(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047148
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20230329BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20230329BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20230329BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F37/00 J
H01F27/255
H01F27/24 V
H01F27/24 K
H01F27/32 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156094
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】村下 将也
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚稔
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044AD09
5E044CA02
5E044CA09
(57)【要約】
【課題】磁性コアにおけるギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高く、かつインダクタンスが高いリアクトルを提供する。
【解決手段】巻回部を有するコイルと、E字状の第一コア部とT字状又はE字状の第二コア部とギャップ部とを有する磁性コアと、モールド樹脂部と、を備え、第一コア部は、第一ミドルコア部を有する複合材料の成形体であり、第二コア部は、第二ミドルコア部を有する圧粉成形体であり、ギャップ部は、巻回部の内部において、第一ミドルコア部の端面と第二ミドルコア部の端面との間に配置されており、第一ミドルコア部の端面は、環状の外側端面と周面と内側端面とを有し、第二ミドルコア部の端面と外側端面と内側端面とは平坦面であり、外側端面の面積に対する内側端面の面積の比が0.30以上1.35以下であり、モールド樹脂部は、外側端面と第二ミドルコア部の端面との間に設けられる部分を有する、リアクトル。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の軸方向に組み合わされた第一コア部及び第二コア部と、前記第一コア部と前記第二コア部との間に設けられたギャップ部と、を有する磁性コアと、
前記磁性コアの少なくとも一部を覆っているモールド樹脂部と、を備え、
前記巻回部の数が一つであり、
前記第一コア部の形状はE字状であり、
前記第二コア部の形状はT字状又はE字状であり、
前記第一コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第一ミドルコア部を有する複合材料の成形体であり、
前記第二コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第二ミドルコア部を有する圧粉成形体であり、
前記ギャップ部は、前記巻回部の内部において、前記第一ミドルコア部の端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に配置されており、
前記第一ミドルコア部の端面は、
前記第一ミドルコア部の外周面につながっている環状の外側端面と、
前記外側端面から前記第二ミドルコア部の端面に向かって延びる周面と、
前記周面の先端につながっている内側端面と、を有し、
前記第二ミドルコア部の端面は、平坦面であり、
前記外側端面及び前記内側端面は、平坦面であり、
前記外側端面の面積に対する前記内側端面の面積の比が0.30以上1.35以下であり、
前記モールド樹脂部は、前記外側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に設けられる部分を有する、
リアクトル。
【請求項2】
前記内側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間の長さに対する前記外側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間の長さの比が3.00以上15.00以下である、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記第二ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さが前記第一ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さよりも短く、
前記第二コア部に向かい合う前記巻回部の端面から前記ギャップ部までの長さは、前記巻回部の長さの0.2倍以上0.49倍以下である、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記第一ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さと前記第二ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さと前記ギャップ部の厚さとの合計長さに対する前記ギャップ部の厚さの比が、0.02以上0.05以下である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記ギャップ部の厚さは、1.0mm以上2mm以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末の成形体であり、
前記圧粉成形体における前記軟磁性粉末の含有量が85体積%以上99体積%以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散した成形体であり、
前記複合材料の成形体における前記軟磁性粉末の含有量が20体積%以上80体積%以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項9】
請求項8に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のリアクトルは、コイルと、磁性コアと、モールド樹脂部とを備える。コイルは、巻回部を有する。巻回部は、巻線を螺旋状に巻回してなる。磁性コアは、内側コア部と外側コア部とを有する。内側コア部は、巻回部の内部に配置されている。内側コア部は、複数の内コア片と、隣り合う内コア片の間に設けられているギャップ部とを有する。外側コア部は、巻回部の外側に配置されている。モールド樹脂部は、コイルと磁性コアとの組合体の少なくとも一部を覆っている。モールド樹脂部は、上記ギャップ部に充填されている部分を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のリアクトルでは、各内コア片の端面が平坦面で構成されている。即ち、平坦面で構成されている2つの端面の間にギャップ部が設けられている。2つの端面の間の間隔が狭いと、2つの端面の間にモールド樹脂部が充填され難い。2つの端面の間に充填されるモールド樹脂部の量が少ないと、上記間隔を保持することが難しくなる。2つの端面の間に充填されるモールド樹脂部の量が多くなるように上記間隔を広くすると、所望のインダクタンスが得られないことがある。
【0005】
本開示は、磁性コアにおけるギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高く、かつインダクタンスが高いリアクトルを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータを提供することを別の目的の一つとする。更に、本開示は、上記コンバータを備える電力変換装置を提供することを他の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、
筒状の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の軸方向に組み合わされた第一コア部及び第二コア部と、前記第一コア部と前記第二コア部との間に設けられたギャップ部と、を有する磁性コアと、
前記磁性コアの少なくとも一部を覆っているモールド樹脂部と、を備え、
前記巻回部の数が一つであり、
前記第一コア部の形状はE字状であり、
前記第二コア部の形状はT字状又はE字状であり、
前記第一コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第一ミドルコア部を有する複合材料の成形体であり、
前記第二コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第二ミドルコア部を有する圧粉成形体であり、
前記ギャップ部は、前記巻回部の内部において、前記第一ミドルコア部の端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に配置されており、
