(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023047155
(43)【公開日】2023-04-05
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/06 20060101AFI20230329BHJP
F25D 23/02 20060101ALI20230329BHJP
F16L 59/06 20060101ALI20230329BHJP
【FI】
F25D23/06 W
F25D23/02 304E
F16L59/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021156103
(22)【出願日】2021-09-24
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 怜
【テーマコード(参考)】
3H036
3L102
【Fターム(参考)】
3H036AA08
3H036AB18
3H036AB25
3L102JA01
3L102MA01
3L102MB17
3L102MB22
3L102MB27
(57)【要約】
【課題】リサイクル性向上と転倒防止の両立を図ることができる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】冷蔵庫100は、箱体20と、箱体20に取り付けられる1つ以上の扉1~6と、を備える。扉1~6の少なくとも1つには、断熱材として、金属板状の外層を備え内部を減圧してなる金属断熱材50が設けられている。また、扉1~6の少なくとも1つにおいて、外側に面した意匠面部31は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱体と、
前記箱体に取り付けられる1つ以上の扉と、を備え、
前記扉の少なくとも1つには、断熱材として、金属板状の外層を備え内部を減圧してなる金属断熱材が設けられており、
前記扉の少なくとも1つにおいて、外側に面した意匠面部は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記意匠面部の正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい前記材料は、ガラスよりもリサイクル性が高い材料であることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記箱体に取り付けられる2つ以上の扉を備え、
前記扉の少なくとも1つには、前記金属断熱材よりも低比重の断熱材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記扉をn個(n>1)備え、
扉iの重量をDi、
扉iの開放時の前記箱体の接地部の前端位置Pから扉iの重心までの水平距離をLi、
前記箱体の重量をM、
前記箱体の重心から前端位置Pまでの水平距離をLM、とした場合、
仮に、全部の扉の意匠面部がガラスから形成され、かつ、全部の扉に前記金属断熱材が設けられた場合に、
ΣDi*Li>M*LM (i=1~n)
が成立しており、
前記扉の少なくとも1つにおいて、前記意匠面部は、ガラスから形成されており、前記意匠面部がガラスから形成された扉以外の少なくとも1つの扉において、前記意匠面部は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されており、
ΣDi*Li=<M*LM (i=1~n)
が成立するように前記扉が設定されていることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記扉のうちの回動式の扉の少なくとも1つにおいて、前記意匠面部は、ガラスよりもリサイクル性が高い材料から形成されていることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記扉のうちの回動式の扉の少なくとも1つは、前記意匠面部がガラスから形成されているか、または前記金属断熱材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
冷凍室用の前記扉の少なくとも1つには、前記金属断熱材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
正面から見た幅寸法Aと奥行寸法Bの比A/Bが1.35以上である請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
箱体と、
前記箱体に取り付けられる1つ以上の扉と、を備え、
前記扉の少なくとも1つには、断熱材として、金属板状の外層を備え内部を減圧してなる金属断熱材が設けられており、
