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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047068
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】リッド開閉装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20230329BHJP
   E05B 83/34 20140101ALI20230329BHJP
   B60L 53/16 20190101ALI20230329BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
B60K15/05 B
E05B83/34
B60L53/16
B60L1/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021155991
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】田中 優希
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
5H125
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ42
2E250LL13
3D038CA32
3D038CA33
3D038CA34
3D038CC16
5H125AA01
5H125AC24
5H125BA09
5H125BC22
5H125DD02
5H125FF12
(57)【要約】
【課題】リッド開閉装置の大型化を抑え、リッドの自動開閉とロックを実現する。
【解決手段】リッド開閉装置10は、軸受部24を有するベース20と、ベース20に取り付けられた受給部15と、開口部3を閉塞するためのリッド25と、後退位置と進出位置との間を移動可能なアーム30と、駆動力を枢着部31aに伝達して回転させる回転体42と、回転体42に連動して回転するカム43と、カム43によって移動可能な伝達部材45と、回転体42の回転力がカム43と伝達部材45を介して伝達されてロック位置とアンロック位置の間を移動するロック部材35と、リッド25に設けられた係合部26と、後退位置にあるアーム30を進出位置に移動させるとき、回転体42の回転開始後、遅延して枢着部31aの回転を開始させるための差動機構50とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部を有し、パネルの開口部の内側に配置されたベースと、
前記開口部内に位置するように前記ベースに取り付けられた受給部と、
前記開口部を開放可能に閉塞するためのリッドと、
前記軸受部に軸支された一端側の枢着部と、前記リッドに連なる他端側の先端部とを有し、前記パネル内へ退避して前記リッドによって前記開口部を閉塞した後退位置と、前記パネル外へ突出して前記開口部を開放させた進出位置との間を移動可能なアームと、
駆動源から受けた駆動力を前記枢着部に伝達して、前記アームを前記後退位置と前記進出位置との間で移動させる回転体と、
前記回転体に連動して回転するカムと、
前記カムによって移動可能な伝達部材と、
前記伝達部材に取り付けられ、前記回転体の回転力が前記カムと前記伝達部材を介して伝達されて、ロック位置とアンロック位置の間を移動するロック部材と、
前記リッドに設けられ、前記アームが前記後退位置にあるとき、前記ロック位置に移動した前記ロック部材が係合可能な係合部と、
前記後退位置にある前記アームを前記進出位置に移動させるとき、前記回転体の回転開始後、遅延して前記枢着部の回転を開始させるための差動機構と
を備える、リッド開閉装置。
【請求項2】
前記回転体の回転によって前記ロック位置の前記ロック部材が前記アンロック位置に移動すると、前記差動機構は前記枢着部の回転を開始させる、請求項1に記載のリッド開閉装置。
【請求項3】
前記枢着部及び前記回転体それぞれの回転軸は一致しており、
前記差動機構は、
前記枢着部及び前記回転体のうちの一方に設けられた凸部と、
前記枢着部及び前記回転体のうちの他方に設けられ、前記凸部が内部に配置された凹部と
を有し、
前記回転軸まわりの前記凸部の角度範囲は、前記回転軸まわりの前記凹部の角度範囲よりも小さく、
前記回転軸まわりの周方向における前記凸部と前記凹部の間には、定められた差動角度範囲の隙間を有し、
前記回転体の回転によって、前記周方向における前記凸部及び前記凹部それぞれの対向面が当接して押圧することで、前記枢着部が回転する、
請求項1又は2に記載のリッド開閉装置。
【請求項4】
前記回転体と前記カムは、前記ベースのうち前記軸受部側に配置され、
前記伝達部材は、前記軸受部側の端部に前記カムの回転に従動するカムフォロワを有し、
前記伝達部材には、前記ベースの前記軸受部とは反対側に配置された端部に、前記ロック部材が取り付けられている、
請求項1から3のいずれか1項に記載のリッド開閉装置。
【請求項5】
前記カムは、非円形状の外周部を有し、
前記カムフォロワは、前記外周部を取り囲む環状である、
請求項4に記載のリッド開閉装置。
【請求項6】
前記伝達部材は、可撓性を有するチューブと、前記チューブ内を進退可能なワイヤとを有するケーブルであり、
前記ロック部材と前記カムフォロワは前記ワイヤに取り付けられている、
請求項4又は5に記載のリッド開閉装置。
【請求項7】
前記チューブと前記ロック部材の間には、前記アンロック位置の前記ロック部材を前記ロック位置に向けて付勢する付勢部材が取り付けられている、請求項6に記載のリッド開閉装置。
【請求項8】
前記回転体は、前記枢着部と同軸に配置されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のリッド開閉装置。
【請求項9】
前記カムは、前記回転体と一体構造であり、前記枢着部と隣接するように配置されている、請求項8に記載のリッド開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッド開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、電気自動車に用いられるリッド開閉装置が開示されている。特許文献1のリッド開閉装置は、リッドを自動開閉するためのモータを備える。特許文献2のリッド開閉装置は、リッドを閉状態にロックするロックピンを進退させるアクチュエータを含むロック機構を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-210473号公報