前記第一ミドルコア部の端面は、
前記第一ミドルコア部の外周面につながっている環状の外側端面と、
前記外側端面から前記第二ミドルコア部の端面に向かって延びる周面と、
前記周面の先端につながっている内側端面と、を有し、
前記第二ミドルコア部の端面は、平坦面であり、
前記外側端面及び前記内側端面は、平坦面であり、
前記外側端面の面積に対する前記内側端面の面積の比が0.30以上1.35であり、
前記モールド樹脂部は、前記外側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に設けられる部分を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のリアクトルは、磁性コアにおけるギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高く、かつインダクタンスが高い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1のリアクトルの全体を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1のリアクトルの全体を示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1のリアクトルを分解した状態を示す概略斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態1のリアクトルに備わる第一コア部の端面を第一方向から見た概略平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1のリアクトルの全体を示す概略上面図である。
【
図6】
図6は、
図5の領域Aを拡大して示す概略拡大図である。
【
図7】
図7は、実施形態2のリアクトルの全体を示す概略上面図である。
【
図8】
図8は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
【
図9】
図9は、コンバータを備える電力変換装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一形態に係るリアクトルは、
筒状の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の軸方向に組み合わされた第一コア部及び第二コア部と、前記第一コア部と前記第二コア部との間に設けられたギャップ部と、を有する磁性コアと、
前記磁性コアの少なくとも一部を覆っているモールド樹脂部と、を備え、
前記巻回部の数が一つであり、
前記第一コア部の形状はE字状であり、
前記第二コア部の形状はT字状又はE字状であり、
前記第一コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第一ミドルコア部を有する複合材料の成形体であり、
前記第二コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第二ミドルコア部を有する圧粉成形体であり、
前記ギャップ部は、前記巻回部の内部において、前記第一ミドルコア部の端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に配置されており、
前記第一ミドルコア部の端面は、
前記第一ミドルコア部の外周面につながっている環状の外側端面と、
前記外側端面から前記第二ミドルコア部の端面に向かって延びる周面と、
前記周面の先端につながっている内側端面と、を有し、
前記第二ミドルコア部の端面は、平坦面であり、
前記外側端面及び前記内側端面は、平坦面であり、
前記外側端面の面積に対する前記内側端面の面積の比が0.30以上1.35であり、
前記モールド樹脂部は、前記外側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に設けられる部分を有する。
【0011】
以下、ギャップ部のうち、外側端面と第二ミドルコア部の端面との間に設けられているギャップ部を外側ギャップ部といい、内側端面と第二ミドルコア部の端面との間に設けられているギャップ部を内側ギャップ部ということがある。
【0012】
上記リアクトルは、ギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高い。その理由は、次の通りである。モールド樹脂部の成形の過程でモールド樹脂部の構成材料の一部が、巻回部の内部に充填される。外側端面及び内側端面と第二ミドルコア部の端面とは平坦面である。そのため、外側ギャップ部の厚さは内側ギャップ部の厚さよりも大きい。外側端面は環状に設けられている。そのため、外側ギャップ部は環状に設けられている。外側端面の面積に対する内側端面の面積の比が1.35以下であることで、外側ギャップ部の割合が適切に確保されている。よって、巻回部の内部に充填されたモールド樹脂部の構成材料が第一ミドルコア部の端面と第二ミドルコア部の端面との間に行き渡り易い。
【0013】
上記リアクトルは、インダクタンスが高い。その理由は、次の通りである。内側端面と第二ミドルコア部の端面との間の長さは、外側端面と第二ミドルコア部の端面との間の長さよりも短い。外側端面の面積に対する内側端面の面積の比が0.30以上であることで、内側ギャップ部の割合が適切に確保されている。
【0014】
上記リアクトルは、放熱性に優れる。モールド樹脂部が外側端面と第二ミドルコア部の端面との間に設けられる部分を有することで、第一コア部と第二コア部との間での熱伝導が高くなり易いからである。
【0015】
上記リアクトルは、低損失である。上記リアクトルは、ギャップ部が巻回部の内部に配置されていることで、漏れ磁束が巻回部に侵入し難い。そのため、巻回部で発生する渦電流損を低減し易いからである。
【0016】
(2)上記リアクトルの一形態として、
前記内側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間の長さに対する前記外側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間の長さの比が3.00以上15.00以下であるとよい。
【0017】
上記比が3.00以上である上記の形態は、ギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高い。巻回部の内部に充填されたモールド樹脂部の構成材料が第一ミドルコア部の端面と第二ミドルコア部の端面との間に行き渡り易いからである。上記比が15.00以下である上記の形態は、インダクタンスが高い。外側ギャップ部の厚さが大きすぎないからである。また、上記の形態は、低損失である。
【0018】
(3)上記リアクトルの一形態として、
前記第二ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さが前記第一ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さよりも短く、
前記第二コア部に向かい合う前記巻回部の端面から前記ギャップ部までの長さは、前記巻回部の長さの0.2倍以上0.49倍以下であるとよい。
【0019】
上記の形態は、低損失である。上記の形態は、第二ミドルコア部の上記長さが第一ミドルコア部の上記長さよりも短いことで、複合材料の成形体よりも損失の大きな圧粉成形体の割合が少なくなり易いからである。また、上記の形態は、ギャップ部が巻回部の内部に配置されていて、巻回部の上記端面からのギャップ部までの長さが巻回部の長さの0.2倍以上であることで、漏れ磁束が巻回部に侵入し難い。そのため、巻回部で発生する渦電流損を低減し易いからである。更に、上記端面からのギャップ部までの長さが巻回部の長さの0.49倍以下であることで、巻回部の内部において、圧粉成形体よりも低損失な複合材料の成形体の割合を多くすることができるからである。
【0020】
上記の形態は、漏れ磁束によって周辺機器に影響を与えるなどの問題を抑制できる。上記の形態は、ギャップ部が巻回部の内部に配置されていて、上記端面からのギャップ部までの長さが巻回部の長さの0.2倍以上であることで、巻回部の外部への磁束の漏れを抑制し易いからである。
【0021】
上記の形態は、ギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高い。上記端面からのギャップ部までの長さが巻回部の長さの0.49倍以下であることで、外側端面と第二ミドルコア部の端面との間にモールド樹脂部の構成材料を行き渡らせ易いからである。
【0022】
(4)上記リアクトルの一形態として、
前記第一ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さと前記第二ミドルコア部における前記巻回部の軸方向に沿った長さと前記ギャップ部の厚さとの合計長さに対する前記ギャップ部の厚さの比が、0.02以上0.05以下であるとよい。
【0023】
