(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047150
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】排水システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/122 20060101AFI20230329BHJP
E03C 1/12 20060101ALI20230329BHJP
F16L 43/00 20060101ALI20230329BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
E03C1/122 Z
E03C1/12 C
F16L43/00
F16L55/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156096
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 敏朗
【テーマコード(参考)】
2D061
3H019
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB10
2D061AC01
2D061AD01
2D061AD06
2D061AE03
2D061AE05
2D061AE10
3H019EA11
3H019EA16
(57)【要約】
【課題】サイホン排水管の竪管の内部の状態を容易に知ることが可能な排水システムを提供する。
【解決手段】排水システム10は、横方向に延在し、水廻り器具からの排水を流す横引き管46、及び横引き管46の下流側に接続され、鉛直方向に延在する竪管48と、横引き管46と竪管48との間に配置される落とし込み部50と、を含んで構成されるサイホン排水管と、竪管48の内部の状態を検出し、状態検出データを出力する反射式の光センサー80と、状態検出データに基づいて竪管48の内部の状態を報知する報知手段と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に延在し、水廻り器具からの排水を流す横引き管、及び前記横引き管の下流側に設けられ、鉛直方向に延在する竪管と、前記横引き管と前記竪管との間に配置される落とし込み部と、を含んで構成されるサイホン排水管と、
前記竪管の内部の状態を検出し、状態検出データを出力する管内状態検出装置と、
前記状態検出データに基づいて前記竪管の内部の状態を報知する報知手段と、
を有する排水システム。
【請求項2】
前記竪管には、光が透過する光透過部が設けられており、
前記管内状態検出装置は、前記光透過部を介して前記竪管の内部の状態を光学的に検出する、
請求項1に記載の排水システム。
【請求項3】
前記管内状態検出装置は、前記光透過部に向けて光を照射する光源と前記光透過部を透過した光を受光する受光素子とを有する透過型光センサを含んで構成されている、
請求項2に記載の排水システム。
【請求項4】
前記管内状態検出装置は、前記光透過部から前記竪管の内部に向けて光を照射し、前記竪管の内面で反射した反射光を受光する反射型光センサを含んで構成されている、
請求項2に記載の排水システム。
【請求項5】
前記管内状態検出装置は、前記光透過部を介して前記竪管の内部を撮影するカメラを含んで構成されている、
請求項2に記載の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイホン排水管を備えた排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイホン排水管の横引き管に、管内の状態を検出する管内状態検出装置を設け、横引き管の内部に付着する汚れの状態を検出する排水システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、サイホン排水管の上流側の部分である横引き管に汚れが付着し易いと考えられていた。
