IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村瀬 真智子の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047056
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】バチ衿型形状の付け衿
(51)【国際特許分類】
   A41B 9/00 20060101AFI20230329BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20230329BHJP
【FI】
A41B9/00 B
A41D1/00 101Z
A41B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155957
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】308028751
【氏名又は名称】村瀬 真智子
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 真智子
【テーマコード(参考)】
3B030
3B128
【Fターム(参考)】
3B030BB01
3B030BC04
3B128AB00
3B128BA03
3B128BB00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】和装下着を着用せずに、衿元に美しい張りを継続することができる付け衿を提供する
【解決手段】和装下着の地衿と同じ形状の代替えの付け衿を洋服の下着の上から簡単に装着するだけで、あたかも和装下着を着ているように見え、尚且つ、その衿山部分が美しい張りと衿合わせの状態が継続出来、衿芯の出し入れ用の開口部を新しく設けた事で、着付け時間が短縮された上に簡単に出来る様になり、又、後ろ姿の要となる衿抜きの状態も固定される事で着崩れの心配がない。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
和服を着用時に和服の衿元から衿山線(1a)部分が見える和装下着(1d)の衿(1)とバチ衿型形状の付け衿(2)とが同じ形状であって、前記付け衿(2)の表面(3)と裏面(4)の両面が同じ形状であることを特徴とするバチ衿型形状の付け衿(2)において、前記付け衿(2)は、前記地衿(2a)の表裏両面に掛け衿(2b)を重ねて縫着した状態で構成されており、前記衿表面(3)と前記衿裏面(4)の両面を、背中心(2q)の衿幅(2p)で均一に、前記衿山線(2a)と衿芯区切り線(2d)が平行に縫着されており、前記衿芯区切り線(2d)の縫い終点(2s)の位置は、挿入された衿芯(7)が前記背中心(2q)として左右均一に振り分けられており、衿芯(7)の先端より前記背中心(2q)の方向に、前記付け衿(2)の衿縫い合わせ線(2g)上に設けられており、掛け衿先端(2f)に向かって弧を描くように弓形に縫着されていることを特徴とする付け衿(2)。
【請求項2】
バチ衿型形状の前記付け衿(2)において、前記衿縫い合わせ線(2g)上の、前記衿芯区切り線(2d)の縫い止点(2s)と掛け衿先端(2f)の間において、衿芯(7)の出し入れ用の開口部(2v)を設けていることを特徴とする請求項1記載の付け衿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、和服を着用時に和服の衿元から衿山線上部(1a)が見える和装下着(1d)の代替えの付け衿(2)であり、和装下着(1d)の衿(1)と同型のバチ衿型形状で、その付け衿(2)の表(3)裏(4)の両面は地衿(2b)と掛け衿(2b)が重なった状態で、表(3)裏(4)の両面において、衿山線(2a)と平行に均一幅で縫い終点(2s)まで縫着されており、衿芯を固定する為の衿芯固定部(2e)に、掛け衿先端(2f)からの衿芯(7)の出し入れが簡単できる。又、衿縫い合わせ線上(2f)に設けられた開口部(2v)からも衿芯(7)を出し入れできる。そして、背中心(2q)から左右の衿肩周り(2k . 2l)に衿抜き布(2k)が縫着され、又、衿抜き布(2m)の表(3m)裏(4m)にはそれぞれ違う形状の衿抜き固定部(2r)が縫着されており、より確実な衿合わせの為に衿縫い合わせ線上(2g)に複数の衿合わせ固定紐(2I . 2j)が縫着されている和装下着(1d)の代替えの付け衿(2)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の和装業界はレンタル着物を抜きには成立出来ない状態である。成人式の振袖、卒業式の袴姿等の行事はもとより。京都や浅草等の観光地、インスタ映えするレストランなどで見かける着物姿もレンタル着物が8割近い割合を占めている。そして、街着として和装を楽しんでいるのは主にインバウンドの外国人観光客やインスタ映えといわれる写真撮影の目的の若者達である。