【特許文献2】特開2011-240753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリッド開閉装置では、閉状態のリッドを開放不可能にロックできないため、セキュリティ性について改善の余地がある。特許文献1のリッド開閉装置に特許文献2のロック機構を適用すれば、セキュリティ性を向上できる。この場合、リッドの開閉用とロック用の2つの駆動源が必要になるため、リッド開閉装置が大型化する。
【0005】
本発明は、リッド開閉装置の大型化を抑え、リッドの自動開閉とロックを実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軸受部を有し、パネルの開口部の内側に配置されたベースと、前記開口部内に位置するように前記ベースに取り付けられた受給部と、前記開口部を開放可能に閉塞するためのリッドと、前記軸受部に軸支された一端側の枢着部と、前記リッドに連なる他端側の先端部とを有し、前記パネル内へ退避して前記リッドによって前記開口部を閉塞した後退位置と、前記パネル外へ突出して前記開口部を開放させた進出位置との間を移動可能なアームと、駆動源から受けた駆動力を前記枢着部に伝達して、前記アームを前記後退位置と前記進出位置との間で移動させる回転体と、前記回転体に連動して回転するカムと、前記カムによって移動可能な伝達部材と、前記伝達部材に取り付けられ、前記回転体の回転力が前記カムと前記伝達部材を介して伝達されて、ロック位置とアンロック位置の間を移動するロック部材と、前記リッドに設けられ、前記アームが前記後退位置にあるとき、前記ロック位置に移動した前記ロック部材が係合可能な係合部と、前記後退位置にある前記アームを前記進出位置に移動させるとき、前記回転体の回転開始後、遅延して前記枢着部の回転を開始させるための差動機構とを備える、リッド開閉装置を提供する。
【0007】
本態様では、駆動源の駆動力をアームの枢着部に伝達して回転させる回転体を備えるため、アームを介してリッドを自動開閉できる。また、回転体に連動して回転するカムと、カムによって移動可能な伝達部材と、伝達部材に取り付けられたロック部材とを備え、ロック部材は、アームが後退位置に回転したときにリッドの係合部に係合するため、リッドを開放不可能にロックできる。このように、1個の駆動源によって、リッドの自動開閉とロックを実現できるため、2個の駆動源を搭載する場合と比較して、リッド開閉装置の大型化と高コスト化を抑えつつ、セキュリティ性を向上できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、リッド開閉装置の大型化を抑え、リッドの自動開閉とロックを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るリッド開閉装置の斜視図。
図2】リッドを閉じたリッド開閉装置の平面図。
図3図1のIII-III線断面図。
図4】リッドを閉じたリッド開閉装置の図3と同様の断面図。
図5】受給部を除くリッド開閉装置を車内側から見た分解斜視図。
図6図4のVI部分の拡大断面図。
図7図4のVII-VII線断面図。
図8】アームと駆動機構の分解斜視図。
図9図7のIX-IX線部分で切断した図2の部分断面図。
図10図7のX-X線部分で切断した図2の部分断面図。
図11A】リッドの開作動時のアームとロック部材の動きを示すグラフ。
図11B】リッドの閉作動時のアームとロック部材の動きを示すグラフ。
図12A】リッド開作動時の第1過程でのカムと差動機構の状態を示す図9と同様の断面図。
図12B図12Aの状態での図6と同様の断面図。
図13】リッド開作動時の第2過程でのカムと差動機構の状態を示す図9と同様の断面図。
図14】リッド開状態でのカムと差動機構の状態を示す図9と同様の断面図。
図15】リッド閉作動時の第1過程でのカムと差動機構の状態を示す斜視図。
図16】リッド閉作動時の第2過程でのカムと差動機構の状態を示す斜視図。
図17A】リッド閉作動時の第3過程でのカムと差動機構の状態を示す斜視図。
図17B図17Aの状態での図6と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るリッド開閉装置10を示す。リッド開閉装置10は、充電プラグ(図示せず)が接続される給電コネクタ15を備え、自動車のサイドパネル(パネル)1に取り付けられている。給電コネクタ15は、電気を補充するための受給部である。但し、受給部は、給電コネクタ15の代わりに、ガソリン及び軽油等の液体燃料、並びに水素及びLPガス等の気体燃料のうちのいずれかが補充される構成であってもよい。
【0012】
以下の説明で引用する個々の図面に記載したX方向は、自動車の車長方向であり、Y方向は自動車の車幅方向であり、Z方向は自動車の車高方向である。個々の図において、X方向の矢印が示す向きが前側であり、矢印とは逆向きが後側である。Y方向の矢印が示す向きが車内側(内側)であり、矢印とは逆向きが車外側(外側)である。Z方向の矢印が示す向きが上側であり、矢印とは逆向きが下側である。
【0013】
図1から図4を参照すると、サイドパネル1には、車幅方向Yの内側へ窪む凹部2が設けられている。凹部2のうち車幅方向Yの外側端が開口部3である。凹部2の底には、リッド開閉装置10を取り付ける取付口4が設けられている。車幅方向Yから見て開口部3と取付口4の形状は、本実施形態では概ね楕円形状であるが、必要に応じて変更可能である。
【0014】
引き続いて図1から図4を参照すると、リッド開閉装置10は、サイドパネル1に取り付けられるベース20と、開口部3を閉塞するためのリッド25と、一端側がベース20に軸支されて他端側にリッド25が取り付けられたアーム30とを備える。図2及び図5を参照すると、本実施形態のリッド開閉装置10は、閉位置のリッド25をロックするロック部材35と、アーム30(リッド25)とロック部材35を移動させる駆動機構40とを備える。また、図2及び図8を参照すると、駆動機構40とアーム30の連結部分には、アーム30の回転開始とロック部材35の移動開始とに時差を確保する差動機構50が設けられている。