ここでいうギャップ部の厚さとは、外側端面と第二ミドルコア部の端面との間における巻回部の軸方向に沿った長さである。即ち、ギャップ部の厚さとは、外側ギャップ部の厚さである。
【0024】
上記の形態は、上記比が0.02以上であることで、ギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高い。上記の形態は、上記比が0.05以下であることで、インダクタンスが高い。その上、上記の形態は、漏れ磁束が少なく、渦電流損の低減効果が高くなり易い。
【0025】
(5)上記リアクトルの一形態として、
前記ギャップ部の厚さは、1.0mm以上2mm以下であるとよい。
【0026】
上記の形態は、上記厚さが1.0mm以上であることで、ギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高い。上記の形態は、上記厚さが2mm以下であることで、インダクタンスが高い。その上、上記の形態は、漏れ磁束が少なく、渦電流損の低減効果が高くなり易い。
【0027】
(6)上記リアクトルの一形態として、
前記圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末の成形体であり、
前記圧粉成形体における前記軟磁性粉末の含有量が85体積%以上99体積%以下であるとよい。
【0028】
上記圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して、磁気特性を高め易い。
【0029】
(7)上記リアクトルの一形態として、
前記複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散した成形体であり、
前記複合材料の成形体における前記軟磁性粉末の含有量が20体積%以上80体積%以下であるとよい。
【0030】
上記複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して、磁気特性を調整し易い上に、複雑な形状でも形成し易い。
【0031】
(8)本開示の一形態に係るコンバータは、
上記(1)から上記(7)のいずれか1つに記載のリアクトルを備える。
【0032】
上記コンバータは、上記リアクトルを備えるため、優れた性能を有する。
【0033】
(9)本開示の一形態に係る電力変換装置は、
上記(8)のコンバータを備える。
【0034】
上記電力変換装置は、上記コンバータを備えるため、優れた性能を有する。
【0035】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0036】
《実施形態1》
〔リアクトル〕
図1から
図6を参照して、実施形態1のリアクトル1を説明する。リアクトル1は、
図1に示すように、コイル2と磁性コア3とモールド樹脂部4とを備える。コイル2は筒状の巻回部21を有する。巻回部21の数は一つである。磁性コア3は、第一コア部3f及び第二コア部3sとギャップ部3gとを有する。第一コア部3fと第二コア部3sとは、巻回部21の軸方向に組み合わされている。ギャップ部3gは、第一コア部3fと第二コア部3sとの間に設けられている。モールド樹脂部4は、磁性コア3の少なくとも一部を覆っている。本形態のリアクトル1の特徴の一つは、以下の要件(a)から要件(e)を満たしている点にある。
【0037】
(a)第一コア部3fと第二コア部3sとが特定の形状である。
(b)第一コア部3fと第二コア部3sとが特定の成形体で構成されている。
(c)ギャップ部3gが特定箇所に位置している。
(d)
図3に示すように第一コア部3fに備わる第一ミドルコア部31fの端面312と、
図6に示すように第二コア部3sに備わる第二ミドルコア部31sの端面318とが特定の形状である。
(e)
図6に示すように、モールド樹脂部4がギャップ部3gの特定の領域に設けられている部分を有する。
【0038】
以下、各構成を詳細に説明する。
図5は、説明の便宜上、コイル2を二点鎖線で示している。以下の説明では、次のように定義された第一方向D1、第二方向D2、及び第三方向D3を用いることがある。
第一方向D1は、巻回部21の軸方向に沿った方向である。
第二方向D2は、後述する第一ミドルコア部31fと第一サイドコア部321と第二サイドコア部322の並列方向に沿った方向である。
第三方向D3は、第一方向D1と第二方向D2の両方に直交する方向である。
【0039】
[コイル]
コイル2が有する巻回部21は、
図1,
図3に示すように、接合部の無い1本の巻線を螺旋状に巻回して構成されている。巻回部21の数が一つであることで、複数の巻回部を第二方向D2に並列するように配置する場合に比較して、第二方向D2に沿った長さを短くできる。
【0040】
本形態の巻回部21の形状は、矩形筒状である。矩形には、長方形と正方形とが含まれる。本形態の巻回部21の端面形状は、矩形枠状である。巻回部21の形状が矩形筒状であることで、巻回部21が同じ断面積の円形筒状である場合に比較して、巻回部21と設置対象100との接触面積を大きくし易い。そのため、リアクトル1は、巻回部21を介して
図2に示す設置対象100に放熱し易い。その上、巻回部21を設置対象100に安定して設置し易い。設置対象100の一例は、冷却ベース、又は後述するケースの内底面などである。巻回部21の角部は丸めている。本形態とは異なり、巻回部21の形状は、円形筒状でもよい。円形には、真円形と楕円形とが含まれる。
【0041】
巻線は、公知の巻線を利用できる。本形態の巻線は、被覆平角線を用いている。被覆平角線の導体線は、銅製の平角線で構成されている。被覆平角線の絶縁被覆は、エナメルからなる。巻回部21は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルで構成されている。
【0042】
巻回部21の第一端部21a及び第二端部21bはそれぞれ、巻回部21の軸方向の第一端部側及び第二端部側において、本形態では巻回部21の外周側へ引き伸ばされている。第一端部21a及び第二端部21bは、図示は省略しているものの、絶縁被覆が剥がされて導体線が露出されている。露出された導体線は、
図2に示すように、モールド樹脂部4の外側に引き出されている。露出された導体線には、端子部材が接続される。端子部材の図示は省略する。コイル2にはこの端子部材を介して外部装置が接続される。外部装置の図示は省略する。外部装置は、コイル2に電力供給を行なう電源などが挙げられる。
【0043】
巻回部21の外周面25は、リアクトル1の設置対象100に接触する部分を有する。そのため、リアクトル1は放熱性を高め易い。外周面25は磁性コア3よりも第三方向D3に突出している部分を有する。即ち、巻回部21の第三方向D3に沿った長さは、磁性コア3の第三方向D3に沿った長さよりも長い。本形態では、巻回部21の形状が矩形筒状であるため、巻回部21の外周面25は4つの平坦面を有する。本形態では、4つの平坦面のうち1つの平坦面が設置対象100に接触する部分である。そのため、巻回部21は設置対象100に対して十分な接触面積を確保できる。よって、リアクトル1は放熱性をより一層高め易い。本形態では、巻回部21の上記接触する部分は後述するモールド樹脂部4から露出している。そのため、設置対象100を介してコイル2の熱を放出し易い。
【0044】
[磁性コア]
磁性コア3は、
図1に示すように、第一コア部3fと第二コア部3sとを第一方向D1に組み合わせた組物である。第一コア部3fと第二コア部3sとを第一方向D1に組み合わせることで磁性コア3を構築できるため、リアクトル1は製造作業性に優れる。第一コア部3fと第二コア部3sとの間には、後述するギャップ部3gが設けられている。第一コア部3fと第二コア部3sの組み合わせは、本形態ではE-T型である。本形態とは異なり、上記組み合わせはE-E型でもよい。これらの組み合わせは、インダクタンスと放熱性とをより調整し易い。第一コア部3fは、後述する複合材料の成形体で構成されている。第二コア部3sは、後述する圧粉成形体で構成されている。
【0045】
第一コア部3fの体積と第二コア部3sの体積とギャップ部3gの体積との合計体積Vaは、50cm3以上500cm3以下である。合計体積Vが50cm3以上500cm3以下であるリアクトル1は、電気自動車、ハイブリッド自動車、又は燃料電池自動車のコンバータに好適である。巻回部21が設置対象100に接触する部分を有すること、及び第二コア部3sが圧粉成形体で構成されていることによって、上記合計体積Vaが50cm3以上であっても、磁性コア3の熱が放出され易い。上記合計体積Vaが500cm3以下であることで、リアクトル1は過度に大型になり難い。上記合計体積Vaは、更に60cm3以上400cm3以下であり、特に70cm3以上300cm3以下である。ギャップ部3gの体積は、第一ミドルコア部31fの端面312と第二ミドルコア部31sの端面318と仮想外周面とで囲まれる空間の体積である。仮想外周面とは、第一ミドルコア部31fの外周面311を第一方向D1に延長した外周面である。
【0046】
(第一コア部)
第一コア部3fの平面形状は、