【0003】
しかしながら、若者は和服をイベントのコスチュームとして着るだけで、着慣れていない。又、外国人観光客は文化や習慣が違うので、いざ和服を体験しようとすると、想像もしてなかった沢山の問題や苦労があり、着用後に「着物は好きだけれど、こんなに辛いなら体験は1度で良い」とのデーターが出ている。確かに着物は重ね着なので、かさばって身動きが取りにくく、行動も限られてくる。そして冬は寒く、夏は暑い。特に和装下着は肌に近い部分で着付け用の紐を締め上げるので苦しくて痛い。ゆえに、衿元しか見えない和装下着を着ないことで、多くの悩みは解決できる。
【0004】
しかし、着物文化では、着物の衿元から和装下着の衿が見えるのは必要最低な決まり事であるので、浴衣などの特別な着物以外は和装下着の衿元無しには着物は着用を出来ない。そして、着物姿を美しく見せる為には和装下着の衿元部分は着物の衿元の土台となるので必要であると同時に影響が大きく、下着であるにも関わらず、顔の真下にあり一番目立衿元の土台なので、一番下に着付けている為、着付けが終わった後では、直す事が出来ない。ゆえに、着付けにも大変気を使い、熟練の技術を要する部分である。
【0005】
この様な問題を解決する為に、和服を着用時に和服の衿元から衿山線上部分(1a)が見える和装下着(1d)に理想的な衿元を継続するためのバチ衿型形状の衿芯や和装下着(1d)の衿(1)や、簡易的な付け衿(2)の考案がなされてきた。例えば特許文献1のバチ衿型形状の衿芯、特許文献2の和装下着(1d)の衿、非特許文献3の簡易的な付け衿(2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4979028号 バチ衿型形状の衿芯
【特許文献2】実用新案登録3158645号 和装下着の衿
【特許文献1】特開2020-063524号 バチ衿型形状の付け衿
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、和装下着(1d)の衿元の時間経過によるシワの発生が防げる衿芯が発明されているが、特別な衿芯を使用しないといけない事や、やはり和装下着(1d)を着用しての衿部分だけの改善であり、和装下着(1d)を着付ける時の根本的な解決にはならない。
【0008】
又、特許文献2は和装下着(1d)の衿(1)の構造を、通常の衿芯(7)も使用できるので、大変便利なようであるが、衿構造だけの改善であり、和装下着(1d)を省略するという目的に適していない。つまり、和装下着(1d)を着用する時の苦しさや、痛さを軽減したりなくする為の解決策が何も提示されていない。
【0009】
そして、特許文献3にはバチ衿型形状の付け衿(2)が開示されているが、地衿(2b)に掛け衿(2c)を重ね合わせた状態で構成されており、掛け衿全長を均一幅で区切っている。掛け衿(2c)の端から区切られた細くて長い隙間に衿芯(7)を出し入れするのは大変困難で、不可能に近い。その上、衿芯が折れ曲がる可能性が大であり、現実的に不可能である。
【0010】
本発明は前記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、和装下着(1d)を着用しないで、和服の衿元から和装下着(1d)の衿山線上部分(1a)が見える様な機能を有した代替のバチ衿型形状の付け衿(2)であって、衿自体が独立しているので洋服の上から簡単に装着できる。そして、特別な衿芯を使用しなくても、和服の衿の土台となる硬さを有するので美しい衿合わせの形状が継続でき、又、衿芯の出し入れも簡単で、着付け作業が短時間で出来るバチ衿型形状の付け衿(2)を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るバチ衿型形状の付け衿(2)は、和装下着(1d)の衿(1)の代替が出来、尚且つ、和装下着(1d )より優れている。付け衿の地衿(2b)に衿状の掛け衿(2c)が、表面(3)、裏面(4)の両面を覆うように縫着され、掛け衿(2c)を均一幅の衿芯区切り線(2d)で、固定する事で、衿芯の位置が衿山線部(2a)の衿芯固定部(2e)に内蔵され、幅ズレから生じるシワの発生がない。そして、衿芯の出し入れは、従来のように、掛け衿先(2f)からは勿論、新しく衿縫い合わせ線(2g)上に設けている開口部(2v)からも出し入れができる。又、衿合わせの維持に役立つ衿合わせ紐(2i .2j)も体格に合わせて選別できる。そして、衿肩周り(2k .2l)には衿抜き固定布(2m)が縫着されており、後ろ姿が着付け状態の美しいまま維持出来る。以上により前記課題を解決したものである。