【0015】
駆動機構40によってアーム30は、図3に示すようにサイドパネル1外へ突出した進出位置と、図4に示すようにサイドパネル1内に退避した後退位置との間を回転される。リッド25は、図3に示すようにアーム30が進出位置に回転したときに開口部3を開放した姿勢(開位置)になり、図4に示すようにアーム30が後退位置に回転したときに開口部3を閉塞した姿勢(閉位置)になる。また、駆動機構40によってロック部材35は、図6に示すロック位置と図12Bに示すアンロック位置との間を直動(移動)する。差動機構50によってアーム30は、ロック部材35の移動開始後、遅延して回転が開始される。なお、以下の説明では、駆動機構40によるアーム30の回転に伴うリッド25の回転を、単に駆動機構40によるリッド25の回転と言うことがある。
【0016】
以下、ベース20、リッド25、アーム30、ロック部材35、駆動機構40、及び差動機構50について具体的に説明する。
【0017】
図3から図5を参照すると、ベース20は、サイドパネル2の開口部3の内側に配置されており、取付口4を塞ぐベース本体21と、アーム30を軸支する軸受部24とを備える。
【0018】
ベース本体21には、給電コネクタ15を取り付ける取付部22が設けられ、閉位置のリッド25とベース本体21との間をシールするシール部材23が取り付けられている。
【0019】
図4を参照すると、取付部22は、車幅方向Yの内側へ窪む凹部22aを備え、この凹部22aの底に取付口22bが形成されている。取付口22bには、車幅方向Yの内側から給電コネクタ15が取り付けられている。これにより、図1に示すように、給電コネクタ15の接続部15aは、開口部3内に位置し、リッド25の解放時に開口部3を介して車外側に露出される。
【0020】
図3及び図4を参照すると、シール部材23は、リング状であり、ベース本体21の外周縁に沿ってベース本体21の車幅方向Yの外側に取り付けられ、凹部2の底側から開口部3に向けて突出する。シール部材23は、図4に示す閉位置のリッド25に圧接され、ベース本体21とリッド25との間を水密にシールする。シール部材23は、図3に示す開位置のリッド25には圧接されない。
【0021】
図1及び図5を参照すると、ベース本体21には、開口部3内に位置するように、挿通孔21a、窓孔21b、及び凹部21cが設けられている。
【0022】
挿通孔21aは、車高方向Zの寸法が長い四角形状の孔で、取付部22の車長方向Xの前側かつ軸受部24内に位置するように設けられている。挿通孔21aには、アーム30が進退可能に挿通している。
【0023】
窓孔21bは、円形状の孔からなり、取付部22の車長方向Xの後側に設けられている。窓孔21bは、リッド25の解放時に図示しないスイッチの操作部を露出させる。
【0024】
凹部21cは、車幅方向Yの内側へ延びる四角形状の窪みであり、窓孔21bの下側に設けられている。図6及び図12Bを参照すると、凹部21cには、後述するロック片26が進退可能に差し込まれる。凹部21cを画定する壁には、ロック部材35を進退可能に配置する挿通孔21dが設けられている。挿通孔21dは、車長方向Xの後側に位置する壁に設けられている。挿通孔21dの周囲には、ロック部材35を保持する筒状の保持部21eが設けられている。図5を参照すると、ベース本体21のうち凹部21cの車長方向後側には、駆動機構40が備える後述するケーブル45の一端が取り付けられる取付片21fが設けられている。
【0025】
図5及び図7を参照すると、軸受部24は、ベース本体21と一体構造であり、取付部22の車長方向Xの前側に隣接し、ベース本体21から外側へ突出している。軸受部24は、一対の端板24aと、これらの端板24aを連結する連結板24bとを備える。一対の端板24aは、挿通孔21aの上下に位置するように車高方向Zに間隔をあけて設けられ、いずれもXY平面に沿って延びている。連結板24bは、一対の端板24aそれぞれの車長方向Xの前端と車幅方向Yの外端に連なり、端板24aのその他の端部を開放している。
【0026】
下側の端板24aには軸穴24cが設けられ、上側の端板24aには軸穴24cと対向する位置に軸孔24dが設けられている。軸穴24cは、円形状の窪みであり、軸孔24dは、円形状で軸穴24cと同じ直径の貫通孔である。軸穴24cと軸孔24dを通る車高方向Zの中心線が、軸受部24の回転軸Aである。
【0027】
上側の端板24aには更に、ガイド凹部24e、保持凹部24f、及び取付凹部24gが設けられている。これらはいずれも、上側の端板24aの上面側から下側へ窪むように設けられている。
【0028】
図5図7及び図9を参照すると、ガイド凹部24eは、軸孔24dを含む領域に設けられ、駆動機構40が備える後述するカムフォロワ49を車長方向Xへ移動可能に保持する。車高方向Zから見てガイド凹部24eは、四角形状の第1部分24e1と、半円形状の第2部分24e2とを備える半長円形状である。第2部分24e2は、第1部分24e1の車長方向Xの後側に連なっている。
【0029】
図5図7及び図10を参照すると、保持凹部24fは、軸孔24dの上側に隣接するように、ガイド凹部24eの底に設けられている。保持凹部24fは、軸孔24dよりも大径の円形状であり、下側の軸孔24d、及び上側のガイド凹部24eそれぞれと空間的に連通している。
【0030】
図5を参照すると、取付凹部24gは、断面半円形状であり、駆動機構40のケーブル45の一端が取り付けられる。取付凹部24gには、ケーブル45を保持する断面C字形状の保持片24hが設けられている。取付凹部24gとガイド凹部24eの間には、これらを空間的に連通させる連通溝24iが設けられている。
【0031】
図1図3及び図4を参照すると、リッド25は、開口部3よりも小さくシール部材23よりも大きい板状であり、開口部3を開放可能に閉塞する。リッド25は、軸受部24に軸支されたアーム30に連結されることで、ベース20に対して回転可能である。
【0032】
図1及び図6を参照すると、リッド25には、図4に示す閉位置にリッド25が回転したときに、ベース20の凹部21c内に差し込まれるロック片(係合部)26が設けられている。ロック片26は、ロック片本体26aと傾斜部26bを備える。
【0033】