しかし、サイホン排水管を長期に渡って使用した場合、汚れは、横引き管よりも竪管の方に堆積易いことが判明した。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、サイホン排水管の竪管の状態を容易に知ることができる排水システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の排水システムは、横方向に延在し、水廻り器具からの排水を流す横引き管、及び前記横引き管の下流側に設けられ、鉛直方向に延在する竪管と、前記横引き管と前記竪管との間に配置される落とし込み部と、を含んで構成されるサイホン排水管と、前記竪管の内部の状態を検出し、状態検出データを出力する管内状態検出装置と、前記状態検出データに基づいて前記竪管の内部の状態を報知する報知手段と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の排水システムでは、管内状態検出装置がサイホン排水管の竪管の内部の状態を検出し、管内の状態に対応した状態検出データを出力する。
報知手段は、状態検出データに基づいて、サイホン排水管の竪管の内部の状態を報知する。
これにより、配管を外したりせずに、サイホン排水管の竪管の内部の状態を知ることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排水システムにおいて、前記竪管には、光が透過する光透過部が設けられており、前記管内状態検出装置は、前記光透過部を介して前記竪管の内部の状態を光学的に検出する。
【0009】
請求項2に記載の排水システムでは、管内状態検出装置が、光透過部を介して竪管の内部の状態を光学的に検出し、状態検出データを出力する。なお、竪管は、少なくとも一部分に光透過部が設けられていればよく、全体が光を透過する部材で形成されていてもよい。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の排水システムにおいて、前記管内状態検出装置は、前記光透過部に向けて光を照射する光源と前記光透過部を透過した光を受光する受光素子とを有する透過型光センサを含んで構成されている。
【0011】
請求項3に記載の排水システムでは、光源から光透過部に向けて光を照射して光透過部に光を透過させ、透過した光を受光素子で受光することで、竪管の内部の状態を検出することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の排水システムにおいて、前記管内状態検出装置は、前記光透過部から前記竪管の内部に向けて光を照射し、前記竪管の内面で反射した反射光を受光する反射型光センサを含んで構成されている。
【0013】
請求項4に記載の排水システムでは、反射型光センサが、光透過部から竪管の内部に向けて光を照射し、竪管の内面で反射した反射光を受光することで、竪管の状態を検出することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の排水システムにおいて、前記管内状態検出装置は、前記光透過部を介して前記竪管の内部を撮影するカメラを含んで構成されている。
【0015】
請求項5に記載の排水システムでは、光透過部を介して竪管の内部をカメラで撮影することで、竪管の内部の状態を検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明の排水システムによれば、サイホン排水管の竪管の状態を容易に知ることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1の実施形態に係るサイホン排水システムの全体構成を示す側面図である。
【
図3】落とし込み部を示す一部を断面とした斜視図である。
【
図4】透過式の光センサー周辺を示す第1竪管部材の拡大断面図である。
【
図5】電極が取り付けられた横引き管部材を示す断面図である。
【
図6】液面レベルセンサが取り付けられた横引き管部材を示す断面図である。
【
図7】第2の実施形態に係るサイホン排水システムの第1竪管部材を示す断面図である。
【
図8】第3の実施形態に係るサイホン排水システムの第1竪管部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1、乃至
図5にしたがって、本発明の第1の実施形態にサイホン排水システム10について説明する。
図1には、サイホン排水システム10の全体構成が概略図にて示されている。本実施形態に係るサイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水回り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。
【0019】
(サイホン排水システムの概略)
本実施形態のサイホン排水システム10は、複数階で構成された集合住宅に用いられ、
