(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047052
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/44 20060101AFI20230329BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20230329BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20230329BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230329BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230329BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230329BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20230329BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20230329BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/60
A61K8/49
A61Q19/00
A61Q19/02
A61K8/64
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155950
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】吉羽 崚
(72)【発明者】
【氏名】金瀬 和佳奈
(72)【発明者】
【氏名】内部 錦
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC102
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC532
4C083AC621
4C083AC622
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD041
4C083AD042
4C083AD201
4C083AD202
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC02
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE16
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、保存安定性に優れた化粧料を提供する。
【解決手段】(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、またはそれらの塩、(B)カルボニル基を有する化合物またはカルボニル基形成能を有する化合物、および(C)特定の構造を有する環状カルボキサミド誘導体またはその塩を含んでなる化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、またはそれらの塩、
(B)カルボニル基を有する化合物またはカルボニル基形成能を有する化合物、および
(C)式(1)で表される環状カルボキサミド誘導体またはその塩
【化1】
(式中、
R
1は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、または水素原子であり、
Xは、-CH
2-または-N(R
2)-であり、ここで、R
2は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、または水素原子であり、かつ
nは、1~3の整数である)
を含んでなる化粧料。
【請求項2】
(D)グリシルグリシン、グリシルグリシン誘導体、またはそれらの塩をさらに含んでなる、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
(C)成分の式(1)において、
R1が、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、
Xが、-CH2-または-NH-であり、かつ
nが、1である、請求項1または2に記載の化粧料。
【請求項4】
(C)成分が、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
(B)成分が、単糖、オリゴ糖、および配糖体からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
(A)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.1~5質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
(B)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.001~5質量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
(C)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.05~2.5質量%である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項9】
(D)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.05~5質量%である、請求項2に記載の化粧料。
【請求項10】
(C)成分と、(D)成分と、の質量比が、1:0.03~1:3である、請求項2に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、またはそれらの塩を含んでなる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸(またはその誘導体)は、荒れ改善作用や美白作用を有することから、化粧品に配合されている。また、糖類は、保湿、皮膚コンディショニング等の目的で、化粧品によく用いられる成分である。しかし、トラネキサム酸と、糖類を併用すると、熱または経時により変色が生じることが知られている。
【0003】
上記の変色を抑制する手段として、ピロ亜硫酸ナトリウム等の無機塩と併用することも知られているが、ピロ亜硫酸酸ナトリウムは、不快な臭いを生じさせることもあり、特に、無香料の場合には、配合量に制限がある。