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次にあげるような効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、通常の和装下着(1d)の身頃に縫着されているバチ衿型形状の衿(1)をバチ衿型形状の付け衿(2)として単体で完成品としたので、同じバチ衿型形状である。本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)とは、着物の衿元を作る為の土台となるので、不必要な和装下着(1d)の着用を省略できて便利である。
【0014】
本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)は身頃の部分が存在しない単体なので、表面(3)裏面(4)の定理がなく両面が使用できるので、片面が汚れても、裏返してもう片方の使用が可能であり、洗濯や半衿の付け直しが半分の回数で済むので利便性が高い。
【0015】
本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)に衿芯(7)を挿入すると、衿芯(7)が衿山線部(2a)に固定されて移動しないので、衿芯固定部(2e)を設けることで衿芯のズレが原因となるシワが生じない。顔のすぐ下に有って一番目立つ衿山線部(2a)に美しさが継続出来る。
【0016】
そして、本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿縫合せ線(2)上において、表面(3)、裏面(4)の両面の2箇所に設けられた開口部(2v)から衿芯(7)を出し入れできるので、従来のような掛け衿先(2f)からの出し入れに比べると、衿芯(7)を首の後ろの衿中心(2p)から左右に均等な長さに振り分けるのに近い位置から出し入れする事ができ、着付けに要する時間が大幅に短縮される。
【0017】
何より、本発明以前、衿芯(7)の出し入れ方法は、掛け衿先端(1f)からの出し入れの方法しか無かった。しかし、衿芯(7)が使用される位置と、掛け衿端(1f)が離れているだけでなく、細くて長い掛け衿(1c)の中に指先を入れて出し入れする困難さは手間と時間だけでなくストレスを生み出して、着物離れにも結びついていた。そして、本発明の開口部(2v)からの挿入は、簡単に衿芯固定部(2e)に挿入することができる。2つの全く違う場所からの衿芯挿入方法が選べて便利である。
【0018】
そして、着用後の衿合わせを固定する方法としては、胸元を着付け道具の紐できつく締めあげていたが、着用者が息苦しい上に体の動きも制限されるという負担を強いる着付け方法であった。しかし、本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)に縫着している2本の衿合わせ紐(2i .2j)を結ぶだけで美しい衿合わせが維持できるので着付けの技術を必要とせず、誰にでも簡単に着ることができるという効果がある。
【0019】
又、その背中心(2q)から衿の左右の衿肩周り(2k .2l)に至る幅で衿抜き布(2m)を逢着しているが、衿抜き布表面(3m)衿抜き布裏面(4n)の両面が異なった状態で衿抜き固定部(2r)が縫着されている。着用者の体格や着用目的に合わせて衿抜き布表面(3m)衿抜き布裏面(4m)を選ぶことができて便利である。
【0020】
表面の衿抜き布(3m)の衿抜き固定部(3r)は背中心線上(3q)に設けられ、普通の体格用用であり、後ろ姿の衿抜きの状態は鋭角気味に固定され、衿合わせは衿が首横に沿って美しい衿合わせのV字に出来る。又、裏面の衿抜き布(4m)の衿抜き固定部(4r)は衿抜き布(4m)の布幅(4x .4y)の端から端までに至って縫着されており、ふくよかな体型や首の短い体型用であり、後ろ姿の衿抜きの状態は肩幅に合わせて大き目の楕円形に設定され、衿合わせは首横で開き気味となりゆったりと窮屈さを感じないように使い分けが出来て便利である。
【0021】
通常の和装下着(1d)に設けられている衿抜き固定部(1r)は普通の体格用の片面だけであり不便である。本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)は衿抜き固定布(2m)の両面(3m .4m)が違う事で、体型や着こなしに応じた着付け方法が簡単に選べるという利便性がある。
【0022】
何より、近年、和装が敬遠されてきたのには、何枚も重ねて着るので窮屈で動きにくい上に、夏は暑いし、冬は寒いという理由も大きい。しかし、本発明のバチ衿型形
