が高すぎるときは不均化反応により別の塩素系化学物質となるが、本発明による方法ではpHが適切に調整されるため、水溶液中の塩素は次亜塩素酸分子として存在する。そのため、本発明においては、次亜塩素酸の濃度を塩素濃度から計測する。
【0051】
次亜塩素酸水溶液の濃度は、希釈装置における次亜塩素酸ナトリウムと精製水との混合比率の調整によって、精密調整が可能となる。
【0052】
一定時間循環した後、タンク内の次亜塩素酸水溶液が目的とするpH値、及び濃度に達したら、これを製品としてタンクから取り出す。
【0053】
本発明の次亜塩素酸水溶液は、スプレーボトルに入れ、対象物に噴霧することによって、対象物を除菌、消臭することが可能である。さらには、蒸散器や用いて広範囲に蒸散させる使用も可能である。
【実施例0054】
以下に実施例、比較例を示し、本発明を説明するが、その要旨を超えない限り、これらの 実施例により本発明の内容が限定または制限されるものではない。
【0055】
(原材料)
次亜塩素酸ナトリウムは(株)島田商店製のネオラックススーパーS(有効塩素濃度12%)を用いた。次亜塩素酸カルシウムは日本曹達(株)製のものを用いた。イオン交換樹脂はオレガノ(株)製の強酸性イオン交換樹脂を用いた。
(装置)
pH測定は市販のpHメーターを用いて測定した。塩素濃度は市販の塩素計を用いて測定した。ポンプは三相電機(株)製マグネットポンプ (ケミカル海水用、揚水量(35L/min:50Hz)を用いた。
(タンク、パイプ)
混合用のタンクはポリプロピレン製容器またはPET製容器を用いて行った。溶液を充填する前に、純水でリンスしてから用いた。パイプは塩ビ製を用いた。
【0056】
(実施例1)
強酸性陽イオン使用樹脂16gを樹脂は内径30mmの塩ビパイプに投入、樹脂の高さは25mm封印した。10Lの純水(pH6.5)に12%次亜塩素酸ナトリウム溶液を25mL投入して有効塩素濃度約303ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調整した。
希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液をポンプで送液してイオン交換樹脂を通過させ、10LのpHを測定した。10Lの送液タイムは100秒であった。
【0057】
10Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液が表面積352.25mm2、高さ25mmのイオン交換樹脂を100秒で通過したことから、次亜塩素酸ナトリウム水溶液のイオン交換樹脂接触時間は0.01秒以下と見積もられた。
【0058】
樹脂通過回数を増やしつつ、pHを測定した結果、樹脂通過回数が増えるに従って、pHが段階的に小さくなった。また、イオン交換樹脂通過前の水溶液の塩素濃度が303ppm、1時間後の塩素濃度が298ppmであったことから、塩素濃度はほとんど減少しておらず、次亜塩素酸の分解による塩素ガス発生が極力抑えられていることが証明された。
(表1)
【0059】
(実施例2)
強酸性陽イオン使用樹脂32gを樹脂は内径30mmの塩ビパイプに投入、樹脂の高さは6.69mmで封印した。フィルターと純水装置を通した水道水に次亜塩素酸カルシウム7g投入して有効塩素濃度約263ppmの次亜塩素酸カルシウム水溶液を調整した。
希釈した次亜塩素酸カルシウム溶液をポンプで5L/minで循環させてイオン交換樹脂を通過させ、一定時間置きにpHを測定した。pHが時間を追うごとに低下していくのが観測された。
(表2)
【0060】
(比較例1)
強酸性陽イオン使用樹脂20gまたは40gを樹脂は内径30mmの塩ビパイプに投入、樹脂の高さは、それぞれ60mm/40g、30mm/20gで封印した。12%次亜塩素酸ナトリウム溶液を純水で希釈して有効塩素濃度約205ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調整した。
希釈した次亜塩素酸ナトリウム溶液をポンプで送液してイオン交換樹脂を通過させ、2Lを捨て水として、2L(イオン交換通過水量2L~4L)が溜まる時間とpHを測定した。いずれの樹脂量の場合もイオン交換樹脂との接触時間が長いとpHが3より小さくなり、塩素臭がした。
(表3)