ロック片本体26aは、リッド25の閉状態でリッド25から車幅方向Yの内側へ直交方向に突出している。ロック片本体26aには、ロック部材35が係合する四角形状のロック孔26cが形成されている。
【0034】
傾斜部26bは、車幅方向Yにおけるロック片本体26aの内端に連なり、車幅方向Yの外側から内側へ向かうに従って、ロック部材35から離れる向きに傾斜している。
【0035】
図1を参照すると、リッド25は、閉位置に回転したときに窓孔21bに対向する押圧部27を備える。押圧部27は、リッド25から車幅方向Yの内側へ直交方向に突出している。閉位置のリッド25を車幅方向Yの内側へ更に押圧すると、押圧部27によって窓孔21bに配置されたスイッチを操作できる。
【0036】
図1図3及び図4を参照すると、アーム30は、挿通孔21aを通してベース20の車幅方向Yの内側から外側に跨がって配置されている。アーム30は、軸受部24に軸支された板状の第1アーム部31と、リッド25に連なる円弧状の第2アーム部33とを備える。
【0037】
第1アーム部31の基端(アーム30の一端側)には、軸受部24に軸支される枢着部31aが設けられている。つまり、第1アーム部31は、枢着部31aから外向きに突出している。図7及び図8を参照すると、枢着部31aは、軸部材32が取り付けられる断面正方形状(非円形状)の取付孔31bを備える。枢着部31aは、軸受部24の一対の端板24a間に配置され、軸部材32を介して回転軸Aまわりに回転可能である。
【0038】
引き続いて図7及び図8を参照すると、軸部材32は、第1アーム部31の取付孔31bを貫通する断面正方形状の棒体であり、枢着部31aと一体に回転する。つまり、枢着部31aに対して軸部材32は、相対的に回転不可能である。軸部材32は、軸受部24の上側から軸孔24dを貫通して、先端が軸穴24c内に配置され、軸穴24c及び軸孔24dそれぞれの内周壁に回転可能に支持される。
【0039】
図5及び図7を参照すると、軸部材32は、保持凹部24f内に回転可能に保持されるフランジ部32aと、フランジ部32aから上側へ突出する軸部32bとを備える。フランジ部32aの厚みは、保持凹部24fの車高方向Zの深さと概ね同じである。軸部32bは、回転軸Aに一致する軸線を有し、軸受部24への取付状態でガイド凹部24eから上側へ突出する。
【0040】
図1図3及び図4を参照すると、第2アーム部33は、第1アーム部31のうち枢着部31aとは反対側の先端に機械的に接続されている。第2アーム部33は、回転軸Aを中心とする円弧状である。第2アーム部33の先端(アーム30の他端側)には、リッド25に対して機械的に接続される接続部(先端部)33aが設けられている。
【0041】
図2図5及び図6を参照すると、ロック部材35は、ベース20の挿通孔21dに進退可能に配置されている。ロック部材35は、ケーブル45のワイヤ47に取り付けられ、後述する回転体42の回転力がカム43とワイヤ47を介して伝達されて、図6に示すロック位置と図12Bに示すアンロック位置とに直動される。ロック部材35は、ケーブル45に一端が支持されたスプリング36によって、ロック位置側(ロック片26側である車長方向Xの前側)へ弾性的に付勢されている。具体的には、ロック部材35は、ロック部35aとフランジ部35bを備える。
【0042】
ロック部35aは、挿通孔21dよりも小径の棒状で、先端が半球状に面取りされている。ロック部35aは、ロック位置にあるときに凹部21c内に突出するとともに、凹部21c内にロック片26があるときにロック孔26cに係合し、車幅方向Yの外側に向けたロック片26の移動を阻止(ロック)する。ロック部35aは、アンロック位置にあるときに保持部21e内に退避して、ロック片26のロック孔26cとの係合が解除され、車幅方向Yの外側に向けたロック片26の移動を許容(アンロック)する。
【0043】
フランジ部35bは、挿通孔21d及びスプリング36それぞれの直径よりも大径の円板状である。図6及び図12Bを参照すると、フランジ部35bは、ロック位置及びアンロック位置のいずれでも保持部21eの外部に位置する。フランジ部35bは、ロック部材35がロック位置に移動したときに保持部21eに当接し、それ以上のロック部材35の移動を規制する。フランジ部35bには、ワイヤ47に取り付ける筒状の取付部35cが設けられている。
【0044】
図2及び図5を参照すると、駆動機構40は、1個のモータ41、回転体42、カム43、及びケーブル45を備え、ベース20の上側部分に配置されている。そのうち、ケーブル45は、カム43の回転に従動するカムフォロワ49を備える。
【0045】
モータ41は、正転及び逆転が可能な駆動源であり、リッド25の開閉、及びロック位置とアンロック位置との間のロック部材35の移動の両方を行う。モータ41は、電気的に接続されたECU(Electronic Control Unit)の指令によって正転又は逆転する。正転によってモータ41は、後退位置のアーム30を進出位置に作動させるとともに、ロック位置のロック部材35をアンロック位置に作動させる。逆転によってモータ41は、進出位置のアーム30を後退位置に作動させるとともに、アンロック位置のロック部材35をロック位置に作動させる。
【0046】
回転体42は、円板状であり、ベース20のうち軸受部24側に配置されている。回転体42は、モータ41から受けた駆動力を、枢着部31aに伝達してアーム30を回転させるとともに、ロック部材35に伝達してロック部材35を移動させる。具体的には、回転体42は、モータ41に取り付けられる取付部42aを備え、モータ41によって直接回転される。図5及び図10を参照すると、回転体42は、リッド25を開作動させるためにモータ41が正転するとR1で示す向きに回転し、リッド25を閉作動させるためにモータ41が逆転するとR2で示す向きに回転する。
【0047】
図7及び図8を参照すると、回転体42は、アーム30の枢着部31aと同軸に位置するように、ベース20のガイド凹部24e上に配置されている。つまり、回転体42の回転軸、枢着部31aの回転軸、及び軸受部24の回転軸Aは、いずれも一致している。回転体42は、枢着部31aに対して差動機構50を介して連結されている。これにより、図9及び図10に示すように、枢着部31a(アーム30)は、回転体42と同じ向きR1,R2へ回転する。
【0048】