図5に示すように、E字状である。第一コア部3fの平面形状とは、第三方向D3から第一コア部3fを見た形状をいう。平面形状の考え方は、後述する第二コア部3sでも同様である。第一コア部3fは、第一エンドコア部33fと、第一ミドルコア部31fと、第一サイドコア部321及び第二サイドコア部322とを有する。第一エンドコア部33fと巻回部21の第一端面とは、互いに向き合っている。第一ミドルコア部31fは、巻回部21の内部に配置されている部分を有する。第一サイドコア部321と第二サイドコア部322とは、第一ミドルコア部31fを挟むように互いに向き合って配置されている。第一サイドコア部321と第二サイドコア部322とは、巻回部21の外周に配置されている。
【0047】
第一コア部3fは、
図3に示すように、第一エンドコア部33fと第一ミドルコア部31fと第一サイドコア部321と第二サイドコア部322とが一体の成形体である。第一エンドコア部33fは、第一ミドルコア部31fと第一サイドコア部321と第二サイドコア部322とをつないでいる。第一サイドコア部321と第二サイドコア部322とは、第一エンドコア部33fの両端に設けられている。第一ミドルコア部31fは、第一エンドコア部33fの中央に設けられている。
【0048】
第一エンドコア部33fの形状は、本形態では薄い角柱状である。第一サイドコア部321及び第二サイドコア部322の形状は、互いに同一形状である。本形態では、第一サイドコア部321及び第二サイドコア部322の形状は、薄い角柱状である。
【0049】
第一ミドルコア部31fの形状は、巻回部21の内周形状に対応した形状である。本形態の第一ミドルコア部31fの形状は、四角柱状である。
【0050】
第一ミドルコア部31fは、
図3に示すように、外周面311と端面312とを有する。外周面311は、巻回部21の内周面に向かい合う面である。外周面311の角部は、
図3では角張って示されているが、
図4に示すように巻回部21の角部の内周面に沿うように丸めている。
【0051】
端面312は、
図3、
図6に示すように、外側端面313と周面314と内側端面315とを有する。外側端面313は、外周面311につながっている。外側端面313は、環状の平坦面である。本形態の外側端面313は、
図4に示すように、矩形環状の平坦面である。周面314は、
図3、
図6に示すように、外側端面313と内側端面315とにつながっている。周面314は、外側端面313から端面318に向かって延びる筒状の面である。本形態の周面314は、矩形筒状の面である。周面314は、第一方向D1に沿って直線状に延びる筒状の面であってもよいし、外側端面313から内側端面315に向かって先細る筒状の面であってもよい。内側端面315は、平坦面である。本形態の内側端面315の平面形状は、
図4に示すように、外周面311の輪郭形状と相似形状である。即ち、本形態の内側端面315の平面形状は、四角状である。本形態とは異なり、内側端面315の平面形状は、外周面311の輪郭形状とは異なる形状であってもよい。例えば、本形態の内側端面315の平面形状は、円形状であってもよい。外側端面313及び内側端面315と端面318とが平坦面であるので、
図6に示すように、外側端面313と端面318との間の第一方向D1に沿った長さLgeは、内側端面315と端面318との間の第一方向D1に沿った長さLgiよりも長い。換言すると、長さLgiは、長さLgeよりも短い。
【0052】
外側端面313の面積Seに対する内側端面315の面積Siの比、即ち面積Si/面積Seは、0.30以上1.35である(
図4参照)。面積Si/面積Seが0.30以上であるリアクトル1は、インダクタンスが高い。面積Si/面積Seが0.30以上であることで、
図6を参照して後述する内側ギャップ部3giの割合が適切に確保されているからである。面積Si/面積Seが1.35以下であるリアクトル1は、ギャップ部3gへのモールド樹脂部4の充填性が高い。その理由は、次の通りである。モールド樹脂部4の成形の過程でモールド樹脂部4の構成材料の一部が、巻回部21の内部に充填される。
図6を参照して後述する外側ギャップ部3geは環状に設けられている。面積Si/面積Seが1.35以下であることで、外側ギャップ部3geの割合が適切に確保されている。よって、巻回部21の内部に充填されたモールド樹脂部4の構成材料が端面312と端面318との間に行き渡り易い。面積Si/面積Seは、0.31以上1.25以下であってもよいし、0.32以上1.15以下であってもよい。面積Si/面積Seは、0.32以上1.00以下であってもよいし、0.32以上0.85以下であってもよい。
【0053】
図3,
図6に示す周面314の長さの一例、即ち、外側端面313と内側端面315との間の長さの一例は、後述する長さLge/長さLgiが後述する範囲を満たす長さである。
【0054】
本形態における第一サイドコア部321の断面積と第二サイドコア部322の断面積との合計は、第一ミドルコア部31fの断面積及び第二ミドルコア部31sの断面積の各々の断面積と同じである。ここでいう断面積とは、第一方向D1に直交する切断面の断面積である。
【0055】
図5に示すように、第一ミドルコア部31fの第一方向D1に沿った長さL1fは、巻回部21の第一方向D1に沿った長さよりも短い。長さL1fは、第一ミドルコア部31fにおける第一エンドコア部33fにつながる箇所と内側端面315との間の第一方向D1に沿った長さである。巻回部21の第一方向D1に沿った長さとは、巻回部21の第一端面と第二端面との間の第一方向D1に沿った長さである。巻回部21のターン同士の間に隙間がある場合には、巻回部21の第一方向D1に沿った長さにはターン同士の間の隙間の長さが含まれる。第一ミドルコア部31fの第二方向D2に沿った長さは、第一サイドコア部321の第二方向D2に沿った長さと第二サイドコア部322の第二方向D2に沿った長さの各々の長さよりも長い。
図1に示すように、第一ミドルコア部31fの第三方向D3に沿った長さは、第一サイドコア部321の第三方向D3に沿った長さと第二サイドコア部322の第三方向D3に沿った長さの各々と同一である。
【0056】
図5に示すように、第一サイドコア部321の第一方向D1に沿った長さL21と第二サイドコア部322の第一方向D1に沿った長さL22とは、同一である。長さL21と長さL22とは、長さL1fよりも長く、巻回部21の第一方向D1に沿った長さよりも長い。第一サイドコア部321の第二方向D2に沿った長さと、第二サイドコア部322の第二方向D2に沿った長さとは、互いに同一である。
図1に示すように、第一サイドコア部321の第三方向D3に沿った長さと、第二サイドコア部322の第三方向D3に沿った長さとは、互いに同一である。
【0057】
(第二コア部)
第二コア部3sの平面形状は、
図5に示すように、本形態ではT字状である。本形態とは異なり、第二コア部3sの平面形状はE字状であってもよい。上述したように、第二コア部3sは、圧粉成形体で構成されている。平面形状がT字状である圧粉成形体は、平面形状がE字状である圧粉成形体に比較して、製造し易い。そのため、平面形状がT字状である圧粉成形体は、平面形状がE字状である圧粉成形体に比較して、精度良く製造し易い。よって、平面形状がT字状である第二コア部3sは、平面形状がE字状である場合に比較して、第一コア部3fと組み合わせた際、不要な隙間が設けられ難い。
【0058】
本形態の第二コア部3sは、第二エンドコア部33sと、第二ミドルコア部31sとを有する。第二エンドコア部33sと巻回部21の第二端面とは、互いに向き合っている。第二ミドルコア部31sは、巻回部21の内部に配置されている部分を有する。第二コア部3sは、
図3に示すように、第二エンドコア部33sと第二ミドルコア部31sとが一体の成形体である。第二ミドルコア部31sは、第二エンドコア部33sの中央に設けられている。
【0059】
第二エンドコア部33sの形状は、第一エンドコア部33fの形状と同一形状である。即ち、第二エンドコア部33sは、薄い角柱状である。第二ミドルコア部31sの形状は、四角柱状である。第二ミドルコア部31sの角部は、巻回部21の角部の内周面に沿うように丸めている。第二ミドルコア部31sの端面318は、平坦面である。
【0060】
図5に示すように、本形態では、第二ミドルコア部31sの第一方向D1に沿った長さL1sは、長さL1fよりも短い。長さL1sと長さL1fとの合計長さは、長さL21及び長さL22の各々の長さよりも短い。第二ミドルコア部31sの第二方向D2に沿った長さは、第一ミドルコア部31fの第二方向D2に沿った長さと同一である。
図1に示すように、第二ミドルコア部31sの第三方向D3に沿った長さは、第一ミドルコア部31fの第三方向D3に沿った長さと互いに同一である。
【0061】
図5に示すように、第二エンドコア部33sの第一方向D1に沿った長さL3sは、第一エンドコア部33fの第一方向D1に沿った長さL3fと同一である。第二エンドコア部33sの第二方向D2に沿った長さは、第一エンドコア部33fの第二方向D2に沿った長さと同一である。第二エンドコア部33sの第二方向D2に沿った長さは、巻回部21の第二方向D2に沿った長さよりも長い。