図1に示すように、排水を下方へ流す排水立て管12を備えている。この排水立て管12は、集合住宅の上下方向(鉛直方向)に延設され、集合住宅の各階の床スラブ14を貫いている。なお、排水立て管12は、住戸の内外を仕切る外壁16の外側、例えば、メーターボックス18の中に配置されている。本実施形態のサイホン排水システムは、集合住宅に好適に用いられるが、集合住宅以外の戸建て住宅や工場等にも用いることができる。
【0020】
集合住宅の各階の各戸には、水回り器具20が設けられている。この水回り器具20は、一例としてキッチのシンクであり、排水方向下流側にディスポーザー22、及び排水トラップ24が接続されている。排水トラップ24の排水方向下流側には、L字状に曲げられた第1L字配管部材26が配置されている。第1L字配管部材26は、排水トラップ24に接続されて鉛直方向に延びる鉛直部26A、床スラブ14の上に水平方向に配置されて水平方向に延びる水平部26B、及び鉛直部26Aと水平部26Bとを繋ぐ湾曲部26Cを含んで構成されている。
【0021】
第1L字配管部材26の排水方向下流側には、床スラブ14の上に配置されて水平方向、言いかえれば鉛直方向に対して直角方向に延びる横引き管部材28が配置されている。第1L字配管部材26と横引き管部材28とは、継手30を介して接続されている。
【0022】
横引き管部材28の排水方向下流側には、継手32を介して後述するL字形状の落とし込み部50の第1接続部60が接続されている。落とし込み部50の排水方向下流側には、上下方向(鉛直方向)に延びる第1竪管部材36A、継手37、及び第2竪管部材36Bが配置されている。この第1竪管部材36Aの上流側の端部には、落とし込み部50の第2接続部62が接続されている。なお、落とし込み部50の下端部は床スラブ14に形成された貫通孔14Aに挿入され、落とし込み部50と第1竪管部材36Aが、貫通孔14Aを貫通して配置されている。
【0023】
第1竪管部材36Aは、光透過性を有する合成樹脂で形成されている。なお、光透過性の「光」とは、可視光に限らず、赤外光など、可視光以外の光も含むものである。本実施形態の第1竪管部材36Aは、一例として、透明な塩ビ管で形成されている。
一方、第2竪管部材36Bは、一例として、不透明なポリブテン管で形成されている。
【0024】
第2竪管部材36Bの排水方向下流側の端部は、排水立て管12の中間部に取付けられた合流継手40に継手42を介して接続されている。
【0025】
本実施形態において、床スラブ14の上に水平に配置されている配管部分、具体的には第1L字配管部材26の水平部26B、横引き管部材28がサイホン排水管44の横引き管46に相当しており、第1竪管部材36A、及び第2竪管部材36Bがサイホン排水管44の竪管48に相当している。
【0026】
(落とし込み部の構成)
図2に示すように、本発明の継手の一例である落とし込み部50は、本体管部52、閉塞部材としての蓋58を含んで構成されている。本実施形態の本体管部52及び蓋58は、合成樹脂で形成されている。
【0027】
(本体管部)
本体管部52は、一例として合成樹脂で形成され、
図2、及び
図3に示すように、略L字状に湾曲された継手本体である。本体管部52は、横引き管46の軸方向に沿って延在する筒状の第1接続部60と、竪管48の軸方向に沿って延在する筒状の第2接続部62と、を備えている。
【0028】
また、本体管部52は、第1接続部60の下流側の端部と第2接続部62の上流側の端部とを繋ぐ壁部52A、52B、52D及び屈曲部52Cを備えている。屈曲部52Cの両側に配置された第1接続部60と第2接続部62とは、互いに直交する方向に延在している。
【0029】
第1接続部60には、継手32が接続される。なお、本体管部52と横引き管46を接続できれば継手32の形式は問わず、継手32は、所謂ワンタッチ継手であってもよい。第2接続部62の内径は、本体管部52の内径よりも大径に形成されており、この第2接続部62には、竪管48の上流側の端部が挿入可能となっている。
【0030】
このように、本実施形態のサイホン排水管44の清掃口付き落とし込み部50は、横引き管46と竪管48とを連結しており、略水平方向(横方向)に延在する配管を鉛直下方側へ落とし込む曲げ管として機能している。
【0031】
図2に示すように、屈曲部52Cは、湾曲した筒体を半割した形状とされており、排水流路の内周面を形成している。屈曲部52Cの上端面には、本体管部52の中心線CLからみて、両側に段差部52CAが形成されている。この段差部52CAに、蓋58における屈曲部58Cが載置される。