図7及び図8を参照すると、カム43は、回転体42と一体構造であり、回転体42に連動して向きR1,R2へ回転する。具体的には、カム43は、回転体42のうち枢着部31aと対向する下面から突出しており、枢着部31aと隣接するように、ベース20のガイド凹部24e内に配置されている。車高方向Zにおけるカム43の突出量は、ガイド凹部24eの深さと同じである。
【0049】
図8及び図9を参照すると、カム43は、軸受部24の回転軸Aと一致する回転軸と、非円形状の外周部43aとを備える。つまり、カム43と軸受部24は、同一の回転軸Aを有する。外周部43aは、第1真直部43b、第1円弧部43c、第2円弧部43d、及び第2真直部43eを備える。
【0050】
第1真直部43bは、ケーブル45を介して回転体42の回転力をロック部材35に伝達して、ロック部材35をロック位置とアンロック位置に移動させる。具体的には、第1真直部43bは、回転軸Aからの距離がD1の位置と、回転軸Aからの距離がD2の位置との間を直線状に延びている。回転軸Aを中心とする角度位置は、距離D1側の一端と距離D2側の他端とで異なる。距離D2は距離D1よりも短く、距離D1とD2の寸法差(D1-D2)は、ロック部材35の移動ストロークに対応する。つまり、第1真直部43bのうち一端から他端までの角度範囲βが、ロック部材35をロック位置とアンロック位置に移動させるためのカム43の回転角度に相当する。
【0051】
第1真直部43bのうち距離D1側の一端は、カムフォロワ49を押圧する押圧部43fを構成する。リッド開作動時にカム43が向きR1へ回転すると、押圧部43fは、図9において左側である車長方向Xの前側へ移動し、同じ向きにカムフォロワ49を押圧して移動させる。リッド閉作動時にカム43が向きR2へ回転すると、押圧部43fは、図15において右側である車長方向Xの後側へ移動し、同じ向きへのカムフォロワ49の移動を許容する。
【0052】
第1円弧部43cは、ケーブル45を介してロック部材35をアンロック位置に保持する。第1円弧部43cは、回転軸Aを中心とする円弧状で、第1真直部43bの押圧部43fに連なっている。第1円弧部43cの半径は、押圧部43fの距離D1と同じ寸法である。第1円弧部43cを形成する角度範囲は、180度以上とすることが好ましく、本実施形態では210度としている。
【0053】
第2円弧部43dは、ケーブル45を介してロック部材35をロック位置に保持する。第2円弧部43dは、回転軸Aを中心とする円弧状で、第1真直部43bのうち距離D2側の端部に連なっている。第2円弧部43dの半径は、距離D2と同じ寸法である。
【0054】
第2真直部43eは、ケーブル45を介したロック部材35の移動には関与しない。第2真直部43eは、第1円弧部43cのうち第1真直部43bに連なっていない端部と、第2円弧部43dのうち第1真直部43bに連なっていない端部とに連なり、第1円弧部43cの径方向に延びている。つまり、回転軸Aを中心とする角度位置は、第2真直部43eの内端と外端で同じである。
【0055】
図2及び図5を参照すると、ケーブル45は、カム43の回転力をロック部材35に伝達して移動させる伝達部材であり、可撓性を有するチューブ46と、チューブ46内を進退可能なワイヤ47と、カムフォロワ49とを備える。ワイヤ47のうち、軸受部24とは反対側である車長方向Xの後側の端部にロック部材35が取り付けられ、軸受部24側である車長方向Xの前側の端部にカムフォロワ49が取り付けられている。
【0056】
チューブ46のうち、ロック部材35側の端部にはケーブルエンド48Aが取り付けられ、カムフォロワ49側の端部にはケーブルエンド48Bが取り付けられている。ケーブルエンド48Aはベース20の取付片21fに取り付けられ、ケーブルエンド48Bはベース20の取付凹部24gに取り付けられている。図6を参照すると、ケーブルエンド48Aとロック部材35の間に、スプリング36が圧縮状態で配置されている。
【0057】
図5図8及び図9を参照すると、カムフォロワ49は、カム43の外周部43aを取り囲む環状であり、ベース20のガイド凹部24e内に移動可能に配置されている。カム43の回転によってカムフォロワ49は、図12Aに示すように、ガイド凹部24e内を車長方向Xの前側(向きW1)へ移動した第1作動位置と、図9に示すように、ガイド凹部24e内を車長方向Xの後側(向きW2)へ移動した第2作動位置との間を移動可能である。
【0058】
車高方向Zにおけるカムフォロワ49の厚みは、カム43の突出量及びガイド凹部24eの深さと概ね同一である。カムフォロワ49は、車高方向Zから見て半長円形状であり、一対の側部49a、押圧受部49b、円弧部49c、及び取付部49dを備える。
【0059】
一対の側部49aはそれぞれ、車長方向Xへ直線状に延び、ガイド凹部24eの第1部分24e1のうち、車長方向Xに延びる一対の側壁に隣接して配置される。側部49aの車長方向Xの長さL1は、ガイド凹部24eのうち第1部分24e1の車長方向Xの長さL2よりも短い。側部49aの長さL1と第1部分24e1の長さL2との寸法差(L2-L1)は、第1真直部43bの距離D1,D2の寸法差(D1-D2)、つまりロック位置とアンロック位置の間のロック部材35の移動ストロークよりも大きい。
【0060】
押圧受部49bは、一対の側部49aのうち車長方向Xの前側端にそれぞれ連なり、車幅方向Yへ直線状に延びている。
【0061】
円弧部49cは、一対の側部49aのうち車長方向Xの後側端にそれぞれ連なり、車長方向Xの後側へ突出する半円弧状である。円弧部49cは、ガイド凹部24eの第2部分24e2の内壁に沿う曲率であり、第2部分24e2への当接によって、それ以上の向きW2へのカムフォロワ49の移動を阻止するストッパとして機能する。
【0062】
取付部49dは、円弧部49cのうち車長方向Xの後側の頂部に設けられ、ワイヤ47の端部に取り付けられる。図12Aに示す第1作動位置では、取付部49dの一部がベース20の連通溝24i内に位置する。図9に示す第2作動位置では、取付部49d全体がベース20の連通溝24i内に位置する。
【0063】
図9に示す閉状態のリッド25が開作動され、カム43が向きR1へ回転すると、押圧部43fによって押圧受部49bが押圧され、カムフォロワ49は、第2作動位置から第1作動位置に向けて、向きW1へ移動する(図12A参照)。これにより、ワイヤ47が連動して移動し、ロック位置のロック部材35がアンロック位置に移動する(図12B参照)。