図1に示すように、第二エンドコア部33sの第三方向D3に沿った長さは、第一エンドコア部33fの第三方向D3に沿った長さと同一である。
図2に示すように、第二エンドコア部33sの第三方向D3に沿った長さは、巻回部21の第三方向D3に沿った長さよりも短い。
図1に示すように、第二エンドコア部33sの第三方向D3に沿った長さは、第二ミドルコア部31sの第三方向D3に沿った長さと同一である。
【0062】
(体積Vs/合計体積Va)×100で求められる体積の割合Vpsの一例は、25%以上40%以下である。体積Vsは、第二コア部3sの体積である。合計体積Vaは、上述したように、第一コア部3fの体積と第二コア部3sの体積とギャップ部3gの体積との合計体積である。体積の割合Vpsが25%以上であれば、リアクトル1の放熱性が高くなり易い。体積の割合Vpsが40%以下であれば、リアクトル1の損失が低下し易い。体積の割合Vpsは、27%以上38%以下であってもよいし、29%以上36%以下であってもよい。
【0063】
(体積Vms/合計体積Vma)×100で求められる体積の割合Vpmの一例は、15%以上49%以下である。体積Vmsは、第二ミドルコア部31sの体積である。合計体積Vmaは、第一ミドルコア部31fの体積と第二ミドルコア部31sの体積とギャップ部3gの体積との合計体積である。割合Vpmが15%以上であれば、リアクトル1の放熱性が高くなり易い。割合Vpmが49%以下であれば、リアクトル1の損失が低下し易い。割合Vpmは、20%以上40%以下であってもよいし、25%以上35%以下であってもよい。
【0064】
第一コア部3fと第二コア部3sとは、第一サイドコア部321の端面及び第二サイドコア部322の端面と第二エンドコア部33sの端面とが接するように組み合わされている。第一ミドルコア部31fの端面312と第二ミドルコア部31sの端面318との間に間隔が設けられている。端面312と端面318との間に後述するギャップ部3gが設けられている。
【0065】
第一コア部3fを構成する複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散されてなる成形体である。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を分散した流動性の素材を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料の成形体は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を容易に調整できる。そのため、複合材料の成形体は、磁気特性を調整し易い。その上、複合材料の成形体は、圧粉成形体に比較して、複雑な形状でも形成し易い。複合材料の成形体中の軟磁性粉末の含有量の一例は、20体積%以上80体積%以下である。複合材料の成形体中の樹脂の含有量の一例は、20体積%以上80体積%以下である。これらの含有量は、複合材料の成形体が100体積%である場合の値である。
【0066】
第二コア部3sを構成する圧粉成形体は、軟磁性粉末を圧縮成形してなる成形体である。圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して、コア部に占める軟磁性粉末の割合を高くできる。そのため、圧粉成形体は、磁気特性を高め易い。磁気特性としては、比透磁率や飽和磁束密度が挙げられる。また、圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して、樹脂の量が少なく軟磁性粉末の量が多いため、放熱性に優れる。圧粉成形体中の磁性粉末の含有量の一例は、85体積%以上99体積%以下である。この含有量は、圧粉成形体が100体積%である場合の値である。
【0067】
軟磁性粉末を構成する粒子は、軟磁性金属の粒子、被覆粒子、又は軟磁性非金属の粒子などが挙げられる。被覆粒子は、軟磁性金属の粒子と、軟磁性金属の粒子の外周に設けられている絶縁被覆とを備える。軟磁性金属は、純鉄又は鉄基合金などが挙げられる。鉄基合金の一例は、Fe-Si合金又はFe-Ni合金などである。絶縁被覆の一例は、リン酸塩などである。軟磁性非金属の一例は、フェライトなどである。
【0068】
複合材料の成形体の樹脂の一例は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂である。熱硬化性樹脂の一例は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、又はウレタン樹脂などである。熱可塑性樹脂の一例は、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアミド樹脂、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、又はフッ素樹脂などである。ポリアミド樹脂の一例は、ナイロン6、ナイロン66、又はナイロン9Tなどである。
【0069】
複合材料の成形体は、セラミックスフィラーを含有していてもよい。セラミックスフィラーの一例は、アルミナ、又はシリカなどである。セラミックスフィラーは、放熱性及び電気絶縁性の向上に寄与する。
【0070】
複合材料の成形体中における軟磁性粉末の含有量及び圧粉成形体中における軟磁性粉末の含有量は、成形体の断面における軟磁性粉末の面積割合と等価とみなす。成形体中における軟磁性粉末の含有量は、次のようにして求める。成形体の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察して観察画像を取得する。成形体の断面は、任意の断面である。SEMの倍率は、200倍以上500倍以下とする。観察画像の取得数は、10個以上とする。総断面積は、0.1cm2以上とする。一断面につき一つの観察画像を取得してもよいし、一断面につき複数の観察画像を取得してもよい。取得した各観察画像を画像処理して粒子の輪郭を抽出する。画像処理としては、例えば、二値化処理が挙げられる。各観察画像において軟磁性粒子の面積割合を算出し、その面積割合の平均値を求める。その平均値を軟磁性粉末の含有量とみなす。
【0071】
第一コア部3fが複合材料の成形体で構成され、第二コア部3sが圧粉成形体で構成されていることで、長さの長いギャップ部3gを介することなくインダクタンスを調整し易い上に、放熱性を調整し易い。そして、リアクトル1は、第二コア部3sが熱伝導率の比較的高い圧粉成形体で構成されることで、放熱性を高め易い。
【0072】
(ギャップ部)
ギャップ部3gの配置箇所は、巻回部21の内部である。ギャップ部3gの配置箇所は、第一ミドルコア部31fの端面312と第二ミドルコア部31sの端面318との間である。ギャップ部3gが巻回部21の内部に設けられていることで、巻回部21の外部に設けられている場合に比較して、漏れ磁束が巻回部21に侵入し難い。そのため、巻回部21で発生する渦電流損を低減し易い。
【0073】
ギャップ部3gは、
図6に示すように、外側ギャップ部3geと内側ギャップ部3giとを有する。外側ギャップ部3geは、外側端面313と端面318との間に設けられている。内側ギャップ部3giは、内側端面315と端面318との間に設けられている。
【0074】
ギャップ部3gは、第一コア部3f及び第二コア部3sよりも比透磁率が小さい材料からなる部材で構成されている。ギャップ部3gの少なくとも一部は、後述するモールド樹脂部4の一部で構成されている。ギャップ部3gは、モールド樹脂部4のみで構成されていてもよいし、モールド樹脂部4とエアギャップとで構成されていてもよい。本形態では、
図6に示すように、外側ギャップ部3geはモールド樹脂部4で構成され、内側ギャップ部3giは実質的にエアギャップで構成されている。
【0075】
内側ギャップ部3giの厚さに対する外側ギャップ部3geの厚さの比の一例は、3.00以上15.00以下である。内側ギャップ部3giの厚さは、長さLgiである。外側ギャップ部3geの厚さは、長さLgeである。即ち、内側ギャップ部3giの厚さに対する外側ギャップ部3geの厚さの比は、長さLge/長さLgiである。
【0076】
長さLge/長さLgiが3.00以上であるリアクトル1は、ギャップ部3gへのモールド樹脂部4の充填性が高い。長さLge/長さLgiが15.00以下であるリアクトル1は、インダクタンスが高い。そして、長さLge/長さLgiが3.00以上15.00以下であるリアクトル1は低損失である。長さLge/長さLgiは、3.25以上12.50以下であってもよいし、3.50以上10.00以下であってもよい。長さLge/長さLgiは、3.50以上7.00以下であってもよい。
【0077】
長さL1fと長さL1sとギャップ部3gの厚さとの合計長さに対するギャップ部3gの厚さの比の一例は、0.02以上0.05以下である。ギャップ部3gの厚さとは、長さLgeである。上記比が0.02以上であれば、ギャップ部3gへのモールド樹脂部4の充填性が高い。上記比が0.05以下であれば、所定のインダクタンスを確保し易い。その上、漏れ磁束が少なく、渦電流損の低減効果が高くなり易い。上記比は、0.02以上0.04以下であってもよいし、0.02以上0.035以下であってもよい。