状の付け衿(2)は、従来の和装下着(1d)の衿本体の形状を付け衿として完成させた物品であるので、着物の下に和装下着(1d)を着用しなくても、季節に応じてTシャツやヒートテックの上にバチ衿型形状の付け衿(2)を装着するだけで簡単に和服を着用することが可能になり和装を楽しめる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】和服を着用時に、下に着用する和装下着(1d)姿である。
図2】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の着用姿である。
図3】衿芯()の全体図である。
図4】和装下着(1d)のバチ衿型形状の衿(1)と、掛け衿の隙間に衿芯(7)を挿入し、衿山線上部(1a)から衿芯が幅移動した衿(1)の状態図である。
図5】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿芯固定部(2e)に衿芯(7)を挿入し、衿山線上部(2a)に衿芯(7)が固定された付け衿(2)の状態図である。
図6】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の全体図である。
図7】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)に、衿芯(7)を挿入した全体図である。
図8】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿芯区切り線(2d)の縫い終点(2s)の形状の例である。
図9】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿芯区切り線(2d)の縫い終点(2s)と、衿縫い合わせ線(2g)上の衿縫い合わせ途中点(2t)の位置とが一致している図である。
図10】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の、衿芯区切り線(2d)の縫い終点(2s)が、衿縫い合わせ線(2g)上の、衿縫い合わせ途中点(2t)の位置より衿中心(2q)方向に設けられている図である。
図11】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿縫い合わせ線(2g)上の、衿縫い合わせ途中点(2t)から衿芯縫い合わせ再開始点(2u)の間は、衿芯の出し入れをする為の開口部(2v)であり、付け衿表面(3)と付け衿裏面(4)の両面の2箇所に設けられている状態を立体的に見た図である。
図12】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿縫い合わせ線(2g)上の、衿縫い合わせ途中点(2t)から衿芯縫い合わせ再開始点(2u)との間は、衿芯の出し入れをする為の開口部(2v)、付け衿の片面(3)に設けられた、の状態を立体的に見た図である。
図13】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の開口部(2v)から衿芯(7)を挿入している図です。
図14】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の掛け衿先端(2f)から衿芯( 7)を挿入している図である。
図15】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の掛け衿(2b)の衿山線上(2c)の掛け衿先端部(2f)が地衿(2a)と逢着(2w)されている図である。
図16】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の表(3)の展開図である
図17】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)を使用した普通の体型の人の着用姿である。
図18】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿合わせ紐(2i)を使用の普通の体型の人の使用方法である。
図19】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の表面の衿抜き布(3m)の背中心(3q)上にある、衿抜き固定部(3r)を使用した場合の普通の体格の人の後ろ姿である。
図20】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の裏(4)の展開図である。
図21】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の裏(4)を使用した太った体型の人の着用姿である。
図22】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿合わせ紐(2j)を使用の太っている体型の人の着用姿である。