【0064】
図14に示す開状態のリッド25が閉作動され、カム43が向きR2へ回転すると、押圧部43fが車長方向Xの後側へ次第に移動する(図16図17A参照)。これにより、押圧部43fによる押圧受部49bの保持位置が変位するため、スプリング36によって付勢されたロック部材35がアンロック位置からロック位置に向けて移動し(図17B参照)、ワイヤ47も連動して移動する。その結果、押圧部43fの移動に追従してカムフォロワ49が、第1作動位置から第2作動位置に向けて、向きW2へ次第に移動する(図17A参照)。
【0065】
図7及び図8を参照すると、差動機構50は、回転体42及びアーム30の枢着部31aに設けられ、回転体42の回転開始後、遅延して枢着部31aの回転を開始させる。具体的には、差動機構50は、回転体42に設けられた凸部51と、軸部材32(枢着部31a)に設けられた凹部52とで構成されている。但し、凸部51を軸部材32に設け、凹部52を回転体42に設けてもよい。
【0066】
凸部51は、回転体42に一体成形されたカム43の下側面から突出して設けられている。図10を参照すると、車高方向Zから見て凸部51は、扇形状であり、回転軸Aに対して径方向外側へ間隔をあけて設けられている。
【0067】
図8及び図10を参照すると、凹部52は、枢着部31aが備える軸部材32のフランジ部32aに設けられ、径方向に窪む切り欠きからなる。車高方向Zから見て凹部52は、凸部51よりも大きい扇形状であり、内部に凸部51が配置される。
【0068】
回転軸Aまわりの凸部51の角度範囲r1は、回転軸Aまわりの凹部52の角度範囲r2よりも小さい。これにより、回転軸Aまわりの周方向における凸部51と凹部52の間には、角度範囲r1,r2の差分の隙間53が形成されている。回転体42の回転によって、周方向における凸部51及び凹部52それぞれの対向面が当接して押圧することで、枢着部31aが回転する。隙間53の角度範囲(r2-r1)が、回転体42の回転開始後に遅延させて軸部材32(枢着部31a)を回転させる差動角度範囲αである。
【0069】
図9を参照すると、差動角度範囲αは、カム43の第1真直部43bの角度範囲βよりも大きい。これにより、ロック位置のロック部材35がアンロック位置に移動した後、凸部51及び凹部52それぞれの対向面が当接し、回転体42の回転力を枢着部31aに伝達できる。差動角度範囲αと角度範囲βの差(α-β)が、ロック部材35の移動完了後、枢着部31a(アーム30)の回転を開始させる遅延角度範囲γである。
【0070】
図11A図11Bは、モータ41(回転体42)の回転角度位置に応じたアーム30とロック部材35の動きを示すグラフであり、図11Aは閉位置のリッド25を開位置に回転させるリッド開作動時を示し、図11Bは開位置のリッド25を閉位置に回転させるリッド閉作動時を示す。
【0071】
図9に示す角度範囲α,β,γは、図11Aに示すリッド開作動が成立するように設定されている。
【0072】
具体的には、図11Aを参照すると、リッド25の開作動時にモータ41は、初期回転角度位置(0)から最大回転角度位置(max)に向けて正転する。これにより、回転体42は、閉回転角度位置から開回転角度位置に向けて、向きR1へ回転し始める。回転体42と一体にカム43も向きR1へ回転し始めるため、カムフォロワ49は、図9に示す第2作動位置から第1作動位置に向けて、向きW1へ移動し始める。その結果、ワイヤ47が引っ張られるため、図11AにSa1で示すように、ロック位置のロック部材35がアンロック位置へ移動し始める。この際、差動機構50の隙間53の存在によって、枢着部31aには回転体42の回転力が伝わらないため、図11AにSb1で示すように、アーム30は回転しない。なお、前述した閉回転角度位置とは、図9に示すように、アーム30を後退位置に移動させた状態での回転体42の姿勢を意味し、開回転角度位置とは、図14に示すように、アーム30を進出位置に移動させた状態での回転体42の姿勢を意味する。
【0073】
続いて、モータ41が図11AにP1で示す角度位置を越えて回転すると、カム43の第1真直部43bの角度範囲βに対応する角度以上、回転体42が閉回転角度位置から回転する。これにより、カムフォロワ49は、第2作動位置から第1作動位置まで移動し、カム43の押圧部43fで押圧された状態から第1円弧部43cで保持された状態になる。そのため、ロック部材35は、アンロック位置に保持された状態になる(図11AのSa2参照)。
【0074】
続いて、モータ41が図11AにP2で示す角度位置を越えて回転すると、差動角度範囲αに対応する角度以上、回転体42が閉回転角度位置から回転する。そのため、回転体42の回転力が差動機構50を介して枢着部31aに伝わり、後退位置のアーム30が進出位置に向けて移動し始める(図11AのSb2参照)。
【0075】
その後、モータ41が最大回転角度位置(max)まで回転すると、回転体42は開回転角度位置まで回転する。その結果、アーム30は図14に示す進出位置まで回転し、リッド25は開口部3を開放する。また、ロック部材35は、カム43の第1円弧部43cによってアンロック位置に保持され続ける(図12B参照)。
【0076】
図11Bを参照すると、リッド25の閉作動時にモータ41は、最大回転角度位置(max)から初期回転角度位置(0)に向けて逆転する。これにより、回転体42は、開回転角度位置から閉回転角度位置に向けて、向きR2へ回転し始める。回転体42と一体にカム43も向きR2へ回転し始めるが、カムフォロワ49はカム43の第1円弧部43cで保持されているため、図11BにSa3で示すように、ロック部材35もアンロック位置に保持される(図16参照)。また、差動機構50の隙間53の存在によって枢着部31aには回転力が伝わらないため、図11BにSb3で示すように、アーム30も回転しない。
【0077】
続いて、モータ41が図11BにP3で示す角度位置を越えて回転すると、回転体42は、差動角度範囲αに対応する角度以上、開回転角度位置から回転する。これにより、回転体42の回転力が枢着部31aに伝わり、進出位置のアーム30が後退位置に向けて移動し始める(図11BのSb4参照)。この際、カムフォロワ49はカム43の第1円弧部43cによって保持されているため、ロック部材35もアンロック位置に保持される(図11BのSa3参照)。