【0078】
長さLgeの一例は、1.0mm以上2mm以下である。長さLgeが1.0mm以上であれば、ギャップ部3gへのモールド樹脂部4の充填性が高い。長さLgeが2mm以下であれば、所定のインダクタンスを確保し易い。その上、漏れ磁束が少なく、渦電流損の低減効果が高くなり易い。長さLgeは、1.0mm超2mm以下であってもよいし、1.2mm以上1.75mm以下であってもよいし、1.25mm以上1.5mm以下であってもよい。
【0079】
巻回部21の第二端面からのギャップ部3gまでの第一方向D1に沿った長さLeの一例は、巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.2倍以上0.49倍以下である。長さLeとは、ギャップ部3gにおける上記第二端面に最も近い位置と上記第二端面との間の第一方向D1に沿った長さである。即ち、長さLeとは、
図6に示す端面318と上記第二端面との間の第一方向D1に沿った長さである。
【0080】
長さLeが巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.2倍以上であれば、漏れ磁束が巻回部21に侵入し難い。そのため、巻回部21で発生する渦電流損を低減し易い。長さLeが巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.5倍に近いほど、即ちギャップ部3gの位置が巻回部21の第一方向D1の中央に近いほど、渦電流損の低減効果が高くなり易い。
【0081】
長さLeが巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.49倍以下であれば、巻回部21の内部において、第二ミドルコア部31sの体積よりも第一ミドルコア部31fの体積が大きくなり易い。よって、第二コア部3sの体積よりも第一コア部3fの体積の方が大きくなり易いため、圧粉成形体よりも低損失な複合材料の成形体の割合が多くなり易い。そのため、リアクトル1は、低損失である。また、長さLeが巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.49倍以下であれば、ギャップ部3gの少なくとも一部をモールド樹脂部4の一部で構成し易い。長さLeが巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.49倍以下であることで、合計体積Vaが50cm3以上であっても、端面312と端面318との間にモールド樹脂部4の構成材料が行き渡り易い。長さLeが短いほど、端面312と端面318との間にモールド樹脂部4の構成材料が行き渡り易い。
【0082】
長さLeは、巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.2倍以上0.4倍以下であってもよいし、巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.25倍以上0.375倍以下であってもよい。
【0083】
[コイルと第一ミドルコア部及び第二ミドルコア部との間の間隔]
長さLcに対する長さLtの比(長さLt/長さLc)は、0.05以上0.5以下であり、更に0.1以上0.35以下である。長さLcとは、第三方向D3に沿った巻回部21の内寸である。長さLtとは、長さLuと長さLdとの和である。長さLuは、第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの上面と巻回部21の内周面との間の第三方向D3に沿った長さである。長さLdは、第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの下面と巻回部21の内周面との間の第三方向D3に沿った長さである。上面とは、第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの設置対象100とは反対側の面である。下面とは、第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの設置対象100側の面である。
【0084】
巻回部21の内周面と第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの外周面との間の間隔は、周方向にわたって実質的に均一であることが好ましい。巻回部21の内周面と第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの外周面との間の間隔の一例は、1.0mm以上5.0mm以下であり、更に1.5mm以上4.0mm以下である。この間隔とは、最小の間隔である。
【0085】
[モールド樹脂部]
モールド樹脂部4は、
図1に示すように磁性コア3の少なくとも一部を覆うと共に、
図6に示すようにギャップ部3gの少なくとも一部を構成している。モールド樹脂部4は、磁性コア3の外周を覆い、コイル2の外周を覆っていなくてもよいし、磁性コア3の外周とコイル2の外周の両方を覆っていてもよい。
図5は、説明の便宜上、後述するモールド樹脂部4を省略して示している。
【0086】
本形態のモールド樹脂部4は、
図2に示すように、コイル2の一部と磁性コア3との組合体の外周を覆っている。そのため、上記組合体が実質的に外部環境から保護される。本形態では、外周面25のうち設置対象側の平坦面がモールド樹脂部4から露出されている。外周面25のうち設置対象側の平坦面を除く面はモールド樹脂部4によって覆われている。磁性コア3の外周の全面がモールド樹脂部4によって覆われている。モールド樹脂部4は、巻回部21と第一ミドルコア部31fとの間、及び巻回部21と第二ミドルコア部31sとの間に設けられている。更に、モールド樹脂部4は、端面312と端面318との間の少なくとも一部に設けられている。本形態では、モールド樹脂部4は、
図6に示すように、外側端面313と端面318との間に設けられている。モールド樹脂部4が外側端面313と端面318との間に設けられる部分を有することで、第一コア部3fと第二コア部3sとの間での熱伝導が高くなり易いため、リアクトル1は放熱性に優れる。モールド樹脂部4は、内側端面315と端面318との間には実質的に設けられていない。モールド樹脂部4によって、コイル2と磁性コア3とが一体化されている。
【0087】
モールド樹脂部4の樹脂の一例は、上述した複合材料の成形体の樹脂と同様の樹脂である。モールド樹脂部4の樹脂は、複合材料の成形体と同様、セラミックスフィラーを含有していてもよい。
【0088】
[その他]
リアクトル1は、図示は省略しているものの、ケース、接着層、及び保持部材の少なくとも一つを備えていてもよい。ケースは、コイル2と磁性コア3との組合体を内部に収納する。ケース内の上記組合体は、封止樹脂部により埋設されていてもよい。ケースは、冷却ベースなどに設置される。接着層は、上記組合体を冷却ベース又はケースの内底面などに固定したり、上記ケースを冷却ベースなどに固定したりする。保持部材は、コイル2と磁性コア3との間に設けられ、コイル2と磁性コア3との間の絶縁を確保する。
【0089】
〔実施形態1の作用効果〕
リアクトル1は、ギャップ部3gへのモールド樹脂部4の充填性が高い。面積Si/面積Seが1.35以下であり、長さLge/長さLgiが3.00以上であることで、巻回部21の内部に充填されたモールド樹脂部4の構成材料が端面312と端面318との間に行き渡り易いからである。
【0090】
リアクトル1は、インダクタンスが高い。面積Si/面積Seが0.30以上であることで、内側ギャップ部3giの割合が適切に確保されているからである。また、長さLge/長さLgiが15.00以下であることで、長さLgeが大きすぎないからである。
【0091】
リアクトル1は、放熱性に優れる。
図2に示すように、巻回部21が設置対象100に接触する部分を含むことで、設置対象100を介してコイル2の熱を効果的に放出できるからである。また、
図6に示すように、モールド樹脂部4が外側端面313と端面318との間に設けられる部分を有することで、第一コア部3fと第二コア部3sとの間での熱伝導が高くなり易いからである。
【0092】
リアクトル1は、低損失である。長さL1sが長さL1fよりも短いことで、複合材料の成形体よりも損失の大きな圧粉成形体の割合が少ないからである。また、ギャップ部3gが巻回部21の内部に配置されていて、長さLeが巻回部21の長さの0.2倍以上であることで、漏れ磁束が巻回部21に侵入し難い。そのため、巻回部21で発生する渦電流損を低減し易いからである。更に、長さLeが巻回部21の長さの0.49倍以下であることで、巻回部21の内部において、圧粉成形体よりも低損失な複合材料の成形体の割合を多くすることができるからである。
【0093】
《実施形態2》
図7を参照して、実施形態2に係るリアクトル1を説明する。本形態のリアクトル1は、第一コア部3fと第二コア部3sの組み合わせがE-E型である点が、実施形態1に係るリアクトル1と相違する。即ち、本形態の第一コア部3fの平面形状及び第二コア部3sの平面形状はE字状である。以下の説明は、実施形態1との相違点を中心に行う。実施形態1と同様の構成の説明は省略する。