【0032】
壁部52Aは、屈曲部52Cにおけるそれぞれの段差部52CAの外側から上方向へ立ち上げられた壁部であり、平面視において本体管部52の軸方向に沿って配置されている。
【0033】
壁部52Bは、2つの壁部52Aの一端(第2接続部62側の端部)を連結する壁部であり、平面視で円弧状に形成されている。また、壁部52Bは、
図3に示すように、第2接続部62から上方向へ立ち上げられている。なお、第2接続部62の上端部には、蓋58における屈曲部58C(壁部58Bと一体化した部分)が載置されるフランジ62CAが形成されている。フランジ62CAは、第2接続部62の径方向内側へ突出した部分である。
【0034】
壁部52Dは、
図2に示すように、2つの壁部52Aの他端(第1接続部60側の端部)を連結する壁部であり、平面視で直線状に形成されている。第1接続部60は、この壁部52D及び屈曲部52Cの端部に接続されている。
【0035】
なお、本体管部52は、第1接続部60から第2接続部62にかけて筒状に形成されている。このうち、屈曲部52Cの上方には清掃口Eが形成されており、流路が閉塞されていないが、本発明においては、このように開放された清掃口Eを備えた形態を含んで「筒状」と称すものとする。
【0036】
(本体管部の清掃口)
壁部52A、52B、52Dによって囲まれる領域は、本体管部52における清掃口Eを形成している。清掃口Eは、平面視で、屈曲部52Cを覆うように形成された開口部である。また、清掃口Eは、本体管部52の軸方向に沿う形状とされ、略長方形状とされている。
【0037】
清掃口Eからは、第1接続部60及び第2接続部62の内部にアプローチ可能とされている。つまり、清掃口Eから本体管部52の内部へ挿入した洗浄ノズル等の洗浄用具を、第1接続部60を経由して横引き管46(
図3等参照)の内部へ到達させることができる。同様に、洗浄用具を、第2接続部62を経由して竪管48(
図3等参照)の内部へ到達させることができる。
【0038】
(蓋)
蓋58は、一例として透明な合成樹脂で形成されおり、
図2に示すように、本体管部52の清掃口Eを、上方から閉鎖する閉塞部材である。蓋58は、壁部58A、58B、58D、屈曲部58C及び係止部58Eを備えている。
【0039】
図3に示すように、屈曲部58Cは、湾曲した筒体を半割した形状とされており、排水流路の内周面を形成している。
図2に示すように、屈曲部58Cの下端面58CAは、本体管部52における屈曲部52Cの段差部52CAに載置される。このように、本体管部52における屈曲部52Cと、蓋58における屈曲部58Cとで、円形の平断面とされた排水流路が形成される。なお、屈曲部52Cの段差部52CAと、屈曲部58Cの下端面58CAと、の間には、止水性を考慮して、パッキン等を配置してもよい。
【0040】
壁部58Aは、屈曲部58Cの下端面5CAから上方向へ立ち上げられた壁部であり、平面視において屈曲部52Cの軸方向(かつ、蓋58が本体管部52に組付けられた状態では、本体管部52の軸方向)に沿って配置されている。
【0041】
壁部58Bは、2つの壁部58Aの一端(本体管部52における第2接続部62側の端部)を連結する壁部であり、平面視で円弧状に形成されている。また、壁部58Bの下端部(屈曲部58Cと一体化した部分)は、
図3に示すように、本体管部52におけるフランジ62CAに載置され、フランジ62CAから上方向へ立ち上げられている。
【0042】
壁部58Dは、
図2に示すように、2つの壁部58Aの他端(本体管部52における第1接続部60側の端部)を連結する壁部であり、平面視で直線状に形成されている。
【0043】
以上の構成により、壁部58A、58B、58Dによって囲まれる領域の下端部には、屈曲部58Cが形成され、この屈曲部58Cが、本体管部52における屈曲部52Cを覆うように配置されることにより、本体管部52における清掃口Eを閉鎖している。また、屈曲部58Cは、本体管部52の軸方向に沿う形状とされ、略長方形状とされている。
【0044】
(蓋の係止部及びフランジ)
係止部58Eは、壁部58A、58B、58Dの上端部の全体に亘って形成されている。係止部58Eは、壁部58A、58B、58Dの外側へ跳ね出した跳ね出し部58EAと、跳ね出し部58EAの先端から下方へ折り返された折り返し部58EBと、を備えている。
【0045】
蓋58を本体管部52に組付けた状態では、蓋58における折り返し部58EBと、壁部58A、58B、58Dのそれぞれと、の間に、本体管部52における壁部58A、58B、58Dが挟まれた状態で配置される。