図23】本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の左右の衿肩明き方向に縫着された裏の衿抜き布(4m)には両端(4x .4y)の延長線上に渡って、布幅一杯に設けた衿抜き固定部(4)を使用した場合のふくよかな方の後ろ姿である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)は和装下着(1d)の衿(1)と代替できる同型の簡易的な付け衿であり、全体構成はバチ衿型形状に縫着された地衿(2b)に、掛け衿(2c)と、衿抜き固定布(2m)が縫着されている。
【0025】
そして、バチ衿型形状の付け衿(2)の地衿(2b)の生地については、表面(3)裏面(4)の両面が使用可能なので、2倍の頻度に対応できる耐久性があり、尚かつ、洗濯してもシワが生じにくくアイロンを掛ける必要のないポリエステル・レーヨン・ナイロンなどが適切である。地衿(2b)としての生地の存在感や適度な厚みを考慮すると、ポリエステルが最適である。
【0026】
又、バチ衿型形状の付け衿(2)の全長は、従来の和装下着の衿(1)より少し長めにして、衿抜き布(2m)の衿抜き固定部(2r)から前に回して身体の前で結ぶ腰紐(5)に衿先(6)を絡めておくと、衿合わせが一層固定出来るし、衿先(6)を下に垂らしておく場合も日常の動作で少し緩んだ衿合わせを補正する時に、着物の裾から前身頃で下に引き下げることが簡単に出来る。通常の和装下着(1d)の衿の長さは背中心(2q)から衿先(6)で、70cm~75cmであるが、腰紐(5)に絡めやすい長さとしては78cm~82cmが最適である。
【0027】
そして、掛け衿(2c)の長さは、背中心(2q)から45cm~50cmが想定されるが、より良いのが43cm~47cmであるが、あまり長くない方が、その上から好みの替え衿を掛けて使用することができるので、もっとも適切なのは41cm~45cmであり、衿の汚れ防止としても最適である。
【0028】
さらに、掛け衿(2c)として使用する生地だが、掛け衿用の生地なら和装下着の衿(2)としてそのまま使用出来るので最適である。しかしながら、何度も洗濯をして、アイロン掛けなどをしなくても、着物の衿元を引き立たせる美しい光沢を保てる生地としては、ナイロン・アセテート・ポリエステルなどが好ましく、より好ましいのはポリエステルである。
【0029】
又、本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の衿幅寸法は従来の和装下着の衿(1)と寸法や形状が同型なので、付け衿の背中心(1q)の衿幅(8)は和装下着の衿(1d)を、着付け時に着物の衿から出ない4.5cm~5.5cmであり、より好ましいのは挿入する衿芯(7)の最大幅を考えると4.8cm~5.2cmである。そして、衿先の幅は、やはり和装下着の衿(1d)と同様の6.5cm~7.5cmが好ましく、和装下着のバチ衿型形状の地衿(1b)より長さが長いので、少し広い幅の7.2cm~7.9cmがより好ましい。
【0030】
又、本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)の構造としては、バチ衿型形状に縫着された地衿(1b)の衿縫い合わせ線(2g)に沿って表面(3)裏面(4)の両面を掛け衿(2c)が覆い重なっている。そして、重なった状態で、掛け衿(2c)上を、衿の背中心(2q)の衿幅(8)と同じ寸法の均一幅で、衿山線(2a)と平行に衿芯区切り線(2d)によって縫着しており、よって、衿表面(3)、衿裏面(4)の両面に、2箇所の衿芯固定部(2e)が作れる。そして衿芯(7)は、どちらかの衿芯固定部(2e)に挿入して使用する。
【0031】
衿芯区切り線(2d)によって縫着する均一幅(8)の寸法は、一般的な衿芯の幅や着物の衿幅を考慮してある程度決まっている。なので、5.0cm~5.5cmとなるが、好ましくは4.8cm~5.3cmであり、衿芯(7)が幅移動しない用途を考えると、より好ましくは4.5cm~5.0cmであり、前記、付け衿の背中心(2q)の衿幅(8)を考慮すると、より最適なのは4.3cm~4.8cmである。
【0032】
そして、衿芯区切り線(2d)として縫着する長さだが、一般的な衿芯の長さを考慮し、尚且つ、衿芯(7)が挿入された後の状態を考慮しないといけない。衿芯(7)は首の後ろを中心として左右均一に振り分けて衿芯固定部(2e)に挿入され、固定される。衿芯(7)を衿山線上(2a)に固定するという意味では、和装下着(1d)の衿山線(1d)が見える部分までが良いので、衿の中心から28cm〜38cmの長さが良い。しかし、衿芯(7)より衿芯区切り線(2d)が短い方が出し入れに便利なので、23cm〜33cmの方がより良い。そして、以後に述べる開口部(2v)の位置にも大きく関わってくるが、開口部(2v)の位置を考慮すると20cm〜30cmが最良である。