【0078】
続いて、モータ41が図11BにP4で示す角度位置を越えて回転すると、カムフォロワ49は、カム43の第1円弧部43cに保持された状態から第1真直部43bに保持された状態になる。カムフォロワ49を第1真直部43bが保持する位置は、カム43の回転に従って車長方向Xの後側へ変位する。そのため、図11BにSa4で示すように、スプリング36(図12B参照)の付勢力によって、アンロック位置のロック部材35がロック位置に向けて移動し始める。その結果、ワイヤ47を介してカムフォロワ49も、第1作動位置から第2作動位置に向けて、向きW2に移動し始める。
【0079】
その後、モータ41が図11Bに示す初期回転角度位置まで回転すると、回転体42の回転によって、差動機構50を介してアーム30が後退位置まで移動し、リッド25が開口部3を閉塞する(図4参照)。また、カム43の回転によって、カムフォロワ49とワイヤ47を介してロック位置まで移動したロック部材35が、リッド25のロック片26に係合する(図6参照)。
【0080】
ここで、リッド25が閉位置に移動するタイミングと、ロック部材35がロック位置に移動するタイミングとは、同時であってもよいし、いずれかが先であっても構わない。同時の場合、又はロック部材35よりもリッド25が先の場合、ロック部材35の移動方向前側に位置するロック孔26cに、ロック部35aが進入して係合する。リッド25よりもロック部材35が先の場合、ロック片26の傾斜部26bが、ロック位置のロック部35aを押圧してロック部材35をアンロック位置側へ退避させ、リッド25の移動完了後、スプリング36の付勢力によって、ロック部材35をロック位置へ移動させて、ロック部35aをロック孔26cに係合できる。
【0081】
以上のように、図11Aに示すリッド開作動が成立するように、角度範囲α,β,γを設定することで、1個のモータ41によって、図3に示す進出位置と図4に示す後退位置の間のアーム30の移動を阻害することなく、ロック部材35によるリッド25のロックとアンロックを実現できる。
【0082】
次に、このように構成したリッド開閉装置10の動作について説明する。
【0083】
まず、図9及び図10に示すように、アーム30が後退位置に回転し、リッド25が閉位置に回転している状態では、図6に示すように、ロック部材35がリッド25のロック孔26cに係合している。図9を参照すると、カムフォロワ49の押圧受部49bにはカム45の第1真直部43bが面接触し、図10を参照すると、差動機構50の凸部51は凹部52内において向きR2側の端部に位置している。
【0084】
この閉状態で、ベース20に取り付けられたスイッチ(図示せず)、車内に設けられた開スイッチ(図示せず)、及び電子キーの開スイッチ(図示せず)のいずれかが操作されると、モータ41が正転する。これにより、回転体42とカム43が向きR1へ回転し始めるとともに、カムフォロワ49とワイヤ47が向きW1へ移動し始める。その結果、ロック位置のロック部材35がアンロック位置に向けて移動し始める。
【0085】
但し、差動機構50の差動角度範囲αに対応する角度を回転体42が回転するまでは、図12Aに示すように、凸部51は隙間53内を移動するだけで凹部52の対向面を押圧しないため、アーム30の枢着部31aは回転しない。この間、カムフォロワ49は、カム43の回転によって第2作動位置から第1作動位置に移動する。これにより、ワイヤ47を介してロック部材35が引っ張られ、図12Bに示すように、ロック位置のロック部材35がアンロック位置に移動する。
【0086】
続いて、回転体42の回転によって凸部51が凹部52の対向面に当接して向きR1側へ押圧する。これにより、図13に示すように、後退位置のアーム30が進出位置に向けて移動し始め、閉位置のリッド25が開位置に向けて移動し始める。この際、カム43の第1円弧部43cによってカムフォロワ49が第1作動位置に保持されているため、ロック部材35は、ワイヤ47を介してアンロック位置に保持され、リッド25の回転を妨げることはない。
【0087】
その後、図3及び図14に示すように、アーム30が進出位置まで移動すると、リッド25は開位置に移動し、開口部3を開放して給電コネクタ15を外部に露出させる。この間も、カム43の第1円弧部43cによってカムフォロワ49は第1作動位置に保持され、ワイヤ47を介してロック部材35はアンロック位置に保持されている。
【0088】
図14に示す開状態で、ベース20に取り付けられたスイッチ(図示せず)、車内に設けられた閉スイッチ(図示せず)、及び電子キーの閉スイッチ(図示せず)のいずれかが操作されると、モータ41が逆転する。これにより、回転体42とカム43が向きR2へ回転し始める。
【0089】
但し、差動機構50の差動角度範囲αに対応する角度を回転体42が回転するまでは、図15に示すように、凸部51は隙間53内を移動するだけで凹部52の対向面を押圧しないため、アーム30の枢着部31aは回転しない。また、カム43の第1円弧部43cによってカムフォロワ49が第1作動位置に保持されているため、ワイヤ47を介してロック部材35もアンロック位置に保持されている。
【0090】
続いて、回転体42の回転によって凸部51が凹部52の対向面に当接して向きR2側へ押圧する。これにより、図16に示すように、進出位置のアーム30が後退位置に向けて移動し始め、開位置のリッド25が閉位置に向けて移動し始める。その後、カムフォロワ49が、カム43の第1円弧部43cに保持された状態から第1真直部43bに保持される状態になる。図16及び図17Aを参照すると、第1真直部43bによるカムフォロワ49の保持位置は、カム43の回転に従って車長方向Xの前側から後側へ変位する。この保持位置の変位により、スプリング36の付勢力によってアンロック位置のロック部材35がロック位置に向けて移動し始め、ワイヤ47を介して第1作動位置のカムフォロワ49が第2作動位置に向けて移動し始める。
【0091】
その後、図17A及び図17Bに示すように、回転体42の回転によってアーム30が後退位置の近傍まで回転し、リッド25がシール部材23に当接する回転角度位置に移動すると、リッド25のロック片26の先端がベース20の凹部21c内に進入する。そして、図4及び図9に示すように、回転体42の回転によってアーム30が後退位置まで回転すると、リッド25がサイドパネル1の開口部3を閉塞して給電コネクタ15を覆い隠す。また、図6に示すように、凹部21c内に進入したロック片26に、ロック位置に移動したロック部材35が係合する。これにより、リッド25の閉状態を維持できる。