【0046】
また、蓋58を本体管部52に組付けた状態では、蓋58における跳ね出し部58EAと、本体管部52における壁部58A、58B、58Dの上端面と、の間に、パッキンSが挟まれた状態で配置される。パッキンSは、ゴム又はシリコン製のガスケット(平パッキン)である。なお、パッキンSは、Оリングとしてもよい。
【0047】
跳ね出し部58EAは、平面視で蓋58の略外形を形成している。跳ね出し部58EA及び蓋58は、平面視で屈曲部58Cより大きく形成され、本体管部52の軸方向に沿う形状とされ、略長方形状とされている。また、蓋58は、平面視で、本体管部52における屈曲部52Cと相似形状とされている。
【0048】
蓋58における折り返し部58EBには、本発明における固定部の一例としてのフランジ59A、59Bが形成されている。フランジ59A、59Bは、平面視において本体管部におけるフランジ54A、54Bと重なる位置に形成されている。また、これらのフランジ59A、59Bには、上下方向に貫通する貫通孔H2が形成されている。
【0049】
蓋58を本体管部52に組付けた状態では、フランジ59A、59Bの貫通孔H2は、それぞれフランジ54A、54Bの貫通孔と連通される。そして、本体管部52の雌ねじ部H1にボルトBを捩じ込むことで、蓋58が本体管部52に固定される。
【0050】
(汚れ検出装置)
第1竪管部材36Aの外面には、管内状態検出装置の一例としての反射式の光センサー80が取り付けられている。
図4に示すように、反射式の光センサー80は、光源(図示せず)から管内部に向けて光を照射し、第1竪管部材36Aの内面(管路の内周面)に付着した汚れ82で反射した光、即ち、反射光を受光素子(図示せず)で受光するようになっている。なお、受光素子は、入射した光の光量データを、
図1に示す宅内に設けられた報知手段84に送信する。光量データは、例えば、有線、または無線で報知手段84に送信することができる。
【0051】
図1に示すように、報知手段84には、光量データ等を処理するサーバー(コンピュータ)86が内蔵されており、また、汚れを報知する警告ランプ88が設けられている。本実施形態では、反射式の光センサー80とサーバー86とで本発明の管内状態検出装置が構成されている。
【0052】
図5に示すように、横引き管部材28の内周面には、隙間を開けて一対の電極90が下方側に取り付けられている。一対の電極90は、報知手段84に接続されており、一対の電極90には予め設定した所定の電圧が印加可能となっている。
【0053】
報知手段84は、一対の電極90に電圧を印加して、電極間に電流が流れる場合には、竪管48の内部に排水が流れていると判断し、電極間に電流が流れない場合には、竪管48の内部に排水が流れていないと判断することができる。
【0054】
(作用、効果)
次に、本実施形態のサイホン排水システム10の作用、効果を説明する。
(1) 報知手段110は、例えば、1日に1回等、予め設定した所定時間帯で、一対の電極90に電圧を印加し、竪管48の内部に排水wが流れているか否かを判断する。
【0055】
(2) 排水wが竪管48の内部を流れていると判断した場合には、電圧の印加を停止し、予め設定した所定時間経過後に再度電圧を印加するか、または、連続して電圧を印加し、一対の電極90間に電流が流れないと判断、即ち、竪管48の内部に排水wが流れていないと判断するまで、反射式の光センサー80の光源から光を照射しない。
【0056】
(3) 一対の電極90間に電流が流れないと判断されると、報知手段84は、反射式の光センサー80の光源から光を照射させる。そして、反射式の光センサー80の受光素子は、入射した反射光の光量データを報知手段84に出力する。
【0057】
(4) ここで、竪管48の内部に汚れ82が付着していない、または汚れ82の付着が少ない場合には、反射光の光量が少なく、竪管48の内部に付着した汚れ82の量、言い換えれば蓄積度合いが多い場合には、反射光の光量が大きくなる。
このため、報知手段84は、受光素子から反射光の光量データを入力し、反射光の光量が、予め設定した閾値を超えた場合に、汚れ82がある程度付着して蓄積していると判断し、警告ランプ88を点灯または点滅させる。これにより、ユーザーは、警告ランプ88を見ることで、サイホン排水管44の竪管48の管内壁面が汚れているか否かを、管内壁面を目視せずとも宅内で容易に知ることができる。
【0058】