変色を抑制する他の手段として、特定のアミド構造を有する化合物と併用することも提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明者らの検討によれば、トラネキサム酸と、糖だけではなくその他のカルボニル基を有する化合物またはカルボニル基形成化合物との併用により、褐変や不快臭の発生が生じることが多いことがわかった。そして、驚くべきことに、これらに、特定の環状カルボキサミド誘導体を組み合わせることで、熱または経時による変色や不快臭の発生を抑制することができることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1](A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、またはそれらの塩、
(B)カルボニル基を有する化合物またはカルボニル基形成能を有する化合物、および
(C)式(1)で表される環状カルボキサミド誘導体またはその塩
【化1】
(式中、
R
1は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、または水素原子であり、
Xは、-CH
2-または-N(R
2)-であり、ここで、R
2は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、または水素原子であり、かつ
nは、1~3の整数である)
を含んでなる化粧料。
[2](D)グリシルグリシン、グリシルグリシン誘導体、またはそれらの塩をさらに含んでなる、[1]に記載の化粧料。
[3](C)成分の式(1)において、
R
1が、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、
Xが、-CH
2-または-NH-であり、かつ
nが、1である、[1]または[2]に記載の化粧料。
[4](C)成分が、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノンである、[1]~[3]のいずれかに記載の化粧料。
[5](B)成分が、単糖、オリゴ糖、および配糖体からなる群から選択される、[1]~[4]のいずれかに記載の化粧料。
[6](A)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.1~5質量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の化粧料。
[7](B)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.001~5質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の化粧料。
[8](C)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.05~2.5質量%である、[1]~[7]のいずれかに記載の化粧料。
[9](D)成分の配合量が、化粧料の総量に対して、0.05~5質量%である、[2]に記載の化粧料。
[10](C)成分と、(D)成分と、の質量比が、1:0.03~1:3である、[2]に記載の化粧料。
【0007】
本発明によれば、保存安定性に優れた化粧料を提供することができる。特に本発明は、経時または加熱条件下において、トラネキサム酸またはその誘導体と、カルボニル基を有する化合物またはカルボニル形成能を有する化合物との反応による変色および不快臭の発生を抑制することができる。
【発明の具体的説明】
【0008】
本発明は、(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、またはそれらの塩、(B)カルボニル基を有する化合物またはカルボニル基形成能を有する化合物、および(C)特定の構造を有する環状カルボキサミド誘導体またはその塩を含んでなる化粧料に関するものである。
【0009】
(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、またはそれらの塩、
本発明による化粧料は、(A)トラネキサム酸、トラネキサム酸誘導体、またはそれらの塩(以下、(A)成分と称することがある。他の成分についても同様である。)を含んでなる。
(A)成分としては、例えば、トラネキサム酸(トランス-4-アミノメチルシクロヘキサン-1-カルボン酸)、トラネキサム酸エステル類(例えば、ビタミンAエステル、ビタミンEエステル、ビタミンCエステル、およびビタミンDエステル等のビタミンエステル類、フェニルエステル類、ハイドロキノンエステル類、ゲンチシン酸エステル類等)、トラネキサム酸アミド(メチルアミド又はその塩等)、トラネキサム酸二量体等が挙げられ、好ましくはトラネキサム酸である。それらの塩としては、例えば、マグネシウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属塩類;リン酸塩、塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩等の無機塩類等が挙げられる。
【0010】
(A)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(A)成分の配合量は、化粧料の総量に対して、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.5~3.5質量%である。
【0011】
(B)カルボニル基を有する化合物またはカルボニル基形成能を有する化合物
本発明による化粧料は(B)カルボニル基を有する化合物またはカルボニル基形成能を有する化合物を含んでなる。
一般に、アミノ酸、タンパク質、アミン類のアミノ基と、還元糖などのカルボニル基が反応して褐変現象が起こることが知られている。この反応はメイラード反応ともよばれ、この反応により、褐色色素や匂い物質が発生するといわれている。
(B)成分は、アミノ基を有する(A)成分と反応して、メイラード反応を起こしうる成分である。(B)成分としては、例えば、糖類、ポリアルキレングリコール誘導体等が挙げられ、特に糖類である場合に、本発明による効果がより発揮できるので、好ましい。
【0012】
糖類としては、特に限定されないが、例えば、単糖、オリゴ糖、多糖、配糖体および糖アルコールが挙げられる。本発明において、オリゴ糖とは、単糖が2~10分子脱水縮合したものをいい、多糖とは、単糖が11分子以上脱水縮合したものをいう。
【0013】