【0033】
又、衿芯区切り線(2d)の縫い終点(2s)は衿芯(7)の出し入れ時の誘導線になっているので、緩くカーブしている縫終点(2s)だが、衿山線(2a)と平行線を保ったままの直線の縫い終点でも、急カーブ状の縫い終点(でも良く、直線での緩いカーブ状の縫い終点や鋭角状の縫い終点などの角張った縫い終点でも問題ない。そして、何度も衿芯を出し入れする時の耐久性を鑑みて、衿芯区切り線(2d)は通常の縫製より強い2度縫いが適切である。
【0034】
開口部(2v)についてだが、本発明のバチ衿型形状に縫着した地衿(2b)の表面(3)裏面(4)の両面に掛け衿(2c)を覆い重ねて縫着するのだが、その方法は、地衿(2b)の中心点(2q)から衿縫い合わせ線(2g)上に掛け衿(2c)を縫着してゆき、衿合わせ途中点(2t)で縫い止める。そこから衿芯の出入り口として使用するのに充分な寸法の開口部(2v)を掛け衿表面(3)、掛け衿裏面(4)の両面に設ける。改めて、衿縫い合わせ線上(2g)の再開始点(2u)から掛け衿先端(2f)まで縫着して掛け衿を地衿(2b)に縫い付ける。
【0035】
しかしながら、開口部を設けるのは付け衿(2)の生地に負担をかけるので両面に作らなくても良い。その場合は、付け衿(2)の地衿(2b)と掛け衿(2c)の生地は2枚重ねにしたままで、一度に衿合わせ縫着線(2g)によって縫い合わされる。又、片面、もしくは両面に開口部(2v)を設けた場合でも、衿芯(7)の出し入れは従来と同じく掛け衿先端(2f)からにして、衿芯固定部(2e)からの衿芯誘導で、指を入れるのに利用しても良い。
【0036】
衿芯(7)の出し入れ用に設けた2箇所の開口部(2v)の寸法は衿芯(7)の出し入れの作業に支障のない充分な寸法を考慮すると4.0cm〜10.0cmであり、衿芯の幅を考慮すると、好ましくは5.0cm〜8.5cmである。しかし、あまり大きいと掛け衿(2c)が不安定に浮いてしまうので、より好ましくは6.0 cm〜7.5cmである。
【0037】
掛け衿の衿山線上(2c)の掛け衿先端部(2f)はバチ衿型形状の付け衿(2)の地衿(2b)と逢着されていて、衿芯(6)の出し入れ時に掛け衿先端部(2g)が衿山線上(2a)において、シワが生じないようになっている。縫着部分の長さは0.3cm~3.0cmだが、最適なのは0.7cm~2.5cmで、より最適なのは1.2cm~2.0cmである。
【0038】
又、バチ衿型形状の付け衿(2)には衿合せ固定紐( 2i , 2j )を体格に合わせて数所、衿縫い合わせ線上(2g)に逢着している。体型や着用目的に合わせて下前と上前の衿合せ固定紐( 2i , 2j )を結ぶだけで左右均一で理想的な衿合わせの状態を作ることが出来る。
【0039】
普通の体型の方や、若い方は衿合わせの位置が、顔の顎下で深く衿を合わせるが、ふくよかで、首の短い方や、衿抜きを大きく後方に取る方は、衿合わせをゆったりと下の方で合わせる等、着用者によって、衿合わせの位置が違うので、衿合わせ固定紐( 2i , 2j )を数カ所に逢着する。
【0040】
先ず、1本目として普通の体格だと、付け衿(2)の背中心(2q)から35cm~38cmであり、2本目のふくよかな体格の方は39cm~43cmが最適である。しかし、2本以上になると、胸元で何本も紐があると絡まって、かえって着付けが遅くなる可能性がある。よって、衿合せ固定紐( 2i , 2j )の数は2本がふさわしく、その代わり、紐の長さに余裕を持たせることで、多少の体格の違いに応じて対応できる。衿合せ固定紐( 2i , 2j )の長さは短いと結びにくいし、長いと絡んで邪魔になるので20.5cm~26.5cmが好ましく、21.5cm~23.5cmがより好ましい。
【0041】
そして、衿合せ固定紐( 2i , 2j )の幅は0.3cm~1.3cmが扱い易く、より結びやすいのは、0.5cm~1.1cmである。又、生地は綿・ポリエステル・レース・ナイロン等が有るが、何度も洗濯に耐え、尚且つ固く結べてシワになりにくい等を考えると、ナイロンが最適である。
【0042】
本発明のバチ
衿型形状の付け衿(2)には背中心(2 q)から衿の左右の衿肩周り(2m ,2n)に至る幅で衿抜き布(2m)を縫着し、表(3m)の衿抜き固定用布(3r)は衿の背中心(3q)の延長線上の下方に設けられ、裏(4)の衿抜き固定用の紐は左右の衿肩周り(4x . 4y)の延長上で下方にそれぞれが縫着されている。
【0043】