前記扉の少なくとも1つにおいて、外側に面した意匠面部は、前記金属断熱材の前面部又はこれに塗装若しくは加飾シートを施したものであることを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫において、扉の外側に面した意匠面部に比較的重い材料のガラスが採用され、かつ、扉に設ける断熱材として、グラスウールを含む真空断熱材が採用されている機種が知られている。
【0003】
循環型経済の観点から廃棄材料の総量の低減を検討すると、リサイクルがあまり容易でないグラスウールを含む真空断熱材の使用量の低減が望まれる。グラスウールを含まず、高断熱性能を備えるものとしては、金属板状の外層を備え内部を減圧したもの(以下、「金属断熱材」という。)が考えられる。この金属断熱材は、グラスウールを含む真空断熱材よりも高比重になることが想定される。すなわち、循環型経済への適応を考えると、冷蔵庫の扉が重量化していく傾向にある。
扉が重量化していくと、扉を開放した際に、箱体側よりも扉側に重心が移動することで、冷蔵庫全体が手前側に転倒する懸念が大きくなる。
【0004】
ところで、冷蔵庫の箱体の奥行寸法を縮小していき、コンパクトに成形することが近年求められている。
このような事情から、循環型経済への適応を考えると、扉を全開にした際に冷蔵庫が倒れる可能性が顕在化し得ることを発明者は見出した。
【0005】
特開2019-27716号公報(特許文献1)には、上方の扉の断熱材を軽く、下方の扉の断熱材を重くした冷蔵庫が提案されている(段落[0048]-[0050]参照)。この技術は、冷蔵庫の重心を下げることにより、上方の扉の開放時における転倒の抑制を考えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の冷蔵庫においては、リサイクル性を考慮した断熱材の選択や、リサイクル性向上と転倒防止の両立をめざした意匠面部の材料の選択については何ら検討されていない。
【0008】
そこで、本発明は、リサイクル性向上と転倒防止の両立を図ることができる冷蔵庫を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するために、本発明に係る冷蔵庫は、箱体と、前記箱体に取り付けられる1つ以上の扉と、を備える。前記扉の少なくとも1つには、断熱材として、金属板状の外層を備え内部を減圧してなる金属断熱材が設けられている。前記扉の少なくとも1つにおいて、外側に面した意匠面部は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リサイクル性向上と転倒防止の両立を図ることができる冷蔵庫を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の斜視図である。
【
図3】
図1に示す冷蔵庫の扉を開放した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、各図において、共通する構成要素や同種の構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る冷蔵庫100の斜視図である。
図2は、
図1に示す冷蔵庫100の正面図である。
図3は、
図1に示す冷蔵庫100の扉10を開放した状態の側面図である。
図1~
図3に示すように、本発明の実施形態に係る冷蔵庫100は、箱体20と、箱体20に取り付けられる扉10とを備えている。本実施形態では、扉10は、複数の扉1~6から構成されている。すなわち、扉10は、扉1~6の総称として使用する。
【0014】
図4は、
図1に示す冷蔵庫の縦断面図である。
図4に示すように、冷蔵庫100は、貯蔵室として、上から順に冷蔵室11、製氷室12及び上段冷凍室13、下段冷凍室14、野菜室15を有している。扉1~6は、各貯蔵室の前面に形成された開口部を開閉する断熱扉である。
【0015】
図2~
図4に示すように、扉1,2は、ヒンジ36を中心に回動する回動式の扉であり、扉3~6は、引き出し式の扉である。引き出し式の扉3~6を引き出すと、各室を構成する容器が扉と共に引き出されてくる構成となっている。扉1,2は冷蔵室11用の扉、扉3は製氷室12用の扉、扉4は上段冷凍室13用の扉、扉5は下段冷凍室14用の扉、扉6は野菜室15用の扉である。各扉1~6には、冷蔵庫100を密閉するためのパッキン37(
図4参照)がそれぞれ備えられている。パッキン37は、各扉1~6の室内側外周縁に取り付けられている。
【0016】
図4に示すように、各扉1~6は、外側に面した意匠面部31と、室内に面した内側壁部32とをそれぞれ有している。本実施形態では、意匠面部31は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されている。具体的には、意匠面部31は、例えば鋼板や樹脂板から形成されている。なお、意匠面部31として使用される場合、通常、ガラス板の厚みは3mm程度であるが、鋼板の厚みは0.4mm程度、樹脂板の厚みは3mm程度である。このため、鋼板や樹脂板から形成された意匠面部31は、正面視における単位面積当たりの重量が、ガラス板から形成された意匠面部よりも小さくなる。