単糖としては、例えば、D-エリトルロース、D-エリトロース、D-トレオース等のテトロース類;D-アラビノース、L-アラビノース、D-キシロース、D-リキソース、L-リキソース、D-リボース等のアルドペントース類;D-キシルロース、L-キシルロース、D-リブロース、L-リブロース等のケトペントース類;D-ガラクトース、L-ガラクトース、D-グルコース、D-タロース、D-マンノース等のアルドヘキソース類;L-ソルボース、D-タガトース、D-プシコース、D-フルクトース等のケトヘキソース類;D-アピオース、D-ハマメロース等の分枝糖類;リボース、アラビノース、キシロース等のペントース;グルコース、ガラクトース、フルクトース等のヘキソース;グルコサミン、ガラクトサミン等のアミノ糖、これらの単糖の誘導体等が挙げられる。
【0014】
オリゴ糖としては、上述した単糖を1種のみ含むホモオリゴ糖、または二種以上を含むヘテロオリゴ糖が挙げられる。ホモオリゴ糖としては、例えば、キシロビオース、キシロトリオース、キシロテトラオース、キシロペンタオース等のキシロオリゴ糖類;アガロビオース、カラビオース等のガラクトオリゴ糖類;マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、イソマルトース、ソホロース、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオース、トレハロース、ネオトレハロース、イソトレハロース等のグルコオリゴ糖類;マンノオリゴ糖類;イヌロビオース、イヌロトリオース、イヌロテトラオース、イヌロペンタオース等のフルクトオリゴ糖類等が挙げられる。ヘテロオリゴ糖としては、ビシアノース、イソプリメベロース、サンブビオース、プリメベロース、リコテトラオース、ソラビオース、メリビオース、マンニノトリオース、ラクトース、リコビオース、リコトリオース、エピセロビオース、スクロース、ツラノース、マルツロース、イソケストース、エルロース、ケストース、ゲンチアノース、ラクツロース、エピゲンチビオース、イソリクノース、ウンベリフェロース、セサモース、ラフィノース、リクノース、ロビノビオース、シラノビオース、ルチノース、カコトリオース、ソラトリオース、α-グルカンオリゴサッカリド(重合度が2~10のグルコースオリゴマー)等が挙げられる。オリゴ糖の中では、二糖が好ましい。
【0015】
多糖としては、キサンタンガム、セルロース、グアーガム、スターチ、プルラン、デキストラン、フルクタン、マンナン、寒天、カラギーナン、キチン、キトサン、ペクチン、アルギン酸、デンプン、グリコーゲン、ヒアルロン酸等の多糖類が挙げられる。多糖には、これらの糖がメチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アセチル基、ステアロキシ基、グリセロール、プロピレングリコール等で置換された誘導体も含まれる。これらの置換基は、単独でまたは複数の組合せで置換することができる。置換基を有する多糖としては、具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルグアーガム、ヒドロキシエチルスターチ、メチルセルロース、メチルグアーガム、メチルスターチ、エチルセルロース、エチルグアーガム、エチルスターチ、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアーガム、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルグアーガム、ヒドロキシエチルメチルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルグアーガム、ヒドロキシプロピルメチルスターチ、ステアロキシヒドロキシプロピルメチルセルロース、アセチル化ヒアルロン酸、アルギン酸プロピレングリコール、ヒアルロン酸プロピレングリコール等が挙げられる。
【0016】
配糖体としては、例えば、アルブチン、アスコルビン酸グルコシド、グルコシルセラミド、アントシアニン、ルチン、ヘスペリジン、ダイジン等が挙げられる。
糖アルコールとしては、例えば、キシリトール、トレハロース、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、アラビトール、リビトール、ガラクチトール、グルシトール、エリトリトールが挙げられる。
【0017】
(B)成分として、ポリアルキレングリコール誘導体なども用いることができるが、糖類を用いることが好ましい。本発明の効果をより発揮させるためには、糖類のうち、単糖、オリゴ糖、および配糖体からなる群から選択されることが好ましく、より好ましくは単糖または二糖であり、さらに好ましくは、フルクトース、グルコース、マンノースまたはマルトースである。
【0018】
(B)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(B)成分の配合量は、化粧料の総量に対して、好ましくは0.001~5質量%であり、より好ましくは0.01~3質量%である。
【0019】
(C)環状カルボキサミド誘導体またはその塩
本発明による化粧料は、式(1)で表される環状カルボキサミド誘導体またはその塩を含んでなる。
【化2】
式中、
R
1は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、または水素原子であり、
Xは、-CH
2-または-N(R
2)-であり、ここで、R
2は、水酸基で置換されていてもよい炭素数1~6の炭化水素基、または水素原子であり、かつ
nは、1~3の整数である。
上記の炭化水素基は、特に限定されず、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキルアルキル基、ハロアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基であってよく、好ましくはアルキル基である。
【0020】
好ましい形態において、(C)成分の式(1)において、
R
1が、炭素数1~3のヒドロキシアルキル基であり、
Xが、-CH
2-または-NH-であり、かつ
nが、1である。
式(1)で表される環状カルボキサミド誘導体の具体例としては、例えば、以下が挙げられる。
【化3】
(C)成分は、最も好ましくは、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリジノンである。
【0021】
(C)成分は、式(1)で表される環状カルボキサミド誘導体の塩であってもよい。塩の種類は、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されず、無機塩であっても有機塩であってもよい。無機塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩としては、例えば、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩等が挙げられる。