なお、サイホン排水システム10を長期に渡って使用し続けた場合、汚れ82は、竪管48の下流側よりも上流側に堆積し易い傾向があることが分かった。このため、反射式の光センサー80は、竪管48の上流側に設けることが好ましく、一例として、竪管48の全長L(
図1参照)を3等分したときの、上側の1/3の領域内に設けることが好ましい。
【0059】
また、排水が流れている最中に光量を測定すると、排水中を移動する異物の影響を受けて、光量が安定しない場合がある。このため、排水中を移動する異物の影響を受けないようにするには、排水が流れていない状態で光量を測定することが好ましく、また、竪管48に排水が接触していない状態で光量を測定することが好ましい。
【0060】
(サイホン排水管の洗浄)
本発明の実施形態に係る落とし込み部50では、
図2に示すように、清掃口Eが、本体管部52における屈曲部52Cを覆って配置されている。このため、本体管部52の一端及び他端に接続される管材(
図3に示す竪管48及び横引き管46)の双方を清掃し易い。
【0061】
なお、
図2に示すように、透明な蓋58には遮光部材70を貼り付けることができる。排水経路内の排水状況を目視で点検する際には、遮光部材70を剥がすことで点検できる。このため蓋58を取り外す作業が不要となり、目視での点検作業が容易になる。さらに、遮光部材70を貼り付けることで、配管経路内へ光が侵入することを抑制できるため、配管経路における藻などの発生を抑制できる。
【0062】
本実施形態のサイホン排水システム10では、サイホン排水管44を以下の様にして洗浄することができる。
サイホン排水管44の内部を洗浄する場合には、水廻り器具20からの排水を停止し、
図2に示すように、落とし込み部50から蓋58を取り外し、清掃口Eを露出する。なお、清掃口Eを露出することで、清掃口Eから管内の汚れ82を直接的に目視することができる。
【0063】
そして、洗浄機の洗浄ノズル(図示せず)を、清掃口Eからサイホン排水管44の内部へ挿入し、洗浄ノズルから水を噴出させながらサイホン排水管44の内部を移動させる。これにより、サイホン排水管44の内部が洗浄され、汚れ82を除去することができる。
【0064】
本実施形態では、電極90間に電流が流れたか流れないかで 竪管48の内部で排水wが流れているか否かを検出したが、
図6に示すように、横引き管部材28の上部に超音波レベルセンサー92を設け、直下に超音波を送信して排水wの有無を検出することもできる。
【0065】
本実施形態では、警告ランプ88を見ることで、竪管48の管内壁面が汚れているか否かを知ることができるが、管内壁面が汚れている場合に、液晶表示板等に管内壁面が汚れている事を表すメッセージを表示したり、ブザー等を鳴らすようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、報知手段84に光量データを処理するサーバー86が内蔵されていたが、宅外、例えば、マンションの管理室、住宅やマンションの管理会社、住宅のメインテナンスを行うメインテナンス会社、排水設備の清掃業者等に設けた外部サーバー94(
図1参照)に光量データを送信して、外部サーバー94で光量データを処理してもよい。この場合、宅内の報知手段84には、データを送受信するために送信機97、及び受信機98を設ける。
【0067】
このように、光量データ等を外部サーバー94に送信して外部サーバー94で処理を行うことで、宅内の報知手段84にサーバー86が不要となり、報知手段84を簡素化できる。また、住宅から送信する光量データ量は非常に軽いため、遠隔で監視するための通信手段として、LET回線等の高速通信回線を使用せずとも、例えば、LPWA(Low Power Wide Area:消費電力を抑えて遠距離通信を実現する通信方式)等の他の通信方式を活用することができる。
【0068】
なお、外部サーバー94側で汚れを検知した場合には、外部サーバー94側から宅内の報知手段84に信号を送信し、警告ランプ88を点灯させてもよい。また、報知手段84は宅内に設けなくてもよく、例えば、外部サーバー94を宅外に設けた端末等につなぎ、端末の画面上で内壁面が汚れているメッセージを表示してもよい。
【0069】
光量データは、常時確認しなくてもよく、例えば、1日~1週間の間に1回の頻度で確認してもよい。そして、汚れの経時変化を確認することにより、汚れの堆積を算出することが可能となる。これにより、例えば、汚れの量(蓄積度合い)が閾値を超える前に、汚れの量(蓄積度合い)が閾値に達する日(例えば、清掃を行う日等)を事前に把握することが可能となる。