【0094】
(第一コア部)
本形態の第一コア部3fは、第一エンドコア部33fと、第一ミドルコア部31fと、第一サイドコア部321fと、第二サイドコア部322fとを有する。本形態の第一コア部3fは、第一サイドコア部321fの長さL21f及び第二サイドコア部322fの長さL22fが、実施形態1の第一サイドコア部321の長さL21及び第二サイドコア部322の長さL22よりも短い点が実施形態1と相違する。
【0095】
(第二コア部)
本形態の第二コア部3sは、第二エンドコア部33sと、第二ミドルコア部31sと、第一サイドコア部321sと、第二サイドコア部322sとを有する。第二コア部3sは、第二エンドコア部33sと第二ミドルコア部31sと第一サイドコア部321sと第二サイドコア部322sとが一体の成形体である。第二エンドコア部33sは、第二ミドルコア部31sと第一サイドコア部321sと第二サイドコア部322sとをつないでいる。第一サイドコア部321sと第二サイドコア部322sとは、第二エンドコア部33sの両端に設けられている。第二ミドルコア部31sは、第二エンドコア部33sの中央に設けられている。第一サイドコア部321s及び第二サイドコア部322sの形状は、薄い角柱状である。
【0096】
本形態では、第一コア部3fと第二コア部3sとは、サイズが異なる。第一サイドコア部321fの第一方向D1に沿った長さL21fと第二サイドコア部322sの第一方向D1に沿った長さL22fとが同一である。長さL21fと長さL22fとは、長さL1fよりも長い。第一サイドコア部321sの第一方向D1に沿った長さL21sと第二サイドコア部322sの第一方向D1に沿った長さL22sとが同一である。長さL21sと長さL22sとは、長さL1sよりも長い。長さL1fは、長さL1sよりも長い。長さL21fは長さL21sよりも長く、長さL22fは長さL22sよりも長い。長さL3fと長さL3sとは、互いに同一である。
【0097】
第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの第二方向D2に沿った長さは、互いに同一である。第一サイドコア部321f、第一サイドコア部321s、第二サイドコア部322f、及び第二サイドコア部322sの各々の第二方向D2に沿った長さは同一である。第一エンドコア部33f及び第二エンドコア部33sの第二方向D2に沿った長さは、互いに同一である。各コア部の第三方向D3に沿った長さは、互いに同一である。各コア部の第三方向D3に沿った長さは、巻回部21の第三方向D3に沿った長さよりも短い。
【0098】
第一コア部3fと第二コア部3sとは、第一サイドコア部321fの端面と第二サイドコア部322fの端面のそれぞれと第一サイドコア部321sの端面と第二サイドコア部322sの端面のそれぞれとが接するように組み合わされている。第一ミドルコア部31fの端面と第二エンドコア部33sの端面との間にはギャップ部3gが設けられている。
【0099】
〔実施形態2の作用効果〕
本形態のリアクトル1は、実施形態1のリアクトル1と同様、ギャップ部3gへのモールド樹脂部4の充填性が高い。また、リアクトル1は、インダクタンスが高い。更に、リアクトル1は、放熱性に優れる。そして、リアクトル1は、低損失である。
【0100】
《実施形態3》
〔コンバータ・電力変換装置〕
実施形態1、2のリアクトル1は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態1、2のリアクトル1は、代表的には電気自動車、ハイブリッド自動車、又は燃料電池自動車などの車両1200に載置されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0101】
車両1200は、
図8に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。
図8では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0102】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0103】
コンバータ1110は、
図9に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態1のリアクトル1を備える。リアクトル1を備えることで、電力変換装置1100やコンバータ1110は優れた性能を有する。
【0104】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態1のリアクトル1などと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態1のリアクトル1などを利用することもできる。
【0105】
《試験例》
上述した面積Si/Soの違い又は上述した長さLge/長さLgiの違いによるリアクトルのインダクタンス及び損失の違いを調べた。本試験例では、実際に製造したリアクトルを評価したのではなく、シミュレーションソフトウェア上でリアクトルを構築して面積Si/So及び長さLge/長さLgiを設定した解析モデルを評価した。
【0106】
〔試料No.1から試料No.16〕
試料No.1から試料No.16の解析モデルとしては、
図1に示すようなコイル2と磁性コア3との組合体を構築した。即ち、各試料の解析モデルは
図1に示すようなモールド樹脂部4を備えていない。
【0107】
各試料における第一ミドルコア部31fの端面は、
図3を参照して説明した外側端面313と周面314と内側端面315とを有する端面312と同様の端面とした。各試料における内側端面の形状は、表1又は表2に示すように、円形状又は正方形状とした。試料No.2から試料No.16における内側端面の4つの角部及び外側端面の4つの角部は丸めている。各試料における面積Si、面積Se、及び、面積Si/面積Seを表1又は表2に示す。面積Siは内側端面の面積であり、面積Seは外側端面の面積である。面積Siを調整することで、面積Si/面積Seを調整した。各表の面積Si/面積Seは、少数第三位を四捨五入している。
【0108】
各試料における第二ミドルコア部31sの端面は平坦面とした。各試料における長さLge、長さLgi、及び、長さLge/長さLgiを表1又は表2に示す。長さLgeは外側ギャップ部の厚さであり、長さLgiは内側ギャップ部の厚さである。周面の長さを調整することによって、長さLge/長さLgiを調整した。各表の長さLge/長さLgiは、少数第三位を四捨五入している。
【0109】
各試料における長さLeは、巻回部21の第一方向D1に沿った長さの0.2倍以上0.49倍以下を満たしていた。各試料における長さL1fと長さL1sと長さLgeとの合計長さに対する長さLgeの比は、0.02以上0.05以下を満たしていた。各試料において、長さLcに対する長さLtの比(Lt/Lc)は、0.14程度であった。各試料において、巻回部21の内周面と第一ミドルコア部31f及び第二ミドルコア部31sの外周面との間の間隔は、2.5mm程度とした。
【0110】
〔試料No.100〕
試料No.100は、第一ミドルコア部31fの端面を平坦面とした点と、ギャップ部の厚さを1.0mmとした点とを除き、試料No.1などと同様とした。
【0111】
〔解析〕
解析には、各試料におけるコイル2の中心を通り第一方向D1及び第三方向D3に平行な平面で切断して得られた2つの部材のうち、一方の部材を用いた。解析ソフトウェアには、株式会社JSOL製の電磁界解析ソフトウェアJMAG-Designer Ver.20.1を用いた。解析手法は、磁界過渡応答解析(解法:A-φ法2)である。
【0112】
[インダクタンス]
1Aから400Aの電流をコイルに印加し、解析により得られた各電流値におけるコイルの鎖交磁束量からインダクタンスを算出した。算出したインダクタンスの最大値を表1又は表2に示す。各表に示すインダクタンスは、試料No.100のインダクタンスの最大値を100としたときの割合(%)である。
【0113】
[損失]
特定の周波数の電圧をコイルに印加し、磁束密度分布と電流密度分布とをもとにコイルのジュール損と磁性コアの鉄損とを計算した。計算したコイルの損失と全体の損失とを表1又は表2に示す。全体の損失は、コイルの損失と磁性コアの損失とに基づいて求めた。各表に示すコイルの損失及び全体の損失の各々は、試料No.100のコイルの損失及び全体の損失の各々を100としたときの割合(%)である。
【0114】
【0115】
【0116】
表1に示すように、試料No.4から試料No.7のインダクタンスの最大値は、試料No.100のインダクタンスの最大値と同等以上であり、試料No.1から試料No.3のインダクタンスの最大値に比較して大きかった。また、試料No.4から試料No.7のコイルの損失は、試料No.100のコイルの損失と同等以下であり、試料No.1から試料No.3のコイルの損失に比較して小さかった。試料No.4から試料No.7の全体の損失は、試料No.100の全体の損失と同等であり、試料No.1から試料No.3の全体の損失に比較して小さかった。