【0022】
(C)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(C)成分の配合量は、化粧料の総量に対して、好ましくは0.05~2.5質量%であり、より好ましくは0.8~2質量%であり、さらに好ましくは1.2~1.8質量%である。
【0023】
上記したように、(A)成分と(B)成分との組み合わせにより、変色や不快臭の発生が起こることがある。本発明者らは、驚くべきことに、この(A)成分と(B)成分との組み合わせに、さらに(C)成分を組み合わせることで、上記の変色や不快臭の発生が抑制されることを見いだした。
【0024】
(D)グリシルグリシン、グリシルグリシン誘導体、またはそれらの塩
本発明による化粧料は、(D)グリシルグリシン、グリシルグリシン誘導体、またはそれらの塩をさらに含むことができる。
(A)成分および(B)成分との変色および不快臭発生の抑制に、上記の(C)成分に加えて(D)成分をさらに組み合わせることで、より顕著に本発明の効果を発揮することができる。
【0025】
グリシルグリシンおよびグリシルグリシン誘導体は、好ましくは、式(2)で表される。
【化4】
式中、
R
2は、それぞれ独立に、水素またはメチルであり、かつ
mは、1または2である。
式(2)で表される化合物の例としては、以下が挙げられる。
【化5】
(D)成分は、最も好ましくはグリシルグリシンである。
【0026】
(D)成分は、グリシルグリシンまたはグリシルグリシン誘導体の塩であってもよい。塩の種類は、薬理学的に許容される塩であれば特に限定されず、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、臭化水素酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。有機塩としては、例えば、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩等が挙げられる。
【0027】
(D)成分は、1種または2種以上を配合することができる。(D)成分は、高配合で、(B)成分と組み合わせることで、不快な匂いを生じさせることがあるので、特に無香料化粧品に用いる場合に、配慮することが好ましい。(D)成分の配合量は、化粧料の総量に対して、好ましくは0.05~5質量%であり、より好ましくは0.1~2.5質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。この範囲とすることで、変色を抑制しつつ、(D)成分由来の匂いを抑制することができる。
(C)成分と、(D)成分と、の質量比は、好ましくは1:0.03~1:3であり、より好ましくは1:0.1~1:2.5であり、さらに好ましくは1:0.3~1:0.8である。
【0028】
本発明による化粧料は、pH調整剤を含んでいてもよい。pH調整剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられる。
【0029】
本発明による化粧料は、水を含んでいてもよい。水としては、化粧品、医薬部外品等に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
水の配合量は、本発明による化粧料の総量に対して、好ましくは40~99質量%である。水を含まないことも、本発明の別の一形態である。
【0030】
本発明による化粧料には、上記成分以外に、化粧料に通常用いられる成分、例えば、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、多価アルコール、粉末成分、酸化防止剤、防腐剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0031】
その他、カフェイン、タンニン、ベラパミルおよびその誘導体、甘草抽出物、グラブリジン、火棘の果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸およびその誘導体またはその塩等の薬剤;4-メトキシサリチル酸カリウム塩等のアルコキシサリチル酸またはその塩、ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド等の他の美白剤;キレート剤等も適宜配合することができる。
【0032】
本発明による化粧料の剤型は、例えば、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水2-油二層系、水-油-粉末三層系等が挙げられ、特に限定されない。
本発明による化粧料としては、例えば、スキンケア化粧料(例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、パック等)、メーキャップ化粧料(例えば、ファンデーション、化粧下地等)、皮膚洗浄料(例えば、洗顔料、メイク落とし等)、日焼け止め化粧料、軟膏等が挙げられる。
【0033】
本発明の化粧料は、常法に従って製造することができる。本発明による化粧料が乳化化粧料である場合に、乳化の方法は特に限定されるものではない。
【実施例0034】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、総量に対する質量%で示す。
【0035】
[実施例101~109および比較例101~103]
表1に示される配合で、実施例101~109および比較例101~103の化粧料を調製した。
【表1】
【0036】
[実施例201~203および比較例201~203]
表2に示される配合で、実施例201~203および比較例201~203の化粧料を調製した。
【表2】
【0037】
[色差評価]
実施例および比較例の化粧料を、50mlのサンプル管に入れ、70℃の恒温槽で3日間保温した。保温後のサンプルを、色差計(「分光測色計CM-2002」、コニカミノルタ株式会社)を用いて、L、a、およびb値を測色し、測色値から、イオン交換水を用いた場合の測定値との色差ΔEを算出した。得られた結果は表1および2のとおりである。
【0038】
[匂い評価]
上記の保温後のサンプルを専門パネルが官能評価し、以下の基準で判定した。得られた結果は表1および2のとおりである。
A:不快臭がほとんど感じられなかった。
B:不快臭が感じられた。
C:不快臭が強く感じられた。
D:不快臭が非常に強く感じられた。
【0039】
[実施例301および比較例301]
表3に示される配合で、実施例301および比較例301の化粧料を調製し、上記と同様に、色差と匂い評価を行った。得られた結果は表3のとおりである。
【表3】