【0070】
したがって、光量データを外部サーバー94に送信するようにすれば、住人が汚れの報知に気付かない場合であっても、業者、例えば、マンションの管理室、住宅やマンションの管理会社、住宅のメインテナンスを行うメインテナンス会社、排水設備の清掃業者等において、汚れの状態を把握できる。したがって、住人が清掃時期を見逃すことも無くなる。
【0071】
また、本実施形態のサイホン排水システム10では、報知されてから清掃を行えばよいので、定期的に目視による検査を行う必要がなく、居住者、及び業者の負担を大幅に削減することができる。
【0072】
(第2の実施形態)
次に、
図7にしたがって、本発明の第2の実施形態にサイホン排水システム10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0073】
本実施形態では、反射式の光センサー80の代わりに、透過式の光センサー95が第1竪管部材36Aに設けられている。透過式の光センサー95は、報知手段84(
図7では図示せず)に接続され、一例として光源95Aが第1竪管部材36Aの径方向一方側に取り付けられ、受光素子95Bが、第1竪管部材36Aの中心線を挟んで光源95Aとは反対側に取り付けられている。
【0074】
本実施形態では、光源95Aから出射された光が、第1竪管部材36Aの中心線を通過して受光素子95Bに入射するようになっている。
【0075】
ここで、第1竪管部材36Aの内面に汚れ82が付着していない、または汚れ82の付着が少ない場合には、受光素子95Bで受光する光の光量が多く、汚れ82の量が多い場合には、受光素子95Bで受光する光の光量が少なくなる。
【0076】
このため、報知手段84は、受光素子95Bから光量データを入力し、光量が、予め設定した閾値以下の場合に、汚れがある程度付着して蓄積していると判断し、警告ランプ88を点灯または点滅させる。これにより、ユーザーは、警告ランプ88を見ることで、落とし込み部50の管内壁面が汚れているか否かを、宅内で容易に知ることができる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、
図8にしたがって、本発明の第3の実施形態にサイホン排水システム10について説明する。なお、前述した実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0078】
図8に示すように、本実施形態のサイホン排水システム10では、反射式の光センサー80の代わりに、CCD等の撮像素子、レンズ系、及び照明(ランプ)を含んで構成されたカメラ96が第1竪管部材36Aの外部に設けられている。なお、本実施形態では、カメラ96の光軸は、第1竪管部材36Aの中心線に対して直角に設定されている。なお、照明は、カメラ96の設置位置とは異なる第1竪管部材36Aの外部に設けてもよい。
【0079】
本実施形態では、カメラ96で第1竪管部材36Aの状態を撮影し、画像処理等によって汚れ82の量(蓄積度合い)を検出することができる。
【0080】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0081】
光センサにおける光源から照射する光は、可視光に限らず、赤外線等の可視光以外の光線であってもよい。光源から照射する光が赤外線である場合には、赤外線が透過し易ければよく、第1竪管部材36Aは見た目で透明でなくてもよい。即ち、第1竪管部材36Aが赤外線を透過しやすい樹脂材料等で形成されている場合、透明な樹脂材料を用いなくてもよい。また、赤外線を透過し易いように、赤外線を透過させる部分を薄く形成してもよい。
【0082】
上記実施形態では、汚れの量(蓄積度合い)に対応する反射光、または透過光の光量が、予め設定した閾値を超えた場合(または予め設定した閾値以下になった場合)に、報知を行ったが、例えば、所定の時間間隔で光量測定を行い、閾値に関わらず、光量の変化が急激に変化した場合等において報知を行ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…サイホン排水システム、20…水廻り器具、36A…第1竪管部材(光透過部)、50…落とし込み部、44…サイホン排水管、46…横引き管、48…竪管、80…反射式の光センサー(管内状態検出装置)、84…報知手段、86…サーバー(管内状態検出装置)、95…透過式の光センサー(管内状態検出装置)、95A…光源、95B…受光素子、96…カメラ(管内状態検出装置)