【0017】
本実施形態では、各扉1~6の内部、すなわち意匠面部31と内側壁部32との間には、断熱材として、金属板状の外層を備え内部を減圧してなる金属断熱材50が配置されている。各扉1~6の内部における金属断熱材50以外の空間には、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材33が充填されている。金属断熱材50についての詳細は、後記する。
【0018】
また、冷蔵室11と製氷室12及び上段冷凍室13との間を区画断熱するために、仕切断熱壁16が配置されている。製氷室12及び上段冷凍室13と下段冷凍室14との間は、温度帯が同じであるため、区画断熱する仕切断熱壁ではなく、パッキン37の受面を形成した仕切り部材17が設けられている。
【0019】
下段冷凍室14と野菜室15との間には、区画断熱するための仕切断熱壁18が設けられている。なお、箱体20内における各貯蔵室の配置については、特に前記した配置に限定されるものではない。また、扉1~6に関しても、回動による開閉、引き出しによる開閉、及び扉の分割数等は特に限定されるものではない。
【0020】
箱体20は、鋼板製の外箱21と合成樹脂製の内箱27とを備え、外箱21と内箱27とによって形成される空間に断熱層部を設けて、箱体20内の各貯蔵室と外部とを断熱している。外箱21は、天面板22、背面板23、底面板24、左の側面版(不図示)、及び右の側面版25(
図1参照)を備えている。
【0021】
外箱21と内箱27との間の空間には、金属断熱材50が配置されており、金属断熱材50以外の空間には、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材34が充填されている。また、仕切断熱壁16,18は、発泡ポリスチレン35と金属断熱材50とで構成されているが、これに限定されるものではなく、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材を充填して構成されてもよい。
【0022】
下段冷凍室14の背側には、冷蔵庫100の各貯蔵室を所定の温度に冷却するための冷却器44が備えられている。この冷却器44と、圧縮機45と、凝縮機46と、図示しないキャピラリーチューブとを接続し、冷凍サイクルを構成している。冷却器44の上方には、冷却器44にて冷却された冷気を冷蔵庫100内に循環して所定の低温温度を保持する送風機43が配設されている。
【0023】
箱体20の天面板22の後方部には、冷蔵庫100の運転を制御するための基板や電源基板等の電気部品41を収納するための凹部40が形成されており、電気部品41を覆うカバー42が設けられている。カバー42の高さは、外観意匠性と内容積確保を考慮して、外箱21の天面とほぼ同じ高さになるように設定されている。
【0024】
図5は、金属断熱材50の拡大断面図である。
図5に示すように、金属断熱材50は、鋼板51と鋼板52とが両者の間に一定の空間を保った状態になるように、
図5における上下左右の4個のエンドピース53を介して固定されて構成されている。そして、各エンドピース53と鋼板51、鋼板52の外表面の各接続部は、内部空間54を減圧状態に保てるように、シール材55でシールされている。
【0025】
4個のうちの1つのエンドピース53には、内部空間54を減圧状態にするための排気口56が設けられている。図示しない減圧装置により内部空間54を減圧状態にした後、排気口56は封止材57によって密封される。このとき、内部空間54を減圧することで、鋼板51と鋼板52には、大気圧と内部空間54の圧力との差圧がかかるため、鋼板51と鋼板52は相互に近づく方向に変形することになる。このため、鋼板51と鋼板52とが直接接触しないようにスペーサ材58が配置されている。
【0026】
なお、スペーサ材58の材料は、減圧下でガス等を発生させない無機系の材料が好ましいが、有機系の材料を用いることも可能である。スペーサ材58の固定方法については特に限定するものではなく、スペーサ材58の位置が定まれば特に規定するものではない。また、スペーサ材58の形状は直線状、蛇行状、或いは球状のスペーサ材であってもよく、要は平板状の鋼板51と平板状の鋼板52との間隔を維持できればよい。
また、金属断熱材50は、前記した構成に特に限定されるものではなく、金属板状の外層を備え内部を減圧して構成されるものであれば適宜変更可能である。
【0027】