【0092】
このように構成したリッド開閉装置10は、以下の特徴を有する。
【0093】
モータ41の駆動力をアーム30の枢着部31aに伝達して回転させる回転体42を備えるため、アーム30を介してリッド25を自動開閉できる。また、回転体42に連動して回転するカム43と、カム43によって移動可能なケーブル45(ワイヤ47)と、ケーブル45に取り付けられたロック部材35とを備え、ロック部材35は、アーム30が後退位置に回転したときにリッド25のロック片26に係合するため、リッド25を開放不可能にロックできる。このように、1個のモータ41によって、リッド25の自動開閉とロックを実現できるため、2個のモータ41を搭載する場合と比較して、リッド開閉装置10の大型化と高コスト化を抑えつつ、セキュリティ性を向上できる。
【0094】
差動機構50は、ケーブル45(ワイヤ47)の移動によってロック位置のロック部材35がアンロック位置に移動すると、枢着部31aの回転を開始させる。具体的には、差動機構50は、枢着部31a及び回転体42のうち、一方に設けられた凸部51と他方に設けられた凹部52とを有し、周方向における凸部51と凹部52の間には定められた差動角度範囲αの隙間53を有する。そのため、ロック部材35によってリッド25の開閉を阻害することなく、1個のモータ41によってリッド25の自動開閉とロックを実現できる。
【0095】
ケーブル45を用いているため、ベース20の軸受部24側に回転体42とカム43が配置されている場合でも、ベース20の軸受部24とは反対側にロック部材35を配置できる。つまり、アーム30(リッド25)の枢着部31aとは反対側であるリッド25の先端側を、ロック部材35によってロックできる。よって、軸受部24の近傍(例えばアーム30)をロック部材35でロックする場合と比較して、閉状態のリッド25が不正操作された際にロック部材35に加わる負荷を低減できるうえ、開口部3にリッド25を確実に位置決めできる。
【0096】
カムフォロワ49は、カム43の非円形状の外周部43aを取り囲む環状であるため、カム43による押圧力を確実に受け止めて、ケーブル45を介してロック部材35を確実に移動できる。
【0097】
伝達部材として、チューブ46とワイヤ47を有するケーブル45を用いているため、リッド25に対するロック部材35の配置を、自動車のレイアウト等に合わせて自由に設定できる。
【0098】
チューブ46とロック部材35の間にロック部材35を付勢するスプリング36が取り付けられているため、簡素な構造でアンロック位置のロック部材35をロック位置へ確実に移動できる。また、ベース20(例えば図5に示す取付片21f)とロック部材35の間にスプリング36を配置する場合と比較して、スプリング36の配置構造を簡素化でき、リッド開閉装置10全体のレイアウトの自由度を向上できる。
【0099】
回転体42が枢着部31aと同軸に配置されているため、リッド開閉装置10全体を小型化できる。
【0100】
カム43は、回転体42と一体構造で、回転体42と枢着部31aの間に配置されているため、回転体42と枢着部31aの連結部分(差動機構50)の小型化と駆動力の伝達性向上を図ることができる。
【0101】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0102】
例えば、リッド25(アーム30)は、車長方向Xに延びる回転軸まわりに垂直方向に回転可能としてもよい。
【0103】
差動機構50は、ロック位置のロック部材35をアンロック位置に移動させた後、枢着部31a(アーム30)の回転を開始させることが可能な構成(構造)であれば、必要に応じて変更が可能である。
【0104】
回転体42とカム43を別体で形成し、ギア等の伝達部材を介してカム43が回転体42に連動して回転するようにしてもよい。
【0105】
カム43によって移動可能な伝達部材は、ロッドであってもよい。この場合、図2に示すベース20の凹部21cの左側にロック部材35を配置する。又は、図9における右側を第1作動位置として左側を第2作動位置とし、カム43によってカムフォロワ49を移動させる向きを図9において左右逆向きにする。
【0106】
カムフォロワ49は、カム43の回転に従動可能な構成であれば、半長円形状以外の形状であってもよいし、環状以外の形状であってもよく、必要に応じて変更可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 サイドパネル(パネル)
2 凹部
3 開口部
4 取付口
10 リッド開閉装置
15 給電コネクタ(受給部)
15a 接続部
20 ベース
21 ベース本体
21a 挿通孔
21b 窓孔
21c 凹部
21d 挿通孔
21e 保持部
21f 取付片
22 取付部
22a 凹部
22b 取付口
23 シール部材
24 軸受部
24a 端板
24b 連結板
24c 軸穴
24d 軸孔
24e ガイド凹部
24e1 第1部分
24e2 第2部分
24f 保持凹部
24g 取付凹部
24h 保持片
24i 連通溝
25 リッド
26 ロック片(係合部)
26a ロック片本体
26b 傾斜部
26c ロック孔
27 押圧部
30 アーム
31 第1アーム部
31a 枢着部
31b 取付孔
32 軸部材
32a フランジ部
32b 軸部
33 第2アーム部
33a 接続部(先端部)
35 ロック部材
35a ロック部
35b フランジ部
35c 取付部
36 スプリング(付勢部材)
40 駆動機構
41 モータ(駆動源)
42 回転体
42a 取付部
43 カム
43a 外周部
43b 第1真直部
43c 第1円弧部
43d 第2円弧部
43e 第2真直部
43f 押圧部
45 ケーブル
46 チューブ
47 ワイヤ(伝達部材)
48A,48B ケーブルエンド
49 カムフォロワ
49a 側部
49b 押圧受部
49c 円弧部
49d 取付部
50 差動機構
51 凸部
52 凹部
53 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B