【0117】
表2に示すように、試料No.9から試料No.11のインダクタンスの最大値は、試料No.100のインダクタンスの最大値と同等以上であり、試料No.12から試料No.16のインダクタンスの最大値に比較して大きかった。試料No.9から試料No.11のコイルの損失は、試料No.100のコイルの損失と同等以下であり、試料No.12から試料No.16のコイルの損失に比較して小さかった。試料No.9から試料No.11の全体の損失は、試料No.12から試料No.16、及び試料No.100の全体の損失と同等であった。
【0118】
ギャップ部へのモールド樹脂部の充填性について、株式会社JSOL製の樹脂流動解析ソフトウェアMoldex 3D studio 2020を用いて調べた。モールド樹脂部は、ガラスファイバ繊維を含むポリフェニレンスルフィド樹脂とした。上記組合体の外部から巻回部21の内部に向かってモールド樹脂部の構成材料を充填した。第一ミドルコア部31fの端面と第二ミドルコア部31sの端面との間への樹脂の充填性をコンター図と合わせて視覚的に確認した。その結果、面積Seが大きいほど外側ギャップ部へのモールド樹脂部の充填量が多かった。特に、試料No.1から試料No.7、及び試料No.9から試料No.16は、試料No.8に比較して、外側ギャップ部へのモールド樹脂部の充填量が多かった。また、試料No.1からNo.16では、内側ギャップ部にモールド樹脂部が実質的に充填されていなかった。試料No.100では、ギャップ部にはモールド樹脂部が実質的に充填されていなかった。
【0119】
以上の結果から、試料No.4から試料No.7、及び試料No.9から試料No.11は、ギャップ部へのモールド樹脂部の充填性が高く、かつインダクタンスが高いことがわかった。
【0120】
本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0121】
1 リアクトル
2 コイル
21 巻回部、21a 第一端部、21b 第二端部
25 外周面
3 磁性コア、3f 第一コア部、3s 第二コア部
31f 第一ミドルコア部
311 外周面
312 端面
313 外側端面、314 周面、315 内側端面
31s 第二ミドルコア部
318 端面
321、321f、321s 第一サイドコア部
322、322f、322s 第二サイドコア部
33f 第一エンドコア部、33s 第二エンドコア部
3g ギャップ部
3ge 外側ギャップ部、3gi 内側ギャップ部
4 モールド樹脂部
L1f、L1s 長さ
L21、L21f、L21s 長さ、
L22、L22f、L22s 長さ
L3f、L3s 長さ
Le 長さ
D1 第一方向、D2 第二方向、D3 第三方向
A 領域
100 設置対象
1100 電力変換装置、1110 コンバータ
1111 スイッチング素子、1112 駆動回路、1115 リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ、1220 モータ、1230 サブバッテリ
1240 補機類、1250 車輪
1300 エンジン
【手続補正書】
【提出日】2022-09-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本開示のリアクトルは、
筒状の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の軸方向に組み合わされた第一コア部及び第二コア部と、前記第一コア部と前記第二コア部との間に設けられたギャップ部と、を有する磁性コアと、
前記磁性コアの少なくとも一部を覆っているモールド樹脂部と、を備え、
前記巻回部の数が一つであり、
前記第一コア部の形状はE字状であり、
前記第二コア部の形状はT字状又はE字状であり、
前記第一コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第一ミドルコア部を有する複合材料の成形体であり、
前記第二コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第二ミドルコア部を有する圧粉成形体であり、
前記ギャップ部は、前記巻回部の内部において、前記第一ミドルコア部の端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に配置されており、
前記第一ミドルコア部の端面は、
前記第一ミドルコア部の外周面につながっている環状の外側端面と、
前記外側端面から前記第二ミドルコア部の端面に向かって延びる周面と、
前記周面の先端につながっている内側端面と、を有し、
前記第二ミドルコア部の端面は、平坦面であり、
前記外側端面及び前記内側端面は、平坦面であり、
前記外側端面の面積に対する前記内側端面の面積の比が0.30以上1.35以下であり、
前記モールド樹脂部は、前記外側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に設けられる部分を有する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
(1)本開示の一形態に係るリアクトルは、
筒状の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の軸方向に組み合わされた第一コア部及び第二コア部と、前記第一コア部と前記第二コア部との間に設けられたギャップ部と、を有する磁性コアと、
前記磁性コアの少なくとも一部を覆っているモールド樹脂部と、を備え、
前記巻回部の数が一つであり、
前記第一コア部の形状はE字状であり、
前記第二コア部の形状はT字状又はE字状であり、
前記第一コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第一ミドルコア部を有する複合材料の成形体であり、
前記第二コア部は、前記巻回部の内部に配置されている第二ミドルコア部を有する圧粉成形体であり、
前記ギャップ部は、前記巻回部の内部において、前記第一ミドルコア部の端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に配置されており、
前記第一ミドルコア部の端面は、
前記第一ミドルコア部の外周面につながっている環状の外側端面と、
前記外側端面から前記第二ミドルコア部の端面に向かって延びる周面と、
前記周面の先端につながっている内側端面と、を有し、
前記第二ミドルコア部の端面は、平坦面であり、
前記外側端面及び前記内側端面は、平坦面であり、
前記外側端面の面積に対する前記内側端面の面積の比が0.30以上1.35以下であり、
前記モールド樹脂部は、前記外側端面と前記第二ミドルコア部の端面との間に設けられる部分を有する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
本形態では、第一コア部3fと第二コア部3sとは、サイズが異なる。第一サイドコア部321fの第一方向D1に沿った長さL21fと第二サイドコア部322fの第一方向D1に沿った長さL22fとが同一である。長さL21fと長さL22fとは、長さL1fよりも長い。第一サイドコア部321sの第一方向D1に沿った長さL21sと第二サイドコア部322sの第一方向D1に沿った長さL22sとが同一である。長さL21sと長さL22sとは、長さL1sよりも長い。長さL1fは、長さL1sよりも長い。長さL21fは長さL21sよりも長く、長さL22fは長さL22sよりも長い。長さL3fと長さL3sとは、互いに同一である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0105
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0105】
《試験例》
上述した面積Si/面積Seの違い又は上述した長さLge/長さLgiの違いによるリアクトルのインダクタンス及び損失の違いを調べた。本試験例では、実際に製造したリアクトルを評価したのではなく、シミュレーションソフトウェア上でリアクトルを構築して面積Si/面積Se及び長さLge/長さLgiを設定した解析モデルを評価した。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0107】
各試料における第一ミドルコア部31fの端面は、
図3を参照して説明した外側端面313と周面314と内側端面315とを有する端面312と同様の端面とした。各試料における内側端面の形状は、表1又は表2に示すように、
真円形状又は正方形状とした。試料No.2から試料No.16における内側端面の4つの角部及び外側端面の4つの角部は丸めている。各試料における面積Si、面積Se、及び、面積Si/面積Seを表1又は表2に示す。面積Siは内側端面の面積であり、面積Seは外側端面の面積である。面積Siを調整することで、面積Si/面積Seを調整した。各表の面積Si/面積Seは、少数第三位を四捨五入している。