前記したように、本実施形態に係る冷蔵庫100は、箱体20と、箱体20に取り付けられる1つ以上の扉10(ここでは扉1~6の6つ)と、を備える。扉10の少なくとも1つ(ここでは扉1~6の6つ)には、断熱材として、金属板状の外層を備え内部を減圧してなる金属断熱材50が設けられている。また、扉10の少なくとも1つ(ここでは扉1~6の6つ)において、外側に面した意匠面部31は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されている。
【0028】
この構成では、扉10の少なくとも1つには、断熱材として、従来使用されているグラスウールを含む真空断熱材よりもリサイクル性の高い金属断熱材50が設けられている。また、扉10の少なくとも1つにおいて、意匠面部31が、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されているため、扉10の開放時に冷蔵庫100の転倒防止が図られる。なお、金属断熱材50の前面部が、そのまま、又は塗装若しくは加飾シートの貼付等によってデザイン性を変更して、意匠面部31を兼ねるように用いられてもよい。
したがって、本実施形態によれば、リサイクル性向上と転倒防止の両立を図ることができる冷蔵庫100を提供できる。
【0029】
冷蔵庫100は、正面から見た幅寸法A(
図1参照)が大きいほど扉10の重量が大きくなるため、また、奥行寸法B(
図1参照)が小さいほど箱体20の重量によるモーメントが小さくなるため、前方に倒れやすくなる。つまり、A/Bが大きいほど冷蔵庫100は転倒しやすくなる。したがって、A/Bが所定値(例えば1.35)以上の場合に、本発明が適用されることが好ましい。
【0030】
また、本実施形態では、意匠面部31の正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料は、ガラスよりもリサイクル性が高い材料である。具体的には、意匠面部31は、例えば鋼板や樹脂板から形成されている。この構成では、意匠面部31は、軽量による転倒防止とともに、リサイクル性の向上にも寄与できる。
【0031】
また、本実施形態では、扉10のうちの回動式の扉の少なくとも1つ(ここでは扉1,2の2つ)において、意匠面部31は、ガラスよりもリサイクル性が高い材料から形成されている。ガラスはリサイクルプラントの破砕機(不図示)に放り込めないので、ガラスを用いた扉は取り外す必要があるが、回動式の扉は冷蔵庫から取り外しにくい。上記構成では、取り外しにくい回動式の扉1,2を易リサイクルな材料にすることで、リサイクルプラントが破砕機で冷蔵庫100を処理する際、回動式の扉1,2を取り外さずに冷蔵庫100を破砕機に放り込める。
【0032】
また、本実施形態では、冷凍室(製氷室12、上段冷凍室13、及び下段冷凍室14)用の扉3~5の少なくとも1つ(ここでは扉3~5の3つ)には、金属断熱材50が設けられている。この構成では、従来使用されているグラスウールを含む真空断熱材よりも重いけれども高断熱性能を備える金属断熱材50を効果的に活用して、低温を要する貯蔵室に適用することができる。
【0033】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、前記した実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0034】
例えば、前記した実施形態では、全ての扉1~6に金属断熱材50が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、箱体20に2つ以上の扉(ここでは扉1~6の6つ)が取り付けられている場合には、それらの扉の少なくとも1つには、金属断熱材50よりも低比重の断熱材が設けられていてもよい。金属断熱材50よりも低比重の断熱材としては、例えば、
図6に示すようなグラスウールを含む真空断熱材60が使用され得る。
【0035】
図6に示すように、真空断熱材60は、芯材61、芯材61を圧縮状態に保持するための内袋62、内袋62で圧縮状態に保持した芯材61を被覆するガスバリヤ層を有する外袋63、及び吸着剤64を備えている。外袋63は真空断熱材60の両面に配置され、同じ大きさのラミネートフィルムの稜線から一定の幅の部分を熱溶着により貼り合わせた袋状に構成されている。芯材61には、ここではグラスウールが用いられているが、特に限定されるものではない。なお、真空断熱材60は、製造過程で内部空間を減圧すると、フィルム状の外袋63は変形し、芯材61の形状等に応じた凹凸が生じる。
【0036】
扉1~6の少なくとも1つに金属断熱材50よりも低比重の断熱材が設けられることで、扉10の開放時に冷蔵庫100の転倒防止をより図ることができる。
なお、扉に真空断熱材60が設けられる場合、その扉の内部における真空断熱材60以外の空間には、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材33が充填される。ただし、金属断熱材50よりも低比重の断熱材として、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材33のみが扉の内部に充填されるように構成されてもよい。