表(3)裏(4)の両面が同じよう使用出来る付け衿(2)であるが、体型や着用する着物の格や着用目的によっては従来の1箇所の衿抜き固定布(3m)ではとても対応が出来ない。本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)は表(3)裏(4)の両面は全く同じ形状で有るが、衿抜き固定布(2m)の形状と縫着場所が違っている。
【0044】
勿論、表(3)は普通の体型の方用に従来の和装下着(1d)の衿抜き布(1m)に縫着されているのと同様に、付け衿(2)の背中心(2q)の延長線上の下方に1箇所の衿抜き固定布(3r)が設けられており、区切り線(3z)が1箇所で区切られているが、衿抜き固定布(3r)の使いやすさや着用の目的を考慮すると2箇所でも良いが1箇所が最適である。
【0045】
そして、裏(4)は、ふくよかな体型や、首の短い体型用で、衿抜き布(4m)は、首の後方で左右の衿肩周り( 4k . 4l)の位置の延長線上の、布幅一杯に幅広く縫着されている。下方で衿抜き固定用の腰紐(5)で楕円形に確定され、首を少し離れてゆったりと沿った状態で身体の前で衿合わせとなる。そして、区切り線(4z)は2箇所で区切られているが、衿抜き固定布(4r)の使いやすさや着用の目的を考慮すると1箇所が最適である。
【0046】
さらに、衿抜き布(2m)の形状も多種多様である。表(3)裏(4)の衿抜き固定布(2r)は紐が一般的である。数や形状も多くして、表(3)を1箇所、裏(4)を3箇所としてみると、それぞれに腰紐を通す手間や時間に比べて、効果があまり期待できないので、衿抜き固定部が紐状の場合はやはり表(3)1箇所、裏(4)2箇所が最適である。
【0047】
衿抜き布(2k)の幅は、通常の和装下着(1y)に縫着されている幅は5・5cm~7・5cmが一般的であるが、本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)には背中心(2x)から衿の左右の衿肩周り(2m ,2n)に至る幅で衿抜き布(2k)が逢着しているので、15・5cm~23・5cmが適している。しかしながら、首の後ろの付け根(2l・2m)の延長線を下方に引き下げて衿抜き状態を固定させるので、18・5cm~20・5cmが最適である。
【0048】
そして、衿抜き布(2m)の長さは通常の和装下着(1y)に縫着されているのは長さが45・5cm~50・5cmであるが、本発明のバチ衿型形状の付け衿(2)は和装下着を着用しない為の代替えの付け衿(2)なので、衿抜き布(2k)を着物の裾から簡単に引き下げる事が出来るように少し長めの55・5cm~65・5cmが好ましい。
【0049】
又、表面(3)裏面(4)共に、衿抜き布(2m)は衿縫い合わせ線(2g)から7・5cm~11.5cmの位置から下方に向かって8・5cm~11・5cmの長さで縫着されているが、通過する腰紐(5)の幅を考えると、好ましいのは10・5cm~12・5cmである。しかし、腰紐を通し易い13・5cm~15・5cmがより好ましい。
【0050】
生地については、バチ衿型形状の付け衿(2)の生地と同じ生地で製作されるのが最適である。
【符号の説明】
【0051】
1 和装下着の衿1a 和装下着の衿山線1b 和装下着の地衿1c 和装下着の掛け衿1d 和装下着1h 和装下着の衿先2 付け衿 2a 付け衿の衿山線部2b 付け衿の地衿2c 付け衿の掛け衿2d 付け衿の衿芯区切り線2e 付け衿の衿芯固定部2f 付け衿の掛け衿先端2g 付け衿の衿合わせ縫着線2h 付け衿の衿先2i 付け衿の普通の体型の方用衿合わせ固定紐2j 付け衿のふくよかな方用の衿合わせ固定紐2k.2l 付け衿の衿肩周り2m 付け衿の衿抜き布 2p 付け衿の衿中心の幅2q 付け衿の衿中心2s 付け衿の衿芯区切り線の終点 2t 付け衿の衿合わせ縫着線上の中間点2u 付け衿の衿合わせ縫着線上の再開始点2v 付け衿の開口部2w 付け衿の掛け衿先端での衿山線と地衿との縫着部 2x.2y 付け衿に縫着された衿抜き布の布幅3a 付け衿の表の衿山線部3b 付け衿の表の地衿3c 付け衿の表掛け衿3d 付け衿の表の衿芯区切り線 3e 付け衿の表の衿芯固定部3k.3l 付け衿の衿肩周り3m 付け衿の衿抜き布 3q 付け衿の表衿中心3r 付け衿の表衿抜き固定布3x.3y 付け衿の表に縫着された衿抜き布の布幅3z 付け衿の表衿抜き固定布の区切り線4a 付け衿の表の衿山線部 4b 付け衿の裏の地衿4c 付け衿の裏の掛け衿4d 付け衿の裏の衿芯区切り線 4e 付け衿の裏の衿芯固定部 4k.3l 付け衿の裏衿肩周り4m 付け衿の裏衿抜き布 4q 付け衿の裏衿中心4r 付け衿の裏衿抜き固定布4x.3y 付け衿の裏に縫着された衿抜き布の布幅4z 付け衿の裏衿抜き固定布の区切り線5 腰紐7 一般的な衿芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23