【0037】
また、前記した実施形態では、全ての扉1~6の意匠面部31は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、扉1~6の少なくとも1つにおいて、意匠面部31は、ガラスから形成されていてもよい。
この場合、扉10は、以下のように設定されていることを確認する。
【0038】
図3に示すように、冷蔵庫100は、扉をn個(n>1)備える場合を想定する。ここで、扉iの重量をDi、扉iの開放時の箱体20の接地部38の前端位置Pから扉iの重心までの前後方向の水平距離をLi、箱体20の重量をM、箱体20の重心から前端位置Pまでの水平距離をLM、とする。扉の開放とは、回動式の扉の場合には閉じた状態から90度回動した状態、引き出し式の扉の場合には最大限引き出した状態(全開状態)である。
仮に、全部の扉の意匠面部31がガラスから形成され、かつ、全部の扉に金属断熱材50が設けられた場合に、ΣDi*Li>M*LM (i=1~n)が成立する。つまり、扉1~6が最も重くなるように設定された場合には、
図3において、扉1~6の重量による反時計回りのモーメントが、箱体20の重量による時計回りのモーメントよりも大きくなり、冷蔵庫100が転倒する。
そこで、扉1~6の少なくとも1つ(例えば扉1)において、意匠面部31は、ガラスから形成されるようにする。そして、例えば扉1以外の少なくとも1つの扉(例えば扉2~6)において、意匠面部31は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成されるようにする。
このとき、ΣDi*Li=<M*LM (i=1~n)が成立するように、扉1~6が設定される。つまり、この場合、
図3において、扉1~6の重量による反時計回りのモーメントが、箱体20の重量による時計回りのモーメント以下となり、冷蔵庫100は前方に転倒しない。
箱体側と扉体側のモーメントの関係は、シミュレーションおよび実験のいずれでも検証できる。すなわち、扉の意匠面、断熱材等の構造部品および箱体の断熱材等の構造部品の形状および重量をシミュレーション上で再現させて、計算によって重心を求めることが可能である。また、実験的に、例えば意匠面が鋼板の扉とガラスの扉とを交換して取り付けたり、意匠面が鋼板の扉とガラスの扉との重量差の分の重りを、重量が軽い鋼板の扉に付加したりして、冷蔵庫が転倒し始めるまで、開放した扉の上から荷重を加えその荷重を徐々に上げていくといった方法でも可能である。
【0039】
この構成では、一部の意匠面部31がガラスから形成されている場合でも、扉10の開放時における冷蔵庫100の転倒防止を確実に図ることができる。
しかも、意匠面部31は外観に顕著に影響するため、意匠面部31をガラスで形成することで、例えばガラスと鋼板とを組み合わせてデザインの自由度を確保でき、デザイン性を向上させることができる。また、ガラスを使用することで、意匠面部31にタッチパネルを取り付けることが容易となる。
【0040】
また、扉1~6のうちの回動式の扉(ここでは扉1,2の2つ)の少なくとも1つは、意匠面部31がガラスから形成されるか、または金属断熱材50が設けられるように構成されてもよい。この構成では、回動式の扉が少し重くなるものの、扉の開放時における扉の前方への移動量は回動式の扉の方が引き出し式の扉よりも小さいため、冷蔵庫100の転倒を防止できる。また、意匠面部31をガラスから形成することで、デザイン性及びタッチパネルの取付け性が向上する。
【0041】
以上、本発明について実施形態に基づいて説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、前記した実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0042】
例えば、前記した実施形態では、箱体20に2つ以上の扉(ここでは扉1~6の6つ)が取り付けられているが、これに限定されるものではない。本発明は、箱体20に1つの扉が取り付けられている場合にも適用可能である。この場合、1つの扉には、金属断熱材50が設けられ、また、その扉において、意匠面部31は、正面視における単位面積当たりの重量がガラスを使用した場合よりも小さい材料から形成される。
また、前記した実施形態では、回動式の扉1,2は、観音開き(両開き)の扉を構成しているが、片開きの1つの扉として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0043】
1~6 扉
10 扉
12 製氷室(冷凍室)
13 上段冷凍室(冷凍室)
14 下段冷凍室(冷凍室)
20 箱体
31 意匠面部
38 接地部
50 金属断熱材
60 真空断熱材
100 冷蔵庫
P 前端位置